説明

アンテナ装置および通信端末装置

【課題】損失が少なく、簡易な構成で、広帯域のアンテナ装置、およびこのようなアンテナ装置を備えた通信端末装置を構成する。
【解決手段】アンテナ装置101は、アンテナ素子11と、このアンテナ素子11に接続されたインピーダンス変換回路25とを備えている。インピーダンス変換回路25は、第1高周波伝送線路TL1と、第1高周波伝送線路TL1に電磁界結合される第2高周波伝送線路TL2とを備えている。第1高周波伝送線路TL1の第1端E1は給電回路30に接続され、第1高周波伝送線路TL1の第2端E2および第2高周波伝送線路TL2の第2端E2はアンテナ素子11に接続されている。第1高周波伝送線路TL1と第2高周波伝送線路TL2は相互インダクタンスMを介して結合する結合回路を構成する。この相互インダクタンスMがアンテナ素子11のインダクタンス成分を抑制することになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置およびこれを用いた通信端末装置に関し、特に、広い周波数帯域でマッチングのとれたアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話をはじめとする通信端末装置は、GSM(Global System for mobile Communication)(登録商標)、DCS(Digital CommunicationSystem)、PCS(PersonalCommunication Services)、UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)等の通信システム、さらにはGPS(GlobalPositioning system)やワイヤレスLAN、Bluetooth(登録商標)等への対応が求められることがある。したがって、こうした通信端末装置におけるアンテナ装置は、700MHz〜2.7GHzまでの広い周波数帯域をカバーすることが求められる。
【0003】
広い周波数帯域に対応するアンテナ装置としては、特許文献1や特許文献2に開示されているように、LC並列共振回路やLC直列共振回路にて構成された広帯域の整合回路を備えたものが一般的である。また、広い周波数帯域に対応するアンテナ装置として、たとえば特許文献3や特許文献4に開示されているようなチューナブルアンテナが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−336250号公報
【特許文献2】特開2006−173697号公報
【特許文献3】特開2000−124728号公報
【特許文献4】特開2008−035065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1,2に示されている整合回路は複数の共振回路を含むものであるため、この整合回路における挿入損失が大きくなりやすく、十分な利得が得られないことがある。
【0006】
また、特許文献3,4に示されているチューナブルアンテナは、可変容量素子を制御するための回路、すなわち周波数帯域を切り換えるための切替回路、が必要であるので回路構成が複雑になりやすい。また、切替回路での損失や歪みが大きいので十分な利得が得られないことがある。
【0007】
本発明は上述した実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、損失が少なく、簡易な構成で、広帯域のアンテナ装置、およびこのようなアンテナ装置を備えた通信端末装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明のアンテナ装置は、アンテナ素子と、前記アンテナ素子に接続されたインピーダンス変換回路とを含み、
前記インピーダンス変換回路は、第1端および第2端を有する第1高周波伝送線路と、前記第1高周波伝送線路に電磁界結合され、第1端および第2端を有する第2高周波伝送線路と、を備え、
前記第1高周波伝送線路の第1端は給電回路に接続され、前記第1高周波伝送線路の第2端および前記第2高周波伝送線路の第2端は前記アンテナ素子に接続されていることを特徴とする。
【0009】
(2)前記第1高周波伝送線路および前記第2高周波伝送線路は、複数の基材層が積層された積層体の表面または内部に設けられていることが好ましい。
【0010】
(3)前記第1高周波伝送線路および前記第2高周波伝送線路は、ストリップラインまたはマイクロストリップラインであることが好ましい。
【0011】
(4)前記第1高周波伝送線路の、前記第2高周波伝送線路とは反対側に、第1端および第2端を有する第3高周波伝送線路を備え、前記第3高周波伝送線路の第2端は前記アンテナ素子に接続されていることが好ましい。
【0012】
(5)本発明の通信端末装置は、アンテナ素子と、前記アンテナ素子に接続されたインピーダンス変換回路と、前記インピーダンス変換回路に接続された給電回路とを含み、
前記インピーダンス変換回路は、第1端および第2端を有する第1高周波伝送線路と、前記第1高周波伝送線路に電磁界結合され、第1端および第2端を有する第2高周波伝送線路と、を備え、
前記第1高周波伝送線路の第1端は給電回路に接続され、前記第1高周波伝送線路の第2端および前記第2高周波伝送線路の第2端は前記アンテナ素子に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のアンテナ装置によれば、インピーダンス変換回路で等価的に負のインダクタンス成分が生じることで、この負のインダクタンス成分によりアンテナ素子の実効的なインダクタンス成分が抑制され、すなわちアンテナ素子の見かけ上のインダクタンス成分が小さくなり、その結果、アンテナ装置のインピーダンス周波数特性が小さくなる。したがって広帯域に亘ってアンテナ装置のインピーダンス変化を抑制でき、広い周波数帯域に亘って給電回路とインピーダンス整合がとれる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は第1の実施形態のアンテナ装置101の回路図である。
【図2】図2はアンテナ装置101の等価回路図である。
【図3】図3は、インピーダンス変換回路25の等価的な負のインダクタンス成分の作用およびインピーダンス変換回路25の作用を模式的に示す図である。
【図4】図4(A)はインピーダンス変換回路25を多層基板に構成した場合の各基材層の導体パターンの例を示す分解斜視図である。図4(B)はインピーダンス変換回路25の斜視図である。
【図5】図5(A)は第1の実施形態の通信端末装置201の外観図、図5(B)はその内部に設けられたアンテナ装置の構成図である。
【図6】図6(A)は第2の実施形態のアンテナ装置が備えるインピーダンス変換回路の分解斜視図である。図6(B)はそのインピーダンス変換回路の斜視図である。
【図7】図7(A)は3の実施形態のアンテナ装置が備えるインピーダンス変換回路の分解斜視図である。図7(B)はそのインピーダンス変換回路の斜視図である。
【図8】図8は第4の実施形態のアンテナ装置の回路図である。
【図9】図9(A)は4の実施形態のアンテナ装置が備えるインピーダンス変換回路の分解斜視図である。図9(B)はそのインピーダンス変換回路の斜視図である。
【図10】図10は第5の実施形態のアンテナ装置の回路図である。
【図11】図11(A)は5の実施形態のアンテナ装置が備えるインピーダンス変換回路の分解斜視図である。図11(B)はそのインピーダンス変換回路の斜視図である。
【図12】図12は第6の実施形態のアンテナ装置106の回路図である。
【図13】図13は第7の実施形態のアンテナ装置107の回路図である。
【図14】図14(A)はインピーダンス変換回路45の分解斜視図である。図14(B)はインピーダンス変換回路45の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
《第1の実施形態》
図1は第1の実施形態のアンテナ装置101の回路図、図2はその等価回路図である。
図1に示すように、アンテナ装置101は、アンテナ素子11と、このアンテナ素子11に接続されたインピーダンス変換回路25とを備えている。アンテナ素子11は例えばモノポール型アンテナであり、このアンテナ素子11の給電端にインピーダンス変換回路25が接続されている。インピーダンス変換回路25はアンテナ素子11と給電回路30との間に挿入されている。給電回路30は高周波信号をアンテナ素子11に給電するための給電回路であり、高周波信号の生成や処理を行うが、高周波信号の合波や分波を行う回路を含んでいてもよい。
【0016】
インピーダンス変換回路25は、第1端E1および第2端E2を有する第1高周波伝送線路TL1と、第1高周波伝送線路TL1に電磁界結合され、第1端E1および第2端E2を有する第2高周波伝送線路TL2と、を備えている。第1高周波伝送線路TL1の第1端E1は給電回路30に接続され、第1高周波伝送線路TL1の第2端E2および第2高周波伝送線路TL2の第2端E2はアンテナ素子11に接続されている。また、この例では、第2高周波伝送線路TL2の第1端E1はグランドに接続(接地)されている。
【0017】
このインピーダンス変換回路25の第1高周波伝送線路TL1と第2高周波伝送線路TL2は平行2線路による結合回路を構成するので、互いに電磁界結合する。すなわち、インピーダンス変換回路25は、第1高周波伝送線路TL1と第2高周波伝送線路TL2とを相互インダクタンスMを介して結合した回路を含む。この結合回路は、図2に示すように、三つのインダクタンス素子Z1,Z2,Z3によるT型回路に等価変換できる。このT型回路は、給電回路に接続される第1ポートP1、アンテナ素子11に接続される第2ポートP2、グランドに接続される第3ポートP3、第1ポートP1と分岐点Aとの間に接続された第1インダクタンス素子Z1、第2ポートP2と分岐点Aとの間に接続された第2インダクタンス素子Z2、および第3ポートP3と分岐点Aとの間に接続された第3インダクタンス素子Z3で構成される。
【0018】
図1に示した第1高周波伝送線路TL1のインダクタンスをL1、第2高周波伝送線路TL2のインダクタンスをL2、相互インダクタンスをMで表すと、図2の第1インダクタンス素子Z1のインダクタンスはL1+M、第2インダクタンス素子Z2のインダクタンスは−M、第3インダクタンス素子Z3のインダクタンスはL2+Mである。すなわち、第2インダクタンス素子Z2のインダクタンスは、L1,L2の値に関わらず負の値である。すなわち、ここに等価的に負のインダクタンス成分が形成されている。
【0019】
一方、アンテナ素子11は図2に表れているように、等価的にインダクタンス成分LANT、放射抵抗成分Rr、および、キャパシタンス成分CANTで構成される。
【0020】
このアンテナ素子11単体のインダクタンス成分LANTは、インピーダンス変換回路25における負のインダクタンス成分(−M)によって打ち消されるように作用する。すなわち、第2インダクタンス素子Z2とアンテナのインダクタンス成分LANTとによってインダクタンス成分相殺回路部X1が構成され、インピーダンス変換回路のA点からアンテナ素子11側を見たインダクタンス成分は小さく(理想的にはゼロにすることが)なり、その結果、このアンテナ装置101のインピーダンス周波数特性が小さくなる。
【0021】
また、前記T型回路のうち、インダクタンス素子Z1,Z3によるインピーダンス変換回路部T1でインピーダンス比が設定される。
【0022】
図3は、前記インピーダンス変換回路25の等価的な負のインダクタンス成分の作用およびインピーダンス変換回路25の作用を模式的に示す図である。図3において曲線S0はアンテナ素子11の使用周波数帯域に亘って周波数をスイープしたときのインピーダンス軌跡をスミスチャート上に表したものである。アンテナ素子11単体ではインダクタンス成分LANTが比較的大きいので、図2に表れているようにインピーダンスは大きく推移する。
【0023】
図3において曲線S1は、図2に示したインピーダンス変換回路のA点からアンテナ素子11側を見たインピーダンスの軌跡である。このように、インピーダンス変換回路の等価的な負のインダクタンス成分によってアンテナ素子のインダクタンス成分LANTが相殺されて、A点からアンテナ素子側を見たインピーダンスの軌跡は大幅に縮小される。
【0024】
図3において曲線S2は給電回路30から見たインピーダンスすなわちアンテナ装置101のインピーダンスの軌跡である。このように、インピーダンス変換回路部T1によるインピーダンス変換比(L1+L2+2M):L2によって、アンテナ装置101のインピーダンスは50Ω(スミスチャートの中心)に近づく。なお、このインピーダンスの微調整は、前記結合回路に別途インダクタンス素子やキャパシタンス素子を付加することで行ってもよい。
【0025】
このようにして、広帯域に亘ってアンテナ装置のインピーダンス変化を抑制できる。ゆえに、広い周波数帯域に亘って給電回路とインピーダンス整合がとれる。
【0026】
図4(A)はインピーダンス変換回路25を多層基板に構成した場合の各基材層の導体パターンの例を示す分解斜視図である。各基材層は誘電体シートまたは磁性体シートで構成されている。
【0027】
図4(A)に示した範囲で、基材層51にはグランド導体パターン64および引き出しパターン64gが形成されている。基材層52には、第1伝送線路導体パターン61、第2伝送線路導体パターン62および引き出しパターン61a,61f,62a,63gが形成されている。基材層53には、グランド導体パターン65および引き出しパターン65gが形成されている。
【0028】
第1伝送線路導体パターン61、その上下のグランド導体パターン65,64および基材層53,52によって第1のストリップラインが構成される。この第1のストリップラインが第1高周波伝送線路である。同様に、第2伝送線路導体パターン62、その上下のグランド導体パターン65,64および基材層53,52によって第2のストリップラインが構成される。この第2のストリップラインが第2高周波伝送線路である。そして、第1伝送線路導体パターン61と第2伝送線路導体パターン62が所定間隔で平行に配置されていることにより、ストリップラインの平行2線路が構成される。
【0029】
図4(B)はインピーダンス変換回路25の斜視図である。このインピーダンス変換回路25は、図4(A)に示した、各種導体パターンが形成された基材を積層し、外面に端子電極70f,70g,70aを形成したものである。端子電極70fは給電回路30に接続するための端子電極であり、端子電極70gはグランドに接続するための端子電極であり、端子電極70aはアンテナ素子11に接続するための端子電極である。
【0030】
図4(A)に示した引き出しパターン61fは端子電極70fに導通し、図4(A)に示した引き出しパターン61a,62aは端子電極70aに導通し、図4(A)に示した引き出しパターン62g,64g,65gは端子電極70gに導通する。
以上の構成により、図1に示したインピーダンス変換回路25のチップ部品が構成できる。
【0031】
図5(A)は第1の実施形態の通信端末装置201の外観図、図5(B)はその内部に設けられたアンテナ装置の構成図である。この通信端末装置201は例えば携帯電話端末であり、その筐体内にアンテナ素子11、インピーダンス変換回路25および給電回路30が設けられている。筐体内のプリント配線板にはグランド導体21が形成されていて、このグランド導体21がアンテナ装置のグランドとして利用される。
【0032】
このアンテナ装置は、例えばGSM(登録商標)方式やCDMA方式に対応可能なマルチバンド対応型移動体無線通信システム(800MHz帯、900MHz帯、1800MHz帯、1900MHz帯)に用いられるアンテナ装置である。アンテナ素子11は分岐モノポール型アンテナである。分岐モノポール型のアンテナ素子11の第1放射部は主にハイバンド側(1800〜2400MHz帯)のアンテナ放射素子として作用し、第1放射部と第2放射部の両者で主にローバンド側(800〜900MHz帯)のアンテナ素子として作用する。ここで、分岐モノポール型のアンテナ素子11は、それぞれの対応周波数帯で共振する必要はない。インピーダンス変換回路25が、各放射部のもつ特性インピーダンスを給電回路30のインピーダンスにマッチングさせているからである。インピーダンス変換回路25は、例えば、800〜900MHz帯で、第1放射部と第2放射部のもつ特性インピーダンスを給電回路30のインピーダンス(通常は50Ω)にマッチングさせている。これにより、給電回路30から供給されたローバンドの高周波信号を第1放射部および第2放射部から放射させ、または、第1放射部および第2放射部で受信したローバンドの高周波信号を給電回路30に供給することができる。同様に、給電回路30から供給されたハイバンドの高周波信号を第1放射部から放射させ、または、第1放射部で受信したハイバンドの高周波信号を給電回路30に供給することができる。
【0033】
《第2の実施形態》
図6(A)は第2の実施形態のアンテナ装置が備えるインピーダンス変換回路の分解斜視図である。このインピーダンス変換回路は多層基板に構成した例である。図6(B)はこのインピーダンス変換回路の斜視図である。
【0034】
図6(A)に示した範囲で、基材層51にグランド導体パターン64および引き出しパターン64gが形成されている。基材層52には、第1伝送線路導体パターン61および引き出しパターン61a,61fが形成されている。基材層53には、第2伝送線路導体パターン62および引き出しパターン62a,62gが形成されている。基材層54には、グランド導体パターン65および引き出しパターン65gが形成されている。
【0035】
このインピーダンス変換回路は、図6(A)に示した、各種導体パターンが形成された基材を積層し、外面に端子電極70f,70g,70aを形成したものである。図6(A)に示した引き出しパターン61fは端子電極70fに導通し、図6(A)に示した引き出しパターン61a,62aは端子電極70aに導通し、図6(A)に示した引き出しパターン62g,64g,65gは端子電極70gに導通する。
図6(A)に示したように、第1伝送線路導体パターン61と第2伝送線路導体パターン62とを別の層に形成して、基材層の厚み分の間隔で平行に配置してもよい。
【0036】
《第3の実施形態》
図7(A)は3の実施形態のアンテナ装置が備えるインピーダンス変換回路の分解斜視図である。このインピーダンス変換回路は多層基板に構成した例である。図7(B)はこのインピーダンス変換回路の斜視図である。
【0037】
図7(A)に示した範囲で、基材層51にグランド導体パターン64および引き出しパターン64gが形成されている。基材層52には、第1伝送線路導体パターン61および引き出しパターン61a,61fが形成されている。基材層53には、第2伝送線路導体パターン62および引き出しパターン62a,62gが形成されている。基材層54には、グランド導体パターン65および引き出しパターン65gが形成されている。
【0038】
このインピーダンス変換回路は、図7(A)に示した、各種導体パターンが形成された基材を積層し、外面に端子電極70f,70g,70aを形成したものである。図7(A)に示した引き出しパターン61fは端子電極70fに導通し、図7(A)に示した引き出しパターン61a,62aは端子電極70aに導通し、図7(A)に示した引き出しパターン62g,64g,65gは端子電極70gに導通する。
図7(A)に示したように、第1伝送線路導体パターン61および第2伝送線路導体パターン62はメアンダライン形状であってもよい。このことにより、線路の長手方向を短縮化できる。
【0039】
《第4の実施形態》
図8は第4の実施形態のアンテナ装置の回路図である。第1伝送線路導体パターン61および第2伝送線路導体パターン62の形状はそれぞれ矩形のスパイラル状である。
【0040】
図9(A)は4の実施形態のアンテナ装置が備えるインピーダンス変換回路の分解斜視図である。このインピーダンス変換回路は多層基板に構成した例である。図9(B)はこのインピーダンス変換回路の斜視図である。
【0041】
図9(A)に示した範囲で、基材層51に第2伝送線路導体パターン62および引き出しパターン62gが形成されている。基材層52には引き出しパターン63が形成されている。基材層53には、第1伝送線路導体パターン61および引き出しパターン61fが形成されている。基材層53には、第1伝送線路導体パターン61の内終端と引き出しパターン63とを繋ぐビア導体が形成されている。また、基材層52には、第2伝送線路導体パターン62の内終端と引き出しパターン63とを繋ぐビア導体が形成されている。
【0042】
このインピーダンス変換回路は、図9(A)に示した、各種導体パターンが形成された基材を積層し、外面に端子電極70f,70g,70aを形成したものである。図9(A)に示した引き出しパターン61fは端子電極70fに導通し、図9(A)に示した引き出しパターン63は端子電極70aに導通し、図9(A)に示した引き出しパターン62gは端子電極70gに導通する。
図9(A)に示したように、第1伝送線路導体パターン61および第2伝送線路導体パターン62はスパイラル状であってもよい。このことにより、第1伝送線路導体パターン61および第2伝送線路導体パターン62の面方向の拡がりを抑えて全体に縮小化できる。
【0043】
図9の例では第1伝送線路導体パターン61は外周から内周方向へ左回りのパターンとし、第2伝送線路導体パターン62は外周から内周方向へ右回りのパターンとした。すなわち、第1伝送線路導体パターン61と第2伝送線路導体パターン62とを連続したものと見なせば全体に同方向に巻回し、その途中からアンテナ素子が接続される端子へ引き出すように構成した。
【0044】
上記の巻回方向は、第1伝送線路導体パターン61と第2伝送線路導体パターン62とで逆の関係であってもよい。すなわち、第1伝送線路導体パターン61および第2伝送線路導体パターン62のいずれについても、外周から内周方向へ同方向に回るパターンであってもよい。
【0045】
《第5の実施形態》
図10は第5の実施形態のアンテナ装置の回路図である。第1伝送線路導体パターン61および第2伝送線路導体パターン62の形状はそれぞれ矩形のスパイラル状である。
【0046】
図11(A)は5の実施形態のアンテナ装置が備えるインピーダンス変換回路の分解斜視図である。このインピーダンス変換回路は多層基板に構成した例である。図11(B)はこのインピーダンス変換回路の斜視図である。
【0047】
図11(A)に示した範囲で、基材層51にグランド導体パターン64および引き出しパターン64gが形成されている。基材層52には、第1伝送線路導体パターン61、第2伝送線路導体パターン62および引き出しパターン61f,62gが形成されている。基材層53には引き出しパターン63が形成されている。基材層54にはグランド導体パターン65および引き出しパターン65gが形成されている。基材層53には、伝送線路導体パターン61,62の内終端と引き出しパターン63とを繋ぐビア導体が形成されている。
【0048】
このインピーダンス変換回路は、図11(A)に示した、各種導体パターンが形成された基材を積層し、外面に端子電極70f,70g,70aを形成したものである。図11(A)に示した引き出しパターン61fは端子電極70fに導通し、図11(A)に示した引き出しパターン63は端子電極70aに導通し、図11(A)に示した引き出しパターン62g,64g,65gは端子電極70gに導通する。
このように、二つの伝送線路導体パターン61,62を矩形スパイラル状にし、且つ同一平面に並置してもよい。
【0049】
《第6の実施形態》
図12は第6の実施形態のアンテナ装置106の回路図である。
図12に示すように、アンテナ装置106は、アンテナ素子11と、このアンテナ素子11に接続されたインピーダンス変換回路35とを備えている。アンテナ素子11は例えばモノポール型アンテナであり、このアンテナ素子11の給電端にインピーダンス変換回路35が接続されている。インピーダンス変換回路35はアンテナ素子11と給電回路30との間に挿入されている。給電回路30は高周波信号をアンテナ素子11に給電するための給電回路であり、高周波信号の生成や処理を行うが、高周波信号の合波や分波を行う回路を含んでいてもよい。
【0050】
インピーダンス変換回路35は、第1端E1および第2端E2を有する第1高周波伝送線路TL1と、第1高周波伝送線路TL1に電磁界結合され、第1端E1および第2端E2を有する第2高周波伝送線路TL2と、を備えている。第1高周波伝送線路TL1の第1端E1は給電回路30に接続され、第1高周波伝送線路TL1の第2端E2および第2高周波伝送線路TL2の第2端E2はアンテナ素子11に接続されている。また、この例では、第2高周波伝送線路TL2の第1端E1はグランドに接続(接地)されている。
【0051】
図1に示した例と比べると、第1高周波伝送線路TL1の向きと、第2高周波伝送線路TL2の向きとが逆である。第1高周波伝送線路TL1および第2高周波伝送線路TL2の必要な結合度や高周波伝送線路の特性インピーダンスや長さに応じて、このような接続にしてもよい。
【0052】
《第7の実施形態》
図13は第7の実施形態のアンテナ装置107の回路図である。
図13に示すように、アンテナ装置107は、アンテナ素子11と、このアンテナ素子11に接続されたインピーダンス変換回路45とを備えている。アンテナ素子11は例えばモノポール型アンテナであり、このアンテナ素子11の給電端にインピーダンス変換回路45が接続されている。インピーダンス変換回路45はアンテナ素子11と給電回路30との間に挿入されている。給電回路30は高周波信号をアンテナ素子11に給電するための給電回路であり、高周波信号の生成や処理を行うが、高周波信号の合波や分波を行う回路を含んでいてもよい。
【0053】
インピーダンス変換回路45は、第1端E1および第2端E2を有する第1高周波伝送線路TL1、第1高周波伝送線路TL1に電磁界結合され、第1端E1および第2端E2を有する第2高周波伝送線路TL2、第1高周波伝送線路TL1に電磁界結合され、第1端E1および第2端E2を有する第3高周波伝送線路TL3、を備えている。第3高周波伝送線路TL3は、第1高周波伝送線路TL1の第2高周波伝送線路TL2とは反対側に配置されている。
【0054】
第1高周波伝送線路TL1の第1端E1は給電回路30に接続され、第1高周波伝送線路TL1の第2端E2および第2高周波伝送線路TL2,TL3の第2端E2はアンテナ素子11に接続されている。また、この例では、第2高周波伝送線路TL2および第3高周波伝送線路TL3の第1端E1はグランドに接続(接地)されている。
【0055】
このように第1高周波伝送線路TL1を二つの高周波伝送線路TL2,TL3で挟むように配置してもよい。
【0056】
図14(A)は前記インピーダンス変換回路45の分解斜視図である。このインピーダンス変換回路45は多層基板に構成した例である。図14(B)はインピーダンス変換回路45の斜視図である。
【0057】
図14(A)に示した範囲で、基材層51にグランド導体パターン64および引き出しパターン64gが形成されている。基材層52には、第2伝送線路導体パターン62および引き出しパターン62a,62gが形成されている。基材層53には、第1伝送線路導体パターン61および引き出しパターン61a,61fが形成されている。基材層54には、第3伝送線路導体パターン63および引き出しパターン63a,63gが形成されている。基材層55には、グランド導体パターン65および引き出しパターン65gが形成されている。
【0058】
このインピーダンス変換回路は、図14(A)に示した、各種導体パターンが形成された基材を積層し、外面に端子電極70f,70g,70aを形成したものである。図14(A)に示した引き出しパターン61fは端子電極70fに導通し、図14(A)に示した引き出しパターン61a,62a,63aは端子電極70aに導通し、図14(A)に示した引き出しパターン62g,63g,64g,65gは端子電極70gに導通する。
図14(A)に示したように、三つの伝送線路導体パターン61,62,63をそれぞれ別の層に形成して、基材層の厚み分の間隔で平行に配置してもよい。
【0059】
このように第1高周波伝送線路TL1を二つの高周波伝送線路TL2,TL3で挟むようにこれらを配置することによって、線路間の結合度を高めることができる。
【0060】
《他の実施形態》
図4(A)、図6(A)、図7(A)、図14(A)等に示した例では、第1高周波伝送線路および第2高周波伝送線路をストリップラインで構成したが、第1伝送線路導体パターン61と第2伝送線路導体パターン62の一方の面にのみ対向するグランド導体パターンを設けてマイクロストリップラインで構成してもよい。
【0061】
また、図1、図12、図13に示した例では第2高周波伝送線路TL2(および第3高周波伝送線路TL3)の第1端E1を接地した例を示したが、第1高周波伝送線路TL1を含むこれらの高周波伝送線路の必要な結合度や高周波伝送線路の特性インピーダンスや長さに応じて、第2高周波伝送線路TL2(および第3高周波伝送線路TL3)の第1端E1は開放であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
A…分岐点
CANT…キャパシタンス成分
E1…第1端
E2…第2端
L1…第1インダクタンス素子
L2…第2インダクタンス素子
LANT…アンテナ素子のインダクタンス成分
M…相互インダクタンス
P1…第1ポート
P2…第2ポート
P3…第3ポート
Rr…放射抵抗成分
T1…インピーダンス変換回路部
TL1…第1高周波伝送線路
TL2…第2高周波伝送線路
TL3…第3高周波伝送線路
X1…インダクタンス成分相殺回路部
Z1…第1インダクタンス素子
Z2…第2インダクタンス素子
Z3…第3インダクタンス素子
11…アンテナ素子
21…グランド導体
25,35,45…インピーダンス変換回路
30…給電回路
51〜55…基材層
61…第1伝送線路導体パターン
62…第2伝送線路導体パターン
63…第3伝送線路導体パターン
65,64…グランド導体パターン
70f,70g,70a…端子電極
101,106,107…アンテナ装置
201…通信端末装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ素子と、前記アンテナ素子に接続されたインピーダンス変換回路とを含み、
前記インピーダンス変換回路は、第1端および第2端を有する第1高周波伝送線路と、前記第1高周波伝送線路に電磁界結合され、第1端および第2端を有する第2高周波伝送線路と、を備え、
前記第1高周波伝送線路の第1端は給電回路に接続され、前記第1高周波伝送線路の第2端および前記第2高周波伝送線路の第2端は前記アンテナ素子に接続されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記第1高周波伝送線路および前記第2高周波伝送線路は、複数の基材層が積層された積層体の表面または内部に設けられた、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1高周波伝送線路および前記第2高周波伝送線路は、ストリップラインまたはマイクロストリップラインである、請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第1高周波伝送線路の、前記第2高周波伝送線路とは反対側に、第1端および第2端を有する第3高周波伝送線路を備え、
前記第3高周波伝送線路の第2端は前記アンテナ素子に接続されている、請求項1〜3のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項5】
アンテナ素子と、前記アンテナ素子に接続されたインピーダンス変換回路と、前記インピーダンス変換回路に接続された給電回路とを含み、
前記インピーダンス変換回路は、第1端および第2端を有する第1高周波伝送線路と、前記第1高周波伝送線路に電磁界結合され、第1端および第2端を有する第2高周波伝送線路と、を備え、
前記第1高周波伝送線路の第1端は給電回路に接続され、前記第1高周波伝送線路の第2端および前記第2高周波伝送線路の第2端は前記アンテナ素子に接続されていることを特徴とする通信端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−21592(P2013−21592A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154652(P2011−154652)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】