説明

アーク溶接ロボット

【課題】溶接した部材の目視検査により溶接品質管理には限界があり、また汎用計測器を使用した溶接品質管理でも十分なデータ収集ができず、またコスト増加となる。
【解決手段】本発明のアーク溶接ロボットは、予め教示された動作プログラムによって所定の動作パターンで動作し、前記動作パターンに応じて所定の溶接条件で被溶接物を溶接するアーク溶接ロボットであって、前記動作プログラム実行時のプログラム名、溶接箇所、計測データのうち少なくとも1つを履歴情報として保存する保存手段を備えることにより、特別な計測器を付加することなく溶接品質管理に必要な溶接に関するデータを安価にかつ高精度に収集することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接工程における溶接品質の管理を行うためのデータ計測機能を有するアーク溶接ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車業界や建設業界における品質管理とは、「不満ではない」という意味の品質管理の意味合いが多くを占めていたが、近年の品質管理の概念は「魅力的な満足」「お客様から選ばれる品質」「会社として生き残るための品質」という品質管理にシフトしている。この品質管理の徹底に伴い、溶接を必要とする部品における溶接品質管理の必要性も高まっている。従来の溶接品質の管理方法としては、溶接した部材の目視検査や、電流計測や電圧計測を行いその結果をログする機能を有する汎用計測ロガー器を溶接ケーブルに接続し、そのログ結果を解析/管理することにより溶接品質管理を行っている。
【0003】
ここで従来よりある汎用計測ロガー器を使用して計測した時の構成図を図9に示す。図9において、126は溶接する際の消耗電極となる溶接ワイヤ、123は溶接ワイヤを送給するための送給モータ、124は溶接ワイヤ126をガイドし、溶接出力の電極となる溶接トーチ、125は溶接される溶接部材、121は溶接出力および送給モータ123を制御するための溶接出力/送給モータ制御部、1001は溶接出力の電流および電圧を検出するための汎用計測ロガー器である。
【0004】
目視検査では、溶接構造物の重大な事故となる可能性がある溶接の割れ、形状不良などが発見されるが、汎用計測ロガー器により電流計測や電圧計測を行うことにより、溶接工程における溶接状態を連続的に記録することで、異常な電流値、電圧値となっているかどうかを検査し、目視検査では発見できない異常を検出することができる。
【0005】
また、従来の溶接工程を記録する例としては、溶接工程における各作業毎の所要時間およびサイクルタイムを測定して表示することにより、作業者自身が測定することなしに、サイクルタイムを短縮するためのデータ計測を行う方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
あるいはその他の従来例としては、ミクロな時間領域での溶接現象を解析するためや、マクロな時間領域での溶接出力の変化を計測するために、従来は汎用計測ロガー器を接続し波形データの収集、表示を行っていた。
【特許文献1】特開平5−6216号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、溶接した部材の目視検査は全数検査を行うことは難しく、一方抜き取り検査を行った場合には、偶発的な不良や溶接抜けなどを防止することはできない。
【0008】
また汎用計測ロガー器により電流計測や電圧計測を行うことにより、溶接工程における溶接状態を連続的に記録する場合では、指令値と実際の出力値との差違を判定する機能はなく、記録したデータを人間が検査して溶接が異常かどうかを判定する必要があり、また検査したい溶接工程のすべてに高価な汎用計測ロガー器を準備することもコストがかかることとなり、また溶接にすべての溶接現象を汎用計測ロガー器では計測することができない。
【0009】
また、特許文献1のような溶接工程における各作業毎の所要時間およびサイクルタイムを測定して表示する方法では、溶接部材の良否判定は行えない。
【0010】
さらに、溶接現象を解析するためや、溶接出力の変化を計測するために、汎用計測ロガー器を接続する必要があり、工場内のすべての溶接工程に接続することはコストが増え、また計測器の結線に手間がかかる。また溶接現象における短絡回数は汎用計測ロガー器では計測が不可能である。
【0011】
本発明は、上記従来の課題を鑑み、溶接品質管理に必要なデータを収集する機能を有するアーク溶接ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のアーク溶接ロボットは、予め教示された動作プログラムによって所定の動作パターンで動作し、前記動作パターン中の各所定期間に予め設定された所定の溶接条件で被溶接物を溶接するアーク溶接ロボットであって、前記動作プログラム実行時のプログラム名、溶接箇所、計測データのうち少なくとも1つを履歴情報として保存する保存手段を備える。
【0013】
また、本発明のアーク溶接ロボットは、予め教示された動作プログラムによって所定の動作パターンで動作し、前記動作パターン中の各所定期間に予め設定された所定の溶接条件で被溶接物を溶接するアーク溶接ロボットであって、少なくとも計測データを履歴情報として保存する保存手段を備え、前記計測データは、所定期間中の、溶接電流指令値、溶接電流出力平均値、溶接電圧指令値、溶接電圧出力平均値、ワイヤ送給速度、短絡回数、送給モータ電流、および溶接エラーデータのうち少なくとも1つを含む。
【0014】
また、本発明のアーク溶接ロボットは、予め教示された動作プログラムによって所定の動作パターンで動作し、前記動作パターン中の各所定期間に予め設定された所定の溶接条件で被溶接物を溶接するアーク溶接ロボットであって、少なくとも計測データを履歴情報として保存する保存手段を備え、前記計測データは、所定期間中の、溶接電流出力平均値、溶接電圧出力平均値、短絡回数、送給モータ電流のうち少なくとも1つが予め設定した所定範囲かどうかを判定した判定結果を含む。
【0015】
また、本発明のアーク溶接ロボットは、予め教示された動作プログラムによって所定の動作パターンで動作し、前記動作パターン中の各所定期間に予め設定された所定の溶接条件で被溶接物を溶接するアーク溶接ロボットであって、前記動作プログラム実行時のプログラム名、溶接箇所、計測データのうち少なくとも1つを履歴情報として保存する保存手段を備え、保存手段が履歴情報を保存するタイミングは、すべての溶接条件変更時または異常発生時のいずれかから選択可能とした。
【0016】
また、本発明のアーク溶接ロボットは、予め教示された動作プログラムによって所定の動作パターンで動作し、前記動作パターン中の各所定期間に予め設定された所定の溶接条件で被溶接物を溶接するアーク溶接ロボットであって、前記動作プログラム実行時のプログラム名、溶接箇所、計測データのうち少なくとも1つを履歴情報として保存する保存手段を備え、保存した履歴情報を外部メモリに転送することを可能とした。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、溶接に関する履歴情報を保存する手段を有するので、特別な計測器を付加することなく安価にかつ高精度に溶接品質管理に必要なデータを収集することを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(実施の形態1)
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図1から図5を用いて説明する。
【0019】
図1の(a)は本発明を実現する産業用ロボットの構成を示しており、101はマニピュレータ、124は溶接トーチ、102はロボット全体を制御するための制御装置、108はマニピュレータおよび制御装置を操作するためのティーチペンダント、109は作業者が教示した動作プログラムや設定データを保存することのできる外部メモリ、103は制御装置自体の制御を行うCPU、104は溶接制御を行うために溶接部、105はCPUが解釈し動作するための制御装置ソフトウェアを格納し読み出し専用のメモリであるROM、106は作業者が教示した動作プログラムや設定データを格納し書き込みおよび読み出し可能なメモリであるRAM、107はマニピュレータを駆動するための駆動部である。
【0020】
次に溶接部104の内部構成を図1の(b)に示す。126は溶接する際の消耗電極となる溶接ワイヤ、123は溶接ワイヤ126を送給するための送給モータ、124は溶接ワイヤをガイドし、溶接出力の電極となる溶接トーチ、125は溶接される溶接部材、121は溶接出力および送給モータ123を制御するための溶接出力/送給モータ制御部、122は溶接出力の電流および電圧を検出するための電流/電圧検出部である。
【0021】
次に動作プログラムの例を図2を用いて説明する。図2は動作プログラムの実施例を示す図であり、207はこの動作プログラムのプログラム名を示す。また、201はロボットの動作命令であり「MOVE」はマニピュレータを移動させる命令であり、直線動作、円弧動作などを指定することができる。なお、ここでは特にその区別しないものとする。また202は教示点名であり溶接を行う部分では溶接箇所に相当する。なお教示点名の名称は自由に設定できるがここでは例としてP1、P2と表記する。また203は、マニュピュレータを移動させる際の移動速度を示すもので、溶接区間では0.30m/minないし3.00m/min程度が指定され、溶接を行わない空走区間では最高速度に近い速度が指定されることが多い。さらに401、403、404は溶接条件命令であり、溶接開始前、溶接中、溶接終了の終端処理の溶接条件として指定される。なお401の例では電流指令値が120A(アンペア)、電圧指令値が18.0V(ボルト)を示している。
【0022】
さらに205、206は溶接ガスをON/OFFするための命令であり、ガスONすると、ガスバルブ(図示せず)が開状態となり溶接ガスが供給され、ガスOFFすると、ガスバルブが閉状態となり溶接ガスの供給が停止される。また402、405はアークON/OFFするための命令であり、アークONすると図1(b)に示す溶接出力/送給モータ制御部121により溶接出力が出力されて溶接ワイヤ126と溶接部材125との間に電圧付加されると同時に、溶接出力/送給モータ制御部121により送給モータ123が駆動されて溶接ワイヤ126が溶接部材125に向けて送給される。そして溶接ワイヤ126が溶接部材125と接触すると短絡電流が流れ、同時にヒューズ効果により短絡が切れて高熱のアークが発生する。以降、短絡とアークが繰り返すことにより溶接部が高熱状態となり金属溶融により接合される。また短絡とアークが繰り返す際の短絡回数は溶接品質管理を行う上でのひとつの要素となる。
【0023】
次に動作プログラム実行時のプログラム名、溶接箇所、計測データのうち少なくとも1つを履歴情報として保存する手段について、図2から図4を用いて説明する。
【0024】
図2の動作プログラムの例において、402のアークON/OFFするための命令が実行されると、図3の処理フローにおいて、アークON実行の処理301が実行される。
【0025】
次に、図2の403の溶接条件命令2が実行されると、図3のフローにおいて、処理302が実行され、続いて処理303の履歴処理が実行される。そして処理303の履歴処理では、図2の403の溶接条件命令が実行されるまでの、動作プログラム名207、教示点名202、溶接電流指令値、溶接電流出力平均値、溶接電圧指令値、溶接電圧出力平均値、ワイヤ送給速度、短絡回数、送給モータ電流、および溶接エラーが図1のRAM106に記録される。この記録処理は図1のCPU103が行う。
【0026】
この時の記録されるフォーマット例を図4に示す。ここで図4の番号1の部分が、図2の401の溶接条件命令が実行されたときの履歴情報を示しており、プログラム名としてProg0001.prgが記録され、教示点名はP2が記録されている。さらに教示点名P2の時の溶接条件が続いて記録されており、溶接電流指令値は、図2の401の溶接条件命令にて指令されている電流指令値120A(アンペア)が記録され、溶接電圧指令値は図2の401の溶接条件命令にて指令されている電圧指令値18.0V(ボルト)が記録されている。
【0027】
さらに、図1の電流/電圧検出部122にて検出された実際の溶接電流値122A(アンペア)が溶接電流出力平均値として記録され、図1の電流/電圧検出部122にて検出された実際の溶接電圧値18.1V(ボルト)が溶接電圧出力平均値として記録される。また、図1の溶接出力/送給モータ制御部121でのワイヤ送給速度値2.8m/minがワイヤ送給速度として記録され、図1の電流/電圧検出部122にて検出された実際の短絡回数値80回が短絡回数として記録され、図1の溶接出力/送給モータ制御部121での送給モータ電流値2.0A(アンペア)が送給モータ電流として記録される。そして、溶接エラーは発生していないので「なし」が記録される。
【0028】
次に図4の番号2の部分が、図2の404の溶接条件命令が実行されたときの履歴情報を示す。これも図4の番号1の時と同様、プログラム名はProg0001.prgが記録され、溶接箇所(教示点名)P3が記録される。そして以降も同様にして、図2の403の溶接条件命令で指令されている溶接電流指令値には140A(アンペア)が記録され、溶接電圧指令値には同命令で指令されている電圧指令値20.0V(ボルト)が記録される。また溶接箇所(教示点名)P2の時と同様、図1の電流/電圧検出部122および溶接出力/送給モータ制御部121によって各値が検出され、溶接電流出力平均値は、実際の溶接電流値140A(アンペア)が記録され、溶接電圧出力平均値は実際の溶接電圧値21.0V(ボルト)が記録され、ワイヤ送給速度はワイヤ送給速度値3.0m/minが記録され、短絡回数は実際の短絡回数値100回が記録され、送給モータ電流は送給モータ電流値2.5A(アンペア)が記録され、溶接エラーは発生していないので「なし」が記録されている。
【0029】
次に図2の405のアークON/OFFするための命令が実行されると、図3の処理フローにおいて、処理304でアークOFFと判定され溶接終了する。なお図3の処理フローにおける各処理は図1のCPU103が行う。
【0030】
このように溶接条件命令の実行すなわち溶接条件の変更を行うたびに、動作プログラム名、溶接箇所(教示点名)、溶接電流指令値、溶接電流出力平均値、溶接電圧指令値、溶接電圧出力平均値、ワイヤ送給速度、短絡回数、送給モータ電流、および溶接エラーを図1のRAM106に記録する。すなわち、動作プログラム実行時のプログラム名、溶接箇所、計測データのうち少なくとも1つを履歴情報として保存する保存手段を備えるアーク溶接ロボットを実現することができる。
次に、所定期間中の、溶接電流出力平均値、溶接電圧出力平均値、短絡回数、送給モータ電流のうち少なくとも1つが予め設定した所定範囲かどうかを判定するための設定を行う
設定画面の例を図5に示す。
【0031】
図5の設定画面において、たとえば602の溶接電流の所定範囲設定は、溶接電流出力平均値が溶接電流指令値に対して±10A(アンペア)の範囲を超えたときに溶接電流が所定範囲を逸脱したと判定するものである。その判定の例を図6(a)(b)に示す。
図6(a)の番号1の履歴では、溶接電流指令値が120A(アンペア)であり、許容される出力電流値の上下限界値は図5の602で設定しているように±10A(アンペア)である。これに対し、検出した溶接電流出力平均値が131A(アンペア)であるので、許容できる所定範囲を逸脱したと判定し、図6(b)に示すように電流逸脱の欄に「あり」と履歴が示される。
なお、図6(a)(b)における共通の番号は同一の履歴を示す。以降の図においても同様である。
【0032】
さらに溶接電流出力の検出は図1の電流/電圧検出部122で行い、所定範囲を逸脱したかどうかの判定はCPU103が行う。
【0033】
同様に、図5の設定画面の603の溶接電圧の所定範囲設定では、溶接電圧出力平均値が溶接電圧指令値に対して±1.0V(ボルト)の範囲を超えたときに溶接電圧が許容できる所定範囲を逸脱したと判定する。その判定の例を図6(a)(b)に示す。図6(a)の番号2の履歴では、溶接電圧指令値が20.0V(ボルト)であり、溶接電圧出力平均値が22.2V(ボルト)であるので、所定範囲を逸脱したと判定し、図6(b)の番号2に電圧逸脱が「あり」の履歴が残る。なお溶接電圧出力の検出は図1の電流/電圧検出部122で行い、所定範囲を逸脱したかどうかの判定はCPU103が行う。
【0034】
同様に、図5の設定画面の604の短絡回数の所定範囲設定では、短絡回数が70回から140回の範囲を超えたときに短絡回数が所定範囲を逸脱したと判定する。その判定の例を図6(a)(b)に示す。図6(a)の番号3の履歴では、短絡回数が60回であるので、許容する所定範囲を逸脱したと判定し、図6(b)に短絡回数が「あり」の履歴が残される。なお短絡回数の検出は図1の電流/電圧検出部122で行い、所定範囲を逸脱したかの判定はCPU103が行う。
【0035】
また、図5の設定画面の605のモータ電流の所定範囲設定では、モータ電流が3.0A(アンペア)以上となったときにモータ電流が所定範囲を逸脱したと判定する。その判定の例を図6(a)(b)に示す。図6(a)の番号4の履歴では、モータ電流が3.1A(アンペア)であるので、所定範囲を逸脱したと判定し、図6(b)にモータ電流が「あり」の履歴が残される。なおモータ電流の検出は図1の溶接出力/送給モータ制御部121で行い、所定範囲を逸脱したかの判定はCPU103が行う。
【0036】
以上のような予め設定した所定範囲かどうかを判定する機能は、汎用的な計測器では実現できないが、本実施の形態において、動作プログラム実行時のプログラム名、溶接箇所、計測データのうち少なくとも1つを履歴情報として保存する保存手段を備え、計測データは、所定期間中の、溶接電流出力平均値、溶接電圧出力平均値、短絡回数、送給モータ電流のうち少なくとも1つが予め設定した所定範囲かどうかを判定した判定結果を含むアーク溶接ロボットを実現することにより、異常な結果となった箇所だけを抽出することができる。
【0037】
また、図5の設定画面において601は履歴タイミング設定表示部を示し、本実施の形態においては、履歴情報を保存するタイミングを、すべての溶接条件変更時または異常発生時のいずれかから選択可能とすることができるようにしており、履歴タイミング設定表示部601でその選択状態を示すようにしている。
【0038】
ここで履歴タイミング設定としてすべての溶接条件変更時を選択したときの例を図7(a)(b)に示す。図7(a)の番号1の履歴では、教示点P2での履歴として、溶接電流出力平均値が所定範囲を逸脱したと判定し、図7(b)で電流逸脱が「あり」の履歴が残される。また番号2の履歴では、教示点P3での履歴として、溶接電圧出力平均値が所定範囲を逸脱したと判定し、図7(b)で電圧逸脱が「あり」の履歴が残される。次に図7(a)の番号3および4の履歴では、教示点P4の履歴として、所定範囲の逸脱もしておらず、溶接エラーも発生していないが、履歴タイミング設定としてすべての溶接条件変更時を選択しているので履歴が残される。次に番号5および6の履歴では、教示点P6およびP7の履歴として、所定範囲の逸脱は発生していないが、溶接エラーが発生しているので履歴が残されている。
【0039】
次に履歴タイミング設定として異常発生時を選択したときの例を図8(a)(b)に示す。図8(a)の番号1の履歴では、教示点P2の履歴として、溶接電流出力平均値が所定範囲を逸脱したと判定し、図8(b)の番号1に電流逸脱が「あり」と履歴が残される。
【0040】
また番号2の履歴では、教示点P3での履歴として、溶接電圧出力平均値が所定範囲を逸脱したと判定し、電圧逸脱が「あり」と履歴が残される。次に教示点P4およびP5の履歴として、所定範囲の逸脱もしておらず、溶接エラーも発生しておらず、履歴タイミング設定として異常発生時を選択しているので図8(a)(b)とも履歴が残されない。
【0041】
次に番号3および4の履歴では、教示点P6およびP7の履歴として、所定範囲の逸脱は発生していないが、溶接エラーが発生しているので履歴が残される。また、番号4の履歴では、教示点P7の履歴として、所定範囲の逸脱は発生していないが、溶接エラーが発生しているので履歴が残されている。
【0042】
以上のように、保存手段が履歴情報を保存するタイミングは、すべての溶接条件変更時または異常発生時のいずれかから選択可能とすることにより、すべての溶接条件変更時を選択したときは、全溶接数に対する異常発生数の割合を算出することが可能であり、また異常発生時を選択したときは、異常発生数のみをカウントすることができるとともに履歴するデータ数が全溶接を選択したときより少なくなるため、データの保存、加工などが容易となる。
【0043】
また、図5の設定画面において606は履歴保存ボタンであり、このボタンの選択により、保存した履歴情報を外部メモリに転送する。すなわち、この履歴保存ボタン606を選択することにより、図1のRAM106に記録されている履歴情報がCPU103およびティーチペンダント108を経由して外部メモリ109に送信され、外部メモリ109に記録される。この外部メモリ109は市販されているメモリカードやフレキシブルディスクなどであり特別に媒体は問わない。
【0044】
このようにすることで、ロボットを使用する作業者や、生産ライン全体を管理する管理者などが外部メモリに記録された履歴情報をパソコンなどで取り出し、市販の表計算ソフトウェアなどで統計処理やグラフ表示などを行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、予め教示された動作プログラムによって所定の動作パターンで動作し、前記動作パターンに応じて所定の溶接条件で被溶接物を溶接するアーク溶接ロボットであって、前記動作プログラム実行時のプログラム名、溶接箇所、計測データのうち少なくとも1つを履歴情報として保存する保存手段を備えるアーク溶接ロボットを実現することにより
、溶接品質管理に必要なデータを収集することができ、自動車業界や建設業界における溶接品質管理などに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】(a)本発明の実施の形態1におけるアーク溶接ロボットの構成図(b)溶接部の内部構成を示す図
【図2】動作プログラムの実施例を示す図
【図3】本発明の実施の形態1におけるアーク溶接ロボットの処理フローを示す図
【図4】履歴情報の第1の実施例を示す図
【図5】設定画面の実施例を示す図
【図6】(a)履歴情報の第2の実施例における第1の図(b)履歴情報の第2の実施例における第2の図
【図7】(a)履歴タイミング設定がすべての溶接条件変更時のときの履歴情報の実施例における第1の図(b)同第2の図
【図8】(a)履歴タイミング設定が異常発生時のときの履歴情報の実施例における第1の図 (b)同第2の図
【図9】従来よりある汎用計測ロガー器を使用して計測した時の構成図
【符号の説明】
【0047】
106 外部メモリ(RAM)
109 外部メモリ
202 溶接箇所(教示点名)
207 動作プログラム名
606 履歴保存ボタン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め教示された動作プログラムによって所定の動作パターンで動作し、前記動作パターン中の各所定期間に予め設定された所定の溶接条件で被溶接物を溶接するアーク溶接ロボットであって、前記動作プログラム実行時のプログラム名、溶接箇所、計測データのうち少なくとも1つを履歴情報として保存する保存手段を備えるアーク溶接ロボット。
【請求項2】
予め教示された動作プログラムによって所定の動作パターンで動作し、前記動作パターン中の各所定期間に予め設定された所定の溶接条件で被溶接物を溶接するアーク溶接ロボットであって、少なくとも計測データを履歴情報として保存する保存手段を備え、前記計測データは、所定期間中の、溶接電流指令値、溶接電流出力平均値、溶接電圧指令値、溶接電圧出力平均値、ワイヤ送給速度、短絡回数、送給モータ電流、および溶接エラーデータのうち少なくとも1つを含むアーク溶接ロボット。
【請求項3】
予め教示された動作プログラムによって所定の動作パターンで動作し、前記動作パターン中の各所定期間に予め設定された所定の溶接条件で被溶接物を溶接するアーク溶接ロボットであって、少なくとも計測データを履歴情報として保存する保存手段を備え、前記計測データは、所定期間中の、溶接電流出力平均値、溶接電圧出力平均値、短絡回数、送給モータ電流のうち少なくとも1つが予め設定した所定範囲かどうかを判定した判定結果を含むアーク溶接ロボット。
【請求項4】
予め教示された動作プログラムによって所定の動作パターンで動作し、前記動作パターン中の各所定期間に予め設定された所定の溶接条件で被溶接物を溶接するアーク溶接ロボットであって、前記動作プログラム実行時のプログラム名、溶接箇所、計測データのうち少なくとも1つを履歴情報として保存する保存手段を備え、保存手段が履歴情報を保存するタイミングは、すべての溶接条件変更時または異常発生時のいずれかから選択可能としたアーク溶接ロボット。
【請求項5】
予め教示された動作プログラムによって所定の動作パターンで動作し、前記動作パターン中の各所定期間に予め設定された所定の溶接条件で被溶接物を溶接するアーク溶接ロボットであって、前記動作プログラム実行時のプログラム名、溶接箇所、計測データのうち少なくとも1つを履歴情報として保存する保存手段を備え、保存した履歴情報を外部メモリに転送することを可能としたアーク溶接ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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