説明

イオンビーム加工装置及びイオンビーム加工方法

【課題】イオンビームを照射することによって生成された二次粒子が加工領域に再付着することを抑制する。
【解決手段】試料2の断面領域に不活性ガスを吹き付けながら試料2の断面領域に所定径に集束させたイオンビームを照射,走査させることによって、試料2の断面の平滑化を行う。このようなイオンビーム加工方法によれば、試料2を断面加工した際に発生する二次粒子は不活性ガスにより吹き飛ばされので、二次粒子が試料2の断面領域に付着することがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定径に集束させたイオンビームを試料表面に照射することにより試料を加工するイオンビーム加工装置及びイオンビーム加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、走査電子顕微鏡(SEM),走査イオン顕微鏡(SIM),透過電子顕微鏡(TEM)等の評価装置において用いられる断面観察用試料や微細加工を伴う小型デバイスを作製するために、Gaイオン等のイオンビームを試料表面に照射することにより試料を加工するイオンビーム加工装置及びイオンビーム加工方法が用いられている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−87174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のイオンビーム加工装置及びイオンビーム加工方法により試料を加工した場合、イオンビームを照射することによって生成される試料の粒子(以下、本明細書中では二次粒子と表記)が加工領域に付着することによって、良好な断面観察用試料が作製できなかったり、再付着した二次粒子を除去するために試料の加工時間が増加したりすることがあった。
【0004】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、イオンビームを照射することによって生成される二次粒子が加工領域に付着することを抑制可能なイオンビーム加工装置及びイオンビーム加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るイオンビーム加工装置及びイオンビーム加工方法は、集束イオンビームにより試料を加工する際、試料の加工領域に不活性ガスを吹き付けることにより加工により生成される試料の粒子が加工領域に付着することを抑制することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係るイオンビーム加工装置及びイオンビーム加工方法によれば、イオンビームを照射することによって生成される試料の粒子が加工領域に付着することを抑制できるので、良好な断面観察用試料を作製できると共に、再付着した二次粒子を除去するために試料を加工する必要がなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態となるイオンビーム加工装置の構成とこの装置を用いたイオンビーム加工方法について説明する。
【0008】
〔イオンビーム加工装置の構成〕
本発明の実施形態となるイオンビーム加工装置1は、図1に示すように、上面に試料2が載置支持される試料ステージ3と、試料ステージ3をXYZ方向に移動制御する駆動部4と、試料2表面にCVD(化学気相成長)用ガスを吹き付けるCVD用ガス吹付装置5と、試料2表面にイオンビームを照射するイオンビーム照射装置6と、試料2表面に試料2と反応を起こしにくい不活性ガス(例えばヘリウム,ネオン,アルゴン,クリプトン,キセノン,ラドン等)を吹き付ける不活性ガス吹付装置7と、試料2表面を観察するための二次電子を検出する二次電子検出装置8とを備える。
【0009】
〔イオンビーム加工方法〕
このイオンビーム加工装置1を用いて試料2の断面加工を行う場合には、始めに、イオンビーム照射装置6から試料2の表面領域にイオンビームを照射することにより穴形状を粗加工する。そして図2に示すように、穴形状の壁面の所望領域に不活性ガス吹付装置7から不活性ガスを吹き付けながら、イオンビーム照射装置6から所望領域に所定径に集束させたイオンビームを照射,走査させることによって、穴形状の壁面の所望領域を観察断面として平滑化する。このようなイオンビーム加工方法によれば、試料2を断面加工した際に発生する二次粒子は不活性ガスにより吹き飛ばされので、二次粒子が試料2の断面に付着することがない。
【0010】
なお一般に、二次粒子は試料2に対する集束イオンビームの照射量(入射量,照射電流値)が大きい程多量に発生するので、集束イオンビームの照射量に応じて不活性ガスの吹付量を調整することが望ましい。このような方法によれば、試料2の加工領域に二次粒子が付着することをより確実に抑制できる。
【0011】
また試料2に対する不活性ガスの吹付角度は、試料2の加工部位の形状に応じて調整することが望ましい。具体的には、観察断面が試料2の深さ方向の浅い位置にある場合、観察断面に対し高角度で不活性ガスを吹き付け、逆に観察断面が試料2の深さ方向の深い位置にある場合には、観察断面に対し低角度で不活性ガスを吹き付けることが望ましい。このような方法によれば、より効果的に二次粒子を吹き飛ばすことができる。
【0012】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。このように上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態となるイオンビーム加工装置の構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態となるイオンビーム加工方法を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0014】
1:イオンビーム加工装置
2:試料
3:試料ステージ
4:駆動部
5:CVD用ガス吹付装置
6:イオンビーム照射装置
7:不活性ガス吹付装置
8:二次電子検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料表面に集束イオンビームを照射することによって試料を加工するイオンビーム加工装置であって、試料の加工領域に不活性ガスを吹き付けることにより加工の際に生成される試料の粒子が加工領域に付着することを抑制する手段を備えることを特徴とするイオンビーム加工装置。
【請求項2】
試料表面に集束イオンビームを照射することによって試料を加工する工程と前記試料の加工領域に不活性ガスを吹き付ける工程とを同時に行うことにより、加工の際に生成される試料の粒子が加工領域に付着することを抑制しながら試料を加工するイオンビーム加工方法。
【請求項3】
請求項2に記載のイオンビーム加工方法において、前記集束イオンビームの照射量に応じて前記不活性ガスの吹き付け量を変化させることを特徴とするイオンビーム加工方法。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のイオンビーム加工方法において、前記試料の加工形状に応じて試料に対する前記不活性ガスの吹き付け角度を変化させることを特徴とするイオンビーム加工方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−135217(P2008−135217A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318647(P2006−318647)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】