説明

アンカープレートの支持具

【課題】アンカープレートを型枠に支持する際の作業性を高めるとともに、使用可能な位置やアンカープレートの形状が制限されないアンカープレートの支持具を提供する。
【解決手段】型枠60の天板部62上に載置されるベース部3と、ベース部3の内側の端部から垂下し、型枠60の本体壁部61に掛止される内側掛止部4と、ベース部3の外側の端部から垂下し、型枠60の折返し部63と対向する外側支持片5と、外側支持片5の第一雌ネジ部に螺合され、先端が折返し部63に圧接する取付ボルト7と、ベース部3の一方の側方端部から立設された立設片8と、立設片8の上端から水平方向に延出し、ベース部3の上方に位置する上側支持片9と、上側支持片9に形成された第二雌ネジ部に螺合され、ベース部3及び上側支持片9の間に挿入されるアンカープレート51の上面に対し、先端が圧接する支持ボルト11とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンカープレートの支持具に関するものであり、特に、型枠を用いてコンクリート基礎を構築する際に、アンカーボルト保持用のアンカープレート(「アンカーボルト固定用プレート」ともいう)を、一対の型枠に架け渡した状態で支持するアンカープレートの支持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築構造物のコンクリート基礎には、構造部材を固定するためのアンカーボルトが埋め込まれている。このアンカーボルトは、コンクリートの打設前に任意の位置に位置決めされ保持される。アンカーボルトを保持する手段として、例えば図5(a)に示すボルト保持具50が知られている。このボルト保持具50は、対向して配置された一対の型枠60に架け渡して配置される板状のアンカープレート51と、アンカープレート51の中央部分から立設されアンカーボルトBを位置決め支持する位置決め部52と、位置決め部52に対向するとともにネジ孔(図示しない)が形成された支持壁部54と、ネジ孔に螺合され締付け操作によりアンカーボルトBを押圧固定する保持ボルト55とを備えて構成されている。なお、型枠60は、立設された本体壁部61と、本体壁部61の上端から水平方向外側に延出した天板部62と、天板部62の外縁から垂下した折返し部63とを備えて構成されており、本体壁部61同士が対向するように一対の型枠60を配置することにより、一対の型枠60の間にコンクリートCを流し込むための空間が形成されるようになっている。なお、図示していないが、本体壁部61の外側の面には、上下方向に延びる中桟が所定の間隔で配設されている。
【0003】
また、アンカープレート51を型枠60に支持する手段として、クランプ部材71及び支持ボルト72からなるプレート支持具70が知られている。クランプ部材71は、アンカープレート51の端部上面に掛止される掛止片74と、掛止片74の外側端部から垂下した垂設片75と、垂設片75の下端から内側水平方向に延出した下側支持片76と、からなる断面コ字形の金具であり、下側支持片76の略中央には、支持ボルト72が螺合されたネジ孔(図示しない)が形成されている。このプレート支持具70によれば、掛止片74をアンカープレート51の上面に掛止させた状態で、支持ボルト72を締付け操作することにより、アンカープレート51を型枠60に圧接させることができる。
【0004】
また、他のプレート支持具として、図5(b)に示すものも知られている(特許文献1参照)。このプレート支持具80は、型枠60の天板部62に沿う上面部82、及び上面部82の両側から垂下した側面部83を有する支持金具本体81と、一方の側面部83に設けられ型枠60に対して直交する方向からねじ込まれる蝶ボルト84と、上面部82に直立して設けられたピン85とを、備えて構成されている。このプレート支持具80によれば、蝶ボルト84の締付け操作によって支持金具本体81を型枠60に固定した後、アンカープレート51の取付孔56にピン85が挿入されるようにアンカープレート51を支持金具本体80の上面部82に載置することにより、アンカープレート51を位置決め支持することが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、図5(a)に示すプレート支持具70によれば、型枠60の折返し部63と干渉しないように、掛止片74をアンカープレート51の上面に掛止させながら、天板部62の下方にて支持ボルト72の締付け操作を行わなければならなかった。このため、支持ボルト72が見え難く、しかも狭い場所での作業となり、作業性が悪くなっていた。また、型枠60に対してプレート支持具70を着脱する際には、支持ボルト72の先端が、型枠60の折返し部63を跨ぐ必要があり、これによれば支持ボルト72における軸方向の変位量が、折返し部63の長さよりも長くなり、締付け操作及び取外し操作に多くの手間を要していた。
【0006】
さらに、本体壁部61の外側の面に中桟が所定の間隔で設けられている型枠60に対しては、下側支持片76及び支持ボルト72が、中桟と干渉しないように配置しなければならず、プレート支持具70の使用可能な位置が制限されていた。
【0007】
一方、図5(b)に示すプレート支持具80によれば、上面部82に設けられたピン85を、アンカープレート51の取付孔56に挿入させることから、アンカープレート51は取付孔56を有する特定の形状のものに限定され、市販されたアンカープレートや既存のアンカープレートを使用することができなった。また、アンカープレート51の配置は、ピン85によって決まるため、アンカープレート51を型枠60に対して直交する方向に変位させること、すなわち、アンカーボルトBの位置調節を行うことができなくなり、使い勝手が悪いものとなっていた。
【0008】
そこで、本発明は、上記の実状に鑑み、アンカープレートを型枠に支持する際の作業性を高めるとともに、使用可能な位置やアンカープレートの形状が制限されることのないアンカープレートの支持具を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のアンカープレートの支持具は、
「立設された本体壁部、該本体壁部の上端から水平方向外側に延出した天板部、及び該天板部の外縁から垂下した折返し部を備えて構成され、前記本体壁部同士が対向して配置される一対の型枠に対し、アンカープレートを架け渡した状態で支持するアンカープレートの支持具であって、
前記天板部上に載置される板状のベース部と、
該ベース部の内側の端部から垂下し、前記本体壁部に掛止される内側掛止部と、
前記ベース部の外側の端部から垂下し、前記折返し部と対向する外側支持片と、
該外側支持片を貫通して形成され、内面に第一雌ネジ部を有する第一ネジ孔と、
前記第一雌ネジ部に螺合され、先端が前記折返し部に圧接する取付ボルトと、
前記ベース部の一方の側方端部から立設された立設片と、
該立設片の上端から水平方向に延出し、前記ベース部の上方に位置する上側支持片と、
該上側支持片を貫通して形成され、内面に第二雌ネジ部を有する第二ネジ孔と、
前記第二雌ネジ部に螺合され、前記ベース部と前記上側支持片との間に挿入される前記アンカープレートの上面に対し先端が圧接する支持ボルトと
を備える」ことを特徴とするものである。
【0010】
ここで、「アンカープレート」は、一対の型枠に架け渡される板状の部材であり、市販されている各種のアンカープレートを用いることができる。なお、アンカーボルトを保持するための保持部材を長手方向の中央部分に一体的または別部材で設けたアンカープレートを用いることもできる。
【0011】
本発明のアンカープレートの支持具(以下、単に「支持具」と称する)によれば、板状のベース部が型枠の天板部上に載置されると、ベース部の内側の端部から垂下した内側掛止部が、型枠の本体壁部に掛止され、ベース部の外側の端部から垂下した外側支持片が型枠の折返し部と対向する。その後、外側支持片の第一雌ネジ部に螺合された取付ボルトが締付けられると、取付ボルトの先端が折返し部に圧接し、ベース部、内側掛止部、及び外側支持片が、型枠に対して固定される。なお、支持具は、それぞれの型枠に対して個々に装着される。
【0012】
一方、ベース部の上方には、上側支持片が設けられており、ベース部の一方の側方端部から立設された立設片を介して、ベース部及び上側支持片が一体的に形成されている。つまり、ベース部の上面には、立設片及び上側支持片からなる断面L字形の部材が設けられており、ベース部と上側支持片との間に、アンカープレートの端部側を挿入させることが可能となっている。なお、上記の隙間は、立設片の相対側(すなわちベース部の他方の側方端部側)が開放されているため、一対の型枠にそれぞれ固定された両方の支持具に対し、アンカープレートの両端部側を、開放側から差込むことが可能である。
【0013】
アンカープレートの両端部側が、それぞれ一対の支持具に差込まれた後、上側支持片の第二雌ネジ部に螺合された支持ボルトが締付けられると、支持ボルトの先端がアンカープレートの上面に圧接し、アンカープレートは、ベース部に対して固定される。つまり、一対の型枠に対してアンカープレートが支持された状態となる。
【0014】
なお、支持ボルトの締付けが緩められると、アンカープレートの圧接状態が解除され、アンカープレートを型枠に対して直交する方向に移動させることが可能になる。つまり、アンカーボルトの位置調節を容易に行わせることが可能になる。
【0015】
本発明のアンカープレートの支持具において、
「前記一対の型枠における前記天板部同士の高低差を相殺するスペーサーをさらに備え、
前記ベース部と前記上側支持片との間隔が、前記アンカープレートの厚みに、前記スペーサーの厚みを加えた大きさよりも広くなっている」構成としてもよい。
【0016】
ところで、一対の型枠を配置する際に、型枠の設置面が傾斜している場合、または設置面に凹凸がある場合には、一対の型枠における天板部の高さが互いに異なることがあり、これによれば、天板部に架け渡されたアンカープレートが傾斜した状態となり、ひいてはアンカーボルトが傾いた状態で支持されることになる。
【0017】
これに対し、本発明によれば、天板部同士の高低差に一致する大きさのスペーサーを選択し、そのスペーサーを、低い方の型枠に装着されたベース部とアンカープレートとの間に介装させることが可能になっている。これによれば、アンカープレートの一端側がスペーサーの厚みの分だけ持ち上げられ、アンカープレートを水平状態とすることができる。
【0018】
本発明のアンカープレートの支持具において、
「前記ベース部は、内側端部の中央部分から真直ぐ水平方向に延出した延出部を備え、
前記内側掛止部は、前記延出部における両方の側方端部から下方に折曲げられて形成された一対の折曲片からなる」ように構成してもよい。
【0019】
これによれば、ベース部には、内側端部の中央部分から水平方向に延出した延出部が形成されており、延出部の両側端部から下方に折曲げられて形成された一対の折曲片によって内側掛止部が構成されている。つまり、型枠の本体壁部に掛止される部分の形状が、一対の折曲片及び延出部によって断面コ字形となっている。したがって、取付ボルトを締付けた際に、折曲片に加わる力が分散され、一つ当たりの折曲片に加わる負荷を低減することができる。特に、それぞれの折曲片が折曲げられた方向は、折曲片に加わる力の方向に対して直交することから、折曲片の変形や破損を防止することができ、ひいてはベース部と折曲片との角度を直角に保ち、本体壁部に対して折曲片を確実に掛止させることが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
このように、本発明によれば、ベース部及び支持ボルトによって挟持することでアンカープレートを固定するため、様々な形状のアンカープレートに適応することが可能となり汎用性の高い支持具を提供することができる。また、取付ボルトは型枠の外側から締付けられ、支持ボルトは型枠の上側から締付けられるため、どちらも視認可能な比較的広い場所での作業となり、作業性を高めることができる。また、支持具は、型枠の折返し部を跨ぐことなく着脱されるため、取付ボルトにおける軸方向の変位量が少なくて済み、支持具の着脱に要する時間を短縮することができる。また、型枠の外側の面に中桟が設けられていても、支持具及び中桟は互いに干渉しないため、支持具を中桟の位置に拘わらず所望の位置に取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態のアンカープレートの支持具、及び支持具によって固定されたボルト保持具の構成を示す斜視図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】アンカープレートの支持具における取付部材の構成を示すものであり、(a)は斜め前方から見た斜視図、(b)は斜め後方から見た斜視図である。
【図4】アンカープレートの支持具における使用状態の一例を示す正面図である。
【図5】(a)は第一の従来技術を示す正面図であり、(b)は第二の従来技術を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態であるアンカープレートの支持具1(以下「支持具1」と称す)について説明する。図1及び図2に示すように、支持具1は、一対の型枠60に架け渡されたアンカープレート51を支持するものであり、金属製の板材を折曲げて形成された取付部材2と、蝶ネジからなる取付ボルト7及び支持ボルト11とを備えて構成されている。なお、アンカープレート51を有するボルト保持具50の構成は、特に限定されるものではなく、また本例で示すものは、従来技術として図5に示したものと同様であることから、ここではボルト保持具50に関する詳細な説明は省略する。
【0023】
取付部材2は、図2及び図3に示すように、型枠60の天板部62上に載置される平板状のベース部3と、ベース部3の内側の端部から垂下し本体壁部61の上部内面に掛止される内側掛止部4と、ベース部3の外側の端部から垂下し折返し部63と対向する外側支持片5と、ベース部3の一方の側方端部から立設された立設片8と、立設片8の上端から水平方向に延出しベース部3の上方に位置する上側支持片9とを備えて構成されている。外側支持片5の中央位置には、外側支持片5を貫通して形成され内面に第一雌ネジ部6aを有する第一ネジ孔6が設けられており、取付ボルト7を、型枠60の本体壁部61に対して直交する方向に螺合させることが可能になっている。また、上側支持片9における中央よりも先端寄りの部位には、上側支持片9を貫通して形成され内面に第二雌ネジ部10aを有する第二ネジ孔10が設けられており、支持ボルト11を、本体壁部61と平行な方向に螺合させることが可能になっている。
【0024】
また、ベース部3は、内側端部の中央部分から真直ぐ水平方向に延出した延出部3aを備えており、延出部3aにおける両方の側方端部には、内側掛止部4として、一対の折曲片4aが下方に折曲げ形成されている。つまり、ベース部3の内側先端部分では、延出部3aを残して幅方向に切断され、その後、延出部3aの両側を下方に折曲げることにより、一対の折曲片4aが形成されており、それぞれの折曲片4aにおける内側の端面を本体壁部61に当接させることが可能になっている。
【0025】
また、本例の支持具1は、図4に示すように、スペーサー12を備えており、左右一対の型枠60における天板部62同士の高さが互いに異なる場合に使用されるようになっている。このスペーサー12としては、天板部62同士の高低差を相殺するために複数のサイズのものが用意されており、それらの中から高低差に一致する厚みのスペーサー12が選択され使用されるようになっている。なお、スペーサー12の使用方法については後述する。
【0026】
次に、図1及び図2を基に、支持具1の使用方法について説明する。まず、一対の型枠60に対して取付部材2をそれぞれ取付ける。具体的には、内側掛止部4が型枠60の内側を向くように、板状のベース部3を型枠60の天板部62上に載置する。すると、ベース部3の内側の端部から垂下した内側掛止部4が型枠60の本体壁部61に掛止され、ベース部3の外側の端部から垂下した外側支持片5が型枠60の折返し部63に対向した状態となる。その後、外側支持片5の第一雌ネジ部6a(図3参照)に螺合された取付ボルト7を締付ける。すると、取付ボルト7の先端が折返し部63に圧接し、取付部材2が、型枠60に対して固定される。
【0027】
続いて、それぞれの型枠60に固定された左右一対の取付部材2に対し、アンカープレート51の端部側を支持する。具体的には、取付部材2におけるベース部3と上側支持片9との間にアンカープレート51を挿入する。なお、ベース部3及び上側支持片9は立設片8を介して接続されているが、立設片8は上側支持片9の一端側にのみ接続され、立設片8の相対側が開放されているため、アンカープレート51の端部側を、開放側から差込むことが可能である。
【0028】
ところで、本例では、左右の取付部材2を共通の部材で構成しているため、左側の型枠60に取付けられた取付部材2と、右側の型枠60に取付けられた取付部材2とでは、開放される側が逆向きとなる。そこで、アンカープレート51を挿入する際は、図1の二点鎖線に示す状態、すなわち一対の型枠60に対して斜めにした状態から、実線に示す状態、すなわち一対の型枠60に対して直交する状態、に変位させることにより、ベース部3と上側支持片9との間に差込む。
【0029】
アンカープレート51の両端部側が、それぞれ一対の取付部材2に差込まれた後、上側支持片9の第二雌ネジ部10a(図3参照)に螺合された支持ボルト11を締付ける。すると、支持ボルト11の先端がアンカープレート51の上面に圧接し、アンカープレート51は、取付部材2に対して固定される。つまり、一対の型枠60に対してアンカープレート51の両端側が支持された状態となる。
【0030】
なお、アンカープレート51における長手方向の中央位置の上面には、前述したように、位置決め部52及び支持壁部54が設けられており、支持壁部54のネジ孔(図示しない)に螺合された保持ボルト55を締付けることにより、アンカーボルトBの周面を押圧固定することが可能である。特に、位置決め部52はアンカーボルトBの周面を上下二点で支持し、保持ボルト55は、位置決め部52によって支持された上下二点の略中央にて反対側から押圧するため、簡単な構成でありながらもアンカーボルトBを安定した状態で支持することができるとともに、アンカーボルトBの高さを容易に調節することも可能である。なお、アンカーボルトBは、アンカープレート51を取付部材2に固定する前に取付けてもよく、アンカープレート51を取付部材2に固定した後に取付けてもよい。
【0031】
また、図4に示すように、左右一対の型枠60における天板部62の高さが互いに異なった場合には、スペーサー12を使用する。具体的には、互いに厚みの異なる複数のサイズのスペーサー12の中から、天板部62同士の高低差に一致するサイズのスペーサー12を選択し、そのスペーサー12を、低い方の型枠60(図4では右側の型枠60)に装着された取付部材2のベース部3とアンカープレート51との間に介装させる。これによれば、アンカープレート51の一端側(右端)がスペーサー12の厚みの分だけ持ち上げられ、アンカープレート51を水平状態とすることができる。なお、ベース部3と上側支持片9との間隔は、アンカープレート51の厚みに、最も大きなサイズのスペーサー12を加えた大きさよりも広くなっているため、いずれのサイズのスペーサー12を用いた場合でも、支持ボルト11の締付けにより、スペーサー12及びアンカープレート51を挟持することが可能である。
【0032】
このように、本例の支持具1によれば、ベース部3及び支持ボルト11によって挟持することでアンカープレート51を固定するため、アンカープレート51の大きさ及び形状が特定されることがなく、例えば市販されているアンカープレートや既存のアンカープレートに対して本例の支持具1を用いることができる。また、取付ボルト7は型枠60の外側から締付けられ、支持ボルト11は型枠60の上側から締付けられるため、どちらも視認可能な比較的広い場所での作業となり、作業性を高めることができる。
【0033】
また、取付部材2は、型枠60の折返し部63を跨ぐことなく着脱されるため、取付ボルト7における軸方向の変位量(螺進操作量)が少なくて済み、支持具1の着脱に要する時間を短縮することができる。また、型枠60の外側の面に中桟(図示しない)が設けられていても、支持具1と中桟とは干渉しないため、支持具1を中桟の位置に拘わらず所望の位置に取付けることができる。
【0034】
また、支持ボルト11の締付けを緩めることにより、アンカープレート51の圧接状態が解除され、アンカープレート51を型枠60と直交する水平方向に移動させることが可能になる。特に、支持ボルト11を緩めてもアンカーボルトBは、上下方向及び型枠60と平行な水平方向へは変位しないことから、型枠60と直交する水平方向の位置調節のみを確実に行わせることができる。換言すれば、アンカーボルトBを型枠60と直交する水平方向に移動させる際の操作部分(すなわち支持ボルト11)と、アンカーボルトBを型枠60と平行な水平方向に移動させる際の操作部分(すなわち取付ボルト7)と、アンカーボルトBを上下方向に移動させる際の操作部分(すなわち保持ボルト55)とがそれぞれ別々に設けられているため、アンカーボルトBの位置調節が極めて容易となる。
【0035】
さらに、取付部材2における内側掛止部4の形状が、一対の折曲片4a及び延出部3aによって断面コ字形となっているため、取付ボルト7を締付けた際に、折曲片4aに加わる力が分散され、一つ当たりの折曲片4aに加わる負荷を低減することができる。特に、それぞれの折曲片4aが折曲げられた方向は、折曲片4aに加わる力の方向に対して直交することから、折曲片4aの変形や破損を防止することができ、ひいてはベース部3と折曲片4aとの角度を直角に保ち、本体壁部61に対して折曲片4aの端部を確実に掛止させることができる。
【0036】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0037】
すなわち、上記実施形態では、左右一対の型枠60に取付けられる取付部材2を共通の部材で構成するものを示したが、図4に示すように、左側の型枠60に取付けられた取付部材2と、右側の型枠60に取付けられた取付部材2とを、対称の形状になるように別部材で構成してもよい。これによれば、ベース部3と上側支持片9との間において、開放された側が同一の方向を向くため、アンカープレート51を開放された側から真直ぐ水平方向に挿入させることが可能になる。
【0038】
また、上記実施形態では、内側掛止部4、外側支持片5、及び立設片8を、ベース部3と一体に形成するものを示したが、それぞれ別部材で構成しベース部3に組付けるようにしてもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、取付ボルト7及び支持ボルト11として、作業者の手によって締付け操作可能な蝶ボルトを示したが、工具を用いて締付け操作される通常のボルトを用いてもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、左右一対の型枠60における天板部62の高さが互いに異なった場合、ベース部3とアンカープレート51との間に、選択された一枚のスペーサー12を介装させるものを示したが、天板部62同士の高低差に一致する大きさとなるように複数枚のスペーサー12を重ねて介装させるようにしてもよい。
【0041】
さらに、上記実施形態では、第一雌ネジ部6a及び第二雌ネジ部10aを、外側支持片5及び上側支持片9に直接形成した第一ネジ孔6及び第二ネジ孔10から構成するものを示したが、外側支持片5及び上側支持片9に貫通孔を形成するとともに、その貫通孔と連通するように外側支持片5及び上側支持片9の表面にナットを設けるようにしてもよい。これによれば、外側支持片5及び上側支持片9の板厚が比較的薄い場合でも、十分な長さの第一雌ネジ部及び第二雌ネジ部を備えることができ、締付けの際の強度を一層高めることが可能になる。
【符号の説明】
【0042】
1 支持具
3 ベース部
3a 延出部
4 内側掛止部
4a 折曲片
5 外側支持片
6 第一ネジ孔
6a 第一雌ネジ部
7 取付ボルト
8 立設片
9 上側支持片
10 第二ネジ孔
10a 第二雌ネジ部
11 支持ボルト
12 スペーサー
51 アンカープレート
60 型枠
61 本体壁部
62 天板部
63 折返し部
B アンカーボルト
【先行技術文献】
【特許文献】
【0043】
【特許文献1】特開平09−25635号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立設された本体壁部、該本体壁部の上端から水平方向外側に延出した天板部、及び該天板部の外縁から垂下した折返し部を備えて構成され、前記本体壁部同士が対向して配置される一対の型枠に対し、アンカープレートを架け渡した状態で支持するアンカープレートの支持具であって、
前記天板部上に載置される板状のベース部と、
該ベース部の内側の端部から垂下し、前記本体壁部に掛止される内側掛止部と、
前記ベース部の外側の端部から垂下し、前記折返し部と対向する外側支持片と、
該外側支持片を貫通して形成され、内面に第一雌ネジ部を有する第一ネジ孔と、
前記第一雌ネジ部に螺合され、先端が前記折返し部に圧接する取付ボルトと、
前記ベース部の一方の側方端部から立設された立設片と、
該立設片の上端から水平方向に延出し、前記ベース部の上方に位置する上側支持片と、
該上側支持片を貫通して形成され、内面に第二雌ネジ部を有する第二ネジ孔と、
前記第二雌ネジ部に螺合され、前記ベース部と前記上側支持片との間に挿入される前記アンカープレートの上面に対し先端が圧接する支持ボルトと
を備えることを特徴とするアンカープレートの支持具。
【請求項2】
前記一対の型枠における前記天板部同士の高低差を相殺するスペーサーをさらに備え、
前記ベース部と前記上側支持片との間隔が、前記アンカープレートの厚みに、前記スペーサーの厚みを加えた大きさよりも広くなっている
ことを特徴とする請求項1に記載のアンカープレートの支持具。
【請求項3】
前記ベース部は、内側端部の中央部分から真直ぐ水平方向に延出した延出部を備え、
前記内側掛止部は、前記延出部における両方の側方端部から下方に折曲げられて形成された一対の折曲片からなる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアンカープレートの支持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−236665(P2011−236665A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109865(P2010−109865)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(310011620)
【Fターム(参考)】