説明

アンテナ装置

【課題】2つの周波数の電波に対応可能な構成でありながら、全体の構成を小形化する。
【解決手段】本発明のアンテナ装置1は、ケース2と、第1の周波数用のコイルアンテナ3と、パッチアンテナ素子4及びグランドプレーン5から構成された第2の周波数用のパッチアンテナ6とを備えたものにおいて、ケース2内で、上部にコイルアンテナ3を配設し、中間部にパッチアンテナ素子4を配設し、下部にグランドプレーン5を配設して3層構造をなすように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば無線IDタグに対してデータの読み出し及び書き込みを行うリーダライタに組み込むのに好適するものであって、2つの周波数の電波に対応可能なアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線IDタグのリーダライタに組み込むものであって、2つの周波数の電波に対応可能なアンテナ装置の一例が、特許文献1に記載されている。この特許文献1のアンテナ装置では、誘電体基板の上面の中央部に2.4GHz用のパッチアンテナ(平面アンテナ)を配設すると共に、誘電体基板の上面の外周部に13.56MH用のコイルアンテナを配設している。
【特許文献1】特開2005−51536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来構成のアンテナ装置の場合、パッチアンテナとコイルアンテナが互いに影響することから、各アンテナの送信電力が低下したり、受信感度が低下したりするおそれがある。このため、2つのアンテナが影響しないように、2つのアンテナの設置間隔を広く構成する必要がある。この結果、誘電体基板の外形の大きさ、即ち、アンテナ装置の外形の大きさをかなり大きく構成する必要があることから、アンテナ装置の構成が大型化してしまうという不具合があった。
【0004】
そこで、本発明の目的は、2つの周波数の電波に対応可能な構成でありながら、全体の構成を小形化することができるアンテナ装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のアンテナ装置は、ケースと、第1の周波数用のコイルアンテナと、平面アンテナ素子及びグランドプレーンから構成された第2の周波数用の平面アンテナとを備え、前記ケース内において、上部に前記コイルアンテナを配設し、中間部に前記平面アンテナ素子を配設し、下部に前記グランドプレーンを配設して3層構造をなすように構成したところに特徴を有する。
【0006】
上記構成によれば、ケース内において、上部にコイルアンテナを配設し、中間部に平面アンテナ素子を配設し、下部にグランドプレーンを配設して3層構造をなすように構成したので、2つの周波数の電波に対応可能な構成でありながら、全体の構成を小形化することができる。
【0007】
また、上記構成の場合、一方の面に前記コイルアンテナが設けられた基板を備え、前記基板の外形を、前記平面アンテナ素子の外形よりも小さくするように構成することが好ましい。
【0008】
更に、前記コイルアンテナと前記平面アンテナ素子の間隔が、3mm以上となるように構成することがより一層好ましい。更にまた、前記コイルアンテナへの電力及び信号供給線を、前記平面アンテナ素子の中心部を貫通させるように構成することが良い。
【0009】
本発明の他のアンテナ装置は、ケースと、第1の周波数用のコイルアンテナと、平面アンテナ素子及びグランドプレーンから構成された第2の周波数用の平面アンテナとを備え、前記ケース内において、上部に前記コイルアンテナを配設し、中間部に前記グランドプレーンを配設し、下部に前記平面アンテナ素子を配設して3層構造をなすように構成したところに特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の第1の実施例について、図1ないし図4を参照しながら説明する。図1は、本実施例のアンテナ装置の全体構成を示す縦断面図である。この図1に示すように、アンテナ装置1は、矩形箱状のケース(筐体)2と、このケース2内の上部に配設されたコイルアンテナ3と、ケース2内の中間部に配設されたパッチアンテナ素子(平面アンテナ素子)4と、ケース2内の下部に配設されたグランドプレーン5とを備えて構成されている。この構成の場合、コイルアンテナ3と、パッチアンテナ素子4と、グランドプレーン5は、ケース2内において3層構造を構成している。
【0011】
そして、パッチアンテナ素子4とグランドプレーン5とからパッチアンテナ(平面アンテナ)6が構成されている。このパッチアンテナ6の具体的構成について、図2を参照して説明する。図2(a)、(b)に示すように、グランドプレーン5は、矩形状の誘電体基板7の上面のほぼ全体に設けられた導体パターンまたは導体板(金属板)から構成されている。パッチアンテナ素子4は、図2(a)に示すような形状の導体板(金属板)で構成されており、上記グランドプレーン5上に絶縁材製のスペーサ8を介して配設されている。
【0012】
尚、スペーサ8により、パッチアンテナ素子4とグランドプレーン5と間隔が例えば15mm程度となるように構成されている。このような構成のパッチアンテナ6は、高周波であるUHF(例えば900MHz)の電波を送受信するアンテナである。パッチアンテナ6の誘電体基板7は、ケース2の下壁部に取付部材(図示しない)を介して例えばねじ止めされている。
【0013】
また、コイルアンテナ3は、図3(a)、(b)に示すように、プリント配線基板または誘電体基板からなる矩形状の基板9の上面に設けられたコイルアンテナパターン10で構成されている。尚、基板9の下面には、例えばフェライトからなる電磁波吸収材11が取り付けられている。このような構成のコイルアンテナ3は、低周波である短波(例えば13.56MHz)の電波を送受信するアンテナである。コイルアンテナ3の基板9は、ケース2の上壁部に取付部材(図示しない)を介して例えばねじ止めされている。
【0014】
更に、上記アンテナ装置1のケース2内においては、コイルアンテナ3とパッチアンテナ素子4との間隔が例えば3mm程度以上となるように構成されている。また、コイルアンテナ3の基板9の外形は、パッチアンテナ素子4の外形よりも小さくなるように構成されている。
【0015】
ここで、上記構成のアンテナ装置1を組み込んだリーダライタの電気的構成の一例を図4のブロック図に示す。この図4に示すように、リーダライタ12は、上位制御装置13と、コントローラ14と、アンテナ装置1とを備えて構成されている。アンテナ装置1は、UHFアンテナであるパッチアンテナ6と、短波アンテナであるコイルアンテナ3とを備えており、これらパッチアンテナ6及びコイルアンテナ3は上記コントローラ14により制御される構成となっている。上位制御装置13は、リーダライタ12の動作全般を制御する装置である。
【0016】
上記リーダライタ12は、アンテナ装置1を備えているので、UHF(高周波)のタグ(データキャリア)とデータの読み出し及び書き込みを実行することができると共に、この動作と平行して(同時に)、短波(低周波)のタグ(データキャリア)とデータの読み出し及び書き込みを実行することができる。
【0017】
そして、上記構成の場合、短波(第1の周波数)のタグ(データキャリア)は、図1中の2点鎖線A1で示すように、ケース2の上方に位置させて、読取(書き込み)を実行する。また、UHF(第2の周波数)のタグ(データキャリア)も、図1中の2点鎖線A2で示すように、ケース2の上方に位置させて、読取(書き込み)を実行する。
【0018】
更に、上記実施例の場合、アンテナ装置1のケース2内に、第1の周波数(短波)用のコイルアンテナ3と、第2の周波数(UHF)用のパッチアンテナ6(これはパッチアンテナ素子4及びグランドプレーン5から構成されている)とを配設するに際して、ケース2内において、上部にコイルアンテナ3を配設し、中間部にパッチアンテナ素子4を配設し、下部にグランドプレーン5を配設して3層構造をなすように構成した。これにより、2つの周波数の電波に対応可能な構成としながら、アンテナ装置1全体の構成、特には、アンテナ装置1の外形の大きさを小形化することができる。
【0019】
また、上記実施例においては、コイルアンテナ3が設けられた基板9の外形を、パッチアンテナ素子4の外形よりも小さくするように構成したので、パッチアンテナ6がコイルアンテナ3から受ける悪影響をほとんどなくすことができる。特に、本実施例においては、コイルアンテナ3とパッチアンテナ素子4の間隔が、3mm以上となるように構成したので、パッチアンテナ6がコイルアンテナ3から受ける悪影響をより一層低減することができる。
【0020】
尚、コイルアンテナ3とパッチアンテナ素子4の間隔を、3mm以上とするように構成するだけで、コイルアンテナ3が設けられた基板9の外形を、パッチアンテナ素子4の外形よりも小さくしなくても、パッチアンテナ6がコイルアンテナ3から受ける悪影響を実用上十分低減することができる。
【0021】
図5は、本発明の第2の実施例を示すものである。尚、第1の実施例と同じ構成には、同じ符号を付している。この第2の実施例では、図5に示すように、1枚の誘電体基板7の両面に、パッチアンテナ素子4とグランドプレーン5を設けるように構成した。この構成の場合、パッチアンテナ素子4とグランドプレーン5は、導体パターンで構成しても良いし、金属板で構成しても良い。
【0022】
上述した以外の第2の実施例の構成は、第1の実施例と同じ構成となっている。従って、第2の実施例においても、第1の実施例とほぼ同じ作用効果を得ることができる。特に、第2の実施例では、1枚の誘電体基板7の両面にパッチアンテナ素子4とグランドプレーン5を設けるように構成したので、アンテナ装置1の上下方向の寸法を、第1の実施例に比べて一層小さくすることができる。
【0023】
図6は、本発明の第3の実施例を示すものである。尚、第2の実施例と同じ構成には、同じ符号を付している。この第3の実施例では、図6に示すように、コイルアンテナ3への電力及び信号供給線15を、パッチアンテナ素子4の中心部を貫通させるように構成している。具体的には、パッチアンテナ素子4の中心部に、電力及び信号供給線15の外径よりも一回り大きい内径の孔を設け、この孔内に電力及び信号供給線15を貫通させるようにしている。
【0024】
この構成の場合、パッチアンテナ素子4の中央部分には、電流が流れていないため、コイルアンテナ3への電力及び信号供給線15を、パッチアンテナ素子4の中心部を貫通させるように構成しても、電力及び信号供給線15が悪影響を受けるおそれがなく、このような構成が実現可能になる。
【0025】
尚、上述した以外の第3の実施例の構成は、第2の実施例と同じ構成となっている。従って、第3の実施例においても、第2の実施例とほぼ同じ作用効果を得ることができる。特に、第3の実施例では、コイルアンテナ3への電力及び信号供給線15をパッチアンテナ素子4の中心部を貫通させるように構成したので、電力及び信号供給線15等の配線構造を簡単化することができる。
【0026】
図7は、本発明の第4の実施例を示すものである。尚、第1の実施例と同じ構成には、同じ符号を付している。この第4の実施例では、図7に示すように、ケース2内において、上部にコイルアンテナ3を配設し、中間部にグランドプレーン5を配設し、下部にパッチアンテナ素子4を配設して3層構造をなすように構成したものである。
【0027】
上記構成の場合、短波(第1の周波数)のタグ(データキャリア)は、図7中の2点鎖線B1で示すように、ケース2の上方に位置させて、読取(書き込み)を実行する。一方、UHF(第2の周波数)のタグ(データキャリア)は、図7中の2点鎖線B2で示すように、ケース2の下方に位置させて、読取(書き込み)を実行する。
【0028】
そして、上述した以外の第4の実施例の構成は、第1の実施例と同じ構成となっている。従って、第4の実施例においても、第1の実施例とほぼ同じ作用効果を得ることができる。
【0029】
尚、上記各実施例においては、パッチアンテナ素子4の形状を、図2(a)に示すような形状としたが、これに限られるものではなく、円形や他の形状としても良い。また、コイルアンテナパターン10の形状を、図3(a)に示すような四角形状としたが、これに限られるものではなく、円形や他の形状としても良い。更に、基板9の形状を、図3(a)に示すような四角形状としたが、これに限られるものではなく、円形や他の形状としても良い。
【0030】
また、コイルアンテナ3の中心位置と、パッチアンテナ6の中心位置がずれるような場合、コイルアンテナ3がパッチアンテナ6の外形形状の内部であれば、どこに配置させるように構成しても良い。
【0031】
更にまた、上記各実施例においては、コイルアンテナ3を短波用のアンテナとして構成したが、これに代えて、コイルアンテナ3を中波(例えば135kHz)用のアンテナとして構成しても良い。
【0032】
また、上記各実施例においては、平面アンテナの一例として、パッチアンテナ6に適用したが、これに限られるものではなく、板状逆Fアンテナ、スロットアンテナ、マイクロストリップアンテナ、プリント基板アンテナ、フィルムアンテナ等に適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施例を示すアンテナ装置の縦断面図
【図2】(a)はパッチアンテナの上面図、(b)はパッチアンテナの側面図
【図3】(a)はコイルアンテナの上面図、(b)はコイルアンテナの側面図
【図4】ブロック図
【図5】本発明の第2の実施例を示す図2相当図
【図6】本発明の第3の実施例を示すコイルアンテナ及びパッチアンテナの斜視図
【図7】本発明の第4の実施例を示す図1相当図
【符号の説明】
【0034】
図面中、1はアンテナ装置、2はケース、3はコイルアンテナ、4はパッチアンテナ素子(平面アンテナ素子)、5はグランドプレーン、6はパッチアンテナ(平面アンテナ)、7は誘電体基板、8はスペーサ、9は基板、10はコイルアンテナパターン、11は電磁波吸収材、12はリーダライタ、15は電力及び信号供給線を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
第1の周波数用のコイルアンテナと、
平面アンテナ素子及びグランドプレーンから構成された第2の周波数用の平面アンテナとを備え、
前記ケース内において、上部に前記コイルアンテナを配設し、中間部に前記平面アンテナ素子を配設し、下部に前記グランドプレーンを配設して3層構造をなすように構成したことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
一方の面に前記コイルアンテナが設けられた基板を備え、
前記基板の外形を、前記平面アンテナ素子の外形よりも小さくするように構成したことを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記コイルアンテナと前記平面アンテナ素子の間隔が、3mm以上となるように構成したことを特徴とする請求項1または2記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記コイルアンテナへの電力及び信号供給線を、前記平面アンテナ素子の中心部を貫通させるように構成したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項5】
ケースと、
第1の周波数用のコイルアンテナと、
平面アンテナ素子及びグランドプレーンから構成された第2の周波数用の平面アンテナとを備え、
前記ケース内において、上部に前記コイルアンテナを配設し、中間部に前記グランドプレーンを配設し、下部に前記平面アンテナ素子を配設して3層構造をなすように構成したことを特徴とするアンテナ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−150827(P2007−150827A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−343812(P2005−343812)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【Fターム(参考)】