説明

イオンビームのビーム幅、発散角の測定方法およびイオン注入装置

【課題】 X方向に平行走査されるイオンビームのX方向のビーム幅を、更には発散角を、簡単にかつ精度良く測定する。
【解決手段】 X方向において互いに離間して配置された二つのビーム計測器36、38を横切るようにイオンビーム4を走査して、各ビーム計測器36、38におけるビーム電流の流入開始時点Ta 、Tc 、流入終了時点Tb 、Td をそれぞれ求め、これらの時点と、各ビーム計測器のビーム入射孔37、39のX方向の幅Wd1、Wd2と、両ビーム入射孔のX方向の中心間距離Ld とに基づいて、イオンビーム4のX方向の予備的なビーム幅Dを求める。また、このビーム幅Dを用いてイオンビーム4の適切な走査距離を設定し、その状態でのイオンビーム4のビーム幅を求める。また、当該ビーム幅をイオンビーム4の進行方向Zの前後2箇所で求めて、イオンビーム4の発散角を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、X方向(例えば水平方向。以下同様)に実質的に平行走査されるイオンビームを基板(例えば半導体基板。以下同様)に照射する構成のイオン注入装置におけるイオンビームのX方向のビーム幅の測定方法、発散角の測定方法、ビーム走査距離の設定方法、および、これらの方法を実施することができるイオン注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、X方向に平行走査されるイオンビームの進行方向の相対的に上流側および下流側に設けられた二つの多点ビームモニタを用いて、イオンビームの平行度を測定する平行度測定方法が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特許第2969788号公報(第8欄、第1図、第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の平行度測定方法は、イオンビームの重心を上流側および下流側において測定することによって、イオンビームのX方向(走査方向)における重心の軌道を測定する方法であって、イオンビームの寸法(ビーム幅)や発散角を測定する方法については、特許文献1には記載されていない。
【0005】
なお、イオンビームと言う場合、一般的に、(a)走査の元になる断面の相対的に小さいイオンビームを指す場合と、(b)走査されて広がって断面の相対的に大きいイオンビーム全体を指す場合の両方があるが、この明細書においてビーム幅、発散角等に着目しているのは、前者(a)のイオンビームについてのものである。このイオンビームを、後者(b)のイオンビームと区別するために、スポット状のイオンビームと呼んでいる文献もある。
【0006】
イオンビームは、その空間電荷効果によって発散する性質を有している。これは、イオンビームが大電流かつ低エネルギーになるほど大きくなる。このイオンビームのビーム幅および発散角にはX方向のものとY方向(X方向と実質的に直交する方向。例えば垂直方向。以下同様)のものとがあるけれども、この明細書ではX方向のものに着目している。
【0007】
このイオンビームのX方向のビーム幅やX方向の発散角が、基板に対するイオン注入特性等に影響することが最近分かってきた。特に、基板が大型化すると共に、その表面に形成されるデバイス(例えば半導体デバイス。以下同様)が微細化するほど、影響が大きくなる。
【0008】
例えば、イオンビームをX方向に平行走査することと、基板をY方向に沿って機械的に走査することとを併用して、基板の全面にイオン注入を行う場合、どのようなビーム幅のイオンビームを用いるかによって、基板全面のイオンビームによる言わば塗りつぶし方に影響するので、上記ビーム幅が注入均一性に影響する。この影響は、基板が大型化するほど大きくなる。
【0009】
また、イオンビームの発散角が大きいと、基板の表面に形成されるデバイス上に、イオンビームが入射しない陰の部分が生じるので、デバイスの特性を悪化させる。デバイスが微細化するほど、この発散角による陰発生の問題は深刻になる。
【0010】
上記課題に対処するためには、まずは、イオンビームのX方向のビーム幅および発散角を知る必要がある。
【0011】
その一方法として、イオンビームの上記ビーム幅および発散角を、シミュレーションによって求めることが考えられるけれども、現実には、イオンビームの空間電荷効果を精度良く評価できる実用的な計算モデルは無いので、特に低エネルギー大電流のイオンビームについては正しいシミュレーションは困難であるので、精度の良いシミュレーション結果を得ることは困難である、という課題がある。
【0012】
そこでこの発明は、X方向に実質的に平行走査されるイオンビームのX方向のビーム幅を、簡単にかつ精度良く測定することができるビーム幅測定方法およびイオン注入装置を提供することを一つの目的としている。
【0013】
また、同イオンビームのX方向の走査距離を、ビーム幅に応じて、適切なものに設定することができるビーム走査距離設定方法およびイオン注入装置を提供することを他の目的としている。
【0014】
また、同イオンビームのX方向の発散角を、簡単にかつ精度良く測定することができる発散角測定方法およびイオン注入装置を提供することを更に他の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明に係る第1のビーム幅測定方法は、X方向に実質的に平行走査されるイオンビームを基板に照射する構成のイオン注入装置におけるイオンビームについての測定方法であって、(a)イオンビームを受けてそのビーム電流を計測するものであってX方向において互いに離間して配置された第1および第2のビーム計測器を用いて、(b)両ビーム計測器を横切るようにイオンビームを走査して、各ビーム計測器に流入するビーム電流の時間的変化をモニタすることにより、各ビーム計測器におけるビーム電流の流入開始時点および流入終了時点をそれぞれ求め、(c)これらの時点の内の少なくとも三つの時点と、各ビーム計測器のビーム入射孔のX方向の幅と、両ビーム計測器のビーム入射孔のX方向の中心間距離とに基づいて、前記イオンビームのX方向の予備的なビーム幅を求めることを特徴としている。
【0016】
この第1のビーム幅測定方法によれば、イオンビームの走査と第1および第2のビーム計測器とを用いることによって、イオンビームのX方向の予備的なビーム幅を、簡単にかつ精度良く測定することができる。
【0017】
前記第1のビーム幅測定方法に従って、前記予備的なビーム幅をビーム走査の往路および復路の両方において求め、かつ当該求めた両方のビーム幅を相加平均して前記イオンビームのX方向の予備的なビーム幅としても良い(この場合を第2のビーム幅測定方法と呼ぶ)。
【0018】
この発明に係る第1のビーム走査距離設定方法は、(a)イオンビームを受けてそのビーム電流を計測するものであってX方向において互いに離間して配置された第3および第4のビーム計測器を用いて、両ビーム計測器を横切るようにイオンビームを走査して、各ビーム計測器に流入するビーム電流の時間的変化をモニタし、(b)前記第1または第2のビーム幅測定方法に従って求めたイオンビームの前記予備的なビーム幅と、前記第3および第4のビーム計測器のそれぞれのビーム入射孔のX方向の幅と、両ビーム計測器のX方向の中心間距離とに基づいて、第3のビーム計測器にビーム電流が流入開始する位置でのイオンビームと、第4のビーム計測器においてビーム電流が流入終了する位置でのイオンビームとの間のX方向の距離である第1の走査距離を求め、(c)当該第1の走査距離よりも大きい第2の走査距離に前記イオンビームのX方向の走査距離を設定することを特徴としている。
【0019】
この第1のビーム走査距離設定方法によれば、イオンビームのX方向の予備的なビーム幅を用いて求めた第1の走査距離に基づいて、それよりも大きい第2の走査距離にイオンビームのX方向の走査距離を設定するので、イオンビームのX方向の走査距離を、最適な走査距離に設定することが容易になる。
【0020】
前記第3のビーム計測器は前記第1のビーム計測器と、前記第4のビーム計測器は前記第2のビーム計測器と、それぞれ同じものであっても良い(この場合を第2のビーム走査距離設定方法と呼ぶ)。
【0021】
この発明に係る第3のビーム幅測定方法は、(a)前記第1または第2のビーム走査距離設定方法に従って設定された前記第2の走査距離内に位置していてイオンビームを受けてそのビーム電流を計測する第5のビーム計測器を横切るようにイオンビームを所定の走査周期で、かつ前記第2の走査距離で走査して、(b)当該走査周期と第2の走査距離とから定まるイオンビームの走査速度と、第5のビーム計測器におけるビーム電流の流入開始時点と流入終了時点との間の時間差と、第5のビーム計測器のビーム入射孔のX方向の幅とに基づいて、第5のビーム計測器の位置におけるイオンビームのX方向のビーム幅を求めることを特徴としている。
【0022】
この第3のビーム幅測定方法によれば、イオンビームの走査周期と第2の走査距離とから定まるイオンビームの走査速度を用いることによって、イオンビームの第2の走査距離内の所望位置の第5のビーム計測器の位置におけるイオンビームのX方向のビーム幅を簡単にかつ精度良く測定することができる。
【0023】
前記第5のビーム計測器をX方向に複数個配置しておいて、前記第3のビーム幅測定方法に従って、イオンビームのX方向のビーム幅をX方向の複数位置において測定しても良い。
【0024】
この発明に係る第1の発散角測定方法は、(a)前記第5のビーム計測器として、前記イオンビームの進行方向の前後2箇所に互いに離間して配置されていてイオンビームを受けてそのビーム電流を計測する前段ビーム計測器および後段ビーム計測器を用いて、(b)互いにX方向に関して実質的に同じ位置において、前記第3のビーム幅測定方法に従って、前記前後2箇所でのイオンビームのX方向のビーム幅をそれぞれ求め、(c)かつ両ビーム幅の差と前記離間の距離とに基づいて、前記イオンビームのX方向の発散角を測定することを特徴としている。
【0025】
この第1の発散角測定方法によれば、イオンビームの進行方向の2箇所で、しかもX方向に関して実質的に同じ位置において、イオンビームのX方向のビーム幅を求め、それらを用いて発散角を求めるので、第2の走査距離内の所定位置におけるイオンビームのX方向の発散角を簡単にかつ精度良く測定することができる。
【0026】
前記前段ビーム計測器および後段ビーム計測器をそれぞれX方向に複数個ずつ配置しておいて、前記第1の発散角測定方法に従って、前記イオンビームのX方向の発散角をX方向の複数位置において測定しても良い。
【0027】
この発明に係るイオン注入装置は、イオンビームをX方向に走査するビーム走査手段と、当該ビーム走査手段と協働してイオンビームをX方向に実質的に平行走査するビーム平行化手段とを備えていて、X方向に実質的に平行走査されるイオンビームを基板に照射する構成のイオン注入装置であって、上記各方法で用いているものに相当するビーム計測器と、上記各方法の内容に相当する演算制御を行う機能を有している制御装置とを備えている。
【発明の効果】
【0028】
請求項1、9に記載の発明によれば、イオンビームの走査と第1および第2のビーム計測器とを用いることによって、イオンビームのX方向の予備的なビーム幅を、簡単にかつ精度良く測定することができる。
【0029】
請求項2、10に記載の発明によれば、次の更なる効果を奏する。即ち、予備的なビーム幅を走査の往路および復路の両方において求め、かつ求めた両方のビーム幅を相加平均してイオンビームのX方向の予備的なビーム幅とするので、当該ビーム幅の測定精度をより高めることができる。
【0030】
請求項3、11に記載の発明によれば、次の更なる効果を奏する。即ち、イオンビームのX方向の予備的なビーム幅を用いて求めた第1の走査距離に基づいて、それよりも大きい第2の走査距離にイオンビームのX方向の走査距離を設定するので、イオンビームのX方向の走査距離を、最適な走査距離に設定することが容易になる。
【0031】
請求項4、12に記載の発明によれば、次の更なる効果を奏する。即ち、イオンビームのX方向の予備的なビーム幅を求めるときと同じビーム計測器を用いて第1の走査距離を求めることができるので、第1の走査距離を求めるときと同じ位置で測定した予備的なビーム幅を用いることができる。従って、第1の走査距離をより正確に求めることができ、ひいては第2の走査距離をより正確に設定することができる。しかも、測定に必要なビーム計測器の数を減らすことができる。
【0032】
請求項5、13に記載の発明によれば、次の更なる効果を奏する。即ち、イオンビームの走査周期と第2の走査距離とから定まるイオンビームの走査速度を用いることによって、イオンビームの第2の走査距離内の所望位置の第5のビーム計測器の位置におけるイオンビームのX方向のビーム幅を簡単にかつ精度良く測定することができる。
【0033】
請求項6、14に記載の発明によれば、次の更なる効果を奏する。即ち、イオンビームのX方向のビーム幅をX方向の複数位置において測定することができる。従って例えば、ビーム幅のX方向における分布を測定することができる。
【0034】
請求項7、15に記載の発明によれば、次の更なる効果を奏する。即ち、イオンビームの進行方向の2箇所で、しかもX方向に関して実質的に同じ位置において、イオンビームのX方向のビーム幅を求め、それらを用いて発散角を求めるので、第2の走査距離内の所定位置におけるイオンビームのX方向の発散角を簡単にかつ精度良く測定することができる。
【0035】
請求項8、16に記載の発明によれば、次の更なる効果を奏する。即ち、イオンビームのX方向の発散角をX方向の複数位置において測定することができる。従って例えば、発散角のX方向における分布を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
(1)イオン注入装置全体の構成
図1は、この発明に係るイオン注入装置の一実施形態を示す概略平面図である。この明細書および図面においては、イオンビーム4の設計上の進行方向を常にZ方向としており、このZ方向と実質的に直交する平面内において互いに実質的に直交する2方向が前記X方向およびY方向である。例えば、X方向およびZ方向は水平方向であり、Y方向は垂直方向である。「設計上の進行方向」というのは、換言すれば、所定の進行方向、即ち本来進むべき進行方向のことである。
【0037】
このイオン注入装置は、イオンビーム4を射出する(引き出す)イオン源2と、このイオン源2からのイオンビームが入射され当該イオンビーム4から所望質量のイオンビーム4を分離して取り出す質量分離器6と、この質量分離器6からのイオンビーム4が入射され当該イオンビーム4を加速または減速する加減速器8と、この加減速器8からのイオンビーム4が入射され当該イオンビーム4から所望エネルギーのイオンビーム4を分離して取り出すエネルギー分離器10と、このエネルギー分離器10からのイオンビーム4が入射され当該イオンビーム4をX方向に走査するビーム走査器12と、このビーム走査器12からのイオンビーム4が入射され当該イオンビーム4を曲げてビーム走査器12と協働してイオンビーム4をX方向に平行走査するビーム平行化器14と、このビーム平行化器14からのイオンビーム4の照射領域内で基板16をY方向に沿う方向に機械的に往復走査(往復駆動)する基板駆動装置20とを備えている。
【0038】
質量分離器6は、例えば、磁界によってイオンビーム4の質量分離を行う質量分離電磁石である。加減速器8は、例えば、複数枚の電極を有していて静電界によってイオンビーム4の加減速を行う加減速管である。エネルギー分離器10は、例えば、磁界によってイオンビーム4のエネルギー分離を行うエネルギー分離電磁石である。ビーム走査器12は、例えば、磁界によってイオンビーム4の走査を行う走査電磁石である。ビーム平行化器14は、例えば、磁界によってイオンビーム4の平行化を行うビーム平行化電磁石である。基板駆動装置20は、基板16を保持するホルダ18を有している。
【0039】
ビーム走査器12およびそれにビーム走査用の電力を供給する走査電源13が前記ビーム走査手段を構成しており、ビーム平行化器14が前記ビーム平行化手段を構成している。
【0040】
上記構成によって、所望の質量および所望のエネルギーのイオンビーム4をX方向に平行走査しながら基板16に照射すると共に、このイオンビーム4に対して基板16をY方向に沿う方向に機械的に往復走査して、基板16の全面にイオンビーム4を照射してイオン注入を行うことができる。このように、イオンビーム4の電気的または磁気的な走査と基板16の機械的な走査とを併用する方式は、ハイブリッドスキャン方式と呼ばれる。
【0041】
イオンビーム4の断面形状は、図4、図5等では一例として円形で図示しているが、それに限られるものではない。例えば、長円形、楕円形、四角形等でも良い。イオンビーム4は、図2、図3では図示の簡略化のために太線で示しているけれども、実際は上記のような断面形状をしている。
【0042】
図2、図3に示すように、基板16の近傍におけるイオンビーム4の進行方向Zの相対的に上流側および下流側に、より具体的にはこの例では、基板16の位置を挟んだ上流側および下流側に、互いに距離(離間の距離)Lを隔てて、前段ファラデー装置30および後段ビームモニタ50が設けられている。但し、前段ファラデー装置30および後段ビームモニタ50は、必ずしもこの例のように基板16を挟んでいなくても良い。
【0043】
前段ファラデー装置30は、この例では、イオンビーム4を基板16に入射させるときにイオンビーム4を通過させる開口33およびイオンビーム4を後段ビームモニタ50に入射させるときにイオンビーム4を通過させる開口34を有するマスク板32と、イオンビーム4を受けてそのビーム電流をそれぞれ計測するものであってX方向において互いに離間して配置された第1のビーム計測器36および第2のビーム計測器38と、X方向に所定の間隔で並設されていてイオンビーム4を受けてそのビーム電流をそれぞれ計測する複数m個のビーム計測器42を有する前段ビームモニタ40とを備えている。
【0044】
ビーム計測器36および38は、この実施形態では、開口33のX方向の両外側近傍に設けられている。開口33およびビーム計測器36、38と、開口34と、前段ビームモニタ40とは、Y方向に3段に配置されている。
【0045】
ビーム計測器36および38は、Z方向に関して互いに実質的に同じ位置に配置されている。その位置(例えば入口の位置)をZf とする。前段ビームモニタ40を構成する各ビーム計測器42も、Z方向に関してそれぞれ同じ位置に配置されている。その位置(例えば入口の位置)は、この例ではビーム計測器36および38と同じ位置Zf である。
【0046】
後段ビームモニタ50は、X方向に所定の間隔で並設されていてイオンビーム4を受けてそのビーム電流をそれぞれ計測する複数n個のビーム計測器52を有している。各ビーム計測器52は、Z方向に関してそれぞれ同じ位置に配置されている。その位置(例えば入口の位置)をZb とする。この位置Zb と前記位置Zf 間のZ方向における距離が、前記離間の距離Lである。
【0047】
上記m、nは、それぞれ、2以上の整数である。例えば、10〜20程度である。
【0048】
各ビーム計測器36、38、42、52は、実際はイオンビーム進行方向Zに奥行を有しているが(例えば図7参照)、図2、図3では図示の簡略化のために奥行を省略している。各ビーム計測器36、38、42、52は、イオンビーム4を受け入れるビーム入射孔37、39、43、53をそれぞれ有している(図4、図5も参照)。各ビーム計測器36、38、42、52は、例えばファラデーカップである。
【0049】
前段ファラデー装置30は、前段ファラデー駆動装置26によって、軸28を介して、矢印Aに示すようにY方向に少なくとも3段階に昇降させられる。例えば、前段ビームモニタ40にイオンビーム4を入射させて測定を行うときは、図2に示すように、前段ファラデー装置30は上部位置に位置させられる。後段ビームモニタ50にイオンビーム4を入射させて測定を行うときは、図3に示すように、前段ファラデー装置30は中間位置に位置させられる。なお、後段ビームモニタ50にイオンビーム4を入射させるときは、基板16は基板駆動装置20によってイオンビーム4の経路外へ退避させておく。基板16にイオンビーム4を入射させてイオン注入を行うとき、および、ビーム計測器36、38にイオンビーム4を入射させて測定を行うときは、前段ファラデー装置30は図3よりも更に下の下部位置に位置させられる。
【0050】
このイオン注入装置は、更に、制御装置60を備えている。この制御装置60には、ビーム計測器36、38でそれぞれ計測したビーム電流情報、前段ビームモニタ40を構成する各ビーム計測器42でそれぞれ計測したm個のビーム電流情報、後段ビームモニタ50を構成する各ビーム計測器52でそれぞれ計測したn個のビーム電流情報等が取り込まれる。この制御装置60は、(a)上記基板駆動装置20を制御して基板16を上記のように機械的に駆動する制御を行う機能、(b)上記前段ファラデー駆動装置26を制御して前段ファラデー装置30を上記のように3段階に昇降させる制御を行う機能、(c)更には、後述する各種の演算や制御を行う機能を有している。
【0051】
(2)イオンビームの予備的なビーム幅Dの測定
次に、イオンビーム4のX方向の予備的なビーム幅Dを求めるビーム幅測定方法およびイオン注入装置について説明する。「予備的な」と言っているのは、ここで予め求めたビーム幅Dを、後述するイオンビーム4の走査距離Lb1、Lb2、ビーム幅Wb を求めたり設定したりすること等に用いることができるからである。
【0052】
この測定には、例えば、上記第1および第2のビーム計測器36および38を用いる。図4を参照して、上記ビーム計測器36、38のビーム入射孔37、39のX方向の幅をそれぞれWd1、Wd2、X方向の中心間距離をLd とする。
【0053】
両ビーム計測器36、38を横切るようにイオンビーム4を走査する。この場合、イオンビーム4は、両ビーム計測器36、38のビーム入射孔37、39を確実に通り過ぎるように走査するものとする。
【0054】
また、この実施形態では、測定時のイオンビーム4を次のように取り扱っている。これは、実際のイオン注入装置におけるものに近いものであり、合理的なものである。即ち、(a)イオンビーム4の走査速度は、場所に依らずに実質的に一定とする。「実質的に一定」というのは、完全に一定ではなくても、若干の(例えば数%程度の)速度のばらつきは許容する意味である。但し、この走査速度の具体的な値は、この段階では分かる必要はない。(b)イオンビーム4のX方向のビーム幅は、仮にX方向の位置によって変化することがあるとしても、急激には変化しないものと考える。即ち、近接する位置でのビーム幅は一定とみなすことができる。そこでここでは、ビーム入射孔37付近でのビーム幅をD1 、ビーム入射孔39付近でのビーム幅をD2 としている。
【0055】
イオンビーム4の上記実質的に一定の走査速度は、例えば、(a)上記ビーム走査器12に走査電源13から周期および振幅が一定の三角波(これを基本三角波と呼ぶ)の走査電流または走査電圧を供給することによって実現することができる。また、(b)上記特許文献1に記載の方法に従って、基本三角波を波形整形した後の波形の走査電流または走査電圧を走査電源13からビーム走査器12に供給することによっても実現することができる。後者(b)の方が、より一定の走査速度を実現することができる。上記(a)の基本三角波を用いる場合は、場合によっては上記(b)の走査波形を用いる場合に比べて測定誤差が若干(例えば数%程度)大きくなる可能性がある。従ってより正確な測定を行うためには、上記(b)の走査波形を用いても良い。
【0056】
そして、上記のように両ビーム計測器36、38を横切るようにイオンビーム4を実質的に一定の走査速度で走査して、各ビーム計測器36、38に流入するビーム電流の時間的変化をモニタすることにより、各ビーム計測器36、38におけるビーム電流の流入開始時点および流入終了時点をそれぞれ求め、これらの時点の内の少なくとも三つの時点と、各ビーム計測器36、38のビーム入射孔37、39のX方向の幅と、両ビーム計測器のビーム入射孔37、39のX方向の中心間距離とに基づいて、イオンビーム4のX方向の予備的なビーム幅を求める。
【0057】
より具体例を挙げると、両ビーム計測器36、38を横切るようにイオンビーム4を走査して、ビーム走査の片道において、例えば図4Bに示す往路において、初めにイオンビーム4が横切る方のビーム計測器36にビーム電流が流入し始める流入開始時点Ta 、流入し終わる流入終了時点Tb 、次にイオンビーム4が横切る方のビーム計測器38にビーム電流が流入し始める流入開始時点Tc および流入し終わる流入終了時点Td を測定する。
【0058】
流入開始時点Ta 、Tc は、例えば、流入するビーム電流が0を超えた時点でも良いけれども、ノイズの影響を避けるためには、所定のしきい値を超えた時点にしても良い。例えば、流入するビーム電流のピーク値の数%をしきい値とする。あるいは、複数のしきい値を場合に応じて切り換えるようにしても良い。
【0059】
流入終了時点Tb 、Td も、例えば、流入するビーム電流が0になった時点でも良いけれども、ノイズの影響を避けるためには、所定のしきい値を下回った時点にしても良い。例えば、流入するビーム電流のピーク値の数%をしきい値とする。あるいは、複数のしきい値を場合に応じて切り換えるようにしても良い。
【0060】
後述する時点Te 、Tf (図5参照)の測定についても、上記と同様である。
【0061】
前述したように、イオンビーム4の走査速度は実質的に一定であるので、それをvとすると、次式が成立する。
【0062】
[数1]
v=(Ld +Wd1/2+Wd2/2+D1 /2+D2 /2)/(Td −Ta )=(Ld −Wd1/2−Wd2/2−D1 /2−D2 /2)/(Tc −Tb
【0063】
ここで、式を簡単にするために、次式とおく。このDは、D1 とD2 の平均(相加平均。以下同様)のビーム幅を、Wd はWd1とWd2の平均の幅を、それぞれ表している。また実際に、ビーム入射孔37の幅Wd1とビーム入射孔39の幅Wd2とを、互いに等しい幅Wd としても良い。以下に述べる他の測定方法等においても同様である。
【0064】
[数2]
D=(D1 +D2 )/2
d =(Wd1+Wd2)/2
【0065】
これを数1に代入すると、次式が得られる。
【0066】
[数3]
v=(Ld +Wd +D)/(Td −Ta )=(Ld −Wd −D)/(Tc −Tb
【0067】
これをビーム幅Dについて整理すると次式となるので、次式(またはそれと数学的に等価の式。他の式についても同様)に基づいて、イオンビーム4のX方向の予備的なビーム幅Dを求める。
【0068】
[数4]
D=Ld {(Td −Tc +Tb −Ta )/(Td +Tc −Tb −Ta )}−Wd
【0069】
上記数1〜数4によるビーム幅Dの求め方は、四つの時点Ta 、Tb 、Tc 、Td に着目して、時点Td とTa 間における走査速度と、時点Tc とTb 間における走査速度とが互いに等しいとした場合の例であるが、それ以外の方法によってビーム幅Dを求めても良い。
【0070】
例えば、三つの時点Ta 、Tc 、Td に着目して、時点Tc とTa 間の走査速度と、時点Td とTa 間の走査速度とが互いに等しいとして、ビーム幅Dを求めても良い。この場合、式を簡単にするために、上記数2に示したような、ビーム入射孔37および39の平均の幅Wd と、イオンビーム4の平均のビーム幅Dを用いると、次式からビーム幅Dを求めることができる。同様の考えで、他の三つの時点に着目してビーム幅Dを求めても良い。
【0071】
[数5]
D=Ld (Td −Ta )/(Tc −Ta )−Ld −Wd
【0072】
このビーム幅測定方法によれば、イオンビーム4の走査と第1および第2のビーム計測器36、38とを用いることによって、イオンビーム4のX方向の予備的なビーム幅Dを、簡単にかつ精度良く測定することができる。
【0073】
制御装置60(図2参照)は、この実施形態では、上記ビーム幅測定方法の内容に相当する演算制御を行う機能を有している。即ち、制御装置60は、ビーム走査手段を構成する走査電源13(図1参照)を制御して、ビーム計測器36、38を横切るようにイオンビーム4を実質的に一定の走査速度で走査して、各ビーム計測器36、38に流入するビーム電流の時間的変化をモニタすることにより、各ビーム計測器36、38におけるビーム電流の流入開始時点および流入終了時点をそれぞれ求め、これらの時点の内の少なくとも三つの時点と、各ビーム計測器のビーム入射孔37、39のX方向の幅と、両ビーム計測器のビーム入射孔37、39のX方向の中心間距離とに基づいて、上記イオンビーム4のX方向の予備的なビーム幅Dを求める機能を有している。
【0074】
この場合、ビーム電流以外の必要な情報は、例えば上記幅Wd1、Wd2、中心間距離Ld は、制御装置60に与えて(例えば設定して。以下同様)、制御装置60内に記憶しておけば良い(後述する他の実施形態においても同様)。
【0075】
従って、このような制御装置60を備えているこの実施形態のイオン注入装置によれば、上記ビーム幅測定方法と同様の効果を奏することができると共に、測定の省力化を図ることができる。
【0076】
なお、ビーム走査の復路においても、往路の場合と同様にして、上記数4、数5等に基づいて、イオンビーム4のX方向の予備的なビーム幅Dを求めることができる。
【0077】
従って、ビーム計測器36および38を往復して横切るようにイオンビーム4を往復走査して、ビーム幅Dをビーム走査の往路および復路の両方において求めても良い。往路における上記時点Ta 〜Td をT1 〜T4 、ビーム幅をDa とし、復路における上記時点Ta 〜Td をT5 〜T8 、ビーム幅をDb とすると、例えば上記数4から、両ビーム幅Da 、Db は次式で表すことができるので、それを求める。
【0078】
[数6]
a =Ld {(T4 −T3 +T2 −T1 )/(T4 +T3 −T2 −T1 )}−Wd
【0079】
[数7]
b =Ld {(T8 −T7 +T6 −T5 )/(T8 +T7 −T6 −T5 )}−Wd
【0080】
そして、両ビーム幅Da 、Db を次式のように平均して、イオンビーム4の予備的なビーム幅Dとしても良い。
【0081】
[数8]
D=(Da +Db )/2
【0082】
このビーム幅測定方法は、予備的なビーム幅を走査の往路および復路の両方において求め、かつ求めた両方のビーム幅を平均してイオンビーム4のX方向の予備的なビーム幅Dとするので、当該ビーム幅Dの測定精度をより高めることができる。
【0083】
制御装置60は、この実施形態では、このビーム幅測定方法の内容に相当する演算制御を行う機能を更に有している。即ち、制御装置60は、走査電源13を制御して、ビーム計測器36、38を往復して横切るようにイオンビーム4を往復走査して、イオンビーム4のX方向の予備的なビーム幅をビーム走査の往路および復路の両方において求め、かつ当該求めた両方のビーム幅を平均したものをイオンビーム4のX方向の予備的なビーム幅Dとする機能を更に有している。
【0084】
従って、このような制御装置60を備えているこの実施形態のイオン注入装置によれば、上記ビーム幅測定方法と同様の効果を奏することができると共に、測定の省力化を図ることができる。
【0085】
なお、上記第1および第2のビーム計測器36、38は、図11に示す例のように、上記ビーム入射孔37、39を有するマスク板46と、その後方(イオンビーム4の進行方向Z側)近傍に設けられた共通のビーム計測器48とで構成しても良い。この場合、一方のビーム入射孔37とその後方部のビーム計測器48とが第1のビーム計測器36を構成しており、他方のビーム入射孔39とその後方部のビーム計測器48とが第2のビーム計測器38を構成しているとみることができる。ビーム計測器48は、例えばファラデーカップである。マスク板46は上記マスク板32と同じものでも良い。このような構成によっても、図4に示したのと同様のビーム電流波形を計測することができる。
【0086】
後述する第3および第4のビーム計測器、前段ビームモニタ40を構成する複数のビーム計測器42、後段ビームモニタ50を構成する複数のビーム計測器52も、上記のような構成を採用しても良い。
【0087】
また、上記第1および第2のビーム計測器36、38として、例えば、上記前段ビームモニタ40を構成する複数のビーム計測器42の内の二つを用いても良い。
【0088】
(3)イオンビームの第2の走査距離Lb2の設定
イオンビーム4の上記ビーム幅Dが分かると、それに基づいて、当該ビーム幅Dに依存しているイオンビーム4のX方向の第1の走査距離(図4中の走査距離Lb1参照)を求めることができ、更に当該第1の走査距離に基づいて、イオンビーム4のX方向の第2の走査距離(図5、図10中の走査距離Lb2参照)を設定することができる。それを行うビーム走査距離設定方法およびイオン注入装置について以下に説明する。
【0089】
この場合は、(a)イオンビーム4を受けてそのビーム電流を計測するものであってX方向において互いに離間して配置された第3および第4のビーム計測器を用いて、両ビーム計測器を横切るようにイオンビーム4を実質的に一定の走査速度で走査して、各ビーム計測器に流入するビーム電流の時間的変化をモニタし、(b)上記ビーム幅測定方法に従って求めたイオンビームの予備的なビーム幅Dと、上記第3および第4のビーム計測器のそれぞれのビーム入射孔のX方向の幅と、両ビーム計測器のX方向の中心間距離とに基づいて、第3のビーム計測器にビーム電流が流入開始する位置でのイオンビームと、第4のビーム計測器においてビーム電流が流入終了する位置でのイオンビームとの間のX方向の距離である第1の走査距離を求め、(c)当該第1の走査距離よりも大きい第2の走査距離にイオンビーム4のX方向の走査距離を設定する。
【0090】
この第3のビーム計測器は上記第1のビーム計測器36と、第4のビーム計測器は上記第2のビーム計測器38と、それぞれ別のものであっても良いし、それぞれ同じものであっても良い。同じものである場合の例を主体にして、ビーム走査距離設定方法のより具体例を以下に説明する。
【0091】
図4を参照して、まず、上記走査幅設定方法の場合と同様にイオンビーム4を実質的に一定の走査速度で走査して、上記ビーム幅Dと、ビーム計測器36、38のビーム入射孔37、39の幅Wd1、Wd2と、両ビーム計測器36、38(より具体的にはそのビーム入射孔37、39)のX方向の中心間距離Ld とに基づいて、ビーム計測器36にビーム電流が流入開始する位置(即ち流入開始時点Ta )でのイオンビーム4と、ビーム計測器38においてビーム電流が流入終了する位置(即ち流入終了時点Td )との間のX方向の距離である第1の走査距離Lb1を次式に基づいて求める。
【0092】
[数9]
b1=Ld +Wd1/2+Wd2/2+D
【0093】
この場合も、数2の場合と同様の考えで、Wd =(Wd1+Wd2)/2とおけば、次式が得られる。
【0094】
[数10]
b1=Ld +Wd +D
【0095】
上記第1の走査距離Lb1は、言わば、イオンビーム4が両ビーム計測器36、38を横切ることができる最小の走査距離である。この走査距離Lb1を以下においてそのまま用いるよりも、以下の各種測定や基板16への均一なイオン注入を行うためには、この走査距離Lb1に基づいて、次のようにして、第2の走査距離Lb2を設定するのが好ましい。
【0096】
両ビーム計測器36、38と基板16とのX方向における位置関係について考えると、両ビーム計測器36、38は、例えば、図8に示す例のように、基板16のX方向における両外側に近接配置されている。
【0097】
この場合、イオンビーム4を上記数10で求めた走査距離Lb1で走査すると、例えば図9に示す例のように、何らかの原因でイオンビーム4のビーム幅Dが、上記測定によって求めたビーム幅D(図8参照)から変わった場合に、両ビーム計測器36、38において、ビーム電流の流入開始時点および流入終了時点の一方を正しく計測することができなくなる。従ってこの場合は、ビーム計測器36、38を用いて、イオンビーム4のX方向のビーム幅を正しく測定することができなくなる。
【0098】
また、基板16の面内に均一なイオン注入を実施するためには、通常は余裕を持たせて、基板16に対して均一な注入が行えるように、基板16よりも大きくイオンビーム4を走査する(即ちオーバースキャンする)必要があり、この場合も、何らかの原因でビーム幅Dが変わった場合には、オーバースキャンを確実に行うことができなくなる場合が起こり得る。
【0099】
そこで、例えば図10に示すように、上記第1の走査距離Lb1に基づいて、それよりも大きい第2の走査距離Lb2にイオンビーム4の走査距離を設定する。これによって、上記課題を解決することが可能になる。両走査距離Lb1、Lb2の関係は、例えば次式で表すことができる。k1 は定数である。
【0100】
[数11]
b2=k1b1
【0101】
上記定数k1 は、上記位置のビーム計測器36、38を用いる場合は、1より大きい値である。この定数k1 が小さ過ぎると、上記課題を解決することができない場合が起こり、大き過ぎるとイオンビーム4の無駄な走査が多くなる。この定数k1 は、各イオン注入装置に固有の値であり、上記位置のビーム計測器36、38を用いる場合は、例えば1.1〜1.3の範囲内が好ましいことが経験によって分かっている。従ってその範囲内に定数k1 の値を設定する。具体的には、ビーム走査器12によるイオンビーム4のX方向の走査距離をk1 倍すれば良い。そのためには、例えば、走査電源13からビーム走査器12に供給する走査電流または走査電圧の大きさをk1 倍すれば良い。
【0102】
上記数11の代わりに、次式に従って第2の走査距離Lb2を設定しても良い。k2 は定数である。この定数k2 は、上記位置のビーム計測器36、38を用いる場合は、0よりも大きい値である。この定数k2 の好ましい範囲も、経験等によって定めることができる。
【0103】
[数12]
b2=Lb1+k2
【0104】
もっとも、ビーム計測器36、38の位置は、図8を参照して説明した上記位置以外の位置であっても良く、その場合は、その位置に応じて、上記定数k1 、k2 の値を変えれば良い。
【0105】
このビーム走査距離設定方法によれば、イオンビーム4のX方向の予備的なビーム幅Dを用いて求めた第1の走査距離Lb1に基づいて、それよりも大きい第2の走査距離Lb2にイオンビーム4のX方向の走査距離を設定するので、イオンビーム4のX方向の走査距離を、第1および第2のビーム計測器36、38を確実に含む所定の距離に設定することが容易になる。
【0106】
しかも、イオンビーム4のX方向の予備的なビーム幅Dを求めるときと同じビーム計測器36、38を用いて第1の走査距離Lb1を求めることができるので、第1の走査距離Lb1を求めるときと同じ位置で測定した予備的なビーム幅Dを用いることができる。従って、第1の走査距離Lb1をより正確に求めることができ、ひいては第2の走査距離Lb2をより正確に設定することができる。しかも、測定に必要なビーム計測器の数を減らすことができる。
【0107】
制御装置60は、この実施形態では、上記ビーム走査距離設定方法の内容に相当する演算制御を行う機能を更に有している。即ち、制御装置60は、(a)ビーム走査手段を構成する走査電源13を制御して、第1および第2のビーム計測器36、38を横切るようにイオンビーム4を実質的に一定の走査速度で走査して、イオンビーム4の予備的なビーム幅Dと、ビーム計測器36、38のそれぞれのビーム入射孔のX方向の幅と、両ビーム計測器36、38のX方向の中心間距離とに基づいて、上記第1の走査距離Lb1を求める機能と、(b)走査電源13を制御して、第1の走査距離Lb1よりも大きい上記第2の走査距離Lb2にイオンビーム4のX方向の走査距離を設定する機能を更に有している。
【0108】
この場合、ビーム電流以外の必要な情報の内で、上述したもの以外に更に必要になる情報は、例えば上記定数k1 またはk2 は、制御装置60に与えて、制御装置60内に記憶しておけば良い。
【0109】
従って、このような制御装置60を備えているこの実施形態のイオン注入装置によれば、上記ビーム走査距離設定方法と同様の効果を奏することができると共に、測定の省力化を図ることができる。
【0110】
なお、前述したように、第1および第2のビーム計測器36、38とは別の第3および第4のビーム計測器を用いて、上記第1の走査距離Lb1を測定し、更に第2の走査距離Lb2を設定するようにしても良い。例えば、第3および第4のビーム計測器として、上記前段ビームモニタ40を構成する複数のビーム計測器42の内の二つを用いても良い。
【0111】
また、イオンビーム4の走査周期Tscは、上記ビーム幅Dの測定時と、走査距離Lb1の測定時および走査距離Lb2の設定時と、後述するビーム幅Wb の測定時と、発散角αの測定時とで、必ずしも同一である必要はないが、それぞれ同一にしておく方が測定が簡単であり実際的であるので、この実施形態では同一にしている。
【0112】
(4)イオンビームのビーム幅Wb の測定
次に、上記第2の走査距離Lb2内の所望位置におけるイオンビーム4のビーム幅Wb を求めるビーム幅測定方法およびイオン注入装置について説明する。このビーム幅Wb は、前述したように基板16に対して均一なイオン注入を行う上で重要である。
【0113】
この場合は、図5に示す例のように、上記第2の走査距離Lb2内に位置していてイオンビーム4を受けてそのビーム電流を計測する第5のビーム計測器56を横切るように、イオンビーム4を実質的に一定の走査速度、所定の走査周期Tsc、および、上記走査距離Lb2で走査する。
【0114】
この第5のビーム計測器56は、例えば、前段ビームモニタ40を構成する複数のビーム計測器42の内の所望のビーム計測器42でも良いし、後段ビームモニタ50を構成する複数のビーム計測器52の内の所望のビーム計測器52でも良い。上記第1ないし第4のビーム計測器の内の所望のビーム計測器でも良い。このビーム計測器56のビーム入射孔57のX方向の幅をWf とする。
【0115】
そして、上記走査周期Tscと第2の走査距離Lb2とから定まるイオンビーム4の走査速度と、ビーム計測器56におけるビーム電流の流入開始時点Te と流入終了時点Tf との間の時間差と、ビーム計測器56のビーム入射孔43のX方向の幅Wf とに基づいて、ビーム計測器56の位置におけるイオンビーム4のX方向のビーム幅Wb を求める。
【0116】
より具体例を挙げると、上記時点Te および時点Tf を測定して、数14に基づいて上記ビーム幅Wb を求める。即ち、イオンビーム4の走査速度はLb2/(Tsc/2)で表されるので、数13が成立し、それを変形すると数14が得られ、これに基づいてビーム幅Wb を求める。
【0117】
[数13]
b2/(Tsc/2)=(Wb +Wf )/(Tf −Te
【0118】
[数14]
b =Lb2{2(Tf −Te )/Tsc}−Wf
【0119】
このビーム幅測定方法によれば、イオンビームの走査周期Tscと第2の走査距離Lb2とから定まるイオンビームの走査速度を用いることによって、二つの時点Te 、Tf 以外は既知数となるから、第2の走査距離Lb2内の所望位置のビーム計測器56の位置におけるイオンビームのX方向のビーム幅Wb を簡単にかつ精度良く測定することができる。
【0120】
また、イオンビーム4の走査速度を一定値として扱うので、様々なビーム計測器56の位置におけるビーム幅Wb の相対値比較が簡単になり、X方向におけるビーム幅Wb の変化の様子を知ることが容易になる。
【0121】
上記ビーム計測器56をX方向に複数個配置しておいて、上記ビーム幅測定方法に従って、イオンビーム4のビーム幅Wb をX方向の複数位置において測定しても良い。それによって、ビーム幅Wb のX方向における分布を測定することができる。例えば、第5のビーム計測器56として、前段ビームモニタ40を構成する複数個のビーム計測器42を用いることによって、前段ファラデー装置30の位置でのビーム幅Wb のX方向における分布を測定することができる。また、上記第5のビーム計測器56として、後段ビームモニタ50を構成する複数個のビーム計測器52を用いることによって、後段ビームモニタ50の位置でのビーム幅Wb のX方向における分布を測定することができる。
【0122】
なお、イオンビーム4は前述したように平行走査されるので、前段ファラデー装置30の位置での走査距離Lb2を、後段ビームモニタ50の位置での走査距離Lb2として使用しても実用上差し支えはない。例えば、イオンビーム4の平行度を大きめに見て0.5度、上記離間の距離Lを736mm、走査距離Lb2を400mmとすれば、前段ファラデー装置30の位置での走査距離Lb2と後段ビームモニタ50の位置での走査距離Lb2との差は約12mmとなり、誤差は約3%になる。これは実用上許容し得るものである。
【0123】
従って、上記第5のビーム計測器56として、後段ビームモニタ50を構成する複数のビーム計測器52の内の所望のビーム計測器52を用いて、そのX方向の幅をWf とすると、上記数14に基づいて、当該ビーム計測器52の位置におけるビーム幅Wb を測定することができる。
【0124】
前段ビームモニタ40を構成するビーム計測器42のX方向の幅Wf と、後段ビームモニタ50を構成するビーム計測器52のX方向の幅Wf とは、必ずしも互いに同じである必要はない。従って、両者を区別する場合は、前者の幅をWff、後者の幅をWfbとする。もっとも、両者の幅Wff、Wfbを互いに同じ幅Wf にする方が、測定の精度と信頼性が高くなるので好ましい。
【0125】
制御装置60は、この実施形態では、上記ビーム幅測定方法の内容に相当する演算制御を行う機能を更に有している。即ち、制御装置60は、ビーム走査手段を構成する走査電源13を制御して、上記第5のビーム計測器56を横切るようにイオンビーム4を上記走査周期Tscで、かつ上記第2の走査距離Lb2で走査して、当該走査周期Tscと走査距離Lb2とから定まるイオンビーム4の走査速度と、ビーム計測器56におけるビーム電流の流入開始時点と流入終了時点との間の時間差と、ビーム計測器56のビーム入射孔57のX方向の幅Wf とに基づいて、ビーム計測器56の位置におけるイオンビーム4のX方向のビーム幅Wb を求める機能を更に有している。更に、複数個の第5のビーム計測器56を用いて、イオンビーム4のビーム幅Wb をX方向の複数位置において測定する機能をも有している。
【0126】
この場合、ビーム電流以外の必要な情報は、例えば上記走査周期Tsc、幅Wf は、制御装置60に与えて、制御装置60内に記憶しておけば良い。第2の走査距離Lb2は、先の演算によって求めたものを制御装置60内に記憶しておけば良い。
【0127】
従って、このような制御装置60を備えているこの実施形態のイオン注入装置によれば、上記ビーム幅測定方法と同様の効果を奏することができると共に、測定の省力化を図ることができる。
【0128】
(5)イオンビームの発散角αの測定
次に、イオンビーム4のX方向の発散角αを測定する発散角測定方法およびイオン注入装置について説明する。
【0129】
この場合は、上記第5のビーム計測器56として、イオンビーム4の進行方向Zの前後2箇所に互いに離間して配置された前段ビーム計測器および後段ビーム計測器を用いる。そして、互いにX方向に関して実質的に同じ位置において、上記(4)項で説明したビーム幅測定方法に従って、上記前後2箇所でのイオンビームのX方向のビーム幅Wb をそれぞれ求め、かつ両ビーム幅の差と上記離間の距離Lとに基づいて、イオンビーム4のX方向の発散角αを測定する。
【0130】
より具体例を挙げると、例えば、上記前段ビームモニタ40を構成するビーム計測器42を前段ビーム計測器として用い、後段ビームモニタ50を構成するビーム計測器52を後段ビーム計測器として用いることができる。以下においてはその場合を例に説明する。前段ビームモニタ40を構成する各ビーム計測器42のビーム入射孔43(図2参照)のX方向の幅をWff、後段ビームモニタ50を構成する各ビーム計測器52のビーム入射孔53(図2参照)のX方向の幅をWfbとする。
【0131】
上記ビーム計測器42および52を用いて、互いにX方向に関して実質的に同じ位置において、換言すればX方向における相対応する位置において、上記(4)項で説明したビーム幅測定方法に従って、図6に示すように、ビーム計測器42の位置Zf におけるイオンビーム4のビーム幅Wbfおよびビーム計測器52の位置Zb におけるイオンビーム4のビーム幅Wbbをそれぞれ求める。これは、上記数14中のWf に上記幅Wff、Wfbをそれぞれ代入することによって求めることができる。
【0132】
X方向に関して実質的に同じ位置というのは、典型的には、図6を参照して、ビーム幅Wbfを求めるのに使用するビーム計測器42のX方向の中心位置Xf と、ビーム幅Wbbを求めるのに使用するビーム計測器52のX方向の中心位置Xb とが、X方向において互いに実質的に同じ位置である組み合わせのビーム計測器42および52を用いることである。
【0133】
そして、次式に基づいて、イオンビーム4のX方向における発散角αを求める。Lは、前述したように、二つの位置Zf 、Zb 間の離間の距離である。
【0134】
[数15]
α=tan-1{(Wbb−Wbf)/2L}
【0135】
この発散角測定方法によれば、イオンビーム4の進行方向Zの上流側および下流側の2箇所で、しかもX方向に関して実質的に同じ位置においてビーム幅Wbf、Wbbを求め、それらを用いて発散角αを求めるので、第2の走査距離Lb2内の所定位置におけるイオンビーム4のX方向の発散角αを簡単にかつ精度良く測定することができる。
【0136】
また、前段ビームモニタ40を構成する複数個のビーム計測器42と、後段ビームモニタ50を構成する複数個のビーム計測器52とを用いることによって、イオンビーム4の発散角αをX方向の複数位置において測定することもできる。それによって、発散角αのX方向における分布を測定することができる。
【0137】
なお、図7に示す例のように、前段ビームモニタ40を構成するビーム計測器42の位置と、後段ビームモニタ50を構成するビーム計測器52の位置とが、互いにX方向においてずれている場合は、例えば次のようにして発散角αを測定すれば良い。この図7の例では、前段ビームモニタ40を構成するビーム計測器42の内の二つのビーム計測器42(例えば8番目および9番目のビーム計測器42。それらのビーム入射孔43のX方向の中心位置をXf8、Xf9とする)の中間に、後段ビームモニタ50を構成するビーム計測器52の内の一つのビーム計測器52(例えば6番目のビーム計測器52。そのビーム入射孔53のX方向の中心位置をXb6とする)が位置している。
【0138】
この場合は、上記二つのビーム計測器42を用いて、両者の位置におけるビーム幅Wbfを上記ビーム幅測定方法でそれぞれ測定し、その平均値を前段(上流側)の位置Zf でのビーム幅Wbfとする。後段(下流側)の位置Zb でのビーム幅Wbbは、上記ビーム計測器52を用いて上記ビーム幅測定方法で測定した値をそのまま用いる。前段において上記のようにビーム幅Wbfの平均値を求めると、当該平均値は、両中心位置Xf8、Xf9の中間の位置、即ちX方向に関して中心位置Xb6と実質的に同じ位置におけるビーム幅であると見なしても差し支えない。従って、前段の上記平均値のビーム幅Wbfと後段の上記ビーム幅Wbbとは、互いにX方向に関して実質的に同じ位置におけるビーム幅であると言うことができるので、両者を用いて、上記発散角測定方法で発散角αを測定することができる。
【0139】
上記例とは反対に、後段ビームモニタ50内の二つのビーム計測器52を用いて測定した平均値のビーム幅Wbbと、当該二つのビーム計測器52の中間位置に対応する位置の前段のビーム計測器42を用いて測定したビーム幅Wbfとを用いて、発散角αを測定しても良い。
【0140】
また、厳密さをより追求するならば、上記のように平均値を用いる代わりに、最小自乗法等による近似値を用いても良い。
【0141】
制御装置60は、この実施形態では、上記発散角測定方法の内容に相当する演算制御を行う機能を更に有している。即ち、制御装置60は、上記前段ビーム計測器および後段ビーム計測器を用いて、上記前後2箇所でのイオンビーム4のX方向のビーム幅Wb をそれぞれ求め、かつ両ビーム幅の差と上記離間の距離Lとに基づいて、上記イオンビームのX方向の発散角αを測定する機能を更に有している。更に、X方向に複数個ずつ配置された前段ビーム計測器および後段ビーム計測器を用いて、イオンビーム4の発散角αをX方向の複数位置において測定する機能をも有している。
【0142】
この場合、ビーム電流以外の必要な情報の内で、上述したもの以外に更に必要になる情報は、例えば上記距離Lは、制御装置60に与えて、制御装置60内に記憶しておけば良い。
【0143】
従って、このような制御装置60を備えているこの実施形態のイオン注入装置によれば、上記発散角測定方法と同様の効果を奏することができると共に、測定の省力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】この発明に係るイオン注入装置の一実施形態を示す概略平面図である。
【図2】前段ファラデー装置および後段ビームモニタ周りの一つの状態ならびに制御装置を示す図である。
【図3】前段ファラデー装置および後段ビームモニタ周りの他の状態を示す図である。
【図4】第1および第2のビーム計測器とそれを横切るイオンビームの関係(A)、ビーム走査の往路で計測されるビーム電流波形(B)、および、ビーム走査の復路で計測されるビーム電流波形(C)の例を示す概略図である。
【図5】第5のビーム計測器とそれを横切るイオンビームの関係(A)、および、ビーム走査の往路で計測されるビーム電流波形(B)の例を示す概略図である。
【図6】イオンビームのX方向における発散角を説明する図である。
【図7】前段ビームモニタを構成するビーム計測器と、後段ビームモニタを構成するビーム計測器とが、X方向においてずれている例を示す概略図である。
【図8】第1および第2のビーム計測器、基板およびそれらを横切るイオンビームの関係の一例を示す正面図である。
【図9】第1および第2のビーム計測器、基板およびそれらを横切るイオンビームの関係の他の例を示す正面図である。
【図10】第1の走査距離と第2の走査距離との関係の一例を示す正面図である。
【図11】マスク板と共通のビーム計測器とを用いて複数のビーム計測器を構成する場合の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0145】
4 イオンビーム
12 ビーム走査器
13 走査電源
14 ビーム平行化器
16 基板
30 前段ファラデー装置
36 ビーム計測器
38 ビーム計測器
40 前段ビームモニタ
42 ビーム計測器
50 後段ビームモニタ
52 ビーム計測器
56 ビーム計測器
60 制御装置
D、D1 、D2 予備的なビーム幅
b1、Lb2 走査距離
b 、Wbf、Wbb ビーム幅
α 発散角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X方向に実質的に平行走査されるイオンビームを基板に照射する構成のイオン注入装置におけるイオンビームについての測定方法であって、
(a)イオンビームを受けてそのビーム電流を計測するものであってX方向において互いに離間して配置された第1および第2のビーム計測器を用いて、
(b)両ビーム計測器を横切るようにイオンビームを走査して、各ビーム計測器に流入するビーム電流の時間的変化をモニタすることにより、各ビーム計測器におけるビーム電流の流入開始時点および流入終了時点をそれぞれ求め、
(c)これらの時点の内の少なくとも三つの時点と、各ビーム計測器のビーム入射孔のX方向の幅と、両ビーム計測器のビーム入射孔のX方向の中心間距離とに基づいて、前記イオンビームのX方向の予備的なビーム幅を求めることを特徴とするビーム幅測定方法。
【請求項2】
請求項1記載のビーム幅測定方法に従って、前記第1および第2のビーム計測器を往復して横切るようにイオンビームを往復走査して、イオンビームのX方向の前記予備的なビーム幅をビーム走査の往路および復路の両方において求め、かつ当該求めた両方のビーム幅を相加平均したものを前記イオンビームのX方向の予備的なビーム幅とすることを特徴とするビーム幅測定方法。
【請求項3】
(a)イオンビームを受けてそのビーム電流を計測するものであってX方向において互いに離間して配置された第3および第4のビーム計測器を用いて、両ビーム計測器を横切るようにイオンビームを走査して、各ビーム計測器に流入するビーム電流の時間的変化をモニタし、
(b)請求項1または2記載のビーム幅測定方法に従って求めたイオンビームの前記予備的なビーム幅と、前記第3および第4のビーム計測器のそれぞれのビーム入射孔のX方向の幅と、両ビーム計測器のX方向の中心間距離とに基づいて、第3のビーム計測器にビーム電流が流入開始する位置でのイオンビームと、第4のビーム計測器においてビーム電流が流入終了する位置でのイオンビームとの間のX方向の距離である第1の走査距離を求め、
(c)当該第1の走査距離よりも大きい第2の走査距離に前記イオンビームのX方向の走査距離を設定することを特徴とするビーム走査距離設定方法。
【請求項4】
前記第3のビーム計測器は前記第1のビーム計測器と同じものであり、前記第4のビーム計測器は前記第2のビーム計測器と同じものである請求項3記載のビーム走査距離設定方法。
【請求項5】
(a)請求項3または4記載のビーム走査距離設定方法に従って設定された前記第2の走査距離内に位置していてイオンビームを受けてそのビーム電流を計測する第5のビーム計測器を横切るようにイオンビームを所定の走査周期で、かつ前記第2の走査距離で走査して、
(b)当該走査周期と第2の走査距離とから定まるイオンビームの走査速度と、第5のビーム計測器におけるビーム電流の流入開始時点と流入終了時点との間の時間差と、第5のビーム計測器のビーム入射孔のX方向の幅とに基づいて、第5のビーム計測器の位置におけるイオンビームのX方向のビーム幅を求めることを特徴とするビーム幅測定方法。
【請求項6】
前記第5のビーム計測器をX方向に複数個配置しておいて、請求項5記載のビーム幅測定方法に従って、イオンビームのX方向のビーム幅をX方向の複数位置において測定することを特徴とするビーム幅測定方法。
【請求項7】
(a)前記第5のビーム計測器として、前記イオンビームの進行方向の前後2箇所に互いに離間して配置されていてイオンビームを受けてそのビーム電流を計測する前段ビーム計測器および後段ビーム計測器を用いて、
(b)互いにX方向に関して実質的に同じ位置において、請求項5記載のビーム幅測定方法に従って、前記前後2箇所でのイオンビームのX方向のビーム幅をそれぞれ求め、
(c)かつ両ビーム幅の差と前記離間の距離とに基づいて、前記イオンビームのX方向の発散角を測定することを特徴とする発散角測定方法。
【請求項8】
前記前段ビーム計測器および後段ビーム計測器をそれぞれX方向に複数個ずつ配置しておいて、請求項7記載の発散角測定方法に従って、前記イオンビームのX方向の発散角をX方向の複数位置において測定することを特徴とする発散角測定方法。
【請求項9】
イオンビームをX方向に走査するビーム走査手段と、当該ビーム走査手段と協働してイオンビームをX方向に実質的に平行走査するビーム平行化手段とを備えていて、X方向に実質的に平行走査されるイオンビームを基板に照射する構成のイオン注入装置であって、
(a)イオンビームを受けてそのビーム電流を計測するものであってX方向において互いに離間して配置された第1および第2のビーム計測器と、
(b)前記ビーム走査手段を制御して、両ビーム計測器を横切るようにイオンビームを走査して、各ビーム計測器に流入するビーム電流の時間的変化をモニタすることにより、各ビーム計測器におけるビーム電流の流入開始時点および流入終了時点をそれぞれ求め、これらの時点の内の少なくとも三つの時点と、各ビーム計測器のビーム入射孔のX方向の幅と、両ビーム計測器のビーム入射孔のX方向の中心間距離とに基づいて、前記イオンビームのX方向の予備的なビーム幅を求める機能を有している制御装置とを備えていることを特徴とするイオン注入装置。
【請求項10】
前記制御装置は、前記ビーム走査手段を制御して、前記第1および第2のビーム計測器を往復して横切るようにイオンビームを往復走査して、イオンビームのX方向の前記予備的なビーム幅をビーム走査の往路および復路の両方において求め、かつ当該求めた両方のビーム幅を相加平均したものを前記イオンビームのX方向の予備的なビーム幅とする機能を更に有している請求項8記載のイオン注入装置。
【請求項11】
(a)イオンビームを受けてそのビーム電流を計測するものであってX方向において互いに離間して配置された第3および第4のビーム計測器を備えており、
(b)前記制御装置は、
(b1)前記ビーム走査手段を制御して、前記第3および第4のビーム計測器を横切るようにイオンビームを走査して、イオンビームの前記予備的なビーム幅と、前記第3および第4のビーム計測器のそれぞれのビーム入射孔のX方向の幅と、両ビーム計測器のX方向の中心間距離とに基づいて、第3のビーム計測器にビーム電流が流入開始する位置でのイオンビームと、第4のビーム計測器においてビーム電流が流入終了する位置でのイオンビームとの間のX方向の距離である第1の走査距離を求める機能と、
(b2)前記ビーム走査手段を制御して、前記第1の走査距離よりも大きい第2の走査距離に前記イオンビームのX方向の走査距離を設定する機能を更に有している請求項9または11記載のイオン注入装置。
【請求項12】
前記第3のビーム計測器は前記第1のビーム計測器と同じものであり、前記第4のビーム計測器は前記第2のビーム計測器と同じものである請求項11記載のイオン注入装置。
【請求項13】
(a)前記第2の走査距離内に位置していてイオンビームを受けてそのビーム電流を計測する第5のビーム計測器を更に備えており、
(b)前記制御装置は、前記ビーム走査手段を制御して、前記第5のビーム計測器を横切るようにイオンビームを所定の走査周期で、かつ前記第2の走査距離で走査して、当該走査周期と第2の走査距離とから定まるイオンビームの走査速度と、第5のビーム計測器におけるビーム電流の流入開始時点と流入終了時点との間の時間差と、第5のビーム計測器のビーム入射孔のX方向の幅とに基づいて、第5のビーム計測器の位置におけるイオンビームのX方向のビーム幅を求める機能を更に有している請求項11または12記載のイオン注入装置。
【請求項14】
(a)X方向に複数個配置された前記第5のビーム計測器を備えており、
(b)前記制御装置は、当該複数個の第5のビーム計測器を用いて、イオンビームのX方向のビーム幅をX方向の複数位置において測定する機能を更に有している請求項13記載のイオン注入装置。
【請求項15】
(a)前記第5のビーム計測器として、前記イオンビームの進行方向の前後2箇所に互いに離間して配置されていてイオンビームを受けてそのビーム電流を計測するものであってX方向に関して互いに実質的に同じ位置に設けられた前段ビーム計測器および後段ビーム計測器を備えており、
(b)前記制御装置は、当該前段ビーム計測器および後段ビーム計測器を用いて、前記前後2箇所でのイオンビームのX方向のビーム幅をそれぞれ求め、かつ両ビーム幅の差と前記離間の距離とに基づいて、前記イオンビームのX方向の発散角を測定する機能を更に有している請求項13記載のイオン注入装置。
【請求項16】
(a)X方向に複数個ずつ配置された前記前段ビーム計測器および後段ビーム計測器を備えており、
(b)前記制御装置は、これらの前段ビーム計測器および後段ビーム計測器を用いて、前記イオンビームのX方向の発散角をX方向の複数位置において測定する機能を更に有している請求項15記載のイオン注入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−257931(P2008−257931A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−97062(P2007−97062)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【出願人】(302054866)日新イオン機器株式会社 (161)
【Fターム(参考)】