説明

アンテナ装置

【課題】ケーブルを引っ張る力が、プリント基板に半田付けする部分に作用しないアンテナ装置を提供する。
【解決手段】プリント基板12の表面にアンテナ素子10を配設し、プリント基板12の裏面にケーブル14を配設して半田付けし、プリント基板12の外周縁をホルダーで固定するアンテナ装置である。ケーブル14をホルダーに設けた横折り曲げガイドに引っ掛けてプリント基板12と略平行な面内で略180度折り曲げ、さらにホルダーに設けた縦折り曲げガイド20eに引っ掛けてプリント基板12の裏面下側に向けて略90度折り曲げる。ケーブル14を引っ張る力に対して、横に略180度折り曲げた部分と下側に向けて略90度折り曲げた部分で、横折り曲げガイドと縦折り曲げガイド20eに大きな静止摩擦抵抗力が作用し、引っ張る力が大きく減殺されて、半田付け部分に力が作用し難い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のボディに取り付けられて、アンテナ素子に電気的接続されたケーブルが車内に引き込まれるアンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車載用のアンテナ装置の一例にあっては、プリント基板の表面にアンテナ素子を配設し、プリント基板の裏面にアンテナ素子に電気的接続されるケーブルを配設し、これらのプリント基板とアンテナ素子が絶縁材からなるホルダーに収容され、ホルダーよりケーブルが引き出されるように構成される。そして、かかる構成のアンテナ装置が、アンテナベースに搭載され、このアンテナベースによりボディ等に適宜に配設固定されている。
【0003】
かかるアンテナ装置にあっては、一般的にケーブルがプリント基板に半田付けにより固定されるとともに電気的接続されている。ここで、ケーブルに引っ張る力が作用するとその力が半田付け部分に作用したのでは、半田付け部分が破損して電気的接続が遮断され、もってアンテナ装置として十分な作用をなし得ない虞がある。そこで、ケーブルに引っ張る力が作用しても、その力が半田付け部分に作用しないようにする対策が必要である。
【0004】
この課題を解決する従来技術の一例が、特開2004−289525号公報で提案されている。この公報に示される従来技術は、プリント基板をシールドするシールドケースにケーブル保持爪を設け、このケーブル保持爪でケーブルを挟んでカシメることにより、ケーブルをシールドケースに固定するようにしたものである。ケーブルに引っ張る力が作用しても、その力がシールドケースに作用し、半田付け部分には作用しない。
【特許文献1】特開2004−289525号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の従来技術にあっては、ケーブルを固定するためのシールドケースが必要不可欠となる。しかし、アンテナ装置の全てに、シールドケースが必ず用いられているものでもない。そこで、シールドケースがなくても、ケーブルを引っ張る力が半田付け部分に作用しないような対策が必要である。
【0006】
本発明は、上述のごとき事情に鑑みてなされたもので、表面にアンテナ素子を配設したプリント基板の外周縁を固定するホルダーで、ケーブルを引っ張る力が半田付け部分に作用しないようにしたアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、本発明のアンテナ装置は、プリント基板の表面にアンテナ素子を配設し、前記プリント基板の裏面に前記アンテナ素子に電気的接続されるケーブルを沿うように配設し、前記プリント基板の外周縁をホルダーで固定するアンテナ装置において、前記ケーブルを前記ホルダーに設けた第1の折り曲げガイドに引っ掛けて略180度折り曲げ、さらに前記ケーブルを前記ホルダーに設けた第2の折り曲げガイドに引っ掛けて前記プリント基板の裏面下側に向けて略90度折り曲げて構成されている。
【0008】
そして、プリント基板の表面にアンテナ素子を配設し、前記プリント基板の裏面に前記アンテナ素子に電気的接続されるケーブルを沿うように配設し、前記プリント基板の外周縁をホルダーで固定するアンテナ装置において、前記ケーブルを前記ホルダーに設けた横折り曲げガイドに引っ掛けて前記プリント基板と略平行な面内で略180度折り曲げ、さらに前記ケーブルを前記ホルダーに設けた縦折り曲げガイドに引っ掛けて前記プリント基板の裏面下側に向けて略90度折り曲げて構成しても良い。
【0009】
また、プリント基板の表面にアンテナ素子を配設し、前記プリント基板の裏面に前記アンテナ素子に電気的接続されるケーブルを沿うように配設し、前記プリント基板の外周縁をホルダーで固定するアンテナ装置において、前記ケーブルを前記ホルダーに設けた第1縦折り曲げガイドに引っ掛けて前記プリント基板と略垂直な面内で略180度折り曲げ、さらに前記ケーブルを前記ホルダーに設けた第2縦折り曲げガイドに引っ掛けて前記プリント基板の裏面下側に向けて略90度折り曲げて構成しても良い。
【0010】
さらに、前記ホルダーを前記プリント基板の外周縁を表面上側から押さえる上側ホルダー部と前記プリント基板の外周縁を裏面下側から押さえる下側ホルダー部とで形成し、前記上側ホルダー部と前記下側ホルダー部が前記プリント基板の外周縁を上下から挟んだ状態で係止爪と係合部の係合により一体化するように構成することもできる。
【0011】
そしてさらに、前記ホルダーを前記プリント基板の外周縁を表面上側から押さえる上側ホルダー部と前記プリント基板の外周縁を裏面下側から押さえる下側ホルダー部とで形成し、前記上側ホルダー部と前記下側ホルダー部が前記プリント基板の外周縁を上下から挟んだ状態で係止爪と係合部の係合により一体化するようにし、しかも前記上側ホルダー部に前記横折り曲げガイドの一部分を設け、前記下側ホルダー部に前記横折り曲げガイドの他の部分と前記縦折り曲げガイド部を設けて構成することも可能である。
【0012】
そしてまた、前記ホルダーを前記プリント基板の外周縁を表面上側から押さえる上側ホルダー部と前記プリント基板の外周縁を裏面下側から押さえる下側ホルダー部とで形成し、前記上側ホルダー部と前記下側ホルダー部が前記プリント基板の外周縁を上下から挟んだ状態で係止爪と係合部の係合により一体化するようにし、しかも前記下側ホルダー部に前記第1縦折り曲げガイドと前記第2縦折り曲げガイド部を設けて構成することも可能である。
【0013】
またさらに、アンテナベース部材に他のアンテナ装置とともに配設され、前記他のアンテナ装置のケーブルを前記ホルダーに設けたガイド部により引き回し位置を規制し、複数の前記ケーブルをまとめて前記アンテナベースに穿設された貫通孔から下側に向けて導出するように構成しても良い。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載のアンテナ装置にあっては、ケーブルを第1の折り曲げガイドに引っ掛けて略180度折り曲げ、さらに第2の折り曲げガイドに引っ掛けて下側に向けて略90度折り曲げているので、ケーブルに引っ張る力が作用しても、略180度折り曲げた部分と下側に向けて略90度折り曲げた部分で、第1と第2の折り曲げガイドにそれぞれ大きな静止摩擦抵抗力が作用する。よって、ケーブルを引っ張る力が大きく減殺されて、ケーブルがアンテナ素子に電気的接続される半田付け部分にケーブルを引っ張る力が作用し難い。
【0015】
請求項2記載のアンテナ装置にあっては、ケーブルを横折り曲げガイドに引っ掛けて横に略180度折り曲げ、さらに縦折り曲げガイドに引っ掛けて下側に向けて略90度折り曲げているので、ケーブルに引っ張る力が作用しても、横折り曲げガイドと縦折り曲げガイドにそれぞれ大きな静止摩擦抵抗力が作用し、請求項1記載のアンテナ装置と同様に、ケーブルを引っ張る力が大きく減殺されて、ケーブルがアンテナ素子に電気的接続される半田付け部分にケーブルを引っ張る力が作用し難い。しかも、プリント基板の裏面に沿うように配設したケーブルを横折り曲げガイドに引っ掛けてプリント基板と略平行な面内で略180度折り曲げているので、プリント基板の裏面側に大きな空間部を必要とせず、それだけアンテナ装置の背丈を低くすることができ、低背化に好適である。
【0016】
請求項3記載のアンテナ装置にあっては、ケーブルを第1縦折り曲げガイドに引っ掛けて縦に略180度折り曲げ、さらに第2縦折り曲げガイドに引っ掛けて下側に向けて略90度折り曲げているので、ケーブルに引っ張る力が作用しても、第1縦折り曲げガイドと第2縦折り曲げガイドにそれぞれ大きな静止摩擦抵抗力が作用し、請求項1記載のアンテナ装置と同様に、ケーブルを引っ張る力が大きく減殺されて、ケーブルがアンテナ素子に電気的接続される半田付け部分にケーブルを引っ張る力が作用し難い。しかも、プリント基板の裏面に配設したケーブルを第1縦折り曲げガイドに引っ掛けてプリント基板と略垂直な面内で略180度折り曲げているので、プリント基板の側方に大きな空間部を必要とせず、それだけアンテナ装置の設置面積を小さくすることができる。
【0017】
また、請求項4記載のアンテナ装置にあっては、プリント基板の外周縁を表面上側から押さえる上側ホルダー部と外周縁を裏面下側から押さえる下側ホルダー部とでホルダーを形成し、上側ホルダー部と下側ホルダー部が係止爪と係合部の係合により一体化するようにしたので、プリント基板を収容固定するホルダーの構造を簡単に構成できる。また、ホルダー内にプリント基板を収容固定する作業も容易である。
【0018】
さらに、請求項5載のアンテナ装置にあっては、上側ホルダー部に横折り曲げガイドの一部分を設け、下側ホルダー部に横折り曲げガイドの他の部分と縦折り曲げガイド部を設けたので、ケーブルに引っ張る力が作用した際に、ケーブルを横に180度折り曲げる横折り曲げガイドに加わる力を、上側ホルダー部と下側ホルダー部に分散することができる。
【0019】
さらに、請求項6載のアンテナ装置にあっては、下側ホルダー部に第1縦折り曲げガイドと第2縦折り曲げガイド部を設けたので、上側ホルダー部を配設する前に、ケーブルを第1と第2縦折り曲げガイド部に引っ掛けることができ、組み付け作業が容易である。
【0020】
そして、請求項7記載のアンテナ装置にあっては、アンテナベース部材に配設される複数のアンテナ装置の複数のケーブルをまとめてアンテナベースに穿設された貫通孔から下側に向けて導出するようにしたので、車内等へのケーブルの引き込みが容易である。しかも、他のアンテナ装置のケーブルをホルダーに設けたガイド部により引き回し位置を規制するので、他のアンテナ装置のケーブルが別のケーブルの引き回しの邪魔となるようなことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の第1実施例を、図1ないし図8を参照して説明する。図1は、本発明のアンテナ装置の第1実施例を斜め上方から見た外観斜視図である。図2は、図1のアンテナ装置を斜め下方から見た外観斜視図である。図3は、図1のアンテナ装置を上方から見た分解斜視図である。図4は、図1のアンテナ装置を下方から見た分解斜視図である。図5は、図1のアンテナ装置で用いる上側ホルダー部を示し、(a)は平面図であり、(b)は背面図であり、(c)は正面図であり、(d)は左側面図であり、(e)は右側面図である。図6は、図1のアンテナ装置で用いる下側ホルダー部を示し、(a)は平面図であり、(b)は背面図であり、(c)は正面図であり、(d)は左側面図であり、(e)は右側面図である。図7は、図1のアンテナ装置でケーブルを引っ張る力に対して作用する静止摩擦抵抗力を説明するための図であり、(a)は縦折り曲げガイドによって引っ張る力が減殺されることを示し、(b)は横折り曲げガイドによって引っ張る力が減殺されることを示す。図8は、図1のアンテナ装置と他のアンテナ装置を1つのアンテナベースに搭載した車載用アンテナの縦断面図である。図9は、図8の車載用アンテナからカバーを外して斜め上方から見た斜視図である。図10は、図9の状態からさらに図1の第1実施例のアンテナ装置を取り外して斜め上方から見た斜視図である。
【0022】
まず、本発明のアンテナ装置の第1実施例について、図1ないし図7を参照して説明する。図1ないし図7において、平面パッチアンテナ等をアンテナエレメントとして有する平面型のアンテナ素子10が、プリント基板12の表面に配設され、このプリント基板12の裏面にケーブル14が配設され、プリント基板12に沿うようにしてケーブル14が配設される。しかも、ケーブル14の中心導体が、プリント基板12を介してまたは貫通してアンテナ素子10に半田付け等により電気的接続されるとともに固定されている。アンテナ素子10およびプリント基板12は、上方から見た平面形状がいずれもほぼ正方形で相似形であり、しかもアンテナ素子10よりプリント基板12が少し大きく設定されていて、その外周縁がアンテナ素子10から側方にフランジ状に張り出すように形成されている。なお、プリント基板12の裏面側には、導電金属製のシールドカバー15が配設されて、プリント基板12に設けられた回路等を外部雑音から遮蔽している。そして、この外周縁を固定する樹脂製のホルダー16は、上側ホルダー部18と下側ホルダー部20とからなる。上側ホルダー部18は、アンテナ素子10が上方に突出するとともにプリント基板12の外周縁を表面上側から押さえるように略枠状に形成される。また、下側ホルダー部20は、プリント基板12の裏面側に偏平な空間部20aを形成するとともにプリント基板12の外周縁を裏面下側から押さえるように略容器状に形成される。しかも、上側ホルダー部18には係止爪18a、18a…が設けられ、下側ホルダ−部20には係合部20b、20b…が設けられていて、プリント基板12の外周縁を上側ホルダー部18と下側ホルダー部20とで上下から挟んだ状態で、係止爪18a、18a…が係合部20b、20b…に係合して、上側ホルダー部18と下側ホルダー部20が一体化するように形成されている。なお、下側ホルダー部20の空間部20aは、プリント基板12の裏面に沿って配設されるケーブル14およびシールドカバー15を収容し得るスペースが確保できれば良い。
【0023】
そして、上側ホルダー部18の側面部の1つには、側方に突出して第1の折り曲げガイドとしての横折り曲げガイド22の一部分18bが形成され、下側ホルダー部20の側面部の1つにも、側方に突出して横折り曲げガイド22の他の部分20cが形成され、上側ホルダー部18と下側ホルダー部20が一体化された状態で、横折り曲げガイド22の一部分18bと他の部分20cでケーブル14を案内する溝が連続した状態となるように形成される。プリント基板12に配設されたケーブル14が、プリント基板12と略平行な面内で、この横折り曲げガイド22の断面略半円状の溝に沿って略180度折り曲げられる。ここで、ケーブル14を下側ホルダー部20の空間部20aから側方の外方に導出するために、下側ホルダー部20には横折り曲げガイド22の他の部分20cに臨んで切り欠き20dが設けられる。また、ケーブル14の略180度の折り曲げは、ホルダー16の側方でなされていれば良く、プリント基板12に対し正確に平行な平面内に限られず、ある程度の角度範囲内であれば斜めの面で行われても良い。
【0024】
さらに、下側ホルダー部20の下側面には、側方で略180度折り曲げられたケーブル14をさらにプリント基板12の裏面下側に向けて略90度折り曲げる第2の折り曲げガイドとしての縦折り曲げガイド20eが設けられている。この縦折り曲げガイド20eは、下側に突出する略L字状部と、この略L字状部にケーブル14を引っ掛けた状態を維持させるように位置規制する位置規制部とからなる。また、下側ホルダー部20には、後述する他のアンテナ装置のケーブルの引き回し位置を規制するためのガイド部20f、20fも設けられている。
【0025】
かかる構成において、ホルダー16から下側に向けて引き出されたケーブル14に、下方に向けて引っ張る力F1が作用すると、図7(a)のごとく、まずケーブル14が縦に略90度折り曲げられた部分が縦折り曲げガイド20eの略L字状部に強く押し当てられ、大きな静止摩擦抵抗力が作用する。よって、ケーブル14を引っ張る力F1が大きく減殺されて、横折り曲げガイド22に到るケーブル14に作用する引っ張る力F2は小さなものとなる。そして、この引っ張る力F2により、ケーブル14が横折り曲げガイド22に押し当てられて、ここでも静止摩擦抵抗力が作用して、引っ張る力F2が減殺され、半田付け部分に作用する引っ張る力F3が極めて小さくまたは零となる。よって、ケーブル14に引っ張る力F1が作用しても、ケーブル14の半田付け部分にまでその力が作用することがなく、電気的接続が破壊される虞がない。
【0026】
そして、ケーブル14をプリント基板12の裏面に沿うように配設することで、下側ホルダー部20の空間部20aの深さが浅くて良く、それだけ下側ホルダー部20の上下方向の寸法を短くできる。さらに、側方でケーブル14がプリント基板12と略平行な面内で略180度折り曲げられているので、本発明のアンテナ装置の全体を低背型とするのに好適である。また、上側ホルダー部18と下側ホルダー部20を、プリント基板12の外周縁を上下から挟んで係止爪18a、18a…と係合部20b、20b…の係合で一体化するようにしたので、上側ホルダー部18と下側ホルダー部20の構造が簡単であって、樹脂による成型も容易である。しかも、上側ホルダー部18と下側ホルダー部20でプリント基板12の外周縁を固定する作業も比較的に簡単である。さらに、横折り曲げガイド22の一部分18bが上側ホルダー部18に設けられ、他の部分20cが下側ホルダー部20に設けられることで、横折り曲げガイド22に作用する力が、上側ホルダー部18と下側ホルダー部20に分散され、いずれか一方に偏って大きな力が作用するようなことがない。
【0027】
ここで、本発明の第1実施例のアンテナ装置と他のアンテナ装置を1つのアンテナベースに配設した構成につき、図8ないし図10を参照して説明する。図8ないし図10において、1つのアンテナベース30に、例えばGPS用の本発明の第1実施例のアンテナ装置32とXMサテライトラジオ用の第1の他のアンテナ装置34と携帯電話のAMPSとPCS用の第2の他のアンテナ装置36とが搭載されており、その全体がレドームとしてのカバー38で覆われている。そして、アンテナベース30のアンテナ装置の設置スペースは狭くて、本発明のアンテナ装置32と第1と第2の他のアンテナ装置34、36は、極めて接近した状態で配設される。さらに、本発明のアンテナ装置32のケーブル14と、第1と第2の他のアンテナ装置34、36のケーブル40、42は、1つにまとめられて、本発明のアンテナ装置32が配設された位置の下方でアンテナベース30に穿設された貫通孔30aから下側に引き出されて、適宜に車内に導入される。そこで、アンテナベース30には、第1と第2のアンテナ装置34、36のケーブル40、42を所定位置で引き回すための規制用の溝30b等が適宜に設けられている。また、貫通孔30aの上方に配設される本発明のアンテナ装置32の下側ホルダー部20にも他のアンテナ装置34、36のケーブル40、42の引き回しを適宜に位置規制するためのガイド部20f、20fが設けられている。
【0028】
上述の構造にあっては、1つのアンテナベース30に複数のアンテナ装置32、34、36が配設されていても、それらのケーブル14、40、42がそれぞれに適宜に引き回されて、その位置が規制されるので、小さなスペースに整然と納めることができる。しかも、いずれのケーブル14、40、42も、極端な折り曲げがなされることがないように配慮することで、小さなスペースに配設されるにも関わらず、ケーブル14、40、42に破損に繋がるような無理な力が加わることもない。
【0029】
次に、本発明の第2実施例を、図11ないし図18を参照して説明する。図11は、本発明のアンテナ装置の第2実施例を斜め上方から見た外観斜視図である。図12は、図11のアンテナ装置を斜め下方から見た外観斜視図である。図13は、図11のアンテナ装置を上方から見た分解斜視図である。図14は、図11のアンテナ装置を下方から見た分解斜視図である。図15は、図11のアンテナ装置で用いる上側ホルダー部を示し、(a)は平面図であり、(b)は背面図であり、(c)は正面図であり、(d)は左側面図であり、(e)は右側面図である。図16は、図11のアンテナ装置で用いる下側ホルダー部を示し、(a)は平面図であり、(b)は背面図であり、(c)は正面図であり、(d)は左側面図であり、(e)は右側面図である。図17は、図11の第2実施例のアンテナ装置と他のアンテナ装置を1つのアンテナベースに搭載した車載用アンテナの縦断面図である。図18は、図17の車載用アンテナからカバーを外して斜め上方から見た斜視図である。図11ないし図18において、図1ないし図10と同じまたは均等な部材には同じ符号を付けて重複する説明を省略する。
【0030】
本発明のアンテナ装置の第2実施例において、第1実施例と相違するところは、プリント基板12に配設されたケーブル14が、プリント基板12と略垂直な面内で略180度折り曲げられることにある。そこで、第2実施例にあっては、下側ホルダー部20の側面部の1つに、プリント基板12と略平行な面内で側方から略L字状に突出して第1の折り曲げガイドとしての第1縦折り曲げガイド20gが形成される。プリント基板12に配設されたケーブル14が、プリント基板12と略垂直な面内で、この第1縦折り曲げガイド20gの略L字状のアームに引っ掛けられて略180度折り曲げられる。ここで、ケーブル14を下側ホルダー部20の空間部20aから側方の外方に導出するために、下側ホルダー部20には第1縦折り曲げガイド20gに臨んで切り欠き20dが設けられる。さらに、下側ホルダー部20の下側面には、側方で略垂直な面内で略180度折り曲げられたケーブル14をさらにプリント基板12の裏面下側に向けて略90度折り曲げる第2の折り曲げガイドとしての第2縦折り曲げガイド20e(第1実施例の縦折り曲げガイド20eと同じ構造である。)が設けられている。この第2縦折り曲げガイド20eは、下側に突出する略L字状部と、この略L字状部にケーブル14を引っ掛けた状態を維持させるように位置規制する位置規制部とからなる。なお、上側ホルダー部18には、折り曲げガイドが設けられていない。
【0031】
かかる構成の第2実施例において、ホルダー16から下側に向けて引き出されたケーブル14に、下方に向けて引っ張る力が作用すると、第1実施例と同様に、まずケーブル14が縦に略90度折り曲げられた部分が第2縦折り曲げガイド20eの略L字状部に強く押し当てられ、大きな静止摩擦抵抗力が作用し、ケーブル14を引っ張る力が大きく減殺される。さらに、第1縦折り曲げガイド20gに到るケーブル14に作用する引っ張る力により、ケーブル14が第1縦折り曲げガイド20gに押し当てられて、ここでも静止摩擦抵抗力が作用して引っ張る力が減殺され、半田付け部分に作用する引っ張る力が極めて小さくまたは零となる。よって、ケーブル14に引っ張る力が作用しても、ケーブル14の半田付け部分にまでその力が作用することがなく、電気的接続が破壊される虞がない。
【0032】
そして、ケーブル14を下側ホルダー部20に設けた第1縦折り曲げガイド20gと第2縦折り曲げガイド20eに引っ掛けているので、ケーブル14を第1と第2縦折り曲げガイド20g、20eに組み付けた後で、上側ホルダー18を被せて組み付ければ良く、組み立て作業が容易である。また、ケーブル14を第1縦折り曲げガイド20gに引っ掛けてプリント基板12と略垂直な面内で略180度折り曲げているので、プリント基板12の側方に大きな空間部を必要とせず、それだけアンテナ装置の設置面積を小さくすることができる。
【0033】
ところで、本発明の第2実施例のアンテナ装置にあっても、第1実施例と同様に、本発明の第2実施例のアンテナ装置と他のアンテナ装置を1つのアンテナベースに配設して構成することができる。これを図17および図18を参照して説明する。図17および図18において、1つのアンテナベース30に、例えばGPS用の本発明の第2実施例のアンテナ装置44とXMサテライトラジオ用の第1の他のアンテナ装置34と携帯電話のAMPSとPCS用の第2の他のアンテナ装置36とが搭載されており、その全体がレドームとしてのカバー38で覆われている。そして、アンテナベース30のアンテナ装置の設置スペースは狭くて、本発明のアンテナ装置44と第1と第2の他のアンテナ装置34、36は、極めて接近した状態で配設される。さらに、本発明のアンテナ装置44のケーブル14と、第1と第2の他のアンテナ装置34、36のケーブル40、42は、1つにまとめられて、本発明のアンテナ装置44が配設された位置の下方で下側に引き出されて、適宜に車内に導入される。
【0034】
上述の構造にあっては、1つのアンテナベース30に複数のアンテナ装置32、34、36が配設されていても、それらのケーブル14、40、42がそれぞれに適宜に引き回されて、その位置が規制されるので、小さなスペースに整然と納めることができる。しかも、いずれのケーブル14、40、42も、極端な折り曲げがなされることがないように配慮することで、小さなスペースに配設されるにも関わらず、ケーブル14、40、42に破損に繋がるような無理な力が加わることもない。そして、第2実施例のアンテナ装置44にあっては、ケーブル14を第1縦折り曲げガイド20gに引っ掛けてプリント基板12と略垂直な面内で略180度折り曲げているので、プリント基板12の側方に大きな空間部を必要とせず、それだけアンテナ装置44の設置面積を小さくすることができ、本発明の第2実施例のアンテナ装置44と他のアンテナ装置32、34を1つのアンテナベース30内により密に配設することができる。
【0035】
なお、上記第1実施例では、プリント基板12と略平行な面内でケーブル14を略180度折り曲げ、また上記第2実施例では、プリント基板12と略垂直な面内でケーブル14を略180度折り曲げているが、これに限られず、プリント基板12に対し略平行または略垂直な面内に限られず、プリント基板12に対して斜めの面内でケーブル14の略180度の折り曲げが行われても良い。そして、上記構造において、本発明の第1および第2実施例のアンテナ装置32、44が、設置スペースの小さい1つのアンテナベース30に単独で配設されても良いことは勿論である。さらに、本発明のアンテナ装置32、44が、GPS用のアンテナ装置に限られないことも勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明のアンテナ装置の第1実施例を斜め上方から見た外観斜視図である。
【図2】図1のアンテナ装置を斜め下方から見た外観斜視図である。
【図3】図1のアンテナ装置を上方から見た分解斜視図である。
【図4】図1のアンテナ装置を下方から見た分解斜視図である。
【図5】図1のアンテナ装置で用いる上側ホルダー部を示し、(a)は平面図であり、(b)は背面図であり、(c)は正面図であり、(d)は左側面図であり、(e)は右側面図である。
【図6】図1のアンテナ装置で用いる下側ホルダー部を示し、(a)は平面図であり、(b)は背面図であり、(c)は正面図であり、(d)は左側面図であり、(e)は右側面図である。
【図7】図1のアンテナ装置でケーブルを引っ張る力に対して作用する静止摩擦抵抗力を説明するための図であり、(a)は縦折り曲げガイドによって引っ張る力が減殺されることを示し、(b)は横折り曲げガイドによって引っ張る力が減殺されることを示す。
【図8】図1の第1実施例のアンテナ装置と他のアンテナ装置を1つのアンテナベースに搭載した車載用アンテナの縦断面図である。
【図9】図8の車載用アンテナからカバーを外して斜め上方から見た斜視図である。
【図10】図9の状態からさらに図1の第1実施例のアンテナ装置を取り外して斜め上方から見た斜視図である。
【図11】本発明のアンテナ装置の第2実施例を斜め上方から見た外観斜視図である。
【図12】図11のアンテナ装置を斜め下方から見た外観斜視図である。
【図13】図11のアンテナ装置を上方から見た分解斜視図である。
【図14】図11のアンテナ装置を下方から見た分解斜視図である。
【図15】図11のアンテナ装置で用いる上側ホルダー部を示し、(a)は平面図であり、(b)は背面図であり、(c)は正面図であり、(d)は左側面図であり、(e)は右側面図である。
【図16】図11のアンテナ装置で用いる下側ホルダー部を示し、(a)は平面図であり、(b)は背面図であり、(c)は正面図であり、(d)は左側面図であり、(e)は右側面図である。
【図17】図11の第2実施例のアンテナ装置と他のアンテナ装置を1つのアンテナベースに搭載した車載用アンテナの縦断面図である。
【図18】図17の車載用アンテナからカバーを外して斜め上方から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
10 アンテナ素子
12 プリント基板
14、40、42 ケーブル
15 シールドカバー
16 ホルダー
18 上側ホルダー部
18a 係止爪
18b 横折り曲げガイドの一部分
20 下側ホルダー部
20a 空間部
20b 係合部
20c 横折り曲げガイドの他の部分
20d 切り欠き
20e 縦折り曲げガイド(第2縦折り曲げガイド)
20f ガイド部
20g 第1縦折り曲げガイド
22 横折り曲げガイド
30 アンテナベース
32 本発明の第1実施例のアンテナ装置
34 第1の他のアンテナ装置
36 第2の他のアンテナ装置
38 カバー
44 本発明の第2実施例のアンテナ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板の表面にアンテナ素子を配設し、前記プリント基板の裏面に前記アンテナ素子に電気的接続されるケーブルを沿うように配設し、前記プリント基板の外周縁をホルダーで固定するアンテナ装置において、前記ケーブルを前記ホルダーに設けた第1の折り曲げガイドに引っ掛けて略180度折り曲げ、さらに前記ケーブルを前記ホルダーに設けた第2の折り曲げガイドに引っ掛けて前記プリント基板の裏面下側に向けて略90度折り曲げて構成したことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
プリント基板の表面にアンテナ素子を配設し、前記プリント基板の裏面に前記アンテナ素子に電気的接続されるケーブルを沿うように配設し、前記プリント基板の外周縁をホルダーで固定するアンテナ装置において、前記ケーブルを前記ホルダーに設けた横折り曲げガイドに引っ掛けて前記プリント基板と略平行な面内で略180度折り曲げ、さらに前記ケーブルを前記ホルダーに設けた縦折り曲げガイドに引っ掛けて前記プリント基板の裏面下側に向けて略90度折り曲げて構成したことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】
プリント基板の表面にアンテナ素子を配設し、前記プリント基板の裏面に前記アンテナ素子に電気的接続されるケーブルを沿うように配設し、前記プリント基板の外周縁をホルダーで固定するアンテナ装置において、前記ケーブルを前記ホルダーに設けた第1縦折り曲げガイドに引っ掛けて前記プリント基板と略垂直な面内で略180度折り曲げ、さらに前記ケーブルを前記ホルダーに設けた第2縦折り曲げガイドに引っ掛けて前記プリント基板の裏面下側に向けて略90度折り曲げて構成したことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項4】
請求項1ないし3記載のいずれかのアンテナ装置において、前記ホルダーを前記プリント基板の外周縁を表面上側から押さえる上側ホルダー部と前記プリント基板の外周縁を裏面下側から押さえる下側ホルダー部とで形成し、前記上側ホルダー部と前記下側ホルダー部が前記プリント基板の外周縁を上下から挟んだ状態で係止爪と係合部の係合により一体化するように構成したことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項5】
請求項2記載のアンテナ装置において、前記ホルダーを前記プリント基板の外周縁を表面上側から押さえる上側ホルダー部と前記プリント基板の外周縁を裏面下側から押さえる下側ホルダー部とで形成し、前記上側ホルダー部と前記下側ホルダー部が前記プリント基板の外周縁を上下から挟んだ状態で係止爪と係合部の係合により一体化するようにし、しかも前記上側ホルダー部に前記横折り曲げガイドの一部分を設け、前記下側ホルダー部に前記横折り曲げガイドの他の部分と前記縦折り曲げガイド部を設けて構成したこと特徴とするアンテナ装置。
【請求項6】
請求項3記載のアンテナ装置において、前記ホルダーを前記プリント基板の外周縁を表面上側から押さえる上側ホルダー部と前記プリント基板の外周縁を裏面下側から押さえる下側ホルダー部とで形成し、前記上側ホルダー部と前記下側ホルダー部が前記プリント基板の外周縁を上下から挟んだ状態で係止爪と係合部の係合により一体化するようにし、しかも前記下側ホルダー部に前記第1縦折り曲げガイドと前記第2縦折り曲げガイド部を設けて構成したこと特徴とするアンテナ装置。
【請求項7】
請求項1ないし3記載のいずれかのアンテナ装置において、アンテナベース部材に他のアンテナ装置とともに配設され、前記他のアンテナ装置のケーブルを前記ホルダーに設けたガイド部により引き回し位置を規制し、複数の前記ケーブルをまとめて前記アンテナベースに穿設された貫通孔から下側に向けて導出するように構成したことを特徴とするアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−94901(P2009−94901A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−264864(P2007−264864)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(000006758)株式会社ヨコオ (158)
【Fターム(参考)】