説明

アンテナ誤接続防止装置及びRF信号発生装置

【課題】
アンテナの誤接続、ひいてはRF電波放出を防止する。
【解決手段】
IP信号をRF信号に変換するIP/RF変換回路12とRF出力端子14との間に誤接続防止装置16を配置する。誤接続防止装置16は、誤接続の場合にIP/RF変換回路12の出力RF信号を遮断する遮断装置として機能するスイッチ18を具備する。スイッチ18とRF出力端子14の間にサーキュレータ20を配置し、サーキュレータ20は、RF出力端子14からのRF信号をRF信号レベル検出装置22に転送する。RF信号レベル検出装置22は、入力RF信号のVHF又はUHF帯のレベルを検出し、その検出レベルが所定閾値以上の場合にスイッチ18を開放する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ誤接続防止装置及びRF信号発生装置に関し、より具体的には、電波を空間に輻射してしまうようなアンテナ線への誤接続を防止するアンテナ誤接続防止装置及びRF信号発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、地上デジタル放送の普及を目的としてIPネットワークを用いた放送波の再送信技術(以下、IP再送信)に関する検討がなされている。今後、IP再送信に対応するテレビ又はセットトップボックス(STB)が開発され、その利用ユーザ数も増加することが考えられる。
【0003】
一方で、既に地上デジタル放送に対応したテレビも確実に普及しているが、これらの買い替え需要が起こるには、地上アナログ波の停止の前後又はこれ以降になると想定される。また、ビデオ録画機器等の周辺機器まで含めた対応状況を考慮すると、今後、IP対応テレビが普及したとしても、引き続き、RF形式での入力端子を持つビデオ機器が使われる可能性は大きいと考えられる。
【0004】
IP再送信による地上デジタル放送再送信技術を早期かつ広範に普及させる一つの方法として、IP信号として宅内又はマンションの戸間口まで到達した放送信号を宅内において再度RF形式のアナログ又はデジタル放送信号に変換し、既存の宅内同軸配線を介して各部屋まで配信し、各部屋に設置される既存のTV又は地上デジタルチューナ内蔵TVで当該放送信号を再生する、という方法が検討されている。
【0005】
図2は、宅内のIP放送信号受信システムの概略構成ブロック図を示す。アクセス回線終端装置210は、各個人宅又はマンションの各住戸において、アクセス回線212からの信号を終端してIP信号214を出力する装置である。ここでは、アクセス回線212として、FTTH(Fiber To The Home)等に代表される高速インターネット接続サービスを利用可能な広帯域回線を想定している。IP信号214は、IP形式に変換された放送波信号を含む。
【0006】
IP/RF信号変換装置216は、IP信号214中に含まれる放送信号を抽出し、当該放送信号を地上デジタル放送形式のRF信号218として出力する。RF信号218は、同軸ケーブルを介して、予めVHF/UHFアンテナ220から切り離された分配器222に入力され、既設の同軸ケーブル224、分配器226及び同軸ケーブル228〜232を介して既存のTV受像機234,236及び録画装置238等に供給される。各部屋の同軸コンセントには、同軸ケーブル228〜232が接続されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
今後、IPネットワークを使って放送信号、例えば、地上デジタル放送の放送信号を伝送する場合、各住戸内には、IP/RF信号変換装置216が配備される。通常は、VHF/UHFアンテナから切り離した分配器に、IP/RF信号変換装置216の出力RF信号を接続することになるが、ユーザ又は工事業者が、誤って、当該分配器からVHF/UHFアンテナを外しておくことを忘れた場合、アンテナからRF信号が放射されてしまう。
【0008】
図3は、分配器222にVHF/UHFアンテナ220とIP/RF信号変換装置216の両方が接続する誤配線例を示す。この例では、IP/RF信号変換装置216から出力されるRF信号218は、破線に示すように、TV受像機234,236に供給されるだけでなく、VHF/UHFアンテナ220にも供給され、VHF/UHFアンテナ220から電磁放射される。VHF/UHFアンテナ220は、VHFアンテナとUHFアンテナを並列に結合したアンテナからなるか、UHFアンテナのみからなるか、VHFアンテナのみからなる。
【0009】
図4は、別の誤配線例を示す。この例では、もともと、VHF/UHFアンテナ220が、分配器122の出力側に誤配線されている状況で、VHF/UHFアンテナ220の接続をそのままに、IP/RF信号変換装置216を分配器222の入力側に接続したものである。VHF/UHFアンテナ220を分配器222の出力側に接続しても、信号の回り込みにより、同じ分配器222に接続されるTV受像機234,236にはVHF/UHFアンテナ220で受信した放送信号が供給されるので、TV受像機234,236はテレビ放送を視聴可能な状態にある。従って、このような誤配線が見過ごされることがある。
【0010】
この状態では、分配器222の入力側が空いていることから、工事業者が、VHF/UHFアンテナ220の誤配線に気付かずに、分配器222の入力側にIP/RF信号変換装置216の出力を接続してしまうことが起こり得る。図4に示す接続状態では、IP/RF信号変換装置216の出力RF信号はVHF/UHFアンテナ220に分配されるので、VHF/UHFアンテナ220から電磁放射されてしまう。
【0011】
なお、従来のビデオデッキ等でRF出力端子を備えるものも存在するが、これらは、RF入力端子の入力信号をタップして出力するものであり、自発的にRF信号を出力するものではないことから、これまで、こういった問題は顕在化していなかった。
【0012】
本発明は、このような誤配線による放送信号の電波放出を未然に防止し得るアンテナ誤接続防止装置を提示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るアンテナ誤接続防止装置は、RF信号を通過/遮断する遮断装置と、入力信号のRF信号レベルを検出し、検出結果に従い当該遮断装置を制御するRF信号レベル検出装置と、当該遮断装置の出力信号をRF出力端子に転送し、当該RF信号出力端子からの信号を当該RF信号レベル検出装置に転送するサーキュレータとを具備し、当該RF信号レベル検出装置は、当該サーキュレータからの信号に所定レベル以上のRF信号が含まれる場合に、当該遮断装置を通過状態に制御することを特徴とする
【0014】
本発明に係るRF信号発生装置は、上述のアンテナ誤接続防止装置と、当該アンテナ誤接続防止装置に、当該RF信号を供給するRF信号供給装置とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、例えば、宅内に設置されたRF信号供給装置、例えば、IP/RF変換装置へのアンテナの誤接続を事前に検知でき、外部に電波を放射することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の一実施例の概略構成ブロック図である。説明上、図1は、誤接続状態を示す。
【0018】
IP/RF信号変換装置10は、IP信号をRF信号に変換するIP/RF変換回路12と、当該IP/RF変換回路12とRF出力端子14との間にあって、誤接続を防止する誤接続防止装置16とからなる。IP/RF変換回路12は、従来のIP/RF信号変換装置216に相当する。
【0019】
誤接続防止装置16は、誤接続の場合に、IP/RF変換回路12の出力RF信号を遮断する遮断装置として機能するスイッチ18と、サーキュレータ20と、入力RF信号のVHF又はUHF帯のレベルを検出し、その検出レベルが所定閾値以上の場合にスイッチ18を開放するRF信号レベル検出装置22からなる。
【0020】
RF出力端子14には、分配器222,226及び同軸ケーブル124,228,230,232等からなるRF同軸伝送路30を介してVHF/UHFアンテナ32が接続する。正しい配線では、VHF/UHFアンテナ32の代わりに、TV受像機又はビデオ録画装置等が接続する。
【0021】
IP/RF変換回路12の出力はスイッチ18を介してサーキュレータ20のポートAに接続する。サーキュレータ20のポートBはRF出力端子14に接続し、ポートCは、RF信号レベル検出装置22の入力に接続する。サーキュレータ20は、ポートAの入力信号をポートBから出力し、ポートBの入力信号をポートCから出力する回路素子である。
【0022】
図1に示す誤接続状態では、VHF/UHFアンテナ32が外界から受信したRF信号は、RF同軸伝送路30及びRF出力端子14を介して、サーキュレータ20のポートBに入力する。サーキュレータ20は、ポートBの入力信号をポートCから出力するので、結局、VHF/UHFアンテナ32が外界から受信したRF信号は、RF信号レベル検出装置22に入力する。RF信号レベル検出装置22は、サーキュレータ20のポートCから入力する信号の内のRF信号成分のレベルを検出し、その検出レベルが閾値以上の場合にスイッチ18を開放し、閾値未満の場合には、スイッチ18を閉成する。
【0023】
RF信号レベル検出装置22の閾値を、RF出力端子14にVHF/UHFアンテナ32が接続しているか否かを判別できる値に設定しておくことで、RF信号レベル検出装置22は、RF出力端子14にVHF/UHFアンテナ32が誤接続しているか否かを判別できる。
【0024】
本実施例では、VHF/UHFアンテナ32が放送波を受信しているとき、スイッチ18は開放され、IP/RF変換回路12の出力RF信号は、サーキュレータ20のポートAに到達しない。従って、IP/RF変換回路12の出力RF信号は、誤接続されているVHF/UHFアンテナ32に供給されず、電波として外界に放出されることもない。
【0025】
他方、RF出力端子14にVHF/UHFアンテナ32が接続していないときには、スイッチ18は閉成され、IP/RF変換回路12の出力RF信号は、サーキュレータ20のポートAに入力する。サーキュレータ20は、ポートAに入力するRF信号をポートBからRF出力端子14に出力する。これにより、RF同軸伝送路30に接続されるTV受像機又はビデオ機器(図示せず)に、IP/RF変換回路12の出力RF信号が伝送される。
【0026】
誤接続防止装置16を、IP/RF変換装置12とは別体の単独の装置として構成しても良いことは明らかである。この場合、既存のIP/RF変換装置116のRF出力端子とRF伝送用同軸ケーブルとの間に誤接続防止装置16を接続する。
【0027】
上記実施例では、IP形式で送られてきた放送信号を宅内・マンションの戸間口に設置されるIP/RF信号変換装置12を用いてRF信号形式に再変換し、宅内同軸配線を用いて各部屋まで分配することを想定した場合について述べてきたものであるが、本発明は、RF信号を宅内で生成し同軸配線を用いて信号を転送するその他の方式についても適用できることは自明である。
【0028】
特定の説明用の実施例を参照して本発明を説明したが、特許請求の範囲に規定される本発明の技術的範囲を逸脱しないで、上述の実施例に種々の変更・修整を施しうることは、本発明の属する分野の技術者にとって自明であり、このような変更・修整も本発明の技術的範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例1の概略構成ブロック図である。
【図2】従来例の概略構成ブロック図である。
【図3】分配器でのRF信号の伝送形態を説明する模式図である。
【図4】分配器でのRF信号の別の伝送形態を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0030】
10:IP/RF信号変換装置
12:IP/RF変換回路
14:RF出力端子
16,16a:誤接続防止装置
18:スイッチ
20:サーキュレータ
22:RF信号レベル検出装置
30:RF同軸伝送路
32:VHF/UHFアンテナ
40:テスト信号発生装置
42:混合器
210:アクセス回線終端装置
212:アクセス回線
214:IP信号
216:IP/RF信号変換装置
218:RF信号
220:VHF/UHFアンテナ
222:分配器
224:同軸ケーブル
226:分配器
228,230,232:同軸ケーブル
234,236:TV受像機
238:録画装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RF信号を通過/遮断する遮断装置(18)と、
入力信号のRF信号レベルを検出し、検出結果に従い当該遮断装置(18)を制御するRF信号レベル検出装置(22)と、
当該遮断装置(18)の出力信号をRF出力端子(14)に転送し、当該RF信号出力端子(14)からの信号を当該RF信号レベル検出装置(22)に転送するサーキュレータ(20)
とを具備し、
当該RF信号レベル検出装置(22)は、当該サーキュレータ(20)からの信号に所定レベル以上のRF信号が含まれる場合に、当該遮断装置を通過状態に制御する
ことを特徴とするアンテナ誤接続防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナ誤接続防止装置と、
当該アンテナ誤接続防止装置に、当該RF信号を供給するRF信号供給装置(12)
とを具備することを特徴とするRF信号発生装置。
【請求項3】
当該RF信号供給装置(12)が、IP信号で搬送される放送信号を当該RF信号に変換するIP/RF変換装置であることを特徴とする請求項2に記載のRF信号発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−153870(P2008−153870A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−338759(P2006−338759)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】