説明

アンテナユニット

【課題】低コストで汎用性に富み、取り付け作業の工数、部品点数を削減することができるアンテナユニットを提供することができるようにする。
【解決手段】アンテナユニット41は、ハンドル30の長手方向に回路基板51とLFアンテナ53が並べられて構成されている。また、回路基板51とLFアンテナ53の図中下側に、アンロック電極54が設けられ、回路基板51の中央付近の結線により回路基板51と接続される。また、回路基板51上の図中左端部付近の回路パターンとしてロック電極52が構成される。回路基板51などは樹脂43により覆われ、樹脂43の図中中央付近には、V字型の切り込み43aが設けられている。樹脂43は、切り込み43aの位置を中心として右側と左側を図中下側に向けて折り曲げることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナユニットに関し、特に、低コストで汎用性に富み、取り付け作業の工数、部品点数を削減することができるアンテナユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、車両のエントリーシステムとして、鍵を使わずにドアの施錠や開錠を自動的に行ういわゆるパッシブエントリーシステムが実用化されており、今後さらなる普及が見込まれている。
【0003】
パッシブエントリーシステムを構築するに際し、車両のドアに取り付けられたドアハンドル装置内にアンテナと静電容量センサを配置したものが多く用いられている。例えば、静電容量センサは、ドアハンドル内部に収容された金属板などを検出電極とし、ドアハンドルと車両のドアとの間に形成される間隙への手の挿入による静電容量の変化を検知してアンテナを交信状態に遷移させる。
【0004】
例えば、ドアを開放するためにドアハンドルと車両のドアとの間に形成される間隙へ手をいれてドアハンドルに触れると、ドアアンロックのための検出電極の静電容量の変化がドアハンドル内部に設けられた静電容量検出回路により検出され、制御部に入力される。検出信号を受領した制御部は、交信回路を駆動してアンテナから交信電波を放出してユーザが所持する携帯機などとの間で交信し、例えば、携帯機のID等の一致が確認されると、ロック装置の施錠を解除するようになされている。
【0005】
また、例えば、ドアを施錠するためにドアハンドルの表面の所定の位置にユーザが触れると、ドアロックのための検出電極の静電容量の変化がドアハンドル内部に設けられた静電容量検出回路により検出され、制御部に入力される。検出信号を受領した制御部は、交信回路を駆動してアンテナから交信電波を放出してユーザが所持する携帯機などとの間で交信し、例えば、携帯機のID等の一致が確認されると、ロック装置を施錠させるようになされている。
【0006】
なお、上述した静電容量検出回路、および交信回路は、通常、回路基板として構成されてドアハンドル内部に設けられる。
【0007】
このような、LFアンテナと静電容量センサの検出電極が、LFアンテナを全長に渡って覆う合成樹脂製連結部を介して一体として形成されたアンテナユニットも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
このように一体化されたアンテナユニットを用いることで、例えば、取り付け作業の工数を削減したり、部品点数を削減したりすることが可能となる。
【0009】
【特許文献1】特開2003―224410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、パッシブエントリーシステムには、ドアアンロックのための検出電極とドアロックのための検出電極を設ける必要がある。従来のパッシブエントリーシステムでは、通常、ドアアンロックのための検出電極とドアロックのための検出電極とが別々の部品として構成されて取り付けられていた。
【0011】
ドアアンロックのための検出電極およびドアロックのための検出電極を、回路基板およびLFアンテナと一体化させたアンテナユニットを得ることができれば、取り付け作業の工数、部品点数などのさらなる削減が可能となる。
【0012】
また、車両のドアに取り付けられるドアハンドルは、通常、曲線状に構成されることが多く、多彩な形状が創作されている。一方、アンテナユニットのLFアンテナは、フェライトコアなどを用いて構成されるため、形状の自由度が低い。さらに、ドアアンロックのための検出電極は、車両のドア側に向いたドアハンドルの曲面に触れるユーザの手による静電容量の変化を確実に検出する必要があるため、上述したドアハンドルの曲面に沿った形状を与える必要がある。
【0013】
従って、例えば、車両のデザインに伴って、ドアハンドルのデザインが変更される場合など、あらためてアンテナユニットを設計する必要が生じる。このように、従来のアンテナユニットは、汎用性に乏しいという問題があった。
【0014】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、低コストで汎用性に富み、取り付け作業の工数、部品点数を削減することができるアンテナユニットを提供することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のアンテナユニットは、パッシブエントリーシステムを採用した車両のドアのドアハンドルに組み込まれるアンテナユニットであって、ドアをアンロックする場合、ユーザがドアハンドルに触れることで変化する静電容量を検出するためのアンロック電極と、ドアをロックする場合、ユーザがドアハンドルに触れることで変化する静電容量を検出するためのロック電極と、パッシブエントリーシステムにおいてユーザの携帯機と通信するための電磁波の送受信を行うアンテナと、少なくともロック電極、およびアンテナを一体として覆う樹脂とを備え、ロック電極は、アンロック電極またはロック電極による前記静電容量の変化の検出に対応する検出信号を出力する検出回路を有する回路基板上の回路パターンとして構成される。
【0016】
本発明のアンテナユニットにおいては、ドアをアンロックする場合、ユーザがハンドルに触れることで変化する静電容量を検出するためのアンロック電極と、ドアをロックする場合、ユーザがハンドルに触れることで変化する静電容量を検出するためのロック電極と、パッシブエントリーシステムにおいてユーザの携帯機と通信するための電磁波の送受信を行うアンテナと、少なくともロック電極、およびアンテナを一体として覆う樹脂とが設けられ、ロック電極は、アンロック電極またはロック電極による静電容量の変化の検出に対応する検出信号を出力する検出回路を有する回路基板上の回路パターンとして構成される。
【0017】
従って、アンロック電極、ロック電極、回路基板およびLFアンテナが一体化され、それらの機能に対応する部材が別々に用意されたアンテナユニットの場合と比較して、取り付け作業の工数、部品点数などを削減することが可能となる。
【0018】
前記回路基板とアンテナは、ドアハンドルの長手方向に対応する方向に一列に並べて配置され、アンロック電極は、回路基板とアンテナの並べられた方向と平行に配置された金属板として構成されるようにすることができる。
【0019】
前記樹脂は、ドアハンドルの長手方向に対応する方向における回路基板とアンテナとの間の位置において、折り曲げ部を有し、折り曲げ部の位置を中心として折り曲げられるようにすることができる。
【0020】
従って、汎用性に富み、かつ低コストのアンテナユニットを提供することができる。
【0021】
前記アンロック電極は、樹脂が折り曲げられた状態でその形状を保持できる程度の塑性を有する金属板により構成されるようにすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、低コストで汎用性に富み、取り付け作業の工数、部品点数を削減することができるアンテナユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】パッシブエントリーシステムに用いられる車両のドアに取り付けられるドアハンドルの例を示す図である。
【図2】従来のドアハンドルの内部構成を示す図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るアンテナユニットを搭載したドアハンドルの構成例を示す断面図である。
【図4】アンテナユニット41の構成例を説明する図である。
【図5】ドアハンドルの内部に組み込まれるアンテナユニットの例を示す図である。
【図6】アンロック電極とドアハンドルのドアに向かう面との距離について説明する図である。
【図7】アンロック電極とドアハンドルのドアに向かう面との距離について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0025】
まず、パッシブエントリーシステムに用いられるアンテナユニットについて説明する。パッシブエントリーシステムは、例えば、鍵を使わずにドアの施錠や開錠を自動的に行う車両のエントリーシステムである。
【0026】
パッシブエントリーシステムを構築するに際し、車両のドアに取り付けられたドアハンドル装置内にアンテナと静電容量センサを配置したものが多く用いられている。例えば、静電容量センサは、ドアハンドル内部に収容された金属板などを検出電極とし、ドアハンドルと車両のドアとの間に形成される間隙への手の挿入による静電容量の変化を検知してアンテナを交信状態に遷移させる。
【0027】
例えば、ドアを開放するためにドアハンドルと車両のドアとの間に形成される間隙へ手をいれてドアハンドルに触れると、ドアアンロックのための検出電極の静電容量の変化がドアハンドル内部に設けられた静電容量検出回路により検出され、制御部に入力される。すなわち、ドアアンロックのための検出電極にユーザの手が近接することにより発生する静電容量の変化が検出されたとき、検出信号が出力されるのである。
【0028】
検出信号を受領した制御部は、LFアンテナの駆動を制御する交信回路を駆動させてLFアンテナから交信電波を放出してユーザが所持する携帯機などとの間で交信し、例えば、携帯機のID等の一致が確認されると、ロック装置の施錠を解除するようになされている。
【0029】
また、例えば、ドアを施錠するためにドアハンドルの表面の所定の位置にユーザが触れると、ドアロックのための検出電極の静電容量の変化がドアハンドル内部に設けられた静電容量検出回路により検出され、制御部に入力される。検出信号を受領した制御部は、交信回路を駆動してLFアンテナから交信電波を放出してユーザが所持する携帯機などとの間で交信し、例えば、携帯機のID等の一致が確認されると、ロック装置を施錠させるようになされている。
【0030】
なお、上述した静電容量検出回路、および交信回路は、通常、回路基板として構成されてドアハンドル内部に設けられる。
【0031】
図1は、従来のパッシブエントリーシステムに用いられる車両のドアに取り付けられるドアハンドル10の内部構造の外観の例を示す図である。
【0032】
図1aは、ドアハンドル10を表から見た場合の内部構造を示した図であり、図1bは、ドアハンドル10を裏から見た場合の内部構造を示した図である。ドアハンドル10は表から視認可能となるように、車両のドアに取り付けられる。すなわち、車両に近づくユーザは、通常、図1aに示される状態でドアハンドル10を視認することになる。ドアに取り付けられたドアハンドル10の裏側は、車両のドアに向いており、ユーザは、通常、図1bに示されるドアハンドル10の形状を視認することはない。なお、実際のドアハンドル10は、同図に示した内部構造を覆う樹脂のカバーなどが設けられて構成されるので、同図に示される内部構造が外部から直接視認できるわけではない。
【0033】
図1bに示されるドアハンドル10の裏側には、ドアアンロックのための検出電極(以下、アンロック電極と称する)21が取り付けられている。なお、同図の例では、説明の都合上、アンロック電極21が外部に露出するように示されているが、実際には、アンロック電極21は、樹脂のカバーなどにより覆われており、外部に露出しない。
【0034】
図2は、従来のドアハンドル10の内部構造を別の角度から見た図である。この例では、ドアハンドル10内の内部コア部材24にアンロック電極21が取り付けられている。なお、同図においては、アンロック電極21は、視認できない側面に位置する。また、同図には示されていないが、内部コア部材24には、静電容量検出回路、および交信回路を有する回路基板が取り付けられている。
【0035】
また、図2に示されるように、電極保持部材25にドアロックのための検出電極(以下、ロック電極と称する)22が取り付けられている。
【0036】
そして、図2に示されるように、例えば、フェライトコアなどを用いて構成されたLFアンテナ23が設けられており、LFアンテナ23に接続されるハーネス(導電線)などが内部コア部材24の内部の回路基板などに接続される。
【0037】
図1および図2に示されるドアハンドル10においては、アンロック電極21と図示せぬ回路基板が内部コア部材24に取り付けられて一体化されて構成とされている。すなわち、この例においては、内部コア部材24、LFアンテナ23、および電極保持部材25の3点の部品の集合としてアンテナユニットが構成されることになる。
【0038】
本発明においては、ユーザの手が近接することにより発生する静電容量の変化を検出するアンロック電極、ロック電極、およびユーザが所持する携帯機などと交信するLFアンテナ、並びに回路基板を一体化させたアンテナユニットを実現する。
【0039】
図3は、本発明の一実施の形態に係るアンテナユニット41を搭載したドアハンドル30の構成例を示す断面図である。本発明のドアハンドル30の外観は、図1aおよび図1bに示される従来のドアハンドル10の場合とほぼ同様である。ドアハンドル30は、ドアに取り付けるための取り付け部31と取り付け部32を有する構成とされる。ドアハンドル30がドアに取り付けられた状態において、ドアを開放する場合、ユーザはドアハンドル30とドアとの間に形成される間隙へ手をいれてドアハンドル30の面33に触れることになる。
【0040】
なお、ドアハンドル30は、図中中央がやや凹んだ形状とされ、面33も、図中中央が凹んだ曲面として構成されている。すなわち、車両のドアを開閉させる場合、ユーザは、ドアハンドル30を握ってドアを動かすことになるから、ドアハンドル30はユーザにとって握り易い形状とされているのである。
【0041】
また、ドアを施錠する場合、ユーザはドアハンドル30の表側の面34の一部であって、図中左端部付近に触れることになる。
【0042】
図3に示されるようにアンテナユニット41は、ドアハンドル30の内部に設けられ、外部からは視認できないようになされている。
【0043】
アンテナユニット41は、図中水平方向であって、ドアハンドル30の長手方向に回路基板51とLFアンテナ53が並べられて構成されている。また、回路基板51とLFアンテナ53の図中上側に、アンロック電極54が設けられている。
【0044】
なお、図4と図5を参照して詳細は後述するが、アンテナユニット41は、ドアハンドル30の形状に合わせて折り曲げることが可能となるように構成されている。図3は、アンテナユニット41が折り曲げられていない状態を図示したものである。
【0045】
アンテナユニット41の回路基板51の図中左側端部には、ロック電極52が設けられている。このロック電極52は、回路基板51上の回路パターンとして形成されており、実質的には回路基板51の一部として構成される。すなわち、本発明においては、ロック電極52を、専用の部材として設ける必要がない。
【0046】
図4は、アンテナユニット41の構成例を説明する図である。同図においては、アンテナユニット41の断面図が模式的に表されている。なお、同図において、図中上側がドアハンドル30の表に対応し、図中下側がドアハンドル30の裏に対応する。従って、アンテナユニット41が組み込まれたドアハンドル30が車両のドアに取り付けられた状態において、ドアは、図中下側に位置することになる。
【0047】
図4に示されるように、アンテナユニット41は、図中水平方向であって、ドアハンドル30の長手方向に回路基板51とLFアンテナ53が並べられて構成されている。また、回路基板51とLFアンテナ53の図中下側に、アンロック電極54が設けられている。アンロック電極54は、回路基板51の中央付近の結線により回路基板51と接続される。また、回路基板51の図中上側には、所定の回路パターンが構成されており、これにより、静電容量検出回路、交信回路などが回路基板51上に設けられることになる。また、回路基板51上の図中左端部付近の回路パターンとしてロック電極52が構成されることになる。
【0048】
そして、回路基板51、LFアンテナ53、およびアンロック電極54が樹脂43により覆われ、回路基板51、およびLFアンテナ53に接続されるハーネス42が図中右側端部において外部に露出するように構成されている。
【0049】
このように、本発明のアンテナユニット41においては、アンロック電極、ロック電極、回路基板およびLFアンテナが一体化されている。従って、例えば、それらの機能に対応する部材が別々に用意されたアンテナユニットの場合と比較して、取り付け作業の工数、部品点数などを削減することが可能となる。
【0050】
また、樹脂43には、例えば、ホットメルトなどの封止剤が用いられる。樹脂43として他の素材を用いることも可能であるが、樹脂43の内部にLFアンテナ53が設けられているので、例えば、LFアンテナ53のコイルなどを損傷することがないよう、低温で成型できる封止剤などを用いることが望ましい。
【0051】
樹脂43が凝固して成型された状態において、アンテナユニット41は、例えば、断面が長方形となる立方体の形状を有することになる。また、樹脂43の図中中央付近には、前記ハンドルの長手方向に対応する方向と垂直の方向のV字型の切り込みや薄肉部として構成される折り曲げ部43aが設けられている。樹脂43は、矢印61と矢印62で示されるように、折り曲げ部43aの位置を中心として右側と左側を図中下側に向けて折り曲げることができるようになされている。
【0052】
折り曲げ部43aの図中左側には、回路基板51が配置されており、折り曲げ部43aの図中右側には、LFアンテナ53が配置されている。従って、樹脂43を矢印61と矢印62で示されるように折り曲げた場合であっても、回路基板51とLFアンテナ53は折り曲げられることはない。
【0053】
アンロック電極54は、例えば、銅などの金属を素材として薄板状に構成されている。樹脂43を矢印61と矢印62で示されるように折り曲げた場合、アンロック電極54は、樹脂43とともに折り曲げられることになる。なお、アンロック電極54は、折り曲げられた状態でその形状を保持できる程度の剛性、塑性を有する金属板として構成されることが望ましい。樹脂43は、弾性を有するものであり、折り曲げられた後、その力を取り除けば元の形に戻ろうとする性質があるからである。アンロック電極54の塑性により樹脂43の弾性が打ち消され、アンテナユニット41全体として折り曲げられた状態でその形状を保持できるようにすることができる。
【0054】
このような、アンロック電極54は、例えば、厚さ0.3mm程度の薄板状に構成された銅板を用いることにより実現することができる。
【0055】
このような構成とすることで、アンテナユニット41を、ドアハンドル30の形状に合わせて折り曲げることができる。
【0056】
図5は、ドアハンドル30の内部に組み込まれるアンテナユニット41の例を示す図である。同図においては、便宜上、ドアハンドル30の内部が透視できるように表示されている。
【0057】
図5に示されるように、ドアハンドル30は、車両のドアと向かい合う面33が曲線状の面となるように構成されている。このような形状として構成されたドアハンドル30は、ユーザにとって握り易いものとなり、また、車両のデザインとしての統一感を向上させるものとなる。
【0058】
アンテナユニット41は、ドアハンドル30の内部において、折り曲げ部43aの位置を中心として右側と左側が図中下側に向けて折り曲げられた状態で組み込まれている。このようにすることで、アンロック電極54と面33との距離をドアハンドル30の右側から左側に至るまでほぼ均等にすることができるのである。なお、図中の矢印により4通りの位置におけるアンロック電極54と面33との距離が示されている。
【0059】
上述したように、パッシブエントリーシステムにおいては、ドアを開放するためにドアハンドルと車両のドアとの間に形成される間隙へ手をいれてドアハンドルに触れると、アンロック電極54の静電容量の変化がドアハンドル内部に設けられた静電容量検出回路により検出されることでロック装置が解錠されるようになされている。すなわち、アンロック電極54にユーザの手が近接することにより発生する静電容量の変化であって、例えば、閾値以上の変化が検出されたとき、検出信号が出力されることで、ドアがアンロックされるのである。従って、アンロック電極54にユーザの手がどの程度近接するかによって、検出信号が出力されるか否かが定まることになる。
【0060】
アンロック電極54にユーザの手が近接することにより発生する静電容量の変化は、微弱なものであるから、検出信号の出力も、ユーザの手とアンロック電極54との距離の微小な変化によって制御される。
【0061】
図6と図7を参照して、アンロック電極54と面33の距離について説明する。図6と図7は、ドアハンドル30が車両に取り付けられた状態を模式的に示す図である。これらの図においては、内部においてアンロック電極54のみが示されたドアハンドル30の断面図が示されており、図中下側が車両のドアとされ、図中の円によりユーザの指の位置が示されている。
【0062】
例えば、図6に示されるように、直線状のアンロック電極54がドアハンドル30の内部に存在する場合、ドアハンドル30の図中左側と右側では、面33とアンロック電極54との距離が大きく異なってしまう。
【0063】
例えば、図6のドアハンドル30の面33の円82で示される位置をユーザの指が触れた場合、ユーザの指は、アンロック電極54に充分に近接するので、検出信号が出力される。一方、例えば、ドアハンドル30の面33の円81で示される位置をユーザの指が触れた場合、ユーザの指は、アンロック電極54に充分に近接していないので、検出信号が出力されない。このような場合、ユーザは、ドアハンドル30を握ったとき、ドアがアンロックされることもあるが、ドアがアンロックされないこともあると認識してしまう。
【0064】
例えば、ドアをアンロックする場合、ドアハンドル30の面33の図中右側の所定の範囲内を触れるようにユーザに要求することも可能である。しかし、面33は、車両のドアに向って立つユーザからは見えない位置にあるので、面33の特定の位置を指定してユーザに触れされることは難しいのである。
【0065】
このように、車両のドアと向かい合う面33が曲線状の面となるように構成されたドアハンドル30に組み込まれるアンテナユニット41において、アンロック電極54を直線状に構成すると、操作性が劣化する。
【0066】
なお、ドアをロックする場合、ユーザはドアハンドル30の表側の面34の一部に触れることになるから、ロック電極52については、このような制約がない。
【0067】
これに対して、例えば、図7に示されるように、曲線状のアンロック電極54がドアハンドル30の内部に存在する場合、ドアハンドル30の図中左側と右側で、面33とアンロック電極54との距離が大きく異なることはない。
【0068】
例えば、図7のドアハンドル30の面33の円81で示される位置をユーザの指が触れた場合、ユーザの指は、アンロック電極54に充分に近接するので、検出信号が出力される。また、ドアハンドル30の面33の円82で示される位置をユーザの指が触れた場合も、ユーザの指は、アンロック電極54に充分に近接するので、やはり検出信号が出力される。このような場合、ユーザは、ドアハンドル30を握ったとき、常にドアがアンロックされると認識する。
【0069】
なお、図7においては、アンロック電極54が面33と同様の弧状に示されているが、実際のアンロック電極54は、上述したように、折り曲げ部34aの位置で折り曲げられた曲線状の形状となる。
【0070】
このように、車両のドアと向かい合う面33が曲線状の面となるように構成されたドアハンドル30に組み込まれるアンテナユニット41において、アンロック電極54を曲線状に構成すると、操作性が向上するのである。本発明では、上述したように、アンテナユニット41が、折り曲げ部43aの位置を中心として右側と左側が図中下側に向けて折り曲げられた状態で組み込まれるようにして、アンロック電極54を曲線状に構成するようにしたのである。
【0071】
このようにすることで、例えば、図7に示される場合と、ほぼ同様の効果を得ることができる。すなわち、本発明のアンテナユニット41を用いれば、ユーザの手が車両のドアと向かい合う面33のどの部分に触れても、ドアがアンロックされるようにすることができるのである。
【0072】
また、本発明においては、ドアハンドル30の形状が異なるものであった場合でも、同一のアンテナユニット41を用いることが可能となる。例えば、ドアハンドル30の曲線の構成がより円に近い形状である場合、アンテナユニット41をより深く折り曲げればよい。一方、ドアハンドル30の曲線の構成がより直線に近い形状である場合、アンテナユニット41をより浅く折り曲げればよい。
【0073】
このように、本発明のアンテナユニット41を用いれば、例えば、車両のデザインに伴って、ドアハンドルのデザインが変更される場合などでも、あらためてアンテナユニットを設計する必要がない。従って、本発明のアンテナユニット41は、汎用性に富んだものとなる。
【0074】
さらに、本発明においては、上述のように、アンテナユニット41を折り曲げる支点が、折り曲げ部43aの位置とされている。図4を参照して上述したように、折り曲げ部43aは、回路基板51とLFアンテナ53との間に位置しているので、回路基板51とLFアンテナ53は折り曲げる必要がない。このため、例えば、フェライトコアを用いた一般的なLFアンテナ53を用いることができ、また、回路基板51を、フレキシブル基板などを用いて構成する必要もない。従って、本発明においては、低コストで、かつ汎用性に富んだアンテナユニット41を実現することができる。
【0075】
なお、勿論、回路基板51をフレキシブル基板で構成するようにしてもよい。
【0076】
なお、以上においては、本発明のアンテナユニット41は、樹脂43に折り曲げ部43aを設けて、折り曲げ部43aの位置を中心として右側と左側が図中下側に向けて折り曲げられるものとして説明した。しかし、樹脂43を折り曲げずに、アンロック電極54のみが折り曲げられるようにしてアンテナユニットを構成することも可能である。
【0077】
例えば、図4において、樹脂43に折り曲げ部43aを設けず、アンロック電極54の図中左端部のみを、樹脂43により、回路基板51と接着する。そして、アンロック電極54のみを面33の形状に合わせて折り曲げるのである。このように、樹脂43を折り曲げずに、ドアハンドル30の面33の曲線に対応させてアンロック電極54のみが折り曲げられるようにしてもよい。
【0078】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0079】
30 ドアハンドル, 33 面 41 アンテナユニット, 42 ハーネス, 43 樹脂, 43a 折り曲げ部, 51 回路基板, 52 ロック電極, 53 LFアンテナ, 54 アンロック電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッシブエントリーシステムを採用した車両のドアのドアハンドルに組み込まれるアンテナユニットであって、
前記ドアをアンロックする場合、ユーザが前記ドアハンドルに触れることで変化する静電容量を検出するためのアンロック電極と、
前記ドアをロックする場合、ユーザが前記ドアハンドルに触れることで変化する静電容量を検出するためのロック電極と、
前記パッシブエントリーシステムにおいてユーザの携帯機と通信するための電磁波の送受信を行うアンテナと、
少なくとも前記ロック電極、および前記アンテナを一体として覆う樹脂とを備え、
前記ロック電極は、前記アンロック電極または前記ロック電極による前記静電容量の変化の検出に対応する検出信号を出力する検出回路を有する回路基板上の回路パターンとして構成される
アンテナユニット。
【請求項2】
前記回路基板と前記アンテナは、前記ドアハンドルの長手方向に対応する方向に一列に並べて配置され、
前記アンロック電極は、前記回路基板と前記アンテナの並べられた方向と平行に配置された金属板として構成される
請求項1に記載のアンテナユニット。
【請求項3】
前記樹脂は、
前記ドアハンドルの長手方向に対応する方向における前記回路基板と前記アンテナとの間の位置において、折り曲げ部を有し、
前記折り曲げ部の位置を中心として折り曲げられる
請求項2に記載のアンテナユニット。
【請求項4】
前記アンロック電極は、
前記樹脂が折り曲げられた状態でその形状を保持できる程度の塑性を有する金属板により構成される
請求項3に記載のアンテナユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−213082(P2010−213082A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58235(P2009−58235)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】