説明

アンテナ装置

【課題】10倍以上の極めて広い周波数帯域でも動作可能にするとともに、アンテナ設置面積の省スペース化を実現したアンテナ装置を得る。
【解決手段】多層誘電体基板11と、テーパスロット線路と、線状導体14と、コネクタ16とを有するTSAを複数備える。テーパスロット線路は、第1、第2の地導体12、13からなり、線状導体14の一端は、スルーホール15を介して第1の地導体12に短絡され、線状導体14および第2の地導体13はトリプレート線路を構成する。複数のTSAはアレー化されて、第1、第2のTSアレーアンテナ100、200を構成する。第1のTSアレーアンテナの素子間隔D1と、第2のTSアレーアンテナの素子間隔D2とは、D1>D2の関係を有する。第1のTSアレーアンテナ100の格子状配列の中に、第2のTSアレーアンテナ200が挿入されることによって構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーダなどの用途に供されるアンテナ装置に関し、特に、広い周波数帯域にわたり、直交する2つの直線偏波または円偏波を送受信するアレーアンテナ用の素子アンテナに適用され得るアンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、超広帯域のアンテナ装置として、テーパスロットアンテナ(Tapered Slot Antenna)(以下、「TSA」と略記する)が知られている。
また、直交する2つの直線偏波を送受信可能なTSAアレーが知られており、特に、同一形状のトリプレート線路給電型TSA素子を複数個用意し、それぞれ導体ポストを介して格子状に接続されたTSAアレーが提案されている(たとえば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Tan−Huat Chio、Daniel H. Schaubert「Parameter Study and Design of Wide−Band Widescan Dual−Polarized Tapered Slot Antenna Arrays」IEEE Transactions on Antennas and Propagation、Vol.48、No.6、pp.879−886、June、2000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のアンテナ装置は、アレーアンテナの設計において、基本的にグレーティングローブを発生させないように素子間隔が決定されており、たとえば10倍以上の極めて広い周波数帯域にわたって使用することを考えた場合、使用周波数内で最も波長が短くなる上限周波数の最短波長に応じて素子間隔が決定されるので、下限周波数付近ではその最長波長に対して素子間隔が非常に狭くなってしまうという課題があった。
【0005】
特に、非特許文献1に記載されたTSAアレーを10倍もの周波数帯域で使用することを考えた場合、一般にTSAは、アンテナ開口が狭い場合には開口端での反射が増大し、特性が劣化してしまうことから、下限周波数付近ではアンテナとしてほとんど動作せず、結局、広い周波数帯域で使用することが困難になるという課題があった。
【0006】
一方、広い周波数帯域を1つのアレーアンテナで担うのではなく、使用周波数を複数の帯域に分け、それぞれの帯域をカバーする複数のアレーアンテナを用意して、隣接して並べて使用する方法も考えられるが、この場合、アンテナの設置面積が増大してしまうことから、実装性の観点から好ましくないという課題があった。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、10倍以上の極めて広い周波数帯域でも動作可能にするとともに、アンテナ設置面積の省スペース化を実現したアンテナ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るアンテナ装置は、両面が導体で被膜された2枚の誘電体基板を密着させて計3層の導体層からなる多層誘電体基板と、多層誘電体基板の両側面にそれぞれ設けられて線路幅がテーパ状に広がるテーパスロット線路と、多層誘電体基板の2つの誘電体層に挟まれた面に設けられ、且つテーパスロット線路の幅の狭い側においてテーパスロット線路と直交するように設けられた線状導体と、外部の高周波電子機器と接続可能なコネクタとを有するトリプレート線路給電型テーパスロットアンテナを複数備え、テーパスロット線路は、それぞれ多層誘電体基板の両側面に形成され且つ互いに対向配置された第1および第2の地導体からなり、線状導体の一端は、スルーホールを介して第1の地導体に短絡され、線状導体および第2の地導体は、トリプレート線路を構成し、コネクタは、トリプレート線路の端部に設けられ、複数のトリプレート線路給電型テーパスロットアンテナは、格子状に並べられて2次元状にアレー化されたアンテナ装置において、複数のトリプレート線路給電型テーパスロットアンテナは、第1および第2のトリプレート線路給電型テーパスロットアレーアンテナを構成し、第1のトリプレート線路給電型クロステーパスロットアレーアンテナの素子間隔D1と、第2のトリプレート線路給電型クロステーパスロットアレーアンテナの素子間隔D2とは、D1>D2の関係を有し、第1のトリプレート線路給電型クロステーパスロットアレーアンテナの格子状配列の中に、第2のトリプレート線路給電型クロステーパスロットアレーアンテナが挿入されることによって構成されたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、同一の開口内に複数の周波数帯域でそれぞれ動作する複数種類の直交偏波TSAを入れ子状(ネスティング:nesting)に配置することにより、10倍以上の極めて広い周波数帯域でも動作可能にするとともに、アンテナ設置面積の省スペース化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1に係るアンテナ装置を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1のアンテナ装置を上方から見た正面図である。
【図3】図1内の第1のトリプレート線路給電型クロステーパスロットアレーアンテナの一部構成を詳細に示す側面図である。
【図4】図1内の第1のトリプレート線路給電型クロステーパスロットアレーアンテナのみを分解して示す斜視図である。
【図5】図1内の第2のトリプレート線路給電型クロステーパスロットアレーアンテナのみを分解して示す斜視図である。
【図6】この発明の実施の形態2に係るレーダ装置を模式的に示す正面図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係るレーダ装置の他の例を模式的に示す正面図である。
【図8】この発明の実施の形態3による第1のトリプレート線路給電型クロステーパスロットアレーアンテナの一部構成を詳細に示す側面図である。
【図9】この発明の実施の形態4による第1のトリプレート線路給電型クロステーパスロットアレーアンテナの一部構成を詳細に示す側面図である。
【図10】この発明の実施の形態5に係るレーダ装置を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係るアンテナ装置を模式的に示す斜視図であり、図2は図1のアンテナ装置を上方(前方)から見た正面図である。
図1、図2において、アンテナ装置は、第1および第2のトリプレート線路給電型クロステーパスロットアレーアンテナ100、200(以下、「第1および第2のTSアレーアンテナ100、200」と略称する)と、第1および第2の金属棒301、302とを備えている。
【0012】
第1および第2の金属棒301、302は、入れ子状に配列された第1および第2のTSアレーアンテナ100、200の素子間にそれぞれ設けられ、各素子同士を電気的に接続している。
【0013】
第1のTSアレーアンテナ100は、素子間隔D1で格子状に配列されており、矩形状の領域を形成している。
また、第2のTSアレーアンテナ200は、第1のTSアレーアンテナ100の内部を仕切るように、素子間隔D2(<D1)で十文字状に配列されている。
【0014】
図2において、第1のTSアレーアンテナ100の素子間隔D1と、第2のTSアレーアンテナ200の素子間隔D2との間には、D1=2×D2の関係がある。
第1のTSアレーアンテナ100が取り囲む矩形状領域の内部には、第2のTSアレーアンテナ200が4素子(=2×(2−1)×2)だけ含まれている。
【0015】
図3は第1のTSアレーアンテナ100の一部構成を詳細に示す側面図である。なお、ここでは、代表的に第1のTSアレーアンテナ100の詳細構造について説明するが、第2のTSアレーアンテナ200の詳細構造も同様である。
図3において、第1のTSアレーアンテナ100は、多層誘電体基板11と、第1および第2の地導体12、13と、線状導体14と、スルーホール15と、コネクタ16とを備えている。
【0016】
多層誘電体基板11は、両面が導体で被膜された2枚の誘電体基板(図示せず)を密着させて構成されており、計3層の導体層からなっている。
第1および第2の地導体12、13は、それぞれ、多層誘電体基板11の両側面(図示された表面側と、図示されない裏面側)に形成されている。また、第1および第2の地導体12、13は、対向配置されており、テーパスロット線路を形成している。
さらに、第2の地導体13および線状導体14は、トリプレート線路を形成している。
【0017】
線状導体14は、多層誘電体基板11を構成する2つの誘電体層に挟まれた面内に形成されており、線状導体14の一端は、スルーホール15を介して第1の地導体12に短絡されている。
コネクタ16は、アンテナ装置の給電点となっており、外部の高周波電子機器(同軸線路など)と接続可能な回路要素を構成している。
【0018】
図3の構造により、第1および第2の地導体12、13に対してそれぞれ電位差が与えられ、電波は、第1および第2の地導体12、13(テーパスロット線路)に沿って進行し、破線矢印で示すように、多層誘電体基板11の端部から+z方向(正面側)空間に向けて放射される。
【0019】
図4は第1のTSアレーアンテナ100のみを分解して示す斜視図であり、図5は第2のTSアレーアンテナ200のみを分解して示す斜視図である。
図1、図2、図4、図5に示すように、第1および第2のTSアレーアンテナ100、200の各素子間隔D1、D2は、D1>D2の関係にあり、第1のTSアレーアンテナ100よりも第2のTSアレーアンテナ200の方が小形である。
【0020】
一般に、TSAの使用周波数範囲は、テーパの開口径の大きさによって下限周波数が決定され、開口径が大きいほどより低周波帯から使用することができる。
一方、アレーアンテナにおいては、グレーティングローブを発生させない条件から素子間隔が決定され、これによって使用周波数の上限周波数が決定される。
【0021】
以上の関係から、第1のTSアレーアンテナ100は、主に周波数の低域から中域で使用され、一方、第2のTSアレーアンテナ200は、主に周波数の中域から高域で使用される。
【0022】
なお、線状導体14の形状は、yz面内(または、xz面内)で非対称構造を有しているが、線状導体14が多層誘電体基板11(2つの誘電体層)内に挿入されているので、非対称構造の影響が外部に現れることはなく、アンテナ自身は対称形状を有しているように見える。したがって、直交した2つのTSA間では、十分低いアイソレーションレベルが得られるとともに、放射パターン形状の乱れなどはほとんど起こらない。
【0023】
以上のように、この発明の実施の形態1(図1〜図5)に係るレーダ装置は、両面が導体で被膜された2枚の誘電体基板を密着させて計3層の導体層からなる多層誘電体基板11と、多層誘電体基板11の両側面にそれぞれ設けられて線路幅がテーパ状に広がるテーパスロット線路と、多層誘電体基板11の2つの誘電体層に挟まれた面に設けられ、且つテーパスロット線路の幅の狭い側においてテーパスロット線路と直交するように設けられた線状導体14と、外部の高周波電子機器と接続可能なコネクタ16とを有するトリプレート線路給電型テーパスロットアンテナを複数備えている。
【0024】
テーパスロット線路は、それぞれ多層誘電体基板11の両側面に形成され且つ互いに対向配置された第1および第2の地導体12、13からなり、線状導体14の一端は、スルーホール15を介して第1の地導体12に短絡されている。
線状導体14および第2の地導体13は、トリプレート線路を構成しており、コネクタ16は、トリプレート線路の端部に設けられている。
【0025】
複数のトリプレート線路給電型テーパスロットアンテナは、格子状に並べられて2次元状にアレー化されて、第1および第2のTSアレーアンテナ100、200を構成している。また、第1のTSアレーアンテナ100の素子間隔D1と、第2のTSアレーアンテナ200の素子間隔D2とは、D1>D2の関係を有している。
この発明の実施の形態1に係るアンテナ装置は、第1のTSアレーアンテナ100の格子状配列の中に、第2のTSアレーアンテナ200が挿入されることによって構成されている。
【0026】
また、素子間隔D1と第2の素子間隔D2とは、D1=2×D2の関係を有し、第1のTSアレーアンテナ100の格子状配列が取り囲む矩形状領域の内部に、第2のTSアレーアンテナ200の素子が、2×(2−1)×2個だけ含まれている。
【0027】
このように、動作周波数が異なる第1および第2のTSアレーアンテナ100、200の両方を備え、使用周波数に応じて使用する素子を切り替えることにより、単独ではカバーしきれない極めて広い周波数範囲を担うことができるようになる。
【0028】
また、図1、図2に示すように、第2のTSアレーアンテナ200を、第1のTSアレーアンテナ100が作る格子状配列(矩形状領域)の中に入れ子状に配置することにより、アンテナ設置面積の省スペース化を実現することができる。
すなわち、同一の開口内に複数の周波数帯域でそれぞれ動作する複数種類の直交偏波TSA(トリプレート線路給電型テーパスロットアンテナ)を入れ子状に配置することにより、10倍以上の極めて広い周波数帯域でも動作可能にするとともに、アンテナ設置面積の省スペース化を実現することができる。
【0029】
さらに、図3に示すように、アンテナ装置の給電点として、第2の地導体13および線状導体14からなるトリプレート線路を用いているので、線路からの不要な放射が生じることもない。
【0030】
実施の形態2.
上記実施の形態1(図1〜図5)では、素子間隔D1、D2の関係をD1=2×D2に設定したが、これに限らず、たとえば図6に示すように、D1=3×D2の関係に設定してもよく、図7に示すように、D1=4×D2の関係に設定してもよい。
【0031】
図6および図7はこの発明の実施の形態2に係るレーダ装置を模式的に示す正面図であり、前述と同様のものについては、前述と同一符号を付して記述を省略する。
図6において、第1のTSアレーアンテナ100の素子間隔D1と、第2のTSアレーアンテナ200の素子間隔D2との間には、D1=3×D2の関係がある。
第1のTSアレーアンテナ100が取り囲む矩形状領域の内部には、第2のTSアレーアンテナ200が12素子(=3×(3−1)×2)だけ含まれるように配置することもできる。
【0032】
また、別の例を示す図7において、第1のTSアレーアンテナ100の素子間隔D1と、第2のTSアレーアンテナ200の素子間隔D2との間には、D1=4×D2の関係がある。
第1のTSアレーアンテナ100が取り囲む矩形状領域の内部には、第2のTSアレーアンテナ200が24素子(=4×(4−1)×2)だけ含まれるように配置することもできる。
【0033】
すなわち、素子間隔D1、D2は、D1=N×D2(Nは2以上の整数)の関係を有し、第1のTSアレーアンテナ100の格子状配列が取り囲む矩形状領域の内部に、第2のTSアレーアンテナの素子が、N×(N−1)×2個だけ含まれていればよい。
【0034】
この発明の実施の形態2(図6、図7)に係るレーダ装置によれば、動作周波数が異なる第1および第2のTSアレーアンテナ100、200の両方を備え、使用周波数に応じて使用する素子を切り替えることにより、前述と同様に、単独ではカバーしきれない極めて広い周波数範囲を担うことができるようになる。
【0035】
実施の形態3.
なお、上記実施の形態1(図3)では、第1および第2の地導体12、13により形成されるテーパスロット線路の後方部を一定幅に形成したが、図8のように、幅広スロット線路17を設けてもよい。
【0036】
図8はこの発明の実施の形態3による第1のTSアレーアンテナ100の一部構成を詳細に示す側面図であり、前述(図3)と同様のものについては、前述と同一符号を付して記述を省略する。
図8において、第1および第2の地導体12、13により形成されるテーパスロット線路の後方側には、第1のTSアレーアンテナ100のスロット線路の−z方向(後方)側に向けて、幅広スロット線路17が設けられている。
【0037】
一般に、第2の地導体13および線状導体14(トリプレート線路)から第1および第2の地導体12、13(テーパスロット線路)に給電された電波は、アンテナ開口端の+z方向(正面)側のみに伝播することが望ましいが、その一部は−z方向のアンテナ後方側にも伝播してしまう。
このように、アンテナ後方側に伝播した場合、アンテナ後方に位置する給電装置に影響を及ぼすことになり、給電装置の耐干渉性を高める対策を講じる必要が生じてしまう。
【0038】
これに対し、この発明の実施の形態3(図8)によれば、アンテナ後方側(テーパスロット線路の幅の狭い側の先端部)に、テーパスロット線路の幅よりも広い幅を有する幅広スロット線路17を設けることにより、アンテナ後方側に伝播する成分を抑圧することができる。
なぜなら、スロット線路の性質として、線路幅が広いほど線路の特性インピーダンスが高くなるので、実質的にアンテナ後方が開放されたように見えるからである。
【0039】
実施の形態4.
なお、上記実施の形態3(図8)では、スルーホール15のみを設けたが、図9のように、第1および第2の地導体12、13の両者間を短絡するために、線状導体14に重ならない範囲で、多数のスルーホール群18を設けてもよい。
【0040】
図9はこの発明の実施の形態4による第1のTSアレーアンテナ100の一部構成を詳細に示す側面図であり、前述(図3、図8)と同様のものについては、前述と同一符号を付して記述を省略する。
図9において、第1および第2の地導体12、13には、線状導体14に重ならない範囲で、両者間を短絡するための多数のスルーホール群18が設けられている。
【0041】
一般に、線状導体14は、多層誘電体基板11の中間位置、すなわち、多層誘電体基板11の両側面の第1および第2の地導体12、13からそれぞれ等しい距離に位置することが望ましい。これにより、多層誘電体基板11の両側面の第1および第2の地導体12、13の電位を等電位に保つことができる。
【0042】
しかしながら、製造誤差などの影響によって、線状導体14が多層誘電体基板11の中間位置から一方側の地導体面に偏る可能性があり、この場合、多層誘電体基板11の両側面の地導体間に電位差が生じてしまい、多層誘電体基板11の両側面の地導体を導波路とする平行平板モードが伝播するようになる。
このような平行平板モードは、アンテナ装置の放射パターンを乱す要因になり、また、アレーアンテナにおいては、素子間結合量を増加してしまうなどの問題が生じる。
【0043】
これに対し、この発明の実施の形態4(図9)によれば、第1および第2のTSアレーアンテナ100、200は、それぞれ線状導体14に重ならない範囲で多数のスルーホール群18を有しており、多数のスルーホール群18は、多層誘電体基板11の両側面に形成された第1の地導体同士および第2の地導体同士を短絡している。
【0044】
このように、線状導体14に重ならない範囲で、多層誘電体基板11の両側面に形成された第1および第2の地導体12、13同士を多数のスルーホール群18を介して短絡することにより、第1および第2の地導体12、13の電位を等電位に保つことができ、平行平板モードの発生を防ぐことができる。
【0045】
実施の形態5.
なお、上記実施の形態1〜4(図1〜図9)では、特に言及しなかったが、図10のように、アンテナ後方側に導体板19を設けてもよい。
図10はこの発明の実施の形態5に係るレーダ装置を模式的に示す斜視図であり、前述(図1)と同様のものについては、前述と同一符号を付して記述を省略する。
図10において、アンテナ後方側には、導体板19が配置されている。
【0046】
この発明の実施の形態5(図10)によれば、第1および第2のTSアレーアンテナ100、200の後方部に、アンテナの後方側に導体板19を配置することにより、アンテナ後方側への不要放射を完全に無くすことができる。
また、アンテナ後方側に放射された電波は、導体板19で反射されてアンテナ正面方向に再放射されるので、アンテナ装置の利得が向上するという効果も得られる。
【0047】
なお、このとき、導体板19の設置位置、またはアンテナ装置の使用周波数によっては、導体板19からの反射波とアンテナ装置の直接波とが逆相で重なり合うことにより、主ビームにヌル(零放射)を生じてしまう可能性があるが、導体板19の設置位置を適切に可変設定することにより、主ビームにヌルを発生させる周波数を使用周波数帯域外にシフトさせて、ヌルの発生を回避することができる。
【0048】
上記実施の形態1〜5(図1〜図10)では、それぞれ代表的な構成例について説明したが、各実施の形態1〜5を任意に組み合わせて適用することは可能であり、各々の作用効果が重複して得られることは言うまでもないことである。
【符号の説明】
【0049】
11 多層誘電体基板、12 第1の地導体、13 第2の地導体、14 線状導体、15 スルーホール、16 コネクタ、17 幅広スロット線路、18 多数のスルーホール群、19 導体板、100 第1のTPアレーアンテナ(第1のトリプレート線路給電型クロステーパスロットアレーアンテナ)、200 第2のTPアレーアンテナ(第2のトリプレート線路給電型クロステーパスロットアレーアンテナ)、301 第1の金属棒、302 第2の金属棒、D1、D2 素子間隔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面が導体で被膜された2枚の誘電体基板を密着させて計3層の導体層からなる多層誘電体基板と、
前記多層誘電体基板の両側面にそれぞれ設けられて線路幅がテーパ状に広がるテーパスロット線路と、
前記多層誘電体基板の2つの誘電体層に挟まれた面に設けられ、且つ前記テーパスロット線路の幅の狭い側において前記テーパスロット線路と直交するように設けられた線状導体と、
外部の高周波電子機器と接続可能なコネクタと
を有するトリプレート線路給電型テーパスロットアンテナを複数備え、
前記テーパスロット線路は、それぞれ前記多層誘電体基板の両側面に形成され且つ互いに対向配置された第1および第2の地導体からなり、
前記線状導体の一端は、スルーホールを介して前記第1の地導体に短絡され、
前記線状導体および前記第2の地導体は、トリプレート線路を構成し、
前記コネクタは、前記トリプレート線路の端部に設けられ、
前記複数のトリプレート線路給電型テーパスロットアンテナは、格子状に並べられて2次元状にアレー化されたアンテナ装置において、
前記複数のトリプレート線路給電型テーパスロットアンテナは、第1および第2のトリプレート線路給電型テーパスロットアレーアンテナを構成し、
前記第1のトリプレート線路給電型クロステーパスロットアレーアンテナの素子間隔D1と、前記第2のトリプレート線路給電型クロステーパスロットアレーアンテナの素子間隔D2とは、D1>D2の関係を有し、
前記第1のトリプレート線路給電型クロステーパスロットアレーアンテナの格子状配列の中に、前記第2のトリプレート線路給電型クロステーパスロットアレーアンテナが挿入されることによって構成されたことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記素子間隔D1、D2は、D1=N×D2(Nは2以上の整数)の関係を有し、
前記第1のトリプレート線路給電型クロステーパスロットアレーアンテナの格子状配列が取り囲む矩形状領域の内部に、前記第2のトリプレート線路給電型クロステーパスロットアレーアンテナの素子が、N×(N−1)×2個だけ含まれていることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記テーパスロット線路の幅の狭い側の先端部に、前記テーパスロット線路の幅よりも広い幅を有する幅広スロット線路を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第1および第2のトリプレート線路給電型クロステーパスロットアレーアンテナは、それぞれ前記線状導体に重ならない範囲で多数のスルーホール群を有し、
前記多数のスルーホール群は、前記多層誘電体基板の両側面に形成された前記第1の地導体同士および前記第2の地導体同士を短絡したことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第1および第2のトリプレート線路給電型クロステーパスロットアレーアンテナの後方部に、導体板を設けたことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−129943(P2012−129943A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282111(P2010−282111)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】