説明

アンテナ装置とこのアンテナ装置を備えた電子機器

【課題】複数の直列共振帯域間で並列共振が発生しないようにして共振帯域のさらなる広帯域化を可能にする。
【解決手段】実施形態に係るアンテナ装置は、一端が給電端子に接続されると共に他端が第1の接地端子に接続され、かつ中間部が折り返されてこの折り返しにより形成された往路部と復路部との間にスタブが設けられた折り返し型のモノポール素子により構成された第1のアンテナ素子と、上記往路部の上記給電端子と上記スタブとの間に挿入されたキャパシタ素子とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、アンテナ装置とこのアンテナ装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機やスマートホン、PDA(Personal Digital Assistant)、タブレット型端末、ナビゲーション端末等に代表される携帯型電子機器では、小型軽量化の観点から筐体のさらなる軽薄短小化が求められており、それに伴いアンテナ装置についても小型化が望まれている。また、最近では1台の携帯端末機器で異なる周波数帯を使用する複数の無線システムと通信できるようにすることが要求されている。
【0003】
そこで従来では、例えば特許文献1に記載されているように、スタブ付の折り返し型の素子からなる第1のアンテナ素子の給電点と近い位置に、当該第1のアンテナ素子とは反対の方向にモノポール素子からなる第2のアンテナ素子を設けた多周波アンテナ装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−166994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、この従来提案されている多周波アンテナ装置では、第1のアンテナ素子自体のインピーダンス帯域の広帯域化が難しく、さらに広帯域化するには第1のアンテナ素子又は第2のアンテナ素子と結合する第3のアンテナ素子を追加する必要があった。このため、アンテナ装置の大型化が避けられなかった。
【0006】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、スタブ付の折り返し型の素子単独でさらなる広帯域化を可能とし、これにより小型で共振帯域の広いアンテナ装置とこのアンテナ装置を備えた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係るアンテナ装置は、折り返し型のモノポール素子により構成された第1のアンテナ素子と、キャパシタ素子とを備えている。第1のアンテナ素子は、一端が給電端子に接続されると共に他端が第1の接地端子に接続され、かつ中間部が折り返されてこの折り返しにより形成された往路部と復路部との間にスタブを設けたものである。キャパシタ素子は、上記第1のアンテナ素子の往路部の上記給電端子とスタブとの間に挿入される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態に係るアンテナ装置を備えた電子機器の構成を示す図。
【図2】図1に示したアンテナ装置における電流分布を示す図。
【図3】図1に示したアンテナ装置によるVSWR周波数特性を、キャパシタ素子を設けていない場合と対比して示す図。
【図4】図1に示したアンテナ装置によるインピーダンス特性を、キャパシタ素子を設けていない場合と対比して示すスミスチャート。
【図5】図1に示したアンテナ装置においてキャパシタ素子の最良の設置位置を示す図。
【図6】図1に示したアンテナ装置においてキャパシタ素子の設置可能範囲を説明するための図。
【図7】図1に示したアンテナ装置においてキャパシタ素子の好ましくない設置位置を説明するための図。
【図8】図5に示した構成と図7に示した構成におけるVSWR周波数特性を対比して示した図。
【図9】図5に示した構成と図6に示した構成におけるVSWR周波数特性を対比して示した図。
【図10】第2の実施形態に係るアンテナ装置を備えた電子機器の構成を示す図。
【図11】図10に示したアンテナ装置によるインピーダンス特性を、キャパシタ素子を設けていない場合と対比して示すスミスチャート。
【図12】第3の実施形態に係るアンテナ装置を備えた電子機器の構成を示す図。
【図13】図10に示したアンテナ装置の変形例を示す図。
【図14】第4の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示す図。
【図15】折り返し型モノポール素子の第1の変形例群を示す図。
【図16】折り返し型モノポール素子の第2の変形例群を示す図。
【図17】モノポール素子の第1の変形例群を示す図。
【図18】モノポール素子の第2の変形例群を示す図。
【図19】無給電素子の第1の変形例群を示す図。
【図20】無給電素子の第2の変形例群を示す図。
【図21】無給電素子の第3の変形例群を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係るアンテナ装置を備えた電子機器の構成を示す図である。この電子機器は、無線インタフェースを備えたノート型のパーソナル・コンピュータやテレビジョン受信機からなり、図示しない筐体内には印刷配線基板1が収容される。
【0010】
なお、電子機器は、ノート型のパーソナル・コンピュータやテレビジョン受信機以外に、携帯電話機、スマートホン、PDA(Personal Digital Assistant)、タブレット型端末或いはナビゲート端末等の携帯型端末であってもよい。また印刷配線基板1は、金属筐体の一部を利用したり、銅箔などの金属部材で構成してもよい。
【0011】
上記印刷配線基板1は、第1のエリア1aと第2のエリア1bとを有する。第1のエリア1aにはアンテナ装置4が設けられる。第2のエリア1bには接地パターン3が形成され、さらに第1及び第2の接地端子31,32が設けられている。なお、印刷配線基板1の裏面側には、電子機器を構成するために必要な複数の回路モジュールが実装される。回路モジュールの中には無線ユニット2が含まれる。
【0012】
無線ユニット2は、通信対象となる無線システムに割り当てられたチャネル周波数を用いて無線信号を送受信する機能を有する。また、上記第1のエリア1aには給電端子(給電点)22が設けられ、この給電端子22には給電パターン21を介して上記無線ユニット2が接続される。
【0013】
ところで、上記アンテナ装置4は次のように構成される。
すなわち、このアンテナ装置4は、第1のアンテナ素子としての折り返し型のモノポール素子41を備えている。折り返し型のモノポール素子41は、全体をほぼ二分する位置でヘアピン状に折曲形成された形状を有する導電パターンからなり、その一端が上記給電端子22に接続されると共に、他端が上記第1の接地端子31に接続される。また、上記折り返しにより形成される往路部と復路部との間にはスタブ411が設けられている。具体的には、スタブ411は、上記給電端子22と上記往路部上の中央位置との間の任意の点と、上記第1の接地端子31と上記復路部上の中央位置との間の任意の点との間に接続される。
【0014】
上記スタブ付の折り返し型モノポール素子41の素子長は、上記給電端子22から折り返し位置を経て第1の接地端子31に至る電気長が、予め設定された第1の共振周波数f1 に対応する波長λ1 の略1/2に設定されている。なお、上記第1の共振周波数f1 は、例えばLTE(Long Term Evolution)を採用した無線システムが使用する帯域(700MHz 〜900MHz )に設定される。また、上記給電端子22と第1の接地端子31との間の距離は、上記第1の共振周波数f1 に対応する波長λ1 の略1/5以下に設定される。
【0015】
ところで、上記スタブ付の折り返し型モノポール素子41において、往路部の上記給電端子22とスタブ411との間にはキャパシタ素子5が挿入されている。このキャパシタ素子5のキャパシタンスC[pF]は、上記共振周波数f1 に対応する角周波数をω1 としたとき、1/ω1 C<250[Ω]の範囲に設定される。但し、900MHz 帯においては、VSWRをしきい値である“5”未満に維持するには、キャパシタ素子5のキャパシタンスCは約0.7pFに設定する必要がある。
【0016】
このような構成であるから、キャパシタ素子5を設けたことで、スタブ付の折り返し型モノポール素子41上には、図2に示すように第1の接地端子31からスタブ411を介してキャパシタ素子5に至る区間による第1の共振モードfaと、第1の接地端子31からスタブ411を介して折り返し端に至る区間による第2の共振モードfbと、給電端子22からキャパシタ素子5を介して折り返し位置に至る区間による第3の共振モードfcがそれぞれ発生する。このため、これら3つの共振モードfa,fb,fcを利用することで、アンテナ装置のインピーダンス帯域を広帯域化することが可能となる。
【0017】
図4は、この実施形態に係るアンテナ装置によるインピーダンス特性を、キャパシタ素子5を設けていない場合と対比して示したスミスチャートである。図3は、上記3つの共振モードfa,fb,fcを合成したときの電圧定在波比(VSWR)の周波数特性を、キャパシタ素子5を設けない場合と対比して示したものである。同図から明らかなように、キャパシタ素子5を設けたことにより、共振帯域は720MHz 〜1,100MHz に広帯域化される。
【0018】
ちなみに、キャパシタ素子5を設けない場合には、図2に示すように復路部の第1の接地端子31から折り返し端までの区間に共振モードfoが発生し、共振モードfaは発生しない。このため、共振帯域の広帯域化は望めない。
【0019】
なお、アンテナ装置の共振帯域はキャパシタ素子5の設置位置に応じて変化する。例えば、図5に示すようにキャパシタ素子5を給電端子22近傍に挿入した場合と、図6に示すように給電端子22からスタブ411までの区間の中間位置に挿入した場合と、図7に示すようにスタブ411と折り返し端との間に挿入した場合のそれぞれについてVSWR周波数特性を求めると、図8及び図9に示すようになる。
【0020】
すなわち、キャパシタ素子5を給電端子22とスタブ411との間のどの位置に配置しても共振帯域を広帯域化することが可能である。このうち、特に給電端子22に近ければ近いほど800MHz 以下の低周波域における広帯域化の効果は大きくなる。なお、キャパシタ素子5を図7に示すようにスタブ411と折り返し端との間に挿入した場合には、図8に示すように広帯域化の効果は得られない。
【0021】
以上詳述したように第1の実施形態では、スタブ付の折り返し型モノポール素子41の給電端子22からスタブ411までの区間にキャパシタ素子5を挿入している。したがって、スタブ付の折り返し型モノポール素子41の第1の接地端子31からスタブ411を介してキャパシタ素子5に至る区間に共振モードfaを新たに発生させることができ、これによりキャパシタ素子5を挿入しただけのきわめて簡単な構成でありながら、アンテナ装置の共振帯域を広帯域化することが可能となる。
【0022】
また、スタブ付の折り返し型モノポール素子41の給電端子22と第1の接地端子31との間の距離Dを、第1の共振周波数f1 に対応する波長λ1 の1/5以下になるように設定している。このようにすると、スタブ付の折り返し型モノポール素子41による直列共振を発生させることができ、これにより共振帯域を効果的に広帯域化することができる。ちなみに、距離Dを長く設定した場合には十分な直列共振が発生せず、第1の共振周波数f1 を設定できなくなる。
【0023】
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係るアンテナ装置は、上記スタブ付の折り返し型モノポール素子41にモノポール素子42を追加したものである。
図10は、第2の実施形態に係るアンテナ装置を備えた電子機器の構成を示す図である。なお、同図において前記図1と同一部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。第2の実施形態のアンテナ装置は、第1のアンテナ素子としての折り返し型のモノポール素子41と、第2のアンテナ素子としてのモノポール素子42を備えている。これらの素子41,42は、接地パターン3に対し最も近い位置に折り返し型のモノポール素子41が配置され、その外側にモノポール素子42が配置される。
【0024】
モノポール素子42は、L字型をなす導電パターンからなり、基端が上記スタブ付の折り返し型モノポール素子41の一部とキャパシタ素子5を介して給電端子22に接続され、先端が開放されている。このモノポール素子42の素子長は、上記給電端子22から先端までの電気長が予め設定された第2の共振周波数f2 に対応する波長λ2 の略1/4の長さに設定されている。なお、第2の共振周波数f2 は、例えば3G規格の無線システムが使用する帯域(1.7GHz 〜1.9GHz )に設定される。
【0025】
この第2の実施形態によれば、スタブ付の折り返し型モノポール素子41にモノポール素子42を追加したことによって、例えばスタブ付の折り返し型モノポール素子41による700MHz 〜900MHz の帯域(LTE(Long Term Evolution)を採用した無線システムが使用する帯域に加え、モノポール素子42により例えば3G規格の無線システムが使用する帯域(1.7GHz 〜1.9GHz )をカバーすることが可能となる。
【0026】
しかも、スタブ付の折り返し型モノポール素子41及びモノポール素子42を何れもキャパシタ素子5を介して給電端子22に接続したことによって、スタブ付の折り返し型モノポール素子41の共振帯域の広帯域化を図った上で、モノポール素子42のインピーダンスを50Ω近辺に調整することが可能となり、これによりモノポール素子42の整合を改善することができる。
【0027】
図11は、モノポール素子42の共振周波数f2 におけるインピーダンス特性を示すスミスチャートであり、キャパシタ素子5を設けた場合のインピーダンス特性をキャパシタ素子5を設けない場合と対比して示したものである。同図からも、キャパシタ素子5を設けることでモノポール素子42のインピーダンスを50Ω近辺に調整できるようになることが明らかである。
【0028】
[第3の実施形態]
第3の実施形態に係るアンテナ装置は、スタブ付の折り返し型モノポール素子41に、モノポール素子42を追加し、さらに無給電素子43を追加したものである。
図12は、第3の実施形態に係るアンテナ装置を備えた電子機器の構成を示す図である。なお、同図において前記図1及び図10と同一部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0029】
第3の実施形態のアンテナ装置は、第1のアンテナ素子としての折り返し型のモノポール素子41と、第2のアンテナ素子としてのモノポール素子42と、第3のアンテナ素子としての無給電素子43とを備えている。これらの素子41,42,43は、接地パターン3に対し最も近い位置に折り返し型のモノポール素子41が配置され、その外側に接地パターン3から離間するに従いモノポール素子42及び無給電素子43が順に配置される。
【0030】
無給電素子43は、L字型をなす導電パターンからなり、基端が第2の接地端子32に接続されると共に先端が開放されている。この無給電素子43の素子長は、上記第2の接地端子32から先端までの電気長が予め設定された第3の共振周波数f3 に対応する波長λ3 の略1/4の長さに設定されている。またこの無給電素子43は、その先端側の水平部位の少なくとも一部が上記モノポール素子42の水平部位と電流結合が可能な状態に並行して配置される。第3の共振周波数f3 は、例えば上記LTE用の無線システムが使用する帯域又は3G規格の無線システムが使用する帯域を広帯域化するために、第1の共振周波数f1 又は第2の共振周波数f2 と近接する帯域に設定される。
【0031】
また、上記スタブ付の折り返し型モノポール素子41、モノポール素子42及び無給電素子43の各素子長とその相対位置は、上記第1、第2及び第3の各共振周波数f1 ,f2 ,f3 の関係が、f1 <f2 <f3 、又はf1 <f3 <f2 となるように設定される。これは、接地パターン3に近い素子ほど大きな電流が流れ、インピーダンスが低くなることから、スタブ付の折り返し型モノポール素子41に最も低い共振周波数を発生させることが望ましいためである。
【0032】
このように第3の実施形態では、接地パターン3に対し最も近い位置にスタブ付の折り返し型モノポール素子41を配置し、その外側に接地パターン3から離間するに従いモノポール素子42及び無給電素子43を順に配置するようにしている。このように構成すると、スタブ付折り返し型モノポール素子41及びモノポール素子42と無給電素子43との間において、その直列共振間の帯域で並列共振が発生せず、これにより不整合損失の増加や放射効率の劣化が生じないようにすることができる。このため、無給電素子43と、折り返し型のモノポール素子41及びモノポール素子42との間では干渉が発生せず、これによりLTE用の無線システムが使用する帯域又は3G規格の無線システムが使用する帯域をさらに広帯域化することが可能となる。
【0033】
すなわち、第3の実施形態によれば、無給電素子43の素子長を任意の長さに設定するだけで、第3の共振周波数f3 を折り返し型のモノポール素子41及びモノポール素子42との間で干渉を生じることなく、独立して上記第1又は第2の共振周波数f1 ,f2 近傍の任意の帯域に設定することが可能となり、これにより第1又は第2の共振周波数f1 ,f2 のさらなる広帯域化が可能となる。
【0034】
しかも、先に述べた第2の実施形態と同様に、スタブ付の折り返し型モノポール素子41及びモノポール素子42を何れもキャパシタ素子5を介して給電端子22に接続したことによって、スタブ付の折り返し型モノポール素子41の共振帯域の広帯域化を図った上で、モノポール素子42のインピーダンスを50Ω近辺に調整することが可能となり、これによりモノポール素子42の整合を改善することができる。
【0035】
なお、第3の実施形態に係るアンテナ装置の変形例として、以下のような構成が考えられる。図13はその構成を示す図である。なお、同図において前記図12と同一部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
スタブ付の折り返し型モノポールアンテナ41は、そのスタブ411の設置位置から折り返し位置までの区間を、板状をなす1つの素子412により構成している。なお、この1つの素子412は板状以外にロッド状に構成してもよい。
このように構成すると、折り返し型モノポール素子41のスタブ411から折り返し位置までの区間の構造的強度高めることが可能となり、アンテナ装置を作成する際の歩留まりを高めることが可能となる。
【0036】
[第4の実施形態]
第4の実施形態に係るアンテナ装置は、接地パターン3の一辺を階段状に形成し、給電ケーブル23を上記接地パターン3の辺に沿って配線し、その心線を上記階段状に形成された辺33から第1のエリア1aに突出させて、給電端子22に接続するように構成したものである。
【0037】
図14は、第4の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示す図である。なお、同図においても前記図12と同一部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
印刷配線基板1に形成された接地パターン3は、その第1のエリア1aと接する辺が階段状(クランク状)に形成されている。そして、接地パターン3上の、上記第1のエリア1aに突出した部位には、その辺に沿って給電ケーブル23が配置される。給電ケーブル23は導電線24をシールドした同軸ケーブルからなり、そのシールド線は接地パターン3に設けた接地端子33において接地される。また、第1のエリア1aの、上記接地パターン3の階段部33と対向する位置には、給電端子22が設けられている。上記給電ケーブル23の心線は、上記階段部33から第1のエリア1aへ突出して、上記給電端子22に対し接続される。なお、上記接地端子33に対するシールド線の接続、及び上記給電端子22に対する心線の接続には、何れもはんだ付けが用いられる。
【0038】
このような構成であるから、給電ケーブル23を無理な形状に曲げることなく接地パターン3の辺に沿って配置することが可能となり、これにより印刷配線基板1のスペースを有効に利用して単位面積当たりの電子部品の実装効率を高めることができ、さらに装置の信頼性を高めることができる。
【0039】
また、第3の実施形態と同様に、スタブ付の折り返し型モノポール素子41及びモノポール素子42を何れもキャパシタ素子5を介して給電端子22に接続したことによって、スタブ付の折り返し型モノポール素子41の共振帯域の広帯域化を図った上で、モノポール素子42のインピーダンスを50Ω近辺に調整することが可能となり、これによりモノポール素子42の整合を改善することができる。
【0040】
[その他の実施形態]
(1)スタブ付の折り返し型モノポール素子41の変形例
図15(a)〜(e)及び図16(a)〜(e)は、スタブ付の折り返し型モノポール素子41の各種変形例を示すものである。
図15(a)に示すアンテナ装置は、スタブ付の折り返し型モノポール素子41のスタブ411の設置位置から折り返し端までの区間を、モノポール素子42の方向に折り返し形成したものである。このように構成すると、スタブ付の折り返し型モノポール素子41の素子長が長い場合でも、アンテナ装置の素子の長さ方向の設置スペースを小型化することが可能となる。
【0041】
図15(b)に示すアンテナ装置は、スタブ付の折り返し型モノポール素子41の、折り返しにより形成された往路部と復路部との間に、複数のスタブ4111,4112を設けたものである。この構成により、さらなる多共振化が可能となる。なお、スタブの数は2個に限定されるものではなく、3個以上でもよい。
【0042】
図15(c)に示すアンテナ装置は、スタブ付の折り返し型モノポール素子41の給電端子22に近い部位を幅広に形成したものである。この場合、キャパシタ素子5は上記幅広に形成された部位と給電端子22との間に接続される。
図15(d)に示すアンテナ装置は、スタブ付の折り返し型モノポール素子41の第1の接地端子31に近い部位を幅広に形成したものである。
図15(e)に示すアンテナ装置は、スタブ付の折り返し型モノポール素子41の接地パターン3に対する接地位置、つまり第1の接地端子31の位置を、当該スタブ付の折り返し型モノポール素子41の先端方向にオフセットしたものである。
【0043】
図16(a)に示すアンテナ装置は、スタブ付の折り返し型モノポール素子41のスタブ411の設置位置から折り返し端までの区間を1本の素子により構成し、かつこの1本の素子をメアンダ型に構成したものである。
図16(b)に示すアンテナ装置は、スタブ付の折り返し型モノポール素子41の、折り返しにより形成された往路部と復路部との間に、複数のスタブ4111,4112を設け、さらにこのスタブ4112の設置位置から折り返し端までの区間を1本の素子により構成したものである。
【0044】
図16(c)に示すアンテナ装置は、スタブ付の折り返し型モノポール素子41及びモノポール素子42の給電端子22に近い部位421を幅広に形成したものである。
図16(d)に示すアンテナ装置は、スタブ付の折り返し型モノポール素子41のスタブ411の設置位置から折り返し端までの区間のうちの中間部から先端部までを、板状をなしかつ幅広の素子412により構成したものである。
【0045】
図16(e)に示すアンテナ装置は、スタブ付の折り返し型モノポール素子41及びモノポール素子42の給電端子22に近い部位にキャパシタ素子5を挿入すると共に、スタブ付の折り返し型モノポール素子41のモノポール素子42との分岐位置からスタブ411の設置位置までの間、及びスタブ付の折り返し型モノポール素子41の第1の接地端子31に近い部位に、それぞれ集中定数素子61,62を挿入したものである。集中定数素子61,62はインダクタからなり、スタブ付の折り返し型モノポール素子41の電気長を長くする機能を有する。
【0046】
(2)モノポール素子42の変形例
図17(a)〜(e)及び図18(a)〜(d)は、モノポール素子42の各種変形例を示すものである。
図17(a)に示すアンテナ装置は、モノポール素子42の先端部位を無給電素子43の方向へ折り返し形成したものである。このようにすると、モノポール素子42の素子長が長い場合でも、アンテナ装置の素子の長さ方向の設置スペースを小型化することが可能となる。
【0047】
図17(b)に示すアンテナ装置は、モノポール素子42の先端部位423を幅広に形成したものである。
図17(c)に示すアンテナ装置は、モノポール素子42とスタブ付の折り返し型モノポール素子41との間を、その互いに並行する位置において、接続素子424により接続したものである。
【0048】
図17(d)に示すアンテナ装置は、モノポール素子42の先端部位を分岐して追加素子425を設けたものである。なお、同図では追加素子425を1本設けた場合を例示したが、2本以上設けてもよい。
図17(e)に示すアンテナ装置は、モノポール素子42をスタブ付の折り返し型モノポール素子41の途中で分岐させずに、給電端子22もしくはそれに近い位置で分岐させるようにしたものである。すなわち、この例ではモノポール素子42と給電端子22との間にはキャパシタ素子5は挿入されず、キャパシタ素子5は給電端子22とスタブ付の折り返し型モノポール素子41のスタブとの間のみに挿入される。
【0049】
図18(a)に示すアンテナ装置は、モノポール素子42の先端部位426をメアンダ型に構成したものである。
図18(b)に示すアンテナ装置は、モノポール素子42のスタブ付の折り返し型モノポール素子41の接続部位427を幅広に形成したものである。
図18(c)に示すアンテナ装置は、モノポール素子42に対し当該モノポール素子42の折曲方向とは逆の方向に第2のモノポール素子428を設けたものである。なお、同図では第2のモノポール素子428を1本設けた場合を例示したが、2本以上設けてもよい。
図18(d)に示すアンテナ装置は、モノポール素子42の、スタブ付の折り返し型モノポール素子41との接続部位近傍に、集中定数素子64を挿入したものである。集中定数素子64はインダクタからなり、モノポール素子42の電気長を長くする機能を有する。
【0050】
(3)無給電素子43の変形例
図19(a)〜(e)、図20(a)〜(d)及び図21(a)〜(e)は、無給電素子43の各種変形例を示すものである。
図19(a)に示すアンテナ装置は、無給電素子43の先端部位431をモノポール素子42の方向に折り返し形成したものである。
図19(b)に示すアンテナ装置は、無給電素子43の先端部位432をメアンダ型に構成したものである。これらのように構成すると、無給電素子43の素子長が長い場合でも、アンテナ装置の素子の長さ方向の設置スペースを小型化することが可能となる。
図19(c)に示すアンテナ装置は、無給電素子43の先端部位433を幅広の板状に形成したものである。なお、当該先端部位433は基端部位より径の大きいロッドであってもよい。
図19(d)に示すアンテナ装置は、無給電素子43の先端部位を複数に分岐して複数の素子4341,4342を設けたものである。なお、同図では先端部位を2本に分岐した場合を例示したが、3本以上に分岐してもよい。
図19(e)に示すアンテナ装置は、給電端子22と第2の接地端子32との間に、複数の無給電素子43,45を設けたものである。
【0051】
図20(a)に示すアンテナ装置は、無給電素子43の中間部位435をメアンダ型に構成したものである。これらのように構成することによっても、無給電素子43の素子長が長い場合に、アンテナ装置の素子の長さ方向の設置スペースを小型化することが可能となる。
【0052】
図20(b)に示すアンテナ装置は、無給電素子43の第2の接地端子32に近い基端部436を幅広に形成したものである。
図20(c)に示すアンテナ装置は、無給電素子43をそのL字型に折曲した位置において複数に分岐して複数の素子4371,4372を設けたものである。なお、同図では2本に分岐した場合を例示したが、3本以上に分岐してもよい。
図20(d)に示すアンテナ装置は、無給電素子43の、第2の接地端子32との接続位置近傍に、集中定数素子65を挿入したものである。集中定数素子65はインダクタからなり、無給電素子43の電気長を長くする機能を有する。
【0053】
図21(a)に示すアンテナ装置は、逆L型をなす無給電素子43を、スタブ付の折り返し型モノポール素子41及びモノポール素子42と上下方向に重ねた状態で、これらのモノポール素子41,42とは逆向きに配置したものである。
図21(b)に示すアンテナ装置は、無給電素子43をスタブ付の折り返し型モノポール素子41と接地パターン3との間に配置したものである。これらのように構成すると、各素子41〜43の積層方向の設置スペースを低減して、アンテナ装置の高さ方向の寸法を小型化することが可能となる。
図21(c)に示すアンテナ装置は、モノポール素子42及び無給電素子43を、スタブ付の折り返し型モノポール素子41とは逆向きに配置したものである。
図21(d)に示すアンテナ装置は、モノポール素子42の先端部429を接地パターン方向に折り曲げたものである。
図21(e)に示すアンテナ装置は、無給電素子43を、スタブ付の折り返し型モノポール素子41及びモノポール素子42とは逆向きに配置し、かつ各素子41,42,43の配置関係を接地パターン3に近い側から41,43,42の順となるように配置し、さらにモノポール素子42の先端部と無給電素子43の先端部が互いに重なり合うように構成したものである。
【0054】
その他、スタブ付の折り返し型モノポール素子、モノポール素子及び無給電素子の形状や設置位置、サイズ、電子機器の種類や構成等についても、種々変形して実施可能である。
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1…印刷配線基板、1a…第1のエリア、1b…第2のエリア、2…無線ユニット、3…接地パターン、4…アンテナ装置、5…キャパシタ素子、21…給電パターン、22…給電端子(給電点)、23…給電ケーブル、31,32…接地端子、41…スタブ付の折り返し型モノポール素子、42…モノポール素子、43…無給電素子、61〜64…集中定数素子、411,4111,4112…スタブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が給電端子に接続されると共に他端が第1の接地端子に接続され、かつ中間部が折り返されてこの折り返しにより形成された往路部と復路部との間にスタブが設けられた折り返し型のモノポール素子により構成された第1のアンテナ素子と、
前記往路部の前記給電端子と前記スタブとの間に挿入されたキャパシタ素子と
を具備するアンテナ装置。
【請求項2】
前記第1のアンテナ素子は、前記給電端子から前記往路部及び復路部を経て前記第1の接地端子に至る電気長が予め設定した共振周波数f1 に対応する波長λ1 の略1/2に設定されるとき、前記給電端子と前記第1の接地端子との間の距離が前記波長λ1 の略1/5以下に設定される請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記キャパシタ素子のキャパシタンスC[pF]は、予め設定した共振周波数f1 に対応する角周波数がω1 であるとき、1/ω1 C<250[Ω]の範囲に設定される請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第1のアンテナ素子は、前記給電端子と前記往路部上の中央位置との間の任意の点と、前記接地端子と前記復路部上の中央位置との間の任意の点との間に、前記スタブを接続したものである請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項5】
一端が前記第1のアンテナ素子の前記給電端子とスタブとの間の任意の点に接続されると共に他端が開放されたL型をなすモノポール素子により構成される第2のアンテナ素子を、さらに具備し、
前記キャパシタ素子は、前記第1のアンテナ素子に対する前記第2のアンテナ素子の接続点と前記給電端子との間に挿入される請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記第1の接地端子に対し前記給電端子を介して反対側となる位置に設けられた第2の接地端子に一端が接続されると共に他端が開放された無給電素子により構成され、当該無給電素子の少なくとも一部が前記第2のアンテナ素子に対し容量結合が可能な状態に並行配置された第3のアンテナ素子を、さらに具備する請求項5記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記第1のアンテナ素子は、前記スタブの設置位置から折り返し端部までの区間が1本の線状又は板状の素子により構成される請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記第1のアンテナ素子及び前記給電端子が形成される第1のエリアと、辺の一部が略階段状に形成された接地パターン及び前記第1の接地端子が形成される第2のエリアとを有する印刷配線基板と、
心線が前記階段状に形成された辺から前記第1のエリアに突出するように前記第2のエリア上に配置され、前記突出された心線が前記第1のエリアに形成された給電端子に接続される給電ケーブルと
を、さらに具備する請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項9】
無線信号を送受信する無線回路と、
前記無線回路に対し給電端子及び第1の接地端子を介して接続されるアンテナ装置と
を具備し、
前記アンテナ装置は、
一端が前記給電端子に接続されると共に他端が前記第1の接地端子に接続され、かつ中間部が折り返されてこの折り返しにより形成された往路部と復路部との間にスタブが設けられた折り返し型のモノポール素子により構成された第1のアンテナ素子と、
前記往路部の前記給電端子と前記スタブとの間に挿入されたキャパシタ素子と
を備える電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−51501(P2013−51501A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187569(P2011−187569)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【特許番号】特許第5127966号(P5127966)
【特許公報発行日】平成25年1月23日(2013.1.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】