説明

アンプル容器包装体

【課題】アンプル容器の開封性を阻害することなく、アンプル容器に充填された液剤が飛び出して手などに付着することを確実に防止することが可能なアンプル容器包装体を提供することである。
【解決手段】アンプル容器包装体10は、容器の枝部13から胴体部12に亘って密着して装着される熱収縮性フィルム15から構成され、胴体部12の上部に位置する部分に、胴体部12の周方向に亘って形成された微小孔19又は凹部を含む容器開封時に枝部13が押圧されることにより切断される切取り線17を有し、切取り線17が切断されることにより、切取り線17上部の少なくとも一部が分離されてカット部14を被覆するかさ部18を形成する。さらに、熱収縮性フィルム15には、少なくともかさ部18となる部分の最内層に内容物を吸収する吸収紙16がラミネートされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンプル容器包装体に係り、特に容器に密着して装着される熱収縮性フィルムから構成されるアンプル容器包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
アンプル容器は、内容物が充填された胴体部と、胴体部の上部に設けられた枝部(頭部とも称される)と、枝部及び胴体部の間に設けられくびれた形状を有するカット部(首部とも称される)とから構成される容器である。従来は、ガラス製のアンプル容器がほとんどであったが、近年は安全性の面からプラスチック製の容器も広く使用されている。主に医薬品等の少量液剤の容器として使用され、液剤は枝部の上部開口から充填されて、充填後に上部開口が密栓される。アンプル容器の開封は、枝部を指先で押圧する等によりカット部を切断して行われる。
【0003】
上記のようにアンプル容器を開封する際、ガラス微粉等の容器片が容器内に混入する或いは周囲に飛散するおそれがある。また、充填された液剤が飛び出して枝部を押圧する手などに付着するおそれもある。このような状況に鑑みて、幾つかのアンプル包装体が開発されている。例えば、特許文献1には、アンプルの枝部を熱収縮性フィルムで包装したアンプル包装体であって、熱収縮性フィルムの傘状に形成されて下方に延び、少なくともアンプルのカット部を被覆するアンプル容器が開示されている。特許文献1には、カット部の切断により発生したガラス微粉は、静電気によって枝部包装用の熱収縮性フィルムの下部の傘状になった部分に付着し、アンプルの内部に混入したり、周囲に飛散する微粉は大幅に減少していると述べられている。また、枝部の包装の前に胴部包装用の熱収縮性フィルムで胴体部が包装された構成も可能であることが述べられている。
【0004】
【特許文献1】特公平7−121755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のアンプル包装体によれば、カット部を被覆する傘部のサイズが小さいために、充填された液剤が飛び出して枝部を押圧する手などに付着することを確実に防止することは困難である。一方、傘部のサイズを大きくすると、容器開封時に枝部を押圧する側の裏側にあたる傘部の一部によって容器の開封性が阻害されることになる。また、アンプル容器の胴体部にも包装体を設けた場合には、商品名等の表示が可能となるので好ましいが、特許文献1のアンプル包装体は、枝部と胴体部とを被覆する包装体が別体であるため、生産効率が悪く、また、フィルムの重複部分が生じるため、生産コストや意匠性の面で改善の余地がある。
【0006】
また、傘部に付着して周囲への飛散が防止できた液剤も、傘部から垂れて手に付着するおそれもある。以上のように、従来技術によれば、アンプル容器に充填された液剤が飛び出して手などに付着することを確実に防止することはできない。
【0007】
本発明の目的は、アンプル容器の開封性を阻害することなく、アンプル容器に充填された液剤が飛び出して手などに付着することを確実に防止することが可能なアンプル容器包装体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るアンプル容器包装体は、内容物が充填された胴体部と、胴体部の上部に設けられた枝部と、枝部及び胴体部の間に設けられくびれた形状を有するカット部とを含み、枝部を押圧してカット部を切断することにより開封されるアンプル容器に装着されるアンプル容器包装体において、容器の枝部から胴体部に亘って密着して装着される熱収縮性フィルムから構成され、胴体部の上部に位置する部分に、胴体部の周方向に亘って形成された微小孔又は凹部を含む容器開封時に枝部が押圧されることにより切断される切取り線を有し、切取り線が切断されることにより、切取り線上部の少なくとも一部が分離されてカット部を被覆するかさ部を形成することを特徴とする。
【0009】
また、熱収縮性フィルムには、少なくともかさ部となる部分の最内層に内容物を吸収する吸収層が設けられることが好ましい。
【0010】
また、吸収層は、切取り線を横切って切取り線上部から切取り線下部に亘って設けられることが好ましい。
【0011】
また、吸収層は吸収紙から構成され、吸収紙の繊維方向がアンプル容器の上下方向に沿うようにラミネートされることが好ましい。
【0012】
また、アンプル容器包装体は、容器開封時に押圧される力点を表示する力点表示部を有し、切取り線は、力点表示部側から力点表示部の裏側に向かって上方に傾斜する上方傾斜部と、力点表示部側に、切取り線の最下端であり容器開封時に切取り線の切断が開始される作用点部と、力点表示部の裏側に、切取り線の最上端であり容器開封時に切断されない支点部と、を有することが好ましい。
【0013】
アンプル容器には、容器開封時に押圧する位置を特定する開封表示が設けられ、切取り線は、切取り線の最下端であり容器開封時に切取り線の切断が開始される作用点部と、切取り線の最上端であり容器開封時に切断されない支点部と、作用点部から支点部に向かって上方に傾斜する上方傾斜部と、を有し、作用点部がアンプル容器の開封表示側に位置するように装着されることが好ましい。
【0014】
また、切取り線の作用点部に、V字形状の微小孔が設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るアンプル容器包装体によれば、容器の枝部から胴体部に亘って密着して装着される熱収縮性フィルムから構成されるので、枝部から胴体部まで一枚のフィルムで被覆でき、生産性や意匠性に優れている。さらに、包装体は、胴体部の上部に位置する部分に、胴体部の周方向に亘って形成された微小孔又は凹部を含む容器開封時に枝部が押圧されることにより切断される切取り線を有し、切取り線が切断されることにより、切取り線上部の少なくとも一部が分離されてカット部を被覆するかさ部を形成するので、容器開封時に充填された液剤が飛び出した場合には、かさ部によって液剤が遮断され、手などに付着することを高度に防止することができる。
【0016】
また、包装体を構成する熱収縮性フィルムにおいて、少なくともかさ部となる部分の最内層に内容物を吸収する吸収層を設ければ、かさ部によって遮断された液剤を吸収層により吸収することができ、かさ部からの液垂れを防止して、手への付着を高度に防止することができる。
【0017】
さらに、吸収層を、切取り線を横切って切取り線上部から切取り線下部に亘って設ければ、吸収層をかさ部の下端部まで設けることができ、液剤の吸収性が一層良好になる。また、多量の液剤が飛び出して、液剤がかさ部の吸収層で吸収仕切れず、アンプル容器表面を伝って液垂れした場合にも、切取り線下部の吸収層によりその液剤を吸収することができる。
【0018】
また、吸収層が吸収紙から構成され、吸収紙の繊維方向がアンプル容器の上下方向に沿うようにラミネートすれば、熱収縮性フィルムの収縮が吸収層の存在によって阻害されることがなく、かさ部など吸収紙をラミネートした部分も容器形状にきれいに追従でき、また、かさ部が容器に密着することで液垂れを高度に防止することができる。さらに、切取り線以外での吸収紙の破れを防止することができる。
【0019】
また、包装体は、容器開封時に押圧される力点を表示する力点表示部を有し、切取り線は、力点表示部側から力点表示部の裏側に向かって上方に傾斜する上方傾斜部と、力点表示部側に、切取り線の最下端であり容器開封時に切取り線の切断が開始される作用点部と、力点表示部の裏側に、切取り線の最上端であり容器開封時に切断されない支点部と、を有する構成とすれば、かさ部のサイズ、具体的には、作用点部側の部分をさらに大きくした場合にも、容器の開封性を阻害することなく、容器に充填された液剤が飛び出して手などに付着することを確実に防止することができる。即ち、力点表示部の裏側に位置するかさ部の一部によって容器の開封性が阻害されることはない。
【0020】
また、アンプル容器には、容器開封時に押圧する位置を特定する開封表示が設けられ、切取り線は、切取り線の最下端であり容器開封時に切取り線の切断が開始される作用点部と、切取り線の最上端であり容器開封時に切断されない支点部と、作用点部から支点部に向かって上方に傾斜する上方傾斜部と、を有し、作用点部がアンプル容器の開封表示側に位置するように包装体が装着されるようにすれば、アンプル容器の開封性を阻害することなく、容器に充填された液剤が飛び出して手などに付着することを確実に防止することができる。
【0021】
さらに、切取り線の作用点部に、V字形状の微小孔を設ければ、切取り線の切断がさらに容易になり容器の開封性はさらに良好になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。図1は、アンプル容器及びアンプル容器の枝部から胴体部に亘って装着されたアンプル容器包装体を示す正面図である。図2は、アンプル容器に装着されたアンプル容器包装体の要部断面の模式図である。図3は、図1に示すアンプル容器及びアンプル容器包装体の右側面図である。図4は、図1においてアンプル容器包装体が加熱処理される前のアンプル容器のみを示す正面図である。
【0023】
図1に示すように、アンプル容器包装体10(以下、包装体10とする)は、アンプル容器11の枝部から胴体部に亘って装着されている。包装体10が装着されるアンプル容器11は、図4に示すように、内容物を充填した胴体部12と、胴体部12の上部に設けられた枝部13と、枝部13及び胴体部12の間に設けられくびれた形状を有するカット部14とから構成される容器である。アンプル容器11には、枝部13を押圧する特定の位置がなく開封方向が特定されないイージーカットアンプルや特定の開封方向が決まっているワンポイントアンプルがあり、包装体10は、いずれのタイプのアンプル容器11にも適用することができる。また、アンプル容器11に充填される内容物についても、本発明の構成上特に限定されないが、以下では、包装体10は、内容物として流動性のある液剤を充填したアンプル容器11に装着されるものとして説明する。
【0024】
アンプル容器11を構成する材料としては、ガラス或いはプラスチックが挙げられ、包装体10は、いずれの構成材料からなるアンプル容器11にも適用することができる。アンプル容器11の開封は、枝部13を指先で押圧する等によりカット部14を切断して行われる。上記のように、アンプル容器を開封する際、ガラス製のアンプル容器11の場合には、容器片(ガラス微粉)が容器内に混入する或いは周囲に飛散するおそれがあるが、プラスチック製のアンプル容器11の場合には、その危険性は低く安全性が高い。一方、いずれのアンプル容器11においても、充填された液剤が飛び出して枝部13を押圧する手などに付着することは同様に起こり得る。
【0025】
図1等に示すように、包装体10は、矩形の熱収縮性フィルム15の両端を重ね合わせて溶剤、接着剤などで接合(この接合箇所をセンターシール部24と称する)して筒状に形成されており、接着剤等を使用することなく、アンプル容器11の枝部13から胴体部12の最下端に亘って密着して装着される。ここで熱収縮性フィルム15とは、後述する加熱処理を行うことにより、収縮する機能を有するフィルムを意味する。
【0026】
熱収縮性フィルム15に使用できる樹脂としては、特に限定されず公知の樹脂を使用することができ、例えば、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸など)、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリスチレン樹脂(スチレン-ブタジエン共重合体など)、ポリ塩化ビニルなどを挙げることができる。なお、これらのうち好ましくは、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂である。
【0027】
熱収縮性フィルム15は、良好な熱収縮性を発現するために、少なくとも一方向に延伸されていることが好ましい。延伸倍率としては、筒状に形成された熱収縮性フィルム15(包装体10)の円周方向(一方向)に2〜6倍程度が好ましく、場合によっては包装体10の高さ方向(一方向と直交する方向)に1.01〜2倍程度であることが好ましい。延伸方式としては、ロール方式、テンター方式及びチューブ方式等を使用することができる。なお、熱収縮性フィルム15の膜厚は、20〜100μmであることが好ましく、さらに好ましくは、25〜80μmである。なお、熱収縮性フィルム15は、加熱処理によって主に円周方向に収縮し、具体的には、円周方向に30〜80%(加熱処理条件;90℃の熱水に10秒間浸漬、以下同じ)、高さ方向に−3(マイナスは膨張を意味する)〜15%の熱収縮率を有することが好ましい。ここで熱収縮率とは、収縮前後のフィルムサイズの差を収縮前のフィルムサイズで除した値(百分率)である。
【0028】
熱収縮性フィルム15の表面には、商品名や商品イメージ等を表す文字や模様など所望の色相に調整した図示しない印刷層を設けることができる。なお、印刷層は、熱収縮性フィルム15のラベルの内側となる面に設けることが好ましい。印刷層は、例えば、所望の顔料や染料と、ビヒクルと称されるバインダ樹脂(アクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びポリアミド樹脂等)と、有機溶剤(エステル系溶剤、アルコール系溶剤、及びケトン系溶剤等)と、添加剤(ワックス、可塑剤、レベリング剤、界面活性剤、分散剤、及び消泡剤等)とを混合したインキを用いて形成される。色相の調整は、顔料の種類やその添加量を調整することによって行われる。顔料の添加量を多くすれば、濃い色相で透明性の低い印刷層を形成することができる。なお、印刷層の厚みは、0.5〜25μmであることが好ましく、さらに好ましくは1〜10μmである。なお、印刷層の形成は、グラビア印刷、凸版印刷、平板印刷及び孔版印刷等によって行うことができる。印刷層において、文字や模様の表示を行わない部分には、背景色の印刷を行うことができ、通常は、白ベタ印刷が行われる。
【0029】
熱収縮性フィルム15の最内層には、図2に示すように、内容物を吸収する機能を備えた吸収層16が設けられることが好ましい。包装体10のデザイン等に応じて吸収層16をラミネートする位置を決定できるが、少なくとも後述するかさ部18となる部分には、吸収紙16が設けられることが好ましい。なお、吸収紙16は、内容物を吸収できるだけでなく、熱収縮性フィルム15の収縮を阻害しないことが要求される。この吸収層16がかさ部18となる部分の最内層に設けられることにより、かさ部18によって遮断された液剤が吸収層16に吸収されるので、かさ部18からの液垂れを防止して、手への液剤の付着を高度に防止することができる。
【0030】
また、吸収層16は、かさ部18だけでなく、切取り線17を横切って切取り線17の上部から切取り線17の下部に亘って設けることが好ましい。このように吸収層16を設ければ、吸収層16をかさ部18の下端部まで設けることができ、吸収層16をかさ部18の最内層の全域に亘って容易に設けることができる。従って、かさ部18に付着した液剤の吸収性が一層良好になる。また、多量の液剤が飛び出して、液剤がかさ部18の吸収層16で吸収仕切れず、アンプル容器表面を伝って液垂れした場合も、切取り線17の下部に設けられた吸収層16によりその液剤を吸収できるので、手への液剤の付着を高度に防止することができる。なお、生産性の向上の観点から、センターシール部24を除くほぼ全面に吸収層16が設けられることが好ましい。
【0031】
吸収層16としては、従来公知のものを使用することができる。例えば、各種樹脂や各種天然物などで構成される吸収シートを使用することができるが、液剤の吸収性やフィルムの収縮阻害防止等の観点から吸収紙を使用することが好ましい。熱収縮性フィルム15にラミネートできる吸収紙16としては、上記の機能を有するものであれば特に限定されず、例えば、不織布や雲竜紙等の和紙などを使用することができる。不織布や和紙は、液剤を吸収することができ、且つ繊維の網目が広いため、熱収縮性フィルム15の収縮にほとんど影響を与えないので好ましい。吸収紙16を構成する材料としては、内容物の種類や包装体10のデザイン、熱収縮性フィルム15に使用される樹脂の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば、セルロース、アラミド、ナイロン、ポリエステル、ポリオレフィン等からなる繊維などを使用することができる。
【0032】
吸収紙16を構成する繊維が一定の方向に並ぶ場合には、繊維が並んだ繊維方向がアンプル容器11の上下方向に沿うように、熱収縮性フィルム15にラミネートされることが好ましい。このように吸収紙16をラミネートすれば、熱収縮性フィルムの収縮が吸収層16の存在によって阻害されることがなく、また、吸収紙16は周方向に切れ難くなり、切取り線17以外での吸収紙16の破れを防止することができる。即ち、繊維方向がアンプル容器11の上下方向に沿っていれば、吸収紙16が切取り線17以外では切れ難くなり、かさ部18における吸収紙16の破れ等を防止しながら、切取り線17に沿って切断できる。
【0033】
図1に示すように、包装体10には、容器開封時に枝部13が押圧されることにより切断される切取り線17が設けられる。即ち、切取り線17は、カット部14が切断されると同時に切断される。ここで切取り線17とは、微小孔19(包装体10を貫通する孔)が所定のピッチで繰り返されたものであり、ミシン目とも称される。また、切取り線17には、連続又は所定のピッチで凹部が形成されたハーフカットも含まれる。なお、切断性を良好にするために、切取り線17の凹部としては、深いことが好ましく、さらには、熱収縮性フィルム15だけでなく吸収紙16まで貫通した微小孔19であることが好ましい。この切取り線17によって、後述するかさ部18が形成され、切取り線17の形状によりかさ部18の形状やサイズが決定される。
【0034】
切取り線17は、胴体部12の上部に位置する部分に、胴体部12の周方向に亘って形成され、切取り線17が切断されることにより、後述する図8に示すように、切取り線17の上部の少なくとも一部が分離されてカット部14を被覆するかさ部18を形成する。従って、図1に示す状態においては、かさ部18は切取り線17を下端部とする切取り線17からカット部14までの部分である。このかさ部18によって、容器開封時に開口部から飛び出した液剤が遮断され、手などに付着することを高度に防止することができる。
【0035】
また、包装体10は、容器開封時に押圧される力点を表示する力点表示部20を有し、切取り線17は、力点表示部20側から力点表示部20の裏側に向かって上方に傾斜する上方傾斜部21と、さらに、力点表示部20側に、容器開封時に切取り線17の切断が開始される作用点部22と、力点表示部20の裏側に、容器開封時に切断されない支点部23とを有することが好ましい。ここで、作用点部22は、切取り線17の最下端であり、支点部23は、切取り線17の最上端である。切取り線17をこのような構成とすれば、所謂梃子の原理により、容器開封時に切取り線17が容易に切断されて容器の開封性が良好になる。
【0036】
上方傾斜部21等を機能させて容器の開封性等を良好にするためには、容器開封時に押圧する位置を特定する必要があり、具体的には、上記のように、力点を表示する力点表示部20を設けることが好ましい。ここで力点とは、枝部13の一部であって容器開封時に指先等で押圧される部分である。力点表示部20を包装体10に設けることにより、開封方向が特定されないアンプル容器11においても、上方傾斜部21等を機能させて容器の開封性等を良好なものとすることができる。力点表示部20は、例えば、上記の印刷層や切取り線17のような微小孔19などによって形成することができ、その形成方法は特に限定されない。
【0037】
また、上方傾斜部21によって、かさ部18のサイズ、好ましくは、作用点部22側の部分のサイズのみを大きくすることが可能となり、アンプル容器の開封性を阻害することなく、アンプル容器に充填された液剤が飛び出して手な付着することを高度に防止することができる。液剤が飛び跳ねた場合に、その液剤の大部分を遮断するのは、かさ部18の作用点部22側の部分であり、力点表示部20の裏側に向かうに従って、かさ部18のサイズを小さくすることができる。従って、力点表示部20の裏側に位置するかさ部18の一部が邪魔になって、容器の開封性が阻害されることはない。
【0038】
包装体10が、特定の開封方向が存在するワンポイントアンプルに装着される場合のように、容器開封時に押圧する位置を特定する開封表示がアンプル容器11に設けられている場合には、包装体10に力点表示部20を設ける必要はない。一方、アンプル容器11の開封表示側に作用点部22が位置するように、包装体10を装着する必要がある。このように装着すれば、アンプル容器の開封性を阻害することなく、容器に充填された液剤が飛び出して手などに付着することを確実に防止することができる。なお、力点表示部20や開封表示が無くても力点がわかる場合には、特別な表示を包装体10やアンプル容器11に設ける必要はない。
【0039】
上述のように、切取り線17が形成される位置によって、かさ部18のサイズが決定される。具体的には、切取り線17の作用点部22の位置としては、カット部14に装着される部分から、2〜15mm下方であることが好ましく、さらに好ましくは5〜10mm下方である。支点部23の位置は、容器の開封性を良好にするために、作用点部22よりも上方であって、カット部14に向かって縮径する胴体部の上方に設けられることが好ましい。具体的には、カット部14に装着される部分から、0.5〜10mm下方であることが好ましく、さらに好ましくは1〜5mm下方であり、また、作用点部22よりも、1〜12mm上方であることが好ましく、さらに好ましくは2〜8mm上方である。
【0040】
切取り線17の作用点部22には、図6に示すV字形状の微小孔19を設けることが好ましい。例えば、V字の一辺の長さが2〜15mmであることが好ましい。さらに、V字の微小孔19のサイズは、他の微小孔19のサイズよりも大きいことが好ましい。このようなV字形状の微小孔19を作用点部22に設けることにより、さらに切取り線17の切断が容易になり、容器の開封性がさらに良好になる。なお、吸収層16が設けられる場合には、熱収縮性フィルム15及び吸収層16を連通した微小孔19が設けられることが好ましい。また、切取り線17の切断性を向上させるため、図7等に示すように、筒状の包装体10とする場合に形成される包装体10を構成する熱収縮性フィルム15の側縁部同士の接合箇所であるセンターシール部24は、支点部23の近傍に設けることが好ましく、支点部23にあってもよい。一方、支点部23は、図7等に示すように、容器開封時に切断されないように、微小孔19等を設けるピッチを大きくすることが好ましい。なお、作用点部22及び上方傾斜部21は、切取り線17の切断性を向上させるために、微小孔19のピッチが狭い、或いは切取り線17に沿った微小孔19のサイズ(微小孔19の長さ)が微小孔19の存在しない部分のサイズ(微小孔19の間隔、ピッチ)に比べて大きいことが好ましい。具体的には、微小孔19と微小孔19の存在しない部分とのサイズ比が1.1:1〜5:1である。切り取り線17に沿った微小孔19のサイズは、1〜5mmであることが好ましい。具体的には、例えば、微小孔19と微小孔19の存在しない部分のサイズは、2.3mmと0.9mmや2.1mmと0.7mmや1.5mmと0.5mmが挙げられる。
【0041】
包装体10の製造及びアンプル容器11への装着は、次のようにして行われる。まず、延伸処理、力点表示部20を含む印刷層の形成、及び吸収層16が設けられた熱収縮性フィルム15の長尺ロールは、アンプル容器11に装着される幅にスリットされた後、一方の側縁部にテトラヒドロフランなどの有機溶剤が塗布され、その塗布部に他方の側縁部を重ね合わせて接合(センターシール)し、筒状の包装体10の連続体となる。この連続体を上下方向に所定のサイズを有する一枚の包装体10となるように切断し、図5に示すように、アンプル容器11に被せた後、加熱処理して熱収縮性フィルム15を収縮させ、図1等に示すように、アンプル容器11に装着することができる。加熱処理は、熱風やスチームを吹き付けることにより行われる。具体的には、例えば、90℃に設定されたスチームが充満したスチームトンネルに、アンプル容器11にアンプル容器11の径よりも少し大きな径の筒状の包装体10が外嵌された状態で通されることにより加熱処理される。
【0042】
切取り線17は、包装体10がアンプル容器11の幅にスリットされた後やセンターシールされて筒状にされた後(例えば、一枚の包装体10のサイズに切断すると同時)に形成することができる。なお、切取り線17は、ダイカットやレーザー加工等により設けることができる。
【0043】
上記構成の包装体10の作用について、図8を加えて以下詳細に説明する。図8は、図2においてアンプル容器11の枝部13を押圧して容器を開封する様子を示す図である。
【0044】
アンプル容器11の開封は、上述のように、枝部13を指先で押圧することにより、カット部14を切断して行われる。カット部14が切断されると、胴体部12の上部に開口部が形成され、内容物の取出しが可能になる。その開口部から、内容物である液剤が飛び出す場合があり、枝部13を押圧した手などに液剤が付着するおそれがある。そのような液剤の付着を確実に防止することができるのが、上記構成の包装体10である。なお、包装体10には、力点表示部20が印刷されており、この部分を押圧して容器を開封することにより、後述のように特に優れた効果を奏することができる。
【0045】
包装体10は、胴体部12の上部に位置する部分に、容器開封時に力点表示部20を押圧することにより切断される切取り線17を有している。即ち、切取り線17は、アンプル容器11のカット部14が切断されると同時に切断されるので、容器の開封性を阻害することはない。この切取り線17によって、開口部から飛び出す液剤を遮断するかさ部18を形成することが可能になり、そのかさ部18の形状やサイズを決定することができる。
【0046】
また、包装体10を構成する熱収縮性フィルム15の最内層には、図2に示すように、内容物を吸収する機能を備えた吸収層16が設けられるので、かさ部18によって遮断された液剤が吸収層16に吸収されて、かさ部18からの液垂れを防止して、手への液剤の付着を高度に防止することができる。
【0047】
切取り線17には、力点表示部20側から力点表示部20の裏側に向かって上方に傾斜する上方傾斜部21が存在するので、切取り線17に枝部13を押圧する力が加わり易く、且つ力点表示部20の裏側の部分のかさ部の一部が小さくなるので、容器の開封性は良好である。また、力点表示部20側に存在する容器開封時に切取り線17の切断が開始される作用点部22には、V字形状の微小孔19を設けられるので、容器の開封性は良好に維持できる。その他、センターシール部24部を支点部23の近傍に設ける、作用点部22及び上方傾斜部21には、微小孔19のピッチが狭い、或いは切取り線17に沿った微小孔19のサイズ(微小孔19の長さ)を大きくする等により、切取り線17の切断を容易にして、容器の開封性が良好に維持されている。
【0048】
上方傾斜部21によって、かさ部18のサイズをさらに大きくした場合にも、容器の開封性を阻害することなく、容器に充填された液剤が飛び出して手などに付着することを確実に防止することができる。
【0049】
以上のように、包装体10によれば、アンプル容器11の開封性を阻害することなく、アンプル容器11に充填された液剤が飛び出して手などに付着することを確実に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】アンプル容器及びアンプル容器の枝部から胴体部に亘って装着されたアンプル容器包装体を示す正面図である。
【図2】アンプル容器に装着されたアンプル容器包装体の要部断面の模式図である。
【図3】図1に示すアンプル容器及びアンプル容器包装体の右側面図である。
【図4】図1においてアンプル容器包装体が装着される前のアンプル容器のみを示す正面図である。
【図5】筒状にされたアンプル容器包装体及びその包装体が被せられたアンプル容器を示す斜視図であり、アンプル容器包装体が加熱処理される前の状態を示す図である。
【図6】切取り線の作用点部を拡大した模式図である。
【図7】切取り線の支点部を拡大した模式図である。
【図8】図2においてアンプル容器の枝部を押圧して容器を開封する様子を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
10 アンプル容器包装体、11 アンプル容器、12 胴体部、13 枝部、14 カット部、15 熱収縮性フィルム、16 吸収紙、17 切取り線、18 かさ部、19 微小孔、20 力点表示部、21 上方傾斜部、22 作用点部、23 支点部、24 センターシール部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が充填された胴体部と、胴体部の上部に設けられた枝部と、枝部及び胴体部の間に設けられくびれた形状を有するカット部とを含み、枝部を押圧してカット部を切断することにより開封されるアンプル容器に装着されるアンプル容器包装体において、
アンプル容器包装体は、
容器の枝部から胴体部に亘って密着して装着される熱収縮性フィルムから構成され、
胴体部の上部に位置する部分に、胴体部の周方向に亘って形成された微小孔又は凹部を含む容器開封時に枝部が押圧されることにより切断される切取り線を有し、
切取り線が切断されることにより、切取り線上部の少なくとも一部が分離されてカット部を被覆するかさ部を形成することを特徴とするアンプル容器包装体。
【請求項2】
請求項1に記載のアンプル容器包装体において、
熱収縮性フィルムには、少なくともかさ部となる部分の最内層に内容物を吸収する吸収層が設けられることを特徴とするアンプル容器包装体。
【請求項3】
請求項2に記載のアンプル容器包装体において、
吸収層は、切取り線を横切って切取り線上部から切取り線下部に亘って設けられることを特徴とするアンプル容器包装体。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のアンプル容器包装体において、
吸収層は吸収紙から構成され、
吸収紙の繊維方向がアンプル容器の上下方向に沿うようにラミネートされることを特徴とするアンプル容器包装体。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1に記載のアンプル容器包装体において、
アンプル容器包装体は、容器開封時に押圧される力点を表示する力点表示部を有し、
切取り線は、
力点表示部側から力点表示部の裏側に向かって上方に傾斜する上方傾斜部と、
力点表示部側に、切取り線の最下端であり容器開封時に切取り線の切断が開始される作用点部と、
力点表示部の裏側に、切取り線の最上端であり容器開封時に切断されない支点部と、
を有することを特徴とするアンプル容器包装体。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1に記載のアンプル容器包装体において、
アンプル容器には、容器開封時に押圧する位置を特定する開封表示が設けられ、
切取り線は、
切取り線の最下端であり容器開封時に切取り線の切断が開始される作用点部と、
切取り線の最上端であり容器開封時に切断されない支点部と、
作用点部から支点部に向かって上方に傾斜する上方傾斜部と、
を有し、
作用点部がアンプル容器の開封表示側に位置するように装着されることを特徴とするアンプル容器包装体。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のアンプル容器包装体において、
切取り線の作用点部に、V字形状の微小孔が設けられることを特徴とするアンプル容器包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−234651(P2009−234651A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86145(P2008−86145)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【出願人】(591074231)常盤薬品工業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】