説明

アンテナ装置

【課題】主に自動車のドアの施解錠や開閉等に用いられるアンテナ装置に関し、製作が容易で、安価で確実な送受信の可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】側面開口で略箱型のケース11の内側壁または内底面に、略コの字状のアンテナ2を係止する保持部15A、15Bや15Cと、アンテナが接続された配線基板を係止する支持部16Aと16Bを形成することによって、アンテナ2が接続された配線基板13を、側面開口部から挿入してケース11内に収納できるため、アンテナ2を変形させることなく、取付けや取外しを行うことができると共に、これらの保持部でアンテナ2を、支持部で配線基板13を各々係止することができるため、アンテナ2のがたつきや振動音等の発生も防止できる、安価で確実な送受信の可能なものを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に自動車に装着され、ドアの施解錠や開閉等の遠隔操作に使用されるアンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両のドアの施解錠や開閉等を、機械式キーにより直接操作することに加え、運転者が携帯した送信装置によって、離れた箇所から遠隔操作することが一般に行われており、送信装置からの電波信号を受信するアンテナ装置においても、安価で確実な送受信の可能なものが求められている。
【0003】
このような従来のアンテナ装置について、図5及び図6を用いて説明する。図5は従来のアンテナ装置の斜視図、図6は同分解斜視図であり、同図において、1は下面開口で略箱型の絶縁樹脂製のケース、2は銅合金や鋼等の導電金属線製のアンテナで、アンテナ2は略コの字状に形成された受信部2Aと、この両端が下方へ折曲された短絡部2Bと給電部2Cから形成されている。
【0004】
そして、このアンテナ2がケース1内に収納されると共に、ケース1上面には下方へ突出する略鉤状の複数の保持部1Aが形成され、この複数の保持部1Aにアンテナ2の受信部2Aが係止されている。
【0005】
また、3は上下面に複数の配線パターン(図示せず)が形成された配線基板で、ケース1の下面開口部を覆うと共に、この配線基板3にアンテナ2の短絡部2Bと給電部2Cが半田付け等によって接続されている。
【0006】
さらに、この配線基板3にはコンデンサやコイル、固定抵抗器やFET等の各種電子部品によって受信回路4が形成され、アンテナ2がこの受信回路4に接続されて、アンテナ装置が構成されている。
【0007】
なお、このように構成されたアンテナ装置を製作する際には、図6の分解斜視図に示すように、先ず、アンテナ2を下方からケース1内に挿入し、複数の保持部1Aに受信部2Aを圧入係止して、ケース1内にアンテナ2を装着する。
【0008】
そして、受信回路4が形成された配線基板3を、複数のランド孔3Aにアンテナ2の短絡部2Bと給電部2C下端を挿入しながら、ケース1下面に装着した後、配線基板3下面から短絡部2Bと給電部2Cを半田付けして、アンテナ装置が完成する。
【0009】
また、このようなアンテナ装置が自動車内に装着されると共に、受信回路4がコネクタやリード線(図示せず)等によって、車両の電子回路やバッテリ(図示せず)等に電気的に接続される。
【0010】
以上の構成において、運転者が自動車からある程度離れた場所で、機械式キーと共に携帯した送信装置(図示せず)を操作すると、識別コードや駆動コードから形成された所定の電波信号が送信装置から送信される。
【0011】
そして、この電波信号をアンテナ装置のアンテナ2が受信し、受信回路4が運転者を確認すると共に、受信回路4から車両の電子回路に所定の信号が出力されて、例えばフロントドア(図示せず)の解錠や、トランクドア(図示せず)の開扉等が遠隔操作によって行われる。
【0012】
つまり、車両に接近し機械式キーによって、各ドアの施解錠や開閉等を直接行うことに加え、携帯した送信装置を操作することによって、ある程度離れた場所からでも、各ドアの施解錠や開閉等を遠隔操作できるように構成されているものであった。
【0013】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2005−271764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記従来のアンテナ装置においては、ケース1内に装着されたアンテナ2に配線基板3を取付ける際や、あるいはこれらを取外す際に、アンテナ2に変形が生じ易いため、これらの作業に時間を要すると共に、保持部1Aと受信部2Aの間には僅かではあるが隙間があるため、車両に装着され振動が加わった場合、アンテナ2にがたつきが生じ、振動音が発生し易いという課題があった。
【0015】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、製作が容易で、安価で確実な送受信の可能なアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために本発明は、側面開口で略箱型のケースの内側壁または内底面に、略コの字状のアンテナを係止する保持部と、アンテナが接続された配線基板を係止する支持部を形成してアンテナ装置を構成したものであり、アンテナが接続された配線基板を、側面開口部から挿入してケース内に収納できるため、アンテナを変形させることなく、取付けや取外しを行うことが可能となり、製作を容易に行えると共に、保持部でアンテナを、支持部で配線基板を各々係止することによって、アンテナをがたつきなく係止できるため、振動音等の発生も防止することができ、安価で確実な送受信の可能なアンテナ装置を得ることができるという作用を有するものである。
【発明の効果】
【0017】
以上のように本発明によれば、製作が容易で、安価で確実な送受信の可能なアンテナ装置を実現することができるという有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図4を用いて説明する。
【0019】
なお、背景技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0020】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態によるアンテナ装置の斜視図、図2は同分解斜視図であり、同図において、11は左側面開口で略箱型のABSやポリプロピレン等の絶縁樹脂製のケース、2は銅合金や鋼等の導電金属線製のアンテナで、アンテナ2は略コの字状に形成された受信部2Aと、この両端が下方へ折曲された短絡部2Bと給電部2Cから形成されている。
【0021】
また、13は紙フェノールやガラス入りエポキシ樹脂等の配線基板で、上下面には銅箔等によって複数の配線パターン(図示せず)が形成されると共に、この配線基板13の配線パターンに、アンテナ2の短絡部2Bと給電部2Cが半田付け等によって接続されている。
【0022】
そして、ケース11の右内側壁上方には、内方へ突出した二つの保持部15A、15Bと、これらの中間下方に、アンテナ2の直径よりもやや小さな間隔を空けて突出した保持部15Cが各々形成されると共に、この保持部15A、15Bと15Cの間に、アンテナ2の受信部2A右端がやや上下方向に撓んだ状態で係止されている。
【0023】
さらに、ケース11の前後下方の内側壁には、上下に配列され内方へ突出した二つの支持部16Aと16Bが形成されると共に、この支持部16Aと16Bの間に配線基板13が、前後方向の上下端面を挟まれてケース11内に収納されている。
【0024】
つまり、受信部2A右端が保持部15A、15Bと15Cの間に係止されて、アンテナ2がケース11内に収納されると共に、このアンテナ2が接続された配線基板13も、支持部16Aと16Bの間に上下端面を係止されて、ケース11内に収納されている。
【0025】
そして、この配線基板13にはコンデンサやコイル、固定抵抗器やFET等の各種電子部品によって受信回路4が形成され、アンテナ2がこの受信回路4に配線パターンを介して電気的に接続されると共に、左端には受信回路4に接続されたコネクタ17が実装されて、アンテナ装置が構成されている。
【0026】
また、このように構成されたアンテナ装置を製作する際には、図3(a)の断面図に示すように、先ず、アンテナ2やコネクタ17が接続され受信回路4が形成された配線基板13を、上下端面が支持部16Aと16Bの間に挟まれるようにして、左側面開口部からケース11内に挿入する。
【0027】
そして、このまま配線基板13をケース11内方へ挿入すると、アンテナ2の受信部2A右端が保持部15A、15B下面と保持部15C上面に当接し、この後やや強く押して挿入すると、図3(b)に示すように、保持部15A、15Bと15Cの間に、アンテナ2の受信部2A右端がやや上下方向に撓んだ状態で係止され、組立てが完了する。
【0028】
つまり、アンテナ2等がすでに半田付けされた配線基板13を、左側面開口部からケース11内に挿入するだけで、配線基板13が支持部16Aと16Bの間に上下端面を係止されると共に、アンテナ2の受信部2A右端も保持部15A、15Bと15Cの間に係止されるようになっているため、アンテナ2を変形させることなく、容易にアンテナ装置の組立てが行えるように構成されている。
【0029】
また、このように組立てたアンテナ装置を分解する際にも、上記とは逆に、ケース11から配線基板13をやや強く左方へ引抜くだけで、同様にアンテナ2を変形させることなく、容易に分解を行うことができる。
【0030】
すなわち、ケース11の右内側壁に保持部15A、15Bと15Cを、前後の内側壁に支持部16Aと16Bを各々形成し、これらによってアンテナ2と配線基板13を係止することで、組立て時にも分解時にも、アンテナ2を変形させることなく、これらの作業が行えるようになっている。
【0031】
そして、このようなアンテナ装置が自動車内に装着されると共に、受信回路4がコネクタ17やリード線(図示せず)等によって、車両の電子回路やバッテリ(図示せず)等に電気的に接続される。
【0032】
以上の構成において、運転者が自動車からある程度、例えば10m前後離れた場所で、機械式キーと共に携帯した送信装置(図示せず)を操作すると、識別コードや駆動コードから形成された所定の電波信号が送信装置から送信される。
【0033】
そして、この電波信号をアンテナ装置のアンテナ2が受信し、受信回路4が運転者を確認すると共に、受信回路4から車両の電子回路に所定の信号が出力されて、例えばフロントドア(図示せず)の解錠や、トランクドア(図示せず)の開扉等が遠隔操作によって行われる。
【0034】
つまり、車両に接近し機械式キーによって、各ドアの施解錠や開閉等を直接行うことに加え、携帯した送信装置を操作することによって、ある程度離れた場所からでも、各ドアの施解錠や開閉等を遠隔操作できるように構成されている。
【0035】
そして、本発明のアンテナ装置は上述したように、ケース11の右内側壁に保持部15A、15Bと15Cが、前後の内側壁に支持部16Aと16Bが各々形成され、これらによってアンテナ2と配線基板13が係止されているため、車両に装着され振動が加わった場合でも、振動音等が発生しないように形成されている。
【0036】
つまり、アンテナ2の受信部2A右端を、保持部15A、15Bと15Cの間に係止すると共に、配線基板13を支持部16Aと16Bの間に、前後方向の上下端面を挟んで係止することによって、アンテナ2や配線基板13が上下左右方向に殆んど隙間のない状態で、ケース11内に収納されているため、がたつきによる振動音等の発生を防ぎ、確実な送受信を行えるようになっている。
【0037】
また、二つの保持部15A、15B下面と保持部15C上面の間隔を、アンテナ2の直径よりもやや小さなものとし、これらの間に受信部2A右端をやや上下方向に撓ませた状態で係止することで、さらにアンテナ2をがたつきなく、確実に保持することが可能な構成となっている。
【0038】
なお、以上の説明では、配線基板13を係止する支持部16Aと16Bを、ケース11の前後下方の内側壁に形成した構成について説明したが、図4の分解斜視図に示すように、内側壁と内底面に形成した構成としても、本発明の実施は可能である。
【0039】
すなわち、同図において、ケース11の右内側壁に保持部15A、15Bや15Cが形成されていることは、これまで説明した構成と同様であるが、ケース11の前後の内側壁には一対の支持部16Cと16Dが形成されると共に、ケース11の内底面中央には支持部16Cや16Dと同じ高さの、保持部15Cと連結された支持部16Eが設けられている。
【0040】
そして、これらの支持部16Cや16D、16E上面に、アンテナ2やコネクタ17が接続され受信回路4が形成された配線基板13が載置されると共に、保持部15A、15Bと15Cの間に、アンテナ2の受信部2A右端がやや上下方向に撓んだ状態で係止される。
【0041】
つまり、受信部2A右端の撓みによって、配線基板13下面が支持部16Cや16D、16E上面に弾接し、ケース11に収納されたアンテナ2や配線基板13のがたつきが生じないようにすることで、車両装着時の振動音等の発生を防ぐようになっている。
【0042】
このように本実施の形態によれば、側面開口で略箱型のケース11の内側壁または内底面に、略コの字状のアンテナ2を係止する保持部15A、15Bや15Cと、アンテナが接続された配線基板を係止する支持部16A、16Bや16C、16D、16Eを形成することによって、アンテナ2が接続された配線基板13を、側面開口部から挿入してケース11内に収納できるため、アンテナ2を変形させることなく、取付けや取外しを行うことができると共に、これらの保持部でアンテナ2を、支持部で配線基板13を各々係止することができるため、アンテナ2のがたつきを防ぎ、振動音等の発生も防止できる、安価で確実な送受信の可能なアンテナ装置を得ることができるものである。
【0043】
なお、以上の説明では、運転者が携帯した送信装置から車両のアンテナ装置へ電波信号を送信する、いわゆるキーレスシステムについて説明したが、送信装置とアンテナ装置の双方に送信手段と受信手段を設け、送信装置とアンテナ装置が互いに通信を行う、いわゆるスマートエントリシステムの構成においても、本発明の実施は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によるアンテナ装置は、製作が容易で、安価で確実な送受信の可能なものが得られ、主に自動車のドアの施解錠や開閉操作用として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施の形態によるアンテナ装置の斜視図
【図2】同分解斜視図
【図3】同断面図
【図4】同他の実施の形態による分解斜視図
【図5】従来のアンテナ装置の斜視図
【図6】同分解斜視図
【符号の説明】
【0046】
2 アンテナ
2A 受信部
2B 短絡部
2C 給電部
4 受信回路
11 ケース
13 配線基板
15A、15B、15C 保持部
16A、16B、16C、16D、16E 支持部
17 コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面開口で略箱型のケースと、略コの字状のアンテナと、このアンテナが接続され上記ケース内に収納された配線基板からなり、上記ケースの内側壁または内底面に、上記アンテナを係止する保持部と上記配線基板を係止する支持部を形成したアンテナ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate