アームヘッド
【課題】腐食生成物の進行を遅らせることができ、ひいては早期の外観の悪化を抑えることができるアームヘッドを提供すること。
【解決手段】アームヘッド11は、長手方向の一端部に連結孔11bを有し、その連結孔11bを貫通するリベットを中心としてリテーナが回動可能に連結される。連結孔11bの開口端11cとその開口端11cよりも径方向外側で径方向に延びる外側面11dとの間には、軸方向に沿った断面が凹状で90°の角度をなす2つの面11e,11fが形成される。
【解決手段】アームヘッド11は、長手方向の一端部に連結孔11bを有し、その連結孔11bを貫通するリベットを中心としてリテーナが回動可能に連結される。連結孔11bの開口端11cとその開口端11cよりも径方向外側で径方向に延びる外側面11dとの間には、軸方向に沿った断面が凹状で90°の角度をなす2つの面11e,11fが形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイパアームを構成するアームヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的なワイパアームは、長手方向の先端部に長手方向と直交する方向に貫通する連結孔を有したアームヘッドと、連結孔を貫通する軸部材を中心として回動可能に連結されるリテーナとを備える。このようなワイパアームでは、金属の腐食の発生を防止及び光の反射を防止するように表面に防眩、防錆のための塗装が施される。
【0003】
そして、リテーナは、鋼板がU字状に折り曲げられて成形されるものであり、成形後に内側の面を塗装するのが困難であるため、例えば、予め片面が塗装された鋼板を用い、塗装面が内側となるように折り曲げて、その後、外表面を塗装することで全面を塗装し金属の腐食の発生を抑える技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−501152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、アームヘッドの連結孔は、軸部材が挿入されることなどから、その内面に塗装が施されない。よって、例えば、図14に示すように、アームヘッド101における連結孔102の開口端付近であって塗装皮膜103の切れ目で塗装皮膜103の内側に腐食が発生し(腐食生成物104が生成され)、その腐食生成物104が塗装皮膜103を膨らませながら(剥がしながら)目立つ部分にまで成長しながら進行し、早期に外観が悪化してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、腐食生成物の成長を抑制し進行を遅らせることができ、ひいては早期の外観の悪化を抑えることができるアームヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明では、長手方向の一端部に連結孔を有し、その連結孔を貫通する軸部材を中心としてリテーナが回動可能に連結される表面塗装されたアームヘッドであって、前記連結孔の開口端とその開口端よりも径方向外側で径方向に延びる外側面との間には、軸方向に沿った断面が凹状で180°未満の角度をなす2つの面が形成されたことを要旨とする。
【0008】
同構成によれば、連結孔の開口端とその開口端よりも径方向外側で径方向に延びる外側面との間には、軸方向に沿った断面が凹状で180°未満の角度をなす2つの面が形成されるため、例えば連結孔の開口端付近で塗装皮膜の内側に腐食が発生しても、腐食生成物による塗装皮膜の膨れ(剥がれ)の引き剥がし方向が、2つの面が交差する部位で塗装皮膜の接合面に対し垂直方向に引き剥がす方向から塗装皮膜の接合面に沿って塗装皮膜を圧縮するせん断剥がし方向へと一時的に変わるため、腐食生成物の成長が抑制され進行を遅らせることができる。よって、腐食生成物の進行に基づく塗装皮膜の膨れ(剥がれ)の進行を遅らせることができ、早期の外観の悪化を抑えることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のアームヘッドにおいて、前記2つの面は、90°以下の角度をなすように設定されたことを要旨とする。
同構成によれば、前記2つの面は、90°以下の角度をなすように設定されるため、一方の面に沿って進行してきた腐食生成物は2つの面が交差する部位で大きな塗装皮膜のせん断剥がし方向への力を要することとなる。よって、2つの面が交差する部位での腐食生成物の進行をより遅らせることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載のアームヘッドにおいて、前記2つの面は、鋭角をなすように設定されたことを要旨とする。
同構成によれば、前記2つの面は、鋭角をなすように設定されるため、一方の面に沿って進行してきた腐食生成物にて膨らんだ塗装皮膜が2つの面が交差する部位を越えてさらに成長し進行するためには、他方の面の塗装皮膜をより一層大きなせん断剥がし方向への力を要するため、ひいてはその他方の面の塗装皮膜が更に剥がれ難くなる。よって、2つの面が交差する部位での腐食生成物の進行をより一層遅らせることができる。
【0011】
請求項4に記載の発明では、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアームヘッドにおいて、前記2つの面の内の前記外側面に近い側の面は、前記連結孔の貫通方向に沿った面、又は前記外側面から前記連結孔の貫通方向に延びるほど径方向の前記連結孔側に近づくように傾斜した面とされたことを要旨とする。
【0012】
同構成によれば、前記2つの面の内の前記外側面に近い側の面は、前記連結孔の貫通方向に沿った面、又は前記外側面から前記連結孔の貫通方向に延びるほど径方向の前記連結孔側に近づくように傾斜した面とされるため、その面を成形するための型の抜き方向を、連結孔を成形するための型の抜き方向と同じとすることができる。よって、アームヘッドを少ない型で成形することが可能となる。
【0013】
請求項5に記載の発明では、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアームヘッドにおいて、前記外側面は、前記開口端の周囲に立設される筒状部の頂面であって、その径方向内側の端部と前記連結孔の開口端との間に前記2つの面が形成されるものであることを要旨とする。
【0014】
同構成によれば、前記外側面は、前記開口端の周囲に立設される筒状部の頂面であるため、たとえ腐食生成物が前記2つの面及び外側面を越えて更に筒状部が立設される基面側に進行しようとしても、筒状部の外周面と前記基面とが交差する部位でその進行を遅らせることができる。よって、筒状部の外周面と基面とが交差する部位でも腐食生成物の進行に基づく塗装皮膜の膨れ(剥がれ)の進行を遅らせることができ、早期の外観の悪化を抑えることができる。
【0015】
請求項6に記載の発明では、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のアームヘッドにおいて、前記連結孔の貫通方向端部には前記開口端に向かうほど一定の割合で径が大きくなる拡径部が形成され、該拡径部を含む前記連結孔は陽極酸化処理が施され、前記連結孔には、前記軸部材との間に介在されるブッシュ部材が挿入され、前記ブッシュ部材の挿入方向端部にはその最端に向かうほど一定の割合で径が小さくなる縮径部が形成され、軸方向に沿った断面における前記挿入方向に沿った直線と前記縮径部に沿った直線とが交差する角度は、軸方向に沿った断面における前記貫通方向に沿った直線と前記拡径部に沿った直線とが交差する角度よりも大きく設定され、前記ブッシュ部材の中央部と前記縮径部とは、該縮径部に向かうほど径が小さくなる断面湾曲形状の湾曲部で連結されたことを要旨とする。
【0016】
同構成によれば、ブッシュ部材を連結孔に挿入(圧入)する際に、ブッシュ部材が拡径部に案内されることで、その挿入作業が容易となる。又、その組み付け(挿入)時に陽極酸化処理が施された拡径部を含む連結孔(陽極酸化皮膜)に生じる傷の深さが低減される(図13参照)。これにより、傷から腐食が発生することが抑制され、ひいては傷から発生した腐食生成物が連結孔の開口端、更には塗装皮膜側に進行してしまうことが予防される。その結果、早期の外観の悪化を抑えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、腐食生成物の進行を遅らせることができ、ひいては早期の外観の悪化を抑えることができるアームヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施の形態におけるワイパアームの斜視図。
【図2】本実施の形態におけるアームヘッドとリテーナとの連結部分の断面図。
【図3】本実施の形態におけるアームヘッドの一部拡大斜視図。
【図4】(a)本実施の形態におけるアームヘッドの一部拡大端面図。(b)角部での塗装皮膜の厚さを説明するための一部拡大端面図。
【図5】本実施の形態におけるアームヘッドの一部拡大端面図。
【図6】別例におけるアームヘッドの一部拡大端面図。
【図7】別例におけるアームヘッドの一部拡大端面図。
【図8】別例におけるアームヘッドの一部拡大端面図。
【図9】別例におけるアームヘッドの一部拡大端面図。
【図10】別例におけるアームヘッドの一部拡大端面図。
【図11】別例におけるアームヘッドとリテーナとの連結部分の断面図。
【図12】(a)〜(c)別例におけるアームヘッドとアウタブッシュの組み付けを説明するための一部拡大端面図。(d)比較対象におけるアームヘッドとアウタブッシュの組み付けを説明するための一部拡大端面図
【図13】別例と比較対象の傷の深さを比較するためのグラフ。
【図14】背景技術におけるアームヘッドの一部拡大端面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図1〜図5に従って説明する。図1に示すように、ワイパアーム1は、その基端部が車両のフロントガラスの下端近傍に設けられるピボット軸2(模式的に1点差線で図示)に固定され、先端部に図示しないワイパブレードが連結されるものである。ワイパアーム1は、基端側からアームヘッド11とリテーナ12とアームピース13とが連結されて構成される。
【0020】
アームヘッド11は、その長手方向の基端部にピボット軸2が貫通されて固定される軸固定孔11aを有する。又、アームヘッド11は、図2及び図3に示すように、その長手方向の先端部に長手方向と直交する方向に貫通する連結孔11bを有する。
【0021】
リテーナ12は、図1及び図2に示すように、その長手方向基端側に一対の連結腕部12aを有し、それら一対の連結腕部12a及び前記連結孔11bを貫通する軸部材としてのリベット14によって、アームヘッド11に対してリベット14を中心として払拭面であるフロントガラスに接触/離反する方向に回動可能に連結される。尚、本実施の形態では、図2に示すように、連結孔11bとリベット14との間には、筒状のアウタブッシュ15及びインナブッシュ16が介在されている。
【0022】
このインナブッシュ16は、図2に示すように、その端面が連結孔11bの両側の開口端11cから突出してリテーナ12の一対の連結腕部12a内面に接触している。また、アウタブッシュ15は、インナブッシュ16よりは短くリテーナ12の一対の連結腕部12a内面に非接触であり、後述するアームヘッド11の筒状部11gの外側面11dよりも突出もしくは同じ高さとなっている。
【0023】
そして、図4(a)に示すように、アームヘッド11における連結孔11bの開口端11cとその開口端11cよりも径方向外側で径方向に延びる外側面11dとの間には、軸方向に沿った断面が凹状で本実施の形態では90°の角度をなす2つの面11e,11fが形成されている。
【0024】
詳述すると、本実施の形態のアームヘッド11は、図4(a),(b)に示すように、アルミダイキャスト製の本体17に塗装が施されてなるものであって、その塗装皮膜18は前記連結孔11b(その内面)以外の部分を被覆している。尚、本実施の形態の塗装(塗装皮膜18)は、樹脂系(アクリル系やポリエステル系やエポキシ系等)の塗料を使用した塗装である。又、図4(a)では、塗装皮膜18を視覚的に分かり易くするために、模式的に均一に厚く図示するとともに、そのハッチングを省略している。又、図4(b)では、塗装皮膜18の厚さの差を図示し、具体的には90°の角度をなす2つの面が交差する部位(内角部)と対応した部分ほど塗装皮膜18の膜厚が厚くなることを図示している。又、上記した90°の角度をなす2つの面11e,11f(アームヘッド11の表面)は、厳密には塗装皮膜18の厚みが変化することから正確な90°ではないが、塗装皮膜18を除いた状態(塗装前)の本体17については、対応する2つの面が90°の角度をなしている。又、本実施の形態のアームヘッド11における連結孔11b(その内面)は、塗装が施されないものの、陽極酸化処理が施されることで腐食の発生が低減されている。
【0025】
そして、アームヘッド11の前記開口端11cの周囲には、筒状部11gが立設され、その頂面が前記外側面11dとされている。そして、外側面11dの径方向内側の端部と連結孔11bの開口端11cとの間に前記2つの面11e,11fが形成されている。
【0026】
本実施の形態の2つの面11e,11fは、図4(a)に示すように、軸方向に沿った断面が連結孔11bの貫通方向と直交するように開口端11cから径方向外側に延びる第1の面11eと、前記筒状部11gの内周面であって軸方向に沿った断面が連結孔11bの貫通方向に沿った(前記第1の面11eと直交する)第2の面11fとからなる。
【0027】
又、図4(a)に示すように、本実施の形態における筒状部11gの外周面11hとその基面11iとは、軸方向に沿った断面が90°の角度をなすように形成されている。
次に、上記実施の形態の特徴的な効果を以下に記載する。
【0028】
(1)連結孔11bの開口端11cとその開口端11cよりも径方向外側で径方向に延びる外側面11dとの間には、軸方向に沿った断面が凹状で180°未満(本実施の形態では90°)の角度をなす2つの面11e,11fが形成されている。よって、例えば、図5に示すように、連結孔11bの開口端11c付近であって塗装皮膜18の切れ目で塗装皮膜18の内側に腐食が発生しても、腐食生成物21による塗装皮膜18の膨れ(剥がれ)の引き剥がし方向が、2つの面11e,11fが交差する部位で塗装皮膜18の接合面(第1の面11e)に対し垂直方向に引き剥がす方向から塗装皮膜18の接合面(第2の面11f)に沿って塗装皮膜18を圧縮するせん断剥がし方向へと一時的に変わるため、腐食生成物21の成長が抑制され進行を遅らせることができる。尚、2つの面11e,11fが交差する部位と対応した部分では塗装皮膜18の膜厚が厚くなる(図4(b)参照)ことで、その部分での塗装皮膜18の剛性自体も高くなり、このことからもこの部分での腐食生成物21の成長が抑制され進行を遅らせることができる。これらによって、腐食生成物21の進行に基づく塗装皮膜18の膨れ(剥がれ)の進行を遅らせることができ、早期の外観の悪化を抑えることができる。
【0029】
(2)2つの面11e,11fは、90°以下(本実施の形態では90°)の角度をなすように設定されるため、一方の面、即ち第1の面11eに沿って進行してきた腐食生成物21は2つの面11e,11fが交差する部位で大きな塗装皮膜18のせん断剥がし方向への力を要することとなる。よって、2つの面11e,11fが交差する部位での腐食生成物21の進行をより遅らせることができる。
【0030】
(3)2つの面11e,11fの内の外側面11dに近い側の面、即ち第2の面11fは、連結孔11bの貫通方向に沿った面とされるため、その面を成形するための型の抜き方向を、連結孔11bを成形するための型の抜き方向と同じとすることができる。よって、アームヘッド11を少ない型で成形することが可能となる。
【0031】
(4)外側面11dは、開口端11cの周囲に立設される筒状部11gの頂面であるため、たとえ腐食生成物21が前記2つの面11e,11f及び外側面11dを越えて更に筒状部11gが立設される基面11i側に進行しようとしても、筒状部11gの外周面11hと基面11iとが交差する部位でその進行を遅らせることができる。よって、筒状部11gの外周面11hと基面11iとが交差する部位でも腐食生成物21の進行に基づく塗装皮膜18の膨れ(剥がれ)の進行を遅らせることができ、早期の外観の悪化を抑えることができる。
【0032】
上記実施の形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施の形態の2つの面11e,11fは、開口端11cとその開口端11cよりも径方向外側で径方向に延びる外側面との間に形成され、軸方向に沿った断面が凹状で180°未満の角度をなす形状であれば、他の面に変更してもよい。
【0033】
例えば、図6に示すように変更してもよい。即ち、この例(図6参照)では、2つの面31a,31bが90°未満の角度(鋭角)をなすように設定されている。詳しくは、この例の2つの面31a,31bは、軸方向に沿った断面が連結孔11bと90°未満の角度(鋭角)をなすように開口端11cから径方向外側に延びる第1の面31aと、筒状部11gの内周面であって軸方向に沿った断面が連結孔11bの貫通方向に沿った第2の面31bとからなる。
【0034】
このようにしても、上記実施の形態の効果(1)〜(4)と同様の効果を得ることができる。又、2つの面31a,31bは、鋭角をなすように設定されるため、一方の面、即ち第1の面31aに沿って進行してきた腐食生成物にて膨らんだ塗装皮膜18(膨らんだ状態の図示は省略)が2つの面が交差する部位を越えてさらに成長し進行するためには、他方の面、即ち第2の面31bの塗装皮膜18をより一層大きなせん断剥がし方向への力を要するため、ひいてはその第2の面31bの塗装皮膜が更に剥がれ難くなる。よって、2つの面31a,31bが交差する部位での腐食生成物の進行をより一層遅らせることができる。
【0035】
又、例えば、図7に示すように変更してもよい。即ち、この例(図7参照)では、2つの面32a,32bが90°未満の角度(鋭角)をなすように設定されている。詳しくは、この例の2つの面32a,32bは、軸方向に沿った断面が連結孔11bの貫通方向と直交するように開口端11cから径方向外側に延びる第1の面32aと、筒状部11gの内周面であって軸方向に沿った断面が第1の面32aと90°未満の角度(鋭角)をなすように傾斜した第2の面32bとからなる。言い換えると、この第2の面32bは、外側面11dから連結孔11bの貫通方向に延びるほど径方向の連結孔11bから離れる側に傾斜した面とされている。
【0036】
このようにしても、上記実施の形態の効果(1)、(2)と同様の効果を得ることができる。又、2つの面32a,32bは、鋭角をなすように設定されるため、一方の面、即ち第1の面32aに沿って進行してきた腐食生成物にて膨らんだ塗装皮膜18(膨らんだ状態の図示は省略)が2つの面が交差する部位を越えてさらに成長し進行するためには、他方の面、即ち第2の面32bの塗装皮膜18をより一層大きなせん断剥がし方向への力を要するため、ひいてはその第2の面32bの塗装皮膜が更に剥がれ難くなる。よって、2つの面32a,32bが交差する部位での腐食生成物の進行をより一層遅らせることができる。又、この例では、筒状部11gの外周面33aとその基面33bとの軸方向に沿った断面も90°未満の角度(鋭角)をなすように形成されている。よって、上記実施の形態の効果(4)と同様の効果に加えて、前記2つの面32a,32bが交差する部位と同様に、筒状部11gの外周面33aとその基面33bが交差する部位での腐食生成物の進行をより一層遅らせることができる。
【0037】
又、例えば、図8に示すように変更してもよい。即ち、この例(図8参照)では、2つの面34a,34bが180°未満で90°より大きい角度(鈍角)をなすように設定されている。詳しくは、この例の2つの面34a,34bは、軸方向に沿った断面が連結孔11bの貫通方向と直交するように開口端11cから径方向外側に延びる第1の面34aと、筒状部11gの内周面であって軸方向に沿った断面が第1の面34aと180°未満で90°より大きい角度(鈍角)をなすように傾斜した第2の面34bとからなる。言い換えると、この第2の面34bは、外側面11dから連結孔11bの貫通方向に延びるほど径方向の連結孔11b側に近づくように傾斜した面とされている。
【0038】
このようにしても、上記実施の形態の効果(1)、(3)と同様の効果を得ることができる。又、この例では、筒状部11gの外周面35aとその基面35bとの軸方向に沿った断面も180°未満で90°より大きい角度(鈍角)をなすように形成されている。
【0039】
又、例えば、図9に示すように、上記実施の形態の2つの面11e,11fを湾曲面(例えば極小さな曲率半径のR面)36で繋げた構成としてもよい。
・上記実施の形態では、外側面11dは、開口端11cの周囲に立設される筒状部11gの頂面であるとしたが、開口端11cよりも径方向外側で径方向に延びる面であればよく、例えば、図10に示す外側面37aに変更してもよい。即ち、この例(図10参照)の外側面37aは、アームヘッド37の側面の内の大部分を占める面であり、そのままアームヘッド37の上面37b等に繋がる面である。
【0040】
このようにしても、上記実施の形態の効果(1)〜(3)と同様の効果を得ることができる。尚、上記した開口端11cよりも径方向外側で径方向に延びる外側面は、軸方向に沿った断面が連結孔11bの貫通方向と直交していなくてもよく同貫通方向の直交方向に対して傾斜している外側面としてもよい。
【0041】
・上記実施の形態では、アームヘッド11における連結孔11bは、貫通方向に一定の径の孔であるとしたが、これに限定されず、例えば、図11に示すように、その貫通方向端部に開口端41に向かうほど一定の割合で径が大きくなる拡径部42が形成されたものとしてもよい。
【0042】
又、この例(図11参照)では、拡径部42を含む連結孔11b(その内面)に陽極酸化処理が施されている。
そして、ブッシュ部材としてのアウタブッシュ43の挿入方向端部にはその最端に向かうほど一定の割合で径が小さくなる縮径部44が形成されている。ここで、図12(a)に示すように、軸方向に沿った断面における前記挿入方向(アウタブッシュ43の外周)に沿った直線と前記縮径部44に沿った直線とが交差する角度θ1は、軸方向に沿った断面における前記連結孔11bの貫通方向に沿った直線と前記拡径部42に沿った直線とが交差する角度θ2よりも大きく設定されている。又、アウタブッシュ43の(中央部)外周面と縮径部44とは、断面湾曲形状(断面R形状)の(微小な)湾曲部45で連続的に接続されている。言い換えれば、アウタブッシュ43の外周面は、(縮径部44に向かうほど径が小さくなる断面湾曲形状の)湾曲部45によって縮径部44に連続的に接続されている。
【0043】
このようにすると、図12(a)〜(c)に示すように、アウタブッシュ43を連結孔11bに挿入(圧入)する際に、アウタブッシュ43が拡径部42に案内されることで、その挿入作業が容易となる。さらには、挿入(圧入)時のアウタブッシュ43と拡径部42との当接が、鋭角のエッジではなく断面R形状の湾曲面である湾曲部45であるために、傷が付き難い。
【0044】
又、上記構成の別例(図11、図12(a)〜(c)参照)では、組み付け時に前記陽極酸化処理が施された拡径部42を含む連結孔11b(陽極酸化皮膜)に生じる傷の深さが低減されて浅くなる。詳しくは、図13に、比較対象(図12(d)参照)との傷の深さを比較したグラフを示す。図12(d)に示す比較対象は、軸方向に沿った断面における前記挿入方向(アウタブッシュ51の外周)に沿った直線と縮径部52に沿った直線とが交差する角度θ3が、軸方向に沿った断面における連結孔11bの貫通方向に沿った直線と拡径部54に沿った直線とが交差する角度θ4よりも小さく設定され、前記湾曲部45は形成されていない。そして、図13は、上記別例(図11、図12(a)〜(c)参照)と前記比較対象(図12(d)参照)とにおいて、それぞれ30回組み付けた際に生じた(陽極酸化皮膜の)傷の深さを示している。即ち、実験結果における傷の深さは、前記比較対象では、平均(AVE)約20μmで、最大(MAX)約57μmで、最小(MIN)約6μmであるのに対し、前記別例では、平均(AVE)約13μmで、最大(MAX)約36μmで、最小(MIN)約4μmとなった。このように、上記別例(図11、図12(a)〜(c)参照)では、組み付け時に陽極酸化処理が施された拡径部42を含む連結孔11b(陽極酸化皮膜)に生じる傷の深さが低減されて浅くなり、該傷から腐食が発生することが抑制され、ひいては傷から発生した腐食生成物が開口端41、更には塗装皮膜側に進行してしまうことが予防される。その結果、早期の外観の悪化を抑えることができる。
【0045】
・上記実施の形態では、軸部材としてのリベット14を用いたが、同様の機能を有する他の軸部材に変更してもよい。
・上記実施の形態では、インナブッシュ16は、その端面が連結孔11bの両側の開口端11cから突出してリテーナ12の一対の連結腕部12a内面に接触するも、筒状部11gの外側面11d,37aがリテーナ12の一対の連結腕部12a内面に非接触となるようにインナブッシュ16の突出量(インナブッシュ16の軸方向長さ)が設定されている。そのため、アームヘッド11に対するリテーナ12の回動で、リテーナ12の連結腕部12a内面とアームヘッド11の外側面11d、37aとの擦れによる塗装皮膜18の剥がれを防止することができる。
【符号の説明】
【0046】
11b…連結孔、11c,41…開口端、11d,37a…外側面、11e,11f,31a,31b,32a,32b,34a,34b…2つの面(第1の面と第2の面)、11g…筒状部、12…リテーナ、14…リベット(軸部材)、42…拡径部、43…アウタブッシュ(ブッシュ部材)、44…縮径部、45…湾曲部、θ1,θ2…角度。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイパアームを構成するアームヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的なワイパアームは、長手方向の先端部に長手方向と直交する方向に貫通する連結孔を有したアームヘッドと、連結孔を貫通する軸部材を中心として回動可能に連結されるリテーナとを備える。このようなワイパアームでは、金属の腐食の発生を防止及び光の反射を防止するように表面に防眩、防錆のための塗装が施される。
【0003】
そして、リテーナは、鋼板がU字状に折り曲げられて成形されるものであり、成形後に内側の面を塗装するのが困難であるため、例えば、予め片面が塗装された鋼板を用い、塗装面が内側となるように折り曲げて、その後、外表面を塗装することで全面を塗装し金属の腐食の発生を抑える技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−501152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、アームヘッドの連結孔は、軸部材が挿入されることなどから、その内面に塗装が施されない。よって、例えば、図14に示すように、アームヘッド101における連結孔102の開口端付近であって塗装皮膜103の切れ目で塗装皮膜103の内側に腐食が発生し(腐食生成物104が生成され)、その腐食生成物104が塗装皮膜103を膨らませながら(剥がしながら)目立つ部分にまで成長しながら進行し、早期に外観が悪化してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、腐食生成物の成長を抑制し進行を遅らせることができ、ひいては早期の外観の悪化を抑えることができるアームヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明では、長手方向の一端部に連結孔を有し、その連結孔を貫通する軸部材を中心としてリテーナが回動可能に連結される表面塗装されたアームヘッドであって、前記連結孔の開口端とその開口端よりも径方向外側で径方向に延びる外側面との間には、軸方向に沿った断面が凹状で180°未満の角度をなす2つの面が形成されたことを要旨とする。
【0008】
同構成によれば、連結孔の開口端とその開口端よりも径方向外側で径方向に延びる外側面との間には、軸方向に沿った断面が凹状で180°未満の角度をなす2つの面が形成されるため、例えば連結孔の開口端付近で塗装皮膜の内側に腐食が発生しても、腐食生成物による塗装皮膜の膨れ(剥がれ)の引き剥がし方向が、2つの面が交差する部位で塗装皮膜の接合面に対し垂直方向に引き剥がす方向から塗装皮膜の接合面に沿って塗装皮膜を圧縮するせん断剥がし方向へと一時的に変わるため、腐食生成物の成長が抑制され進行を遅らせることができる。よって、腐食生成物の進行に基づく塗装皮膜の膨れ(剥がれ)の進行を遅らせることができ、早期の外観の悪化を抑えることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のアームヘッドにおいて、前記2つの面は、90°以下の角度をなすように設定されたことを要旨とする。
同構成によれば、前記2つの面は、90°以下の角度をなすように設定されるため、一方の面に沿って進行してきた腐食生成物は2つの面が交差する部位で大きな塗装皮膜のせん断剥がし方向への力を要することとなる。よって、2つの面が交差する部位での腐食生成物の進行をより遅らせることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載のアームヘッドにおいて、前記2つの面は、鋭角をなすように設定されたことを要旨とする。
同構成によれば、前記2つの面は、鋭角をなすように設定されるため、一方の面に沿って進行してきた腐食生成物にて膨らんだ塗装皮膜が2つの面が交差する部位を越えてさらに成長し進行するためには、他方の面の塗装皮膜をより一層大きなせん断剥がし方向への力を要するため、ひいてはその他方の面の塗装皮膜が更に剥がれ難くなる。よって、2つの面が交差する部位での腐食生成物の進行をより一層遅らせることができる。
【0011】
請求項4に記載の発明では、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアームヘッドにおいて、前記2つの面の内の前記外側面に近い側の面は、前記連結孔の貫通方向に沿った面、又は前記外側面から前記連結孔の貫通方向に延びるほど径方向の前記連結孔側に近づくように傾斜した面とされたことを要旨とする。
【0012】
同構成によれば、前記2つの面の内の前記外側面に近い側の面は、前記連結孔の貫通方向に沿った面、又は前記外側面から前記連結孔の貫通方向に延びるほど径方向の前記連結孔側に近づくように傾斜した面とされるため、その面を成形するための型の抜き方向を、連結孔を成形するための型の抜き方向と同じとすることができる。よって、アームヘッドを少ない型で成形することが可能となる。
【0013】
請求項5に記載の発明では、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアームヘッドにおいて、前記外側面は、前記開口端の周囲に立設される筒状部の頂面であって、その径方向内側の端部と前記連結孔の開口端との間に前記2つの面が形成されるものであることを要旨とする。
【0014】
同構成によれば、前記外側面は、前記開口端の周囲に立設される筒状部の頂面であるため、たとえ腐食生成物が前記2つの面及び外側面を越えて更に筒状部が立設される基面側に進行しようとしても、筒状部の外周面と前記基面とが交差する部位でその進行を遅らせることができる。よって、筒状部の外周面と基面とが交差する部位でも腐食生成物の進行に基づく塗装皮膜の膨れ(剥がれ)の進行を遅らせることができ、早期の外観の悪化を抑えることができる。
【0015】
請求項6に記載の発明では、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のアームヘッドにおいて、前記連結孔の貫通方向端部には前記開口端に向かうほど一定の割合で径が大きくなる拡径部が形成され、該拡径部を含む前記連結孔は陽極酸化処理が施され、前記連結孔には、前記軸部材との間に介在されるブッシュ部材が挿入され、前記ブッシュ部材の挿入方向端部にはその最端に向かうほど一定の割合で径が小さくなる縮径部が形成され、軸方向に沿った断面における前記挿入方向に沿った直線と前記縮径部に沿った直線とが交差する角度は、軸方向に沿った断面における前記貫通方向に沿った直線と前記拡径部に沿った直線とが交差する角度よりも大きく設定され、前記ブッシュ部材の中央部と前記縮径部とは、該縮径部に向かうほど径が小さくなる断面湾曲形状の湾曲部で連結されたことを要旨とする。
【0016】
同構成によれば、ブッシュ部材を連結孔に挿入(圧入)する際に、ブッシュ部材が拡径部に案内されることで、その挿入作業が容易となる。又、その組み付け(挿入)時に陽極酸化処理が施された拡径部を含む連結孔(陽極酸化皮膜)に生じる傷の深さが低減される(図13参照)。これにより、傷から腐食が発生することが抑制され、ひいては傷から発生した腐食生成物が連結孔の開口端、更には塗装皮膜側に進行してしまうことが予防される。その結果、早期の外観の悪化を抑えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、腐食生成物の進行を遅らせることができ、ひいては早期の外観の悪化を抑えることができるアームヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施の形態におけるワイパアームの斜視図。
【図2】本実施の形態におけるアームヘッドとリテーナとの連結部分の断面図。
【図3】本実施の形態におけるアームヘッドの一部拡大斜視図。
【図4】(a)本実施の形態におけるアームヘッドの一部拡大端面図。(b)角部での塗装皮膜の厚さを説明するための一部拡大端面図。
【図5】本実施の形態におけるアームヘッドの一部拡大端面図。
【図6】別例におけるアームヘッドの一部拡大端面図。
【図7】別例におけるアームヘッドの一部拡大端面図。
【図8】別例におけるアームヘッドの一部拡大端面図。
【図9】別例におけるアームヘッドの一部拡大端面図。
【図10】別例におけるアームヘッドの一部拡大端面図。
【図11】別例におけるアームヘッドとリテーナとの連結部分の断面図。
【図12】(a)〜(c)別例におけるアームヘッドとアウタブッシュの組み付けを説明するための一部拡大端面図。(d)比較対象におけるアームヘッドとアウタブッシュの組み付けを説明するための一部拡大端面図
【図13】別例と比較対象の傷の深さを比較するためのグラフ。
【図14】背景技術におけるアームヘッドの一部拡大端面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図1〜図5に従って説明する。図1に示すように、ワイパアーム1は、その基端部が車両のフロントガラスの下端近傍に設けられるピボット軸2(模式的に1点差線で図示)に固定され、先端部に図示しないワイパブレードが連結されるものである。ワイパアーム1は、基端側からアームヘッド11とリテーナ12とアームピース13とが連結されて構成される。
【0020】
アームヘッド11は、その長手方向の基端部にピボット軸2が貫通されて固定される軸固定孔11aを有する。又、アームヘッド11は、図2及び図3に示すように、その長手方向の先端部に長手方向と直交する方向に貫通する連結孔11bを有する。
【0021】
リテーナ12は、図1及び図2に示すように、その長手方向基端側に一対の連結腕部12aを有し、それら一対の連結腕部12a及び前記連結孔11bを貫通する軸部材としてのリベット14によって、アームヘッド11に対してリベット14を中心として払拭面であるフロントガラスに接触/離反する方向に回動可能に連結される。尚、本実施の形態では、図2に示すように、連結孔11bとリベット14との間には、筒状のアウタブッシュ15及びインナブッシュ16が介在されている。
【0022】
このインナブッシュ16は、図2に示すように、その端面が連結孔11bの両側の開口端11cから突出してリテーナ12の一対の連結腕部12a内面に接触している。また、アウタブッシュ15は、インナブッシュ16よりは短くリテーナ12の一対の連結腕部12a内面に非接触であり、後述するアームヘッド11の筒状部11gの外側面11dよりも突出もしくは同じ高さとなっている。
【0023】
そして、図4(a)に示すように、アームヘッド11における連結孔11bの開口端11cとその開口端11cよりも径方向外側で径方向に延びる外側面11dとの間には、軸方向に沿った断面が凹状で本実施の形態では90°の角度をなす2つの面11e,11fが形成されている。
【0024】
詳述すると、本実施の形態のアームヘッド11は、図4(a),(b)に示すように、アルミダイキャスト製の本体17に塗装が施されてなるものであって、その塗装皮膜18は前記連結孔11b(その内面)以外の部分を被覆している。尚、本実施の形態の塗装(塗装皮膜18)は、樹脂系(アクリル系やポリエステル系やエポキシ系等)の塗料を使用した塗装である。又、図4(a)では、塗装皮膜18を視覚的に分かり易くするために、模式的に均一に厚く図示するとともに、そのハッチングを省略している。又、図4(b)では、塗装皮膜18の厚さの差を図示し、具体的には90°の角度をなす2つの面が交差する部位(内角部)と対応した部分ほど塗装皮膜18の膜厚が厚くなることを図示している。又、上記した90°の角度をなす2つの面11e,11f(アームヘッド11の表面)は、厳密には塗装皮膜18の厚みが変化することから正確な90°ではないが、塗装皮膜18を除いた状態(塗装前)の本体17については、対応する2つの面が90°の角度をなしている。又、本実施の形態のアームヘッド11における連結孔11b(その内面)は、塗装が施されないものの、陽極酸化処理が施されることで腐食の発生が低減されている。
【0025】
そして、アームヘッド11の前記開口端11cの周囲には、筒状部11gが立設され、その頂面が前記外側面11dとされている。そして、外側面11dの径方向内側の端部と連結孔11bの開口端11cとの間に前記2つの面11e,11fが形成されている。
【0026】
本実施の形態の2つの面11e,11fは、図4(a)に示すように、軸方向に沿った断面が連結孔11bの貫通方向と直交するように開口端11cから径方向外側に延びる第1の面11eと、前記筒状部11gの内周面であって軸方向に沿った断面が連結孔11bの貫通方向に沿った(前記第1の面11eと直交する)第2の面11fとからなる。
【0027】
又、図4(a)に示すように、本実施の形態における筒状部11gの外周面11hとその基面11iとは、軸方向に沿った断面が90°の角度をなすように形成されている。
次に、上記実施の形態の特徴的な効果を以下に記載する。
【0028】
(1)連結孔11bの開口端11cとその開口端11cよりも径方向外側で径方向に延びる外側面11dとの間には、軸方向に沿った断面が凹状で180°未満(本実施の形態では90°)の角度をなす2つの面11e,11fが形成されている。よって、例えば、図5に示すように、連結孔11bの開口端11c付近であって塗装皮膜18の切れ目で塗装皮膜18の内側に腐食が発生しても、腐食生成物21による塗装皮膜18の膨れ(剥がれ)の引き剥がし方向が、2つの面11e,11fが交差する部位で塗装皮膜18の接合面(第1の面11e)に対し垂直方向に引き剥がす方向から塗装皮膜18の接合面(第2の面11f)に沿って塗装皮膜18を圧縮するせん断剥がし方向へと一時的に変わるため、腐食生成物21の成長が抑制され進行を遅らせることができる。尚、2つの面11e,11fが交差する部位と対応した部分では塗装皮膜18の膜厚が厚くなる(図4(b)参照)ことで、その部分での塗装皮膜18の剛性自体も高くなり、このことからもこの部分での腐食生成物21の成長が抑制され進行を遅らせることができる。これらによって、腐食生成物21の進行に基づく塗装皮膜18の膨れ(剥がれ)の進行を遅らせることができ、早期の外観の悪化を抑えることができる。
【0029】
(2)2つの面11e,11fは、90°以下(本実施の形態では90°)の角度をなすように設定されるため、一方の面、即ち第1の面11eに沿って進行してきた腐食生成物21は2つの面11e,11fが交差する部位で大きな塗装皮膜18のせん断剥がし方向への力を要することとなる。よって、2つの面11e,11fが交差する部位での腐食生成物21の進行をより遅らせることができる。
【0030】
(3)2つの面11e,11fの内の外側面11dに近い側の面、即ち第2の面11fは、連結孔11bの貫通方向に沿った面とされるため、その面を成形するための型の抜き方向を、連結孔11bを成形するための型の抜き方向と同じとすることができる。よって、アームヘッド11を少ない型で成形することが可能となる。
【0031】
(4)外側面11dは、開口端11cの周囲に立設される筒状部11gの頂面であるため、たとえ腐食生成物21が前記2つの面11e,11f及び外側面11dを越えて更に筒状部11gが立設される基面11i側に進行しようとしても、筒状部11gの外周面11hと基面11iとが交差する部位でその進行を遅らせることができる。よって、筒状部11gの外周面11hと基面11iとが交差する部位でも腐食生成物21の進行に基づく塗装皮膜18の膨れ(剥がれ)の進行を遅らせることができ、早期の外観の悪化を抑えることができる。
【0032】
上記実施の形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施の形態の2つの面11e,11fは、開口端11cとその開口端11cよりも径方向外側で径方向に延びる外側面との間に形成され、軸方向に沿った断面が凹状で180°未満の角度をなす形状であれば、他の面に変更してもよい。
【0033】
例えば、図6に示すように変更してもよい。即ち、この例(図6参照)では、2つの面31a,31bが90°未満の角度(鋭角)をなすように設定されている。詳しくは、この例の2つの面31a,31bは、軸方向に沿った断面が連結孔11bと90°未満の角度(鋭角)をなすように開口端11cから径方向外側に延びる第1の面31aと、筒状部11gの内周面であって軸方向に沿った断面が連結孔11bの貫通方向に沿った第2の面31bとからなる。
【0034】
このようにしても、上記実施の形態の効果(1)〜(4)と同様の効果を得ることができる。又、2つの面31a,31bは、鋭角をなすように設定されるため、一方の面、即ち第1の面31aに沿って進行してきた腐食生成物にて膨らんだ塗装皮膜18(膨らんだ状態の図示は省略)が2つの面が交差する部位を越えてさらに成長し進行するためには、他方の面、即ち第2の面31bの塗装皮膜18をより一層大きなせん断剥がし方向への力を要するため、ひいてはその第2の面31bの塗装皮膜が更に剥がれ難くなる。よって、2つの面31a,31bが交差する部位での腐食生成物の進行をより一層遅らせることができる。
【0035】
又、例えば、図7に示すように変更してもよい。即ち、この例(図7参照)では、2つの面32a,32bが90°未満の角度(鋭角)をなすように設定されている。詳しくは、この例の2つの面32a,32bは、軸方向に沿った断面が連結孔11bの貫通方向と直交するように開口端11cから径方向外側に延びる第1の面32aと、筒状部11gの内周面であって軸方向に沿った断面が第1の面32aと90°未満の角度(鋭角)をなすように傾斜した第2の面32bとからなる。言い換えると、この第2の面32bは、外側面11dから連結孔11bの貫通方向に延びるほど径方向の連結孔11bから離れる側に傾斜した面とされている。
【0036】
このようにしても、上記実施の形態の効果(1)、(2)と同様の効果を得ることができる。又、2つの面32a,32bは、鋭角をなすように設定されるため、一方の面、即ち第1の面32aに沿って進行してきた腐食生成物にて膨らんだ塗装皮膜18(膨らんだ状態の図示は省略)が2つの面が交差する部位を越えてさらに成長し進行するためには、他方の面、即ち第2の面32bの塗装皮膜18をより一層大きなせん断剥がし方向への力を要するため、ひいてはその第2の面32bの塗装皮膜が更に剥がれ難くなる。よって、2つの面32a,32bが交差する部位での腐食生成物の進行をより一層遅らせることができる。又、この例では、筒状部11gの外周面33aとその基面33bとの軸方向に沿った断面も90°未満の角度(鋭角)をなすように形成されている。よって、上記実施の形態の効果(4)と同様の効果に加えて、前記2つの面32a,32bが交差する部位と同様に、筒状部11gの外周面33aとその基面33bが交差する部位での腐食生成物の進行をより一層遅らせることができる。
【0037】
又、例えば、図8に示すように変更してもよい。即ち、この例(図8参照)では、2つの面34a,34bが180°未満で90°より大きい角度(鈍角)をなすように設定されている。詳しくは、この例の2つの面34a,34bは、軸方向に沿った断面が連結孔11bの貫通方向と直交するように開口端11cから径方向外側に延びる第1の面34aと、筒状部11gの内周面であって軸方向に沿った断面が第1の面34aと180°未満で90°より大きい角度(鈍角)をなすように傾斜した第2の面34bとからなる。言い換えると、この第2の面34bは、外側面11dから連結孔11bの貫通方向に延びるほど径方向の連結孔11b側に近づくように傾斜した面とされている。
【0038】
このようにしても、上記実施の形態の効果(1)、(3)と同様の効果を得ることができる。又、この例では、筒状部11gの外周面35aとその基面35bとの軸方向に沿った断面も180°未満で90°より大きい角度(鈍角)をなすように形成されている。
【0039】
又、例えば、図9に示すように、上記実施の形態の2つの面11e,11fを湾曲面(例えば極小さな曲率半径のR面)36で繋げた構成としてもよい。
・上記実施の形態では、外側面11dは、開口端11cの周囲に立設される筒状部11gの頂面であるとしたが、開口端11cよりも径方向外側で径方向に延びる面であればよく、例えば、図10に示す外側面37aに変更してもよい。即ち、この例(図10参照)の外側面37aは、アームヘッド37の側面の内の大部分を占める面であり、そのままアームヘッド37の上面37b等に繋がる面である。
【0040】
このようにしても、上記実施の形態の効果(1)〜(3)と同様の効果を得ることができる。尚、上記した開口端11cよりも径方向外側で径方向に延びる外側面は、軸方向に沿った断面が連結孔11bの貫通方向と直交していなくてもよく同貫通方向の直交方向に対して傾斜している外側面としてもよい。
【0041】
・上記実施の形態では、アームヘッド11における連結孔11bは、貫通方向に一定の径の孔であるとしたが、これに限定されず、例えば、図11に示すように、その貫通方向端部に開口端41に向かうほど一定の割合で径が大きくなる拡径部42が形成されたものとしてもよい。
【0042】
又、この例(図11参照)では、拡径部42を含む連結孔11b(その内面)に陽極酸化処理が施されている。
そして、ブッシュ部材としてのアウタブッシュ43の挿入方向端部にはその最端に向かうほど一定の割合で径が小さくなる縮径部44が形成されている。ここで、図12(a)に示すように、軸方向に沿った断面における前記挿入方向(アウタブッシュ43の外周)に沿った直線と前記縮径部44に沿った直線とが交差する角度θ1は、軸方向に沿った断面における前記連結孔11bの貫通方向に沿った直線と前記拡径部42に沿った直線とが交差する角度θ2よりも大きく設定されている。又、アウタブッシュ43の(中央部)外周面と縮径部44とは、断面湾曲形状(断面R形状)の(微小な)湾曲部45で連続的に接続されている。言い換えれば、アウタブッシュ43の外周面は、(縮径部44に向かうほど径が小さくなる断面湾曲形状の)湾曲部45によって縮径部44に連続的に接続されている。
【0043】
このようにすると、図12(a)〜(c)に示すように、アウタブッシュ43を連結孔11bに挿入(圧入)する際に、アウタブッシュ43が拡径部42に案内されることで、その挿入作業が容易となる。さらには、挿入(圧入)時のアウタブッシュ43と拡径部42との当接が、鋭角のエッジではなく断面R形状の湾曲面である湾曲部45であるために、傷が付き難い。
【0044】
又、上記構成の別例(図11、図12(a)〜(c)参照)では、組み付け時に前記陽極酸化処理が施された拡径部42を含む連結孔11b(陽極酸化皮膜)に生じる傷の深さが低減されて浅くなる。詳しくは、図13に、比較対象(図12(d)参照)との傷の深さを比較したグラフを示す。図12(d)に示す比較対象は、軸方向に沿った断面における前記挿入方向(アウタブッシュ51の外周)に沿った直線と縮径部52に沿った直線とが交差する角度θ3が、軸方向に沿った断面における連結孔11bの貫通方向に沿った直線と拡径部54に沿った直線とが交差する角度θ4よりも小さく設定され、前記湾曲部45は形成されていない。そして、図13は、上記別例(図11、図12(a)〜(c)参照)と前記比較対象(図12(d)参照)とにおいて、それぞれ30回組み付けた際に生じた(陽極酸化皮膜の)傷の深さを示している。即ち、実験結果における傷の深さは、前記比較対象では、平均(AVE)約20μmで、最大(MAX)約57μmで、最小(MIN)約6μmであるのに対し、前記別例では、平均(AVE)約13μmで、最大(MAX)約36μmで、最小(MIN)約4μmとなった。このように、上記別例(図11、図12(a)〜(c)参照)では、組み付け時に陽極酸化処理が施された拡径部42を含む連結孔11b(陽極酸化皮膜)に生じる傷の深さが低減されて浅くなり、該傷から腐食が発生することが抑制され、ひいては傷から発生した腐食生成物が開口端41、更には塗装皮膜側に進行してしまうことが予防される。その結果、早期の外観の悪化を抑えることができる。
【0045】
・上記実施の形態では、軸部材としてのリベット14を用いたが、同様の機能を有する他の軸部材に変更してもよい。
・上記実施の形態では、インナブッシュ16は、その端面が連結孔11bの両側の開口端11cから突出してリテーナ12の一対の連結腕部12a内面に接触するも、筒状部11gの外側面11d,37aがリテーナ12の一対の連結腕部12a内面に非接触となるようにインナブッシュ16の突出量(インナブッシュ16の軸方向長さ)が設定されている。そのため、アームヘッド11に対するリテーナ12の回動で、リテーナ12の連結腕部12a内面とアームヘッド11の外側面11d、37aとの擦れによる塗装皮膜18の剥がれを防止することができる。
【符号の説明】
【0046】
11b…連結孔、11c,41…開口端、11d,37a…外側面、11e,11f,31a,31b,32a,32b,34a,34b…2つの面(第1の面と第2の面)、11g…筒状部、12…リテーナ、14…リベット(軸部材)、42…拡径部、43…アウタブッシュ(ブッシュ部材)、44…縮径部、45…湾曲部、θ1,θ2…角度。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の一端部に連結孔を有し、その連結孔を貫通する軸部材を中心としてリテーナが回動可能に連結される表面塗装されたアームヘッドであって、
前記連結孔の開口端とその開口端よりも径方向外側で径方向に延びる外側面との間には、軸方向に沿った断面が凹状で180°未満の角度をなす2つの面が形成されたことを特徴とするアームヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載のアームヘッドにおいて、
前記2つの面は、90°以下の角度をなすように設定されたことを特徴とするアームヘッド。
【請求項3】
請求項2に記載のアームヘッドにおいて、
前記2つの面は、鋭角をなすように設定されたことを特徴とするアームヘッド。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアームヘッドにおいて、
前記2つの面の内の前記外側面に近い側の面は、前記連結孔の貫通方向に沿った面、又は前記外側面から前記連結孔の貫通方向に延びるほど径方向の前記連結孔側に近づくように傾斜した面とされたことを特徴とするアームヘッド。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアームヘッドにおいて、
前記外側面は、前記開口端の周囲に立設される筒状部の頂面であって、その径方向内側の端部と前記連結孔の開口端との間に前記2つの面が形成されるものであることを特徴とするアームヘッド。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のアームヘッドにおいて、
前記連結孔の貫通方向端部には前記開口端に向かうほど一定の割合で径が大きくなる拡径部が形成され、該拡径部を含む前記連結孔は陽極酸化処理が施され、
前記連結孔には、前記軸部材との間に介在されるブッシュ部材が挿入され、
前記ブッシュ部材の挿入方向端部にはその最端に向かうほど一定の割合で径が小さくなる縮径部が形成され、
軸方向に沿った断面における前記挿入方向に沿った直線と前記縮径部に沿った直線とが交差する角度は、軸方向に沿った断面における前記貫通方向に沿った直線と前記拡径部に沿った直線とが交差する角度よりも大きく設定され、
前記ブッシュ部材の中央部と前記縮径部とは、該縮径部に向かうほど径が小さくなる断面湾曲形状の湾曲部で連結されたことを特徴とするアームヘッド。
【請求項1】
長手方向の一端部に連結孔を有し、その連結孔を貫通する軸部材を中心としてリテーナが回動可能に連結される表面塗装されたアームヘッドであって、
前記連結孔の開口端とその開口端よりも径方向外側で径方向に延びる外側面との間には、軸方向に沿った断面が凹状で180°未満の角度をなす2つの面が形成されたことを特徴とするアームヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載のアームヘッドにおいて、
前記2つの面は、90°以下の角度をなすように設定されたことを特徴とするアームヘッド。
【請求項3】
請求項2に記載のアームヘッドにおいて、
前記2つの面は、鋭角をなすように設定されたことを特徴とするアームヘッド。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアームヘッドにおいて、
前記2つの面の内の前記外側面に近い側の面は、前記連結孔の貫通方向に沿った面、又は前記外側面から前記連結孔の貫通方向に延びるほど径方向の前記連結孔側に近づくように傾斜した面とされたことを特徴とするアームヘッド。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアームヘッドにおいて、
前記外側面は、前記開口端の周囲に立設される筒状部の頂面であって、その径方向内側の端部と前記連結孔の開口端との間に前記2つの面が形成されるものであることを特徴とするアームヘッド。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のアームヘッドにおいて、
前記連結孔の貫通方向端部には前記開口端に向かうほど一定の割合で径が大きくなる拡径部が形成され、該拡径部を含む前記連結孔は陽極酸化処理が施され、
前記連結孔には、前記軸部材との間に介在されるブッシュ部材が挿入され、
前記ブッシュ部材の挿入方向端部にはその最端に向かうほど一定の割合で径が小さくなる縮径部が形成され、
軸方向に沿った断面における前記挿入方向に沿った直線と前記縮径部に沿った直線とが交差する角度は、軸方向に沿った断面における前記貫通方向に沿った直線と前記拡径部に沿った直線とが交差する角度よりも大きく設定され、
前記ブッシュ部材の中央部と前記縮径部とは、該縮径部に向かうほど径が小さくなる断面湾曲形状の湾曲部で連結されたことを特徴とするアームヘッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−197072(P2012−197072A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−286774(P2011−286774)
【出願日】平成23年12月27日(2011.12.27)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【出願人】(000230515)日本ワイパブレード株式会社 (52)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月27日(2011.12.27)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【出願人】(000230515)日本ワイパブレード株式会社 (52)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]