説明

アンテナ

【課題】フレキシブル基板に導体が配置されてなる折り曲げ可能なアンテナにおいて、折り曲げ後の形状を安定的に保持し得る構成を提供する。
【解決手段】アンテナ60は、フレキシブル基板60aの少なくとも一部において折り曲げ部66が形成されている。この折り曲げ部66は、所定部分63に続く折り曲げ対象部分64を所定部分63の向きとは異なる向きに折り曲げた構成をなしており、この所定部分63には、折り曲げ対象部分64の折り曲げ側に突出した突出片70が設けられている。そして、所定部分63に対して折り曲げられた折り曲げ対象部分64が突出片70と当接することで係止されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、非接触通信技術を用いて非接触通信を行う携帯端末などが広く提供されている。この種の携帯端末は、一般的にアンテナとこのアンテナを通じて非接触通信媒体(例えばICカード等)と通信する通信回路とを備えており、アンテナを介して電波を送受信することにより非接触通信媒体の読み取りや書き込みを行っている。
【0003】
ところで、現在の通信機器では、機器の小型化の進行に伴い、アンテナを設置する上でのスペース的な制約が大きくなってきている。例えば、上述の携帯端末では、アンテナとしてループアンテナなどが好適に用いられているが、端末の小型化に伴い、ループアンテナを装置内の限られたスペースに適切に配置することが求められている。
【0004】
このように機器内でのスペース的な制約が大きい場合、対処方法としては、アンテナを折り曲げて配置することが望ましい。例えば上記ループアンテナを用いる場合、配置場所に合わせて所定箇所を折り曲げて配置できるようにすると、アンテナを配置する上での自由度が増し、設計上も有利である。なお、ループアンテナの折り曲げに関する技術としては特許文献1のようなものが提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5−2425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようにループアンテナを折り曲げて使用する場合、或いは上記ループアンテナに限らず導体を折り曲げてアンテナとして用いる場合、導体を保持するベースとして、折り曲げが容易なフレキシブル基板を用いることが望ましい。しかしながら、このようなフレキシブル基板の場合、折り曲げが容易である反面、折り曲げた後の形状を所望の形状に保ちにくいという問題がある。このような形状変化が生じるとアンテナの特性が変化してしまうため、何らかの対策が求められる。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、フレキシブル基板に導体が配置されてなる折り曲げ可能なアンテナにおいて、折り曲げ後の形状を安定的に保持し得る構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、折り曲げ可能に構成されたフレキシブル基板を備えると共に、前記フレキシブル基板の少なくとも一部に導体が配置されてなるアンテナであって、前記フレキシブル基板の少なくとも一部には、所定部分に続く折り曲げ対象部分を前記所定部分の向きとは異なる向きに折り曲げる折り曲げ部が形成され、前記所定部分には、前記折り曲げ対象部分の折り曲げ側に突出した突出片が設けられており、前記所定部分に対して折り曲げられた前記折り曲げ対象部分が前記突出片と当接することで係止されることを特徴としている。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載のアンテナにおいて、前記突出片は、前記所定部分から前記折り曲げ対象部分の折り曲げ側に延出する延出部と、前記延出部の延出方向に対して横方向に屈曲する屈曲部と、を備えており、前記折り曲げ対象部分が少なくとも前記屈曲部と当接することで係止されることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のアンテナにおいて、前記フレキシブル基板は、板状のベース材を備えると共に前記導体が前記ベース材に沿って保持されており、前記突出片が、前記ベース材よりも剛性が高い高剛性部材からなることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項2に記載のアンテナにおいて、前記フレキシブル基板は、板状のベース材を備えると共に前記導体が前記ベース材に沿って保持されており、前記突出片が、前記ベース材よりも剛性が高い高剛性部材からなり、前記高剛性部材には、前記延出部の延出位置よりも前記折り曲げ部側に延びる補強部が設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項4に記載のアンテナにおいて、前記折り曲げ対象部分は、前記所定部分の配置の向きに対して傾斜した折り曲げ線に沿って折り曲げ可能とされており、前記補強部の端部が前記折り曲げ線に沿って配置されていることを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、請求項3から請求項5のいずれか一項に記載のアンテナにおいて、前記高剛性部材は、前記ベース材と同材質であり且つ前記ベース材よりも厚く構成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明は、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のアンテナにおいて、前記突出片は、前記折り曲げ対象部分との当接位置に粘着媒体が付されていることを特徴とする。
【0015】
請求項8の発明は、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のアンテナにおいて、前記折り曲げ対象部分には、当該折り曲げ対象部分の厚さ方向又は板面方向に突出する突起部が形成されており、前記突出片の所定の当接面が、前記折り曲げ対象部分と当接する構成をなし、前記突起部は、前記突出片における前記当接面とは異なる面を支持可能とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明は、折り曲げ可能に構成されたフレキシブル基板を備えると共に、フレキシブル基板の少なくとも一部に導体が配置されてなるアンテナにおいて、フレキシブル基板の少なくとも一部に、所定部分に続く折り曲げ対象部分を所定部分の向きとは異なる向きに折り曲げる折り曲げ部が形成されている。そして、その所定部分には、折り曲げ対象部分の折り曲げ側に突出した突出片が設けられており、当該所定部分に対して折り曲げられた折り曲げ対象部分が突出片と当接することで係止されるようになっている。このようにすると、導体をフレキシブル基板に配置して折り曲げ可能に構成できるため、より自由度の高い配置が可能となる。更に、当該所定部分に対して折り曲げられた折り曲げ対象部分が突出片と当接することで係止されるため、折り曲げ部分が折り曲げ前の位置に復帰しにくくなり、折り曲げ後の形状を安定的に保持することができる。
【0017】
請求項2の発明は、突出片において、所定部分から折り曲げ対象部分の折り曲げ側に延出する延出部と、延出部の延出方向に対して横方向に屈曲する屈曲部とが設けられており、折り曲げ対象部分が少なくとも屈曲部と当接することで係止されるようになっている。このようにすると、折り曲げ側に対して屈曲する部分(屈曲部)によって折り曲げ対象部分を係止することができるため、折り曲げ対象部分をより確実に押さえることができる。
【0018】
請求項3の発明は、フレキシブル基板において板状のベース材が設けられると共に導体がベース材に沿って保持されており、突出片がベース材よりも剛性が高い高剛性部材によって構成されている。このようにすると、ベース材に対して復帰力(折り曲げ対象部分が折り曲げ前の形状に戻ろうとする復帰力)が加えられたとしても突出片が変形しにくくなるため、突出片の形状が安定的に保持されやすく、ひいては係止状態を良好に保つことができる。
【0019】
請求項4の発明は、フレキシブル基板において板状のベース材が設けられると共に、導体がベース材に沿って保持されており、突出片がベース材よりも剛性が高い高剛性部材によって構成されている。このようにすると、ベース材の復帰力が加えられたとしても突出片が変形しにくくなるため、突出片の形状が安定的に保持されやすく、ひいては係止状態を良好に保つことができる。
更に、高剛性部材には、延出部の延出位置よりも折り曲げ部側に延びる補強部が設けられている。このようにすると、延出部から折り曲げ線までの間を補強部によって補強することができ、延出部から折り曲げ線までの間(折り曲げない箇所)の形状を安定的に保持することができる。
【0020】
請求項5の発明は、折り曲げ対象部分が所定部分の配置の向きに対して傾斜した折り曲げ線に沿って折り曲げ可能とされており、補強部の端部が折り曲げ線に沿って配置されている。このようにすると、延出部から折り曲げ線までの間(折り曲げない箇所)の形状をより適切な形状に保ちやすくなり、更に、折り曲げ対象部分を折り曲げ線に沿ってより正確に且つ容易に折り曲げることができるようになる。
【0021】
請求項6の発明は、高剛性部材がベース材と同材質であり且つベース材よりも厚く構成されている。このようにすると、ベース材と同材質のものによってベース材よりも剛性の高い突出片を構成することができ、製造上より有利になる。
【0022】
請求項7の発明は、突出片における折り曲げ対象部分との当接位置に粘着媒体が付されている。このようにすると、折り曲げ対象部分と突出片との間に粘着媒体を介在させることができるため、これらの当接状態をより安定的に保つことができ、より一層折り曲げ形状を保持し易くなる。
【0023】
請求項8の発明は、折り曲げ対象部分において当該折り曲げ対象部分の厚さ方向又は板面方向に突出する突起部が形成されている。そして、突出片の所定の当接面が、折り曲げ対象部分と当接する構成をなし、突起部は、突出片における当接面とは異なる面を支持可能とされている。このようにすると、折り曲げ対象部分が突出片の所定当接面と当接することにより係止に加え、突起部がこの所定当接面以外の部分を支持することによっても係止がなされることとなる。即ち、突起部において異なる複数位置で係止がなされるため、折り曲げ対象部分と突出片との係止状態がより一層安定的に保たれやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1(A)は、第1実施形態に係るアンテナを搭載した非接触通信端末を概略的に例示する平面図であり、図1(B)は、図1(A)の非接触通信端末にICカードを翳した様子を説明する説明図である。
【図2】図2は、図1の非接触通信端末の電気的構成を概略的に例示するブロック図である。
【図3】図3(A)は、第1実施形態に係るアンテナを概略的に例示する平面図であり、図3(B)は、図3(A)のアンテナの側面図である。
【図4】図4(A)は、第1実施形態に係るアンテナの折り曲げ前の構成を例示する平面図であり、図4(B)は、その構成の側面図である。
【図5】図5(A)は、折り曲げ対象部分の付近についての折り曲げ前の構成を概略的に示す拡大図であり、図5(B)は、その部分の折り曲げ後の構成を概略的に示す拡大図である。
【図6】図6は、図3のアンテナの一部を拡大して示す拡大図である。
【図7】図7(A)は、第2実施形態に係るアンテナの一部(折り曲げ対象部分付近)についての折り曲げ前の構成を概略的に示す拡大図であり、図7(B)は、その部分の折り曲げ後の構成を概略的に示す拡大図である。
【図8】図8は、第3実施形態に係るアンテナの折り曲げ部付近の構成を概略的に示す拡大図である。
【図9】図9は、第3実施形態に係るアンテナの一部を変形した変形例について、折り曲げ部付近の構成を概略的に示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1実施形態]
以下、本発明に係るアンテナを具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
(非接触通信端末)
まず、本実施形態に係るアンテナを適用した非接触通信端末について説明する。
図1(A)は、本実施形態に係るアンテナを搭載した非接触通信端末を概略的に例示する平面図であり、図1(B)は、図1(A)の非接触通信端末にICカードCaを翳した様子を説明する説明図である。図2は、図1の非接触通信端末の電気的構成を概略的に例示するブロック図である。
【0026】
図1に示す非接触通信端末1は、例えばユーザによって携帯されて様々な場所で用いられる携帯端末として構成されており、商品などに付された無線タグやICカードなどの非接触通信媒体を読み取る無線リーダとしての機能を有している。また、図1の非接触通信端末1は、商品などに付された情報コードを読み取るコードリーダとしての機能も有している。
【0027】
図2に示すように、非接触通信端末1は、全体的制御を司る制御回路10を備えており、この制御回路10に、無線リーダ部20、メモリ11、キー操作部12、表示部13、外部インタフェース14、バッテリ15、電源部16などが接続されている。
【0028】
制御回路10は、マイコンを主体として構成されるものであり、CPU、システムバス、入出力インタフェース等を有し、メモリ11とともに情報処理装置として機能している。メモリ11は、ROM、RAM、不揮発性メモリなどの公知の半導体メモリなどによって構成されており、各種情報を記憶可能に構成されている。また、キー操作部12は、複数のキーによって構成され、使用者のキー操作に応じて制御回路10に対して操作信号を与える構成をなしており、制御回路10は、キー操作部12から操作信号を受けたとき、その操作信号に応じた動作を行うように構成されている。表示部13は、液晶表示器、LEDなどによって構成されており、各種表示を行うように機能している。外部インタフェース14は、外部(例えばホスト装置)との間でのデータ通信を行うためのインタフェースとして構成されており、制御回路10と協働して通信処理を行う構成をなしている。また、非接触通信端末1には、電源となるバッテリ15や電源部16が設けられており、これらによって制御回路10や各種電気部品に電力が供給されている。
【0029】
また、図2に示すように、制御回路10には、無線リーダ部20及びコード読取部30がそれぞれ接続されている。
無線リーダ部20は、制御回路10と協働して無線通信媒体(ICカード等)との間で電磁波による通信を行ない、無線通信媒体に記憶されるデータの読み取り、或いは無線通信媒体へのデータの書き込みを行うように機能している。この無線リーダ部20は、例えば公知の電波方式で伝送を行う回路として構成されており、図2に示すように、送信回路21、受信回路22、整合回路23などを有している。
【0030】
送信回路21は、キャリア発振器、符号化部、増幅器、送信部フィルタ、変調部などによって構成されており、キャリア発振器から例えば周波数13.56MHzのキャリア(搬送波)が出力される構成をなしている。また、符号化部は、制御回路10に接続されており、当該制御回路10より出力される送信データを符号化して変調部に出力する構成をなしている。
【0031】
変調部は、キャリア発振器からのキャリア(搬送波)、及び符号化部からの送信データが入力されるものであり、キャリア発振器より出力されるキャリア(搬送波)に対し、通信対象へのコマンド送信時に符号化部より出力される符号化された送信符号(変調信号)によってASK(Amplitude Shift Keying)変調された被変調信号を生成し、増幅器に出力している。また、増幅器は、入力信号(変調部によって変調された被変調信号)を所定のゲインで増幅し、その増幅信号を送信部フィルタに出力しており、送信部フィルタは、増幅器からの増幅信号をフィルタリングした送信信号を、整合回路23を介してアンテナ60に出力している。このようにしてアンテナ60に送信信号が出力されると、その送信信号が電磁波として当該アンテナ60より外部に放射される。
【0032】
一方、アンテナ60によって受信された電波信号は、整合回路23を介して受信回路22に入力されるようになっている。この受信回路22は、受信部フィルタ、増幅器、復調部、二値化処理部、複号化部などによって構成されており、アンテナ60を介して受信された信号を受信部フィルタによってフィルタリングした後、増幅器によって増幅し、その増幅信号を復調部によって復調する。そして、その復調された信号波形を二値化処理部によって二値化し、復号化部にて復号化した後、その復号化された信号を受信データとして制御回路10に出力している。
【0033】
情報コード読取部30は、CCDエリアセンサなどの固体撮像素子からなる受光センサ、結像レンズ、複数個のLED等から構成される照明部などを備えた構成をなしており、制御回路10と協働してコードリーダとして機能している。
【0034】
(アンテナの構成)
次に、アンテナの具体的構成について説明する。図3(A)は、第1実施形態に係るアンテナを概略的に例示する平面図であり、図3(B)は、図3(A)のアンテナの側面図である。図4(A)は、第1実施形態に係るアンテナの折り曲げ前の構成を例示する平面図であり、図4(B)は、その構成の側面図である。図5(A)は、折り曲げ対象部分の付近についての折り曲げ前の構成を概略的に示す拡大図であり、図5(B)は、その部分の折り曲げ後の構成を概略的に示す拡大図である。図6は、図3のアンテナの一部(折り返し保持部)付近の構成を拡大して示す拡大図である。なお、図3、図4では突出片を省略して示している。
【0035】
本実施形態に係るアンテナ60は、図3(A)、(B)のような最終形状をなしている。このアンテナ60は、折り曲げ可能に構成されたフレキシブル基板60aによって構成されており、全体としてループアンテナとして機能している。アンテナ60を構成するフレキシブル基板60aは、撓み変形可能且つ折り曲げ可能に構成された板状のベース材61と、このベース材61に配置される導体62とを備えてなるものであり、板状のベース材61の板面に沿って金属線などからなる導体62が配置されている。
【0036】
アンテナ60は、例えば、図4(A)(B)のようなフレキシブル基板60aを、図3(A)(B)のように折り曲げて環状に構成されている。フレキシブル基板60aを構成するベース材61は、例えば、樹脂等の誘電材料によって構成されており、撓み変形可能な薄板形状をなしている。導体62は、電波を放射する部分として機能するものであり、撓み変形可能な線状に構成されており、ベース部材61に沿って1周又は複数周巻き回された構成をなしている。
【0037】
図6の拡大図に示すように、アンテナ60を構成するフレキシブル基板60aは、複数箇所において折り曲げ部66が形成されている。この折り曲げ部66は、所定の直線状部分(所定部分)63に続く折り曲げ対象部分64をこの直線状部分63の向きとは異なる向きに折り曲げてなる部分である。具体的には、図5(A)のような初期形状(折り曲げ前の形状)から、図5(B)のように、直線状部分63の方向に対して折り曲げ対象部分64の方向がほぼ90°となるように、且つ直線状部分63における一方面63aと折り曲げ対象部分64における一方面64aとを部分的に接触或いは対向させるように、一方面61a側から見て谷折り形状で折り返している。そして、図5(B)のように、折り曲げ後においては、直線状部分63の片面側(具体的には、折り曲げ対象部分64と対向する一方面63a側)に、折り曲げ対象部分64の反対面64b(直線状部分63と対向する一方面64a側とは反対側の面)が面するように配されている。なお、図4(A)、図5(A)では、折り曲げ部66を構成するための折り曲げ線Lを破線にて概念的に示している。
【0038】
更に、直線状部分63には、折り曲げ対象部分64の折り曲げ側(図5の例では図面下側)に突出した突出片70が設けられている。突出片70は、例えば、ベース材61よりも剛性が高い高剛性部材(例えば、例えば、ベース材61と同材質であり且つベース材61よりも厚く構成された部材、或いは、ベース材61より弾性率の高い材料によって構成された部材等)によって構成されており、ベース材61よりも弾性変形しにくい構成となっている。
【0039】
この突出片70は、例えば、板状に構成されると共に直線状部分63の一方面63aに対して接着剤等によって固定されており、直線状部分63から折り曲げ対象部分64の折り曲げ側に延出する延出部71と、延出部71の延出方向に対して横方向に屈曲する屈曲部72とを備え、全体としてL字状に構成されている。延出部71は、例えば、折り曲げ部66付近において、折り曲げ対象部分64の折り曲げ後の位置に隣接するように配置されている。より詳しくは、折り曲げ対象部分64の折り曲げ後の方向に沿うように延出部71が延びており、図5(B)の例では、直線状部分63の方向と直交する方向に沿って延出部71が配置され、この延出部71の延出方向に沿って折り曲げ対象部分64が延びている。
【0040】
また、屈曲部72は、図5(B)に示すように、延出部71の先端部付近から折り曲げ対象部分64側に屈曲し、折り曲げ対象部分64の前記反対面64b側を部分的に覆っており、その先端部72aが、折り曲げられた折り曲げ対象部分64の側部64c付近の位置又は側部64cから若干外側に突出する位置に配置されている。
【0041】
このように構成される突出片70は、直線状部分63に固定された状態で配され、当該直線状部分63に対して折り曲げられた折り曲げ対象部分64と当接するようになっている。具体的には、折り曲げ対象部分64の反対面64bが屈曲部72の反対面(直線状部分63に接着される側の面であり、一方面70aとは反対側の面)と当接することでこの折り曲げ対象部分64が係止され、これにより折り曲げ形状が保持されるようになっている。更に詳しく述べると、直線状部分63の一方面63aに接続された突出片70の裏側(一方面70aとは反対側)に折り曲げ対象部分64を入り込ませており、弾性復帰力によって図5(A)のような状態に戻ろうとする折り曲げ対象部分64を突出片70の屈曲部72によって支持している。
【0042】
このような折り曲げは、図4のような初期形状の部材に対して複数箇所(図4では4箇所)で行われ、各箇所において同様の折り曲げがなされるようになっている。例えば図6では、図4の部材の長手方向一方側の2箇所において上記のような折り曲げがなされた例を示しており、この2箇所の折り曲げによって一方の直線状部分63(図面左側)と他方の直線用部分(図面右側)とを同方向に揃えて直線的に配置している。更に、図4の部材の長手方向他方側の2箇所でも図6と同様の折り曲げがなされており、これにより、図3のように、周壁状且つ略筒状のアンテナ60が構成されるようになっている。このアンテナ60は、図6のような各折り返し部分66の折り返しが上述の係止構造によって安定的に維持される環状構造が保持される。
【0043】
また、上記アンテナ60は、例えば、図1、図3のように表示部13の周囲に配置されるようになっている。図3に示すように、アンテナ60は、上述の折り曲げ構造によって筒状形態で構成されており、図1、図3の例では、この筒内に収容される形態で表示部13が配置されている。より具体的には、表示部13の表示面の垂直方向に沿ってアンテナ60の内壁面が配置されており、アンテナ60は、表示部13の周囲を取り囲む周壁として配置されている。
【0044】
(第1実施形態の主な効果)
本実施形態に係るアンテナ60は、フレキシブル基板60aの一部に折り曲げ部66が形成されており、直線状部分63(所定部分)に続く折り曲げ対象部分64をこの直線状部分63の向きとは異なる向きに折り曲げている。そして、直線状部分63には、折り曲げ対象部分64の折り曲げ側に突出した突出片70が設けられており、当該直線状部分63に対して折り曲げられた折り曲げ対象部分64が突出片70と当接することで係止されるようになっている。このようにすると、導体62をフレキシブル基板60aに配置して折り曲げ可能に構成できるため、より自由度の高い配置が可能となる。更に、直線状部分63に対して折り曲げられた折り曲げ対象部分64が突出片70と当接することで係止されるため、折り曲げ対象部分64が折り曲げ前の位置に復帰しにくくなり、折り曲げ後の形状を安定的に保持することができる。
【0045】
また、本実施形態に係るアンテナ60は、突出片70において、直線状部分63から折り曲げ対象部分64の折り曲げ側に延出する延出部71と、延出部71の延出方向に対して横方向に屈曲する屈曲部72とが設けられており、折り曲げ対象部分64が少なくとも屈曲部72と当接することで係止されるようになっている。このようにすると、折り曲げ側に対して屈曲する部分(屈曲部72)によって折り曲げ対象部分64を係止することができるため、折り曲げられた折り曲げ対象部分64が初期形状に復帰しようとするときにより引っ掛かりやすくなり、より確実に押さえることができる。
【0046】
また、本実施形態では、フレキシブル基板60aにおいて板状のベース材61が設けられる共に導体62がベース材61に沿って保持されている。そして、突出片70がベース材61よりも剛性が高い高剛性部材によって構成されている。このようにすると、ベース材61に対して復帰力(折り曲げ対象部分64が折り曲げ前の形状に戻ろうとする復帰力)が加えられたとしても突出片70が変形しにくくなるため、突出片70の形状が安定的に保持されやすく、ひいては係止状態を良好に保つことができる。
【0047】
また、本実施形態では、突出片70がベース材61と同材質であり且つベース材61よりも厚く構成されている。このようにすると、ベース材61と同材質のものによってベース材61よりも剛性の高い突出片70を構成することができるため、材料の種類数をより抑えやすく、製造上より有利となる。
【0048】
[第2実施形態]
次に第2実施形態について説明する。図7(A)は、第2実施形態に係るアンテナの一部について折り曲げ前の構成を概略的に示す拡大図であり、図7(B)は、その部分の折り曲げ後の構成を概略的に示す拡大図である。なお、第2実施形態は、突出部270の一部を第1実施形態の突出部70と異ならせた点が第1実施形態と異なっており、それ以外は第1実施形態と同様である。よって、以下では第1実施形態と異なる部分について重点的に説明することとし、第1実施形態と同様の部分については第1実施形態と同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0049】
第2実施形態に係るアンテナ260も、図7(A)のような折り曲げ前の状態から、折り曲げ対象部分を折り曲げ線Lに沿って折り曲げることで図7(B)のような折り曲げ状態となり、この状態で折り曲げ対象部分64が突出片270によって係止されるようになっている。
【0050】
このアンテナ260でも、図7(B)のように、直線状部分63において、折り曲げ対象部分64の折り曲げ側(図7の例では図面下側)に突出するように突出片270が設けられている。この突出片270も、ベース材61よりも剛性が高い高剛性部材(例えば、例えば、ベース材61と同材質であり且つベース材61よりも厚く構成された部材、或いは、ベース材61より弾性率の高い材料によって構成された部材等)によって構成されており、ベース材61よりも弾性変形しにくい構成となっている。
【0051】
また、この突出部270も、板状に構成されると共に直線状部分63の一方面(一方側の板面)に対して接着剤等によって固定されており、直線状部分63から折り曲げ対象部分64の折り曲げ側に延出する延出部71と、延出部71の延出方向に対して横方向に屈曲する屈曲部72とを備えている。そして、この延出部71及び屈曲部72の部分がL字状に構成され、第1実施形態と同様に係止部として機能している。
【0052】
更に、本実施形態で用いられる突出部270は、図7(A)(B)に示すように、延出部71の延出位置よりも折り曲げ部66側に延びる補強部273が設けられている。この補強部273は、延出部71と一体的に構成されると共に、この延出部71の延出位置から直線状部分63に沿って折り曲げ対象部分64側に延びており、その端部273aが折り曲げ対象部分64の折り曲げ位置となる折り曲げ線Lに沿って配置されている。
【0053】
折り曲げ線Lは、直線状部分63の配置の向き(直線状部分63の延出方向)に対して例えば約45°の角度で傾斜しており、補強部273の端部273aもこの折り曲げ線Lの位置とほぼ同位置に配置され、直線状部分63の配置の向き(直線状部分63の延出方向)に対して約45°の角度で傾斜している。そして、折り曲げ対象部分64は、このような折り曲げ線Lに沿って折り曲げ可能とされており、この折り曲げ線Lに沿って折り曲げられることで、図7(B)のように延出部71の延出側に折り返されるようになっている。折り曲げ後の係止構造は第1実施形態と同様であり、折り曲げ対象部分64の反対面64bが屈曲部72の反対面(直線状部分63に接着される側の面であり、一方面70aとは反対側の面)と当接することでこの折り曲げ対象部分64が係止され、これにより折り曲げ形状が保持されるようになっている。より具体的には、突出片270における屈曲部72の裏側(一方面70aとは反対側)に折り曲げ対象部分64を入り込ませており、弾性復帰力によって図7(A)のような状態に戻ろうとする折り曲げ対象部分64を屈曲部72によって押さえて支持している。
【0054】
また、突出片270は、補強部273とは反対側に延出する第2補強部274も設けられている。この第2補強部274は、延出部71と一体的に連結されると共に、直線状部分63に沿って補強部273とは反対側に延びており、直線状部分63の一部と重なるように配置されている。なお、本実施形態では、補強部273及び第2補強部274がいずれも直線状部分63の一方の板面に重ねられる形態で配置されており、直線状部分63の変形を抑えるように機能している。
【0055】
(第2実施形態の主な効果)
第2実施形態に係るアンテナ260は、フレキシブル基板60aにおいて板状のベース材61が設けられると共に、導体62がベース材61に沿って保持されており、突出片270がベース材61よりも剛性が高い高剛性部材によって構成されている。このようにすると、ベース材61の復帰力が加えられたとしても突出片70が変形しにくくなるため、突出片70の形状が安定的に保持されやすく、ひいては係止状態を良好に保つことができる。更に、ベース材61(高剛性部材)には、延出部71の延出位置よりも折り曲げ部66側に延びる補強部273が設けられている。このようにすると、延出部71から折り曲げ線までの間を補強部273によって補強することができ、延出部71から折り曲げ線までの間(折り曲げない箇所)の形状を安定的に保持することができる。
【0056】
また、第2実施形態では、折り曲げ対象部分64が直線状部分63の配置の向きに対して傾斜した折り曲げ線Lに沿って折り曲げ可能とされており、補強部273の端部273aが折り曲げ線Lに沿って配置されている。このようにすると、延出部71から折り曲げ線Lまでの間(折り曲げない箇所)の形状をより適切な形状に保ちやすくなり、更に、折り曲げ対象部分64を折り曲げ線Lに沿ってより正確に且つ容易に折り曲げることができるようになる。
【0057】
[第3実施形態]
次に第3実施形態について説明する。なお、図8は、第3実施形態に係るアンテナの折り曲げ部付近の構成を概略的に示す拡大図である。この第3実施形態は、第1実施形態の特徴を全て含んでおり、更に、突起部380が設けられている点が第1実施形態と異なっている。よって突起部380以外の部分については、第1実施形態と同様であるとし、第1実施形態と同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0058】
第3実施形態に係るアンテナ360は、折り曲げ対象部分64において、当該折り曲げ対象部分64の厚さ方向に突出する突起部380が形成されている。この突起部380は、例えば所定の厚みをもった板状に構成されると共に折り曲げ対象部分64の反対面64bに接着材等によって固定されている。この構成では、第1実施形態と同様に、突出片70の所定の当接面(一方面70aとは反対側の面)が、折り曲げ対象部分64の反対面64bと当接する構成をなしており、更に、突起部380が、突出片70における前記当接面(一方面70aとは反対側の面)とは異なる面(具体的には屈曲部72における側部72bの外面)を支持可能とされている。より詳しくは、折り曲げ対象部分64が折り曲げ前の形状に若干戻ろうとしたときに、突起部380の側部380aが屈曲部72の側部72bと当接することでこの位置でも係止されるようになっている。
【0059】
(第3実施形態の主な効果)
第3実施形態に係るアンテナ360では、折り曲げ対象部分64において当該折り曲げ対象部分64の厚さ方向に突出する突起部380が形成されている。そして、突出片70の所定の当接面(一方面70aとは反対側の面)が、折り曲げ対象部分64と当接する構成をなし、突起部380は、突出片70における当該当接面とは異なる面(側部72bの外面)を支持可能とされている。このようにすると、折り曲げ対象部分64が突出片70の所定当接面と当接することにより係止に加え、突起部380がこの所定当接面以外の部分を支持することによっても係止がなされることとなる。即ち、突起部380において異なる複数位置で係止がなされるため、折り曲げ対象部分64と突出片70との係止状態がより一層安定的に保たれやすくなる。
【0060】
[他の実施形態]
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0061】
上記いずれの実施形態においても、突出片70における折り曲げ対象部分64との当接位置に粘着媒体を設けることができる。粘着媒体は粘着性のある物質であればよく、両面テープなどであってもよい。このようにすると、折り曲げ対象部分64と突出片70との間に粘着媒体を介在させることができるため、これらの当接状態をより安定的に保つことができ、より一層折り曲げ形状を保持し易くなる。
【0062】
上記実施形態では、屈曲部72の端部72aを折り曲げ対象部分64の側部から突出させていたが、この突出する端部72a側を折り曲げ対象部分64側に折り曲げるようにしてもよい。このようにすると、屈曲部72の端部72a側でも係止機能が発揮できる。
【0063】
第3実施形態の変形例として、図9のような構成としてもよい。この変形例は、第1実施形態の特徴を全て含んでおり、更に、突起部480が設けられている点が第1実施形態と異なっている。よって突起部480以外の部分については、第1実施形態と同様であるとし、第1実施形態と同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
この変形例に係るアンテナ460は、折り曲げ対象部分64において、当該折り曲げ対象部分64の板面方向に突出する突起部480が形成されている。突起部480は、例えば折り曲げ対象部分64と一体的に板状に構成され、折り曲げ対象部分64の方向に対して略直交した方向(図9の例では折り曲げ対象部分64を折り曲げた時に直線状部分63に沿う方向)に延出しており、この突起部480の側部480aの一部が突出片70の一方面70aを支持している。この構成でも、第1実施形態と同様に、突出片70の所定の当接面(一方面70aとは反対側の面)が、折り曲げ対象部分64の反対面64bと当接する構成をなしており、更に、突起部480が、突出片70における前記当接面(一方面70aとは反対側の面)とは異なる面(一方面70a)を支持している。従って、突出片70は、折り曲げ対象部分64及び突起部480によって厚さ方向両側から挟まれる格好となり、係止状態がより安定化するようになっている。
【符号の説明】
【0064】
1…非接触通信端末
60…アンテナ
60a…フレキシブル基板
61…ベース部
62…導体
63…直線状部分(所定部分)
64…折り曲げ対象部分
66…折り曲げ部
70…突出片
71…延出部
72…屈曲部
273…補強部
380,480…突起部
Ca…カード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り曲げ可能に構成されたフレキシブル基板を備えると共に、前記フレキシブル基板の少なくとも一部に導体が配置されてなるアンテナであって、
前記フレキシブル基板の少なくとも一部には、所定部分に続く折り曲げ対象部分を前記所定部分の向きとは異なる向きに折り曲げる折り曲げ部が形成され、
前記所定部分には、前記折り曲げ対象部分の折り曲げ側に突出した突出片が設けられており、
前記所定部分に対して折り曲げられた前記折り曲げ対象部分が前記突出片と当接することで係止されることを特徴とするアンテナ。
【請求項2】
前記突出片は、
前記所定部分から前記折り曲げ対象部分の折り曲げ側に延出する延出部と、
前記延出部の延出方向に対して横方向に屈曲する屈曲部と、
を備えており、
前記折り曲げ対象部分が少なくとも前記屈曲部と当接することで係止されることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記フレキシブル基板は、板状のベース材を備えると共に前記導体が前記ベース材に沿って保持されており、
前記突出片が、前記ベース材よりも剛性が高い高剛性部材からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記フレキシブル基板は、板状のベース材を備えると共に前記導体が前記ベース材に沿って保持されており、
前記突出片が、前記ベース材よりも剛性が高い高剛性部材からなり、
前記高剛性部材には、前記延出部の延出位置よりも前記折り曲げ部側に延びる補強部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のアンテナ。
【請求項5】
前記折り曲げ対象部分は、前記所定部分の配置の向きに対して傾斜した折り曲げ線に沿って折り曲げ可能とされており、
前記補強部の端部が前記折り曲げ線に沿って配置されていることを特徴とする請求項4に記載のアンテナ。
【請求項6】
前記高剛性部材は、前記ベース材と同材質であり且つ前記ベース材よりも厚く構成されていることを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか一項に記載のアンテナ。
【請求項7】
前記突出片は、前記折り曲げ対象部分との当接位置に粘着媒体が付されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のアンテナ。
【請求項8】
前記折り曲げ対象部分には、当該折り曲げ対象部分の厚さ方向又は板面方向に突出する突起部が形成されており、
前記突出片の所定の当接面が、前記折り曲げ対象部分と当接する構成をなし、
前記突起部は、前記突出片における前記当接面とは異なる面を支持可能とされていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−188239(P2011−188239A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51469(P2010−51469)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】