説明

アーバ、アーバと切削ヘッドとの締結方法及び切削ヘッド交換式工具

【課題】アーバの把持部の外周面の先端縁から切削ヘッドまでの距離、いわゆる切削ヘッドの突き出し長さを短くして、剛性を向上させることができるアーバを提供する。
【解決手段】工作機械の主軸端に着脱可能に取り付けられて切削ヘッドを保持するアーバ20であって、軸線Lに沿って延びる筒状をなして前記主軸端に取り付けられる取付部24と、取付部24よりも外周側に向けて大きく張り出した把持部21と、把持部21の先端側に位置して前記切削ヘッドを着脱可能に装着するヘッド保持部31とを有し、ヘッド保持部31には、軸線Lに沿って基端側に向けて延びる装着孔28が形成され、この装着孔28には、前記切削ヘッドを螺着するための雌ネジ部30が把持部21の外周面21Cの先端縁よりも基端側部分にまで形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の主軸端に着脱可能に取り付けられて切削ヘッドを保持するアーバ、このアーバと切削ヘッドとの締結方法、及び、前記アーバと前記切削ヘッドとが締結されてなる切削ヘッド交換式工具に関するものであり、特に、自動ツール交換システム(ATC)を備えた工作機械に最適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、前述のアーバとしては、例えば特許文献1に記載されているように、軸線に沿って延びる概略多段円筒状をなし、工作機械の主軸端に取り付けられる取付部と、この取付部の先端側に位置してフランジ状に外周側に向けて大きく張り出したATCの交換アームに把持される把持部と、この把持部の先端面から先端側に向けて突出した装着筒部とを備えたものが提供されている。
また、特許文献2には、切削ヘッドに、基端側に向けて突出する装着軸部が設けられ、この装着軸部をシャンク部の先端に設けられた装着孔に螺着することで、シャンク部と切削ヘッドとを締結する切削ヘッド交換式工具が提供されている。
【特許文献1】特開2005−305618号公報
【特許文献2】特開2005−14205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1記載のアーバの装着筒部に特許文献2記載の前記装着孔を形成して前述の切削ヘッドを着脱可能に装着することにより、ATCを備えた工作機械に適用することが可能な切削ヘッド交換式工具を構成しようとすると、アーバにおいては、把持部から突出した装着筒部内に切削ヘッドを螺着させるための雌ネジ部が形成されることになるので、雌ネジ部の長さを確保するために装着筒部の長さを短くすることは困難となる。
そして、この装着筒部の先端に特許文献2記載の切削ヘッドが装着されることになるので、そのような切削ヘッド交換式工具では、把持部の外周面の先端縁から切削ヘッドまでの距離、いわゆる切削ヘッドの突き出し長さが長くなってしまう。
また、装着筒部に雌ネジ部が設けられているので、肉厚の薄い部分で切削ヘッドを保持することになり切削ヘッドを強固に保持することができず、また、装着軸部自体の剛性も低下してしまう。
【0004】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、把持部の外周面の先端縁から切削ヘッドまでの距離、いわゆる切削ヘッドの突き出し長さを短くして、剛性を向上させることができるアーバ、アーバと切削ヘッドとの締結方法及び切削ヘッド交換式工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するために、本発明のアーバは、工作機械の主軸端に着脱可能に取り付けられて切削ヘッドを保持するアーバであって、軸線に沿って延びる筒状をなして前記主軸端に取り付けられる取付部と、該取付部の先端側に位置して前記取付部よりも外周側に向けて大きく張り出した把持部と、該把持部の先端側に前記切削ヘッドを着脱可能に装着するヘッド保持部とを有し、前記ヘッド保持部には、前記軸線に沿って基端側に向けて延びる装着孔が形成され、この装着孔には、前記切削ヘッドを螺着するための雌ネジ部が前記把持部の外周面の先端縁よりも基端側部分にまで形成されていることを特徴としている。
【0006】
また、本発明のアーバと切削ヘッドとの締結方法は、前述のアーバと切削ヘッドとの締結方法であって、前記切削ヘッドは、ヘッド本体と該ヘッド本体の基端面から基端側に向けて突出した装着軸部とを有し、この装着軸部の外周面に雄ネジ部が設けられており、前記装着軸部を前記アーバの前記装着孔内に挿入して、前記雌ネジ部と前記雄ネジ部とを螺合することを特徴としている。
【0007】
さらに、本発明の切削ヘッド交換式工具は、前述のアーバと前記切削ヘッドとが締結されて構成される切削ヘッド交換式工具であって、前記切削ヘッドは、ヘッド本体と該ヘッド本体の基端面から基端側に向けて突出した装着軸部とを有し、この装着軸部の外周面に雄ネジ部が設けられており、前記装着軸部が前記アーバの前記装着孔内に挿入され、前記雌ネジ部と前記雄ネジ部とが螺合されていることを特徴と前記切削ヘッドとが締結されて構成されていることを特徴としている。
【0008】
この構成のアーバ、アーバと切削ヘッドとの締結方法及び切削ヘッド交換式工具によれば、ヘッド保持部に、前記軸線に沿って基端側に向ける装着孔が形成され、この装着孔に、前記把持部の外周面の先端縁よりも基端側部分にまで前記切削ヘッドを螺着するための雌ネジ部が形成されているので、切削ヘッドの突き出し長さを短くすることができ、この切削ヘッド交換式工具の剛性を向上させることができる。
【0009】
さらに、外周側に向けて大きく張り出した把持部に雌ネジ部を設けているので、肉厚の厚い部分で切削ヘッドを保持することになり、切削ヘッドを強固に保持することができるとともに、アーバの剛性の向上を図ることができる。
また、切削ヘッドの装着軸部の基端面が前記把持部の外周面の先端縁よりも基端側に位置することになり、把持部に設けた装着孔に装着軸部が入り込むことで切削ヘッド交換式工具の剛性をさらに向上させることができる。
このように剛性が向上されるので、この切削ヘッド交換式工具の送りを大きくした高送り加工を行うことが可能となり、効率の良い加工を行うことができる。
【0010】
ここで、前記ヘッド保持部を、前記把持部の先端面から先端側に向けて突出する装着筒部を有するものとし、前記装着孔をこの装着筒部の先端面に開口するように形成するとともに、この装着筒部の前記把持部の外周面の先端縁からの突出長さHを、前記把持部の外径Dに対して、H≦0.5×Dに設定してもよい。
この場合、把持部の先端面から突出した装着筒部の突出長さHが把持部の外径Dに対してH≦0.5×Dとなるように構成されているので、この装着筒部の先端に装着された切削ヘッドの突き出し長さを確実に短くすることができる。
【0011】
また、前記装着孔を、前記把持部の先端面に開口するように形成してもよい。
この場合、装着筒部が設けられていないために、切削ヘッドの突き出し長さを短くすることができる。さらに、アーバの形状が簡単となり、このアーバを低コストで製作することができる。
【0012】
また、前記把持部の先端面に、基端側に向けて凹んだ収容凹部を設けて、前記装着孔を、この収容凹部の底面に開口するように形成してもよい。
この場合、切削ヘッドの装着軸部を装着孔に挿入するとともにヘッド本体の基端部分を収容凹部内に収容することができ、切削ヘッドの突き出し長さをさらに短くすることができる。また、ヘッド本体の基端部分と収容凹部との嵌合によって、この切削ヘッドの位置ずれを防止することができる。
【0013】
さらに、前記把持部の先端面を、径方向内側に向かうにしたがい漸次先端側に突出するようなテーパ形状としてもよい。
この場合、アーバの先端部分の肉厚を厚くして剛性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、把持部の外周面の先端縁から切削ヘッドまでの距離、いわゆる切削ヘッドの突き出し長さを短くして、剛性を向上させることができるアーバ、アーバと切削ヘッドとの締結方法及び切削ヘッド交換式工具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態について添付した図面を参照して説明する。図1及び図2に本実施形態であるアーバを、図3に切削ヘッドを備えた切削ヘッド交換式工具を示す。
図3に示す切削ヘッド交換式工具10は、工作機械Mの主軸端に取り付けられるアーバ20と、このアーバ20に着脱可能に装着される切削ヘッド40とを備えている。
【0016】
アーバ20は、図1に示すように、軸線Lに沿って延びる概略多段円筒状をなしており、軸線Lを中心として径方向外側に向けて突出した把持部21を備えている。この把持部21の軸線L方向中央部分には、外周面から径方向内側に向けて凹んだ環状溝22が形成されている。また、把持部21の環状溝22よりも基端側(図1において右上側、図2において右側)部分には、軸線Lに沿って切り欠かれた一対の切欠凹部23が軸線Lを中心として180°回転対称に設けられている。
【0017】
この把持部21の基端面21Aの中央部分には、工作機械Mの主軸端に取り付けられる取付部24が軸線Lに沿って基端側に向けて延びるように設けられている。この取付部24は、基端側に向かうにしたがい漸次径が小さくなるようなテーパ状に構成されている。また、この取付部24には、図2に示すように、取付部24の基端面24Aに開口して軸線Lに沿って延びる取付孔25が穿設されている。この取付孔25の一部が、工作機械Mの主軸端に取り付けるためのスタッドボルト11を螺着するためのネジ孔26とされている。
なお、本実施形態におけるアーバ20は、いわゆるBT形式の工作機械Mに対応したものであり、把持部21及び取付部24の形状、サイズは規格によって定められている。
【0018】
把持部21の先端面21Bは、軸線Lに直交する方向に延びるように構成されており、この先端面21Bの中央部分から軸線Lに沿って先端側に向けて突出する装着筒部27が形成されている。本実施形態では、装着筒部27が外径が一定とされた円筒状をなしている。
ここで、把持部21の外周面21Cの先端縁(本実施形態では先端面21B)からの装着筒部27の突出長さHは、把持部21の直径Dに対して、H≦0.5×Dとされていて、本実施形態では、H=0.217×Dとされている。
また、環状をなす装着筒部27の先端面27Bは、軸線Lに直交する平坦面とされていて研磨加工が施されており、その表面が滑らかに仕上げられている。
【0019】
また、この装着筒部27には、軸線Lに沿って延びる装着孔28が前記把持部21の外周面21Cの先端縁よりも基端側にまで達するように穿設されている。ここで、本実施形態では、図2に示すように、装着孔28が前記取付孔25の先端にまで達するように形成されており、装着孔28と取付孔25とが連通されている。
この装着孔28の先端側には、装着筒部27の先端面27Bに開口して一定の内径で基端側に延びる円形孔29が形成されている。
【0020】
そして、装着孔28の前記円形孔29よりも基端側には、僅かに内径の大きなヌスミ部を介して、円形孔29よりも径の小さな雌ネジ部30が、把持部21の外周面21Cの先端縁よりも基端側にまで達するように形成されている。本実施形態では、雌ネジ部30の先端と前記把持部21の外周面21Cの先端縁との軸線L方向位置が同一とされていて、雌ネジ部30すべてが把持部21内に設けられており、これら装着筒部27、装着孔28の円形孔29及び雌ネジ部30が、ヘッド保持部31を構成している。
【0021】
切削ヘッド40は、図3に示すように、装着筒部27と略同径の概略円柱状をなすヘッド本体41と、このヘッド本体41の基端面41Aの中央部分から基端側に向けて延びる装着軸部46と、を備えている。
ヘッド本体41は、先端側及び径方向外側に向けて開口したチップポケット42と、該チップポケット42から基端側に向かうにしたがい漸次工具回転方向T後方側に向けてねじれる切屑排出溝43と、前記チップポケット42の工具回転方向T後方側の壁面に形成された取付座44と、を備えている。なお、本実施形態では、これらチップポケット42、切屑排出溝43、取付座44がそれぞれ一対ずつ軸線Lを中心として180°回転対称となるように配置されている。
【0022】
この取付座44には、切刃52を備えたインサート51が着脱可能に装着される。本実施形態では、図3に示すように、一対の取付座44にそれぞれ、インサート51の切刃52が切削ヘッド40の先端側及び外周側を向くように装着されており、この切削ヘッド40はいわゆる2枚刃のエンドミルを構成するものである。
また、ヘッド本体41の外周面のうち一対の切屑排出溝43同士の間には、面取部45が形成されている。
【0023】
ヘッド本体41の基端面41Aは、軸線Lに直交するように形成されており、その中央部分から基端側に向けて延びるように装着軸部46が設けられている。この装着軸部46には、ヘッド本体41側に前記円形孔29に嵌合可能な外径を有する円柱部47が形成されるとともに、この円柱部47の基端側に前記雌ネジ部30に螺合可能な雄ネジ部48が形成されている。
なお、この切削ヘッド40には、装着軸部46の基端面に開口してヘッド本体41の内部にまで達するクーラント供給孔49と、このクーラント供給孔49から前記取付座44に向けて延びる吐出孔50とが穿設されている。
【0024】
このような構成とされたアーバ20と切削ヘッド40とが、以下のようにして締結されて図3に示す切削ヘッド交換式工具10が構成される。
アーバ20の装着孔28に切削ヘッド40の装着軸部46が挿入され、円形孔29に円柱部47が嵌合されるとともに前記雌ネジ部30に前記雄ネジ部48が螺合される。これにより、装着軸部46は把持部21の外周面21Cの先端縁よりも基端側に位置することになる。そして、ヘッド本体41の基端面41Aと装着筒部27の先端面27Bとが互いに当接されて密着し、アーバ20と切削ヘッド40とが締結される。
【0025】
この切削ヘッド交換式工具10は、アーバ20の基端側に設けられた取付孔25にスタットボルト11が螺着され、このスタットボルト11を介して工作機械Mの主軸端に引き込まれることにより、前記取付部24の外周面が主軸端の内周孔のテーパ面と密着して図4に示すように、主軸端に取り付けられる。なお、このとき前記切欠凹部23には、主軸端に設けられた凸部が嵌合する。
【0026】
そして、前記主軸端が回転されることにより切削ヘッド交換式工具10も軸線Lを中心として工具回転方向Tに向けて回転され、さらに送りを与えられることで、切削ヘッド40の先端側及び外周側に向けられたインサート51の切刃52によって被切削材を切削するものである。この切削加工の際には、工作機械Mから取付孔25及び装着孔28を通じて供給されたクーラントが、装着軸部46の基端面に開口したクーラント供給孔49及び吐出孔50を介して切刃52に向けて吐出される。
【0027】
この構成のアーバ20と切削ヘッド40とが締結されてなる切削ヘッド交換式工具10によれば、装着筒部27に、軸線Lに沿って基端側に向けて延びて把持部21の外周面21Cの先端縁よりも基端側にまで達する装着孔28が形成され、この装着孔28のうち把持部21の外周面21Cの先端縁よりも基端側部分に切削ヘッド40の装着軸部46を螺着するための雌ネジ部30が形成されているので、装着筒部27の突出長さを短くしても切削ヘッド40を確実に締結することができる。これにより、切削ヘッド40の突き出し長さを短くして切削ヘッド交換式工具10の剛性を向上させることができる。
【0028】
さらに、外周側に向けて大きく張り出した把持部21に雌ネジ部30を設けているので、肉厚の厚い部分で雄ネジ部48を締結して切削ヘッド40を保持することになり、切削ヘッド40を強固に保持してその取付剛性の向上を図ることができる。
また、切削ヘッド40の装着軸部46の基端面が把持部21の外周面21Cの先端縁よりも基端側に位置することになり、把持部21にまで達するように設けた装着孔29に装着軸部46が入り込むことで切削ヘッド交換式工具10の剛性をさらに向上させることができる。
【0029】
さらに、ヘッド保持部31を、把持部21の先端面21Bから先端側に向けて突出する装着筒部27を有するものとしても、この装着筒部27の把持部21の外周面21Cの先端縁(先端面21B)からの突出長さHが、把持部21の直径Dに対して、H≦0.5×Dとされ、本実施形態ではH=0.217×Dとされているので、この装着筒部27の先端に装着された切削ヘッド40の突き出し長さを短くすることができる。
また、切削ヘッド交換式工具10の剛性が十分に向上されるので、切削ヘッド交換式工具10の送り量を大きくした高送り加工を行うことが可能となり、効率の良い加工を行うことができる。
【0030】
次に、本発明の第2の実施形態であるアーバ20について説明する。図5に、本発明の第2の実施形態であるアーバ20を備えた切削ヘッド交換式工具10を示す。なお、第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
このアーバ20は、装着筒部27が形成されておらず、把持部21の先端面21Bが全体にわたって軸線Lに直交する平坦面とされ、この先端面21Bの中央に装着孔28が開口するように穿設されている。つまり、把持部21の外周面21Cの先端縁からの装着筒部27の突出長さHがH=0とされたものである。これら先端面21、装着孔28の円形孔29及び雌ネジ部30により、ヘッド保持部31が構成されている。
【0031】
この構成のアーバ20を備えた切削ヘッド交換式工具10においては、切削ヘッド40の突き出し長さがさらに短くなり、切削ヘッド交換式工具10の剛性を確実に向上させることができる。また、アーバ20の形状が簡単となり、このアーバ20を低コストで製作することができる。
【0032】
次に、本発明の第3の実施形態であるアーバ20について説明する。図6に、本発明の第3の実施形態であるアーバ20を備えた切削ヘッド交換式工具10を示す。なお、第1、第2の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
このアーバ20は、把持部21の先端面21Bに基端側に向けて凹んだ収容凹部32が設けられ、この収容凹部32の底面32Aに装着孔28が穿設されている。ここで、収容凹部32は、軸線Lに直交する断面が装着孔28より大径の軸線Lを中心とした円形をなしており、その底面32Aは軸線Lに直交させられている。また、装着孔28には、円形孔29は形成されておらず直接雌ネジ部30が形成されている。これら収容凹部32、装着孔28の雌ネジ部30により、ヘッド保持部31が構成されている。
【0033】
また、切削ヘッド40のヘッド本体41の基端側部分は、前記収容凹部32に嵌合可能な外形の円柱状をなしており、このヘッド本体41の基端面から延びる装着軸部46には、円柱部47が形成されずに雄ネジ部48が形成されている。
【0034】
この構成のアーバ20を備えた切削ヘッド交換式工具10においては、切削ヘッド40の装着軸部46を装着孔28に挿入するとともにヘッド本体41の基端部分を収容凹部32内に収容することができ、取付剛性をさらに向上させることができる。また、ヘッド本体41の基端部分と収容凹部32との嵌合によって、この切削ヘッド40の位置ずれを確実に防止することができる。
【0035】
次に、本発明の第4の実施形態であるアーバ20について説明する。図7に、本発明の第4の実施形態であるアーバ20を備えた切削ヘッド交換式工具10を示す。なお、第1〜第3の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
このアーバ20は、把持部21の先端面21Bが、その外周縁から径方向内側に向かうにしたがい漸次先端側に突出する軸線L方向に偏平した円錐台状とされ、この先端面21Bの中央部分からさらに先端側に向けて突出する装着筒部27が設けられている。
この構成のアーバ20を備えた切削ヘッド交換式工具10においては、アーバ20先端部の肉厚を厚くすることができ、アーバ20の剛性を向上させることができる。また、肉厚の厚い部分で切削ヘッド40を保持することになり、切削ヘッド40をより強固に保持することができる。
【0036】
次に、本発明の第5の実施形態であるアーバ20について説明する。図8に、本発明の第5の実施形態であるアーバ20を備えた切削ヘッド交換式工具10を示す。なお、第1〜第4の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
このアーバ20は、把持部21の先端面が径方向内側に向かうにしたがい漸次先端側に突出するようなテーパ形状とされ、この先端面の中央部分に装着孔28が穿設されている。なお、装着孔28の開口部の周囲は軸線Lに直交する円環状の平坦面とされている。
この構成のアーバ20を備えた切削ヘッド交換式工具10においては、アーバ20先端部の肉厚を厚くすることができ、アーバ20の剛性を向上させることができるとともに切削ヘッド40の突き出し長さを短くすることができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、工作機械Mの主軸端への取付部24をテーパ状に形成したいわゆるBT形式のアーバ20として説明したが、これに限定されることはなく、図9及び図10に示すように取付部24の内部にアダプタを挿入するためのアダプタ孔12を形成したいわゆるHSK形式のアーバ20やその他の形式のアーバ20であってもよい。
【0038】
また、装着筒部の形状は、外径が一定な円柱状に限定されることはなく、先端側に向かうにしたがい縮径する円錐台状でもよいし、装着筒部の側壁が凹曲面状をなすように構成されていてもよい。
さらに、把持部の先端面の形状は、本実施形態に限定されることはなく、装着孔を穿設できる形状であればよい。例えば、多段状に先端側に突出されていてもよいし、軸線に沿った断面の稜線が凸曲線状、凹曲線状をなしていてもよい。
【0039】
また、切削ヘッドを、2つのインサートを備えた、いわゆる2枚刃エンドミルとして説明したが、これに限定されることはなく、切削ヘッドに設けられる切刃の形状、配置、枚数等は適宜設定することができる。また、インサートでなく切刃をろう付け等したものであってもよい。
さらに、前記切削ヘッドに装着されるインサートの切刃の軸線方向長さを長くしてもよい。本実施形態のアーバにおいてはその剛性が向上されているので、切刃の切り込み深さを深くすることができ、インサートの切刃を有効に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施形態であるアーバの斜視図である。
【図2】図1に示すアーバの断面図である。
【図3】図1に示すアーバを備えた切削ヘッド交換式工具の側面部分断面図である。
【図4】図3に示す切削ヘッド交換式工具を工作機械の主軸端に装着した状態を示す説明図である。
【図5】本発明の第2の実施形態であるアーバを備えた切削ヘッド交換式工具の側面部分断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態であるアーバを備えた切削ヘッド交換式工具の側面部分断面図である。
【図7】本発明の第4の実施形態であるアーバを備えた切削ヘッド交換式工具の側面部分断面図である。
【図8】本発明の第5の実施形態であるアーバを備えた切削ヘッド交換式工具の側面部分断面図である。
【図9】本発明の他の実施形態であるアーバを備えた切削ヘッド交換式工具の側面部分断面図である。
【図10】本発明の他の実施形態であるアーバを備えた切削ヘッド交換式工具の側面部分断面図である。
【符号の説明】
【0041】
10 切削ヘッド交換式工具
20 アーバ
21 把持部
21B 先端面
21C 外周面
24 取付部
27 装着筒部
28 装着孔
30 雌ネジ部
31 ヘッド保持部
32 収容凹部
40 切削ヘッド
41 ヘッド本体
46 装着軸部
48 雄ネジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の主軸端に着脱可能に取り付けられて切削ヘッドを保持するアーバであって、
軸線に沿って延びる筒状をなして前記主軸端に取り付けられる取付部と、該取付部の先端側に位置して前記取付部よりも外周側に向けて大きく張り出した把持部と、該把持部の先端側に前記切削ヘッドを着脱可能に装着するヘッド保持部とを有し、
前記ヘッド保持部には、前記軸線に沿って基端側に向けて延びる装着孔が形成され、この装着孔には、前記切削ヘッドを螺着するための雌ネジ部が前記把持部の外周面の先端縁よりも基端側部分にまで形成されていることを特徴とするアーバ。
【請求項2】
前記ヘッド保持部は、前記把持部の先端面からさらに先端側に向けて突出する装着筒部を有し、前記装着孔はこの装着筒部の先端面に開口するように形成されているとともに、前記装着筒部の前記把持部の外周面の先端縁からの突出長さHが、前記把持部の外径Dに対して、H≦0.5×Dの範囲内に設定されていることを特徴とする請求項1に記載のアーバ。
【請求項3】
前記装着孔は、前記把持部の先端面に開口するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のアーバ。
【請求項4】
前記把持部の先端面には、基端側に向けて凹んだ収容凹部が設けられており、前記装着孔は、この収容凹部の底面に開口するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のアーバ。
【請求項5】
前記把持部の先端面が、径方向内側に向かうにしたがい漸次先端側に突出するようなテーパ形状とされていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のアーバ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のアーバと前記切削ヘッドとの締結方法であって、
前記切削ヘッドは、ヘッド本体と該ヘッド本体の基端面から基端側に向けて突出した装着軸部とを有し、この装着軸部の外周面に雄ネジ部が設けられており、
前記装着軸部を前記アーバの前記装着孔内に挿入して、前記雌ネジ部と前記雄ネジ部とを螺合することを特徴とするアーバと切削ヘッドとの締結方法。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のアーバと前記切削ヘッドとが締結されて構成される切削ヘッド交換式工具であって、
前記切削ヘッドは、ヘッド本体と該ヘッド本体の基端面から基端側に向けて突出した装着軸部とを有し、この装着軸部の外周面に雄ネジ部が設けられており、
前記装着軸部が前記アーバの前記装着孔内に挿入され、前記雌ネジ部と前記雄ネジ部とが螺合されていることを特徴とする切削ヘッド交換式工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−110417(P2008−110417A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−293884(P2006−293884)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】