説明

アンテナ装置

【課題】 同軸ケーブルの外部導体との半田接続作業が外被に悪影響を及ぼさずに容易に行えるアンテナ装置を提供すること。
【解決手段】 アンテナ素子2は、金属平板からなる放射導体6と、放射導体6から略直角に延出する給電導体7と、放射導体6に対して略平行に配置された金属平板からなる接地導体9と、接地導体9から略直角に延出して挿通孔10aを有する仕切り壁10とを備えており、給電導体7の先端部(支持部7a)に同軸ケーブル3の内部導体30が半田付けされていると共に、外部導体32が挿通孔10aに挿通された状態で仕切り壁10の給電導体7側の面10bに半田付けされている。この同軸ケーブル3は、外部導体32の先端面を、挿通孔10aと連通する切欠9aの給電導体7側の端面9bに突き当てることによって、アンテナ素子2に対する挿入量が規定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射導体や給電導体等が金属板からなる安価で小型のアンテナ装置に係り、特に、同軸ケーブルとの半田接続部位の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、ETC(自動料金収受システム)用アンテナ等の車載用アンテナ装置において、放射導体や給電導体や接地導体等を金属板で形成することによって低コスト化を図るという技術が実用化されている。この種のアンテナ装置では、放射導体として動作する金属平板の給電点から略直角に延出する折曲片を給電導体となすことができるため、誘電体基板に印刷形成した放射導体の給電点に給電ピンを半田付けする構成のものに比べて、製造コストを大幅に低減することができる。また、放射導体と所定の間隔を存して対向する接地導体も金属板にて形成すれば、アンテナ素子が金属板のみで構成される極めて安価な板金パッチアンテナが得られる。
【0003】
一般的にこの種のアンテナ装置では、給電導体の先端部に同軸ケーブルの内部導体(芯線)が半田付けされていると共に、電気的にグラウンドとして動作する接地導体やシールドケース等に延設された保持片に同軸ケーブルの外部導体がクランプ(あるいは圧入)されており、これによって外部回路との電気的接続が図られているが、クランプや圧入のみによる接続では導通不良を起こす虞があるため、接続の信頼性を高める場合には該保持片と外部導体との半田付けも行われるようになっている(例えば、特許文献1参照)。また、アンテナ装置の本体部分は絶縁性樹脂からなるレドーム(筐体)内に収容され、このレドームが車室内等の適宜位置に設置される。なお、同軸ケーブルは、軸心に内設された内部導体と、内部導体を被覆する円筒状の絶縁体と、絶縁体を被覆する外部導体と、外部導体を被覆する絶縁性樹脂からなる外被(シース)とによって構成されているので、この種のアンテナ装置では、同軸ケーブルの先端部(接続部位)の長さ方向に沿って給電導体の先端部と接地導体等の前記保持片とが揃えて配置してある。
【特許文献1】特開2001−244723号公報(第3−5頁、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述した従来のアンテナ装置において、同軸ケーブルとの接続の信頼性を高めるために外部導体を半田付けする場合、同軸ケーブルの先端部の外被を取り除いて露出させた外部導体を、接地導体等に延設された保持片に位置合わせしてクランプあるいは圧入により固定した後、この保持片に半田ゴテを近付けて外部導体との半田付けを行うが、その際、保持片の近傍に配置される外被の先端部分が半田ゴテの熱で変形しやすいという問題があった。すなわち、かかる半田付け作業時に外被の先端部分に半田ゴテが近接したり接触しやすいため、外被が半田ゴテの熱で収縮して先端面が後退し、その結果として外部導体がレドームの外まで露出してしまったり、あるいは外被の先端部分が半田ゴテの熱で溶けてしまうことがあり、いずれの熱変形が起きてもアンテナ装置の外観は著しく損なわれてしまう。また、こうした外被の熱変形を回避するために同軸ケーブルとの半田接続作業を細心の注意を払って慎重に行わねばならないことから、作業効率の低下を余儀なくされるという問題もあった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、同軸ケーブルの外部導体との半田接続作業が外被に悪影響を及ぼさずに容易に行えるアンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明のアンテナ装置では、第1の金属平板からなる放射導体と、前記第1の金属平板から略直角に延出する折曲片であって先端部に同軸ケーブルの内部導体が半田付けされた給電導体と、前記第1の金属平板に対して略平行に配置されて電気的にグラウンドとして動作する第2の金属平板と、この第2の金属平板から略直角に延出する折曲片であって前記給電導体の先端部を臨む挿通孔を有する仕切り壁とを備え、前記挿通孔に挿通した前記同軸ケーブルの外部導体が前記仕切り壁の前記給電導体側の面に半田付けされている構成にした。
【0007】
このような構成によれば、電気的にグラウンドとして動作する第2の金属平板に延設された仕切り壁と、同軸ケーブルの外部導体とを半田付けする際に、挿通孔内の外部導体は仕切り壁に当接する向きへの移動が規制されることになり、また、仕切り壁の給電導体側の面に近付けた半田ゴテが外被の先端部分に近接したり接触しないように、こうした半田ゴテの不所望な移動を該仕切り壁で規制することができる。したがって、外部導体との接続の信頼性を高める半田接続作業が効率良く行えると共に、この作業時に懸念されていた外被の熱変形に起因する外観への悪影響が回避できる。
【0008】
上記の構成において、第2の金属平板には、仕切り壁の基端近傍に挿通孔と連通する切欠が給電導体へ向かって所定の深さに形成されており、挿通孔に挿通した外部導体の先端面を該切欠の給電導体側の端面に突き当てることによって同軸ケーブルの先端部の挿入量が規定されるようにしてあると、外部導体の先端面を給電導体と仕切り壁との間の所望の位置まで簡単かつ確実に挿入することができるため、同軸ケーブルとの半田接続時の作業効率が一層向上して好ましい。
【0009】
また、上記の構成において、第2の金属平板が空気層を介して放射導体(第1の金属平板)と対向する接地導体であると、アンテナ素子が金属板のみで構成される板金パッチアンテナに同軸ケーブルを作業効率良く半田接続できて外観も損なわれないため、安価で信頼性が高いETCアンテナ等として好適となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアンテナ装置は、電気的にグラウンドとして動作する金属平板に延設された仕切り壁と同軸ケーブルの外部導体とを半田付けする際に、挿通孔内の外部導体を仕切り壁によって位置規制できるのみならず、仕切り壁の給電導体側の面に近付けた半田ゴテが外被の先端部分に近接したり接触しないように該仕切り壁で規制することができるため、外部導体との接続の信頼性を高める半田接続作業が効率良く行えると共に、この作業時に懸念されていた外被の熱変形に起因する外観への悪影響が回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
発明の実施の形態を図面を参照して説明すると、図1は本発明の実施形態例に係るアンテナ装置の分解斜視図、図2は該アンテナ装置のアンテナ素子を底面側から見た斜視図、図3は該アンテナ素子の側面図である。
【0012】
これらの図に示すアンテナ装置は、共振周波数が5.8GHzのETC用アンテナとして使用されるものである。このアンテナ装置は、絶縁性樹脂からなるレドーム1と、レドーム1内に収容された板金パッチアンテナであるアンテナ素子2とを備えており、アンテナ素子2のケ−ブル接続部に同軸ケーブル3が半田接続されている。ただし、図中において半田は省略してある。
【0013】
レドーム1は直方体形状の外観を呈し、一側部に同軸ケーブル3用の逃げ孔1aが開設されている(図3参照)。このレドーム1は、図示下面を開放した箱形に成形された上ケース4と、図示上面を開放した箱形に成形された下ケース5とを、スナップ結合やねじ止め等の適宜手段により一体化したものである。図1に示すように、上ケース4の一側部には逆U字形の溝4aが形成されており、下ケース5の一側部にはU字形の溝5aとケ−ブル支持部5bが形成されている。そして、上ケース4と下ケース5とを嵌め合わせて一体化すると、これらの溝4a,5aやケ−ブル支持部5bによって逃げ孔1aが画成される。また、上ケース4と下ケース5の内壁面にはアンテナ素子2の位置決めや固定に用いられる係合部が複数箇所に設けられており、両ケース4,5を嵌め合わせるとレドーム1の内部空間にアンテナ素子2が位置決め状態で固定できるようになっている。
【0014】
アンテナ素子2は、中央部に開口6aを有する金属平板からなる放射導体6と、放射導体6の給電点から図示下方へ延出する折曲片である給電導体7と、放射導体6の内周縁部(開口6aの周縁部)から図示下方へ延出する折曲片である4片の取付脚8と、放射導体6と空気層を存して対向する矩形状の金属平板からなる接地導体9と、接地導体9の一辺端の中央部から図示下方へ延出する折曲片である仕切り壁10とによって構成されている。放射導体6と接地導体9は所定の間隔を存して略平行に配置されているが、接地導体9は放射導体6よりも大径であり、各取付脚8の先端部を接地導体9に半田付けすることによって放射導体6が接地導体9に支持されている。放射導体6から切り起こされた金属片である給電導体7は接地導体9とは非接触に保たれており、図2に示すように、この給電導体7の先端部は接地導体9と略平行な向きに折り曲げられた支持部7aとなっている。仕切り壁10は接地導体9から切り起こされた略コ字形の金属片であり、この仕切り壁10には給電導体7の先端部を臨む挿通孔10aが開設されている。また、接地導体9には挿通孔10aに連通する切欠9aが形成されており、この切欠9aは仕切り壁10の基端近傍から給電導体7へ向かって所定の深さに形成されている。
【0015】
同軸ケーブル3は、軸心に内設された内部導体30と、内部導体30を被覆する円筒状の絶縁体31と、絶縁体31を被覆する外部導体32と、外部導体32を被覆する外被33とによって構成されている。そして、図2に示すように、同軸ケーブル3の先端部(接合部位)では、外被33を取り除いて露出させた外部導体32が仕切り壁10の挿通孔10aに挿通されていると共に、この外部導体32を取り除いて露出させた絶縁体31が切欠9aと給電導体7との間に位置しており、かつ、最先端部では絶縁体31を取り除いて露出させた内部導体30が給電導体7の支持部7a上に位置している。
【0016】
この同軸ケーブル3の先端部をアンテナ素子2に半田付けする際には、まず、外被33を取り除いて露出させた外部導体32を仕切り壁10の挿通孔10aに挿通して、外部導体32の先端面を切欠9aの給電導体7側の端面9bに突き当てることにより、アンテナ素子2に対する同軸ケーブル3の先端部の挿入量を規定する。このとき、図2に示すように、同軸ケーブル3の先端部は、外部導体32が挿通孔10a内で仕切り壁10に当接する向きへの移動を規制され、かつ、切欠9a内で給電導体7側への移動を規制された状態となり、内部導体30は給電導体7の支持部7a上に搭載される。しかる後、図示せぬ半田ゴテを用いて、内部導体30を給電導体7の支持部7aに半田付けすると共に、外部導体32を仕切り壁10の給電導体7側の面10bに半田付けする。これにより、アンテナ素子2は同軸ケーブル3を介して外部回路と電気的に接続されるため、このアンテナ素子2を給電することによって放射導体6を励振させることができる。
【0017】
このように本実施形態例に係るアンテナ装置では、アンテナ素子2と同軸ケーブル3とを半田接続する際に、接地導体9に延設された仕切り壁10の挿通孔10a内に外部導体32を挿通し、さらに外部導体32の先端面を切欠9aの端面9bに突き当てるので、内部導体30や外部導体32を位置決めした状態で半田付けが行える。また、外部導体32は仕切り壁10の給電導体7側の面10bに半田付けされるが、この面10bに近付けた半田ゴテが誤って外被33側へ移動しないように仕切り壁10で規制することができるので、作業中に半田ゴテが外被33の先端部分に近接したり接触する危険性が少なく、よって外被33が半田ゴテの熱で不所望に収縮したり溶けてしまう心配がない。それゆえ、このアンテナ装置は、外部導体32との接続の信頼性を高める半田接続作業を効率良く行うことができると共に、半田ゴテの熱による外被33の変形を回避できるため外観が損なわれることもない。
【0018】
なお、上記実施形態例では、接地導体が金属板からなり回路を内蔵しないアンテナ装置について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、片面に接地導体を設けて他面に電子回路を設けた回路基板と、この電子回路を電磁的にシールドする金属板製のシールドケースとを備えた構成のアンテナ装置の場合も、上記実施形態例と同様の仕切り壁をシールドケースに延設し、この仕切り壁に同軸ケーブルの外部導体を挿通して半田付けすれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態例に係るアンテナ装置の分解斜視図である。
【図2】該アンテナ装置のアンテナ素子を底面側から見た斜視図である。
【図3】該アンテナ素子の側面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 レドーム
2 アンテナ素子
3 同軸ケーブル
6 放射導体
7 給電導体
7a 支持部(先端部)
8 取付脚
9 接地導体
9a 切欠
9b 端面
10 仕切り壁
10a 挿通孔
30 内部導体
31 絶縁体
32 外部導体
33 外被

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金属平板からなる放射導体と、前記第1の金属平板から略直角に延出する折曲片であって先端部に同軸ケーブルの内部導体が半田付けされた給電導体と、前記第1の金属平板に対して略平行に配置されて電気的にグラウンドとして動作する第2の金属平板と、この第2の金属平板から略直角に延出する折曲片であって前記給電導体の先端部を臨む挿通孔を有する仕切り壁とを備え、前記挿通孔に挿通した前記同軸ケーブルの外部導体が前記仕切り壁の前記給電導体側の面に半田付けされていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記第2の金属平板には、前記仕切り壁の基端近傍に前記挿通孔と連通する切欠が前記給電導体へ向かって所定の深さに形成されており、前記挿通孔に挿通した前記外部導体の先端面を前記切欠の前記給電導体側の端面に突き当てることによって前記同軸ケーブルの先端部の挿入量が規定されるようにしたことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】
請求項1または2の記載において、前記第2の金属平板が空気層を介して前記放射導体と対向する接地導体であることを特徴とするアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−310950(P2006−310950A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−127979(P2005−127979)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】