説明

アンテナ

【課題】小型であり、水平偏波および垂直偏波の両方の送信または受信において高い性能を有するアンテナを提供する。
【解決手段】アンテナ1は、第1の方向D1に延伸するスロット3と、第1の方向D1に対して直交する方向(第2の方向D2)に延伸するスロット4とが形成された、板状の放射器2と、第1の給電部と、第2の給電部とを備える。第1の給電部は、放射器2の第1から第4の角部(C1〜C4)のうち、対角線L1上に位置する角部C1,C2に形成される。第2の給電部は、放射器2の第1から第4の角部(C1〜C4)のうち、対角線L2上に位置する角部C3,C4に形成される。たとえば直線L1の方向が水平方向となるようにアンテナ1を配置する。第1の給電部に給電することで水平偏波が得られ、第2の給電部に給電することで垂直偏波が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアンテナに関し、特に、水平偏波、垂直偏波の両方を送信または受信可能なアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水平偏波、垂直偏波の両方を送信(あるいは受信)可能なアンテナが考案されている。このようなアンテナとしては、たとえば2つの八木式アンテナを交差させたもの(クロス八木アンテナと呼ばれる)、あるいは2つのダイポールアンテナを交差させたもの(クロスダイポールアンテナと呼ばれる)などが知られている。たとえば特開平9−98019号公報(特許文献1)は、平板状の反射器と、その反射器の表面から放射波長のほぼ1/4の距離に配置された2つの垂直偏波用ダイポールアンテナおよび1つの水平偏波用ダイポールアンテナとを備える偏波共用アンテナを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−98019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ハイビジョンあるいはスーパーハイビジョンといったような、高解像度の映像を表示する技術が注目を集めている。ハイビジョンあるいはスーパーハイビジョンでの映像の視聴を可能にするために、大容量の映像情報を伝送するための技術も要求される。
【0005】
しかしながら、1つのチャネルに対応する周波数帯域は決まっているので、送受信可能な情報(信号)の容量が制限される。これまでのテレビ放送の送受信と同様に電波による情報の送受信を行なう場合、大容量の情報の伝送のために、たとえば複数のアンテナから同一の周波数の電波を同時に送信することが考えられる。しかしこの場合には受信側で混信が生じることが懸念される。
【0006】
混信を防ぎながら大容量の情報を電波で伝送するための別の方法として、同じ周波数の垂直偏波および水平偏波を送受信することが考えられる。しかしながら、特開平9−98019号公報(特許文献1)に開示されたようなダイポールアンテナでは、たとえば放送局からの電波の受信において十分に高い利得を得る事ができないと考えられる。その理由は、単体のダイポールアンテナの指向性がいわゆる8の字特性であるためである。なお、特開平9−98019号公報(特許文献1)に開示されたアンテナは、限られた狭い範囲内での電波の送受信、たとえば陸上での固定無線通信または移動通信での使用を前提としたものである。また、上記アンテナは、水平偏波用アンテナと垂直偏波用アンテナとが別々に設けられているため、アンテナ全体としてのサイズも大きくなる。
【0007】
一方、上記した八木式アンテナは、単一指向性を有する。このためクロス八木アンテナでは、クロスダイポールアンテナよりも利得を高めることができると考えられる。しかしながら、一般に八木式アンテナは、電波の送受信方向の長さが大きくなるという問題があり、クロス八木アンテナにおいては、さらにアンテナ全体のサイズが大きくなるという問題がある。
【0008】
上記のように、アンテナが大型化すると、設置場所および耐久性(たとえば風を受ける部分の面積が大きくなることによって劣化が促進される)といった問題が発生する。
【0009】
本発明の目的は、小型であり、水平偏波および垂直偏波の両方の送信または受信において高い性能を有するアンテナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は要約すれば、アンテナであって、第1の方向に延伸する第1のスロットと、第1の方向に対して直交する方向に延伸する第2のスロットとが形成された、板状の放射器と、第1の給電部と、第2の給電部とを備える。第1の給電部は、第1および第2のスロットの交差によって形成された放射器の第1から第4の角部のうち、第1の対角線上に位置する第1および第2の角部に形成される。第2の給電部は、放射器の第1から第4の角部のうち、第1の対角線と交差する第2の対角線上に位置する第3および第4の角部に形成される。
【0011】
好ましくは、放射器は、第1のスロットに平行な第1および第2の辺と、第2のスロットに平行な第3および第4の辺を有する正方形に形成された中央部と、第1および第2の辺から第2のスロットの延伸方向に突出するようにそれぞれ形成された第1および第2の突出部と、第3および第4の辺から第1のスロットの延伸方向に突出するようにそれぞれ形成された第3および第4の突出部とを含む。アンテナは、放射器と対向して配置された、板状の反射器をさらに備える。
【0012】
好ましくは、第1および第2の辺に沿った第1および第2の突出部の長さ、および、第3および第4の辺に沿った第3および第4の突出部の長さは、アンテナの使用周波数帯域の中心波長の0.35倍以上かつ0.45倍以下の範囲内である。放射器と反射器との間の距離は、使用周波数帯域の中心波長の0.1倍以上かつ0.2倍以下の範囲内である。
【0013】
好ましくは、第1の対角線の方向が水平方向となるように放射器を支持するための支持体をさらに備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、小型でありながら水平偏波および垂直偏波の両方を送信または受信可能なアンテナを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るアンテナの平面図である。
【図2】図1に示したアンテナ1の利用形態を模式的に示した図である。
【図3】図1に示した放射器2の固定手段の一例を模式的に示した正面図である。
【図4】図3に示した固定手段の側面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るアンテナの平面図である。
【図6】図5に示したアンテナの側面図である。
【図7】第2の実施の形態に係るアンテナの固定方法の一例を模式的に示した側面図である。
【図8】第2の実施の形態に係るアンテナ1Aの利得の周波数特性の一例を示した図である。
【図9】第2の実施の形態に係るアンテナ1AのVSWR(電圧定在波比)の周波数特性の一例を示した図である。
【図10】第2の実施の形態に係るアンテナ1Aの指向性パターンの例を示した図である。
【図11】第2の実施の形態に係るアンテナ1Aの前後比の周波数特性の例を示した図である。
【図12】第2の実施の形態に係るアンテナ1Aの半値幅の周波数特性の例を示した図である。
【図13】第2の実施の形態に係るアンテナ1Aの変形例の1つを示した平面図である。
【図14】本発明の実施の形態に係るアンテナを有するシステムの他の例を示した図である。
【図15】本発明の実施の形態に係るアンテナを有するシステムのさらに他の例を示した図である。
【図16】パラメータA1,A3を変化させた複数のサンプルの一覧を示す図である。
【図17】図16に示した複数のサンプルの各々の利得の周波数特性を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰り返さない。
【0017】
また、本発明のアンテナは送信アンテナおよび受信アンテナのいずれにも適用可能であるが、以下では主に本発明を受信アンテナに適用した形態について説明する。
【0018】
[実施の形態1]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るアンテナの平面図である。図1を参照して、アンテナ1は、導電板によって形成された放射器2を有する。
【0019】
放射器2には、第1の方向D1に延伸するスロット3と、第1の方向D1に対して直交する方向(第2の方向D2)に延伸するスロット4とが形成される。スロット3,4の交差によって、放射器2に角部C1〜C4が形成される。角部C1,C2は対角上に位置し、角部C3,C4は対角上に位置する。角部C1,C2の頂点を結ぶ直線L1(対角線)と、角部C3,C4の頂点を結ぶ直線L2(対角線)とは直交する。
【0020】
アンテナ1は、さらに、放射器2の角部C1,C2に形成される第1の給電部、および放射器2の角部C3,C4に形成される第2の給電部を備える。この実施の形態では、第1の給電部は、給電線5を放射器2の角部C1,C2にそれぞれ接続するためのネジ7,8により実現される。第1の給電部と同じく、第2の給電部は、給電線6を放射器2の角部C3,C4にそれぞれ接続するためのネジ9,10により実現される。
【0021】
給電線5,6の種類は特に限定されず、たとえばフィーダ線を使用できる。また、同軸ケーブルを使用する場合には、整合器を介して放射器2に接続してもよい。角部C1,C2における給電線5の接続点、角部C3,C4における給電線6の接続点がアンテナ1の給電点に該当する。
【0022】
図2は、図1に示したアンテナ1の利用形態を模式的に示した図である。図1および図2を参照して、アンテナ1は、たとえば直線L1の方向が水平方向となる(これにより直線L2の方向が垂直方向となる)ように配置される。アンテナ1で電波を受信すると、アンテナ1から給電線5,6を介して信号が受信機に11に送られる。放射器2の角部C1,C2に給電線5を接続する(角部C1,C2に給電する)ことでアンテナ1から給電線5を介して水平偏波の受信信号が得られる。一方、放射器2の角部C3,C4に給電線6を接続する(角部C3,C4に給電する)ことでアンテナ1から給電線6を介して垂直偏波の受信信号が得られる。すなわちアンテナ1は、水平偏波および垂直偏波の両方を受信するアンテナとして機能する。
【0023】
なお、直線L2の方向が水平方向となる(これにより直線L1の方向が垂直方向となる)ようにアンテナ1を配置してもよい。この場合には、アンテナ1から給電線6を介して水平偏波の受信信号が得られるとともに、アンテナ1から給電線5を介して垂直偏波の受信信号が得られる。このように、図1に示した構成によれば、直線L1,L2の一方の方向が水平方向となる(これにより直線L1,L2の他方の方向が垂直方向となる)ようにアンテナ1を配置することで水平偏波および垂直偏波の両方を受信できる。
【0024】
水平方向に配置された給電部(図1では角部C1,C2に形成された給電部)に給電することによって、水平偏波の信号を得ることができる。垂直方向に配置された給電部(図1では角部C3,C4に形成された給電部)に給電することによって垂直偏波の信号を得ることができる。図1では、水平偏波の信号および垂直偏波の信号の両方を得るために水平方向に配置された給電部および垂直方向に配置された給電部の両方に給電しているが、水平偏波の信号のみを得たい場合には、水平方向に配置された給電部にのみ給電すればよい。また垂直偏波の信号のみを得たい場合には、垂直方向に配置された給電部にのみ給電すればよい。
【0025】
また、図2に示した受信機11に代えて送信機を用いてもよい。この場合には、上記の説明における受信が送信となり、アンテナ1から水平偏波および垂直偏波の両方(給電線5,6の一方のみが接続されている場合には水平偏波および垂直偏波の片方)を送信することができる。
【0026】
図3は、図1に示した放射器2の固定手段の一例を模式的に示した正面図である。図4は、図3に示した固定手段の側面図である。図3および図4を参照して、放射器2は、筐体15内に収められる。筐体15にはスペーサ16が設けられ、放射器2は、ネジ14によってスペーサ16に取り付けられることにより支持される。スペーサ16は筐体15と一体的に形成されてもよいし、ネジなどの固定手段によって筐体15に取り付けられていてもよい。スペーサ16およびネジ14は、放射器2を支持するための固定するための固定手段を構成する。
【0027】
筐体15は垂直方向に延びるマスト17に取り付けられる。これにより、図3に示されるように直線L1の方向が水平方向となり、直線L2の方向が垂直方向となる。なお、図4に示すように、放射器2の前面を覆うために筐体15に被さる蓋体18が設けられてもよい。また、筐体15の設置場所は特に限定されるものではなく、たとえばマスト17を用いる場合には、たとえば建物の屋上、家屋の屋根などに設置可能である。またマスト17を用いずに、建物の壁面、家屋のベランダ等に筐体15を取り付けてもよい。
【0028】
第1の実施の形態によれば、板状の放射器を用いて水平偏波および垂直偏波の両方を送信または受信可能なアンテナを実現できる。たとえば八木式アンテナの場合、一方向に沿って導波器、放射器、および反射器が並べられる。クロス八木式アンテナでは、2つの八木式アンテナを直交するように配置するので、全体としてのサイズが大きくなる。これに対して第1の実施の形態に係るアンテナ1では、放射器2(導電板)の表面に垂直な方向が電波の主たる送受信方向となるので、当該方向におけるアンテナのサイズを大幅に小さくできる。したがって第1の形態によれば、小型でありながら水平偏波および垂直偏波の両方を送信または受信可能なアンテナを実現できる。
【0029】
第1の実施の形態に係るアンテナは、たとえば、水平偏波および垂直偏波を利用した信号の伝送(たとえば上記のようなハイビジョンあるいはスーパーハイビジョンといったような、高解像度の映像信号)に用いることができる。通常では、直線偏波では、位相が互いに90°異なる場合、約−20dB程度の交差偏波特性を確保できる。したがって、上記のように水平偏波および垂直偏波を利用してデジタル信号を伝送する場合においては、受信側において混信が実質的に発生しないと考えられる。したがって実施の形態1によれば、水平偏波および垂直偏波を利用した、大容量の信号(デジタル信号)の伝送に好適なアンテナを実現することができる。
【0030】
[実施の形態2]
図5は、本発明の第2の実施の形態に係るアンテナの平面図である。図6は、図5に示したアンテナの側面図である。
【0031】
図5および図6を参照して、アンテナ1は、導電板によって形成された放射器2Aおよび放射器2Aに対向する反射器31を備える。
【0032】
放射器2Aは、中央部20および突出部25〜28を備える。中央部20は正方形状に形成されて、辺21〜24を有する。辺21,23はスロット4に平行な辺である。辺22,24はスロット3に平行な辺である。
【0033】
突出部25は中央部20の辺21からスロット3の延在方向に突出する。同じく突出部27は中央部20の辺23からスロット3の延在方向に突出する。スロット3は、中央部20だけでなく突出部25,27においても形成され、突出部25,27を分断する。
【0034】
一方、突出部26は中央部20の辺22からスロット4の延在方向に突出する。同じく突出部28は中央部20の辺24からスロット4の延在方向に突出する。スロット4は、中央部20だけでなく突出部26,28においても形成され、突出部26,28を分断する。
【0035】
放射器2Aにおいて、辺21に平行な方向の突出部25の長さ、辺22に平行な方向の突出部26の長さ、辺23に平行な方向の突出部27の長さ、辺24に平行な方向の突出部28の長さはいずれもA1である。長さA1は約0.35λ以上かつ約0.45λの範囲内であることが好ましい。これにより、アンテナ1Aの利得を高めることができる。λは、アンテナ1Aの使用周波数帯の中心波長である(以下の説明においても同様)。
【0036】
反射器31は、放射器2Aと同様に導電板によって形成される。反射器31の形状は正方形であり、その一辺の長さをA2とする。A2は、約0.6λ以上かつ約0.8λ以下の範囲内の適切な大きさに設定される。
【0037】
さらに、図6を参照して、放射器2Aと反射器31との間の距離をA3とする。距離A3は、たとえば約0.1λ以上かつ約0.2λ以下の範囲内の適切な大きさに設定される。また、スロット3,4の幅Wは、たとえば3〜10mmのうち6mmに設定される。
【0038】
反射器を設けることによって、指向性を強めることができる。すなわち特定の方向における放射強度を高めることができる。通常、放射器と反射器との間の距離は約1/4λ(0.25λ)に設定される。これに対して第2の実施の形態では、放射器2Aと反射器31との間の距離A3を1/4λよりも短くする。これによって、アンテナを薄型化することが可能になる。しかしながら一般的なアンテナの構成では、放射器と反射器との間の距離を約1/4λ(0.25λ)よりも短くすることで特性(典型的には利得)の低下が起こりうる。
【0039】
第2の実施の形態では、放射器2Aに突出部25〜28を設ける。好ましくは、突出部25〜28の長さA1を約0.35λ以上かつ約0.45λの範囲内とする。これによって放射器2Aの利得を高めることができるので、反射器と放射器との間の距離を1/4λよりも短くしても特性の低下を抑制することができる。
【0040】
上記の点についてより詳細に説明する。図16は、パラメータA1,A3を変化させた複数のサンプルの一覧を示す図である。図17は、図16に示した複数のサンプルの各々の利得の周波数特性を示した図である。以下に説明するサンプルは、中心周波数が590MHz(λ=510mm)となるようにそのサイズを決定したものである。
【0041】
図16および図17を参照して、基準およびサンプル1〜6について、利得の周波数特性を評価した。
【0042】
基準となるサンプルではA1=0.44λであり、A1の範囲として定められた0.35λ〜0.45λの範囲内である。また、基準となるサンプルではA3=0.13λであり、A3の範囲として定められた0.1λ〜0.2λの範囲内である。なお、基準となるサンプルではA2=0.73λであり、上記のA2の範囲である約0.6λ以上かつ約0.8λ以下の範囲内である。
【0043】
サンプル1〜4は、第2の実施の形態に係るアンテナの例である。サンプル1では、A1=0.35λであり、上記したA1の範囲の下限値に等しい。また、サンプル1では、A3=0.1λであり、上記したA3の範囲の下限値に等しい。
【0044】
サンプル2では、A1=0.35λであり、上記したA1の範囲の下限値に等しい。また、サンプル2では、A3=0.2λであり、上記したA3の範囲の上限値に等しい。
【0045】
サンプル3では、A1=0.45λであり、上記したA1の範囲の上限値に等しい。また、サンプル3では、A3=0.1λであり、上記したA3の範囲の下限値に等しい。
【0046】
サンプル4では、A1=0.45λであり、上記したA1の範囲の上限値に等しい。また、サンプル4では、A3=0.2λであり、上記したA3の範囲の上限値に等しい。
【0047】
なお、サンプル1〜4ではいずれもA2=0.73λであり、上記のA2の範囲(0.6λ以上かつ0.8λ以下の範囲)内に含まれている。
【0048】
サンプル5,6は第2の実施の形態に係るアンテナの比較例である。サンプル5では、A1=0.55λであり、上記したA1の範囲の上限値を上回る。また、サンプル5では、A3=0.3λであり、上記したA3の範囲の上限を上回りる。
【0049】
サンプル6では、A1=0.25λであり、上記したA1の範囲の下限値を下回る。また、サンプル6では、A3=0.05λであり、上記したA3の範囲の下限値を下回る。なお、サンプル5,6ではいずれもA2=0.73λであり、上記のA2の範囲(0.6λ以上かつ0.8λ以下の範囲)内に含まれている。
【0050】
図17に示されるように、周波数470(MHz)〜710(MHz)の範囲において、サンプル1〜5の各々について、UHF(周波数470MHz〜662MHzの範囲)における利得は、基準となるサンプルの利得と同程度であり、かつ、十分に実用的な利得(5dBd以上)である。
【0051】
サンプル5は特性という点では、サンプル1〜4と同等であるが、上記のように、A3が約0.1λ以上かつ約0.2λ以下という範囲を外れている。すなわち、サンプル5では、サンプル1〜4よりもサイズが大きくなる。
【0052】
サンプル6の場合、A1,A3の各々が、上記のように規定された範囲の下限を下回っている。したがって、サンプル6は、サンプル1〜4よりも、小型化されているものの、特性(利得)が劣化している。
【0053】
以上説明したように、図17から、A1を約0.35λ以上かつ約0.45λの範囲内に設定し、A3を約0.1λ以上かつ約0.2λ以下の範囲内に設定することで、特性に優れ、かつ小型化されたアンテナが実現できることが分かる。
【0054】
図7は、第2の実施の形態に係るアンテナの固定方法の一例を模式的に示した側面図である。図7を参照して、放射器2Aおよび反射器31は筐体15内に収められる。筐体15には放射器2Aおよび反射器31を支持するための柱状の支持体16が設けられる。反射器31には支持体16を通すための貫通孔が形成される。また放射器2Aは、支持体16にネジによって取り付けられることで支持される。
【0055】
図7では、図5に示したネジ7〜10のうちのネジ8〜10が示される。筐体15は垂直方向に延びるマスト17に取り付けられる。これにより、図5に示されるように直線L1の方向が水平方向となり、直線L2の方向が垂直方向となる。第1の実施の形態と同様に、放射器2Aの前面を覆うために筐体15に被さる蓋体18が設けられてもよい。また、第1の実施の形態と同様に、筐体15の設置場所は特に限定されるものではない。
【0056】
次に第2の実施の形態に係るアンテナ1Aの特性を説明する。なお、以下に説明する特性は、アンテナ1Aを日本におけるUHF放送の周波数帯域(470MHz〜770MHz)での電波の送受信に好適なように構成した例によって得られたものである。
【0057】
図8は、第2の実施の形態に係るアンテナ1Aの利得の周波数特性の一例を示した図である。図8に示した周波数特性は、図17に示した基準サンプルの周波数特性と同じものである。利得が高いほどアンテナの性能としては優れている。図8を参照して、470MHz〜680MHzの範囲における利得が6dBd以上である。
【0058】
図9は、第2の実施の形態に係るアンテナ1AのVSWR(電圧定在波比)の周波数特性の一例を示した図である。VSWRが低いほどアンテナの性能としては優れている。図9を参照して、VSWRは、470MHz〜770MHzの範囲において略3.0以下となっている。
【0059】
図10は、第2の実施の形態に係るアンテナ1Aの指向性パターンの例を示した図である。図11は、第2の実施の形態に係るアンテナ1Aの前後比の周波数特性の例を示した図である。前後比が高いほど、アンテナの前方へのアンテナの放射強度が大きいことを示す。図10および図11を参照して、470MHz〜710MHzの範囲において、6.0dB以上の前後比が確保される。
【0060】
図12は、第2の実施の形態に係るアンテナ1Aの半値幅の周波数特性の例を示した図である。半値幅が大きいほど、0°方向にビームが集中していることを示す。図12を参照して、470MHz〜740MHzの範囲において、60(deg)以下の半値幅が確保されている。
【0061】
このように第2の実施の形態によれば、反射器を備えることによって、アンテナに指向性を持たせることができる。さらに、第2の実施の形態によれば、放射器は、中央部および突出部を備える。これにより、反射器を放射器に近づける(反射器と放射器との間の距離をλ/4よりも短くする)場合でも、アンテナの性能の低下を抑制できる。よって、第2の実施の形態によれば、水平偏波および垂直偏波の両方を送信または受信可能であり、かつ、薄型(電波の送受信方向の長さが短い)であるアンテナを実現できる。
【0062】
なお、図5に示した構成では、スロット3,4は、突出部25〜28の各々を分断するように形成される。すなわち、突出部25〜28の各々におけるスロット3,4の端部は開口端である。ただし図13に示すように、突出部25〜28の各々におけるスロット3,4の端部は閉端であってもよい。さらに、突出部25〜28にスロットが形成されるものと限定されず、中央部20のみにスロット3,4が形成されてもよい。
【0063】
また、第1および第2の実施の形態に係るアンテナは、図2に示したシステムに採用できる。ただし以下に示したようなシステムにおいても第1および第2の実施の形態に係るアンテナを採用できる。
【0064】
図14は、本発明の実施の形態に係るアンテナを有するシステムの他の例を示した図である。図14を参照して、このシステムでは、位相差給電のための移相器41を備える。給電線6からの受信信号は移相器41に入力される。給電線5からの受信信号は合成器43に入力される。移相器41は、給電線6からの受信信号の位相を給電線5からの受信信号の位相に対して90°ずらして出力する。合成器43にて、移相器41からの信号と給電線5からの受信信号とが合成される。これによって、円偏波を受信可能なシステムを実現できる。なお、移相器41は、給電線5のほうに備えられていてもよい。
【0065】
図15は、本発明の実施の形態に係るアンテナを有するシステムのさらに他の例を示した図である。図15を参照して、このシステムでは、切替器42を備える。切替器42は、給電線5からの受信信号および給電線6からの受信信号のうちの強度の大きいほうの受信信号を選択する。これによって、偏波ダイバーシティシステムを実現できる。
【0066】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0067】
1,1A アンテナ、2,2A 放射器、3,4 スロット、5,6 給電線、7〜10,14 ネジ、15 筐体、16 スペーサ、17 マスト、18 蓋体、20 中央部、21〜24 辺、25〜28 突出部、31 反射器、41 移相器、42 切替器、43 合成器、C1〜C4 角部、D1 第1の方向、D2 第2の方向、L1,L2 直線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に延伸する第1のスロットと、前記第1の方向に対して直交する方向に延伸する第2のスロットとが形成された、板状の放射器と、
前記第1および第2のスロットの交差によって形成された前記放射器の第1から第4の角部のうち、第1の対角線上に位置する前記第1および第2の角部に形成された、第1の給電部と、
前記放射器の前記第1から第4の角部のうち、前記第1の対角線と交差する第2の対角線上に位置する第3および第4の角部に形成された、第2の給電部とを備える、アンテナ。
【請求項2】
前記放射器は、
前記第1のスロットに平行な第1および第2の辺と、前記第2のスロットに平行な第3および第4の辺を有する正方形に形成された中央部と、
前記第1および第2の辺から前記第2のスロットの延伸方向に突出するようにそれぞれ形成された第1および第2の突出部と、
前記第3および第4の辺から前記第1のスロットの延伸方向に突出するようにそれぞれ形成された第3および第4の突出部とを含み、
前記アンテナは、
前記放射器と対向して配置された、板状の反射器をさらに備える、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記第1および第2の辺に沿った前記第1および第2の突出部の長さ、および、前記第3および第4の辺に沿った前記第3および第4の突出部の長さは、前記アンテナの使用周波数帯域の中心波長の0.35倍以上かつ0.45倍以下の範囲内であり、
前記放射器と前記反射器との間の距離は、前記使用周波数帯域の前記中心波長の0.1倍以上かつ0.2倍以下の範囲内である、請求項2に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記第1の対角線の方向が水平方向となるように前記放射器を支持するための支持体をさらに備える、請求項1から3のいずれか1項に記載のアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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