説明

アンテナ支持柱

【課題】軽量であって、容易にパイプ同士の接合を確実かつ強固にしたアンテナ支持柱を提供すること。
【解決手段】複数のアルミニウム製パイプと、パイプ同士を接合する添接プレート40と、パイプと添接プレートを固定するボルト50及びナット51とを具備する。複数のパイプのうちの少なくとも1つは、同心円状の曲率半径R1を有する外周面11と、接合部において上記曲率半径より大きい曲率半径R2の内側表面12を有するアンテナ取付用の基準パイプ10であり、その他のパイプ20,30における接合部23,33には、基準パイプの外周面及び内側表面と同一の曲率半径R2を有する外側表面21及び内側表面22を設け、添接プレートのパイプ当接面41には、基準パイプの内側表面と同一の曲率半径R2を設ける。これにより、ボルトとナットを締結することによって、接合するパイプと添接プレートを密着させた状態で接合固定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通信用のアンテナを例えば建物の屋上に支持するアンテナ支持柱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のアンテナ支持柱として、例えば鋼管製の複数のパイプに設けたフランジ同士をボルト及びナットを用いて接合する構造のものが採用されている。
【0003】
また、別のアンテナ支持柱として、FRP製の複数のパイプに設けた継手用フランジ同士をボルト及びナットを用いて接合する構造のものが知られている(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】特開2005−318077号公報(特許請求の範囲、段落番号0039,0041、図1,図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前者すなわち鋼管製の複数のパイプをボルト及びナットを用いて接合する構造においては、パイプにフランジを溶接して設けるため、溶接に手間がかかる上、接合面の垂直軸に対する直角度を出すために、溶接→平面切削→燐酸亜鉛処理又はショットブラストで地粗し等の多くの工程が必要であり、製造コストが嵩むという問題があった。また、隅肉溶接部から疲労亀裂が発生する可能性があった。
【0005】
これに対して、後者すなわちFRP製パイプを用いるものは、鋼管製のものに比べて重量の削減を図ることができるが、継手用フランジはFRPパイプの先端に圧入等によって取り付けるため、パイプの作製に手間を要するという問題がある。
【0006】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたのもので、軽量であって、容易にパイプ同士の接合を確実かつ強固にしたアンテナ支持柱を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、この発明は、通信用のアンテナを支持するアンテナ支持柱を前提とし、請求項1記載の発明は、 複数のアルミニウム製パイプと、上記パイプ同士を接合する添接プレートと、上記パイプと添接プレートを固定するボルト及びナットとを具備し、 上記複数のパイプのうちの少なくとも1つは、同心円状の曲率半径を有する外周面と、接合部において上記曲率半径より大きい曲率半径の内側表面を有するアンテナ取付用の基準パイプであり、その他のパイプにおける接合部には、上記基準パイプの外周面及び内側表面と同一の曲率半径を有する外側表面及び内側表面を有し、上記添接プレートのパイプ当接面は、上記基準パイプの内側表面と同一の曲率半径を有する、ことを特徴とする。この発明において、アルミニウムとはアルミニウム合金を含む意味である。
【0008】
また、請求項3記載の発明は、 複数の同一径又は異径のアルミニウム製パイプと、上記パイプ同士を接合する添接プレートと、上記パイプと添接プレートを固定するボルト及びナットと、小径パイプと大径パイプの接合部に配置される内側スペーサ及び外側スペーサとを具備し、 上記複数のパイプのうちの少なくとも1つは、同心円状の曲率半径を有する外周面と、接合部において上記曲率半径より大きい曲率半径の内側表面を有するアンテナ取付用の基準パイプであり、その他のパイプにおける接合部には、上記基準パイプの外周面及び内側表面と同一の曲率半径を有する外側表面及び内側表面を有し、上記添接プレートのパイプ当接面は、上記基準パイプの内側表面と同一の曲率半径を有し、上記内側スペーサのパイプ当接面及び内側表面は、上記基準パイプの内側表面と同一の曲率半径を有し、上記外側スペーサのパイプ当接面は、上記基準パイプの外周面と同一の曲率半径を有する、ことを特徴とする。
【0009】
請求項1記載の発明において、上記ボルトの頭部とパイプとの間に介在される座板を更に具備し、上記座板は、ボルト頭部側当接面が平坦状を有し、パイプ側当接面が上記基準パイプの外周面と同一の曲率半径を有する方が好ましい(請求項2)。
【0010】
請求項3記載の発明において、上記外側スペーサは、上記基準パイプの外周面と同一の曲率半径を有する外側表面を有し、上記ボルトの頭部とパイプとの間に介在される座板を更に具備し、上記座板は、ボルト頭部側当接面が平坦状を有し、パイプ側当接面が上記基準パイプの外周面と同一の曲率半径を有する方が好ましい(請求項4)。
【0011】
また、この発明において、上記添接プレートは、狭隘開口状の溝を有するナット保持部を有し、上記ナット保持部にナットを回転阻止状態に保持する方が好ましい(請求項5)。この場合、上記添接プレートに固設され、上記ナット保持部に保持されるナットを固定する固定部を有するナット押えを更に具備する方が更に好ましい(請求項6)。
【0012】
また、最上部に位置する基準パイプにおける頂部の開口部に、避雷針を設置するための避雷針受座を更に具備し、上記避雷針受座は、避雷針を載置する略ドーナツ状の受座本体と、この受座本体の下面に垂下される複数の取付脚とを具備し、かつ、各取付脚は、上記基準パイプの内側表面と同一の曲率半径の取付表面を有するようにしてもよい(請求項7)。
【0013】
また、上記パイプ、添接プレート、内側スペーサ、外側スペーサ、座板及びナット押えをアルミニウム製押出形材にて形成する方が好ましい(請求項8,9,10,11)。
【0014】
請求項1記載の発明によれば、アンテナ取付用のアルミニウム製の基準パイプと、その他のアルミニウム製のパイプとの内側表面に添接プレートとを密着させた状態で、ボルト及びナットによって接合することができる。また、パイプの接合部は外側表面と内側表面が異なる曲率半径により肉厚に形成されるので、接合部に強度をもたせることができる。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、アンテナ取付用のアルミニウム製の基準パイプと、該基準パイプと異径のアルミニウム製のパイプとの内側表面に、直接又は内側スペーサを介して添接プレートを密着させ、また、小径のパイプの外側表面に外側スペーサを密着させた状態で、ボルト及びナットによって接合することができる。また、パイプの接合部は外側表面と内側表面が異なる曲率半径により肉厚に形成されるので、接合部に強度をもたせることができる。また、異径のパイプを内側スペーサ及び外側スペーサを介して添接プレートを密着させて接合することができるので、最上部に最小径の基準パイプを位置させ、その下部側に順次基準パイプより大径のパイプを位置させて支持柱を形成することができる。
【0016】
請求項2,4記載の発明によれば、座板をボルト頭部とパイプの外側表面又はパイプに密着する外側スペーサに密着させた状態で、ボルトとナットを締結することができる。
【0017】
請求項5記載の発明によれば、添接プレートに設けた狭隘開口状の溝を有するナット保持部にナットを回転阻止状態に保持することにより、閉断面でのボルトの外締めを容易にすることができる。この場合、添接プレートにナット押えを固設して、ナット保持部に保持されるナットを固定することにより、ナットの脱落を防止することができ、ボルトの締結を更に容易にすることができる(請求項6)。
【0018】
請求項7記載の発明によれば、最上部に位置する基準パイプにおける頂部の開口部に取り付けられる避雷針受座は、避雷針を載置する略ドーナツ状の受座本体と、この受座本体の下面に垂下される複数の取付脚とを具備し、かつ、各取付脚は、基準パイプの内側表面と同一の曲率半径の取付表面を有するので、避雷針受座の取付脚を基準パイプの内側表面に密着させた状態で取り付けることができ、避雷針の設置を容易にすることができる。
【0019】
請求項8,9,10,11記載の発明によれば、パイプ、添接プレート、内側スペーサ、外側スペーサ、座板及びナット押えをアルミニウム製押出形材にて形成することにより、アンテナ支持柱の構成部材を容易に作製することができると共に、各構成部材の寸法精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、次のような優れた効果が得られる。
【0021】
(1)請求項1記載の発明によれば、アンテナ取付用のアルミニウム製の基準パイプと、その他のアルミニウム製のパイプとの内側表面に添接プレートとを密着させた状態で、しかも、肉厚に形成された接合部をボルト及びナットによって接合することができるので、支持柱を軽量にすることができ、容易にパイプ同士の接合を確実かつ強固にすることができる。この場合、座板をボルト頭部とパイプの外側表面に密着させた状態で、ボルトとナットを締結することにより、更に強固に接合することができる(請求項2)。
【0022】
(2)請求項3記載の発明によれば、アンテナ取付用のアルミニウム製の基準パイプと、該基準パイプと異径のアルミニウム製のパイプとの内側表面に、直接又は内側スペーサを介して添接プレートを密着させ、また、小径のパイプの外側表面に外側スペーサを密着させた状態で、しかも、肉厚に形成された接合部をボルト及びナットによって接合することができるので、最上部に最小径の基準パイプを位置させ、その下部側に順次基準パイプより大径のパイプを位置させて支持柱を形成することができる。したがって、支持柱を軽量にすることができ、容易にパイプ同士の接合を確実かつ強固にすることができる。この場合、座板をボルト頭部とパイプに密着する外側スペーサに密着させた状態で、ボルトとナットを締結することにより、更に強固に接合することができる(請求項4)。
【0023】
(3)請求項5記載の発明によれば、添接プレートに設けた狭隘開口状の溝を有するナット保持部にナットを回転阻止状態に保持することにより、上記(1),(2)に加えて、更に閉断面でのボルトの外締めを容易にすることができる。この場合、添接プレートにナット押えを固設して、ナット保持部に保持されるナットを固定することにより、ナットの脱落を防止することができ、ボルトの締結を更に容易にすることができる(請求項6)。
【0024】
(4)請求項7記載の発明によれば、最上部に位置する基準パイプにおける頂部の開口部に取り付けられる避雷針受座は、該避雷針受座の取付脚を基準パイプの内側表面に密着させた状態で取り付けることができるので、上記(1),(2)に加えて、更に避雷針の設置を容易かつ確実にすることができる。
【0025】
(5)請求項8,9,10,11記載の発明によれば、パイプ、添接プレート、内側スペーサ、外側スペーサ、座板及びナット押えをアルミニウム製押出形材にて形成することにより、上記(1)〜(4)に加えて、更にアンテナ支持柱の構成部材を容易に作製することができると共に、各構成部材の寸法精度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、この発明の最良の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0027】
図1は、この発明に係るアンテナ支持柱の取付状態を示す概略側面図(a)、(a)のi−i線,ii−ii線及びiii−iii線に沿う要部拡大断面図(b)〜(d)、図2は、図1のI部の断面図、図3は、図2のII−II線に沿う拡大断面図、図4は、図1のIII部断面図、図5は、図4のIV−IV線に沿う拡大断面図、図6は、図4のV−V線に沿う拡大断面図である。
【0028】
上記アンテナ支持柱は、建物1の外壁2の屋上側に上部及び下部ブラケット5,5Aを介して設置されている。この場合、アンテナ支持柱は、アンテナ3を取り付けるための最小径の基準パイプ10が2本と、基準パイプ10より大径の第1のパイプ20が1本と、第1のパイプ20より大径の第2のパイプ30が、2本の3種類の計5本のアルミニウム製の押出形材にて形成されるパイプ部材からなり、これらパイプ10,20,30を後述する添接プレート40とボルト50及びナット51、あるいは、これら添接プレート40、ボルト50及びナット51、内側スペーサ60及び外側スペーサ70や座板80等を用いて接合することによって形成されている。なお、アンテナ支持柱の最上部に位置する基準パイプ10の頂部には、避雷針受座90を介して避雷針4が設置されている。
【0029】
上記基準パイプ10は、図3及び図10(a)に示すように、同心円状の曲率半径R1(例えば、82.5±0.5mm)を有する外周面11と、円周上の例えば5箇所に設けられた接合部13において曲率半径R1より大きい曲率半径R2(例えば、99±0.5mm)の内側表面12を有している。
【0030】
このように基準パイプ10の外周面11を同心円状の曲率半径R1つまり真円(直径:165±1.0mm)にすることにより、360度の全範囲に渡って自由にアンテナ3を取り付けることができる。なお、アンテナ3は、ブラケット3aを介して基準パイプ10の360度の全範囲に取り付けることができる。
【0031】
また、基準パイプ10の接合部13において、内側表面12を曲率半径R1より大きい曲率半径R2とすることにより、接合部13の肉厚をその他の部分より厚くすることができ、接合部13に強度をもたせることができる。
【0032】
上記第1のパイプ20は、図5及び図10(b)に示すように、基準パイプ10より若干大径(例えば、直径約192.5±1.0mm)に形成されており、円周上の5箇所に設けられた接合部23には、基準パイプ10の外周面11と同一の曲率半径R1を有する外側表面21が設けられると共に、基準パイプ10の内側表面12と同一の曲率半径R2を有する内側表面22が設けられている。
【0033】
また、上記第2のパイプ30は、図6及び図10(c)に示すように、第1のパイプ20より若干大径(例えば、直径約220±1.0mm)に形成されており、円周上の5箇所に設けられた接合部33には、第1のパイプ20と同様に、基準パイプ10の外周面11と同一の曲率半径R1を有する外側表面31が設けられると共に、基準パイプ10の内側表面12と同一の曲率半径R2を有する内側表面32が設けられている。
【0034】
一方、上記のように形成される基準パイプ10、第1のパイプ20及び第2のパイプ30を接合する添接プレート40は、図2ないし図6,図11及び図12に示すように、基準パイプ10の内側表面12と同一の曲率半径R2のパイプ当接面41を有するプレート本体42と、このプレート本体42のパイプ当接面41と反対側面に立設される狭隘開口状の溝43を有するナット保持部44とを有するアルミニウム製押出形材にて形成されており、ナット保持部44にナット51を回転阻止状態に保持している。この場合、ナット51に一体に設けられたフランジ部51aが溝43内に摺動自在に挿入され、ナット51の基部が溝の狭隘開口部43a内に回転阻止された状態で挿入されており、プレート本体42に設けられた取付孔42aに合致し得るようになっている。
【0035】
また、ナット51は、添接プレート40に固設されるナット押え45によって、溝43に沿う方向の移動が阻止(固定)されている。この場合、ナット押え45は、図11及び図13に示すように、帯状の基板46と、この基板46の一側面から突出されて、添接プレート40の溝43内に挿入される例えば4個のナット固定部47を有している。また、ナット押え45における両端部のナット固定部47の隣接部には中空状の取付部48が設けられており、この取付部48の底部には取付孔48aが設けられ、この取付孔48aと対向する基板46には例えばドライバ等の工具の挿入孔48bが設けられている。このように構成されるナット押え45は、アルミニウム製の押出形材にて形成されている。
【0036】
上記のように構成されるナット押え45を用いてナット51を固定するには、予め添接プレート40のナット保持部44内にナット51を挿入して保持した状態で、ナット押え45のナット固定部47をナット保持部44の溝43内に挿入してナット51の溝43に沿う方向の移動を阻止した状態で、挿入孔48bを介して取付孔48aに挿入される固定ねじ49をドライバ等の工具によって添接プレート40のプレート本体42にねじ止め(固設)する。これにより、添接プレート40にナット51を固定した状態で、添接プレート40とナット押え45を組み付けることができる。
【0037】
また、上記内側スペーサ60は、図14(a)に示すように、外側のパイプ当接面61と内側表面62が、基準パイプ10の内側表面12と同一の曲率半径R2を有している。なお、内側スペーサ60には、ボルト50を貫通する貫通孔63が設けられている。また、外側スペーサ70は、図14(b)に示すように、内側のパイプ当接面71と外側表面72が、基準パイプ10の外周面11と同一の曲率半径R1を有している。なお、外側スペーサ70には、ボルト50を貫通する貫通孔73が設けられている。上記内側スペーサ60及び外側スペーサ70は、それぞれアルミニウム製押出形材にて形成されている。
【0038】
また、上記ボルト50の頭部50aとパイプ10,20,30の間に介在される座板80は、図15に示すように、ボルト頭部50a側の当接面81が平坦状を有し、パイプ側当接面82が基準パイプ10の外周面11と同一の曲率半径R1を有している。また、座板80には、ボルト50の貫通孔83が設けられている。このように形成される座板80は、アルミニウム製押出形材にて形成されている。
【0039】
次に、上記パイプ10,20,30の接合構造について説明する。
【0040】
<基準パイプ同士の接合>
同一径の基準パイプ10同士を接合する場合は、まず、予め添接プレート40にナット51を固定した状態で、添接プレート40とナット押え45を組み付ける。
【0041】
次に、添接プレート40を接合する一方の基準パイプ10の端部から挿入して添接プレート40の取付孔42aを基準パイプ10に予め設けられた取付孔14に合致させると共に、基準パイプ10の接合部13の外周面11に座板80のパイプ側当接面82を当接させる。
【0042】
このようにして、5箇所の接合部13に添接プレート40と座板80を突出した状態で取り付けた後、例えばEPDM(エチレン・プロピレン共重合体)等の合成ゴム製のパッキン100を介して他方の基準パイプ10を一方の基準パイプ10に当接させる。この状態で、外側からボルト50を、座板80の貫通孔83,他方の基準パイプ10に予め設けられた取付孔14及び添接プレート40の取付孔42aに貫通してナット51に締結する。
【0043】
上記のようにして組み付けることにより、基準パイプ10の内側表面12と添接プレート40のパイプ当接面41とが密着すると共に、基準パイプ10の外周面11と座板80のパイプ側当接面82が密着し、かつ、座板80のボルト頭部側当接面81とボルト50の頭部50aが密着した状態で、同一径の基準パイプ10同士が接合される(図2及び図3参照)。
【0044】
<異径パイプの接合>
異径のパイプ例えば基準パイプ10と第1のパイプ20、あるいは、第1のパイプ20と第2のパイプ30を接合する場合は、基準パイプ10と第1のパイプ20の接合の場合を例にして説明すると、まず、予め添接プレート40にナット51を固定した状態で、添接プレート40とナット押え45を組み付ける。
【0045】
次に、接合する一方のパイプ例えば第1のパイプ20の端部から内方に内側スペーサ60を挿入して、内側スペーサ60のパイプ当接面61を第1のパイプ20の内側表面22に当接し、内側スペーサ60の貫通孔63と第1のパイプ20に予め設けられた取付孔24を合致させた状態で、第1のパイプ20の端部から添接プレート40を挿入して、添接プレート40の取付孔42aを取付孔24に合致させると共に、第1のパイプ20の接合部23の外側表面21に座板80のパイプ側当接面82を当接させる。この状態で、外側からボルト50を、座板80の貫通孔83,第1のパイプ20の取付孔24,添接プレート40の取付孔42a内に挿入し、ナット51に締結して、第1のパイプ20に添接プレート40と座板80を突出した状態に固定する。
【0046】
このようにして、第1のパイプ20の5箇所の接合部23に添接プレート40と座板80を取り付けた後、上記合成ゴム製のパッキン100を介して基準パイプ10を第1のパイプ20に当接させる。この際、基準パイプ10と座板80の間に外側スペーサ70を挿入して、それぞれ同一の曲率半径R1を有する外側スペーサ70のパイプ当接面71を基準パイプ10の外周面11に当接すると共に、外側表面72を座板80のパイプ側当接面82に当接する。そして、この状態で、外側からボルト50を、座板80の貫通孔83,外側スペーサ70の貫通孔73,基準パイプ10の取付孔14及び添接プレート40の取付孔42aに貫通してナット51に締結する。
【0047】
上記のようにして組み付けることにより、添接プレート40のパイプ当接面41が基準パイプ10の内側表面12及び内側スペーサ60の内側表面62に密着すると共に、座板80のパイプ側当接面82が外側スペーサ70の外側表面72と第1のパイプ20の外側表面21に密着し、かつ、座板80のボルト頭部側当接面81とボルト50の頭部50aが密着した状態で、基準パイプ10と第1のパイプ20が接合される(図4ないし図6参照)。
【0048】
なお、第1のパイプ20と第2のパイプ30を接合する場合は、第1のパイプ20の外側表面21に外側スペーサ70のパイプ当接面71を密接し、第2のパイプ30の内側表面32に内側スペーサ60のパイプ当接面61を密接した状態で、上記と同様に、ボルト50とナット51を締結することにより、第1のパイプ20と第2のパイプ30を密着させた状態で接合することができる。
【0049】
上記のようにして基準パイプ10、第1のパイプ20及び第2のパイプ30を接合することによってアンテナ支持体が組み立てられる。なお、このアンテナ支持柱の組立は工場で行うことができる。
【0050】
また、最上部に位置する基準パイプ10の頂部の開口部には、避雷針を設置するための避雷針受座90が取り付けられる。この避雷針受座90は、図7に示すように、避雷針4を載置する略ドーナツ状の受座本体91と、この受座本体91の下面に垂下される複数例えば5個の取付脚92とを具備し、かつ、各取付脚92は、基準パイプ10の内側表面12と同一の曲率半径R2の取付表面93を有している。なお、取付脚92には固定ボルト95の貫通孔94が設けられている。
【0051】
上記のように形成される避雷針受座90は、例えばアルミニウム製鋳物にて形成されている。この避雷針受座90を基準パイプ10の頂部の開口部に取り付けるには、避雷針受座90の取付脚92を基準パイプ10の開口部内に挿入して、取付脚92の取付表面93を基準パイプ10の内側表面12に密接した状態で、基準パイプ10の内方側から固定ボルト95を、取付脚92の貫通孔94及び基準パイプ10に予め設けられた取付孔14に貫通して基準パイプ10の外側に配設された固定ナット96に締結して、避雷針受座90を固定することができる。このようにして取り付けられた避雷針受座90の受座本体91に避雷針4のフランジ部4aを載置した状態で、連結ボルト4bと連結ナット4cを締結して避雷針4を取り付けることができる。
【0052】
また、アンテナ支持柱を建物1に取り付けるには、図1に示すように、最下端部の第2のパイプ30を上部ブラケット5及び下部ブラケット5Aを用いて建物1の外壁2に固定する。
【0053】
上部ブラケット5は、アルミニウム製押出形材にて形成されるパイプ保持体6と、このパイプ保持体6に両端が固定されるアルミニウム製のU形バンド7とで構成されている。この場合、パイプ保持体6は、図8に示すように、第2のパイプ30の側面を保持する円弧状の保持面6aを有する保持片6bと、この保持片6bの両端に直交状に延在する一対の側壁片6cと、これら側壁片6cの基端から外側に直交状に延在するフランジ片6dと、両側壁片6cの基端部と保持片6bの保持面6aの下面とを連結する一対の補強片6eと、両補強片6eの中間部を連結する補助補強片6fとで構成されている。なお、保持片6bにおける保持面6aの端部側下面には、断面略C字状のビスポケット6gが設けられている。また、U形バンド7は、両端部に貫通孔7aが設けられており、パイプ保持体6の側壁片6cに設けられた取付孔6hを介して貫通孔7aを貫通する連結ボルト8aにナット8bを締結することによって第2のパイプ30の外側面を抱持した状態で固定される。
【0054】
また、下部ブラケット5Aは、図9に示すように、アルミニウム製押出形材にて形成されるパイプ保持体6Aと、このパイプ保持体6Aに両端が固定されるアルミニウム製のU形バンド7Aと、パイプ保持体6Aの下部に設けられて第2のパイプ30の下端部を支持する支持部材9とで構成されている。この場合、パイプ保持体6Aは、上部ブラケット5のパイプ保持体6と同様に構成されるので、同一符号を付して説明は省略する。また、U形バンド7Aは、中間部に設けられた透孔7bに後述する連結ボルト8cを貫通する以外は、上部ブラケット5のU形バンド7と同様に構成されている。また、支持部材9は、図9(c)に示すように、水平支持片9aの両端下部に補強片9bを有すると共に、水平支持片9aの中間部の下部に中間補強片9cを有するアルミニウム製押出形材にて形成されている。このように形成される支持部材9は、パイプ保持体6Aに設けられたビスポケット6gを貫通する取付ボルト9dを、水平支持片9aに設けられた貫通孔(図示せず)に貫通してナット9eを締結することによってパイプ保持体6Aの下部に固定される。なお、支持部材9の先端側には、例えばアルミニウム製の小口蓋9fが被覆され、ビス9gによって固定されている。
【0055】
上記のように構成される上部ブラケット5と下部ブラケット5Aを用いて第2のパイプ30を固定するには、まず、上部ブラケット5と下部ブラケット5Aのフランジ片6dに設けられた貫通孔6iに、建物1の外壁2に植設されたアンカーボルト200を貫通し、アンカーボルト200に固定ナット*を締結して、上部ブラケット5と下部ブラケット5Aのパイプ保持体6,6Aを垂直方向に適宜間隔をおいて配置する。次に、アンテナ支持柱の最下端部の第2のパイプ30を両パイプ保持体6,6Aの保持片6bの保持面6aに当接させると共に、第2のパイプ30の下端部を下部ブラケット5Aの支持部材9上に載置する。この状態で、U形バンド7,7Aをそれぞれ第2のパイプ30の外側面に抱持するようにして、U形バンド7,7Aの両端部を、連結ボルト8a及びナット8bを用いて上部ブラケット5と下部ブラケット5Aのパイプ保持体6,6Aに固定する。そして、U形バンド7Aの中間部に設けられた透孔7bと第2のパイプ30の対向する側壁に設けられた貫通孔34に連結ボルト8cを貫通し、連結ボルト8cの突出部にナット8dを締結してU形バンド7Aと第2のパイプ30を固定する。
【0056】
なお、上記実施形態では、基準パイプ10,第1のパイプ20及び第2のパイプ30に設けられる接合部13,23,33が5箇所である場合について説明したが、接合部13,23,33は必ずしも5箇所である必要はなく、少なくとも複数例えば2箇所,3箇所あるいは4箇所であってもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、基準パイプ10が2本、第1のパイプ20が1本、第2のパイプ30が2本の計5本のパイプを接合してアンテナ支持柱を構成する場合について説明したが、必ずしもこの構成である必要はなく、複数のうちの少なくとも1つのパイプがアンテナ3を取り付けるための基準パイプ10であれば、任意の数のパイプ10,20,30を接合してアンテナ支持柱を構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】この発明に係るアンテナ支持柱の取付状態を示す概略側面図(a)、(a)のi−i線に沿う要部拡大断面図(b)、(a)のii−ii線に沿う要部拡大断面図(c)及び(a)のiii−iii線に沿う要部拡大断面図(d)である。
【図2】図1のI部の断面図である。
【図3】図2のII−II線に沿う拡大断面図である。
【図4】図1のIII部断面図である。
【図5】図4のIV−IV線に沿う拡大断面図である。
【図6】図4のV−V線に沿う拡大断面図である。
【図7】この発明における避雷針の取付部を示す断面図(a)及び(a)の一部を断面で示す平面図(b)である。
【図8】上記アンテナ支持柱を建物外壁に取り付ける上部ブラケットを示す側面図(a)及び(a)のVI−VI線に沿う断面図(b)である。
【図9】上記アンテナ支持柱を建物外壁に取り付ける下部ブラケットを示す側面図(a)、(a)のVII−VII線に沿う断面図(b)及び下部ブラケットの支持部材を示す断面図(c)である。
【図10】この発明における異なる径のパイプを示す断面図である。
【図11】この発明における添接プレートとナット押えの組立状態を示す断面図である。
【図12】上記添接プレートの斜視図である。
【図13】上記ナット押えの斜視図である。
【図14】この発明における内側スペーサの断面図(a)及び外側スペーサの断面図(b)である。
【図15】この発明における座板の断面図である。
【符号の説明】
【0059】
3 アンテナ
4 避雷針
10 基準パイプ
11 外周面
12 内側表面
13 接合部
20 第1のパイプ
21 外側表面
22 内側表面
23 接合部
30 第2のパイプ
31 外側表面
32 内側表面
33 接合部
40 添接プレート
41 パイプ当接面
43 溝
43a 狭隘開口部
44 ナット保持部
45 ナット押え
47 ナット固定部
50 ボルト
50a ボルト頭部
51 ナット
60 内側スペーサ
61 パイプ当接面
62 内側表面
70 外側スペーサ
71 パイプ当接面
72 外側表面
80 座板
81 ボルト頭部当接面
82 パイプ側当接面
90 避雷針受座
91 受座本体
92 取付脚
93 取付表面
R1,R2 曲率半径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信用のアンテナを支持するアンテナ支持柱であって、
複数のアルミニウム製パイプと、上記パイプ同士を接合する添接プレートと、上記パイプと添接プレートを固定するボルト及びナットとを具備し、
上記複数のパイプのうちの少なくとも1つは、同心円状の曲率半径を有する外周面と、接合部において上記曲率半径より大きい曲率半径の内側表面を有するアンテナ取付用の基準パイプであり、その他のパイプにおける接合部には、上記基準パイプの外周面及び内側表面と同一の曲率半径を有する外側表面及び内側表面を有し、上記添接プレートのパイプ当接面は、上記基準パイプの内側表面と同一の曲率半径を有する、ことを特徴とするアンテナ支持柱。
【請求項2】
請求項1記載のアンテナ支持柱において、
上記ボルトの頭部とパイプとの間に介在される座板を更に具備し、上記座板は、ボルト頭部側当接面が平坦状を有し、パイプ側当接面が上記基準パイプの外周面と同一の曲率半径を有する、ことを特徴とするアンテナ支持柱。
【請求項3】
通信用のアンテナを支持するアンテナ支持柱であって、
複数の同一径又は異径のアルミニウム製パイプと、上記パイプ同士を接合する添接プレートと、上記パイプと添接プレートを固定するボルト及びナットと、小径パイプと大径パイプの接合部に配置される内側スペーサ及び外側スペーサとを具備し、
上記複数のパイプのうちの少なくとも1つは、同心円状の曲率半径を有する外周面と、接合部において上記曲率半径より大きい曲率半径の内側表面を有するアンテナ取付用の基準パイプであり、その他のパイプにおける接合部には、上記基準パイプの外周面及び内側表面と同一の曲率半径を有する外側表面及び内側表面を有し、上記添接プレートのパイプ当接面は、上記基準パイプの内側表面と同一の曲率半径を有し、上記内側スペーサのパイプ当接面及び内側表面は、上記基準パイプの内側表面と同一の曲率半径を有し、上記外側スペーサのパイプ当接面は、上記基準パイプの外周面と同一の曲率半径を有する、ことを特徴とするアンテナ支持柱。
【請求項4】
請求項3記載のアンテナ支持柱において、
上記外側スペーサは、上記基準パイプの外周面と同一の曲率半径を有する外側表面を有し、上記ボルトの頭部とパイプとの間に介在される座板を更に具備し、上記座板は、ボルト頭部側当接面が平坦状を有し、パイプ側当接面が上記基準パイプの外周面と同一の曲率半径を有する、ことを特徴とするアンテナ支持柱。
【請求項5】
請求項1又は2記載のアンテナ支持柱において、
上記添接プレートは、狭隘開口状の溝を有するナット保持部を有し、上記ナット保持部にナットを回転阻止状態に保持してなる、ことを特徴とするアンテナ支持柱。
【請求項6】
請求項5記載のアンテナ支持柱において、
上記添接プレートに固設され、上記ナット保持部に保持されるナットを固定する固定部を有するナット押えを更に具備してなる、ことを特徴とするアンテナ支持柱。
【請求項7】
請求項1又は3記載のアンテナ支持柱において、
最上部に位置する基準パイプにおける頂部の開口部に、避雷針を設置するための避雷針受座を更に具備し、上記避雷針受座は、避雷針を載置する略ドーナツ状の受座本体と、この受座本体の下面に垂下される複数の取付脚とを具備し、かつ、各取付脚は、上記基準パイプの内側表面と同一の曲率半径の取付表面を有する、ことを特徴とするアンテナ支持柱。
【請求項8】
請求項1記載のアンテナ支持柱において、
上記パイプ及び添接プレートがアルミニウム製押出形材にて形成されている、ことを特徴とするアンテナ支持柱。
【請求項9】
請求項3記載のアンテナ支持柱において、
上記パイプ、添接プレート、内側スペーサ及び外側スペーサがアルミニウム製押出形材にて形成されている、ことを特徴とするアンテナ支持柱。
【請求項10】
請求項2又は4記載のアンテナ支持柱において、
上記座板がアルミニウム製押出形材にて形成されている、ことを特徴とするアンテナ支持柱。
【請求項11】
請求項6記載のアンテナ支持柱において、
上記ナット押えがアルミニウム製押出形材にて形成されている、ことを特徴とするアンテナ支持柱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−295087(P2007−295087A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−117999(P2006−117999)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(000162593)株式会社協和エクシオ (57)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【出願人】(502444733)日軽金アクト株式会社 (107)
【出願人】(000191065)新日軽株式会社 (545)
【Fターム(参考)】