説明

アンテナ装置

【課題】地上に設置された無線機でマンホール内に設置された無線機からの信号を高い信号レベルで受信可能とする。
【解決手段】マンホール内には、モノポールアンテナ8を備える無線機7が設置されている。該無線機7において、グランド板である第1の金属板9は、モノポールアンテナ8よりも下方に設置され、かつ、第1の金属板9、すなわちグランド板の寸法(マンホール首部3が、円形であれば直径、矩形であれば縦横寸法)と形状(マンホール首部3が、円形であれば円弧状、矩形であれば矩形状など)とは、マンホール首部3の横断面とほぼ同一とするとなるように製作されている。第1の金属板9は、モノポールアンテナ8から放射され、グランド板を回り込んで地中方向に放射される電力を遮断し、大部分の電力を地上方向に放射させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホール内に設置された無線機と地上の無線機との通信を可能とするマンホール内に設置されたアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図9は、従来のアンテナ装置を用いたマンホール内に設置された無線通信装置と地上の無線通信装置との通信状況を示す断面図である。図9において、1は円形のマンホール鉄蓋、2は円形のマンホール鉄枠、3はコンクリートの材質からなる円筒形のマンホール首部、4はコンクリートの材質からなる直方体形のマンホール本体、5はアスファルト層、6はローム層、7はマンホール内に設置された無線機、8はモノポールアンテナ、19は第1の金属板、10は給電線、11は地上に設置された無線機、12はモノポールアンテナである。
【0003】
第3の金属板19は、モノポールアンテナ8のグランド板の役目を共用している。ここで説明する従来の技術例としては、例えば、電磁誘導を利用したワイヤレスIDタグシステムがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図10は、従来のアンテナ装置のマンホール縦断面内の電磁界分布を示す図である。図10に示すように、第3の金属板19より下方に電界強度の高い領域が広がっていることが分かる。
図11は、従来のアンテナ装置の縦断面内(ZX面内)の放射パターンを示す図である。図11において、地上方向(仰角が−90°〜0°〜+90°の範囲)における最大利得は、約−9.6dBiである。第3の金属板19、すなわちモノポールアンテナ8のグランド板は、円筒形のマンホール首部3の断面積よりも小形に製作されていたため、モノポールアンテナ8から放射された電力は、第3の金属板19を回り込んで地中方向にも放射されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願平9−247076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来技術によるアンテナ装置を用いたマンホール内に設置された無線機7と地上の無線機11との通信においては、モノポールアンテナ8の第3の金属板19が円筒形のマンホール首部3の断面積よりも小形に製作されていた。このため、モノポールアンテナ8から放射された電力は、第3の金属板19を回り込んで地中方向にも放射されるため、地上方向の電力放射量が低減され、地上に設置された無線機11における信号受信レベルが低くなり、マンホール内に設置された無線機7からの信号を地上に設置された無線機11において高いレベルで受信することが困難になるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、マンホール内に設置されたアンテナ装置からの地上方向の電力放射量を増加させ、マンホール内に設置された無線機からの信号を地上に設置された無線機で高いレベルで受信することができるアンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、地上とマンホール本体との間に配設されたマンホール首部に設置される無線機のアンテナ装置であって、アンテナ素子と、前記アンテナ素子よりも下方に設置され、かつ、前記マンホール首部を塞ぐ形状を有する第1の金属板とを備えることを特徴とするアンテナ装置である。
【0009】
本発明は、上記の発明において、前記第1の金属板と垂直に接して配置され、前記アンテナ素子よりも地上面に近い位置に端部が達する高さを有する第2の金属板を更に備えることを特徴とする。
【0010】
本発明は、上記の発明において、前記第2の金属板は、前記マンホール首部の内側面形状と略同一の形状を有していると共に、信号を送信する方向に開口部を有していることを特徴とする。
【0011】
本発明は、上記の発明において、前前記アンテナ素子は、モノポールアンテナであり、前記第1の金属板は、前記アンテナ素子のグランド板であることを特徴とする。
【0012】
本発明は、上記の発明において、前記アンテナ素子は、前記無線機の筐体内に内蔵されているか、又は前記無線機の筐体と一体化されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、金属板をアンテナ素子よりも下方に設置し、かつ、金属板の寸法と形状をマンホール首部の断面と同一とすることで、アンテナ素子から地中方向に放射される電力を遮断し、大部分の電力を地上方向の放射に振り向けることにより、地上方向の電力放射量が増加し、マンホール内に設置された無線機からの信号を地上に設置された無線機で高いレベルで受信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態によるアンテナ装置の構造を示す断面図である。
【図2】本第1実施形態でのマンホール内の電磁界分布を示す図である。
【図3】本第1実施形態によるアンテナ装置の縦断面内(ZX面内)の放射パターンを示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態によるアンテナ装置の構造を示す断面図である。
【図5】本第2実施形態によるアンテナ装置のアンテナ部の拡大図である。
【図6】本第2実施形態でのマンホール内の電磁界分布を示す図である。
【図7】本第2実施形態によるアンテナ装置の縦断面内(ZX面内)の放射パターンを示す図である。
【図8】本発明の第3実施形態によるアンテナ装置の構造を示す断面図である。
【図9】従来技術によるアンテナ装置を示す断面図である。
【図10】従来技術によるアンテナ装置でのマンホール内の電磁界分布を示す図である。
【図11】従来技術によるアンテナ装置の縦断面内(ZX面内)の放射パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0016】
A.第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態によるアンテナ装置を設置したマンホール内の構造を示す断面図である。図1において、1は円形のマンホール鉄蓋、2は円形のマンホール鉄枠、3はコンクリートの材質からなる円筒形のマンホール首部、4はコンクリートの材質からなる直方体形のマンホール本体、5はアスファルト層、6はローム層、7はマンホール内に設置された無線機、8はモノポールアンテナ、9は第1の金属板、10は給電線、11は地上に設置された無線機、12はモノポールアンテナである。第1の金属板9は、モノポールアンテナのグランド板の役目を共用している。第1の金属板9、すなわちモノポールアンテナのグランド板は、モノポールアンテナ8よりも下方に設置され、かつ、その寸法(直径)と形状とを、マンホール首部3の横断面とほぼ同一になっている。すなわち、第1の金属板9は、マンホール首部3の内径と同じ大きさの円板であり、マンホール首部3の内側を塞いでいる。
【0017】
図2は、本第1実施形態によるアンテナ装置を設置したマンホールの縦断面内の電磁界分布を示す図である。図2において、無線機7と給電線10は、簡単のため省略している。グランド板である第1の金属板9をモノポールアンテナ8よりも下方に設置し、かつ、第1の金属板9、すなわちグランド板の形状と、マンホール首部3の横断面の形状とほぼ同一としたことから、モノポールアンテナ8から放射され、グランド板を回り込んで地中方向に放射される電力が遮断され、大部分の電力が地上方向に放射していることが分かる。
なお、マンホール首部3の横断面の内側の形状が円形の場合について説明したが、第1の金属板9は、マンホール首部3の横断面の内側の形状と同じ形状の板状に形成され、マンホール首部3の内側を塞ぐように形成される。
【0018】
図3は、本第1実施形態のアンテナ装置によるマンホール内の縦断面内(ZX面内)の放射パターンを示す図である。図3において、地上方向(仰角が−90°〜0°〜+90°の範囲)における最大利得は、約−5.6dBiとなり、従来のアンテナ装置に比べて約4dB利得が上昇している。つまり、モノポールアンテナ8から地上方向への電力放射量を増加させることができる。
【0019】
このように、本第1実施形態におけるアンテナ装置を用いたマンホール内に設置された無線機7と地上の無線機11との通信では、マンホール首部3の管軸方向において、地中に向いて放射される電力を遮断することにより、地上に向けて放射される電力量が低減されることがないので、地上に設置された無線機11で、マンホール内に設置された無線機7からの信号を高い信号レベルで受信することが可能となる。
【0020】
本第1実施形態においては、マンホール首部3の横断面が円形の場合を例に説明したが、他の形状であっても、容易に適用可能であり、全く同様の効果が得られる。また、本第1実施形態においては、マンホール本体4とマンホール首部3の両方を有する場合を例に説明したが、マンホールの形式として、マンホール首部3のみを具備する形式のマンホールであっても、容易に適用可能であり、全く同様の効果が得られることは容易に類推できる。
【0021】
また、本第1実施形態においては、第1の金属板9は、モノポールアンテナ8のグランド板の役目を共用している場合を例に説明した。しかし、第1の金属板9をグランド板として用いない場合、モノポールアンテナ8、及び当該モノポールアンテナ8のグランド板よりも下方に第1の金属板9を設置するようにしてもよい。モノポールアンテナ8、及び当該モノポールアンテナ8のグランド板より下方に第1の金属板9を設置することにより、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0022】
B.第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図4は、本第2実施形態によるアンテナ装置を設置したマンホール内の構造を示す断面図である。図4において、1は円形のマンホール鉄蓋、2は円形のマンホール鉄枠、3はコンクリートの材質からなる円筒形のマンホール首部、4はコンクリートの材質からなる直方体形のマンホール本体、5はアスファルト層、6はローム層、7はマンホール内に設置された無線機、8はモノポールアンテナ、9は第1の金属板、10は給電線、11は地上に設置された無線機、12はモノポールアンテナ、13は第2の金属板である。
【0023】
図5は、アンテナ部を拡大した斜視図である。第1の金属板9は、上述した第1実施形態と同様に、モノポールアンテナ8のグランド板の役目をしている。該第1の金属板9、すなわちモノポールアンテナ8のグランド板は、モノポールアンテナ8よりも下方に設置され、かつ、その寸法と形状とを、マンホール首部3の横断面とほぼ同一になっている。すなわち、第1の金属板9は、マンホール首部3の内径と同じ大きさの円板であり、マンホール首部3の内側を塞いでいる。
【0024】
第2の金属板13は、マンホール首部3の内側の曲面とほぼ同一の曲率の円弧状とし、モノポールアンテナ8と同等の高さを有し、第1の金属板9と垂直に接するように配置されている。つまり、第2の金属板13は、マンホール首部3の内側面の形状と略同一の形状を有し、信号を送信する方向に開口部を有している。そして、第2の金属板13は、モノポールアンテナ8の反射板として動作する。
なお、第2の金属板13は、第2の金属板13の端部が、モノポールアンテナ8の地上面に近い一端より地上面に近くなるような高さを有していてもよい。
【0025】
図6は、本第2実施形態によるアンテナ装置を設置したマンホールの縦断面内の電磁界分布を示す図である。図6において、無線機7と給電線10は、簡単のため省略している。グランド板である第1の金属板9をモノポールアンテナ8よりも下方に設置し、かつ、第1の金属板9、すなわちグランド板の寸法(マンホール首部3が、円形であれば直径、矩形であれば縦横寸法)と形状(マンホール首部3が、円形であれば円弧状、矩形であれば矩形状など)とを、マンホール首部3の横断面とほぼ同一としたことから、モノポールアンテナ8から放射され、グランド板を回り込んで地中方向に放射される電力を遮断し、大部分の電力を地上方向に放射させることができる。
【0026】
更に、第2の金属板13を、モノポールアンテナ8と同等の高さで、第1の金属板9と垂直に交わるように配置することにより、第2の金属板13は、モノポールアンテナ8の反射板として動作するので、モノポールアンテナ8から放射された電力を一方向に集めることができ、地上に設置された無線機11における受信電力を増加させることができる。
【0027】
図7は、本第2実施形態のアンテナ装置によるマンホール内の縦断面内(ZX面内)の放射パターンを示す図である。図7において、地上方向(仰角が−90°〜0°〜+90°の範囲)における最大利得は、約−3.5dBiとなり、従来のアンテナ装置に比べて約6dB、第1実施形態に比べて約2dB利得が上昇している。
【0028】
このように、本第2実施形態によるアンテナ装置を用いたマンホール内に設置された無線機7と地上の無線機11との通信においては、第1の金属板9により地中方向に放射される電力を遮断し、第2の金属板(反射板)13により電力放射方向を一方向に絞ることができるので、マンホール内に設置された無線機7からの信号を、地上に設置された無線機11においてより高い受信レベルで受信することが可能となる。
【0029】
なお、本第2実施形態においては、第2の金属板13は、マンホール首部3の曲面と同じ円弧状の場合を例に説明したが、反射板として機能させるためには、平面形状、コーナリフレクタ形状等を適用しても、同様の効果が得られる。
【0030】
C.第3実施形態
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図8は、本第3実施形態によるアンテナ装置を設置したマンホール内の構造を示す断面図である。本第3実施形態は、上述した第2実施形態において、マンホール内に設置する無線機16の筐体内に、アンテナ素子を内蔵するか、又は無線機16の筐体とアンテナ素子とが一体化された場合の例である。
【0031】
図8において、15はモノポールアンテナ、16はマンホール内に設置された無線機であり、アンテナ素子であるモノポールアンテナ15と無線機16の筐体とが一体化された例を示している。そして、第1の金属板9をモノポールアンテナ15よりも下方に設置し、かつ、第1の金属板9の寸法(マンホール首部3が、円形であれば直径、矩形であれば縦横寸法)と形状(マンホール首部3が、円形であれば円弧状、矩形であれば矩形状など)とを、マンホール首部3の横断面とほぼ同一とする。
【0032】
上述した第3実施形態においても、第1の金属板9により地中方向に放射される電力を遮断し、大部分の電力を地上方向に放射させることができるので、マンホール内に設置された無線機7からの信号を、地上に設置された無線機(図示略)において高い信号受信レベルで受信することが可能となる。
【0033】
更に、前述した第2実施形態と同様に、第2の金属板13による反射板を設けることにより(図示略)、電力放射方向を一方向に絞ることができるので、マンホール内に設置された無線機7からの信号を、地上に設置された無線機(図示略)においてより高い受信レベルで受信することが可能となる。
【符号の説明】
【0034】
1 円形のマンホール鉄蓋
2 円形のマンホール鉄枠
3 マンホール首部
4 マンホール本体
5 アスファルト層
6 ローム層
7,11,16 無線機
8,12,15 モノポールアンテナ
9,13,14,19 金属板
10 給電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上とマンホール本体との間に配設されたマンホール首部に設置される無線機のアンテナ装置であって、
アンテナ素子と、
前記アンテナ素子よりも下方に設置され、かつ、前記マンホール首部を塞ぐ形状を有する第1の金属板と
を備えることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記第1の金属板と垂直に接して配置され、前記アンテナ素子よりも地上面に近い位置に端部が達する高さを有する第2の金属板を更に備える
ことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第2の金属板は、前記マンホール首部の内側面形状と略同一の形状を有していると共に、信号を送信する方向に開口部を有している
ことを特徴とする請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記アンテナ素子は、モノポールアンテナであり、
前記第1の金属板は、前記アンテナ素子のグランド板である
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記アンテナ素子は、前記無線機の筐体内に内蔵されているか、又は前記無線機の筐体と一体化されている
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−244137(P2011−244137A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113214(P2010−113214)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】