説明

アレルゲン不活化活性付与方法及びアレルギー患者用繊維製品

【課題】 セルロース質からなる繊維を含む繊維又は繊維製品にダニ等のアレルゲンの不活化活性を付与する方法であって、人体に対する安全性が高く、且つ洗濯を繰り返しても該不活化活性能の低下を防ぐことができるアレルゲン不活化活性付与方法、及びアレルギー患者用繊維製品を提供する。
【解決手段】 セルロース質からなる繊維を含む繊維又は繊維製品に、タンニン酸と架橋剤とを付着させ、熱処理して結合させることにより、アレルゲン不活化活性を付与する。前記タンニン酸として、加水分解型ガロタンニン、加水分解型エラジタンニン及び縮合型タンニンから選ばれた少なくとも1種を用いることが好ましい。また、前記繊維又は繊維製品に対して、前記タンニン酸を0.1〜20質量%付着させることが好ましく、前記架橋剤としてポリカルボン酸を用いることが好ましい。本発明のアレルゲン不活化活性付与方法は、アレルギー患者用の繊維製品に好ましく適用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース質からなる繊維を含む繊維又は繊維製品にダニ等のアレルゲンに対する不活化活性を付与する方法、及びアレルギー患者用繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅の高気密・高断熱化や冷暖房設備の普及等による住環境の変化によって、ダニやハウスダストが発生し易くなり、それらを起因とする喘息発作、アトピー性皮膚炎、鼻炎等のアレルギー疾患に悩む人が増えている。
【0003】
例えば、ダニアレルギーは、ダニの糞、死骸、脱皮殻、卵等のダニ抗原をアレルゲンとして体内に吸い込んだり、これらのアレルゲン(ダニ抗原)と接触することによって起こり、寝装品やマット類は上記ダニ抗原の主要な発生源となっている。
【0004】
そのため、寝装品等の防ダニ対策の一つとして、布団やマット類を構成する詰物や側生地等に殺ダニ性や忌避性のある薬剤を保持させて直接ダニを防ぐ方法が知られており、例えば、下記特許文献1には、セルロース再生繊維中に粒子径10μm以下の再生キトサン微小粒状体、ニトリル系抗菌剤、ピリジン系抗菌剤、ハロアルキルチオ系抗菌剤、有機ヨード系抗菌剤、チアゾール系抗菌剤、及びベンツイミダゾール系抗菌剤を含有していることを特徴とする抗菌性セルロース再生繊維が開示されている。
【0005】
下記特許文献2には、難水溶性且つ低揮発性の防ダニ剤及び難水溶性且つ低揮発性の抗菌剤を、樹脂バインダーと共に綿又は繊維表面に固着させたものであることを特徴とする防ダニ・抗菌・防臭綿又は繊維が開示されている。
【0006】
下記特許文献3には、所定の化学式で表される2−ヒドロキシプロパン酸アルキル又はアルケニルを含有することを特徴とする繊維用防ダニ加工薬剤、及び該繊維用防ダニ加工薬剤で処理してなることを特徴とする防ダニ加工繊維製品が開示されている。
【0007】
下記特許文献4には、中綿等の詰物に、タンニン酸を染み込ませることにより、前記詰物に付いているダニ抗原を人体に害のない形態に変性処理することを特徴とするダニ抗原処理方法が開示されている。
【特許文献1】特開平10−37018号公報
【特許文献2】特開2003−18976号公報
【特許文献3】特開2005−113332号公報
【特許文献4】特開平9−301804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1〜3に開示された方法を人体に直接触れる布団側生地や寝衣等の寝装品へ適用した場合、防ダニ剤等の薬剤による人体への安全性の面で不安があったり、ダニを駆除してもその死骸が新たな抗原となってしまうという問題があった。
【0009】
一方、上記特許文献4に開示された方法は、安全性が高く、また、ダニ抗原を不活化するため、駆除したダニの死骸が新たな抗原となってしまうというような問題はないものの、洗濯を繰り返すことによってその効果が失われやすいという欠点があった。
【0010】
したがって、本発明の目的は、セルロース質からなる繊維を含む繊維又は繊維製品にダニ等のアレルゲンの不活化活性を付与する方法であって、人体に対する安全性が高く、且つ洗濯を繰り返しても該不活化活性能の低下を防ぐことができるアレルゲン不活化活性付与方法、及びアレルギー患者用繊維製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明のアレルゲン不活化活性付与方法は、セルロース質からなる繊維を含む繊維又は繊維製品にアレルゲン不活化活性を付与する方法において、該繊維又は繊維製品に、タンニン酸と架橋剤とを付着させ、熱処理して結合させることを特徴とする。
【0012】
本発明のアレルゲン不活化活性付与方法においては、前記タンニン酸として、加水分解型ガロタンニン、加水分解型エラジタンニン及び縮合型タンニンから選ばれた少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0013】
また、前記繊維又は繊維製品に対して、前記タンニン酸を0.1〜20質量%付着させることが好ましい。
【0014】
更に、前記架橋剤としてポリカルボン酸を用いることが好ましい。
【0015】
更にまた、本発明のアレルゲン不活化活性付与方法は、アレルギー患者用の繊維製品に適用されることが好ましい。
【0016】
更にまた、布団側生地、布団カバー、毛布、タオルケット、寝衣、シーツ、枕、枕カバー、タオル、カーテンから選ばれた1種に適用されることが好ましい。
【0017】
本発明のアレルゲン不活化活性付与方法によれば、アレルゲン不活化剤としてタンニン酸を用いることにより人体への安全性が高い。また、架橋剤を介してタンニン酸をセルロース質からなる繊維を含む繊維又は繊維製品に結合させるので、洗濯によるタンニン酸の損失を防いで耐洗濯性を向上することができ、該不活化活性能を長期間維持できる。
【0018】
また、本発明のアレルギー患者用繊維製品は、セルロース質からなる繊維を含む繊維製品であって、前記繊維にタンニン酸が架橋剤によって固着されていることを特徴とする。
【0019】
本発明のアレルギー患者用繊維製品においては、布団側生地、布団カバー、毛布、タオルケット、寝衣、シーツ、枕、枕カバー、タオル、カーテンから選ばれた1種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のアレルゲン不活化活性付与方法によれば、セルロース質からなる繊維を含む繊維又は繊維製品に、人体への安全性の高いタンニン酸を、架橋剤を介して結合させることにより、洗濯を繰り返してもアレルゲン不活化活性能の低下を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明において、セルロース質からなる繊維を含む繊維とは、天然セルロース繊維(綿、カポック、亜麻、苧麻、大麻、黄麻、マニラ麻、サイザル麻等)、セルロース再生繊維(ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン等)、これらの混紡品のほか、これら繊維の一次加工品(例えば、糸、ニット、織物、編物、不織布等)をも含む意味であり、特に木綿の場合は、原綿そのもの、苛性マーセル化した木綿、液体アンモニアで処理した木綿等も含まれる。
【0022】
また、本発明においては、アレルゲン不活化活性を付与した上記セルロース質からなる繊維に、非セルロース系合成繊維を混紡、交撚、混編させることもできる。上記非セルロース系合成繊維としては、例えば、ポリエステル、液晶ポリエステル、ポリアミド、液晶ポリアミド、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、スパンデックス等の従来公知のものを広く例示でき、中でも、ポリエステル、ポリアミド、アクリル及びポリプロピレンが好ましく、ポリエステルが特に好ましい。
【0023】
アレルゲン不活化活性を付与した上記セルロース質からなる繊維に上記合成繊維を混紡する場合、混紡割合は特に限定されないが、アレルゲン不活化活性能と、混紡繊維及び繊維製品の特徴である繊維強度等の合成繊維の性能との兼ね合いから、通常、上記合成繊維が全繊維中に1〜80質量%、好ましくは20〜66質量%の割合で混紡するのがよい。
【0024】
また、セルロース質からなる繊維を含む繊維製品としては、上記繊維を更に加工したもの、例えば、布団側生地、布団カバー、布団綿、布団(敷布団、掛け布団)、毛布、タオルケット、寝衣(パジャマ、ネグリジェ等)、シーツ、枕、枕カバー等の寝装品、タオル、ハンカチ、衣料、スリッパ、カーペット、マット、カーテン、椅子張り地、壁布、フロア外張り、インテリア製品等が挙げられ、中でも布団側生地、布団カバー、毛布、タオルケット、寝衣、シーツ、枕、枕カバー、タオル、カーテンから選ばれた1種が好ましく挙げられ、特にアレルギー患者用の繊維製品が好ましく挙げられる。
【0025】
本発明においてアレルゲン不活性化剤として用いられるタンニン酸は、下記一般式〔1〕で表される化合物であり水に溶解し易く、水溶液は酸性を示す。また、アルコール、アセトン、グリセリン等に良好な可溶性を示し、石油エーテル、無水エーテル、クロロホルム等に不溶性である。
【0026】
【化1】

【0027】
(上記一般式〔1〕式中、Rは、同一又は異なってもよい水素原子又は下記一般式〔2〕で表される化合物よりなる官能基を表す。)
【0028】
【化2】

【0029】
(上記一般式〔2〕式中、Aは、同一又は異なってもよい水素原子又は下記一般式〔3〕で表される化合物よりなる官能基を表す。)
【0030】
【化3】

【0031】
タンニン酸は、没食子や五倍子等の植物タンニンに由来し、一般にガロイル没食子酸と称されることもある。また、タンニンの加水分解で生じることから「タンニン酸」の用語はタンニン自体を指称することもある。没食子や五倍子から得られるタンニン酸は、加水分解により没食子酸と微量のグルコースとを生じる。
【0032】
本発明においてアレルゲン不活性化剤として用いられるタンニン酸は、例えば、没食子や五倍子等を温湯で抽出して、抽出液を蒸発乾固して得たもの、また、これらを有機溶媒で抽出・精製したもの等、公知技術に準じた抽出方法によって得られるものであり、具体的には、分解型ガロタンニン、加水分解型エラジタンニン及び縮合型タンニンから選ばれた少なくとも1種が好ましく用いられる。本発明においては、例えば、商品名「タンニン酸AL」(富士化学工業株式会社製)等の市販のものを用いることができる。
【0033】
タンニン酸は、後述する実施例に示されるように、ダニやダニの死骸等のダニ抗原、花粉、動物(例えば、イヌ、ネコ、鳥、ハムスター等のげっ歯類)由来の抗原、真菌等を吸着し、不活化する作用を有しているが、不活化のメカニズムについては未だ解明されていない。
【0034】
本発明においては、タンニン酸をセルロース質からなる繊維を含む繊維又は繊維製品(以下、「セルロース質からなる繊維を含む繊維等」という)に結合させるために架橋剤が用いられるが、該架橋剤として下記に示す各種化合物が例示できる。
【0035】
i)エステル結合(−COO−)を介してタンニン酸とセルロース質からなる繊維を含む繊維等とを結合させることができる化合物
上記化合物として、分子中にカルボキシル基を2個以上、又は酸無水物基を1個以上有するポリカルボン酸が挙げられる。このようなポリカルボン酸としては、従来公知のものを広く使用でき、各種の脂肪族ポリカルボン酸、脂環族ポリカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸等が例示できる。なお、これらのポリカルボン酸は、水酸基、ハロゲン基、カルボニル基、炭素−炭素二重結合を有していても差し支えない。
【0036】
例えば、分子中にカルボキシル基を2個有するポリカルボン酸としては、飽和脂肪族ジカルボン酸、不飽和脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸等が挙げられる。
【0037】
具体的には、飽和脂肪族ジカルボン酸として、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、プロピルマロン酸、ブチルマロン酸、ヘプチルマロン酸、ジプロピルマロン酸、リンゴ酸、酒石酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、イミノジ酢酸、チオジプロピオン酸、チオマレイン酸等が例示できる。
【0038】
また、不飽和脂肪族ジカルボン酸として、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ヘキサジエン二酸(ムコン酸)、ドデカジエン二酸等が例示できる。
【0039】
また、芳香族ジカルボン酸として、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ホモフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、メチルフタル酸、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドリンデンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、カルボキシメチル安息香酸、トリフルオロメチルフタル酸、アゾキシベンゼンジカルボン酸、ヒドラゾベンゼンジカルボン酸、スルホイソフタル酸、ジフェニルスルフォンジカルボン酸、ピリジンジカルボン酸、ケリダム酸、ピラジンジカルボン酸等が例示できる。
【0040】
また、脂環式ジカルボン酸として、ヘット酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロプロパンジカルボン酸、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ピペリジン−2,3−ジカルボン酸(ヘキサヒドロキノリン酸)、ピペリジン−2,6−ジカルボン酸(ヘキサヒドロジピコリン酸)、ピペリジン−3,4−ジカルボン酸(ヘキサヒドロシンコメロン酸)等が例示できる。
【0041】
本発明においては、ポリカルボン酸として、分子中にカルボキシル基を少なくとも3個有するポリカルボン酸が好ましく使用される。
【0042】
例えば、分子中にカルボキシル基を少なくとも3個有するポリカルボン酸としては、脂肪族トリカルボン酸、脂肪族テトラカルボン酸、脂肪族ペンタカルボン酸、脂肪族ヘキサカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸、カルボン酸ポリマー等が例示できる。
【0043】
具体的には、脂肪族トリカルボン酸として、トリカルバリル酸、アコニチン酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、クエン酸、1,2,3−ブタントリカルボン酸等が例示できる。
【0044】
また、脂肪族テトラカルボン酸として、ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、テトラヒドロフランテトラカルボン酸、メチルテトラヒドロフタル酸とマレイン酸のエン付加物、エチレンジアミン四酢酸、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ジフタル酸、エポキシ化コハク酸二量化物等が例示できる。
【0045】
また、脂肪族ペンタカルボン酸として、ジエチレントリアミン五酢酸等が例示できる。
【0046】
また、脂肪族ヘキサカルボン酸として、トリエチレンテトラミン六酢酸等が例示できる。
【0047】
また、芳香族ポリカルボン酸として、トリメリット酸、ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸等が例示できる。
【0048】
また、カルボン酸ポリマーとして、アクリル酸重合物、クロトン酸重合物、マレイン酸重合物、イタコン酸(又は無水イタコン酸)重合物、アクリル酸・メタアクリル酸共重合物、アクリル酸・(無水)マレイン酸共重合物、メタアクリル酸・(無水)マレイン酸共重合物、アクリル酸・イタコン酸共重合物、アクリル酸・3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸共重合物、(無水)マレイン酸・α−メチルスチレン共重合物、(無水)マレイン酸・スチレン共重合物(スチレンと無水マレイン酸よりディールス・アルダー反応とエン反応によって生じたテトラカルボン酸を含む)、(無水)マレイン酸・アクリル酸アルキル共重合物、アクリル酸・3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸・アクリル酸アルキル共重合物、メタアクリル酸・(無水)マレイン酸・メタアクリル酸アルキル共重合物、(無水)マレイン酸・アクリル酸アルキル・メタアクリル酸アルキル共重合物、(無水)マレイン酸・アクリル酸アルキル・スチレン共重合物、アクリル酸・(無水)マレイン酸・アクリル酸アルキル・スチレン共重合物、メタアクリル酸・(無水)マレイン酸・アクリル酸2−エチルヘキシル・メタアクリル酸メチル・メタアクリル酸2−ヒドロキシエチル・スチレン共重合物等が例示できる。
【0049】
本発明においては、上記ポリカルボン酸はそれぞれ単独で、又は2種以上を混合して使用することができるが、作業性が良好であることから、上記ポリカルボン酸の中でも、トリカルバリル酸、アコニチン酸、クエン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等の水溶性のポリカルボン酸が好ましく用いられ、特に効果が優れていることから、水溶性で四塩基酸の1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸が好ましく用いられる。
【0050】
なお、架橋剤としてポリカルボン酸を用いる場合は触媒を用いることが好ましい。触媒としては、第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第三リン酸ナトリウム、ピロリン酸二水素ナトリウム、トリリン酸カリウム等の各種リン酸塩、又は炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等の各種炭酸塩が好ましく用いられる。また、オルソリン酸、次亜リン酸、亜リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、ピロ亜リン酸、又はそれらの中性塩又は酸性塩も用いることができる。
【0051】
ii)アセタール結合(−OCHO−)によりタンニン酸とセルロース質からなる繊維を含む繊維等とを結合させることができる化合物
上記化合物として、分子内にアルデヒド基を有するアルデヒド化合物等が挙げられる。このようなアルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド、ジアルデヒド(グリオキザール)等が例示できる。
【0052】
iii)エーテル結合(−O−)によりタンニン酸とセルロース質からなる繊維を含む繊維等とを結合させることができる化合物
上記化合物として、N−メチロール化合物、分子内にエポキシ基(グリシジル基)やビニル基を有する化合物等が挙げられる。
【0053】
例えば、N−メチロール化合物としては、ジメチロール尿素及びそのメチル化物、ジメチロールエチレン尿素及びそのメチル化物、ジメチロールウロン及びそのメチル化物、ジメチロールトリアゾン及びそのメチル化物、ジメチロールプロピレン尿素及びそのメチル化物、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素、メチル化ジメチロールジメトキシエチレン尿素、1,3−ジメチル−4,5−ジヒドロキシエチレン尿素及びそのメチル化物、ジメチロール−4−メトキシ−5,5−ジメチルプロピレン尿素及びそのメチル化物、ジメチロールアルキルカーバメイト及びそのメチル化物、テトラメチロールグリオキザールモノウレイン及びそのメチル化物等が挙げられる。これらの中でも、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素が好ましい。市販品としては、商品名「スミテックスレジン」シリーズ(住友化学工業社製)、商品名「リケンレジン」シリーズ(三木理研社製)等が挙げられる。
【0054】
なお、架橋剤としてN−メチロール化合物を用いる場合には、触媒を用いることが好ましい。このような触媒としては、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム 、塩基性塩化アルミニウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、リン酸二水素マグネシウム、ホウフッ化亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、ホウフッ化マグネシウム、過塩素酸マグネシウム等の各種金属塩類(結晶水含有物も含む)、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等の強酸のアンモニウム塩類、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールの塩酸塩等の各種アルカノールアミンの酸性塩及びこれらの混合物等が例示できる。
【0055】
また、分子内にエポキシ基(グリシジル基)を有する化合物としては、脂肪族エポキシ化合物、ジグリシジル化合物、トリグリシジル化合物、ポリグリシジル化合物、脂環式エポキシ化合物、異節環状型エポキシ化合物、活性ビニル化合物の他、ビスフェノールA−エピクロルヒドリン化合物、ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル化合物及びそのエチレンオキシド付加物又はプロピレンオキシド付加物、ビスフェノールF−ジグリシジルエーテル化合物、水素化ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル化合物、水素化ビスフェノールF−ジグリシジルエーテル化合物等が例示できる。
【0056】
上記脂肪族エポキシ化合物としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化オレイルオレート等が例示できる。
【0057】
上記ジグリシジル化合物としては、下記一般式〔4〕で表されるジグリシジルエーテルを挙げることができる。
【0058】
【化4】

【0059】
(上記一般式〔4〕中、Rは−O−R−O−又は−O(RO)−を示す。ここでRは炭素数2〜12の直鎖又は分枝鎖状アルキレン基を示す。Rは−CHCH−、−CH−CH(CH)−又は−(CH−を示し、nは4〜50の整数を示す。)
具体的には、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(n=4〜50)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(n=4〜50)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、ジグリシジルポリシロキサン等が挙げられる。
【0060】
トリグリシジル化合物としては、例えば、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0061】
ポリトリグリシジル化合物としては、例えば、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリシジルポリシロキサン等が挙げられる。
【0062】
脂環式エポキシ化合物としては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等が挙げられる。
【0063】
異節環状型エポキシ化合物としては、例えば、トリグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0064】
本発明においては、上記一般式〔4〕で表されるジグリシジルエーテルの中でも、Rがエチレングリコール系、ポリエチレングリコール系、グリセリン系であるものが好ましく用いられる。市販品としては、商品名「デナコールEX」シリーズ(ナガセ化成工業社製)等が挙げられる。
【0065】
活性ビニル化合物としては、分子内にジアクリロイル基を有する化合物、分子内にジメタクリロイル基を有する化合物、分子内にトリアリル基を有する化合物、分子内にテトラアリル基を有する化合物、分子内にペンタアリル基を有する化合物等が挙げられる。
【0066】
分子内にジアクリロイル基を有する化合物としては、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(n=3〜50)、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート等が例示できる。
【0067】
分子内にジメタクリロイル基を有する化合物としては、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート(n=3〜50)、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物ジメタクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物ジメタクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ヘキサヒドロフタル酸ジアリル、ジアリルオルソフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン、1,1’−ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸ジアリル、ジアリルクロレンデート、N,N−メチレンビスアクリルアミド等が例示できる。
【0068】
分子内にトリアリル基を有する化合物としては、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアクリレートとそのエチレンオキシド変性物、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリアリルトリメリテート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリアクリルホルマール、トリメタアリルイソシアヌレート等が例示できる。
【0069】
分子内にテトラアリル基を有する化合物としては、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等が例示できる。
【0070】
分子内にペンタアリル基を有する化合物としては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が例示できる。
【0071】
活性ビニル化合物としては、分子内にジアクリロイル基を有する化合物や分子内にジメタクリロイル基を有する化合物が好ましく、特にポリエチレングリコールジアクリレート(n=3〜50)やポリエチレングリコールジメタクリレート(n=3〜50)が好ましい。
【0072】
iv)ウレタン結合(−NCOO−)によりタンニン酸とセルロース質からなる繊維を含む繊維等とを結合させることができる化合物
上記化合物として、ジイソシアネート化合物、トリイソシアネート化合物、ポリイソシアネート化合物等のほか、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。
【0073】
ジイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、o−トリジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が例示できる。
【0074】
トリイソシアネート化合物としては、トリフェニルメタントリイソシアネート等が例示できる。
【0075】
ポリイソシアネート化合物としては、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が例示できる。
【0076】
上記ジイソシアネート化合物、トリイソシアネート化合物、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等は、活性イソシアネート基がブロック剤によりブロックされたものであってもよい。ブロック剤としては、例えば、オキシム(アセトオキシム、シクロヘキサノンオキシム)、ラクタム(ε−カプロラクタム)、ジエチルマロネート、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、重亜硫酸塩等が挙げられる。
【0077】
本発明においては、ジイソシアネート化合物が好ましく用いられ、特にヘキサメチレンジイソシアネートが好ましく用いられる。市販品としては、商品名「エラストロンシリーズ」(第一工業製薬社製)等が挙げられる。
【0078】
本発明においては、上記架橋剤の中でもポリカルボン酸が好ましく用いられる。なお、上記架橋剤は1種単独で、あるいは2種以上混合して使用することもできる。
【0079】
以下、本発明のアレルゲン不活化活性付与方法について説明する。
【0080】
本発明においては、セルロース質からなる繊維を含む繊維等にタンニン酸及び架橋剤を付着させ、熱処理を行えばよい。
【0081】
セルロース質からなる繊維を含む繊維等にタンニン酸及び架橋剤を付着させる方法としては、例えば、浸漬法、スプレー法、コーティング法等の従来公知の方法を採用することができ、中でもセルロース質からなる繊維を含む繊維等をタンニン酸及び架橋剤を含有する処理液中に浸漬する、いわゆる浸漬法が好ましく採用される。
【0082】
以下、浸漬法について詳細に説明する。
【0083】
処理液中のタンニン酸濃度及び架橋剤濃度は、処理液の絞り率と、必要とする各成分の付着量から算出した濃度に設定すればよい。例えば、タンニン酸の好ましい付着量は、セルロース質からなる繊維を含む繊維等に対して0.1〜20質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。タンニン酸の付着量が少な過ぎると充分なアレルゲン不活化活性能が期待できない、洗濯によりアレルゲン不活化活性能が低下する等の問題が生じるため好ましくなく、タンニン酸の付着量が多過ぎるとセルロース質からなる繊維を含む繊維等への着色が目立つようになるため好ましくない。
【0084】
また、架橋剤の好ましい付着量は、セルロース質からなる繊維を含む繊維等に対して0.1〜40質量%であり、より好ましくは1〜15質量%である。例えば、ポリカルボン酸を用いる場合は、セルロース質からなる繊維を含む繊維等に対して、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは1〜10質量%である。架橋剤の付着量が少な過ぎるとタンニン酸がセルロース質からなる繊維を含む繊維等に強固に結合できないので、耐洗濯性が低下し、架橋剤の付着量が多過ぎると、繊維の強度が低下したり、風合いが硬くなるため好ましくない。
【0085】
本発明においては、通常、タンニン酸濃度0.1〜20質量%、架橋剤濃度0.1〜20質量%の処理液を用いることが好ましく、タンニン酸濃度1〜10質量%、架橋剤濃度1〜10質量%の処理液を用いることがより好ましい。
【0086】
本発明においては、上記所定濃度のタンニン酸、架橋剤及び必要に応じて触媒を含む一つの処理液を用いてもよく、各成分をそれぞれ別個に含む処理液を用いてもよい。
【0087】
上記処理液は、中和剤として適当なアルカリ又は塩を添加することにより、pH0〜6、好ましくはpH2〜5に調整されていることが好ましい。処理液のpHを上記範囲内に調整することにより、セルロース質からなる繊維を含む繊維等に効率よくアレルゲン不活化活性を付与することができる。
【0088】
上記中和剤としては、水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、過炭酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、メタホウ酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、乳酸ナトリウム等の各種ナトリウム塩が例示できる。また、上記ナトリウム塩に代わり、カリウム塩、アンモニウム塩、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の揮発性の低級アミンの塩も使用できる。これらの中和剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0089】
上記中和剤の添加量は、使用するタンニン酸及び架橋剤の溶解量や種類によって適宜設定できるが、通常、処理液中の濃度として0.1〜10質量%であることが好ましい。
【0090】
上記処理液を構成する溶媒は有機溶媒を用いることもできるが、安全性やコスト等の点から水を用いることが好ましい。処理液の形態は、所定の効果が得られる限り特に限定されず、溶液の形態であってもよく、乳化液の形態であってもよいが、処理効率及び安全性の点から水溶液であることが好ましい。
【0091】
セルロース質からなる繊維を含む繊維等に対する上記処理液の浸透速度は充分に速いので、浸漬時間や浴温度に特に制限はないが、通常、浸漬時間0.1〜300秒、浴温10〜40℃で行われる。また、絞りは加工する製品によって異なり、それぞれに適当な絞り方法、絞り率が採用できる。通常、絞り率は30〜200%で行うことが好ましい。
【0092】
浸漬、絞りを行った後、乾燥を行い、更に熱処理を行う。乾燥は40〜150℃で行い、時間は温度に応じて設定すればよい。
【0093】
また、熱処理の条件は、通常、100〜250℃、好ましくは120〜200℃で、処理時間は20秒〜1時間である。熱処理を行うことにより、タンニン酸が架橋剤を介してセルロース質からなる繊維を含む繊維等に強固に結合し、耐洗濯性を向上することができる。なお、上記条件より穏やかな条件では、耐洗濯性が低下して洗濯を繰り返すことでアレルゲン不活化活性能が低下する傾向になり、厳しすぎる条件では繊維の劣化を引き起こし、強度低下や繊維黄変が生ずるのでましくない。
【0094】
また、アレルゲン不活化活性付与方法の別の態様として、セルロース質からなる繊維を含む繊維等にタンニン酸を付着させ乾燥した後、気相ホルマリン加工処理することもできる(タンニン酸を付着させて乾燥した後、縫製等により繊維製品とし、最後に気相ホルマリン加工処理してもよい)。
【0095】
上記気相ホルマリン加工処理は、ホルマリンを吸着させるために適度な水分率に調節した後、セルロース質からなる繊維を含む繊維等にホルムアルデヒドガスを吸着させ、熱処理してホルムアルデヒドを架橋せしめればよい。
【0096】
なお、気相ホルマリン加工処理においては触媒が必要であるが、気相処理の前に予めセルロース質からなる繊維を含む繊維等に触媒溶液をパディングしておいてもよく、触媒溶液又は液化している触媒を気化又はミスト化してセルロース質からなる繊維を含む繊維等に吸着させてもよく、セルロース質からなる繊維を含む繊維等にタンニン酸を付着させる際に、触媒を一緒に吸着させておいてもよい。
【0097】
上記触媒としては、塩化水素ガス、亜硫酸ガス等のガス、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸、グリコール酸、マレイン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、蓚酸等の有機酸等が例示できる。また、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、リン酸二水素マグネシウム、ホウフッ化亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、ホウフッ化マグネシウム、過塩素酸マグネシウム等の各種金属塩類(結晶水含有物も含む)、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等の強酸のアンモニウム塩類、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールの塩酸塩等の各種アルカノールアミンの酸性塩及びこれらの混合物等のルイス酸も触媒として使用可能である。
【0098】
ホルムアルデヒドガスを吸着させた後、セルロース質からなる繊維を含む繊維等を熱処理して架橋反応を行う際の条件は、100〜180℃で0.5〜10分間である。
【実施例】
【0099】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0100】
<実施例1>
タンニン酸(加水分解型ガロタンニン、商品名「タンニン酸AL」、富士化学工業製)1質量%、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸3質量%を含む水溶液に、第2燐酸ナトリウム1.5質量%を添加して処理液を作成した。
【0101】
目付150g/mの綿織物を精練、漂白、シルケット処理の後、上記処理液に浸漬し(浸漬時間:3秒、浴温:25℃)、マングルで絞り(絞り率:100%)、100℃で乾燥後、160℃で2分間熱処理を行い、綿織物にアレルゲン不活化活性を付与した。
【0102】
<実施例2>
タンニン酸(加水分解型ガロタンニン、商品名「タンニン酸AL」、富士化学工業製)の濃度を3質量%にした以外は、実施例1と同様にして、綿織物にアレルゲン不活化活性を付与した。
【0103】
<試験例1>
以下に示す各サンプルを用いて、ダニ抗原(Der P1)の不活化試験を行った。
【0104】
サンプル1:実施例1で得られた綿織物(1×1cm)
サンプル2:実施例2で得られた綿織物(1×1cm)
サンプル3:上記サンプル1を10回水洗いしたもの
サンプル4:上記サンプル2を10回水洗いしたもの
サンプル5:架橋剤のみを結合させた綿織物(1×1cm)
サンプル6:上記サンプル5を10回水洗いしたもの
なお、水洗いは、JIS L 0217付表番号103に準じて行った。
【0105】
不活化試験は、ダニ抗原(Der P1)を溶解した水溶液2mlに、上記各サンプルを浸漬し、24時間反応(3時間振とう、21時間静置)した。反応終了後、各サンプルを浸漬した水溶液中のダニ抗原の抗原活性をELISA法にて測定した。
【0106】
ELISA法は、抗Der P1抗体(LCDアレルギー研究所社製)、ビオチン標識抗Der P1抗体(LCDアレルギー研究所社製)、酵素(β−ガラクトシダーゼ)標識ストレプトアビジン(SIGMA社製)を用意し、常法にしたがって行った。すなわち、プレートの各ウエルを抗Der P1抗体でコーティングした後、各サンプルを浸漬した水溶液を添加し、プレート上に捕捉したダニ抗原に、ビオチン標識抗Der P1抗体を反応させた。洗浄後、酵素標識ストレプトアビジンを反応させて洗浄した後、β−ガラクトピクノシド(基質)を加えて、各ウエルの酵素活性を吸光度(波長415nm)によって測定した。そして、標準抗原を加えたウエルの吸光度から標準曲線を作成して各水溶液中のダニ抗原量を求めた。
【0107】
なお、綿織物自体の影響を除くために、上記サンプル1又は2についての測定値は、架橋剤のみを結合させた綿織物(1×1cm)を用いた場合の抗原Der p1の残存量の測定値を基準にして、その抗原不活化率(%)を算出した。また同様に、上記サンプル3又は4についての測定値は、上記サンプル5を10回水洗いしたものを用いた場合の抗原Der p1の残存量の測定値を基準にして、その抗原不活化率(%)を算出した。その結果を表1に示す。
【0108】
【表1】

【0109】
表1から、本発明の方法により不活化活性を付与したサンプル1、2は非常に高いアレルゲン不活化活性能を有していることが分かる。また、1%タンニン酸溶液で加工したサンプル3については、水洗いによる不活化活性能の低下がみられたが、3%タンニン酸溶液で加工したサンプル4については、水洗いによる不活化活性能の低下が全くみられず、タンニン酸が綿織物に強固に結合していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明のアレルゲン不活化活性付与方法は、人体に対する安全性の高いタンニン酸を、セルロース質からなる繊維を含む繊維又は繊維製品に強固に結合させることができ、洗濯を繰り返しても該不活化活性能が低下しないので、人体に直接触れる寝装品をはじめ、様々な製品に適用でき、特にアレルギー患者用の繊維製品に好ましく適用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース質からなる繊維を含む繊維又は繊維製品にアレルゲン不活化活性を付与する方法において、該繊維又は繊維製品に、タンニン酸と架橋剤とを付着させ、熱処理して結合させることを特徴とするアレルゲン不活化活性付与方法。
【請求項2】
前記タンニン酸として、加水分解型ガロタンニン、加水分解型エラジタンニン及び縮合型タンニンから選ばれた少なくとも1種を用いる請求項1記載のアレルゲン不活化活性付与方法。
【請求項3】
前記繊維又は繊維製品に対して、前記タンニン酸を0.1〜20質量%付着させる請求項1又は2記載のアレルゲン不活化活性付与方法。
【請求項4】
前記架橋剤としてポリカルボン酸を用いる請求項1〜3のいずれか一つに記載のアレルゲン不活化活性付与方法。
【請求項5】
アレルギー患者用の繊維製品に適用される請求項1〜4のいずれか一つに記載のアレルゲン不活化活性付与方法。
【請求項6】
布団側生地、布団カバー、毛布、タオルケット、寝衣、シーツ、枕、枕カバー、タオル、カーテンから選ばれた1種に適用される請求項1〜5のいずれか一つに記載のアレルゲン不活活性付与方法。
【請求項7】
セルロース質からなる繊維を含む繊維製品であって、前記繊維にタンニン酸が架橋剤によって固着されていることを特徴とするアレルギー患者用繊維製品。
【請求項8】
布団側生地、布団カバー、毛布、タオルケット、寝衣、シーツ、枕、枕カバー、タオル、カーテンから選ばれた1種である請求項7記載のアレルギー患者用繊維製品。

【公開番号】特開2007−107149(P2007−107149A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−301165(P2005−301165)
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年4月30日 日本アレルギー学会事務所発行の「アレルギー 第54巻3・4号 第17回日本アレルギー学会春季臨床大会号」に発表
【出願人】(000238234)シキボウ株式会社 (33)
【出願人】(505342449)ヤマセイ株式会社 (5)
【Fターム(参考)】