説明

アンテナのインピーダンス整合方法及び装置

【課題】 本発明は、アンテナのインピーダンス整合方法及び装置を提供し、アンテナ装置のインピーダンス整合部材としての寄生素子は構造が簡単で、製造コストが安価で、アンテナのインピーダンス整合方法が簡単になる。
【解決手段】 本発明のアンテナ装置は、放射素子と、金属板からなるアース部材と、インピーダンス整合ための寄生素子とを含む。前記寄生素子は、前記アース部材に架設され、その両端が前記アース部材にそれぞれ接続する。インピーダンス整合としての寄生素子は金属片からなり、構造が簡単で、製造加工が簡単になる。また、前記寄生素子の位置及び寸法を調節することにより、インピーダンス整合を実現し、インピーダンス整合方法が簡単になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナのインピーダンス整合方法及び装置、特に寄生素子を有するアンテナと、寄生素子によりインピーダンス整合を実現する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、無線LAN(WLAN;Wireless Local Area Networks)は、無線通信装置を利用して、デジタルデータを無線で送受信するのに用いられる。このような無線LANシステムには、周波数帯域に対して動作するアンテナが無線通信装置用として必要とされる。
【0003】
従来、通信装置において、反射による損失を小さくするために、アンテナ装置と受信回路または送信回路との間に、アンテナ装置と受信回路または送信回路とのインピーダンス整合回路を挿入することが行われている。通常、業界では、給電ケーブルの給電点を調節することや、キャパシタンスを利用すること等の手段で、インピーダンス整合を実現する。
【0004】
特許文献1に示すように、インピーダンス整合部材が装着されるマイクロストリップ(Microstrip)型アンテナ装置が開示され、前記インピーダンス整合部材は、放射素子とアース部材との間の絶縁誘電板内に位置する金属帯である。アンテナ装置は、他のパラメーター(例えば、放射素子の寸法と、アンテナ装置の高さと、誘電率等)が確定される場合に、前記インピーダンス整合部材を調節することにより、アンテナ装置の入力インピーダンスを整合する。
【特許文献1】米国特許出願公開第6346913号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記インピーダンス整合部材は、アンテナ装置の内部に配置されることで、製造加工が複雑になり、アンテナ装置の製造コストが増加してしまう。
【0006】
本発明は、アンテナのインピーダンス整合方法及び装置を提供し、アンテナ装置のインピーダンス整合部材としての寄生素子は構造が簡単で、製造コストが安価で、アンテナのインピーダンス整合方法が簡単になる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明のアンテナ装置は、放射素子と、金属板からなるアース部材と、インピーダンス整合ための寄生素子とを含む。前記寄生素子は、前記アース部材に架設され、その両端が前記アース部材にそれぞれ接続される。
【0008】
また、前記目的を達成するために、本発明のアンテナのインピーダンス整合方法は、アンテナの誘電板には、金属板からなるアース部材が配置される第1段階と、前記アース部材には、橋の形状を呈する寄生素子が架設される第2段階と、前記寄生素子の位置または寸法を調節する第3段階とを含む。
【発明の効果】
【0009】
従来の技術に比べると、本発明は以下の利点がある。アンテナ装置のインピーダンス整合としての寄生素子は金属片からなり、構造が簡単で、製造加工が簡単になる。また、前記寄生素子の位置及び寸法を調節することにより、インピーダンス整合を実現し、インピーダンス整合方法が簡単になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1に示すように、本発明の実施形態に係るアンテナ装置はモノポール(Monopole)型アンテナであり、全方向性放射特性を有し、無線アクセス点とノートパソコンの外接アンテナとしてもよい。該アンテナ装置は、放射素子1と、放射素子1の下方に位置する金属板即ちアース部材2、前記アース部材2に架設される寄生素子(Parasitic Element)3と、アンテナ装置に給電を行う給電ケーブル4と、を含む。前記アース部材2の上方には、誘電板10が配置され、該誘電板10の面積は、前記アース部材2の金属板より小さい。前記放射素子1は、誘電板10の表面に配置される金属片からなる。
【0011】
前記寄生素子3は、橋の形状を呈し、前記誘電板10に直交して配置され、末端部(参照記号なし)が前記アース部材2に接続される。前記寄生素子3は、細長い金属片からなり、第1アーム31と、第2アーム32と、第3アーム33とを含み、前記第1アーム31及び第2アーム32はアース部材2に直交して半田付けされ、前記第3アーム33は、前記第1アーム31及び第2アーム32に架設し連接している。前記寄生素子3は、第1アーム31及び第2アーム32がアース部材2に直交して半田付けされることで、アース部材2の表面に半田点(参照記号なし)がそれぞれ生じて、前記両半田点から放射素子1までの距離は、ほぼ等しい。
【0012】
前記寄生素子3を通じてアンテナ装置の入力インピーダンスを調節し、アンテナ装置の入力インピーダンスを給電ケーブル4の特性インピーダンスに整合させる。以下、具体的に説明すると、前記寄生素子3は、前記アース部材2に配置される位置と、寄生素子3の寸法とを変更することにより、アンテナ装置の入力インピーダンスを調整することを実現する。
【0013】
例えば、前記寄生素子3が前記アンテナ装置に接近すれば、アンテナ装置の入力インピーダンスに対する影響が強くなり、または、寄生素子3の金属片の幅が広ければ広いほど、アンテナ装置の入力インピーダンスに対する影響が著しい。逆に、前記寄生素子3が前記アンテナ装置から遠離すれば、アンテナ装置の入力インピーダンスに対する影響が弱くなり、または、寄生素子3の金属片の幅が狭ければ狭いほど、アンテナ装置の入力インピーダンスに対する影響が著しくない。また、アンテナ装置の入力インピーダンスに電容(Capacitive)特性が現れる時に、前記寄生素子3の第3アームの長さを減少することにより、アンテナ装置の入力インピーダンスを調整し、アンテナ装置の入力インピーダンスに感応(Inductive)特性が現れる時に、前記寄生素子3の第3アーム33の長さを増加することにより、アンテナ装置の入力インピーダンスを調整する。その他、一つの寄生素子3だけでインピーダンス整合が悪化する場合に、寄生素子3の数量を増加することにより、インピーダンス整合を良好にする。
【0014】
図2を参照すると、アンテナ装置の放射素子1の正面の拡大図である。該放射素子1は、第1放射部11と、第2放射部12と、信号進給部13とを有する。前記第1放射部11と第2放射部12の長さは、アンテナ装置の使用する周波数帯域によって決め、一般に、使用波長λの4分の1の長さとほぼ等しい長さに設定される。前記第1放射部11は高周波に応対し、第2放射部12は低周波に応対し、5.2GHz周波帯と2.4GHz周波帯のヘルツ波をそれぞれ受信或は送信している。第1放射部11と、第2放射部12と、信号進給部13とは、エッチング技術或はプリント技術により誘電板10の表面に形成される。
【0015】
図3を参照すると、前記放射素子1の背面の拡大図である。誘電板10の背面に、放射効果を有する板金14、15、16が配置され、これらの板金と前記第1放射部11と第2放射部12とは、給電ケーブル4のエネルギーをカップリングすることで、アンテナ装置の受信感度(Gain)が格段に向上する。
【0016】
本実施状態で、アンテナ装置に給電を行う給電ケーブル4は、同軸ケーブルであり、アース部材2の底壁(参照記号なし)からアース部材2を貫通し、その芯線41が前記信号進給部13に半田付けされ、前記第1放射部11と第2放射部12に送信信号を伝送している。給電ケーブル4の外部導体はアース部材2の底壁に接続している。
【0017】
図4を参照すると、アンテナ装置の電圧定在波比VSWR(VSWR;Voltage Standing Wave Ratio)を測定した結果を示すグラフであり、その中で、横軸がアンテナ装置の動作する周波数帯であり、垂直軸が電圧定在波比値である。業界の規則により、電圧定在波比値が2より小さくなる際の周波数帯が有効な動作周波数帯である。図4から見ると、アンテナ装置の有効な動作周波数は、ほぼ2.25〜2.7GHz周波帯域と、4.3〜6GHz周波帯域であり、即ち、アンテナ装置の周波数帯域が広がり、良好なインピーダンス整合である。
【0018】
特に、アンテナ装置は、2.4〜2.5GHz周波帯域と5〜6GHz周波帯域で動作する時に、VSWRの数値はほぼ1.5より小さくなり、アンテナ装置はIEEE802.11a/b/g周波数(注釈:無線システムは、使用周波数に関する国際標準に基づき、使用周波数が2.4GHzで代表されるIEEE802.11bシステムと、使用周波数が5GHzで代表されるIEEE802.11aシステム及びIEEE802.11gシステムに分類されている。)に良好な数値を有する。同時に、アンテナ装置の受信感度が格段に向上し、例えば、2.412GHz周波帯で受信感度の数値は6.42dBiであり、5.25GHz周波帯で受信感度の数値は6.12dBiである。
【0019】
取付けた時に、まず、アンテナの誘電板10には、アース部材2が配置され、次に、前記アース部材2には、前記インピーダンス整合ための寄生素子3が架設される。最後に、前記寄生素子3の位置及び寸法を調節することにより、アンテナ装置の入力インピーダンスを給電ケーブル4の特性インピーダンスに整合させる。
【0020】
総じて、本発明は、上記記載及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、たとえば、次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々変更して実施することができる。例えば、前記寄生素子3は、アーク形状(図5に示す)や逆V字形状(図6に示す)等を呈してもよい。また、アンテナ装置は、モノポール型アンテナに限らず、逆F型アンテナ、ダイポール型アンテナ、マイクロストリップ型アンテナ等でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係るアンテナ装置の斜視図である。
【図2】図1に示すアンテナ装置の放射素子の正面の拡大図である。
【図3】図1に示すアンテナ装置の放射素子の背面の拡大図である。
【図4】図1に示すアンテナ装置の電圧定在波比VSWRを測定した結果を示すグラフである。
【図5】本発明の他の実施形態に係るアンテナ装置の斜視図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係るアンテナ装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
1 放射素子
2 アース部材
3 寄生素子
4 給電ケーブル
10 誘電板
11 第1放射部
12 第2放射
13 信号進給部
14、15、16 板金
31 第1アーム
32 第2アーム
33 第3アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射素子と、金属板からなるアース部材と、インピーダンス整合ための寄生素子とを含むアンテナ装置において、
前記寄生素子は、前記アース部材に架設され、その両端が前記アース部材にそれぞれ接続されることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記寄生素子は、橋の形状を呈する金属片からなることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記寄生素子は、第1アームと、第2アームと、第3アームとを含み、前記第1アームと第2アームとは前記アース部材にそれぞれ直交して接続し、前記第3アームは、前記第1アームと第2アームに架設していることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記アンテナ装置は、前記寄生素子の形状と同じ他の寄生素子を含むことを特徴とする請求項2または3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記寄生素子は、前記放射素子に架設され、その両端が前記アース部材にそれぞれ半田付けされることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記アース部材には、誘電板が配置され、前記放射素子は、前記誘電板に形成されることを特徴とする請求項5に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記放射素子は、前記誘電板にそれぞれ形成される第1放射部と第2放射部とを含み、前記誘電板の背面に板金が配置されることを特徴とする請求項6に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
アンテナの誘電板には、金属板からなるアース部材が配置される第1段階と、
前記アース部材には、橋の形状を呈する寄生素子が架設される第2段階と、
前記寄生素子の位置または寸法を調節する第3段階と
を含むことを特徴とするアンテナのインピーダンス整合方法。
【請求項9】
前記寄生素子は、コ字形状または、アーク形状または、逆V字形状を呈することを特徴とする請求項8に記載のアンテナのインピーダンス整合方法。
【請求項10】
前記寄生素子の位置する面と、アース部材と、放射素子の位置する面とは、互いに直交していることを特徴とする請求項8或は9に記載のアンテナのインピーダンス整合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−148873(P2006−148873A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−282842(P2005−282842)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】