説明

アームレスト装置及びアームレスト装置付きシート

【課題】自動車のシートなどに好適に取り付けることのできる回動式のアームレスト装置を提供する。
【解決手段】アームレスト装置100を、アームレスト本体110の先端部が前方に倒伏した倒伏使用状態と、アームレスト本体110の先端部が上向きに起立した起立収納状態とを任意に1動作で切り替えることができるものとして、シート200の内幅を広げた状態で使用する一方で、内方向にスライドさせてシート200に幅狭の状態でコンパクトに収納される構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用時にはアームレスト本体を前方へ寝かせた状態とし、収納時には上向きに立たせた状態とすることのできるアームレスト装置と、該アームレスト装置を備えたアームレスト装置付きシートに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等のアームレスト装置は、腕を支持するアームレスト本体と、シートに対して回動可能な状態で支持するためのアームレスト支持部品とによって構成され、使用時の高さが一定の様式と調節可能な様式のものがあり、使用状態と起立収納状態とは回動させて切り替えられる。アームレスト装置は、腕を支持するだけでなく安全ガード機能を持ち、着席者の身体の傾きや横ズレを防止すると言う安全上の観点から自動車シートに備え付けることがある。また、軸に外嵌されたコイルバネの端部を締付方向に引っ張ることによりロック状態とし、該コイルバネの端部を弛緩方向に押圧することによりロック解除状態とするバネロック構造を用いてアームレスト本体の高さ調節機能を行うことができるようにしたアームレスト装置も一般によく知られている(例えば、特許文献1〜3を参照)。
【0003】
ところが、キャビンが狭い軽自動車や小型乗用車はもちろん、普通乗用車や大型車に於いても窮屈感を感じる等の問題は残る。例えば、ワンボックスカーの後部座席には通路側のみに取付けられるが、アームレスト装置の寸法分だけ通路が狭くなる。また、シートを前方に倒した後、キャビンの右側面に沿って立たせた状態に折り畳み、荷置きスペースを広く拡張する場合は折畳みの障害になる等の問題がある。この様なことから、起立収納状態にはアームレスト本体がシートの内方向にスライドして幅狭寸法で収納され、倒伏した使用状態にはアームレスト本体が外方向にスライドしてシートを広幅にする構造のアームレスト装置が合理的である。
【0004】
ところで、事務用椅子ならば、アームレスト本体の横方向の取付位置を変更できるものが既に提案されている(例えば、特許文献4〜6を参照)。この種の事務用椅子では、着席者の体形などに合わせて、アームレスト本体の間隔を調節することができる。しかし、これらの椅子において、アームレスト本体の間隔を調節しようとすると、ボルトを外して横方向にスライドさせ、再度ボルトを締め直すなどの煩雑な作業が必要であった。このため、これらの事務用椅子のアームレスト構造は、倒伏状態と起立状態とが頻繁に切り替えられる自動車用シートなどに適用するものとしては不適切であった。また、これらの事務用椅子は、回動収納できる構造になってない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−185223号公報
【特許文献2】特開2009−261828号公報
【特許文献3】特開2008−161500号公報
【特許文献4】特開平08−000393号公報
【特許文献5】特開平08−024079号公報
【特許文献6】特開平10−313974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであり、自動車のシートなどに好適に取り付けるもので、先端部が上向きに起立した収納状態においてはアームレストがコンパクトに内方向(シート中心方向)にスライドし、アームレスト本体の先端部を前方へ倒伏した使用状態においてはアームレスト本体が外方向(シート中心から離れる方向)にスライドしてシート幅をゆとりのある最適な幅に広げる構造のアームレスト装置を提供することを目的とする。また、この操作を極めて簡単にすることも本発明の目的である。さらに、コンパクトで安全なアームレスト装置付きシートを提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、アームレスト本体とシートバック側に設けたアームレスト支持部からなるもので、倒伏状態で使用し起立状態で収納する回転方式のアームレスト装置であって、固定側部品と可動側部品からなり、その一方の部品に高低差が軸方向の傾斜カム面を設け、他方の部品にそれと接触する接触部を設けてスライドカム機構を構成し、該スライドカム機構により、使用の際はアームレスト本体の倒伏方向回転でアームレスト本体を外方向にスライド(以下、外スライドと称す。)させてシート内幅を幅広とし、収納の際にはアームレスト本体の起立方向回転でアームレスト本体を内方向にスライド(以下、内スライドと称す。)させてシートバック側面に幅狭に収納することを特徴とするアームレスト装置(請求項1)を提供することによって解決される。すなわち、使用する際には、前方に倒す操作でシート中心から離れる方向に最適位置までアームレスト本体を広げ、収納の際は上向きに起こし収納する操作で内スライドさせシートバックの脇にアームレスト本体をコンパクトに収納するもので、シート幅の縮小を可能にし、その操作は何らの動作も加えるものでなく従来のアームレスト回動操作の中に組込み、ワンタッチである手段を提案する。
【0008】
請求項1のアームレスト装置を換言すると、シートバックを備えたシートに取り付けるためのアームレスト装置であって、腕を支持するためのアームレスト本体と、アームレスト本体の基端部をシートバックの側方に支持するためのアームレスト支持部とを備え、アームレスト支持部を、シートバックの側方に固定される固定側部品と、固定側部品に対して回動可能な状態で連結された可動側部品とで構成することにより、アームレスト本体の先端部が前方に倒伏した倒伏状態と、アームレスト本体の先端部が上向きに起立した起立状態とを任意に切り替えることができるようにするとともに、固定側部品は固定側カムを含み、可動側部品は可動側カムを含み、可動側カムの回動運動をその回動軸方向への平行移動運動へと運動変換することにより、アームレスト本体の先端部を上向きに起立させる起立操作の際にアームレスト本体がシートバックに接近する一方で、アームレスト本体の先端部を前方に倒伏させる倒伏操作の際にアームレスト本体がシートバックから離反する構造としたことを特徴とするアームレスト装置である。
【0009】
本発明の内外スライド機構は、例えば、カムを構成する固定側部品及び可動側部品の互いに対向する端面の、少なくとも何れか一方に高低差が軸方向の傾斜カム面を設けた端面カムでよい。また、固定側部品の周壁部に高低差が軸方向の傾斜カム面を持つ螺旋状の案内溝と、それに嵌入されるピンを持つ可動側部品との組合せで構成する円筒カムでもよい。要するに、構成する2部品の一方又は両方に設けた軸方向に高低差のある傾斜面と相手部品を接触させ、スライドさせるものであればよい。尚、このカムの設置箇所はアームレスト本体でもアームレスト支持部でも両方に分けてもよい。また、可動側カム(可動側部品)を一体にした樹脂製アームレスト本体も可能であり、材質や部材数の選択も自由である。
【0010】
また、本発明は、アームレストの、幅広の倒伏使用状態から行う内外スライドが、起立収納を行う際の操作角度の後半部分であるアームレスト装置を提案している(請求項2)。これにより着座姿勢での内外スライド操作に伴う窮屈感の緩和若しくは取除きが可能である。また、高さ調節方式のアームレストにあっては、これにより高さ調節操作への影響を取り除くことが出来る。この動きの特定区分は、高さ調節の無いものにあってはスライド機構のカムの形状で行う。また、高さ調節方式のものにあっては、内スライド操作の抵抗を、高さ調節操作の抵抗より相対的に大きく設定することで実現している。尚、スライドの抵抗を相対的に大きくする手段は可動側部品と固定側部品で構成するスライドカムの回動抵抗や両者の接触抵抗を押付力や接触表面粗さを大きくする等で特に限定されない。次に本発明はバネロック構造の高さ調節機能を具備し、高さ調節操作の抵抗が軸方向へのスライド抵抗より小さい構造のアームレストを提案し(請求項3)、更に本発明は、上記いずれかのアームレスト装置を設けられて小型、軽量化されたシート(請求項4)を提案している。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明のアームレスト装置を採用すると、使用状態においてはシート内幅がゆとりのある最適な広幅となり、一方収納は幅狭コンパクトになる。その切り替え操作は従来の回転操作だけのワンタッチである。さらに、本発明のアームレスト装置の用途に限定はなく、身体の安全ガード機能を活かして、建機や農機、福祉機器等多分野に利用できる。中でも、限られた室内空間である自動車シート用として好適で、小型の車であってもゆとりあるシートの内幅や室内通路幅の確保、シートベルト着脱時の障害への対応、シート折畳み時の障害への対応等が可能になる。これによるシート設計の自由度向上で小型化、軽量化と安全で快適な自動車室内の提供に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】アームレスト装置付きシートを前方から見た状態を示した正面図である。
【図2】アームレスト装置付きシートを側方から見た状態を示した側面図である。
【図3】倒伏状態にある第一実施態様のアームレスト装置をその中心線Lを含む鉛直面で切断した状態を示した部分断面図である。
【図4】第一実施態様のアームレスト装置におけるスライドカム機構を構成する部品群を分解した状態を示した斜視図である。
【図5】第一実施態様のアームレスト装置が倒伏状態から起立状態、若しくは起立状態から倒伏状態へと切り替わっている途中の状態にあるときの固定側カムと可動側カムを示した斜視図である。
【図6】第一実施態様のアームレスト装置が倒伏状態にあるときの固定側カムと可動側カムを垂直な面で切断した状態を示した拡大断面図である。
【図7】第一実施態様のアームレスト装置が倒伏状態から起立状態、若しくは起立状態から倒伏状態へと切り替わっている途中の状態にあるときの固定側カムと可動側カムを垂直な面で切断した状態を示した拡大断面図である。
【図8】第一実施態様のアームレスト装置において、アームレスト本体が下限位置にあるときのアウタープレートとインナープレートを、中心線Lに垂直な平面で切断した状態を示した断面図である。
【図9】倒伏状態にある第二実施態様のアームレスト装置をその中心線Lを含む鉛直面で切断した状態を示した部分断面図である。
【図10】第二実施態様のアームレスト装置におけるスライドカム機構を構成する部品群を分解した状態を示した斜視図である。
【図11】起立状態にある第三実施態様のアームレスト装置をその中心線Lを含む鉛直面で切断した状態を示した部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のアームレスト装置100の実施態様を自動車のシート200に設ける場合を例に図面を用いて説明する。図1は、アームレスト本体110が倒伏使用状態にあるシート200の正面図で、図2は高さ調節式アームレスト装置付きシート200の側面図(実線は倒伏状態を示す)で、使用状態と、収納状態を切り替える回動式のものとなっている。図2に示すように、アームレスト装置100は、倒伏状態から上向きの起立状態となる際に、図1における移動距離xの分だけ、アームレスト本体110が内スライドされてシートバック210に収納され、起立収納状態から倒伏使用状態となる際には移動距離xの分だけ、アームレスト本体110が外スライドされる構造になっている。
【0014】
これにより、図1に示すように、シートバック210や座面220の幅を従来と比較して移動距離xの分だけ小さく(図1における網掛けハッチング部分)することができる。移動距離xは通常3cmから5cm以上に設定され、シート200の縮小軽量化が可能である。また、通路を挟んで左右のシート200に取り付ける場合にはこれにより通路幅を6cmから10cmも大幅に広げられる。以下、順番に説明する。
【0015】
まず、バネロック構造の高さ調節式である第一実施態様の説明をする。図2は左側のアームレスト装置100をシートバック210に取り付けた状態の側面図で、Bは0°の倒伏使用状態の下限位置、Bは倒伏使用状態の上限位置、Bは起立収納位置、θは使用範囲で45°程度、θは操作範囲で120°程度である。よって、起立操作において内スライド開始位置は操作範囲の後半のBからB(θ)の間に設定される。図3は、アームレスト装置100を軸Lを含む鉛直面で切断した状態を示した部分断面図で、説明の便宜上、固定側カム121と可動側カム125は、係合部125b(図6、図7を参照)をその幅方向に二等分する面(中心線Lを中心とした円筒状の曲面)で切断した断面で示してある。
【0016】
アームレストフレーム支持軸112は、一端がアームレストフレーム111に固定されたロックスプリング113が締め付け状態に外嵌された円筒形状をしており、それに取付プレート129が固定され、インナープレート126及び可動側カム125が一体で取り付けられている。ロックスプリング113の他の一端は自由端で、それを操作してロック解除、保持、及び復帰等を行う構造であり、倒伏方向回転で締め付けロックし、起立方向回転で弛み状態になる形態のバネロック構造を成している。図2のB位置から上方のB位置までの高さ調整範囲(使用範囲)θに於いては500N程度のバネロック力が生ずることから倒伏方向へは回転しない。起立方向へは20N程度の先端操作力で回転し高さの調節が出来る。更に起立方向に回動させるとB位置でロックスプリング113が巻き戻されてロック解除され保持され倒伏方向への回転も可能になる。倒伏方向に下限位置Bまで回転さすと元のロック作用状態に復帰される。(特許文献1)
【0017】
また、図4は可動側部品125〜129と固定側部品121〜123で構成した回動運動を軸方向への平行移動に変換させるスライドカム機構部分の分解した状態を示した斜視図で、図5は倒伏状態から起立状態、若しくは起立状態から倒伏状態へと切り替わっている途中の状態にあるときの固定側カム121と可動側カム125を示した斜視図で、図6,7は高さ調節と軸方向の内外スライドの2つの動きを区分する手段の1つであるスライドカムに係合部125bを設けて抵抗力を高める事例の説明図である。
【0018】
スライドカム機構は、図3、4に示すように、固定側カム121と、アウタープレート122と、ボトムプレート123と、可動側カム125と、インナープレート126と、ガイドリング127と、押付スプリング128と、取付プレート129とで構成され、中心線Lを中心として配されている。シートフレーム211側に固定された固定側カム121と、アームレスト本体110の回転で回動するように結合された可動側カム125で回転運動を平行移動に変換させるスライドカム機構を形成している。ガイドリング127は平行移動する時のガタツキと焼付きを防ぐシューの役割であり、押付スプリング128は広がったカム間隔を元に戻すための押圧力となる。また、アウタープレート122、インナープレート126は使用時にアームレスト本体110に掛かる垂直方向負荷、後方負荷および横方向の負荷(例えばアーム先端負荷800N)に対応した鋼板構造にしてある。
【0019】
固定側カム121には端面に軸方向に高低差を持つ傾斜カム面αと平行カム面αおよび垂直掛止面αが形成され、一方可動側カム125には、軸方向に高低差を持つ傾斜カム面βと平行カム面βおよび垂直掛止面βが形成されている。尚、このカムは円周に何組設けてもよい。図5は、アームレスト本体110の起立前の中間状態を示しているが、これの倒伏状態は可動側カム125の平行カム面βが固定側カム121の平行カム面αに接触する図6または図7の状態になる。この状態にあっては、可動側カム125は、起立方向Aと倒伏方向Aのいずれに回動させても、中心線Lに平行な軸方向へは移動しない。ちなみに高さ調節の無いアームレスト本体110の内スライドを起立操作の後半に特定するには、平行カム面α、β部分の長さの割合をカム部全長の半分程度に設定する(図示寸法から見れば増す)ことで可能である。
【0020】
また、図6、7に示す如くスライドカムの倒伏状態で互いに当接する箇所に、係合部125bおよび被係合部121bを設けると良い。これらの係合抵抗(例えば先端操作抵抗で30N)は可動側カム125の回動を規制する。また、図8に示す様にアームレストフレーム111には第1押圧部111bと第2押圧部111cが一体的に設けられ、取付プレート129の外周部にはフランジ端129a及び129bのフランジが所定区間のみに局所的に設けられている。これにより、アームレストが使用範囲を越えロックが解除され保持された後に始めて第1押圧部111bがフランジ端129bに当接することになる。その後に可動側カム125が回され、係合部125bは弾性変形して図7の状態になり、さらに進むと押付スプリング128によって内スライドが開始されることになる。
【0021】
言うまでも無くこの状態にあっては回動運動が平行移動運動へと変換され、内外いずれの軸方向へもスライドする。すなわち、起立方向Aに回動させると、可動側カム125が一体的に回動して内スライドし、一方、倒伏方向Aに回動させると、外スライドすることになる。この時、押付スプリング128(図3,4を参照)は常時、可動側カム125を固定側カム121に押し付けてスムーズな内外スライド動作を保証する。尚、倒伏下限位置にはストッパーを設けて回動を規制している。以上の手段は、あくまで一例であり、他の構成を採用しても、同様の動作を実現することができる。また、高さ調整のロック機構としてバネロック構造でなく、ラチェット機構等によっても同様の動作は実現できる。
【0022】
以下詳しく説明する。アームレスト本体110が下限位置B1にある図3又は図6の状態においては、平行カム面αと平行カム面βとで接触して、アームレスト本体110が外スライドした状態となっている。また、ロックスプリング113はロック状態に復帰していてアームレストフレーム支持軸112を締め付けたロック状態にある。また、図8の如く、アームレストフレーム111が倒伏方向Aへ回動して、これと一体的に回動した第二押圧部111cが、取付プレート129のフランジの一方の端面129aに当接した状態になると、倒伏方向Aにそれ以上力を加えても、インナープレート126のフランジ部126aの端面126cが、アウタープレート122の縦壁面122eに当接して掛止されているため(当接部P)、アームレストフレーム111はそれ以上回動することはない。
【0023】
ところで、高さ調節の回動操作力はロックスプリング113の滑り摩擦抵抗や、巻戻し、ロック解除、保持の切替に要する力で、前述の如くアームレスト本体110の先端で20N程度である。それ故に、内外スライド操作抵抗との相対的な大小関係によっては、高さ調節を行う範囲(図2におけるθの範囲)でアームレスト本体110が内スライドするおそれがある。これに対しては内外スライド操作抵抗を相対的に大きくすることで対処する。その手段の一つは図3の押付スプリング128の押付力を大きくすることである。例えば線径を加減したり、場合によればウェーブワッシャを追加しても良い。この押付力により固定側カム121と可動側カム125の各平行カム面α、βの接触抵抗の調整が出来て、希望する操作抵抗の設定が可能である。
【0024】
次に、樹脂成型品のスライドカムの場合の他の事例を図6,7で説明する。本事例のスライドカムは下限位置Bで係合部125bと被係合部121bとが係合される。その係合抵抗は(図6の状態で)30N以上に設定してあり、前記の操作抵抗20Nに対して相対的に大きい。故に図2のB迄の使用範囲での高さ調節に於いては可動側カムの回動は無く、外スライド状態が保たれる。その後の回動操作でBポイントに於いてロックスプリング113が巻き戻しロック解除され保持された後に始めて、第一押圧部111bから当接部Pで起立方向Aの回転力を受け、係合状態の係合部121bは弾性変形して回動し、アームレスト本体110の内スライドが開始される。尚、前述の押付スプリング128の押付力の大きさによっては平行カム面α、βの深い係合凹凸を必要とせず、単に面を粗らすことで足りる場合もある。
【0025】
この場合の内スライドの開始位置は、着座者の窮屈感を除く為に操作範囲の中間から下を避けて極力上方が望ましい。ちなみに、第一実施態様のアームレスト装置100においては内スライド開始位置Bは、約45°としている。 更に起立操作を続けると、そのうち、インナープレート126のフランジ部126aにおける端面126bが、アウタープレート122における凹部122cの縦壁面122dに当接して掛止された状態となる(当接部P)。この瞬間に、アームレスト本体110は上限位置Bに達しそれ以上回動しない。第一実施態様の起立上限角度Bは、120°としている。
【0026】
次に、第二実施態様の説明をする。図9は第一実施態様とは異なる高さ調整機構を有するアームレスト装置100を、その中心線Lを含む鉛直面で切断した状態を示した部分断面図であり、図10はスライドカム機構を分解した状態を示した斜視図である。スライド機構はアウタープレート122と、ボトムプレート123と、インナープレート126と、取付プレート129(図9参照)とで構成され、案内溝122fと案内ピン126dでカムを形成している事例である。
【0027】
最後に、第三実施態様のアームレスト装置100について説明する。図11は、起立状態にある第三実施態様のアームレスト装置100を、中心線Lを含む鉛直面で切断した状態を示した部分断面図である。スライドカム機構はアームレスト本体110に内蔵され、構成は案内ピン131aを一体に取付けた可動側ドラム131と、それの内側には第二実施態様の図10に示すカムと同様に軸方向に高低差を持つ傾斜面の案内溝130aを具備した固定側ドラム130で構成し、可動側ドラム131はアームレスト本体110に、固定側ドラム130はアウタープレート122に其々一体的に固定されている。本実施態様では、高さ調節機構が設けられていないが故に、スライドカムの平行カム面αを充分長くすることで内外スライドの開始位置を操作範囲の後半の起立収納位置の直前に特定して、窮屈感の無いものにしてある。
【0028】
以上の如く本発明のアームレスト装置100における内外スライドカム機構は固定側部品又は可動側部品の少なくとも何れか一方の端面又は周壁部に、軸方向に高低差のある傾斜カム面を設けてスライドカムを構成し、その傾斜面と相手部品を接触させスライドさせるものである。このカムの設置場所はアームレスト本体110とアームレストフレーム支持部のいずれでも良い。また、回転カムを一体に設けた樹脂製アームレスト本体にすることも可能で、材質や部材数の選択も自由である。
【0029】
さらに、上記いずれかのアームレスト装置100を設けたシートを提供することにより、使用状態においてはシート内幅がゆとりのある幅広となり、一方収納は幅狭コンパクトになる。その切り替え操作は回転操作だけのワンタッチである。更に、アームレストのガード効果からシートそのものの小型化を可能にし、広い分野への利用を可能にした。中でも、限られた室内空間である自動車シートに好適で、今日まで取付け出来なかった小型の車であってもガード効果によって安全であり、ゆとりあるシートの内幅や室内通路幅の確保、シートベルト着脱時の障害への対応、シート折畳み時の障害への対応等、小型、軽量、安全で快適な自動車室内の提供に寄与できる。
【符号の説明】
【0030】
100 アームレスト装置
110 アームレスト本体
111 アームレストフレーム
111a ガイド片
111b 第一押圧部
111c 第二押圧部
112 アームレストフレーム支持軸
113 ロックスプリング
114 表皮材
120 アームレスト支持部
121 固定側カム(固定側部品)
121a 突片(軸方向へ高い部分)
121b 被係合部
122 アウタープレート(固定側部品)
122a フランジ部
122b 周壁部
122c 凹部
122d 凹部の裏側の倒伏方向を向く縦壁面
122e 凹部の裏側の起立方向を向く縦壁面
122f 案内溝
122g 傾斜案内部
122h 第一平行案内部
122i 第二平行案内部
123 ボトムプレート(固定側部品)
125 可動側カム(可動側部品)
125a 突片(軸方向へ高い部分)
125b 係合部
126 インナープレート(可動側部品)
126a フランジ部
126b フランジ部における起立方向を向く端面(第一掛止部)
126c フランジ部における倒伏方向を向く端面(第二掛止部)
126d 案内ピン
127 ガイドリング(可動側部品)
128 押付スプリング(可動側部品)
129 取付プレート
129a フランジ端(起立方向側)
129b フランジ端(倒伏方向側)
130 固定側ドラム
130a 案内溝
131 可動側ドラム
131a 案内ピン
200 シート
210 シートバック
211 シートバックフレーム
220 シート座面
230 ヘッドレスト
A 可動側部品群の回動方向(軸Lの周回方向)
起立方向
倒伏方向
下限位置
収縮動作開始位置
上限位置
拡張動作開始位置
L 中心線
a 掛止部
b 溶接部
c 溶接部
d 掛止部
e 掛止部
f ボルト部
g ボルト部
α 傾斜カム面
α 平行カム面(軸方向へ高い部分)
α 垂直掛止面
β 傾斜カム面
β 平行カム面(軸方向へ高い部分)
β 垂直掛止面
θ アームレスト本体の起立角度
θ 収縮動作開始角度
θ 拡張動作開始角度
θ 起立上限角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームレスト本体とシートバック側に設けたアームレスト支持部からなるもので、倒伏状態で使用し起立状態で収納する回転方式のアームレスト装置であって、固定側部品と可動側部品からなり、その一方の部品に高低差が軸方向の傾斜カム面を設け、他方の部品にそれと接触する接触部を設けてスライドカム機構を構成し、該スライドカム機構により、使用の際はアームレスト本体の倒伏方向回転で外方向にスライド(以下、外スライドと称す)させてシート内幅を幅広とし、収納の際にはアームレスト本体の起立方向回転で内方向にスライド(以下、内スライドと称す)させてシートバック側面に幅狭に収納することを特徴とするアームレスト装置。
【請求項2】
アームレスト本体の、幅広の倒伏使用状態から行う軸方向の内外スライドが起立収納を行う際の操作角度の後半部分である請求項1記載のアームレスト装置。
【請求項3】
バネロック構造の高さ調節機能を具備するアームレストであって、その高さ調節操作の抵抗が軸方向へのスライド抵抗より小さい構造の請求項2記載のアームレスト装置。
【請求項4】
シートの側方に、請求項1〜3いずれか記載のアームレスト装置を設けたアームレスト装置付きシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−96632(P2012−96632A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244964(P2010−244964)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(591283501)備前発条株式会社 (33)
【Fターム(参考)】