アンテナユニット、灯器、交通信号灯器及び交通信号制御機
【課題】パッチ素子と発光体との重なりによる視認性の低下を抑制することができる灯器を提供する。
【解決手段】所定のパターンで配置された複数の発光体7と、可視光透過性を有し当該複数の発光体7を前方で覆うカバー部材9とを有する光学ユニット2と、前記カバー部材9から前記発光体7の前端までの範囲に設けられているパッチ素子11と、このパッチ素子11の後方にあるグランド素子12とを有するアンテナ4とを備えた灯器1。前記パッチ素子11は、可視光透過用の開口22を有するメッシュ体からなっている。メッシュ体を構成する格子のパターンと、前記複数の発光体7の配置パターンとが異なっている。
【解決手段】所定のパターンで配置された複数の発光体7と、可視光透過性を有し当該複数の発光体7を前方で覆うカバー部材9とを有する光学ユニット2と、前記カバー部材9から前記発光体7の前端までの範囲に設けられているパッチ素子11と、このパッチ素子11の後方にあるグランド素子12とを有するアンテナ4とを備えた灯器1。前記パッチ素子11は、可視光透過用の開口22を有するメッシュ体からなっている。メッシュ体を構成する格子のパターンと、前記複数の発光体7の配置パターンとが異なっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は灯器に関するものであり、特に道路に設置される交通信号灯器、交通信号制御機、及び、この灯器に設けられるアンテナユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通安全の促進や交通事故の防止を目的として、高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport System)が提案されている。このITSでは、道路に通信装置(インフラ装置)が設置されており、この通信装置のアンテナから発せられた情報を、道路を走行する車両の車載機が受信し、この情報を活用することにより、車両の走行についての安全性を向上させることができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような路車間通信を無線によって行なう場合、無線通信の見通しを確保する観点から、歩道等に設置した支柱から車道側にアームを張り出し、このアーム上に通信装置のアンテナを取り付けている。また、前記アームを設けなくても見通しが確保できる場合、前記支柱にアンテナを取り付けることが可能となる。
【0004】
前記通信装置のアンテナを道路に設置するためにアンテナ専用の支柱を新たに設けることは経済的でなく、また、道路の美観の点でも好ましくないことから、本出願人は、さきに、光学ユニットにアンテナを組み込んだ交通信号灯器を提案している(特願2007−186019)。
【0005】
この交通信号灯器は、発光体と、可視光透過性を有し前記発光体を前方で覆うカバー部材とを有する光学ユニット、及び、前記カバー部材から前記発光体の前端までの範囲に設けられているパッチ素子と、このパッチ素子の後方にあるグランド素子とを有するアンテナとを備えており、前記パッチ素子は可視光透過性を有している。かかる交通信号灯器では、アンテナが交通信号灯器の光学ユニットに組み込まれるため、アンテナ設置用の支柱を不要とでき、かつ、道路の美観を損なうことがない。さらに、パッチ素子は可視光透過性を有しているので、アンテナを光学ユニットに組み込んでも、発光体による発光の妨げとなることを防止することができる。
【0006】
【特許文献1】特許第2806801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記パッチ素子として、例えば導線をメッシュ状に編んだものを用いることができるが、この場合、メッシュのパターンによっては、当該メッシュを構成する導線により、或る方向角度において背後にある発光体の多くが一斉に隠れてしまい、灯器の視認性が低下することがある。
【0008】
すなわち、交通信号灯器における発光体は、通常、発光ダイオードからなっており、灯器の輝度均斉度をよくするために、複数の発光ダイオードが同心円状の放射パターンに配置されている。これに対し、パッチ素子のメッシュも同じ同心円状の放射パターンにすると、或る方向角度で両パターンが部分的に重複し、多くの発光ダイオードが一斉にパッチ素子の背後に隠れてしまい、その結果、交通信号灯器の視認性が低下してしまう。
【0009】
本発明は、このようなパッチ素子と発光体との重なりによる視認性の低下を抑制することができるアンテナユニット、灯器、交通信号灯器及び交通信号制御機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の灯器は、所定のパターンで配置された複数の発光体と、可視光透過性を有し当該複数の発光体を前方で覆うカバー部材とを有する光学ユニットと、
前記カバー部材から前記発光体の前端までの範囲に設けられているパッチ素子と、このパッチ素子の後方にあるグランド素子とを有するアンテナと、
を備えており、
前記パッチ素子は、可視光透過用の開口を有するメッシュ体からなっており、このメッシュ体を構成する格子のパターンと、前記複数の発光体の配置パターンとが異なることを特徴としている。
【0011】
本発明の灯器では、パッチ素子のメッシュ体を構成する格子のパターンと、複数の発光体の配置パターンとが異なっているので、或る方向角度において、両パターンが部分的に重なって発光体の多くが一斉にメッシュ体を構成する格子の背後に隠れてしまうことがない。したがって、或る方向角度に灯器の視認性が急に低下してしまうのを防ぐことができる。
【0012】
前記複数の発光体の配置パターンが同心円状である場合に、前記メッシュ体の格子を、縦格子と、この縦格子と直交する横格子とからなるものとすることができる。この構成によれば、円筒座標系の配列となっている発光体の配置パターンと、X−Y座標系であるメッシュ体の格子のパターンとが異なるので、或る方向角度において、両パターンが部分的に重なって発光体の多くが一斉にメッシュ体を構成する格子の背後に隠れてしまうことがない。したがって、或る方向角度に灯器の視認性が急に低下してしまうのを防ぐことができる。
【0013】
前記複数の発光体の配置パターンが同心円状である場合に、前記メッシュ体の格子を、前記発光体の同心円状の配置パターンの中心と同心である複数の円形格子と、隣接する円形格子間を接続するラジアル格子とからなるものとし、且つ、前記複数の発光体の半径方向のピッチと、前記複数の円形格子の半径方向のピッチとを異なる大きさにすることができる。この場合、複数の発光体の半径方向のピッチと、前記複数の円形格子の半径方向のピッチとを異なる大きさにしているので、円形格子とその両側(外側及び内側)に位置する発光体との間隔は半径方向に沿って少しずつずれて、円形格子の配置パターンと発光体の配置パターンとは異なるものとなる。このため、或る方向角度において、両パターンが部分的に重なって発光体の多くが一斉にメッシュ体を構成する格子の背後に隠れてしまうことがない。したがって、或る方向角度に灯器の視認性が急に低下してしまうのを防ぐことができる。
前記複数の発光体の配置パターンが同心円状である場合に、前記メッシュ体の格子を、前記発光体の同心円状の配置パターンの中心と同心である複数の円形格子と、隣接する円形格子間を接続するラジアル格子とからなるものとし、且つ、前記複数の発光体の半径方向のピッチを略均一にするのに対して、前記複数の円形格子の半径方向のピッチを不均一にすることができる。この場合、複数の発光体の半径方向のピッチを略均一にするとともに、前記複数の円形格子の半径方向のピッチを不均一にしているので、円形格子とその両側(外側及び内側)に位置する発光体との間隔を半径方向に沿って異ならせることができ、円形格子の配置パターンと発光体の配置パターンとは異なるものとなる。このため、或る方向角度において、両パターンが部分的に重なって発光体の多くが一斉にメッシュ体を構成する格子の背後に隠れてしまうことがない。したがって、或る方向角度に灯器の視認性が急に低下してしまうのを防ぐことができる。
【0014】
本発明の第1の観点に係る交通信号灯器は、所定のパターンで配置された複数の発光体と、可視光透過性を有し当該複数の発光体を前方で覆うカバー部材とを有する光学ユニットと、
前記カバー部材から前記発光体の前端までの範囲に設けられているパッチ素子と、このパッチ素子の後方にあるグランド素子とを有するアンテナと、
を備えており、
前記パッチ素子は、可視光透過用の開口を有するメッシュ体からなっており、このメッシュ体を構成する格子のパターンと、前記複数の発光体の配置パターンとが異なることを特徴としている。
【0015】
本発明の第1の観点に係る交通信号灯器では、パッチ素子のメッシュ体を構成する格子のパターンと、複数の発光体の配置パターンとが異なっているので、或る方向角度において、両パターンが部分的に重なって発光体の多くが一斉にメッシュ体を構成する格子の背後に隠れてしまうことがない。したがって、或る方向角度に灯器の視認性が急に低下してしまうのを防ぐことができる。
【0016】
また、本発明の第2の観点に係る交通信号灯器は、所定のパターンで配置された複数の発光体と、可視光透過性を有し当該複数の発光体を前方で覆うカバー部材とを有する光学ユニットと、
前記カバー部材から前記発光体の前端までの範囲に設けられているパッチ素子と、このパッチ素子の後方にあるグランド素子とを有するアンテナと、
を備えており、
前記パッチ素子は、可視光透過用の開口を有するメッシュ体からなる交通信号灯器であって、
当該交通信号灯器を仰角0〜45°の範囲で見上げた場合における、前記メッシュ体を構成する格子と重なる前記複数の発光体の発光部の割合が、全発光部の数の30%以下となるように、当該メッシュ体のパターンが設定されていることを特徴としている。
【0017】
本発明の第2の観点に係る交通信号灯器では、当該交通信号灯器を仰角0〜45°の範囲で見上げた場合における、前記メッシュ体を構成する格子と重なる前記複数の発光体の発光部の割合が、全発光部の数の30%以下となるように、当該メッシュ体のパターンが設定されていることから、前記格子と発光部の重なりにより視認性が大幅に低下することがない。
【0018】
本発明の灯器用のアンテナユニットは、所定のパターンで配置された複数の発光体と、可視光透過性を有し前記発光体を前方で覆うカバー部材とを有する光学ユニットに組み込まれる灯器用のアンテナユニットであって、
前記カバー部材から前記発光体の前端までの範囲に設けられるパッチ素子と、このパッチ素子の後方に設けられるグランド素子とを有しており、
前記パッチ素子は、可視光透過用の開口を有するメッシュ体からなっており、このメッシュ体を構成する格子のパターンと、前記複数の発光体の配置パターンとが異なることを特徴としている。
【0019】
本発明のアンテナユニットでは、パッチ素子のメッシュ体を構成する格子のパターンと、当該アンテナユニットが組み込まれる光学ユニットの複数の発光体の配置パターンとが異なっているので、或る方向角度において、両パターンが部分的に重なって発光体の多くが一斉にメッシュ体を構成する格子の背後に隠れてしまうことがない。したがって、或る方向角度に灯器の視認性が急に低下してしまうのを防ぐことができる。
【0020】
本発明の交通信号制御機は、前記交通信号灯器に接続され、当該交通信号灯器の点灯及び消灯を行う交通信号制御機であって、
前記アンテナを介して、前記交通信号灯器の設置された道路上を走行する車両に対して、現在及び将来の前記交通信号灯器の表示に関する信号情報を送信するように構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明のアンテナユニット、灯器、交通信号灯器及び交通信号制御機によれば、パッチ素子と発光体との重なりによる視認性の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る灯器の正面図である。図1に示される灯器は道路に設置される交通信号灯器1(以下、単に「信号灯器」ともいう)であり、車両用のものである。
【0023】
歩道等の路側に支柱40が設置され、この支柱40から車道側にアーム41が張り出されて設けられており、このアーム41に信号灯器1が取り付けられている。なお、図1において、15は後述するアンテナ用の同軸ケーブルである。
【0024】
信号灯器1は、複数(図1に示される例では三つ)の光学ユニット2と、これら光学ユニット2が組み込まれている筐体3とを有している。三つの光学ユニット2は、それぞれ赤、黄、青の灯光色を有している。各光学ユニット2にはひさし(図示せず)が取り付けられる。
【0025】
また、支柱40には、信号灯器1を制御する制御装置5が取り付けられている。なお、信号灯器1の設置構造は図示しているもの以外であってもよく、図示しないが前記支柱40及び前記アーム41の形態が異なっていてもよく、また、信号灯器1が歩道橋に架設されたものであってもよい。また、制御装置5は、信号灯器1の筐体3内に設けられたものであってもよい。
【0026】
なお、信号灯器1の点灯等を制御する制御装置5が、後述するアンテナ4を介した無線通信制御を行うように構成することができるが(又は無線通信制御を行う装置を同一筐体内に内蔵させることができるが)、別々の装置としても良い。別々とする場合、前記無線通信制御を行う装置は、信号灯器1の点灯等を制御する制御装置の近傍(同一の支柱40)に設置することが好ましい。
【0027】
図2は、一つの光学ユニット2の断面説明図である。光学ユニット2は、発光体としての発光ダイオード7(以下、「LED」ともいう)と、複数のLED7が前面8aに実装された基板8と、この基板8を収容する収容部材6と、カバー部材9とを有している。基板8は、その裏面に配線パターンが形成されており、LED7の端子37は、当該配線パターンと繋がっている。基板8上には複数のLED7が面状に広がって配設されている。より詳細には、複数のLED7は同心円状の放射パターンを形成するように配設されており、隣接する同心円間の径方向寸法は略均一である(図3参照)。
【0028】
LED7はレンズ部38を有しており、このレンズ部38内に、実際に発光する部位であるLED素子ないしは発光部(図示せず)が設けられている。
【0029】
収容部材6は、底部(底壁)6aと、この底部6aの周縁から立設した側部(側壁)6bとを有する皿形状であり、前方に開口している。側部6bの開口側端面に、カバー部材9が取り付けられている。これにより、収容部材6とカバー部材9との間に収容空間部Sが形成されており、この収容空間部SにLED7及び基板8が収容されている。そして、基板8は収容部材6に固定されている。収容空間部Sのうち、基板8よりも前方を前空間部S1とし、基板8よりも後方を後空間部S2としている。
【0030】
カバー部材9は可視光透過性を有しており(可視光に対して透明であり)複数のLED7を前方で覆っている。なお、この光学ユニット2において、前方とは光の投光側であり(カバー部材9側であり)、後方とは収容部材6の底部6a側である。
【0031】
そして、この光学ユニット2にアンテナ4が組み込まれている。アンテナ4はパッチアンテナであり、パッチ素子11とグランド素子12とを有している。すなわち、図2において、パッチ素子11とグランド素子12とが、前記光学ユニット2内に、つまり前記収容空間部Sに格納(収容)されている。
【0032】
パッチ素子1は、導線等の導電体によりメッシュ状に形成されており(図3等参照)、基板8から前方へ立設した支持部材13によって支持されかつ固定されている。支持部材13は絶縁部材からなる。また、パッチ素子11は、可視光透過用の複数の開口を有しており、カバー部材9からLED7の前端39までの範囲Aに設けられている。また、図2において、カバー部材9は、その後面(背面)9aが凹曲面であって、前面9bが凸曲面であり、パッチ素子11はカバー部材9の後面9aから後方に離れて設けられている。なお、ここではカバー部材9を凹凸の曲面としたが、信号灯器1がLED灯器であれば、平面とすることもできる。
【0033】
グランド素子12は、円形の平面状(平板状)に形成されており、基板8の前面8aにおいて当該基板8に取り付けられている。例えば、グランド素子12は、収容部材6に基板8と共にネジによって共締めされる。そして、このグランド素子12は、パッチ素子11の後方であって、前後方向について基板8とLED7の前端39との間に設けられている。また、グランド素子12の輪郭形状はパッチ素子11の輪郭形状よりも大きくなっている。なお、本発明において、グランド素子12の形状は円形に限定されるものではなく、パッチ素子11よりもある程度大きければ、どのような形状であってもよい。
【0034】
これにより、グランド素子12とパッチ素子11とが、前空間部S1内に設けられ、パッチ素子11は、基板8の前面8aからLED7の前端39までの範囲Aに設けられ、グランド素子12はパッチ素子11の後方に設けられた状態となる。そして、グランド素子12とパッチ素子11とが、前後方向に対向した配置となり、このアンテナ4の指向性は信号灯器1から前方へ向かう方向となる。すなわち、光学ユニット2による投光方向と、アンテナ指向性とを略一致させることができ、信号灯器1は車両に対して見通しが良い位置に設置されることから、このアンテナ指向性によって、車両の車載機(図示せず)との間で、良好な通信状態が得られる。
【0035】
また、このアンテナ4が格納された信号灯器1を、路車間で無線通信を行なう高度道路交通システム(ITS)に利用するために、使用周波数を715MHz〜725MHzと設定する場合、グランド素子12とパッチ素子11との前後方向の間隔を10〜40mmに設定することができる。なお、これはグランド素子12とパッチ素子11との間に、空気が介在している場合である。
【0036】
収容部材6(底部6a)には、アンテナ4用の同軸ケーブル15を接続させる端子部19が取り付けられており、この端子部19に、図1の制御装置5から延びる同軸ケーブル15を接続することができる。そして、この端子部19から後空間部S2へ延びる同軸ケーブル15aが、アンテナ4と接続されている。同軸ケーブル15aは、内導体15b、絶縁体15c、外導体15d及び被覆部15eを有しており、この同軸ケーブル15aの内導体15bがパッチ素子11に接続されており、外導体15dがグランド素子12に接続されている。なお、内、外導体15b,15dと各素子11,12(各素子の導電体部分)とを半田によって接続し固定することができるが、半田以外の方法であってもよい。
【0037】
なお、図1の制御装置5から延びるLED7用の電源ケーブル(図示せず)が、収容部材6の底部6aに取り付けた端子部(図示せず)を介して、LED用基板8と接続されている。
【0038】
本発明の特徴は、前記パッチ素子11のメッシュ体を構成する格子のパターンと、前記複数のLED7の配置パターンとが異なることである。本実施の形態では、LED7の配置パターンは、円筒座標系の配列となっている同心円状の放射パターンである。これに対し、メッシュ体を構成する格子のパターンとしては、図3に示されるように、縦格子20と、この縦格子20と直交する横格子21とからなるもの(X−Y座標系の配列)とすることができる(実施の形態1)。この格子パターンによれば、可視光透過用の開口として、略矩形の開口22が提供される。図3に示される例では、さらに、隣接する縦格子間の間隔、及び隣接する横格子間の間隔を不均一にしている。例えば、縦格子20aと縦格子20bとの間の間隔は、縦格子20bと縦格子20cとの間の間隔よりも大きく設定されている。また、横格子21aと横格子21bとの間隔は、横格子21bと横格子21cとの間の間隔よりも大きく設定されている。
【0039】
このように、LED7の配置パターンとパッチ素子11のメッシュ体を構成する格子のパターンとを変えることにより、信号灯器1を前方から視認する場合において、或る方向角度において、両パターンが部分的に重なって発光体の多くが一斉にメッシュ体を構成する格子の背後に隠れてしまうことがない。すなわち、LED7とメッシュ体の格子との重なりを完全になくすことはできないが、両者の重なりの程度が或る方向角度で急に大きくなるのを防ぐことができる。したがって、或る方向角度で灯器の視認性が急に低下してしまうのを防ぐことができる。
【0040】
また、LED7の同心円状の配置パターンと異なる、メッシュ体の格子パターンの他の例としては、図7に示されるものをあげることができる。図7に示される格子パターンは、LED7の同心円状の配置パターンの中心と同心である複数の円形格子30と、隣接する円形格子間を接続するラジアル格子31とからなっている(実施の形態2)。そして、前記複数の円形格子30における、隣接する円形格子間の径方向寸法、すなわち同心円状に配置された複数の円形格子の半径方向のピッチを、LED7の半径方向のピッチよりも小さく設定している。
【0041】
この場合、LED7の半径方向のピッチと、複数の円形格子30の半径方向のピッチとを異なる大きさにしているので、円形格子30とその両側(外側及び内側)に位置するLED7との間隔は半径方向に沿って少しずつずれて、円形格子30の配置パターンとLED7の配置パターンとは異なるものとなる。このため、或る方向角度において、両パターンが部分的に重なってLED7の多くが一斉にメッシュ体を構成する格子の背後に隠れてしまうことがない。したがって、或る方向角度に灯器の視認性が急に低下してしまうのを防ぐことができる。なお、本実施の形態では、隣接する円形格子間の径方向寸法を一定にしているが、当該径方向寸法を不均一なものにすることで、円形格子30の配置パターンとLED7の配置パターンとを異ならせることもできる。例えば、図7において、円形格子30aと円形格子30bとの間の径方向寸法を、円形格子30bと円形格子30cとの間の径方向寸法よりも小さく設定するなどして、両配置パターンを異ならせることもできる。
【0042】
また、別の観点からは、円形格子30と当該円形格子30の両側(径方向において両側)にあるLED7との位置関係をランダムにすることで、円形格子30の配置パターンとLED7の配置パターンとを異ならせることができる。
【0043】
すなわち、LED7の同心円の半径をそれぞれR_L0(中央)、R_L1(一番小さい円)、・・・とし、6個ある円形格子30(図7に示される実施の形態の場合)の半径を中央よりR_s1、R_s2・・・R_s6とすると、図7に示される実施の形態では、
R_s1= R_L1-(R_L1-R_L0)/6×1
R_s2= R_L2-(R_L2-R_L1)/6×2
R_s3= R_L3-(R_L3-R_L2)/6×3
R_s4= R_L4-(R_L4-R_L3)/6×4
R_s5= R_L5-(R_L5-R_L4)/6×5
R_s6= R_L6-(R_L6-R_L5)/6×6
とされている。この式は、一般化すると
R_si= R_Li-(R_Li-R_L(i-1))/n×j n:素子の格子数
であるが、図7に示される実施の形態では、i=jであり、且つ、R_Li-R_L(i-1)=一定である(LED7が一定間隔の半径で配置されている)ため、円形格子30の間隔(ピッチ)は一定になっている。ただし、この円形格子30のピッチと、LED7のピッチを異なる大きさとすることで、円形格子30とLED7の各配置パターンを互いに異なるものとしている。
【0044】
しかしながら、本発明は、i=jに限定されるものではなく、i=(n+1)−jであってもよいし、また、jの順序がバラバラであってもよい。すなわち、jを1〜nまでの整数として、1回だけ使用することで、R_s1〜R_s6を設定することができる。
【0045】
R_Li-R_L(i-1)=一定である場合、i=(n+1)−jとすると、R_s1= R_L1-(R_L1-R_L0)/6×6、R_s2= R_L2-(R_L2-R_L1)/6×5、・・・、R_s6= R_L6-(R_L6-R_L5)/6×1となり、円形格子30の間隔(ピッチ)は一定であるが、当該円形格子30のピッチと、LED7のピッチとが異なる大きさになるため、円形格子30とLED7の各配置パターンを互いに異なるものとすることができる。
【0046】
また、R_Li-R_L(i-1)=一定である場合において、jの順序をバラバラにする、つまりjを1〜nまでの整数として、1回だけ使用すると、LED7のピッチは均一であるが、円形格子30のピッチが不均一になるため、当該円形格子30とLED7の各配置パターンを互いに異なるものとすることができる。
【0047】
次に、本発明の灯器の視認性について、192個のLEDを同心円状に配置した基板の前方28mmの位置にパッチ素子を配設し、この灯器を見る角度(仰角)を0°〜45°まで5°きざみで変化させて、確認した。この確認は、画面上において、灯器を5°きざみで後方へ徐々に倒していき、それぞれの角度でパッチ素子の格子により隠れるLEDの発光部の数をカウントすることにより行った。
【0048】
実施の形態1に係る格子パターン(四角パターン(四角素子):縦格子と、この縦格子と直交する横格子とからなる格子パターン)、実施の形態2に係る格子パターン(円形ランダムパターン(円形ランダム素子):LEDの同心円状の配置パターンの中心と同心である複数の円形格子と、隣接する円形格子間を接続するラジアル格子とからなる格子パターン。複数の円形格子の半径方向のピッチは、複数の発光体の半径方向のピッチと異なる大きさに(具体的には、小さく)されている)、及び比較例としてLEDと同じ同心円状の格子パターン(円形パターン(円形素子)。LEDは、格子の中心位置(格子の外周円弧の半径R1と内周半径R2を足して2で割った半径を有する円弧上であって、当該円弧の中心角の中心線上の位置)に配置されている)の3つの場合について、確認を行った。結果を表1〜3に示す。表1は、角度毎に隠れたLEDの数を示しており、表2は、角度毎に見えているLEDの数を示しており、表3は、全LEDの数(192個)に対する見えているLEDの数の割合(%)を示している。また、これらを図示したものが図15〜17である。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
また、図3は、実施の形態1に係るパッチ素子とLEDにおける発光部の仰角0°における正面説明図であり、図4〜6は、同じく仰角15°、仰角30°及び仰角45°における正面説明図である。さらに、図7は、実施の形態2に係るパッチ素子とLEDにおける発光部の仰角0°における正面説明図であり、図8〜10は、同じく仰角15°、仰角30°及び仰角45°における正面説明図である。また、図11は、比較例に係るパッチ素子とLEDにおける発光部の仰角0°における正面説明図であり、図12〜14は、同じく仰角15°、仰角30°及び仰角45°における正面説明図である。なお、図3〜14においては、分かり易くするために、基板上のLEDについては、1つを除いて発光部だけを小さな「○」で表現している。また、パッチ素子、LED及び基板以外の部材については、図示を省略している。
【0053】
表1〜3及び図3〜17より、パッチ素子を構成するメッシュ体の格子パターンを、LEDの配置パターンと異なるパターンとすることにより、或る方向角度(前述の例では、仰角25°)でLEDの多くが一斉に見えなくなるのを防げることが確認された。具体的には、交通信号灯器を仰角0〜45°の範囲で見上げた場合における、前記メッシュ体を構成する格子と重なる前記複数のLEDの発光部の割合が、全発光部の数の30%以下となることが確認された。特に、実施の形態1の格子パターンの場合は、仰角にかかわらず、安定して多くの割合の発光部を見ることができ、良好な視認性を確保できることが分かる。これに対し、比較例の円形パターンでは、仰角25°において全体の約半数の89個ものLEDが急に見えなくなっており、視認性が劣化することが分かった。
【0054】
前述した交通信号灯器1を制御する制御装置5(交通信号制御機)は、アンテナ4を介して、交通信号灯器1を設置した道路又は近傍の道路等を走行する車両に対して、前記交通信号灯器1の現在及び将来の表示に関する信号情報を提供することができる。
【0055】
信号情報としては、交通信号灯器1が表示する現在又は将来の信号灯色に関する情報を指し、各信号灯色の表示継続予定期間や表示する順序等に関する情報等を含むものである。
【0056】
例えば、現在表示している灯色は青信号でその継続予定時間は5秒であり、その次に表示する灯色は黄信号でその継続予定時間は8秒であり、その次に表示する灯色は右折青矢印灯でその継続予定時間は5乃至10秒である、といった情報を所定の形式で表現して含ませると良い。なお、提供するのは現在表示している灯色とその継続時間だけとしても良いし、1サイクル分の情報をまとめて提供するようにしても良い。また、これらの情報に加えて、地点感応制御を実施している地点では、当該制御に関するパラメータ情報や制御を実施する時間帯の情報等を含ませても良い。
【0057】
そして、前記信号情報を受信した車両側の車載コンピュータは、停止線までの距離と車両の走行速度や加速度等から、停止線に到着するまでの所要時間を推定した上で、当該所要時間経過後の信号灯色を推定することができる。そして、例えば現時点で青信号を表示していたとしても、停止線に到着する時点で信号灯色が赤信号と予測されるような場合には、安全に停止線の手前で停止するように、車載コンピュータは制御すれば良い。逆に、減速しなければ安全に交差点を通過できると判断できるような場合には、速度を維持するように制御すれば良い。
【0058】
また、車載コンピュータは、車載装置の主導による制御のみならず、ブレーキアシストなど、ドライバの運転動作を補助する動作をしても良い。
【0059】
また、車載コンピュータは、前記判断の結果を車両の搭乗者に対して、音声や画像情報によって通知するようにしても良い。例えば、「間もなく信号が変わるので停止すべきである」といった内容の音声をドライバに向けて発したり、ヘッドアップディスプレイやナビゲーション装置の画面上に文字や図柄で表示したりしても良い。
【0060】
なお、本発明の灯器は、前記実施の形態に限定されるものではない。例えば、信号灯器は車両用以外にも、歩行者用のものであってもよい。また、信号灯器が有する発光体はLED以外に電球であってもよい。また、前記各実施の形態ではグランド素子12を円形としたが、これ以外に矩形とすることもできる。
【0061】
今回開示された実施の形態はすべての点において単なる例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、前記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の灯器の一実施の形態の正面図である。
【図2】図1に示される灯器における光学ユニットの断面説明図である。
【図3】実施の形態1のパッチ素子と発光部の仰角0°における正面説明図である。
【図4】実施の形態1のパッチ素子と発光部の仰角15°における正面説明図である。
【図5】実施の形態1のパッチ素子と発光部の仰角30°における正面説明図である。
【図6】実施の形態1のパッチ素子と発光部の仰角45°における正面説明図である。
【図7】実施の形態2のパッチ素子と発光部の仰角0°における正面説明図である。
【図8】実施の形態2のパッチ素子と発光部の仰角15°における正面説明図である。
【図9】実施の形態2のパッチ素子と発光部の仰角30°における正面説明図である。
【図10】実施の形態2のパッチ素子と発光部の仰角45°における正面説明図である。
【図11】比較例のパッチ素子と発光部の仰角0°における正面説明図である。
【図12】比較例のパッチ素子と発光部の仰角15°における正面説明図である。
【図13】比較例のパッチ素子と発光部の仰角30°における正面説明図である。
【図14】比較例のパッチ素子と発光部の仰角45°における正面説明図である。
【図15】仰角と隠れるLED数との関係を示す図である。
【図16】仰角と見えているLED数との関係を示す図である。
【図17】仰角と見えているLED数の確率との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1 信号灯器
2 光学ユニット
4 アンテナ
5 制御装置
6 収容部材
7 発光ダイオード
8 基板
9 カバー部材
11 パッチ素子
12 グランド素子
20 縦格子
21 横格子
22 開口
30 円形格子
31 ラジアル格子
【技術分野】
【0001】
本発明は灯器に関するものであり、特に道路に設置される交通信号灯器、交通信号制御機、及び、この灯器に設けられるアンテナユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通安全の促進や交通事故の防止を目的として、高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport System)が提案されている。このITSでは、道路に通信装置(インフラ装置)が設置されており、この通信装置のアンテナから発せられた情報を、道路を走行する車両の車載機が受信し、この情報を活用することにより、車両の走行についての安全性を向上させることができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような路車間通信を無線によって行なう場合、無線通信の見通しを確保する観点から、歩道等に設置した支柱から車道側にアームを張り出し、このアーム上に通信装置のアンテナを取り付けている。また、前記アームを設けなくても見通しが確保できる場合、前記支柱にアンテナを取り付けることが可能となる。
【0004】
前記通信装置のアンテナを道路に設置するためにアンテナ専用の支柱を新たに設けることは経済的でなく、また、道路の美観の点でも好ましくないことから、本出願人は、さきに、光学ユニットにアンテナを組み込んだ交通信号灯器を提案している(特願2007−186019)。
【0005】
この交通信号灯器は、発光体と、可視光透過性を有し前記発光体を前方で覆うカバー部材とを有する光学ユニット、及び、前記カバー部材から前記発光体の前端までの範囲に設けられているパッチ素子と、このパッチ素子の後方にあるグランド素子とを有するアンテナとを備えており、前記パッチ素子は可視光透過性を有している。かかる交通信号灯器では、アンテナが交通信号灯器の光学ユニットに組み込まれるため、アンテナ設置用の支柱を不要とでき、かつ、道路の美観を損なうことがない。さらに、パッチ素子は可視光透過性を有しているので、アンテナを光学ユニットに組み込んでも、発光体による発光の妨げとなることを防止することができる。
【0006】
【特許文献1】特許第2806801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記パッチ素子として、例えば導線をメッシュ状に編んだものを用いることができるが、この場合、メッシュのパターンによっては、当該メッシュを構成する導線により、或る方向角度において背後にある発光体の多くが一斉に隠れてしまい、灯器の視認性が低下することがある。
【0008】
すなわち、交通信号灯器における発光体は、通常、発光ダイオードからなっており、灯器の輝度均斉度をよくするために、複数の発光ダイオードが同心円状の放射パターンに配置されている。これに対し、パッチ素子のメッシュも同じ同心円状の放射パターンにすると、或る方向角度で両パターンが部分的に重複し、多くの発光ダイオードが一斉にパッチ素子の背後に隠れてしまい、その結果、交通信号灯器の視認性が低下してしまう。
【0009】
本発明は、このようなパッチ素子と発光体との重なりによる視認性の低下を抑制することができるアンテナユニット、灯器、交通信号灯器及び交通信号制御機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の灯器は、所定のパターンで配置された複数の発光体と、可視光透過性を有し当該複数の発光体を前方で覆うカバー部材とを有する光学ユニットと、
前記カバー部材から前記発光体の前端までの範囲に設けられているパッチ素子と、このパッチ素子の後方にあるグランド素子とを有するアンテナと、
を備えており、
前記パッチ素子は、可視光透過用の開口を有するメッシュ体からなっており、このメッシュ体を構成する格子のパターンと、前記複数の発光体の配置パターンとが異なることを特徴としている。
【0011】
本発明の灯器では、パッチ素子のメッシュ体を構成する格子のパターンと、複数の発光体の配置パターンとが異なっているので、或る方向角度において、両パターンが部分的に重なって発光体の多くが一斉にメッシュ体を構成する格子の背後に隠れてしまうことがない。したがって、或る方向角度に灯器の視認性が急に低下してしまうのを防ぐことができる。
【0012】
前記複数の発光体の配置パターンが同心円状である場合に、前記メッシュ体の格子を、縦格子と、この縦格子と直交する横格子とからなるものとすることができる。この構成によれば、円筒座標系の配列となっている発光体の配置パターンと、X−Y座標系であるメッシュ体の格子のパターンとが異なるので、或る方向角度において、両パターンが部分的に重なって発光体の多くが一斉にメッシュ体を構成する格子の背後に隠れてしまうことがない。したがって、或る方向角度に灯器の視認性が急に低下してしまうのを防ぐことができる。
【0013】
前記複数の発光体の配置パターンが同心円状である場合に、前記メッシュ体の格子を、前記発光体の同心円状の配置パターンの中心と同心である複数の円形格子と、隣接する円形格子間を接続するラジアル格子とからなるものとし、且つ、前記複数の発光体の半径方向のピッチと、前記複数の円形格子の半径方向のピッチとを異なる大きさにすることができる。この場合、複数の発光体の半径方向のピッチと、前記複数の円形格子の半径方向のピッチとを異なる大きさにしているので、円形格子とその両側(外側及び内側)に位置する発光体との間隔は半径方向に沿って少しずつずれて、円形格子の配置パターンと発光体の配置パターンとは異なるものとなる。このため、或る方向角度において、両パターンが部分的に重なって発光体の多くが一斉にメッシュ体を構成する格子の背後に隠れてしまうことがない。したがって、或る方向角度に灯器の視認性が急に低下してしまうのを防ぐことができる。
前記複数の発光体の配置パターンが同心円状である場合に、前記メッシュ体の格子を、前記発光体の同心円状の配置パターンの中心と同心である複数の円形格子と、隣接する円形格子間を接続するラジアル格子とからなるものとし、且つ、前記複数の発光体の半径方向のピッチを略均一にするのに対して、前記複数の円形格子の半径方向のピッチを不均一にすることができる。この場合、複数の発光体の半径方向のピッチを略均一にするとともに、前記複数の円形格子の半径方向のピッチを不均一にしているので、円形格子とその両側(外側及び内側)に位置する発光体との間隔を半径方向に沿って異ならせることができ、円形格子の配置パターンと発光体の配置パターンとは異なるものとなる。このため、或る方向角度において、両パターンが部分的に重なって発光体の多くが一斉にメッシュ体を構成する格子の背後に隠れてしまうことがない。したがって、或る方向角度に灯器の視認性が急に低下してしまうのを防ぐことができる。
【0014】
本発明の第1の観点に係る交通信号灯器は、所定のパターンで配置された複数の発光体と、可視光透過性を有し当該複数の発光体を前方で覆うカバー部材とを有する光学ユニットと、
前記カバー部材から前記発光体の前端までの範囲に設けられているパッチ素子と、このパッチ素子の後方にあるグランド素子とを有するアンテナと、
を備えており、
前記パッチ素子は、可視光透過用の開口を有するメッシュ体からなっており、このメッシュ体を構成する格子のパターンと、前記複数の発光体の配置パターンとが異なることを特徴としている。
【0015】
本発明の第1の観点に係る交通信号灯器では、パッチ素子のメッシュ体を構成する格子のパターンと、複数の発光体の配置パターンとが異なっているので、或る方向角度において、両パターンが部分的に重なって発光体の多くが一斉にメッシュ体を構成する格子の背後に隠れてしまうことがない。したがって、或る方向角度に灯器の視認性が急に低下してしまうのを防ぐことができる。
【0016】
また、本発明の第2の観点に係る交通信号灯器は、所定のパターンで配置された複数の発光体と、可視光透過性を有し当該複数の発光体を前方で覆うカバー部材とを有する光学ユニットと、
前記カバー部材から前記発光体の前端までの範囲に設けられているパッチ素子と、このパッチ素子の後方にあるグランド素子とを有するアンテナと、
を備えており、
前記パッチ素子は、可視光透過用の開口を有するメッシュ体からなる交通信号灯器であって、
当該交通信号灯器を仰角0〜45°の範囲で見上げた場合における、前記メッシュ体を構成する格子と重なる前記複数の発光体の発光部の割合が、全発光部の数の30%以下となるように、当該メッシュ体のパターンが設定されていることを特徴としている。
【0017】
本発明の第2の観点に係る交通信号灯器では、当該交通信号灯器を仰角0〜45°の範囲で見上げた場合における、前記メッシュ体を構成する格子と重なる前記複数の発光体の発光部の割合が、全発光部の数の30%以下となるように、当該メッシュ体のパターンが設定されていることから、前記格子と発光部の重なりにより視認性が大幅に低下することがない。
【0018】
本発明の灯器用のアンテナユニットは、所定のパターンで配置された複数の発光体と、可視光透過性を有し前記発光体を前方で覆うカバー部材とを有する光学ユニットに組み込まれる灯器用のアンテナユニットであって、
前記カバー部材から前記発光体の前端までの範囲に設けられるパッチ素子と、このパッチ素子の後方に設けられるグランド素子とを有しており、
前記パッチ素子は、可視光透過用の開口を有するメッシュ体からなっており、このメッシュ体を構成する格子のパターンと、前記複数の発光体の配置パターンとが異なることを特徴としている。
【0019】
本発明のアンテナユニットでは、パッチ素子のメッシュ体を構成する格子のパターンと、当該アンテナユニットが組み込まれる光学ユニットの複数の発光体の配置パターンとが異なっているので、或る方向角度において、両パターンが部分的に重なって発光体の多くが一斉にメッシュ体を構成する格子の背後に隠れてしまうことがない。したがって、或る方向角度に灯器の視認性が急に低下してしまうのを防ぐことができる。
【0020】
本発明の交通信号制御機は、前記交通信号灯器に接続され、当該交通信号灯器の点灯及び消灯を行う交通信号制御機であって、
前記アンテナを介して、前記交通信号灯器の設置された道路上を走行する車両に対して、現在及び将来の前記交通信号灯器の表示に関する信号情報を送信するように構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明のアンテナユニット、灯器、交通信号灯器及び交通信号制御機によれば、パッチ素子と発光体との重なりによる視認性の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る灯器の正面図である。図1に示される灯器は道路に設置される交通信号灯器1(以下、単に「信号灯器」ともいう)であり、車両用のものである。
【0023】
歩道等の路側に支柱40が設置され、この支柱40から車道側にアーム41が張り出されて設けられており、このアーム41に信号灯器1が取り付けられている。なお、図1において、15は後述するアンテナ用の同軸ケーブルである。
【0024】
信号灯器1は、複数(図1に示される例では三つ)の光学ユニット2と、これら光学ユニット2が組み込まれている筐体3とを有している。三つの光学ユニット2は、それぞれ赤、黄、青の灯光色を有している。各光学ユニット2にはひさし(図示せず)が取り付けられる。
【0025】
また、支柱40には、信号灯器1を制御する制御装置5が取り付けられている。なお、信号灯器1の設置構造は図示しているもの以外であってもよく、図示しないが前記支柱40及び前記アーム41の形態が異なっていてもよく、また、信号灯器1が歩道橋に架設されたものであってもよい。また、制御装置5は、信号灯器1の筐体3内に設けられたものであってもよい。
【0026】
なお、信号灯器1の点灯等を制御する制御装置5が、後述するアンテナ4を介した無線通信制御を行うように構成することができるが(又は無線通信制御を行う装置を同一筐体内に内蔵させることができるが)、別々の装置としても良い。別々とする場合、前記無線通信制御を行う装置は、信号灯器1の点灯等を制御する制御装置の近傍(同一の支柱40)に設置することが好ましい。
【0027】
図2は、一つの光学ユニット2の断面説明図である。光学ユニット2は、発光体としての発光ダイオード7(以下、「LED」ともいう)と、複数のLED7が前面8aに実装された基板8と、この基板8を収容する収容部材6と、カバー部材9とを有している。基板8は、その裏面に配線パターンが形成されており、LED7の端子37は、当該配線パターンと繋がっている。基板8上には複数のLED7が面状に広がって配設されている。より詳細には、複数のLED7は同心円状の放射パターンを形成するように配設されており、隣接する同心円間の径方向寸法は略均一である(図3参照)。
【0028】
LED7はレンズ部38を有しており、このレンズ部38内に、実際に発光する部位であるLED素子ないしは発光部(図示せず)が設けられている。
【0029】
収容部材6は、底部(底壁)6aと、この底部6aの周縁から立設した側部(側壁)6bとを有する皿形状であり、前方に開口している。側部6bの開口側端面に、カバー部材9が取り付けられている。これにより、収容部材6とカバー部材9との間に収容空間部Sが形成されており、この収容空間部SにLED7及び基板8が収容されている。そして、基板8は収容部材6に固定されている。収容空間部Sのうち、基板8よりも前方を前空間部S1とし、基板8よりも後方を後空間部S2としている。
【0030】
カバー部材9は可視光透過性を有しており(可視光に対して透明であり)複数のLED7を前方で覆っている。なお、この光学ユニット2において、前方とは光の投光側であり(カバー部材9側であり)、後方とは収容部材6の底部6a側である。
【0031】
そして、この光学ユニット2にアンテナ4が組み込まれている。アンテナ4はパッチアンテナであり、パッチ素子11とグランド素子12とを有している。すなわち、図2において、パッチ素子11とグランド素子12とが、前記光学ユニット2内に、つまり前記収容空間部Sに格納(収容)されている。
【0032】
パッチ素子1は、導線等の導電体によりメッシュ状に形成されており(図3等参照)、基板8から前方へ立設した支持部材13によって支持されかつ固定されている。支持部材13は絶縁部材からなる。また、パッチ素子11は、可視光透過用の複数の開口を有しており、カバー部材9からLED7の前端39までの範囲Aに設けられている。また、図2において、カバー部材9は、その後面(背面)9aが凹曲面であって、前面9bが凸曲面であり、パッチ素子11はカバー部材9の後面9aから後方に離れて設けられている。なお、ここではカバー部材9を凹凸の曲面としたが、信号灯器1がLED灯器であれば、平面とすることもできる。
【0033】
グランド素子12は、円形の平面状(平板状)に形成されており、基板8の前面8aにおいて当該基板8に取り付けられている。例えば、グランド素子12は、収容部材6に基板8と共にネジによって共締めされる。そして、このグランド素子12は、パッチ素子11の後方であって、前後方向について基板8とLED7の前端39との間に設けられている。また、グランド素子12の輪郭形状はパッチ素子11の輪郭形状よりも大きくなっている。なお、本発明において、グランド素子12の形状は円形に限定されるものではなく、パッチ素子11よりもある程度大きければ、どのような形状であってもよい。
【0034】
これにより、グランド素子12とパッチ素子11とが、前空間部S1内に設けられ、パッチ素子11は、基板8の前面8aからLED7の前端39までの範囲Aに設けられ、グランド素子12はパッチ素子11の後方に設けられた状態となる。そして、グランド素子12とパッチ素子11とが、前後方向に対向した配置となり、このアンテナ4の指向性は信号灯器1から前方へ向かう方向となる。すなわち、光学ユニット2による投光方向と、アンテナ指向性とを略一致させることができ、信号灯器1は車両に対して見通しが良い位置に設置されることから、このアンテナ指向性によって、車両の車載機(図示せず)との間で、良好な通信状態が得られる。
【0035】
また、このアンテナ4が格納された信号灯器1を、路車間で無線通信を行なう高度道路交通システム(ITS)に利用するために、使用周波数を715MHz〜725MHzと設定する場合、グランド素子12とパッチ素子11との前後方向の間隔を10〜40mmに設定することができる。なお、これはグランド素子12とパッチ素子11との間に、空気が介在している場合である。
【0036】
収容部材6(底部6a)には、アンテナ4用の同軸ケーブル15を接続させる端子部19が取り付けられており、この端子部19に、図1の制御装置5から延びる同軸ケーブル15を接続することができる。そして、この端子部19から後空間部S2へ延びる同軸ケーブル15aが、アンテナ4と接続されている。同軸ケーブル15aは、内導体15b、絶縁体15c、外導体15d及び被覆部15eを有しており、この同軸ケーブル15aの内導体15bがパッチ素子11に接続されており、外導体15dがグランド素子12に接続されている。なお、内、外導体15b,15dと各素子11,12(各素子の導電体部分)とを半田によって接続し固定することができるが、半田以外の方法であってもよい。
【0037】
なお、図1の制御装置5から延びるLED7用の電源ケーブル(図示せず)が、収容部材6の底部6aに取り付けた端子部(図示せず)を介して、LED用基板8と接続されている。
【0038】
本発明の特徴は、前記パッチ素子11のメッシュ体を構成する格子のパターンと、前記複数のLED7の配置パターンとが異なることである。本実施の形態では、LED7の配置パターンは、円筒座標系の配列となっている同心円状の放射パターンである。これに対し、メッシュ体を構成する格子のパターンとしては、図3に示されるように、縦格子20と、この縦格子20と直交する横格子21とからなるもの(X−Y座標系の配列)とすることができる(実施の形態1)。この格子パターンによれば、可視光透過用の開口として、略矩形の開口22が提供される。図3に示される例では、さらに、隣接する縦格子間の間隔、及び隣接する横格子間の間隔を不均一にしている。例えば、縦格子20aと縦格子20bとの間の間隔は、縦格子20bと縦格子20cとの間の間隔よりも大きく設定されている。また、横格子21aと横格子21bとの間隔は、横格子21bと横格子21cとの間の間隔よりも大きく設定されている。
【0039】
このように、LED7の配置パターンとパッチ素子11のメッシュ体を構成する格子のパターンとを変えることにより、信号灯器1を前方から視認する場合において、或る方向角度において、両パターンが部分的に重なって発光体の多くが一斉にメッシュ体を構成する格子の背後に隠れてしまうことがない。すなわち、LED7とメッシュ体の格子との重なりを完全になくすことはできないが、両者の重なりの程度が或る方向角度で急に大きくなるのを防ぐことができる。したがって、或る方向角度で灯器の視認性が急に低下してしまうのを防ぐことができる。
【0040】
また、LED7の同心円状の配置パターンと異なる、メッシュ体の格子パターンの他の例としては、図7に示されるものをあげることができる。図7に示される格子パターンは、LED7の同心円状の配置パターンの中心と同心である複数の円形格子30と、隣接する円形格子間を接続するラジアル格子31とからなっている(実施の形態2)。そして、前記複数の円形格子30における、隣接する円形格子間の径方向寸法、すなわち同心円状に配置された複数の円形格子の半径方向のピッチを、LED7の半径方向のピッチよりも小さく設定している。
【0041】
この場合、LED7の半径方向のピッチと、複数の円形格子30の半径方向のピッチとを異なる大きさにしているので、円形格子30とその両側(外側及び内側)に位置するLED7との間隔は半径方向に沿って少しずつずれて、円形格子30の配置パターンとLED7の配置パターンとは異なるものとなる。このため、或る方向角度において、両パターンが部分的に重なってLED7の多くが一斉にメッシュ体を構成する格子の背後に隠れてしまうことがない。したがって、或る方向角度に灯器の視認性が急に低下してしまうのを防ぐことができる。なお、本実施の形態では、隣接する円形格子間の径方向寸法を一定にしているが、当該径方向寸法を不均一なものにすることで、円形格子30の配置パターンとLED7の配置パターンとを異ならせることもできる。例えば、図7において、円形格子30aと円形格子30bとの間の径方向寸法を、円形格子30bと円形格子30cとの間の径方向寸法よりも小さく設定するなどして、両配置パターンを異ならせることもできる。
【0042】
また、別の観点からは、円形格子30と当該円形格子30の両側(径方向において両側)にあるLED7との位置関係をランダムにすることで、円形格子30の配置パターンとLED7の配置パターンとを異ならせることができる。
【0043】
すなわち、LED7の同心円の半径をそれぞれR_L0(中央)、R_L1(一番小さい円)、・・・とし、6個ある円形格子30(図7に示される実施の形態の場合)の半径を中央よりR_s1、R_s2・・・R_s6とすると、図7に示される実施の形態では、
R_s1= R_L1-(R_L1-R_L0)/6×1
R_s2= R_L2-(R_L2-R_L1)/6×2
R_s3= R_L3-(R_L3-R_L2)/6×3
R_s4= R_L4-(R_L4-R_L3)/6×4
R_s5= R_L5-(R_L5-R_L4)/6×5
R_s6= R_L6-(R_L6-R_L5)/6×6
とされている。この式は、一般化すると
R_si= R_Li-(R_Li-R_L(i-1))/n×j n:素子の格子数
であるが、図7に示される実施の形態では、i=jであり、且つ、R_Li-R_L(i-1)=一定である(LED7が一定間隔の半径で配置されている)ため、円形格子30の間隔(ピッチ)は一定になっている。ただし、この円形格子30のピッチと、LED7のピッチを異なる大きさとすることで、円形格子30とLED7の各配置パターンを互いに異なるものとしている。
【0044】
しかしながら、本発明は、i=jに限定されるものではなく、i=(n+1)−jであってもよいし、また、jの順序がバラバラであってもよい。すなわち、jを1〜nまでの整数として、1回だけ使用することで、R_s1〜R_s6を設定することができる。
【0045】
R_Li-R_L(i-1)=一定である場合、i=(n+1)−jとすると、R_s1= R_L1-(R_L1-R_L0)/6×6、R_s2= R_L2-(R_L2-R_L1)/6×5、・・・、R_s6= R_L6-(R_L6-R_L5)/6×1となり、円形格子30の間隔(ピッチ)は一定であるが、当該円形格子30のピッチと、LED7のピッチとが異なる大きさになるため、円形格子30とLED7の各配置パターンを互いに異なるものとすることができる。
【0046】
また、R_Li-R_L(i-1)=一定である場合において、jの順序をバラバラにする、つまりjを1〜nまでの整数として、1回だけ使用すると、LED7のピッチは均一であるが、円形格子30のピッチが不均一になるため、当該円形格子30とLED7の各配置パターンを互いに異なるものとすることができる。
【0047】
次に、本発明の灯器の視認性について、192個のLEDを同心円状に配置した基板の前方28mmの位置にパッチ素子を配設し、この灯器を見る角度(仰角)を0°〜45°まで5°きざみで変化させて、確認した。この確認は、画面上において、灯器を5°きざみで後方へ徐々に倒していき、それぞれの角度でパッチ素子の格子により隠れるLEDの発光部の数をカウントすることにより行った。
【0048】
実施の形態1に係る格子パターン(四角パターン(四角素子):縦格子と、この縦格子と直交する横格子とからなる格子パターン)、実施の形態2に係る格子パターン(円形ランダムパターン(円形ランダム素子):LEDの同心円状の配置パターンの中心と同心である複数の円形格子と、隣接する円形格子間を接続するラジアル格子とからなる格子パターン。複数の円形格子の半径方向のピッチは、複数の発光体の半径方向のピッチと異なる大きさに(具体的には、小さく)されている)、及び比較例としてLEDと同じ同心円状の格子パターン(円形パターン(円形素子)。LEDは、格子の中心位置(格子の外周円弧の半径R1と内周半径R2を足して2で割った半径を有する円弧上であって、当該円弧の中心角の中心線上の位置)に配置されている)の3つの場合について、確認を行った。結果を表1〜3に示す。表1は、角度毎に隠れたLEDの数を示しており、表2は、角度毎に見えているLEDの数を示しており、表3は、全LEDの数(192個)に対する見えているLEDの数の割合(%)を示している。また、これらを図示したものが図15〜17である。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
また、図3は、実施の形態1に係るパッチ素子とLEDにおける発光部の仰角0°における正面説明図であり、図4〜6は、同じく仰角15°、仰角30°及び仰角45°における正面説明図である。さらに、図7は、実施の形態2に係るパッチ素子とLEDにおける発光部の仰角0°における正面説明図であり、図8〜10は、同じく仰角15°、仰角30°及び仰角45°における正面説明図である。また、図11は、比較例に係るパッチ素子とLEDにおける発光部の仰角0°における正面説明図であり、図12〜14は、同じく仰角15°、仰角30°及び仰角45°における正面説明図である。なお、図3〜14においては、分かり易くするために、基板上のLEDについては、1つを除いて発光部だけを小さな「○」で表現している。また、パッチ素子、LED及び基板以外の部材については、図示を省略している。
【0053】
表1〜3及び図3〜17より、パッチ素子を構成するメッシュ体の格子パターンを、LEDの配置パターンと異なるパターンとすることにより、或る方向角度(前述の例では、仰角25°)でLEDの多くが一斉に見えなくなるのを防げることが確認された。具体的には、交通信号灯器を仰角0〜45°の範囲で見上げた場合における、前記メッシュ体を構成する格子と重なる前記複数のLEDの発光部の割合が、全発光部の数の30%以下となることが確認された。特に、実施の形態1の格子パターンの場合は、仰角にかかわらず、安定して多くの割合の発光部を見ることができ、良好な視認性を確保できることが分かる。これに対し、比較例の円形パターンでは、仰角25°において全体の約半数の89個ものLEDが急に見えなくなっており、視認性が劣化することが分かった。
【0054】
前述した交通信号灯器1を制御する制御装置5(交通信号制御機)は、アンテナ4を介して、交通信号灯器1を設置した道路又は近傍の道路等を走行する車両に対して、前記交通信号灯器1の現在及び将来の表示に関する信号情報を提供することができる。
【0055】
信号情報としては、交通信号灯器1が表示する現在又は将来の信号灯色に関する情報を指し、各信号灯色の表示継続予定期間や表示する順序等に関する情報等を含むものである。
【0056】
例えば、現在表示している灯色は青信号でその継続予定時間は5秒であり、その次に表示する灯色は黄信号でその継続予定時間は8秒であり、その次に表示する灯色は右折青矢印灯でその継続予定時間は5乃至10秒である、といった情報を所定の形式で表現して含ませると良い。なお、提供するのは現在表示している灯色とその継続時間だけとしても良いし、1サイクル分の情報をまとめて提供するようにしても良い。また、これらの情報に加えて、地点感応制御を実施している地点では、当該制御に関するパラメータ情報や制御を実施する時間帯の情報等を含ませても良い。
【0057】
そして、前記信号情報を受信した車両側の車載コンピュータは、停止線までの距離と車両の走行速度や加速度等から、停止線に到着するまでの所要時間を推定した上で、当該所要時間経過後の信号灯色を推定することができる。そして、例えば現時点で青信号を表示していたとしても、停止線に到着する時点で信号灯色が赤信号と予測されるような場合には、安全に停止線の手前で停止するように、車載コンピュータは制御すれば良い。逆に、減速しなければ安全に交差点を通過できると判断できるような場合には、速度を維持するように制御すれば良い。
【0058】
また、車載コンピュータは、車載装置の主導による制御のみならず、ブレーキアシストなど、ドライバの運転動作を補助する動作をしても良い。
【0059】
また、車載コンピュータは、前記判断の結果を車両の搭乗者に対して、音声や画像情報によって通知するようにしても良い。例えば、「間もなく信号が変わるので停止すべきである」といった内容の音声をドライバに向けて発したり、ヘッドアップディスプレイやナビゲーション装置の画面上に文字や図柄で表示したりしても良い。
【0060】
なお、本発明の灯器は、前記実施の形態に限定されるものではない。例えば、信号灯器は車両用以外にも、歩行者用のものであってもよい。また、信号灯器が有する発光体はLED以外に電球であってもよい。また、前記各実施の形態ではグランド素子12を円形としたが、これ以外に矩形とすることもできる。
【0061】
今回開示された実施の形態はすべての点において単なる例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、前記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の灯器の一実施の形態の正面図である。
【図2】図1に示される灯器における光学ユニットの断面説明図である。
【図3】実施の形態1のパッチ素子と発光部の仰角0°における正面説明図である。
【図4】実施の形態1のパッチ素子と発光部の仰角15°における正面説明図である。
【図5】実施の形態1のパッチ素子と発光部の仰角30°における正面説明図である。
【図6】実施の形態1のパッチ素子と発光部の仰角45°における正面説明図である。
【図7】実施の形態2のパッチ素子と発光部の仰角0°における正面説明図である。
【図8】実施の形態2のパッチ素子と発光部の仰角15°における正面説明図である。
【図9】実施の形態2のパッチ素子と発光部の仰角30°における正面説明図である。
【図10】実施の形態2のパッチ素子と発光部の仰角45°における正面説明図である。
【図11】比較例のパッチ素子と発光部の仰角0°における正面説明図である。
【図12】比較例のパッチ素子と発光部の仰角15°における正面説明図である。
【図13】比較例のパッチ素子と発光部の仰角30°における正面説明図である。
【図14】比較例のパッチ素子と発光部の仰角45°における正面説明図である。
【図15】仰角と隠れるLED数との関係を示す図である。
【図16】仰角と見えているLED数との関係を示す図である。
【図17】仰角と見えているLED数の確率との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1 信号灯器
2 光学ユニット
4 アンテナ
5 制御装置
6 収容部材
7 発光ダイオード
8 基板
9 カバー部材
11 パッチ素子
12 グランド素子
20 縦格子
21 横格子
22 開口
30 円形格子
31 ラジアル格子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のパターンで配置された複数の発光体と、可視光透過性を有し当該複数の発光体を前方で覆うカバー部材とを有する光学ユニットと、
前記カバー部材から前記発光体の前端までの範囲に設けられているパッチ素子と、このパッチ素子の後方にあるグランド素子とを有するアンテナと、
を備えており、
前記パッチ素子は、可視光透過用の開口を有するメッシュ体からなっており、このメッシュ体を構成する格子のパターンと、前記複数の発光体の配置パターンとが異なることを特徴とする灯器。
【請求項2】
前記複数の発光体の配置パターンが同心円状であり、前記メッシュ体の格子が、縦格子と、この縦格子と直交する横格子とからなる請求項1に記載の灯器。
【請求項3】
前記複数の発光体の配置パターンが同心円状であり、
前記メッシュ体の格子が、前記発光体の同心円状の配置パターンの中心と同心である複数の円形格子と、隣接する円形格子間を接続するラジアル格子とからなっており、
前記複数の発光体の半径方向のピッチと、前記複数の円形格子の半径方向のピッチとが異なる大きさにされてなる請求項1に記載の灯器。
【請求項4】
前記複数の発光体の配置パターンが同心円状であり、
前記メッシュ体の格子が、前記発光体の同心円状の配置パターンの中心と同心である複数の円形格子と、隣接する円形格子間を接続するラジアル格子とからなっており、
前記複数の発光体の半径方向のピッチが略均一にされているのに対して、前記複数の円形格子の半径方向のピッチが不均一にされている請求項1に記載の灯器。
【請求項5】
所定のパターンで配置された複数の発光体と、可視光透過性を有し当該複数の発光体を前方で覆うカバー部材とを有する光学ユニットと、
前記カバー部材から前記発光体の前端までの範囲に設けられているパッチ素子と、このパッチ素子の後方にあるグランド素子とを有するアンテナと、
を備えており、
前記パッチ素子は、可視光透過用の開口を有するメッシュ体からなっており、このメッシュ体を構成する格子のパターンと、前記複数の発光体の配置パターンとが異なることを特徴とする交通信号灯器。
【請求項6】
所定のパターンで配置された複数の発光体と、可視光透過性を有し当該複数の発光体を前方で覆うカバー部材とを有する光学ユニットと、
前記カバー部材から前記発光体の前端までの範囲に設けられているパッチ素子と、このパッチ素子の後方にあるグランド素子とを有するアンテナと、
を備えており、
前記パッチ素子は、可視光透過用の開口を有するメッシュ体からなる交通信号灯器であって、
当該交通信号灯器を仰角0〜45°の範囲で見上げた場合における、前記メッシュ体を構成する格子と重なる前記複数の発光体の発光部の割合が、全発光部の数の30%以下となるように、当該メッシュ体のパターンが設定されていることを特徴とする交通信号灯器。
【請求項7】
所定のパターンで配置された複数の発光体と、可視光透過性を有し前記発光体を前方で覆うカバー部材とを有する光学ユニットに組み込まれる灯器用のアンテナユニットであって、
前記カバー部材から前記発光体の前端までの範囲に設けられるパッチ素子と、このパッチ素子の後方に設けられるグランド素子とを有しており、
前記パッチ素子は、可視光透過用の開口を有するメッシュ体からなっており、このメッシュ体を構成する格子のパターンと、前記複数の発光体の配置パターンとが異なることを特徴とする灯器用のアンテナユニット。
【請求項8】
請求項5又は6に記載の交通信号灯器に接続され、当該交通信号灯器の点灯及び消灯を行う交通信号制御機であって、
前記アンテナを介して、前記交通信号灯器の設置された道路上を走行する車両に対して、現在及び将来の前記交通信号灯器の表示に関する信号情報を送信するように構成されていることを特徴とする交通信号制御機。
【請求項1】
所定のパターンで配置された複数の発光体と、可視光透過性を有し当該複数の発光体を前方で覆うカバー部材とを有する光学ユニットと、
前記カバー部材から前記発光体の前端までの範囲に設けられているパッチ素子と、このパッチ素子の後方にあるグランド素子とを有するアンテナと、
を備えており、
前記パッチ素子は、可視光透過用の開口を有するメッシュ体からなっており、このメッシュ体を構成する格子のパターンと、前記複数の発光体の配置パターンとが異なることを特徴とする灯器。
【請求項2】
前記複数の発光体の配置パターンが同心円状であり、前記メッシュ体の格子が、縦格子と、この縦格子と直交する横格子とからなる請求項1に記載の灯器。
【請求項3】
前記複数の発光体の配置パターンが同心円状であり、
前記メッシュ体の格子が、前記発光体の同心円状の配置パターンの中心と同心である複数の円形格子と、隣接する円形格子間を接続するラジアル格子とからなっており、
前記複数の発光体の半径方向のピッチと、前記複数の円形格子の半径方向のピッチとが異なる大きさにされてなる請求項1に記載の灯器。
【請求項4】
前記複数の発光体の配置パターンが同心円状であり、
前記メッシュ体の格子が、前記発光体の同心円状の配置パターンの中心と同心である複数の円形格子と、隣接する円形格子間を接続するラジアル格子とからなっており、
前記複数の発光体の半径方向のピッチが略均一にされているのに対して、前記複数の円形格子の半径方向のピッチが不均一にされている請求項1に記載の灯器。
【請求項5】
所定のパターンで配置された複数の発光体と、可視光透過性を有し当該複数の発光体を前方で覆うカバー部材とを有する光学ユニットと、
前記カバー部材から前記発光体の前端までの範囲に設けられているパッチ素子と、このパッチ素子の後方にあるグランド素子とを有するアンテナと、
を備えており、
前記パッチ素子は、可視光透過用の開口を有するメッシュ体からなっており、このメッシュ体を構成する格子のパターンと、前記複数の発光体の配置パターンとが異なることを特徴とする交通信号灯器。
【請求項6】
所定のパターンで配置された複数の発光体と、可視光透過性を有し当該複数の発光体を前方で覆うカバー部材とを有する光学ユニットと、
前記カバー部材から前記発光体の前端までの範囲に設けられているパッチ素子と、このパッチ素子の後方にあるグランド素子とを有するアンテナと、
を備えており、
前記パッチ素子は、可視光透過用の開口を有するメッシュ体からなる交通信号灯器であって、
当該交通信号灯器を仰角0〜45°の範囲で見上げた場合における、前記メッシュ体を構成する格子と重なる前記複数の発光体の発光部の割合が、全発光部の数の30%以下となるように、当該メッシュ体のパターンが設定されていることを特徴とする交通信号灯器。
【請求項7】
所定のパターンで配置された複数の発光体と、可視光透過性を有し前記発光体を前方で覆うカバー部材とを有する光学ユニットに組み込まれる灯器用のアンテナユニットであって、
前記カバー部材から前記発光体の前端までの範囲に設けられるパッチ素子と、このパッチ素子の後方に設けられるグランド素子とを有しており、
前記パッチ素子は、可視光透過用の開口を有するメッシュ体からなっており、このメッシュ体を構成する格子のパターンと、前記複数の発光体の配置パターンとが異なることを特徴とする灯器用のアンテナユニット。
【請求項8】
請求項5又は6に記載の交通信号灯器に接続され、当該交通信号灯器の点灯及び消灯を行う交通信号制御機であって、
前記アンテナを介して、前記交通信号灯器の設置された道路上を走行する車両に対して、現在及び将来の前記交通信号灯器の表示に関する信号情報を送信するように構成されていることを特徴とする交通信号制御機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−251985(P2009−251985A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−99964(P2008−99964)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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