イオンビーム安定化方法
イオン顕微鏡法およびシステムを開示する。概して、本システムおよび本方法により、イオンビームの高安定性を得ることができる。一方法によれば、ガスの最良結像電圧よりも少なくとも5%高い電圧で動作するチップを有するガス電界イオン源を用いて、イオンビームを生成する。その他の方法として、混合気体を用いてイオンビームを生成する方法も開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する発明は、イオンビームの比較的高い安定性を提供するシステムおよび方法を含む、イオン顕微鏡法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
イオンを用いて、試料を検査および/または改変することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7,557,359号明細書
【特許文献2】国際出願PCT/US2009/045133号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2007−0158558号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Journal of Scientific Instruments, 1965, VoI 42,「An Ail-Metal Field ion microscope」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書で開示する発明は、包括的に、イオンビームの比較的高い安定性を提供するシステムおよび方法を含むイオン顕微鏡法およびシステムに関する。
【0006】
例えば、所与の期間にわたりイオンビーム電流の安定性が比較的高いと、比較的高い安定性を得ることができる。そのような例において、イオンビームを用いて試料を改変する場合(例えば、ガスアシストエッチング法、ガスアシスト蒸着法、スパッタ法、フォトレジスト露光を行う場合)、イオンビームの安定性が比較的高いことにより、結果として、試料の品質および/または(例えば、各位置間における)均一性の信頼性が向上し、および/または、試料改変にかかるコストを削減することができる。一般に、イオンビーム電流が変動することにより、結果として、単位時間当たりにおける試料上に作用するイオンの数が変動する。しかし、通常、試料の改変中にそのような変動を補正しようとすることは困難な場合があり、多くのプロセスにおいては、イオンビーム変動は許容レベル範囲内であり試料改変は各位置において比較的均一に行われるであろうという想定の下、改変対象の各位置を同じ時間だけイオンビームで露光する。しかしながら、イオンビームの変動が大きくなりすぎると、試料の位置による変化が大きくなり許容範囲を超えてしまう(例えば、試料が設計したように機能しない等)。
【0007】
また、イオンビームの安定性が比較的高いことにより、結果として、試料を検査する際に収集したデータの信頼性の向上、データ収集効率の向上、および/またはデータ収集にかかるコスト削減につながる。多くの場合、試料を検査する際、イオンビーム電流が変動すると、その結果、試料から検出される粒子(例えば、二次電子)の数が変動する。そのようなビーム電流の変動は、比較的短いタイムフレーム内で発生することがあり(例えば、この現象は一般にビームフリッカと呼ばれる)、または、比較的長いタイムフレームにわたり発生することもある(例えば、ビーム電流ドリフト)。いずれの場合においても、ビーム電流が変動すると、例えば、粒子数の変化の原因が、試料の局所変化(例えば、試料面の形態変化、試料面近傍に存在する物質の変化等)に起因するものか、または、イオンビーム電流における変化に起因するものかの判断が難しくなる。そのような場合、収集されたデータ(例えば、試料画像、試料スペクトル)は信憑性に欠け信頼できないと考えられ、十分信頼できるデータを収集するには、試料の検査をさらにもう1回またはそれ以上行うことが必要となる場合がある。場合によっては、ビーム電流が不安定で、試料を確実に検査することができないことがある。さらに、試料の検査中にデータ収集を何度も繰り返し試みることにより、所与の試料を検査する能力が低下する。場合により、試料検査における適正なスループットを達成することができないことが考えられる。さらに、所与の試料の検査を繰り返し行うことによって十分に信頼できるデータを収集することができたとしても、この手法に付随するコストは許容可能範囲を超えてしまうことがある。
【0008】
代案または追加として、例えば、イオン源を復元および/または交換する必要がある場合もその復元および/または交換にはほとんど時間をかけずに比較的長時間動作するチップを有するイオンビーム源において、比較的高い安定性を得ることができる。このことは、例えば、イオンを用いて試料(例えば、マスク等)を改変する際に有用である。例として、そのような場合、望ましくはイオンビームを用いて試料をスパッタする。イオン源を復元および/または交換する必要がある場合もその復元および/または修復にほとんど時間をかけずに比較的長時間動作するチップを有するイオンビーム源を用いることにより、結果として、例えば、効率の向上および/またはコストの削減につながる。このことは、例えば、試料を高精度で改変することが特に重要である場合、試料が比較的高価である場合、および/または比較的多数の試料を処理する場合において、有利である。試料改変を高精度で行うことが重要である場合、チップを修復または交換せずにイオン源を比較的長時間動作させることが可能であれば、チップの修復および/または交換に付随する潜在的な問題(例えば、種々のガス状態への露出、場合によっては、試料が大気条件下に露出してしまうこと)を軽減、または、場合によっては、回避することができる。試料が比較的高価である場合も、同様の利点を得ることができる。比較的多数の試料を処理したい場合、比較的短時間で修復および/または交換できるチップを比較的長時間用いることができることは、多くの時間をかけて試料を処理することができることを意味し、概して、プロセスのスループット向上につながる。
【0009】
イオンビーム源の実効寸法を小さくし、イオンビームを低角度発散および低エネルギー拡散させることは、試料を検査および/または改変する際に非常に有用であることが多い。源の実効寸法が小さいため、また低角度発散であるため、従来のイオン光学的方法を用いてビームを試料上において小さいプローブ寸法に集束することができる。これら2つの望ましい特徴、すなわち、実効寸法が小さいこと、および低角度発散であることは、一般に、荷電粒子源の低エテンデュー化および/または高輝度化にとって望ましいとされる。低エネルギー拡散であることにより、後段のいかなるイオン光学素子から発生する分散または色収差も低減することができる。
【0010】
いくつかの実施形態において、ガス電界イオン顕微鏡を、その最良結像電界および/または最良結像電圧よりも高い電界または電圧で動作させることにより、イオンビームを比較的安定させることができる。本明細書において、用語「最良結像電界(BIF:Best Imaging Field)」は、源のチップから放出されるイオンの角度放出(単位立体角あたりの電流量)が最大となる際に源のチップに印加される電界の大きさを示し、用語「最良結像電圧(BIV:Best Imaging Voltage)」は、抽出器の電圧に対して最良の結像電界を生成するのに用いた源のチップの電圧を示す。最良結像電界および/または最良結像電圧よりも高い電界または電圧で動作させることにより源のチップから放出されるイオンの角度放出は最大角度放出よりも減少するが、出願者らは、これらの動作条件下で動作させることにより、電流変動が減少することを発見した。電流変動の減少は、全般的に見れば、源のチップからイオンを高角度で放出することよりも重要となりうる。
【0011】
ある実施形態において、源チップの再形成中に、BIV(またはBIF)が比較的高い第2ガスを導入することにより、イオンビームを比較的安定させることができる。例として、ネオンガス電界イオン顕微鏡の源チップを再形成する際、ヘリウムを導入することができる。この手法により、オペレータは比較的高い源チップ電圧(電界)でチップを再形成すること可能となり、この条件下において第1ガス(例えば、ネオン)により生成したイオンビームの観測は困難になるが、このような状況下において第2ガス(例えば、ヘリウム)により生成したイオンビームを観測することができる。源チップを再形成した後、第2ガス(例えば、ヘリウム)を除去することができ、第1ガス(例えば、ネオン)による動作を再開することができる。
【0012】
いくつかの実施形態において、イオン源のチップにおける電界を操作することにより、BIVまたはBIFの異なる2種類のガス間でイオンビームを比較的安定して切り替えることができる。例えば、イオン源のチップにおける電界を比較的低電界とすることにより、主としてBIVまたはBIFの低いガスのイオン(例えば、ネオンイオン等)からなるイオンビームを生成することができ、イオン源のチップにおける電界を比較的高電界とすることにより、主としてBIVまたはBIFの高いガスのイオン(例えば、ヘリウムイオン等)からなるイオンビームを生成することができる。
【0013】
ある実施形態において、電界分離器、磁界分離器、またはその両方のビーム分離器を用いることにより、BIVまたはBIFの異なる2種類のガス間でイオンビームを比較的安定して切り替えることができる。例えば、ビーム分離器をイオン光学系内に配置して、第1モードと第2モードとの間で切り替えることができる。第1モードとは、第1ガスのイオンを試料に到達させる一方で第2ガスのイオンを試料に実質的に到達させないように、ビーム分離器を構成するものである。第2モードとは、第2ガスのイオンを試料に到達させる一方で第1ガスのイオンを試料に実質的に到達させないように、ビーム分離器を構成するものである。
【0014】
いくつかの実施形態において、例えば、第1ガスのイオンビームを生成する際に、故意に第2ガスを導入することにより、ビーム安定性を比較的高くすることができる。イオンビームの特定の特徴(例えば、源の実効寸法、発散角度、拡散エネルギー等)は、第1ガスのイオンビームを生成する際に、故意に第2ガスを導入することにより、減少させることができる。ガス電界イオン顕微鏡におけるイオンビームが発生する領域に存在する混合気体のサンプル中において、第2ガスの量は、第2ガスを故意に添加しなかった場合よりも多い(例えば、第2ガスは、第1ガスにおける不純物濃度の量を超えて存在する)。選択肢として、イオンビームを生成した後、いくらかの(例えば、実質的には全ての)第2ガスをイオンビームから除去することができる。したがって、いくつかの実施形態において、試料近傍の混合気体のサンプル中の第2ガスの量は、ガス電界イオン顕微鏡におけるイオンビームが発生する領域に存在する第2ガスの量よりも、実質的に少なくすることができる。一般に、第1ガスおよび第2ガスはどちらも希ガスであるが、場合によっては、第1ガスおよび第2ガスのどちらか一方または両方を、例えば、分子水素ガス等の非希ガスとすることができる。多くの場合、第2ガスはHeであり、第1ガスは別の希ガス(例えば、Ar,Kr,Ne,Xe,Rn等)である。場合によっては、第1ガスをNeとし、第2ガスをHeとすることができる。その場合、Neイオンを用いて、例えば、試料をスパッタすることができる。
【0015】
本発明の一態様において開示する方法は、ガスの最良結像電圧よりも少なくとも5%高い電圧で動作するチップを有するガス電界イオン源を用いてイオンビームを生成する、イオンビーム生成ステップ、およびイオンビームを用いて試料を検査/または改変するステップ、を含むものである。
【0016】
ガス電界イオン源のチップの電圧は、ガスの最良結像電圧よりも、少なくとも10%(例えば、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%)高くすることができる。例えば、ガス電界イオン源のチップの電圧は、ガスの最良結像電圧よりも、10%から20%高くすることができる。
【0017】
ガス電界イオン源は、イオンビームを生成する三量体を有する端子棚を含むチップを備えることができる。
【0018】
ガス電界イオン源はイオンビームを生成するチップを備えることができ、ガス電界イオン源のチップにおける原子の運動は、最良結像電圧で動作する際のガス電界イオン源のチップにおける原子の運動と比較して、少なくとも2分の1に抑制される。
【0019】
ガス電界イオン源はイオンビームを生成するチップを備え、ガス電界イオン源のチップにおける各発光位置当たりのイオンの放出は、最良結像電圧で動作する際のガス電界イオン源のチップにおける各発光位置当たりのイオンの放出と比較して、少なくとも2分の1に低減される。
【0020】
ガスは、ネオン等の希ガスとすることができる。
【0021】
ガス電界イオン源は、ガス電界イオン顕微鏡の一部とすることができる。
【0022】
本発明の別の態様において開示する方法は、(a)第1ガスを用いて、ガス電界イオン源からイオンビームを生成し、試料を検査および/または改変するステップ、および(b)ステップ(a)の後、ガス電界イオン源のチップの再形成中に、第2ガスを用いてガス電界イオン源のチップの端子棚の原子構造をモニタして、ガス電界イオン源のチップの端子棚の発光パターンを生成するステップ、を含むものである。第2ガスは第1ガスと異なるものとすることができる。
【0023】
ガス電界イオン源により生成した第2ガスのイオンのビームに関する情報は、ガス電界イオン源のチップの画像とすることができる。
【0024】
ガス電界イオン源は、ステップ(a)の間、第1電圧で動作することができ、ガス電界イオン源は、ステップ(b)の間、第2電圧で動作する。第1電圧は第2電圧とは異なる。
【0025】
第2電圧は第1電圧よりも高くすることができる。
【0026】
本方法は、また、(c)ステップ(b)の後、第1ガスを用いてガス電界イオン源からイオンビームを生成し、試料を検査および/または改変するステップを含むこともできる。
【0027】
ガス電界イオン源は、ステップ(a)の間、第1電圧で動作することができ、ガス電界イオン源は、ステップ(b)の間、第2電圧で動作することができ、ガス電界イオン源は、ステップ(c)の間、第3電圧で動作することができる。第1電圧は第2電圧とは異なるものとすることができ、第3電圧は第2電圧とは異なるものとすることができる。
【0028】
第2ガスはヘリウムとすることができる。
【0029】
第1ガスは希ガスとすることができる。
【0030】
第1ガスおよび第2ガスは両方とも、ステップ(a)の間、ガス電界イオン源と相互作用することができる。
【0031】
第1ガスおよび第2ガスは両方とも、ステップ(b)の間、ガス電界イオン源と相互作用することができる。
【0032】
ガス電界イオン源のチップにおける所与の電圧において、第1ガスの最良結像電圧は、第2ガスの最良結像電圧よりも低くすることができる。例えば、第2ガスの最良結像電圧は、第1ガスの最良結像電圧よりも、少なくとも10%高い(例えば、20%高い、30%高い、40%高い)。
【0033】
ガス電界イオン源は、ステップ(a)の間、第1電界で動作することができ、ガス電界イオン源は、ステップ(b)の間、第2電界で動作することができる。第1電界は第2電界とは異なるものとすることができる。
【0034】
本発明のさらなる態様により開示する方法は、ガス電界イオン源を用いて、第1ガスのイオンおよび該第1ガスとは異なる第2ガスのイオンを含む第1イオンビームを生成するステップ、および、第1イオンビームを、第2ビームおよび第3ビームに分離するステップを含む。第1イオンビームは第1ガスのイオンを少なくとも10%および第2ガスのイオンを多くとも1%含む。第2イオンビームは第2ガスのイオンを少なくとも10%および第1ガスのイオンを多くとも1%含む。
【0035】
本方法は、さらに、第1イオンビームおよび第2イオンビームを用いてガス電界イオン源のチップを画像化するステップを含むことができる。
【0036】
本方法は、さらに、第2イオンビームおよび第3イオンビームを同時に試料と相互作用させて、試料を検査および/または改変するステップを含むことができる。
【0037】
本方法は、さらに、第1ガスおよび第2ガスの両方の原子にガス電界イオン源を露出して第1イオンビームを生成するステップを含むことができる。
【0038】
第1ガスの圧力は、第2ガスの圧力の多くとも4倍とすることができ、および/または、第1ガスの圧力は、第2ガスの圧力の少なくとも0.25倍とすることができる。
【0039】
第1ガスは、第1希ガスとすることができる。
【0040】
第2ガスは、第2希ガスとすることができる。
【0041】
第2イオンビームは、第1ガスのイオンを少なくとも25%含むことができる。
【0042】
第3イオンビームは、第2ガスのイオンを少なくとも25%含むことができる。
【0043】
第2イオンビームは、第2ガスのイオンを多くとも0.1%含むことができる。
【0044】
第3イオンビームは、第1ガスのイオンを多くとも0.1%含むことができる。
【0045】
本方法は、磁界源を備えるイオンビーム分離器を用いて第1イオンビームを第2イオンビームおよび第3イオンビームに分離するステップを含むことができる。イオンビーム分離器は、磁界分離器および電界分離器の組み合わせを含むことができる。
【0046】
第1イオンビームは、原子の種々の同位体のイオンを含むことができ、第2イオンビームは原子の第1同位体のイオンを含むことができ、第3イオンビームは原子の第2同位体のイオンを含むことができる。
【0047】
本発明の付加的な態様により開示するシステムは、質量のそれぞれ異なるイオンからなる第1イオンビームを生成可能なガス電界イオン源、および、システムの使用中に、第1イオンビーム中のイオンを第2イオンビームおよび第3イオンビームに分離するように構成したイオンビーム分離器、を備えるものである。第2イオンビームは第1質量のイオンを少なくとも10%および第1質量とは異なる第2質量のイオンを多くとも1%含み、第3イオンビームは第2質量のイオンを少なくとも10%および前記第1質量のイオンを多くとも1%含む。
【0048】
ビーム分離器は、イオン質量、イオン電荷、および/またはイオン速度から選択される少なくとも1つのパラメータに基づいて、第1イオンビームを第2イオンビームおよび第3イオンビームに分離することができる。
【0049】
本システムは、システムの使用中にガス電界イオン源からのイオンを試料に導くように構成したイオン光学系を備えることができ、イオン光学系は、イオンビーム分離器を備えることができる。イオン光学系は、さらに、絞りを備えることができる。システムの使用中、第2イオンビームは絞りを通過することができる。システムの使用中、第3イオンビームは絞りを通過することができない。例えば、システムの使用中、第3イオンビームを絞りにより遮断することができる。
【0050】
イオンビーム分離器は、電界源および/または磁界源を備えることができる。イオンビーム分離器は、磁界および電界を生成可能とすることができる。
【0051】
イオンビーム分離器は、同一原子のイオンビームであって同位体質量のそれぞれ異なるイオンビームを分離することができる。
【0052】
本システムは、ガス電界イオン顕微鏡とすることができる。
【0053】
本発明の一態様により開示する方法は、第1ガスを少なくとも80%含み第1ガスとは異なる第2ガスを多くとも20%含む混合気体にガス電界イオン源を露出すると同時にこのガス電界イオン源を用いてイオンビームを生成するイオンビーム生成ステップを含むものである。
【0054】
混合気体は、第1ガスを90%含むことができる。
【0055】
ガスは、両方とも、希ガスとすることができる。
【0056】
第1ガスはヘリウムとすることができる。
【0057】
第2ガスはネオンとすることができる。
【0058】
試料におけるイオンビーム電流の変動は、少なくとも30秒間につき10%未満とすることができる。
【0059】
ガス電界イオン源のデューティサイクルは、少なくとも1日間につき少なくとも90%とすることができる。
【0060】
第2ガスが存在することにより、本システムを低電圧で動作させることができる。
【0061】
第2ガスが存在することにより、本システムは、電流角密度が少なくとも20%増加したイオンビームを生成することができる。
【0062】
第2ガスが存在することにより、本システムは、エネルギー拡散が少なくとも20%減少したイオンビームを生成することができる。
【0063】
第2ガスが存在することにより、本システムは、角度広がりが少なくとも20%減少したイオンビームを生成することができる。
【0064】
本方法は、さらに、イオンビームを用いて試料を検査および/または改変するステップを含むことができる。
【0065】
第2ガスが存在することにより、放出電流の変動を50%低減することができる。
【0066】
本発明の別の態様により開示する方法は、ヘリウムとネオンを含む混合気体にガス電界イオン源を露出すると同時にこのガス電界イオン源を用いてイオンビームを生成する、イオンビーム生成ステップを含むものである。混合気体は、ヘリウムを0.1%から10%含み、混合気体は、ネオンを少なくとも10%含む。
【0067】
試料におけるイオンビーム電流の変動は、少なくとも30秒間につき10%未満とすることができる。
【0068】
ガス電界イオン源のデューティサイクルは、少なくとも1日間につき少なくとも90%とすることができる。
【0069】
本方法は、さらに、イオンビームを用いて試料を検査および/または改変するステップを含むことができる。
【0070】
本発明のさらなる態様により開示する方法は、ガス電界イオン源を用いて、試料における電流の変動が少なくとも30秒間につき10%未満であるイオンビームを生成するステップを含むものである。イオンビームは、第1希ガスを少なくとも0.1%含み、第1希ガスとは異なる第2希ガスを少なくとも10%含む。
【0071】
第1希ガスはHeとすることができる。
【0072】
本方法は、さらに、イオンビームを用いて試料を検査および/または改変するステップを含むことができる。
【0073】
本発明の付加的な態様により開示する方法は、ガス電界イオン源を用いて、デューティサイクルが少なくとも1日間につき少なくとも90%であるイオンビームを生成するステップを含む。イオンビームは、第1希ガスを少なくとも0.1%含み、第1希ガスとは異なる第2希ガスを少なくとも10%含む。
【0074】
第1希ガスはHeとすることができる。
【0075】
本発明は、さらに、イオンビームを用いて試料を検査および/または改変するステップを含むことができる。
【0076】
本発明の付加的な態様により開示する方法は、ガス電界イオン源の所望のイオンビーム安定性を決定するステップ、および、所望のイオンビーム安定性に基づいて、ガス電界イオン源を用いてイオンビームを生成するための少なくとも2種類の異なる希ガスを含む混合気体を決定するステップを含むものである。
【0077】
所望のイオンビーム安定性は、試料における所定の期間中の変動が所定量未満のイオンビーム電流として測定することができる。
【0078】
本発明は、さらに、イオンビームを用いて試料を検査および/または改変するステップを含むことができる。
【0079】
本発明の一態様により開示する方法は、ガス電界イオン源の所望のデューティサイクルを決定するステップ、および、ガス電界イオン源の所望のデューティサイクルに基づいて、ガス電界イオン源を用いてイオンビームを生成するための少なくとも2種類の異なるガスを含む混合気体を決定するステップを含むものである。
【0080】
本方法は、さらに、イオンビームを用いて試料を検査および/または改変するステップを含むことができる。
【0081】
本発明の別の態様により開示する方法は、種々のガスを含む混合気体にガス電界イオン源を露出することにより、各ガスのイオンを含むイオンビームを生成するステップを含むものである。本方法は、また、イオンビーム中のイオンの所望の相対存在比に基づいて、ガス電界イオン源のチップにおける電界を選択するステップを含むものである。
【0082】
ガス電界イオン源のチップにおける電界を減少させることにより、イオンビーム中の低質量イオンの存在比を増加することができる。
【0083】
ガス電界イオン源のチップにおける電界を増加させることにより、イオンビーム中の高質量イオンの存在比を増加することができる。
【0084】
ガス電界イオン源のチップにおける電界は、ガス電界イオン源のチップ、抽出器、および/または抑制器に印加する電圧により制御することができる。
【0085】
混合気体は、ヘリウムおよび重質ガスを含むことができる。例えば、混合気体は、ヘリウムおよびネオンを含む。
【0086】
電界は、第1値および第1値とは異なる第2値との間で切り替えることができる。電界を第1値として生成したイオンビームはヘリウムを80%より多く含むことができる。電界を第2値として生成したイオンビームはネオンを少なくとも20%含むことができる。
【0087】
本方法は、さらに、ガス電界イオン源を動作させてイオンビームを生成するステップを含むことができる。
【0088】
上記の特徴および以下に説明する特徴は、特定の組み合わせにおいてのみ用いられるものではなく、本明細書における開示の範囲を逸脱することなく、その他の組み合わせまたは単独で用いることができる。
【0089】
その他の特徴および利点は、以下の説明、図面、および特許請求の範囲により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】イオン顕微鏡システムの概略図である。
【図2】ガス電界イオン源の概略図である。
【図3A】全原子の角放出電流が等しい、略完全な正三角形の発光パターンを示す図である。
【図3B】後に、発光位置のうちの1つが、発光は変化せずに、移動した発光パターンを示す図である。
【図3C】後に、発光位置のうちの1つが明るくなった放出パターンを示す図である。
【図4A】BIVにおける、対時間の発光位置移動を示す図であり、各点は三量体の個々の原子を示し、発光位置のx,y位置は、フラッシュフレームレートが約10Hzのカメラで記録したものである。
【図4B】BIVよりも高い電圧における、対時間の発光位置移動を示す図であり、各点は三量体の個々の原子を示し、発光位置のx,y位置は、フラッシュフレームレートが約10Hzのカメラで記録したものである。
【図5A】BIVにおける、発光位置に関する、放出電流対時間を示す図であり、各トレースは、各発光位置に対する放出電流を示す。
【図5B】BIVよりも高い電圧における、発光位置に関する、放出電流対時間を示す図であり、各トレースは、各発光位置に対する放出電流を示す。
【図6】性能特定基準対動作電圧を示すグラフであり、最大輝度はBIV(19.8kV)にて達成されるが、21.8kVのような高電圧(BIVで達成される電流の約半分の電流)で動作させることにより、原子運動が減少し、輝度の安定性が向上することを示す図である。
【図7】電界、各印加電圧、各放出電流、およびヘリウムとネオンの発生を示すグラフである。
【図8】ビーム分離器を有するガス電界イオン顕微鏡システムの概略図である。
【図9】ヘリウム/ネオンイオンビームをヘリウムイオンとネオンイオンの2つの異なるビームに分離する分離器を用いて生成した2つの三量体像を示す図である。
【図10A】ヘリウムに少量のネオンを導入したときにイオンビームの角度発散が減少することを示す図である。
【図10B】ヘリウムに少量のネオンを導入したときにイオンビームの角度発散が減少することを示す図である。
【図11A】図10Aに示す像における2つの隣接する原子に関する線グラフである。
【図11B】図10Bに示す像における2つの隣接する原子に関する線グラフである。
【図12A】試料の頂面図である。
【図12B】試料の断面図である。
【0091】
異なる図面における同一の参照符号は同一の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0092】
[概論]
図1に、ガス電界イオン顕微鏡システム100を示す。ガス電界イオン顕微鏡システムは、ガス源110、ガス電界イオン源120、イオン光学系130、試料マニピュレータ140、前方検出器150、後方検出器160、および電子制御システム170(例えば、コンピュータ等の電子プロセッサ)を備える。電子制御システムは、通信線172a〜172fを介してシステム100内の各コンポーネントに接続される。試料180は、イオン光学系130と検出器150,160との間において試料マニピュレータ140内または試料マニピュレータ上に載置する。使用時は、イオン光学系130を介してイオンビーム192を試料180の面181に導き、このイオンビーム192が試料180と相互作用することにより発生する粒子194を検出器150および/または検出器160により測定する。一般に、システム100内のある特定の不要な化学種をシステムから除去して、その存在を減少させることが望ましい。図2に示すように、ガス源110は、1種類またはそれ以上の種類のガス(例えば、He,Ne,Ar,Kr,またはXe等)182をガス電界イオン源120に供給するように構成する。ガス電界イオン源120は、ガス源110からの1種類またはそれ以上の種類のガス182を受け入れ、これらの(1種類またはそれ以上の種類の)ガス182からガスイオンを生成するように構成する。ガス電界イオン源120は、チップ頂端部187を有するチップ186、抽出器190、および、任意選択の抑制器188を備える。使用時は、チップ186を抽出器190に対して正にバイアスし、抽出器190を外部接地に対して正または負にバイアスし、任意選択の抑制器188をチップ186に対して正または負にバイアスする。このような構成により、ガス源110から供給されたガス182の非イオン化ガス原子がイオン化され、チップ頂端部187近傍において正電荷を持つイオンとなる。この正電荷を持つイオンは、同時に、正に帯電したチップ186からはじかれて、負に帯電した抽出器190に引き寄せられ、正電荷を持つイオンがイオンビーム192としてチップ186からイオン光学系130に導かれる。抑制器188の支援の下、チップ186と抽出器190との間の電界全体を制御し、その結果として、チップ186からイオン光学系130に至る、正電荷を持つイオンの軌道を制御する。一般に、チップ186と抽出器190との間の電界全体を調整することにより、チップ頂端部187における正電荷を持つイオンの生成速度および、正電荷を持つイオンがチップ186からイオン光学系130まで移動する際の効率を制御することができる。一般に、イオン光学系130は、イオンビーム192を試料180の面181に導くように構成する。イオン光学系130は、例えば、ビーム192中のイオンを集束、コリメート、偏向、加速、および/または減速することができる。イオン光学系130は、また、イオンビーム192中の一部のイオンのみがイオン光学系130を通過するようにすることもできる。一般に、イオン光学系130は、所望に応じて構成した種々の静電イオン光学素子、静磁イオン光学素子、およびその他のイオン光学素子を備える。イオン光学系130内の1つまたはそれ以上のコンポーネント(例えば、静電偏向器)の電界強度および磁界強度を操作することにより、試料180の面181にわたりHeイオンビーム192を走査することができる。例えば、イオン光学系130には、イオンビーム192を2つの直交する方向に偏向する2つの偏向器を設けることができる。これらの偏向器はさまざまな電界強度を有することができ、イオンビーム192を面181の領域の端から端までラスタ走査(raster)する。イオンビーム192を試料180上に作用させて、さまざまな異なる種類の粒子194を生成することができる。これらの粒子は、例えば、二次電子、オージェ電子、二次イオン、二次中性粒子、一次中性粒子、散乱イオン、および光子(例えば、X線光子、赤外(IR)光子、可視光子、紫外(UV)光子)等を含む。検出器150および検出器160は、それぞれ、Heイオンビーム192と試料180の相互作用により発生する1種類またはそれ以上の種類の粒子を測定するように配置および構成する。図1に示すように、検出器150は、試料180の面181から主に発生する粒子194を検出する位置に配置し、検出器160は、試料180の面183から主に発生する粒子194(例えば、通過粒子)を検出する位置に配置する。一般に、顕微鏡システム100において、さまざまな異なる検出器を用いて種々の粒子を検出することができ、顕微鏡システム100において用いることのできる検出器の数は通常任意とすることができる。各検出器の構成は、測定対象の粒子および測定条件により選択することができる。一般に、検出器により測定した情報を用いて、試料180に関する情報を決定する。通常、この情報は、試料180の1つまたはそれ以上の画像を取得することにより決定する。顕微鏡システム100の動作は、通常、電子制御システム170により制御する。例えば、電子制御システム170は、ガス源110から供給された(1種類または複数の種類の)ガス、チップ186の温度、チップ186の電位、抽出器190の電位、抑制器188の電位、イオン光学系130のコンポーネントの設置、試料マニピュレータ140の位置、および/または検出器150ならびに160の位置と設定を制御するように、構成することができる。制御システム170は、試料180についても、上述したように用いることができる。選択肢として、1つまたはそれ以上のこれらのパラメータを手作業で(例えば、電子制御システム170と一体化したユーザインターフェースを介して)制御することができる。追加または代案として、電子制御システム170を(例えば、コンピュータ等の電子プロセッサを介して)用いて、検出器150および160により収集した情報を分析し、試料180に関する情報を提供することができる。これらの情報は、選択肢として、画像、グラフ、表、集計表(スプレッドシート)等として提供されうる。通常、電子制御システム170は、ディスプレイまたはその他の種類の出力装置、入力装置、記憶媒体として構成した、ユーザインターフェースを含む。
【0093】
さまざまな物質によりチップ186を構成することができ、チップ頂端部187はさまざまな形状とすることができる。例として、いくつかの実施形態において、チップ186をタングステン(W)で形成し、チップ頂端部187は、W(111)三量体である端子棚を有する。いくつかの実施形態において、チップ186をタングステン(W)で形成し、チップ186は、W(112)、W(110)、またはW(100)の配向性を持つ端子棚187を有する。ある実施形態において、チップ頂端部187は、2個の原子、4個の原子、5個の原子、6個の原子、7個の原子、8個の原子、9個の原子、10個の原子、および11個以上の原子を持つ端子棚を有することができる。通常、チップ186は金属(例えば、タンタル(Ta),イリジウム(Ir),レニウム(Rh),ニオブ(Nb),白金(Pt),モリブデン(Mo)等)または合金(例えば、本明細書に開示する金属類のうち1つまたはそれ以上のものの合金等)により形成することができる。いくつかの実施形態において,チップ186を炭素(C)で形成する。
【0094】
イオン顕微鏡、ならびに関連コンポーネントおよび方法は、例えば、特許文献1に記載され、その内容は参照により本明細書に完全に援用される。
【0095】
[BIVまたはBIFよりも高い電圧または電界での動作]
場合により、ガス電界イオン源からの放出電流を安定させることおよび/またはその安定を維持することが困難な場合がある。これは、一般に、放出特性が経時的に変動することに起因するものである。放出特性とは、多くの場合、(1)各発光位置の移動、および(2)1つの発光位置における全発光量の変動、を含むことができる。
【0096】
図3〜図3Cに例を示す。図3Aに、W(111)三量体である端子棚を有するガス電界イオン源のチップからの最初の発光パターンを示す。図3Bに、所定時間経過後の、左上の発光位置が右側に移動した発光パターンを示す。図3Cに、所定時間経過後の、左上の発光位置の全発光量が変化して増加した発光パターンを示す。
【0097】
上記した作用(1)または(2)は、いずれも、試料に到達するイオン電流の変動を引き起こすことがある。結像に用いるガス電界イオン顕微鏡システムにおいて、プローブ電流におけるそのような変動に起因して、画像において、不要なアーチファクト、すなわち、明暗帯、画像ドリフト、画像振動、ぼやけ、非点収差等が発生する。試料のスパッタリングまたはミリングに用いるガス電界イオン顕微鏡において、プローブ電流が変動すると、その結果、物質の不均一除去を引き起こす可能性がある。イオンビーム誘起化学法に用いるガス電界イオン顕微鏡においては、エッチングパターンまたは蒸着パターンにおける所望の忠実度が不足する。
【0098】
従来、電界を発生させて角度放出(単位立体角あたりの電流量)を最大化し、イオン顕微鏡(FIM)像または走査型電界イオン顕微鏡(SFIM)像を最大輝度で生成する。すなわち、ガス電界イオン顕微鏡は、一般に、BIVまたはBIFで動作する。しかしながら、BIVまたはBIFよりも高い電圧または電界で動作させることにより、プローブ電流の変動が大幅に減少することがわかった。この技術により、上記(1)および(2)の作用に起因する問題を解決できると考えられる。BIVまたはBIFよりも高い電圧または電界で動作させることにより、電流角密度が(例えば、最大電流の半分に)減少するが、放出電流は長期間にわたり大幅に安定する。多くの場合、放出電流が長期間にわたり安定するという利点は、放出電流を減少させることよりも、より重要である。
【0099】
図4A〜図6に、W(111)三量体を有する端子棚で形成したチップ頂端部を有するタングステンイオン源を備えるHeガス電界イオンシステムに関するデータを示す。このような状態において、HeのBIVは19.8kVである。図4Aは、BIVにて動作した場合の、3つの原子発光位置それぞれの対時間の移動を示す図であり、データはFIMを用いて収集したものである。図4Bは、BIVの114%の電圧にて動作した場合の、3つの原子発光位置それぞれの対時間の移動を示す図であり、データはFIMを用いて収集したものである。図5Aは、BIVにて動作した場合の、1つの原子発光位置に関する、放出電流対時間を示す図であり、データはFIMを用いて収集したものである。図5Bは、BIVの114%の電圧にて動作した場合の、1つの原子発光位置に関する、放出電流対時間を示す図であり、データはFIMを用いて収集したものである。図6は、放出電流の平均削減量を、Heの抽出機に対するイオン源の電圧の関数として示す図であり、データはFIMを用いて収集したものである。これらの像はすべてFIMを用いて取得したものであり、輝度はピコアンメータを用いて測定したものであることに留意されたい。上記の例ではFIMを用いたが、いくつかの実施形態においては、SFIMを用いることもできたはずである。
【0100】
FIMは、非特許文献1に記載されるような標準の全金属UHV技術により構成する。FIMは、1×10−8トルの基準圧で動作させた。ヘリウムを注入して、動作電圧を5×10−5トルとした。ヘリウムガスおよびエミッタは、約78ケルビンの温度で注入した。エミッタは、シャンク長さの半分が21度で、平均曲率半径が120nmの球面である端部形状を有する円錐形のチップとした。チップを、同心抽出器から約3mmのところに配置した。同心抽出器は直径3mmの開口部を有し、この開口部にビームを通過させた。ビームは、さらに65mm前進した後、MCP型画像増強器(El Mul model dcl175/l)に入射した。結果として得られた光学イメージを高性能光学カメラ(AVT Guppy F−038B NIR)でモニタした。結果として得られた映像を、この目的のために企業内部で特別に開発したソフトウエアで取り込んだ。この映像を、その後、「ImageJ」ソフトウエアを用いて、フレームごとに分析した。
【0101】
図に示すように、BIV(またはBIF)よりも高い電圧または電界で動作させることにより、ガス電界イオン源により生成されたイオンビームの安定性を向上させることができる。ある実施形態において、ガスイオンビームを生成する際に、そのガスのBIV(またはBIF)より少なくとも5%高い(例えば、少なくとも10%高い、少なくとも15%高い、少なくとも20%高い)電圧(または電界)でガス電界イオン源のチップを動作させてイオンビームを生成することができる。いくつかの実施形態において、ガスイオンビームを生成する際に、そのガスのBIV(またはBIF)より少なくとも30%高い電圧(または電界)でガス電界イオン源のチップを動作させてイオンビームを生成することができる。ある実施形態において、ガスイオンビームを生成する際に、そのガスのBIV(またはBIF)より少なくとも5%〜30%(例えば、10%〜20%)高い電圧(または電界)でガス電界イオン源のチップを動作させてイオンビームを生成することができる。
【0102】
図4A、図4B、および図6に示すように、BIV(またはBIF)よりも高い電圧(または電界)で動作させることにより、チップ頂端部における発光位置の移動を抑制することができる。いくつかの実施形態において、BIV(またはBIF)よりも高い電圧(または電界)で動作させた際のチップ頂端部における発光位置の移動量は、BIV(またはBIF)で動作させた際のチップ頂端部における発光位置の移動量と比べ、少なくとも2分の1(例えば、少なくとも5分の1、少なくとも10分の1)に減少する。ここで用いたように、発光位置の移動量の測定には、発光位置のxおよびy位置の経時的な複合標準偏差を用いる。
【0103】
図5A、図5B、および図6に示すように、BIV(またはBIF)よりも高い電圧(または電界)で動作させることにより、チップ頂端部における発光位置の放出電流の変動を低減することができる。いくつかの実施形態において、BIV(またはBIF)よりも高い電圧(または電界)で動作させた際のチップ頂端部における発光位置の発光量の変動は、BIV(またはBIF)で動作させた際のチップ頂端部における発光位置の発光量の変動と比べ、少なくとも2分の1(例えば、少なくとも5分の1、少なくとも10分の1)に減少する。ここで用いたように、発光位置の発光量の測定には、発光位置の発光量の経時的な標準偏差を用いる。
【0104】
[源チップ修復中における、BIVまたはBIFが比較的高いガスの導入]
一般に、ガス電界イオン顕微鏡システムは、1種類のガスを用いて動作させる。通常、結像用途では、顕微鏡をできるだけ軽い希ガス原子であるヘリウムで動作させる。その他、スパッタリング、ビームアシスト化学蒸着、ビームアシスト化学エッチング、またはイオン注入等の用途では、その他のガスを用いることができる。これらの用途では、一般的にネオンを選択する。
【0105】
概して、イオン源110により生成されたイオンビームの品質は、チップ頂端部187の形状によってある程度決まる。多くの場合、チップ186を一定期間にわたって使用すると、チップ頂端部187の変形によりイオンビームの品質が低下することがあるため、チップ頂端部187を再形成して、イオンビーム特性に所望の改善を行うことができるような形状とすることが望ましい。通常、チップ頂端部187の再形成を行うプロセスは、チップ頂端部187から1つまたはそれ以上の原子を電界蒸発させることを含む。電界蒸発は、チップ頂端部187における電界を最大約5V/オングストロームのレベルまで増加することにより行い、これによりチップ頂端部187から原子が1つずつ電界蒸発する。一般に、望ましくは、電界蒸発プロセスを(例えば、FIM像またはSFIM像を介して)注意深くモニタして、不要な原子がチップ頂端部187から除去されてチップ頂端部187からの発光が所望のパターン(例えば、三量体)を呈することを確認する。
【0106】
用いるガスの種類によっては、電界蒸着に一般に用いられる電界においてFIM像またはSFIM像を取得することが困難な場合がある。なぜなら、これらの電界において、イオン源により生成されたガスのイオンの放出電流が非常に低いことがあるからである。例えば、図7を参照すると、ネオンイオン(BIFは約3.3V/オングストローム)の放出電流は、電界蒸着中に用いられる電界における一般的な値である5V/オングストロームにおいては非常に低い。ネオンイオンビームを利用してチップの再形成を適切にモニタできないことは、ガス電界イオン源におけるネオンガスの実用化に対する深刻な妨げとなる可能性がある。
【0107】
この問題は、ガス電界イオン顕微鏡システムにヘリウムガスを一時的に導入することにより、解決することができる。この場合、ヘリウムを用いてガス電界イオン源のチップ頂端部を再形成するものである。図7を再度参照すると、ヘリウムイオン(BIFは約4.4V/オングストローム)の放出電流は十分大きく、5V/オングストロームの電界においても、チップ頂端部の再形成中に、ヘリウムイオンの放出を利用してFIM像またはSFIM像を生成することができる。
【0108】
このように、いくつかの実施形態において、ガス電界イオン源を用いてネオンイオンビームを生成することができる。ネオンイオンビームを用いて、試料の検査(例えば、画像化)および/または試料の改変(例えば、試料から物質をスパッタする、試料に対してネオンビームアシスト化学蒸着を行う、試料から物質をビームアシスト化学エッチングする、ネオンイオンを試料に蒸着する等)を行う。必要に応じて、ヘリウムをシステム内に導入することにより、ガス電界イオン源のチップ頂端部を再形成することができ、チップ頂端部の再形成中にヘリウムを導入した結果として生じるヘリウムイオンビームを用いて、チップ頂端部を画像化する。チップ頂端部を再形成した後、ヘリウムはシステムから除去することができ、ネオンイオンビームを再度用いて試料を検査および/または改変することができる。ヘリウムを導入しても、ネオンガスを引き続き供給することができる。または、ヘリウムを導入したら、ネオンガスの供給は停止することができる。ヘリウムガスの供給は、チップ再形成中のみ行うことができる。または、ガス電界イオン源使用中における様々の時点で行うこともできる。
【0109】
より包括的には、本方法は、第1電界または第1電圧で動作するガス電界イオン源により生成された第1ガス(例えば、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン)のイオンのビームを用いて試料を検査および/または改変するステップ、および、続いて、ガス電界イオン源により生成された第2ガス(例えば、ヘリウム等)のイオンのビームに関する情報に基づいて、(第1電界または第1電圧とは異なる)第2電界または第2電圧で動作するガス電界イオン源のチップを再形成するステップを含むことができる。ガス電界イオン源により生成された第2ガス(例えば、ヘリウム等)のイオンのビームに関する情報は、ガス電界イオン源のチップの像(例えば、FIM像、SFIM像等)とすることができる。本方法は、さらに、チップを再形成した後、動作中のガス電界イオン源により生成された第1ガスイオンビームを再度用いて試料を検査および/または改変するステップを含むことができる。通常、このイオンビームを生成するのに用いる電圧または電界は、第1電圧または第1電界とほぼ同等となる。場合によっては、第1ガスのイオンを用いて試料を検査および/または改変するときは、第1ガスについてはBIVまたはBIFを用い、チップ頂端部を再形成するときは第2ガスのBIVまたはBIFを用いる。
【0110】
一般に、ガス電界イオン源のチップが所与の電圧にあるとき、第1ガスの最良結像電圧は第2ガスの最良結像電圧よりも低い。いくつかの実施形態において、第2ガスの最良結像電圧は、第1ガスの最良結像電圧よりも、少なくとも10%(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%)高い。
【0111】
表1に、三量体である端子棚を有するW(111)チップ頂端部を持つタングステンのチップを備えるガス電界イオン顕微鏡システムを使用する際の、特定のガスに対するBIV値およびBIF値を示す。
【0112】
【表1】
【0113】
[ビーム分離器を用いることによる、または動作電圧を変化させることによる、各ビームの切り替え]
場合により、異なる種類のガスでそれぞれ生成した各イオンビームを切り替えることが望ましい。例えば、試料の検査にはヘリウムイオンビームを用い、試料の改変にはネオンイオンビームを用いることが望ましい場合がある。多くの場合、ガス電界イオン顕微鏡システムへのガス供給を即座に調整することは不可能である。流量制御系は、ガスが最終的にチップ頂端部へ供給される位置から離れている場合が多い。流量制御系と供給位置との間には、ある程度の容量(例えば、タービンから計器まで)があり、また、(ノズルまたは浄化フィルター等から)流量の制約をある程度受けることがある。したがって、ガス供給は、流量制御系における変更に迅速に対応することができない場合が多い。このような対応の遅れは、所与のガスをオンするとき、および所与のガスをオフするときのどちらの場合にも現れる。状態の遷移中に、ガスの供給が不安定になる期間(例えば、数秒間、さらには数分間)があり、対象のイオンビーム電流の不要な変動につながる可能性がある。
【0114】
具体的な例を次に示す。ガス電界イオン顕微鏡システムのオペレータは、試料上の所望の領域を探索中に発生する損傷を最小限に抑制するために、ヘリウムビームを用いて試料の画像化を開始する。所望領域が見つかったら、オペレータはヘリウムガスをオフし、ネオンガスをオンして、2分間待つ。その後、オペレータは、ネオンビームを用いて、試料の除去対象領域をスパッタで除去する。しかしながら、このスパッタリングの進捗状況をモニタするため、オペレータはネオンをオフしてヘリウムをオンし、再度2分間待つ。ここで、オペレータは、スパッタリングがまだ完了していないことがわかると、ヘリウムをオフしてネオンを再度オンし、2分間待つ。この周期を何回も繰り返すため、結果として、非常に時間のかかる非効率なプロセスとなる。
【0115】
上記の状況は、単に、両方のガスを同時に稼動させることにより、大幅に改善することができる。ネオンとヘリウムの両方を同時に流動させることができる。一般に、これらのガスは両方ともイオン化して発光パターンを生成することができ、この発光パターンは非常に類似することがある。
【0116】
いくつかの実施形態において、イオン源を複数種類のガスの存在下で動作させ、動作電圧を適切に選択することにより、所望のイオンビームに切り替えることができる。図7を再度参照すると、(W111)三量体の放出は、3.3V/オングストロームの電界強度において最大となり、電界強度の増加または減少に伴い急激に低下するが、ヘリウムの放出は、4.4V/オングストロームの電界強度において最大となり、電界強度の増加または減少に伴い急激に低下することがわかる。したがって、オペレータは、チップ頂端部に対する動作電界を選択して、(例えば、チップ頂端部がW(111)三量体であるときに、約3.4V/オングストロームの電界を用いることにより、)ヘリウムイオンをほとんど含まない、主にネオンイオンからなるビームを生成することができる。または、オペレータは、チップ頂端部に対する動作電界を選択して、(例えば、チップ頂端部がW(111)三量体であるときに、約4.4V/オングストロームの電界を用いることにより)、ネオンイオンをほとんど含まない、主にヘリウムイオンからなるビームを生成することができる。または、これら2つの場合は、いずれも、ビームの純度は比較的高い(80%より高い、90%より高い、95%より高い)純度となる。
【0117】
図8を参照すると、いくつかの実施形態において、チップ頂端部を動作させる電界は、ヘリウムイオン(軽質成分)とネオンイオン(重質成分)の両方を相当量含むイオンビーム800が生成されるような電界とすることができる。イオンビーム800は、イオン光学系130内のビーム分離器810に入射する。ビーム分離器810は、ヘリウムイオンとネオンイオンを分離して、2つの異なるイオンビーム820および830をそれぞれ生成する。イオンビーム820は、主にヘリウムイオンから生成され、イオンビーム830は主にネオンイオンから生成される。
【0118】
いくつかの実施形態において、分離器810は、ビーム800をビーム820および830に分離する磁界を生成する。ネオンイオンおよびヘリウムイオンの各軌道は、イオン光学系130におけるイオンビームの偏向、走査、または集束のために用いる電界には、実質的に影響を受けない。しかしながら、ビーム分離器810により生成された磁界により、ヘリウムイオンおよびネオンイオンの軌道は分岐する。この分岐については、次のように説明することができる。分離器を出射すると、質量Mおよび電荷qの荷電粒子は電位Vに加速された。これらの変数に基づいて、荷電粒子の速度はvzとなる。
【0119】
【数1】
【0120】
強度Byおよび長さLの磁界の横方向領域を横断するのに必要な時間tは次のように計算される。
【0121】
【数2】
【0122】
この期間中に、荷電粒子は、横加速度axを生じさせるローレンツ力を受ける。
【0123】
【数3】
【0124】
時間tの期間にわたりこのローレンツ力を受けた後、粒子の横方向速度は次のように与えられる。
【0125】
【数4】
【0126】
この横方向速度がvzよりも小さいと仮定すると、角偏向は次のように近似される。
【0127】
【数5】
【0128】
このように、高質量のイオンは、低質量のイオンに比べ、分離器810の磁界の影響による角偏向が小さい。ヘリウムイオンとネオンイオンの場合、ネオンイオンの磁界による偏向は、ヘリウムイオンよりも小さく、0.447倍である。同様に、ヘリウムイオンとアルゴンイオンの場合、アルゴンイオンの磁界による偏向は、ヘリウムイオンよりも小さく、0.316倍であり、その結果、最初のイオンビームは、さらにはっきりと2つのイオンビームに分離することができる。
【0129】
図9に、分岐する軌道の略図の画像を示す。W(111)のチップ頂端部を、ヘリウム原子とネオン原子の混合気体に露出した。磁界がない場合、発光パターンは1つの三量体を呈するであろう。しかしながら、図9に示すように、磁界を用いると、三量体パターンは分裂して、ネオンイオンの発光パターンとヘリウムイオンの発光パターンに分離する。ここで、ネオンイオンビームの変位は、ヘリウムイオンビームの変位よりも小さい。
【0130】
一般に、分離器810として任意の磁界源を用いることができる。磁界源の例としては、永久磁石、内部に電流を通過させると磁界を生成するように構成したワイヤ(例えば、巻き針金等)、および1対のヘルムホルツコイルが挙げられる。永久磁石は所定の位置に動かすことができ、または、固定磁気コイルを、場合によっては磁極片と共に、用いることができる。不要なイオンビームを分離により除去する場合、不要なイオンビームをレセプタクルに導くことにより遮断することができ、所望のビームは絞りを通過して最終的な光学素子に到達することができる。
【0131】
一般に、ビーム分離器810は、イオンビーム800の成分をその質量に基づいて分離するのに有効である。例として、ビーム800がネオンイオンおよびヘリウムイオンの両方を含む実施形態において、イオンビーム800におけるNeイオンからなるイオンビームの量の、Neイオンからなるイオンビーム820の(例えば、全イオンビームに対する割合で測定した)量に対する比は、少なくとも2倍(例えば、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍)とすることができる。別の例として、ビーム800がネオンイオンおよびヘリウムイオンの両方を含む実施形態において、イオンビーム800におけるHeイオンからなるイオンビームの例えば、全イオンビームに対する割合で測定した)量の、Heイオンからなるイオンビーム830の(例えば、全イオンビームに対する割合で測定した)量に対する比は、少なくとも2倍(例えば、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍)とすることができる。より一般には、イオンビーム800における重質成分からなるイオンビームの(例えば、全イオンビームに対する割合で測定した)量の、重質成分からなるイオンビーム820の(例えば、全イオンビームに対する割合で測定した)量に対する比は、少なくとも2倍(例えば、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍)とすることができ、および/または、イオンビーム800における軽質成分からなるイオンビームの(例えば、全イオンビームに対する割合で測定した)量の、軽質成分からなるイオンビーム830の(例えば、全イオンビームに対する割合で測定した)量に対する比は、(例えば、全イオンビームに対する割合で測定した場合、)少なくとも2倍(例えば、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍)とすることができる。
【0132】
いくつかの実施形態において、望ましくは濃縮した第1成分からなるイオンビーム820または830の(例えば、全イオンビームに対する割合で測定した場合の)量の、ビーム分離器と相互作用する前の第2成分からなるイオンビーム800の(例えば、全イオンビームに対する割合で測定した場合の)量に対する比は、少なくとも2倍(例えば、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍)とすることができる。例として、ビーム800がネオンイオンおよびヘリウムイオンの両方を含む実施形態において、Neイオンからなるイオンビーム830の(例えば、全イオンビームに対する割合で測定した場合の)量の、イオンビーム800におけるHeイオンからなるイオンビームの(例えば、全イオンビームに対する割合で測定した場合の)量に対する比は、少なくとも2倍(例えば、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍)とすることができる。別の例として、ビーム800がネオンイオンおよびヘリウムイオンの両方を含む実施形態において、Heイオンからなるイオンビーム820の(例えば、全イオンビームに対する割合で測定した場合の)量の、イオンビーム800におけるNeイオンからなるイオンビームの(例えば、Heイオンからなるイオンビームに対する割合で測定した場合の)量に対する比は、少なくとも2倍(例えば、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍)とすることができる。
【0133】
以上、ビーム分離器を用いて異なるガスのイオンを分離する実施形態について説明したが、いくつかの実施形態においては、ビーム分離器を用いて、ガスの異なる同位体のイオンを分離することができる。そのような実施形態においては、ビーム分離器を用いて、イオンビームから不要の同位体を除去することもできる。例として、ビーム分離器を用いて、Neの1つまたはそれ以上の同位体のからイオンを除去し、結果として生じるビーム(試料と相互作用するビーム)において、所望の同位体のイオンが比較的多く含まれ、不要の同位体のイオンが比較的少なくなるようにする。表2に、いくつかの同位体とそれぞれに対応する天然存在比(丸めによる近似値)を示す。
【0134】
【表2】
【0135】
ある実施形態において、ビーム分離器と相互作用した後のビーム中における所望の同位体からなるイオンの(例えば、同位体からなるイオンビーム中のイオンの割合として測定した)割合は、所望の同位体の自然存在比よりも大きい。例えば、いくつかの実施形態において、ビーム分離器と相互作用した結果生じるイオンビームの少なくとも90%(例えば、少なくとも95%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%)は、所望の同位体のイオンである。
【0136】
いくつかの実施形態において、ビーム分離器と相互作用した後のビーム中における不要な同位体からなるイオンの(例えば、イオンビーム中の同位体からなるイオンに対する割合として測定した)割合は、不要な同位体の自然存在比よりも小さい。例えば、いくつかの実施形態において、イオンビーム中の不要な同位体からなるイオンの、不要な同位体の天然存在比に対する割合は、少なくとも2分の1(例えば、少なくとも5分の1、少なくとも10分の1、少なくとも25分の1、少なくとも50分の1、少なくとも100分の1、少なくとも1000分の1)である。いくつかの実施形態において、ビーム分離器と相互作用した結果生じるイオンビーム中の不要な同位体のイオンの割合は、多くとも10%(例えば、多くとも5%、多くとも1%、多くとも0.5%、多くとも0.1%)である。
【0137】
ガスイオンの同位体を用いて、例えば、試料を検査および/または改変する態様は、例えば、2009年5月26日に出願された特許文献2に開示されており、その内容は参照により本明細書に完全に援用される。
【0138】
ビーム分離器を用いて異なるガスのイオンまたはガスの異なる同位体のイオンを分離する実施形態について説明したが、いくつかの実施形態において、ビーム分離器を用いて異なるガスのイオンおよびガスの異なる同位体のイオンを分離することができる。選択肢として、複数のビーム分離器を用いることができる。例として、1つまたはそれ以上のビーム分離器を用いて異なるガスのイオンを分離することができ、1つまたはそれ以上の追加的なビーム分離器を用いてガスの同位体を分離することができる。さらに、代案または追加として、ビーム分離器は、電界を用いてイオンビームの成分を分離することができる。一般に、ビーム分離器は、電界分離器および磁界分離器を種々に組み合わせて利用することができる。
【0139】
ビーム分離器はイオン光学系内に存在するものとして説明したが、より一般には、ビーム分離器は、チップと試料との間のイオンビーム路に沿ったあらゆる位置に存在することができる。さらに、(選択肢として、複数の構成要素を含む)1つのビーム分離器について説明したが、より一般には、複数のビーム分離器を用いることができる。さらに、ビームスプリッタと共に絞りを用いる実施形態について説明したが、ある実施形態において、絞りは存在しない。
【0140】
[第2ガスを用いた、第1ガスのイオンビームの安定化向上]
場合により、ガス電界イオン顕微鏡の性能は、ガス電界イオン源の輝度および/またはエネルギー拡散によって制約を受けることがある。輝度は、一般に、単位発光領域ごとの単位立体角あたりの電流量として測定される。一般に、輝度を高くしてビームを小プローブサイズに集束できるようにすることが望ましい。多くの場合、エネルギー拡散を小さくして、イオン光学素子の色収差を抑制することが望ましい。さらに、場合により、ガス電界イオン源の耐用年数は、ガス電界イオン源の実用化に大きく影響することがある。例えば、ガス電界イオン顕微鏡システムで使用するガスとしてヘリウムを用いた場合、これらの制約が生じることがある。
【0141】
少量のネオンを添加することにより、および、動作電圧を若干低くすることにより、ヘリウムイオン源の性能を大幅に向上することができることがわかった。例えば、所与のチップ形状に対する通常の動作電圧は35kVであり、ヘリウムガス圧は2×10−4トルである。ここで、同様のチップ形状に対して、動作電圧を32kVとし、含有ネオンの分圧を1×10−5とすることにより、性能を大幅に向上することができる。図10A(動作電圧を27.5kVとし、ヘリウムガスを100%用いたときの、三量体端子棚を有するW(111)チップ頂端部のFIM像)および図10B(動作電圧を27.5kVとし、ヘリウムガスを99%およびネオンを1%用いたときの、三量体端子棚を有するW(111)チップ頂端部のFIM像)を参照すると、角度発散が減少すると性能が向上する(輝度が向上するとプローブサイズが小さくなる)ことがわかる。図11Aおよび図11Bは、それぞれ、図10Aおよび図10Bにおける像の2つの隣接する原子に関する線グラフである。
【0142】
理論的制約にとらわれることなしに、この利点は次のような点に起因すると考えられる。すなわち、ネオンの吸着原子が原因となって、電界がより均一なチップ頂端部表面からさらに離れた領域においてイオン化が発生するという点である。また、チップ頂端部電界はより均一なため、エネルギー拡散も減少する可能性があり、その結果、プローブサイズが減少する。低電圧で動作させることで出射原子に影響する電界が弱くなり、その当然の結果として、耐用年数が増加する。
【0143】
ある実施形態において、少なくとも2種類の異なる希ガスを含む混合気体を用いることにより、イオンビームを比較的安定させることができる。例えば、いくつかの実施形態において、少なくとも30秒間(例えば、60秒間、50秒間、40秒間、30秒間)に発生するイオンビームの試料における電流の変化は、10%未満(例えば、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満)である。
【0144】
いくつかの実施形態において、少なくとも2種類の異なる希ガスを含む混合気体を用いることにより、イオンビーム源を比較的安定させることができる。例えば、いくつかの実施形態において、ガス電界イオン源は、少なくとも90%(例えば、少なくとも95%、少なくとも99%、少なくとも99.5%)のデューティサイクルで、一定期間(たとえば、少なくとも1日間、少なくとも3日間、少なくとも1週間)イオンビームを生成することができる。本明細書において、所与の期間におけるガス電界イオン源のデューティサイクルは(100%−X)に等しく、ここで、Xは、ガス電界イオン源を修復または交換するため、ガス電界イオン源を用いてイオンビームを生成していない期間の割合である。例として、期間中にガス電界イオン源の修復または交換を行わなければ、その期間のデューティサイクルは100%となる。別の例として、1日間に、チップ修復に3時間かかりチップ交換には時間がかからなければ、その日のデューティサイクルは87.5%となる。さらなる例として、1日間に、チップ交換に3時間かかりチップ修復には時間がかからなければ、その日のデューティサイクルは87.5%となる。付加的の例として、1日間に、チップ交換に3時間、さらにチップ修復に3時間かかると、その日のデューティサイクルは75%となる。
【0145】
データを収集して、ガス電界イオン顕微鏡の性能(例えば、イオンビームの安定性、デューティサイクル等)を、ガスの混合物(例えば、Heの量、Neの量)の関数として列挙する表を作成することができる。そして、この表を用いて、ガス電界イオンチップの性能を予測することができる。いくつかの実施形態において、オペレータは、ガス電界イオン源所望のイオンビーム安定性を決定することができ、この所望のイオンビーム安定性に基づいて、イオンビームを生成するために用いる混合気体を決定することができる。ある実施形態において、オペレータは、ガス電界イオン源の所望のデューティサイクルを決定することができ、このガス電界イオン源の所望のデューティサイクルに基づいて、ガス電界イオン源を用いてイオンビームを生成するために用いる混合気体を決定することができる。いくつかの実施形態において、オペレータは、所望の安定性またはデューティサイクルを得ることのできる混合気体を選択する。そのような実施形態において、第2ガスを追加してもなんら悪影響はない。
【0146】
[混合気体]
上述したように、いくつかの実施形態において、システム100に導入されたガスは、少なくとも2つの異なる種類の希ガス(He,Ne,Ar,Kr,Xe)を含む。これらのガスは、さまざまに組み合わせる(He/Ne,He/Ar,He/Kr,He/Xe,Ne/Ar,Ne/Kr,Ne/Xe,Ax/Kr,Ar/Xe,Kr/Xe)ことが可能である。一般に、これらの希ガスのうちの1種類が混合気体の大部分を構成し、その他の希ガスを用いて、生成するイオンビームの安定性を高める。例として、いくつかの実施形態において、対象となるイオンビームはNeイオンビームであり、一定量のHeを筐体110内に故意に導入してNeイオンビームの安定性を高める。そのような実施形態において、一般に、混合気体はHeよりもNeを多く含むものである。選択肢として、1種類またはそれ以上の種類のガスを、非希ガスとすることができる。例として、いくつかの実施形態において,これらのガスのうちの1種類を分子水素ガス(H2)とすることができる。
【0147】
いくつかの実施形態において、混合気体は、第1希ガスを少なくとも10%(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%)、および/または第2希ガスを多くとも10%(例えば、多くとも9%、多くとも8%、多くとも7%、多くとも6%、多くとも5%、多くとも4%、多くとも3%、多くとも2%、多くとも1%)含む。例として、ある実施形態において、所望のビームはヘリウムであり、第1希ガスをHe、第2希ガスをNeとする。そのような実施形態において、混合気体は、例えば、ヘリウムを90%、ネオンを10%含むことができる。
【0148】
[試料、試料検査、および試料改変]
試料の例としては、半導体製品が挙げられる。半導体を製造する際には、一般に、複数の材料を順に堆積および処理することで製品(半導体製品)を作成し、集積電子回路、集積回路素子、および/またはその他のマイクロ電子デバイスとして構成する。そのような製品は、一般に、様々な構成(例えば、導電性材料で形成した回路線、非導電性材料を充填したウエル、半導体材料で形成した領域等)を有し、それらの構成は互いに正確に(例えば、通常、数ナノメータ単位で)位置決めされる。所与の構成の位置、サイズ(長さ、幅、奥行き)、組成(化学組成)、および関連特性(導電性、結晶の配向性、磁気特性)は、その製品の性能に重要な影響を及ぼすことがある。例えば、あるいくつかの例において、それらのパラメータうち1つまたはそれ以上が適切な範囲を逸脱すると、その製品は所望の機能を果たすことができないとして廃棄されることがある。結果として、一般に、半導体の各製造工程全てを良好に制御できることが望ましいとされ、また、半導体の様々な製造工程においてその製造をモニタできる手段を使用することが有用であり、そうすれば、その半導体製造工程の様々なステージにおける1つまたはそれ以上の構成の位置、サイズ、組成、および関連特性についての検査を行うことが可能である。本明細書中で用いられる用語「半導体製品」として、集積電子回路、集積回路素子、集積電子回路、マイクロ電子デバイス、または、集積電子回路、集積回路素子、およびマイクロ電子デバイスの製造過程で形成される製品が挙げられる。いくつかの実施形態においては、半導体製品は平面ディスプレイまたは太陽電池の一部を構成することができる。半導体製品の各領域は、異なるタイプ(導電性、非導電性、半導電性)の材料で形成する。導電性材料の例としては、例えば、アルミニウム、クロミウム、ニッケル、タンタル、チタン、タングステン、および1つまたはそれ以上のそれらの金属を含む合金(例えば、アルミニウム・銅合金類)等が挙げられる。金属シリサイド類(例えば、ニッケルシリサイド類、タンタルシリサイド類)も導電性とすることができる。非導電性材料の例としては、例えば、1つまたはそれ以上の上記金属類のホウ化物類、炭化物類、窒化物類、酸化物類、リン化物類、および硫化物類(例えば、ホウ化タンタル類、ゲルマニウムタンタル類、窒化タンタル類、窒化ケイ素タンタル類、および窒化チタン類)等が挙げられる。半導電性材料の例としては、ケイ素、ゲルマニウム、およびヒ化ガリウム等が挙げられる。必要に応じて、半導体材料をドープ(リン(P)ドープ、窒素(N)ドープ)して、その材料の導電性を向上させることができる。所与の材料からなる層を堆積/加工する一般的なステップとしては、その製品を画像化する(それにより、例えば、所望の構成を形成する位置を決定する)ステップ、適切な材料(例えば、導電性材料、半導電性材料、非導電性材料)を堆積するステップ、およびエッチングにより不要な材料をその製品内の所定の箇所から除去するステップ、がある。多くの場合、例えばフォトレジスト高分子等のフォトレジストを堆積し、適切な照射を施し、選択的にエッチングして、所与の構成の形成位置とサイズの制御を支援する。一般に、それ以降の1つまたはそれ以上の工程段階にてフォトレジストを除去し、通常、最終的な半導体製品はフォトレジストをほとんど含まないことが望ましい。
【0149】
図12Aおよび図12Bはそれぞれ、半導体製品200の部分頂面図および部分断面図である。図12Bに示すように、製品200を切断し、側壁210A、210Bおよび底壁210Cを有する断面210を露出する。図12Aおよび図12Bには図示していないが、半導体製品200は種々の材料で形成した多数の層を有し、また、いくつかの例においては、同じ層の中に互いに異なる複数の層を有する。
【0150】
いくつかの実施形態において、本システムおよび方法を用いて試料を改変(修復)することができる(例えば、製品のある領域または断面化により露出した製品の一部を修復する等)。このような試料の改変としては、スパッタリングがあり、例えば、Neイオンをスパッタする。いくつかの例において、製品を製造する際、いくつかの段階(例えば、回路から不要な材料を除去してその回路を編集する際、マスクを改変する際等)において材料を除去するのが望ましいことがある。材料を除去するにはイオンビームを使用することができ、それにより試料から材料をスパッタする。特に、本明細書に記載のように、ガス原子とガス電界イオン源との相互作用により生成されたイオンビームを用いて試料をスパッタすることができる。Heガスイオンを用いることもできるが、一般に、好ましくは、重イオン類(例えば、Neガスイオン類、Arガスイオン類、Krガスイオン類、Xeガスイオン類等)を用いて材料を除去する。材料の除去中は、試料上の除去対象の材料が位置する領域にイオンビームを集束する。
【0151】
ある実施形態において、試料の改変としては、ガスアシスト化学処理を用いるものがあり、それにより材料を試料(試料の所与の層)に対して追加および/または回収することができる。一例として、ガスアシスト化学処理により、半導体回路編集を行うことができ、それにより半導製品内の損傷回路または誤って製造した回路を修理する。一般に、回路編集とは、回路に材料を追加する(例えば、開いている回路を閉じる)こと、および/または回路から材料を回収する(例えば、閉じている回路を開く)ことを含む。ガスアシスト化学処理により、フォトリソグラフィーマスクの修復をすることもできる。マスクの欠陥としては、通常、マスク材料が存在すべきでない領域にマスク材料が余剰して付着すること、および/またはマスク材料が存在すべき領域で材料が欠如することが挙げられる。したがって、ガスアシスト化学処理によりマスク修復を行い、所望により、マスクに対し材料を追加および/または回収することができる。一般に、ガスアシスト化学処理においては、荷電粒子ビーム(例えば、イオンビーム、電子ビーム、またはその両方)を用い、荷電粒子ビームを適切なガス(例えば、Cl2,O2,I2,XeF2,F2,CF4,H2O,XeF2,F2,CF4,WF6等)と相互作用させる。
【0152】
ある実施形態において、試料を検査することが望ましい。そのような検査の一例としては、ボイドを検出することが挙げられる。半導体製品の製造過程において、あるいくつかのフィーチャまたは層にボイドが不用意に発生してしまうことがある。いくつかの実施形態においては、ボイドがデバイスの構成および/またはデバイス全体の性能(例えば、電気的性能、機械的性能)に不要な影響を及ぼすことがある。後続の加工段階で、そのボイドが開くことがあり、例えば、液体および/またはガス状成分によりボイドが充填されてしまうことがある。そうすると、下部層の腐食、および/または粒子欠陥および/または残渣欠陥の原因となることがある。最終的に、ボイドの存在により、電気的および/または機械的特性が所望の値(例えば、設計値)から逸脱してしまうことがある。
【0153】
半導体製品の欠陥検出の別の例として、オーバーレイシフトレジストレーションが挙げられる。用語「オーバーレイシフトレジストレーション」とは、一般に、半導体製品の所与の層内の構成と別の層内の構成の位置を合わせる(アラインメントする)ことである。上述したように、半導体製品の製造においては、多くの層を適切に形成することが必要である。一般に、1つの半導体製品が含む層の数は20を大幅に上回る。多くの場合、各層は複数の種々の構成を含むことがあり、それぞれの構成を高精度で配置し、半導体製品が適切に機能するようにすることが望ましい。一例として、半導体製品は、例えば導電配線(ワイヤ)等の平面構成を複数備え、それらの構成は異なる層に配置され、ビアにて互いに接続される。通常、半導体製品内の構成は互いに適切に位置合わせされていることが望ましい。
【0154】
半導体製品の欠陥検出の付加的な例として、限界寸法計測が挙げられる。用語「限界寸法計測」とは、半導体製品内の構成であって、デバイスの性能に決定的な影響を及ぼす可能性のある構成の線寸法を計測することである。そのような構成の例としては、例えばライン(例えば、導電性材料のライン、半導電性材料のライン、非導電性材料のライン)が挙げられる。1つの半導体製品は、1つまたは複数の構成を備え、その規模寸法は20nm以下(例えば、10nm以下、5nm以下、4nm以下、3nm以下、2nm以下、1nm以下)である。いくつかの実施形態において、構成の寸法を複数回計測して、構成のサイズに関する統計情報を得る。限界寸法計測においては、多くの場合、例えば、ウエハ上のパターン化構成の長さを測定することを必要とする。複数のウエハ(複数のダイスを含み、各ダイスが半導体製品を形成するウエハ)を製造ラインからランダムに選択して検査すること、またはラインの全てのウエハを検査することができる。選択した限界寸法の計測には、画像化器機を用いると比較的ハイスループット率で計測を行うことができる。計測した限界寸法が許容範囲外であれば、そのウエハを廃棄する。ある特定の製造機により製造される試料のうち複数が限界寸法の許容範囲外であった場合、その製造機の稼動を停止する、または、その製造機の稼動パラメータを変更する。
【0155】
欠陥検出のさらなる例として、ラインエッジラフネスおよび/またはライン幅ラフネスの計測が挙げられる。用語「ラインエッジラフネス」は、一般に、半導体製品内の材料のラインエッジ粗さのことであり、用語「ライン幅ラフネス」は、一般に、半導体製品内の材料のライン幅粗さのことである。望ましくは、これらの値を検出して、所与の半導体製品に実際にまたは潜在的に問題が内在するかを究明する。例えば、導電性材料からなる隣接するラインのエッジが互いに外側へ突出していると、そのラインが互いに接触し、短絡することがある。望ましくは、ラインエッジラフネスおよび/またはライン幅ラフネスが5nm以下(例えば、4nm以下、3nm以下、2nm以下、1nm以下、0.9nm以下、0.8nm以下、0.7nm以下、0.6nm以下、0.5nm以下、または0.5nm未満)の範囲にあることを確かめる。
【0156】
以上、半導体製品を試料として構成した実施形態について説明したが、より一般的には、任意のタイプの試料を用いることができる。試料の例としては、生物学的試料(例えば、組織、核酸、タンパク質、炭水化物、脂質、および細胞膜)、薬剤試料(例えば、小分子薬)、凍結水(例えば、氷)、磁気記憶デバイスに用いるリード/ライトヘッド、ならびに金属試料類および合金試料類が挙げられる。
【0157】
試料、試料検査、および試料改変の例については、例えば、特許文献3に開示される。
【0158】
上述した実施形態の様々な態様は、概して、所望により組み合わせることができる。
【0159】
その他の実施形態は特許請求の範囲に包含される。
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する発明は、イオンビームの比較的高い安定性を提供するシステムおよび方法を含む、イオン顕微鏡法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
イオンを用いて、試料を検査および/または改変することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7,557,359号明細書
【特許文献2】国際出願PCT/US2009/045133号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2007−0158558号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Journal of Scientific Instruments, 1965, VoI 42,「An Ail-Metal Field ion microscope」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書で開示する発明は、包括的に、イオンビームの比較的高い安定性を提供するシステムおよび方法を含むイオン顕微鏡法およびシステムに関する。
【0006】
例えば、所与の期間にわたりイオンビーム電流の安定性が比較的高いと、比較的高い安定性を得ることができる。そのような例において、イオンビームを用いて試料を改変する場合(例えば、ガスアシストエッチング法、ガスアシスト蒸着法、スパッタ法、フォトレジスト露光を行う場合)、イオンビームの安定性が比較的高いことにより、結果として、試料の品質および/または(例えば、各位置間における)均一性の信頼性が向上し、および/または、試料改変にかかるコストを削減することができる。一般に、イオンビーム電流が変動することにより、結果として、単位時間当たりにおける試料上に作用するイオンの数が変動する。しかし、通常、試料の改変中にそのような変動を補正しようとすることは困難な場合があり、多くのプロセスにおいては、イオンビーム変動は許容レベル範囲内であり試料改変は各位置において比較的均一に行われるであろうという想定の下、改変対象の各位置を同じ時間だけイオンビームで露光する。しかしながら、イオンビームの変動が大きくなりすぎると、試料の位置による変化が大きくなり許容範囲を超えてしまう(例えば、試料が設計したように機能しない等)。
【0007】
また、イオンビームの安定性が比較的高いことにより、結果として、試料を検査する際に収集したデータの信頼性の向上、データ収集効率の向上、および/またはデータ収集にかかるコスト削減につながる。多くの場合、試料を検査する際、イオンビーム電流が変動すると、その結果、試料から検出される粒子(例えば、二次電子)の数が変動する。そのようなビーム電流の変動は、比較的短いタイムフレーム内で発生することがあり(例えば、この現象は一般にビームフリッカと呼ばれる)、または、比較的長いタイムフレームにわたり発生することもある(例えば、ビーム電流ドリフト)。いずれの場合においても、ビーム電流が変動すると、例えば、粒子数の変化の原因が、試料の局所変化(例えば、試料面の形態変化、試料面近傍に存在する物質の変化等)に起因するものか、または、イオンビーム電流における変化に起因するものかの判断が難しくなる。そのような場合、収集されたデータ(例えば、試料画像、試料スペクトル)は信憑性に欠け信頼できないと考えられ、十分信頼できるデータを収集するには、試料の検査をさらにもう1回またはそれ以上行うことが必要となる場合がある。場合によっては、ビーム電流が不安定で、試料を確実に検査することができないことがある。さらに、試料の検査中にデータ収集を何度も繰り返し試みることにより、所与の試料を検査する能力が低下する。場合により、試料検査における適正なスループットを達成することができないことが考えられる。さらに、所与の試料の検査を繰り返し行うことによって十分に信頼できるデータを収集することができたとしても、この手法に付随するコストは許容可能範囲を超えてしまうことがある。
【0008】
代案または追加として、例えば、イオン源を復元および/または交換する必要がある場合もその復元および/または交換にはほとんど時間をかけずに比較的長時間動作するチップを有するイオンビーム源において、比較的高い安定性を得ることができる。このことは、例えば、イオンを用いて試料(例えば、マスク等)を改変する際に有用である。例として、そのような場合、望ましくはイオンビームを用いて試料をスパッタする。イオン源を復元および/または交換する必要がある場合もその復元および/または修復にほとんど時間をかけずに比較的長時間動作するチップを有するイオンビーム源を用いることにより、結果として、例えば、効率の向上および/またはコストの削減につながる。このことは、例えば、試料を高精度で改変することが特に重要である場合、試料が比較的高価である場合、および/または比較的多数の試料を処理する場合において、有利である。試料改変を高精度で行うことが重要である場合、チップを修復または交換せずにイオン源を比較的長時間動作させることが可能であれば、チップの修復および/または交換に付随する潜在的な問題(例えば、種々のガス状態への露出、場合によっては、試料が大気条件下に露出してしまうこと)を軽減、または、場合によっては、回避することができる。試料が比較的高価である場合も、同様の利点を得ることができる。比較的多数の試料を処理したい場合、比較的短時間で修復および/または交換できるチップを比較的長時間用いることができることは、多くの時間をかけて試料を処理することができることを意味し、概して、プロセスのスループット向上につながる。
【0009】
イオンビーム源の実効寸法を小さくし、イオンビームを低角度発散および低エネルギー拡散させることは、試料を検査および/または改変する際に非常に有用であることが多い。源の実効寸法が小さいため、また低角度発散であるため、従来のイオン光学的方法を用いてビームを試料上において小さいプローブ寸法に集束することができる。これら2つの望ましい特徴、すなわち、実効寸法が小さいこと、および低角度発散であることは、一般に、荷電粒子源の低エテンデュー化および/または高輝度化にとって望ましいとされる。低エネルギー拡散であることにより、後段のいかなるイオン光学素子から発生する分散または色収差も低減することができる。
【0010】
いくつかの実施形態において、ガス電界イオン顕微鏡を、その最良結像電界および/または最良結像電圧よりも高い電界または電圧で動作させることにより、イオンビームを比較的安定させることができる。本明細書において、用語「最良結像電界(BIF:Best Imaging Field)」は、源のチップから放出されるイオンの角度放出(単位立体角あたりの電流量)が最大となる際に源のチップに印加される電界の大きさを示し、用語「最良結像電圧(BIV:Best Imaging Voltage)」は、抽出器の電圧に対して最良の結像電界を生成するのに用いた源のチップの電圧を示す。最良結像電界および/または最良結像電圧よりも高い電界または電圧で動作させることにより源のチップから放出されるイオンの角度放出は最大角度放出よりも減少するが、出願者らは、これらの動作条件下で動作させることにより、電流変動が減少することを発見した。電流変動の減少は、全般的に見れば、源のチップからイオンを高角度で放出することよりも重要となりうる。
【0011】
ある実施形態において、源チップの再形成中に、BIV(またはBIF)が比較的高い第2ガスを導入することにより、イオンビームを比較的安定させることができる。例として、ネオンガス電界イオン顕微鏡の源チップを再形成する際、ヘリウムを導入することができる。この手法により、オペレータは比較的高い源チップ電圧(電界)でチップを再形成すること可能となり、この条件下において第1ガス(例えば、ネオン)により生成したイオンビームの観測は困難になるが、このような状況下において第2ガス(例えば、ヘリウム)により生成したイオンビームを観測することができる。源チップを再形成した後、第2ガス(例えば、ヘリウム)を除去することができ、第1ガス(例えば、ネオン)による動作を再開することができる。
【0012】
いくつかの実施形態において、イオン源のチップにおける電界を操作することにより、BIVまたはBIFの異なる2種類のガス間でイオンビームを比較的安定して切り替えることができる。例えば、イオン源のチップにおける電界を比較的低電界とすることにより、主としてBIVまたはBIFの低いガスのイオン(例えば、ネオンイオン等)からなるイオンビームを生成することができ、イオン源のチップにおける電界を比較的高電界とすることにより、主としてBIVまたはBIFの高いガスのイオン(例えば、ヘリウムイオン等)からなるイオンビームを生成することができる。
【0013】
ある実施形態において、電界分離器、磁界分離器、またはその両方のビーム分離器を用いることにより、BIVまたはBIFの異なる2種類のガス間でイオンビームを比較的安定して切り替えることができる。例えば、ビーム分離器をイオン光学系内に配置して、第1モードと第2モードとの間で切り替えることができる。第1モードとは、第1ガスのイオンを試料に到達させる一方で第2ガスのイオンを試料に実質的に到達させないように、ビーム分離器を構成するものである。第2モードとは、第2ガスのイオンを試料に到達させる一方で第1ガスのイオンを試料に実質的に到達させないように、ビーム分離器を構成するものである。
【0014】
いくつかの実施形態において、例えば、第1ガスのイオンビームを生成する際に、故意に第2ガスを導入することにより、ビーム安定性を比較的高くすることができる。イオンビームの特定の特徴(例えば、源の実効寸法、発散角度、拡散エネルギー等)は、第1ガスのイオンビームを生成する際に、故意に第2ガスを導入することにより、減少させることができる。ガス電界イオン顕微鏡におけるイオンビームが発生する領域に存在する混合気体のサンプル中において、第2ガスの量は、第2ガスを故意に添加しなかった場合よりも多い(例えば、第2ガスは、第1ガスにおける不純物濃度の量を超えて存在する)。選択肢として、イオンビームを生成した後、いくらかの(例えば、実質的には全ての)第2ガスをイオンビームから除去することができる。したがって、いくつかの実施形態において、試料近傍の混合気体のサンプル中の第2ガスの量は、ガス電界イオン顕微鏡におけるイオンビームが発生する領域に存在する第2ガスの量よりも、実質的に少なくすることができる。一般に、第1ガスおよび第2ガスはどちらも希ガスであるが、場合によっては、第1ガスおよび第2ガスのどちらか一方または両方を、例えば、分子水素ガス等の非希ガスとすることができる。多くの場合、第2ガスはHeであり、第1ガスは別の希ガス(例えば、Ar,Kr,Ne,Xe,Rn等)である。場合によっては、第1ガスをNeとし、第2ガスをHeとすることができる。その場合、Neイオンを用いて、例えば、試料をスパッタすることができる。
【0015】
本発明の一態様において開示する方法は、ガスの最良結像電圧よりも少なくとも5%高い電圧で動作するチップを有するガス電界イオン源を用いてイオンビームを生成する、イオンビーム生成ステップ、およびイオンビームを用いて試料を検査/または改変するステップ、を含むものである。
【0016】
ガス電界イオン源のチップの電圧は、ガスの最良結像電圧よりも、少なくとも10%(例えば、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%)高くすることができる。例えば、ガス電界イオン源のチップの電圧は、ガスの最良結像電圧よりも、10%から20%高くすることができる。
【0017】
ガス電界イオン源は、イオンビームを生成する三量体を有する端子棚を含むチップを備えることができる。
【0018】
ガス電界イオン源はイオンビームを生成するチップを備えることができ、ガス電界イオン源のチップにおける原子の運動は、最良結像電圧で動作する際のガス電界イオン源のチップにおける原子の運動と比較して、少なくとも2分の1に抑制される。
【0019】
ガス電界イオン源はイオンビームを生成するチップを備え、ガス電界イオン源のチップにおける各発光位置当たりのイオンの放出は、最良結像電圧で動作する際のガス電界イオン源のチップにおける各発光位置当たりのイオンの放出と比較して、少なくとも2分の1に低減される。
【0020】
ガスは、ネオン等の希ガスとすることができる。
【0021】
ガス電界イオン源は、ガス電界イオン顕微鏡の一部とすることができる。
【0022】
本発明の別の態様において開示する方法は、(a)第1ガスを用いて、ガス電界イオン源からイオンビームを生成し、試料を検査および/または改変するステップ、および(b)ステップ(a)の後、ガス電界イオン源のチップの再形成中に、第2ガスを用いてガス電界イオン源のチップの端子棚の原子構造をモニタして、ガス電界イオン源のチップの端子棚の発光パターンを生成するステップ、を含むものである。第2ガスは第1ガスと異なるものとすることができる。
【0023】
ガス電界イオン源により生成した第2ガスのイオンのビームに関する情報は、ガス電界イオン源のチップの画像とすることができる。
【0024】
ガス電界イオン源は、ステップ(a)の間、第1電圧で動作することができ、ガス電界イオン源は、ステップ(b)の間、第2電圧で動作する。第1電圧は第2電圧とは異なる。
【0025】
第2電圧は第1電圧よりも高くすることができる。
【0026】
本方法は、また、(c)ステップ(b)の後、第1ガスを用いてガス電界イオン源からイオンビームを生成し、試料を検査および/または改変するステップを含むこともできる。
【0027】
ガス電界イオン源は、ステップ(a)の間、第1電圧で動作することができ、ガス電界イオン源は、ステップ(b)の間、第2電圧で動作することができ、ガス電界イオン源は、ステップ(c)の間、第3電圧で動作することができる。第1電圧は第2電圧とは異なるものとすることができ、第3電圧は第2電圧とは異なるものとすることができる。
【0028】
第2ガスはヘリウムとすることができる。
【0029】
第1ガスは希ガスとすることができる。
【0030】
第1ガスおよび第2ガスは両方とも、ステップ(a)の間、ガス電界イオン源と相互作用することができる。
【0031】
第1ガスおよび第2ガスは両方とも、ステップ(b)の間、ガス電界イオン源と相互作用することができる。
【0032】
ガス電界イオン源のチップにおける所与の電圧において、第1ガスの最良結像電圧は、第2ガスの最良結像電圧よりも低くすることができる。例えば、第2ガスの最良結像電圧は、第1ガスの最良結像電圧よりも、少なくとも10%高い(例えば、20%高い、30%高い、40%高い)。
【0033】
ガス電界イオン源は、ステップ(a)の間、第1電界で動作することができ、ガス電界イオン源は、ステップ(b)の間、第2電界で動作することができる。第1電界は第2電界とは異なるものとすることができる。
【0034】
本発明のさらなる態様により開示する方法は、ガス電界イオン源を用いて、第1ガスのイオンおよび該第1ガスとは異なる第2ガスのイオンを含む第1イオンビームを生成するステップ、および、第1イオンビームを、第2ビームおよび第3ビームに分離するステップを含む。第1イオンビームは第1ガスのイオンを少なくとも10%および第2ガスのイオンを多くとも1%含む。第2イオンビームは第2ガスのイオンを少なくとも10%および第1ガスのイオンを多くとも1%含む。
【0035】
本方法は、さらに、第1イオンビームおよび第2イオンビームを用いてガス電界イオン源のチップを画像化するステップを含むことができる。
【0036】
本方法は、さらに、第2イオンビームおよび第3イオンビームを同時に試料と相互作用させて、試料を検査および/または改変するステップを含むことができる。
【0037】
本方法は、さらに、第1ガスおよび第2ガスの両方の原子にガス電界イオン源を露出して第1イオンビームを生成するステップを含むことができる。
【0038】
第1ガスの圧力は、第2ガスの圧力の多くとも4倍とすることができ、および/または、第1ガスの圧力は、第2ガスの圧力の少なくとも0.25倍とすることができる。
【0039】
第1ガスは、第1希ガスとすることができる。
【0040】
第2ガスは、第2希ガスとすることができる。
【0041】
第2イオンビームは、第1ガスのイオンを少なくとも25%含むことができる。
【0042】
第3イオンビームは、第2ガスのイオンを少なくとも25%含むことができる。
【0043】
第2イオンビームは、第2ガスのイオンを多くとも0.1%含むことができる。
【0044】
第3イオンビームは、第1ガスのイオンを多くとも0.1%含むことができる。
【0045】
本方法は、磁界源を備えるイオンビーム分離器を用いて第1イオンビームを第2イオンビームおよび第3イオンビームに分離するステップを含むことができる。イオンビーム分離器は、磁界分離器および電界分離器の組み合わせを含むことができる。
【0046】
第1イオンビームは、原子の種々の同位体のイオンを含むことができ、第2イオンビームは原子の第1同位体のイオンを含むことができ、第3イオンビームは原子の第2同位体のイオンを含むことができる。
【0047】
本発明の付加的な態様により開示するシステムは、質量のそれぞれ異なるイオンからなる第1イオンビームを生成可能なガス電界イオン源、および、システムの使用中に、第1イオンビーム中のイオンを第2イオンビームおよび第3イオンビームに分離するように構成したイオンビーム分離器、を備えるものである。第2イオンビームは第1質量のイオンを少なくとも10%および第1質量とは異なる第2質量のイオンを多くとも1%含み、第3イオンビームは第2質量のイオンを少なくとも10%および前記第1質量のイオンを多くとも1%含む。
【0048】
ビーム分離器は、イオン質量、イオン電荷、および/またはイオン速度から選択される少なくとも1つのパラメータに基づいて、第1イオンビームを第2イオンビームおよび第3イオンビームに分離することができる。
【0049】
本システムは、システムの使用中にガス電界イオン源からのイオンを試料に導くように構成したイオン光学系を備えることができ、イオン光学系は、イオンビーム分離器を備えることができる。イオン光学系は、さらに、絞りを備えることができる。システムの使用中、第2イオンビームは絞りを通過することができる。システムの使用中、第3イオンビームは絞りを通過することができない。例えば、システムの使用中、第3イオンビームを絞りにより遮断することができる。
【0050】
イオンビーム分離器は、電界源および/または磁界源を備えることができる。イオンビーム分離器は、磁界および電界を生成可能とすることができる。
【0051】
イオンビーム分離器は、同一原子のイオンビームであって同位体質量のそれぞれ異なるイオンビームを分離することができる。
【0052】
本システムは、ガス電界イオン顕微鏡とすることができる。
【0053】
本発明の一態様により開示する方法は、第1ガスを少なくとも80%含み第1ガスとは異なる第2ガスを多くとも20%含む混合気体にガス電界イオン源を露出すると同時にこのガス電界イオン源を用いてイオンビームを生成するイオンビーム生成ステップを含むものである。
【0054】
混合気体は、第1ガスを90%含むことができる。
【0055】
ガスは、両方とも、希ガスとすることができる。
【0056】
第1ガスはヘリウムとすることができる。
【0057】
第2ガスはネオンとすることができる。
【0058】
試料におけるイオンビーム電流の変動は、少なくとも30秒間につき10%未満とすることができる。
【0059】
ガス電界イオン源のデューティサイクルは、少なくとも1日間につき少なくとも90%とすることができる。
【0060】
第2ガスが存在することにより、本システムを低電圧で動作させることができる。
【0061】
第2ガスが存在することにより、本システムは、電流角密度が少なくとも20%増加したイオンビームを生成することができる。
【0062】
第2ガスが存在することにより、本システムは、エネルギー拡散が少なくとも20%減少したイオンビームを生成することができる。
【0063】
第2ガスが存在することにより、本システムは、角度広がりが少なくとも20%減少したイオンビームを生成することができる。
【0064】
本方法は、さらに、イオンビームを用いて試料を検査および/または改変するステップを含むことができる。
【0065】
第2ガスが存在することにより、放出電流の変動を50%低減することができる。
【0066】
本発明の別の態様により開示する方法は、ヘリウムとネオンを含む混合気体にガス電界イオン源を露出すると同時にこのガス電界イオン源を用いてイオンビームを生成する、イオンビーム生成ステップを含むものである。混合気体は、ヘリウムを0.1%から10%含み、混合気体は、ネオンを少なくとも10%含む。
【0067】
試料におけるイオンビーム電流の変動は、少なくとも30秒間につき10%未満とすることができる。
【0068】
ガス電界イオン源のデューティサイクルは、少なくとも1日間につき少なくとも90%とすることができる。
【0069】
本方法は、さらに、イオンビームを用いて試料を検査および/または改変するステップを含むことができる。
【0070】
本発明のさらなる態様により開示する方法は、ガス電界イオン源を用いて、試料における電流の変動が少なくとも30秒間につき10%未満であるイオンビームを生成するステップを含むものである。イオンビームは、第1希ガスを少なくとも0.1%含み、第1希ガスとは異なる第2希ガスを少なくとも10%含む。
【0071】
第1希ガスはHeとすることができる。
【0072】
本方法は、さらに、イオンビームを用いて試料を検査および/または改変するステップを含むことができる。
【0073】
本発明の付加的な態様により開示する方法は、ガス電界イオン源を用いて、デューティサイクルが少なくとも1日間につき少なくとも90%であるイオンビームを生成するステップを含む。イオンビームは、第1希ガスを少なくとも0.1%含み、第1希ガスとは異なる第2希ガスを少なくとも10%含む。
【0074】
第1希ガスはHeとすることができる。
【0075】
本発明は、さらに、イオンビームを用いて試料を検査および/または改変するステップを含むことができる。
【0076】
本発明の付加的な態様により開示する方法は、ガス電界イオン源の所望のイオンビーム安定性を決定するステップ、および、所望のイオンビーム安定性に基づいて、ガス電界イオン源を用いてイオンビームを生成するための少なくとも2種類の異なる希ガスを含む混合気体を決定するステップを含むものである。
【0077】
所望のイオンビーム安定性は、試料における所定の期間中の変動が所定量未満のイオンビーム電流として測定することができる。
【0078】
本発明は、さらに、イオンビームを用いて試料を検査および/または改変するステップを含むことができる。
【0079】
本発明の一態様により開示する方法は、ガス電界イオン源の所望のデューティサイクルを決定するステップ、および、ガス電界イオン源の所望のデューティサイクルに基づいて、ガス電界イオン源を用いてイオンビームを生成するための少なくとも2種類の異なるガスを含む混合気体を決定するステップを含むものである。
【0080】
本方法は、さらに、イオンビームを用いて試料を検査および/または改変するステップを含むことができる。
【0081】
本発明の別の態様により開示する方法は、種々のガスを含む混合気体にガス電界イオン源を露出することにより、各ガスのイオンを含むイオンビームを生成するステップを含むものである。本方法は、また、イオンビーム中のイオンの所望の相対存在比に基づいて、ガス電界イオン源のチップにおける電界を選択するステップを含むものである。
【0082】
ガス電界イオン源のチップにおける電界を減少させることにより、イオンビーム中の低質量イオンの存在比を増加することができる。
【0083】
ガス電界イオン源のチップにおける電界を増加させることにより、イオンビーム中の高質量イオンの存在比を増加することができる。
【0084】
ガス電界イオン源のチップにおける電界は、ガス電界イオン源のチップ、抽出器、および/または抑制器に印加する電圧により制御することができる。
【0085】
混合気体は、ヘリウムおよび重質ガスを含むことができる。例えば、混合気体は、ヘリウムおよびネオンを含む。
【0086】
電界は、第1値および第1値とは異なる第2値との間で切り替えることができる。電界を第1値として生成したイオンビームはヘリウムを80%より多く含むことができる。電界を第2値として生成したイオンビームはネオンを少なくとも20%含むことができる。
【0087】
本方法は、さらに、ガス電界イオン源を動作させてイオンビームを生成するステップを含むことができる。
【0088】
上記の特徴および以下に説明する特徴は、特定の組み合わせにおいてのみ用いられるものではなく、本明細書における開示の範囲を逸脱することなく、その他の組み合わせまたは単独で用いることができる。
【0089】
その他の特徴および利点は、以下の説明、図面、および特許請求の範囲により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】イオン顕微鏡システムの概略図である。
【図2】ガス電界イオン源の概略図である。
【図3A】全原子の角放出電流が等しい、略完全な正三角形の発光パターンを示す図である。
【図3B】後に、発光位置のうちの1つが、発光は変化せずに、移動した発光パターンを示す図である。
【図3C】後に、発光位置のうちの1つが明るくなった放出パターンを示す図である。
【図4A】BIVにおける、対時間の発光位置移動を示す図であり、各点は三量体の個々の原子を示し、発光位置のx,y位置は、フラッシュフレームレートが約10Hzのカメラで記録したものである。
【図4B】BIVよりも高い電圧における、対時間の発光位置移動を示す図であり、各点は三量体の個々の原子を示し、発光位置のx,y位置は、フラッシュフレームレートが約10Hzのカメラで記録したものである。
【図5A】BIVにおける、発光位置に関する、放出電流対時間を示す図であり、各トレースは、各発光位置に対する放出電流を示す。
【図5B】BIVよりも高い電圧における、発光位置に関する、放出電流対時間を示す図であり、各トレースは、各発光位置に対する放出電流を示す。
【図6】性能特定基準対動作電圧を示すグラフであり、最大輝度はBIV(19.8kV)にて達成されるが、21.8kVのような高電圧(BIVで達成される電流の約半分の電流)で動作させることにより、原子運動が減少し、輝度の安定性が向上することを示す図である。
【図7】電界、各印加電圧、各放出電流、およびヘリウムとネオンの発生を示すグラフである。
【図8】ビーム分離器を有するガス電界イオン顕微鏡システムの概略図である。
【図9】ヘリウム/ネオンイオンビームをヘリウムイオンとネオンイオンの2つの異なるビームに分離する分離器を用いて生成した2つの三量体像を示す図である。
【図10A】ヘリウムに少量のネオンを導入したときにイオンビームの角度発散が減少することを示す図である。
【図10B】ヘリウムに少量のネオンを導入したときにイオンビームの角度発散が減少することを示す図である。
【図11A】図10Aに示す像における2つの隣接する原子に関する線グラフである。
【図11B】図10Bに示す像における2つの隣接する原子に関する線グラフである。
【図12A】試料の頂面図である。
【図12B】試料の断面図である。
【0091】
異なる図面における同一の参照符号は同一の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0092】
[概論]
図1に、ガス電界イオン顕微鏡システム100を示す。ガス電界イオン顕微鏡システムは、ガス源110、ガス電界イオン源120、イオン光学系130、試料マニピュレータ140、前方検出器150、後方検出器160、および電子制御システム170(例えば、コンピュータ等の電子プロセッサ)を備える。電子制御システムは、通信線172a〜172fを介してシステム100内の各コンポーネントに接続される。試料180は、イオン光学系130と検出器150,160との間において試料マニピュレータ140内または試料マニピュレータ上に載置する。使用時は、イオン光学系130を介してイオンビーム192を試料180の面181に導き、このイオンビーム192が試料180と相互作用することにより発生する粒子194を検出器150および/または検出器160により測定する。一般に、システム100内のある特定の不要な化学種をシステムから除去して、その存在を減少させることが望ましい。図2に示すように、ガス源110は、1種類またはそれ以上の種類のガス(例えば、He,Ne,Ar,Kr,またはXe等)182をガス電界イオン源120に供給するように構成する。ガス電界イオン源120は、ガス源110からの1種類またはそれ以上の種類のガス182を受け入れ、これらの(1種類またはそれ以上の種類の)ガス182からガスイオンを生成するように構成する。ガス電界イオン源120は、チップ頂端部187を有するチップ186、抽出器190、および、任意選択の抑制器188を備える。使用時は、チップ186を抽出器190に対して正にバイアスし、抽出器190を外部接地に対して正または負にバイアスし、任意選択の抑制器188をチップ186に対して正または負にバイアスする。このような構成により、ガス源110から供給されたガス182の非イオン化ガス原子がイオン化され、チップ頂端部187近傍において正電荷を持つイオンとなる。この正電荷を持つイオンは、同時に、正に帯電したチップ186からはじかれて、負に帯電した抽出器190に引き寄せられ、正電荷を持つイオンがイオンビーム192としてチップ186からイオン光学系130に導かれる。抑制器188の支援の下、チップ186と抽出器190との間の電界全体を制御し、その結果として、チップ186からイオン光学系130に至る、正電荷を持つイオンの軌道を制御する。一般に、チップ186と抽出器190との間の電界全体を調整することにより、チップ頂端部187における正電荷を持つイオンの生成速度および、正電荷を持つイオンがチップ186からイオン光学系130まで移動する際の効率を制御することができる。一般に、イオン光学系130は、イオンビーム192を試料180の面181に導くように構成する。イオン光学系130は、例えば、ビーム192中のイオンを集束、コリメート、偏向、加速、および/または減速することができる。イオン光学系130は、また、イオンビーム192中の一部のイオンのみがイオン光学系130を通過するようにすることもできる。一般に、イオン光学系130は、所望に応じて構成した種々の静電イオン光学素子、静磁イオン光学素子、およびその他のイオン光学素子を備える。イオン光学系130内の1つまたはそれ以上のコンポーネント(例えば、静電偏向器)の電界強度および磁界強度を操作することにより、試料180の面181にわたりHeイオンビーム192を走査することができる。例えば、イオン光学系130には、イオンビーム192を2つの直交する方向に偏向する2つの偏向器を設けることができる。これらの偏向器はさまざまな電界強度を有することができ、イオンビーム192を面181の領域の端から端までラスタ走査(raster)する。イオンビーム192を試料180上に作用させて、さまざまな異なる種類の粒子194を生成することができる。これらの粒子は、例えば、二次電子、オージェ電子、二次イオン、二次中性粒子、一次中性粒子、散乱イオン、および光子(例えば、X線光子、赤外(IR)光子、可視光子、紫外(UV)光子)等を含む。検出器150および検出器160は、それぞれ、Heイオンビーム192と試料180の相互作用により発生する1種類またはそれ以上の種類の粒子を測定するように配置および構成する。図1に示すように、検出器150は、試料180の面181から主に発生する粒子194を検出する位置に配置し、検出器160は、試料180の面183から主に発生する粒子194(例えば、通過粒子)を検出する位置に配置する。一般に、顕微鏡システム100において、さまざまな異なる検出器を用いて種々の粒子を検出することができ、顕微鏡システム100において用いることのできる検出器の数は通常任意とすることができる。各検出器の構成は、測定対象の粒子および測定条件により選択することができる。一般に、検出器により測定した情報を用いて、試料180に関する情報を決定する。通常、この情報は、試料180の1つまたはそれ以上の画像を取得することにより決定する。顕微鏡システム100の動作は、通常、電子制御システム170により制御する。例えば、電子制御システム170は、ガス源110から供給された(1種類または複数の種類の)ガス、チップ186の温度、チップ186の電位、抽出器190の電位、抑制器188の電位、イオン光学系130のコンポーネントの設置、試料マニピュレータ140の位置、および/または検出器150ならびに160の位置と設定を制御するように、構成することができる。制御システム170は、試料180についても、上述したように用いることができる。選択肢として、1つまたはそれ以上のこれらのパラメータを手作業で(例えば、電子制御システム170と一体化したユーザインターフェースを介して)制御することができる。追加または代案として、電子制御システム170を(例えば、コンピュータ等の電子プロセッサを介して)用いて、検出器150および160により収集した情報を分析し、試料180に関する情報を提供することができる。これらの情報は、選択肢として、画像、グラフ、表、集計表(スプレッドシート)等として提供されうる。通常、電子制御システム170は、ディスプレイまたはその他の種類の出力装置、入力装置、記憶媒体として構成した、ユーザインターフェースを含む。
【0093】
さまざまな物質によりチップ186を構成することができ、チップ頂端部187はさまざまな形状とすることができる。例として、いくつかの実施形態において、チップ186をタングステン(W)で形成し、チップ頂端部187は、W(111)三量体である端子棚を有する。いくつかの実施形態において、チップ186をタングステン(W)で形成し、チップ186は、W(112)、W(110)、またはW(100)の配向性を持つ端子棚187を有する。ある実施形態において、チップ頂端部187は、2個の原子、4個の原子、5個の原子、6個の原子、7個の原子、8個の原子、9個の原子、10個の原子、および11個以上の原子を持つ端子棚を有することができる。通常、チップ186は金属(例えば、タンタル(Ta),イリジウム(Ir),レニウム(Rh),ニオブ(Nb),白金(Pt),モリブデン(Mo)等)または合金(例えば、本明細書に開示する金属類のうち1つまたはそれ以上のものの合金等)により形成することができる。いくつかの実施形態において,チップ186を炭素(C)で形成する。
【0094】
イオン顕微鏡、ならびに関連コンポーネントおよび方法は、例えば、特許文献1に記載され、その内容は参照により本明細書に完全に援用される。
【0095】
[BIVまたはBIFよりも高い電圧または電界での動作]
場合により、ガス電界イオン源からの放出電流を安定させることおよび/またはその安定を維持することが困難な場合がある。これは、一般に、放出特性が経時的に変動することに起因するものである。放出特性とは、多くの場合、(1)各発光位置の移動、および(2)1つの発光位置における全発光量の変動、を含むことができる。
【0096】
図3〜図3Cに例を示す。図3Aに、W(111)三量体である端子棚を有するガス電界イオン源のチップからの最初の発光パターンを示す。図3Bに、所定時間経過後の、左上の発光位置が右側に移動した発光パターンを示す。図3Cに、所定時間経過後の、左上の発光位置の全発光量が変化して増加した発光パターンを示す。
【0097】
上記した作用(1)または(2)は、いずれも、試料に到達するイオン電流の変動を引き起こすことがある。結像に用いるガス電界イオン顕微鏡システムにおいて、プローブ電流におけるそのような変動に起因して、画像において、不要なアーチファクト、すなわち、明暗帯、画像ドリフト、画像振動、ぼやけ、非点収差等が発生する。試料のスパッタリングまたはミリングに用いるガス電界イオン顕微鏡において、プローブ電流が変動すると、その結果、物質の不均一除去を引き起こす可能性がある。イオンビーム誘起化学法に用いるガス電界イオン顕微鏡においては、エッチングパターンまたは蒸着パターンにおける所望の忠実度が不足する。
【0098】
従来、電界を発生させて角度放出(単位立体角あたりの電流量)を最大化し、イオン顕微鏡(FIM)像または走査型電界イオン顕微鏡(SFIM)像を最大輝度で生成する。すなわち、ガス電界イオン顕微鏡は、一般に、BIVまたはBIFで動作する。しかしながら、BIVまたはBIFよりも高い電圧または電界で動作させることにより、プローブ電流の変動が大幅に減少することがわかった。この技術により、上記(1)および(2)の作用に起因する問題を解決できると考えられる。BIVまたはBIFよりも高い電圧または電界で動作させることにより、電流角密度が(例えば、最大電流の半分に)減少するが、放出電流は長期間にわたり大幅に安定する。多くの場合、放出電流が長期間にわたり安定するという利点は、放出電流を減少させることよりも、より重要である。
【0099】
図4A〜図6に、W(111)三量体を有する端子棚で形成したチップ頂端部を有するタングステンイオン源を備えるHeガス電界イオンシステムに関するデータを示す。このような状態において、HeのBIVは19.8kVである。図4Aは、BIVにて動作した場合の、3つの原子発光位置それぞれの対時間の移動を示す図であり、データはFIMを用いて収集したものである。図4Bは、BIVの114%の電圧にて動作した場合の、3つの原子発光位置それぞれの対時間の移動を示す図であり、データはFIMを用いて収集したものである。図5Aは、BIVにて動作した場合の、1つの原子発光位置に関する、放出電流対時間を示す図であり、データはFIMを用いて収集したものである。図5Bは、BIVの114%の電圧にて動作した場合の、1つの原子発光位置に関する、放出電流対時間を示す図であり、データはFIMを用いて収集したものである。図6は、放出電流の平均削減量を、Heの抽出機に対するイオン源の電圧の関数として示す図であり、データはFIMを用いて収集したものである。これらの像はすべてFIMを用いて取得したものであり、輝度はピコアンメータを用いて測定したものであることに留意されたい。上記の例ではFIMを用いたが、いくつかの実施形態においては、SFIMを用いることもできたはずである。
【0100】
FIMは、非特許文献1に記載されるような標準の全金属UHV技術により構成する。FIMは、1×10−8トルの基準圧で動作させた。ヘリウムを注入して、動作電圧を5×10−5トルとした。ヘリウムガスおよびエミッタは、約78ケルビンの温度で注入した。エミッタは、シャンク長さの半分が21度で、平均曲率半径が120nmの球面である端部形状を有する円錐形のチップとした。チップを、同心抽出器から約3mmのところに配置した。同心抽出器は直径3mmの開口部を有し、この開口部にビームを通過させた。ビームは、さらに65mm前進した後、MCP型画像増強器(El Mul model dcl175/l)に入射した。結果として得られた光学イメージを高性能光学カメラ(AVT Guppy F−038B NIR)でモニタした。結果として得られた映像を、この目的のために企業内部で特別に開発したソフトウエアで取り込んだ。この映像を、その後、「ImageJ」ソフトウエアを用いて、フレームごとに分析した。
【0101】
図に示すように、BIV(またはBIF)よりも高い電圧または電界で動作させることにより、ガス電界イオン源により生成されたイオンビームの安定性を向上させることができる。ある実施形態において、ガスイオンビームを生成する際に、そのガスのBIV(またはBIF)より少なくとも5%高い(例えば、少なくとも10%高い、少なくとも15%高い、少なくとも20%高い)電圧(または電界)でガス電界イオン源のチップを動作させてイオンビームを生成することができる。いくつかの実施形態において、ガスイオンビームを生成する際に、そのガスのBIV(またはBIF)より少なくとも30%高い電圧(または電界)でガス電界イオン源のチップを動作させてイオンビームを生成することができる。ある実施形態において、ガスイオンビームを生成する際に、そのガスのBIV(またはBIF)より少なくとも5%〜30%(例えば、10%〜20%)高い電圧(または電界)でガス電界イオン源のチップを動作させてイオンビームを生成することができる。
【0102】
図4A、図4B、および図6に示すように、BIV(またはBIF)よりも高い電圧(または電界)で動作させることにより、チップ頂端部における発光位置の移動を抑制することができる。いくつかの実施形態において、BIV(またはBIF)よりも高い電圧(または電界)で動作させた際のチップ頂端部における発光位置の移動量は、BIV(またはBIF)で動作させた際のチップ頂端部における発光位置の移動量と比べ、少なくとも2分の1(例えば、少なくとも5分の1、少なくとも10分の1)に減少する。ここで用いたように、発光位置の移動量の測定には、発光位置のxおよびy位置の経時的な複合標準偏差を用いる。
【0103】
図5A、図5B、および図6に示すように、BIV(またはBIF)よりも高い電圧(または電界)で動作させることにより、チップ頂端部における発光位置の放出電流の変動を低減することができる。いくつかの実施形態において、BIV(またはBIF)よりも高い電圧(または電界)で動作させた際のチップ頂端部における発光位置の発光量の変動は、BIV(またはBIF)で動作させた際のチップ頂端部における発光位置の発光量の変動と比べ、少なくとも2分の1(例えば、少なくとも5分の1、少なくとも10分の1)に減少する。ここで用いたように、発光位置の発光量の測定には、発光位置の発光量の経時的な標準偏差を用いる。
【0104】
[源チップ修復中における、BIVまたはBIFが比較的高いガスの導入]
一般に、ガス電界イオン顕微鏡システムは、1種類のガスを用いて動作させる。通常、結像用途では、顕微鏡をできるだけ軽い希ガス原子であるヘリウムで動作させる。その他、スパッタリング、ビームアシスト化学蒸着、ビームアシスト化学エッチング、またはイオン注入等の用途では、その他のガスを用いることができる。これらの用途では、一般的にネオンを選択する。
【0105】
概して、イオン源110により生成されたイオンビームの品質は、チップ頂端部187の形状によってある程度決まる。多くの場合、チップ186を一定期間にわたって使用すると、チップ頂端部187の変形によりイオンビームの品質が低下することがあるため、チップ頂端部187を再形成して、イオンビーム特性に所望の改善を行うことができるような形状とすることが望ましい。通常、チップ頂端部187の再形成を行うプロセスは、チップ頂端部187から1つまたはそれ以上の原子を電界蒸発させることを含む。電界蒸発は、チップ頂端部187における電界を最大約5V/オングストロームのレベルまで増加することにより行い、これによりチップ頂端部187から原子が1つずつ電界蒸発する。一般に、望ましくは、電界蒸発プロセスを(例えば、FIM像またはSFIM像を介して)注意深くモニタして、不要な原子がチップ頂端部187から除去されてチップ頂端部187からの発光が所望のパターン(例えば、三量体)を呈することを確認する。
【0106】
用いるガスの種類によっては、電界蒸着に一般に用いられる電界においてFIM像またはSFIM像を取得することが困難な場合がある。なぜなら、これらの電界において、イオン源により生成されたガスのイオンの放出電流が非常に低いことがあるからである。例えば、図7を参照すると、ネオンイオン(BIFは約3.3V/オングストローム)の放出電流は、電界蒸着中に用いられる電界における一般的な値である5V/オングストロームにおいては非常に低い。ネオンイオンビームを利用してチップの再形成を適切にモニタできないことは、ガス電界イオン源におけるネオンガスの実用化に対する深刻な妨げとなる可能性がある。
【0107】
この問題は、ガス電界イオン顕微鏡システムにヘリウムガスを一時的に導入することにより、解決することができる。この場合、ヘリウムを用いてガス電界イオン源のチップ頂端部を再形成するものである。図7を再度参照すると、ヘリウムイオン(BIFは約4.4V/オングストローム)の放出電流は十分大きく、5V/オングストロームの電界においても、チップ頂端部の再形成中に、ヘリウムイオンの放出を利用してFIM像またはSFIM像を生成することができる。
【0108】
このように、いくつかの実施形態において、ガス電界イオン源を用いてネオンイオンビームを生成することができる。ネオンイオンビームを用いて、試料の検査(例えば、画像化)および/または試料の改変(例えば、試料から物質をスパッタする、試料に対してネオンビームアシスト化学蒸着を行う、試料から物質をビームアシスト化学エッチングする、ネオンイオンを試料に蒸着する等)を行う。必要に応じて、ヘリウムをシステム内に導入することにより、ガス電界イオン源のチップ頂端部を再形成することができ、チップ頂端部の再形成中にヘリウムを導入した結果として生じるヘリウムイオンビームを用いて、チップ頂端部を画像化する。チップ頂端部を再形成した後、ヘリウムはシステムから除去することができ、ネオンイオンビームを再度用いて試料を検査および/または改変することができる。ヘリウムを導入しても、ネオンガスを引き続き供給することができる。または、ヘリウムを導入したら、ネオンガスの供給は停止することができる。ヘリウムガスの供給は、チップ再形成中のみ行うことができる。または、ガス電界イオン源使用中における様々の時点で行うこともできる。
【0109】
より包括的には、本方法は、第1電界または第1電圧で動作するガス電界イオン源により生成された第1ガス(例えば、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン)のイオンのビームを用いて試料を検査および/または改変するステップ、および、続いて、ガス電界イオン源により生成された第2ガス(例えば、ヘリウム等)のイオンのビームに関する情報に基づいて、(第1電界または第1電圧とは異なる)第2電界または第2電圧で動作するガス電界イオン源のチップを再形成するステップを含むことができる。ガス電界イオン源により生成された第2ガス(例えば、ヘリウム等)のイオンのビームに関する情報は、ガス電界イオン源のチップの像(例えば、FIM像、SFIM像等)とすることができる。本方法は、さらに、チップを再形成した後、動作中のガス電界イオン源により生成された第1ガスイオンビームを再度用いて試料を検査および/または改変するステップを含むことができる。通常、このイオンビームを生成するのに用いる電圧または電界は、第1電圧または第1電界とほぼ同等となる。場合によっては、第1ガスのイオンを用いて試料を検査および/または改変するときは、第1ガスについてはBIVまたはBIFを用い、チップ頂端部を再形成するときは第2ガスのBIVまたはBIFを用いる。
【0110】
一般に、ガス電界イオン源のチップが所与の電圧にあるとき、第1ガスの最良結像電圧は第2ガスの最良結像電圧よりも低い。いくつかの実施形態において、第2ガスの最良結像電圧は、第1ガスの最良結像電圧よりも、少なくとも10%(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%)高い。
【0111】
表1に、三量体である端子棚を有するW(111)チップ頂端部を持つタングステンのチップを備えるガス電界イオン顕微鏡システムを使用する際の、特定のガスに対するBIV値およびBIF値を示す。
【0112】
【表1】
【0113】
[ビーム分離器を用いることによる、または動作電圧を変化させることによる、各ビームの切り替え]
場合により、異なる種類のガスでそれぞれ生成した各イオンビームを切り替えることが望ましい。例えば、試料の検査にはヘリウムイオンビームを用い、試料の改変にはネオンイオンビームを用いることが望ましい場合がある。多くの場合、ガス電界イオン顕微鏡システムへのガス供給を即座に調整することは不可能である。流量制御系は、ガスが最終的にチップ頂端部へ供給される位置から離れている場合が多い。流量制御系と供給位置との間には、ある程度の容量(例えば、タービンから計器まで)があり、また、(ノズルまたは浄化フィルター等から)流量の制約をある程度受けることがある。したがって、ガス供給は、流量制御系における変更に迅速に対応することができない場合が多い。このような対応の遅れは、所与のガスをオンするとき、および所与のガスをオフするときのどちらの場合にも現れる。状態の遷移中に、ガスの供給が不安定になる期間(例えば、数秒間、さらには数分間)があり、対象のイオンビーム電流の不要な変動につながる可能性がある。
【0114】
具体的な例を次に示す。ガス電界イオン顕微鏡システムのオペレータは、試料上の所望の領域を探索中に発生する損傷を最小限に抑制するために、ヘリウムビームを用いて試料の画像化を開始する。所望領域が見つかったら、オペレータはヘリウムガスをオフし、ネオンガスをオンして、2分間待つ。その後、オペレータは、ネオンビームを用いて、試料の除去対象領域をスパッタで除去する。しかしながら、このスパッタリングの進捗状況をモニタするため、オペレータはネオンをオフしてヘリウムをオンし、再度2分間待つ。ここで、オペレータは、スパッタリングがまだ完了していないことがわかると、ヘリウムをオフしてネオンを再度オンし、2分間待つ。この周期を何回も繰り返すため、結果として、非常に時間のかかる非効率なプロセスとなる。
【0115】
上記の状況は、単に、両方のガスを同時に稼動させることにより、大幅に改善することができる。ネオンとヘリウムの両方を同時に流動させることができる。一般に、これらのガスは両方ともイオン化して発光パターンを生成することができ、この発光パターンは非常に類似することがある。
【0116】
いくつかの実施形態において、イオン源を複数種類のガスの存在下で動作させ、動作電圧を適切に選択することにより、所望のイオンビームに切り替えることができる。図7を再度参照すると、(W111)三量体の放出は、3.3V/オングストロームの電界強度において最大となり、電界強度の増加または減少に伴い急激に低下するが、ヘリウムの放出は、4.4V/オングストロームの電界強度において最大となり、電界強度の増加または減少に伴い急激に低下することがわかる。したがって、オペレータは、チップ頂端部に対する動作電界を選択して、(例えば、チップ頂端部がW(111)三量体であるときに、約3.4V/オングストロームの電界を用いることにより、)ヘリウムイオンをほとんど含まない、主にネオンイオンからなるビームを生成することができる。または、オペレータは、チップ頂端部に対する動作電界を選択して、(例えば、チップ頂端部がW(111)三量体であるときに、約4.4V/オングストロームの電界を用いることにより)、ネオンイオンをほとんど含まない、主にヘリウムイオンからなるビームを生成することができる。または、これら2つの場合は、いずれも、ビームの純度は比較的高い(80%より高い、90%より高い、95%より高い)純度となる。
【0117】
図8を参照すると、いくつかの実施形態において、チップ頂端部を動作させる電界は、ヘリウムイオン(軽質成分)とネオンイオン(重質成分)の両方を相当量含むイオンビーム800が生成されるような電界とすることができる。イオンビーム800は、イオン光学系130内のビーム分離器810に入射する。ビーム分離器810は、ヘリウムイオンとネオンイオンを分離して、2つの異なるイオンビーム820および830をそれぞれ生成する。イオンビーム820は、主にヘリウムイオンから生成され、イオンビーム830は主にネオンイオンから生成される。
【0118】
いくつかの実施形態において、分離器810は、ビーム800をビーム820および830に分離する磁界を生成する。ネオンイオンおよびヘリウムイオンの各軌道は、イオン光学系130におけるイオンビームの偏向、走査、または集束のために用いる電界には、実質的に影響を受けない。しかしながら、ビーム分離器810により生成された磁界により、ヘリウムイオンおよびネオンイオンの軌道は分岐する。この分岐については、次のように説明することができる。分離器を出射すると、質量Mおよび電荷qの荷電粒子は電位Vに加速された。これらの変数に基づいて、荷電粒子の速度はvzとなる。
【0119】
【数1】
【0120】
強度Byおよび長さLの磁界の横方向領域を横断するのに必要な時間tは次のように計算される。
【0121】
【数2】
【0122】
この期間中に、荷電粒子は、横加速度axを生じさせるローレンツ力を受ける。
【0123】
【数3】
【0124】
時間tの期間にわたりこのローレンツ力を受けた後、粒子の横方向速度は次のように与えられる。
【0125】
【数4】
【0126】
この横方向速度がvzよりも小さいと仮定すると、角偏向は次のように近似される。
【0127】
【数5】
【0128】
このように、高質量のイオンは、低質量のイオンに比べ、分離器810の磁界の影響による角偏向が小さい。ヘリウムイオンとネオンイオンの場合、ネオンイオンの磁界による偏向は、ヘリウムイオンよりも小さく、0.447倍である。同様に、ヘリウムイオンとアルゴンイオンの場合、アルゴンイオンの磁界による偏向は、ヘリウムイオンよりも小さく、0.316倍であり、その結果、最初のイオンビームは、さらにはっきりと2つのイオンビームに分離することができる。
【0129】
図9に、分岐する軌道の略図の画像を示す。W(111)のチップ頂端部を、ヘリウム原子とネオン原子の混合気体に露出した。磁界がない場合、発光パターンは1つの三量体を呈するであろう。しかしながら、図9に示すように、磁界を用いると、三量体パターンは分裂して、ネオンイオンの発光パターンとヘリウムイオンの発光パターンに分離する。ここで、ネオンイオンビームの変位は、ヘリウムイオンビームの変位よりも小さい。
【0130】
一般に、分離器810として任意の磁界源を用いることができる。磁界源の例としては、永久磁石、内部に電流を通過させると磁界を生成するように構成したワイヤ(例えば、巻き針金等)、および1対のヘルムホルツコイルが挙げられる。永久磁石は所定の位置に動かすことができ、または、固定磁気コイルを、場合によっては磁極片と共に、用いることができる。不要なイオンビームを分離により除去する場合、不要なイオンビームをレセプタクルに導くことにより遮断することができ、所望のビームは絞りを通過して最終的な光学素子に到達することができる。
【0131】
一般に、ビーム分離器810は、イオンビーム800の成分をその質量に基づいて分離するのに有効である。例として、ビーム800がネオンイオンおよびヘリウムイオンの両方を含む実施形態において、イオンビーム800におけるNeイオンからなるイオンビームの量の、Neイオンからなるイオンビーム820の(例えば、全イオンビームに対する割合で測定した)量に対する比は、少なくとも2倍(例えば、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍)とすることができる。別の例として、ビーム800がネオンイオンおよびヘリウムイオンの両方を含む実施形態において、イオンビーム800におけるHeイオンからなるイオンビームの例えば、全イオンビームに対する割合で測定した)量の、Heイオンからなるイオンビーム830の(例えば、全イオンビームに対する割合で測定した)量に対する比は、少なくとも2倍(例えば、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍)とすることができる。より一般には、イオンビーム800における重質成分からなるイオンビームの(例えば、全イオンビームに対する割合で測定した)量の、重質成分からなるイオンビーム820の(例えば、全イオンビームに対する割合で測定した)量に対する比は、少なくとも2倍(例えば、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍)とすることができ、および/または、イオンビーム800における軽質成分からなるイオンビームの(例えば、全イオンビームに対する割合で測定した)量の、軽質成分からなるイオンビーム830の(例えば、全イオンビームに対する割合で測定した)量に対する比は、(例えば、全イオンビームに対する割合で測定した場合、)少なくとも2倍(例えば、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍)とすることができる。
【0132】
いくつかの実施形態において、望ましくは濃縮した第1成分からなるイオンビーム820または830の(例えば、全イオンビームに対する割合で測定した場合の)量の、ビーム分離器と相互作用する前の第2成分からなるイオンビーム800の(例えば、全イオンビームに対する割合で測定した場合の)量に対する比は、少なくとも2倍(例えば、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍)とすることができる。例として、ビーム800がネオンイオンおよびヘリウムイオンの両方を含む実施形態において、Neイオンからなるイオンビーム830の(例えば、全イオンビームに対する割合で測定した場合の)量の、イオンビーム800におけるHeイオンからなるイオンビームの(例えば、全イオンビームに対する割合で測定した場合の)量に対する比は、少なくとも2倍(例えば、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍)とすることができる。別の例として、ビーム800がネオンイオンおよびヘリウムイオンの両方を含む実施形態において、Heイオンからなるイオンビーム820の(例えば、全イオンビームに対する割合で測定した場合の)量の、イオンビーム800におけるNeイオンからなるイオンビームの(例えば、Heイオンからなるイオンビームに対する割合で測定した場合の)量に対する比は、少なくとも2倍(例えば、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍)とすることができる。
【0133】
以上、ビーム分離器を用いて異なるガスのイオンを分離する実施形態について説明したが、いくつかの実施形態においては、ビーム分離器を用いて、ガスの異なる同位体のイオンを分離することができる。そのような実施形態においては、ビーム分離器を用いて、イオンビームから不要の同位体を除去することもできる。例として、ビーム分離器を用いて、Neの1つまたはそれ以上の同位体のからイオンを除去し、結果として生じるビーム(試料と相互作用するビーム)において、所望の同位体のイオンが比較的多く含まれ、不要の同位体のイオンが比較的少なくなるようにする。表2に、いくつかの同位体とそれぞれに対応する天然存在比(丸めによる近似値)を示す。
【0134】
【表2】
【0135】
ある実施形態において、ビーム分離器と相互作用した後のビーム中における所望の同位体からなるイオンの(例えば、同位体からなるイオンビーム中のイオンの割合として測定した)割合は、所望の同位体の自然存在比よりも大きい。例えば、いくつかの実施形態において、ビーム分離器と相互作用した結果生じるイオンビームの少なくとも90%(例えば、少なくとも95%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%)は、所望の同位体のイオンである。
【0136】
いくつかの実施形態において、ビーム分離器と相互作用した後のビーム中における不要な同位体からなるイオンの(例えば、イオンビーム中の同位体からなるイオンに対する割合として測定した)割合は、不要な同位体の自然存在比よりも小さい。例えば、いくつかの実施形態において、イオンビーム中の不要な同位体からなるイオンの、不要な同位体の天然存在比に対する割合は、少なくとも2分の1(例えば、少なくとも5分の1、少なくとも10分の1、少なくとも25分の1、少なくとも50分の1、少なくとも100分の1、少なくとも1000分の1)である。いくつかの実施形態において、ビーム分離器と相互作用した結果生じるイオンビーム中の不要な同位体のイオンの割合は、多くとも10%(例えば、多くとも5%、多くとも1%、多くとも0.5%、多くとも0.1%)である。
【0137】
ガスイオンの同位体を用いて、例えば、試料を検査および/または改変する態様は、例えば、2009年5月26日に出願された特許文献2に開示されており、その内容は参照により本明細書に完全に援用される。
【0138】
ビーム分離器を用いて異なるガスのイオンまたはガスの異なる同位体のイオンを分離する実施形態について説明したが、いくつかの実施形態において、ビーム分離器を用いて異なるガスのイオンおよびガスの異なる同位体のイオンを分離することができる。選択肢として、複数のビーム分離器を用いることができる。例として、1つまたはそれ以上のビーム分離器を用いて異なるガスのイオンを分離することができ、1つまたはそれ以上の追加的なビーム分離器を用いてガスの同位体を分離することができる。さらに、代案または追加として、ビーム分離器は、電界を用いてイオンビームの成分を分離することができる。一般に、ビーム分離器は、電界分離器および磁界分離器を種々に組み合わせて利用することができる。
【0139】
ビーム分離器はイオン光学系内に存在するものとして説明したが、より一般には、ビーム分離器は、チップと試料との間のイオンビーム路に沿ったあらゆる位置に存在することができる。さらに、(選択肢として、複数の構成要素を含む)1つのビーム分離器について説明したが、より一般には、複数のビーム分離器を用いることができる。さらに、ビームスプリッタと共に絞りを用いる実施形態について説明したが、ある実施形態において、絞りは存在しない。
【0140】
[第2ガスを用いた、第1ガスのイオンビームの安定化向上]
場合により、ガス電界イオン顕微鏡の性能は、ガス電界イオン源の輝度および/またはエネルギー拡散によって制約を受けることがある。輝度は、一般に、単位発光領域ごとの単位立体角あたりの電流量として測定される。一般に、輝度を高くしてビームを小プローブサイズに集束できるようにすることが望ましい。多くの場合、エネルギー拡散を小さくして、イオン光学素子の色収差を抑制することが望ましい。さらに、場合により、ガス電界イオン源の耐用年数は、ガス電界イオン源の実用化に大きく影響することがある。例えば、ガス電界イオン顕微鏡システムで使用するガスとしてヘリウムを用いた場合、これらの制約が生じることがある。
【0141】
少量のネオンを添加することにより、および、動作電圧を若干低くすることにより、ヘリウムイオン源の性能を大幅に向上することができることがわかった。例えば、所与のチップ形状に対する通常の動作電圧は35kVであり、ヘリウムガス圧は2×10−4トルである。ここで、同様のチップ形状に対して、動作電圧を32kVとし、含有ネオンの分圧を1×10−5とすることにより、性能を大幅に向上することができる。図10A(動作電圧を27.5kVとし、ヘリウムガスを100%用いたときの、三量体端子棚を有するW(111)チップ頂端部のFIM像)および図10B(動作電圧を27.5kVとし、ヘリウムガスを99%およびネオンを1%用いたときの、三量体端子棚を有するW(111)チップ頂端部のFIM像)を参照すると、角度発散が減少すると性能が向上する(輝度が向上するとプローブサイズが小さくなる)ことがわかる。図11Aおよび図11Bは、それぞれ、図10Aおよび図10Bにおける像の2つの隣接する原子に関する線グラフである。
【0142】
理論的制約にとらわれることなしに、この利点は次のような点に起因すると考えられる。すなわち、ネオンの吸着原子が原因となって、電界がより均一なチップ頂端部表面からさらに離れた領域においてイオン化が発生するという点である。また、チップ頂端部電界はより均一なため、エネルギー拡散も減少する可能性があり、その結果、プローブサイズが減少する。低電圧で動作させることで出射原子に影響する電界が弱くなり、その当然の結果として、耐用年数が増加する。
【0143】
ある実施形態において、少なくとも2種類の異なる希ガスを含む混合気体を用いることにより、イオンビームを比較的安定させることができる。例えば、いくつかの実施形態において、少なくとも30秒間(例えば、60秒間、50秒間、40秒間、30秒間)に発生するイオンビームの試料における電流の変化は、10%未満(例えば、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満)である。
【0144】
いくつかの実施形態において、少なくとも2種類の異なる希ガスを含む混合気体を用いることにより、イオンビーム源を比較的安定させることができる。例えば、いくつかの実施形態において、ガス電界イオン源は、少なくとも90%(例えば、少なくとも95%、少なくとも99%、少なくとも99.5%)のデューティサイクルで、一定期間(たとえば、少なくとも1日間、少なくとも3日間、少なくとも1週間)イオンビームを生成することができる。本明細書において、所与の期間におけるガス電界イオン源のデューティサイクルは(100%−X)に等しく、ここで、Xは、ガス電界イオン源を修復または交換するため、ガス電界イオン源を用いてイオンビームを生成していない期間の割合である。例として、期間中にガス電界イオン源の修復または交換を行わなければ、その期間のデューティサイクルは100%となる。別の例として、1日間に、チップ修復に3時間かかりチップ交換には時間がかからなければ、その日のデューティサイクルは87.5%となる。さらなる例として、1日間に、チップ交換に3時間かかりチップ修復には時間がかからなければ、その日のデューティサイクルは87.5%となる。付加的の例として、1日間に、チップ交換に3時間、さらにチップ修復に3時間かかると、その日のデューティサイクルは75%となる。
【0145】
データを収集して、ガス電界イオン顕微鏡の性能(例えば、イオンビームの安定性、デューティサイクル等)を、ガスの混合物(例えば、Heの量、Neの量)の関数として列挙する表を作成することができる。そして、この表を用いて、ガス電界イオンチップの性能を予測することができる。いくつかの実施形態において、オペレータは、ガス電界イオン源所望のイオンビーム安定性を決定することができ、この所望のイオンビーム安定性に基づいて、イオンビームを生成するために用いる混合気体を決定することができる。ある実施形態において、オペレータは、ガス電界イオン源の所望のデューティサイクルを決定することができ、このガス電界イオン源の所望のデューティサイクルに基づいて、ガス電界イオン源を用いてイオンビームを生成するために用いる混合気体を決定することができる。いくつかの実施形態において、オペレータは、所望の安定性またはデューティサイクルを得ることのできる混合気体を選択する。そのような実施形態において、第2ガスを追加してもなんら悪影響はない。
【0146】
[混合気体]
上述したように、いくつかの実施形態において、システム100に導入されたガスは、少なくとも2つの異なる種類の希ガス(He,Ne,Ar,Kr,Xe)を含む。これらのガスは、さまざまに組み合わせる(He/Ne,He/Ar,He/Kr,He/Xe,Ne/Ar,Ne/Kr,Ne/Xe,Ax/Kr,Ar/Xe,Kr/Xe)ことが可能である。一般に、これらの希ガスのうちの1種類が混合気体の大部分を構成し、その他の希ガスを用いて、生成するイオンビームの安定性を高める。例として、いくつかの実施形態において、対象となるイオンビームはNeイオンビームであり、一定量のHeを筐体110内に故意に導入してNeイオンビームの安定性を高める。そのような実施形態において、一般に、混合気体はHeよりもNeを多く含むものである。選択肢として、1種類またはそれ以上の種類のガスを、非希ガスとすることができる。例として、いくつかの実施形態において,これらのガスのうちの1種類を分子水素ガス(H2)とすることができる。
【0147】
いくつかの実施形態において、混合気体は、第1希ガスを少なくとも10%(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%)、および/または第2希ガスを多くとも10%(例えば、多くとも9%、多くとも8%、多くとも7%、多くとも6%、多くとも5%、多くとも4%、多くとも3%、多くとも2%、多くとも1%)含む。例として、ある実施形態において、所望のビームはヘリウムであり、第1希ガスをHe、第2希ガスをNeとする。そのような実施形態において、混合気体は、例えば、ヘリウムを90%、ネオンを10%含むことができる。
【0148】
[試料、試料検査、および試料改変]
試料の例としては、半導体製品が挙げられる。半導体を製造する際には、一般に、複数の材料を順に堆積および処理することで製品(半導体製品)を作成し、集積電子回路、集積回路素子、および/またはその他のマイクロ電子デバイスとして構成する。そのような製品は、一般に、様々な構成(例えば、導電性材料で形成した回路線、非導電性材料を充填したウエル、半導体材料で形成した領域等)を有し、それらの構成は互いに正確に(例えば、通常、数ナノメータ単位で)位置決めされる。所与の構成の位置、サイズ(長さ、幅、奥行き)、組成(化学組成)、および関連特性(導電性、結晶の配向性、磁気特性)は、その製品の性能に重要な影響を及ぼすことがある。例えば、あるいくつかの例において、それらのパラメータうち1つまたはそれ以上が適切な範囲を逸脱すると、その製品は所望の機能を果たすことができないとして廃棄されることがある。結果として、一般に、半導体の各製造工程全てを良好に制御できることが望ましいとされ、また、半導体の様々な製造工程においてその製造をモニタできる手段を使用することが有用であり、そうすれば、その半導体製造工程の様々なステージにおける1つまたはそれ以上の構成の位置、サイズ、組成、および関連特性についての検査を行うことが可能である。本明細書中で用いられる用語「半導体製品」として、集積電子回路、集積回路素子、集積電子回路、マイクロ電子デバイス、または、集積電子回路、集積回路素子、およびマイクロ電子デバイスの製造過程で形成される製品が挙げられる。いくつかの実施形態においては、半導体製品は平面ディスプレイまたは太陽電池の一部を構成することができる。半導体製品の各領域は、異なるタイプ(導電性、非導電性、半導電性)の材料で形成する。導電性材料の例としては、例えば、アルミニウム、クロミウム、ニッケル、タンタル、チタン、タングステン、および1つまたはそれ以上のそれらの金属を含む合金(例えば、アルミニウム・銅合金類)等が挙げられる。金属シリサイド類(例えば、ニッケルシリサイド類、タンタルシリサイド類)も導電性とすることができる。非導電性材料の例としては、例えば、1つまたはそれ以上の上記金属類のホウ化物類、炭化物類、窒化物類、酸化物類、リン化物類、および硫化物類(例えば、ホウ化タンタル類、ゲルマニウムタンタル類、窒化タンタル類、窒化ケイ素タンタル類、および窒化チタン類)等が挙げられる。半導電性材料の例としては、ケイ素、ゲルマニウム、およびヒ化ガリウム等が挙げられる。必要に応じて、半導体材料をドープ(リン(P)ドープ、窒素(N)ドープ)して、その材料の導電性を向上させることができる。所与の材料からなる層を堆積/加工する一般的なステップとしては、その製品を画像化する(それにより、例えば、所望の構成を形成する位置を決定する)ステップ、適切な材料(例えば、導電性材料、半導電性材料、非導電性材料)を堆積するステップ、およびエッチングにより不要な材料をその製品内の所定の箇所から除去するステップ、がある。多くの場合、例えばフォトレジスト高分子等のフォトレジストを堆積し、適切な照射を施し、選択的にエッチングして、所与の構成の形成位置とサイズの制御を支援する。一般に、それ以降の1つまたはそれ以上の工程段階にてフォトレジストを除去し、通常、最終的な半導体製品はフォトレジストをほとんど含まないことが望ましい。
【0149】
図12Aおよび図12Bはそれぞれ、半導体製品200の部分頂面図および部分断面図である。図12Bに示すように、製品200を切断し、側壁210A、210Bおよび底壁210Cを有する断面210を露出する。図12Aおよび図12Bには図示していないが、半導体製品200は種々の材料で形成した多数の層を有し、また、いくつかの例においては、同じ層の中に互いに異なる複数の層を有する。
【0150】
いくつかの実施形態において、本システムおよび方法を用いて試料を改変(修復)することができる(例えば、製品のある領域または断面化により露出した製品の一部を修復する等)。このような試料の改変としては、スパッタリングがあり、例えば、Neイオンをスパッタする。いくつかの例において、製品を製造する際、いくつかの段階(例えば、回路から不要な材料を除去してその回路を編集する際、マスクを改変する際等)において材料を除去するのが望ましいことがある。材料を除去するにはイオンビームを使用することができ、それにより試料から材料をスパッタする。特に、本明細書に記載のように、ガス原子とガス電界イオン源との相互作用により生成されたイオンビームを用いて試料をスパッタすることができる。Heガスイオンを用いることもできるが、一般に、好ましくは、重イオン類(例えば、Neガスイオン類、Arガスイオン類、Krガスイオン類、Xeガスイオン類等)を用いて材料を除去する。材料の除去中は、試料上の除去対象の材料が位置する領域にイオンビームを集束する。
【0151】
ある実施形態において、試料の改変としては、ガスアシスト化学処理を用いるものがあり、それにより材料を試料(試料の所与の層)に対して追加および/または回収することができる。一例として、ガスアシスト化学処理により、半導体回路編集を行うことができ、それにより半導製品内の損傷回路または誤って製造した回路を修理する。一般に、回路編集とは、回路に材料を追加する(例えば、開いている回路を閉じる)こと、および/または回路から材料を回収する(例えば、閉じている回路を開く)ことを含む。ガスアシスト化学処理により、フォトリソグラフィーマスクの修復をすることもできる。マスクの欠陥としては、通常、マスク材料が存在すべきでない領域にマスク材料が余剰して付着すること、および/またはマスク材料が存在すべき領域で材料が欠如することが挙げられる。したがって、ガスアシスト化学処理によりマスク修復を行い、所望により、マスクに対し材料を追加および/または回収することができる。一般に、ガスアシスト化学処理においては、荷電粒子ビーム(例えば、イオンビーム、電子ビーム、またはその両方)を用い、荷電粒子ビームを適切なガス(例えば、Cl2,O2,I2,XeF2,F2,CF4,H2O,XeF2,F2,CF4,WF6等)と相互作用させる。
【0152】
ある実施形態において、試料を検査することが望ましい。そのような検査の一例としては、ボイドを検出することが挙げられる。半導体製品の製造過程において、あるいくつかのフィーチャまたは層にボイドが不用意に発生してしまうことがある。いくつかの実施形態においては、ボイドがデバイスの構成および/またはデバイス全体の性能(例えば、電気的性能、機械的性能)に不要な影響を及ぼすことがある。後続の加工段階で、そのボイドが開くことがあり、例えば、液体および/またはガス状成分によりボイドが充填されてしまうことがある。そうすると、下部層の腐食、および/または粒子欠陥および/または残渣欠陥の原因となることがある。最終的に、ボイドの存在により、電気的および/または機械的特性が所望の値(例えば、設計値)から逸脱してしまうことがある。
【0153】
半導体製品の欠陥検出の別の例として、オーバーレイシフトレジストレーションが挙げられる。用語「オーバーレイシフトレジストレーション」とは、一般に、半導体製品の所与の層内の構成と別の層内の構成の位置を合わせる(アラインメントする)ことである。上述したように、半導体製品の製造においては、多くの層を適切に形成することが必要である。一般に、1つの半導体製品が含む層の数は20を大幅に上回る。多くの場合、各層は複数の種々の構成を含むことがあり、それぞれの構成を高精度で配置し、半導体製品が適切に機能するようにすることが望ましい。一例として、半導体製品は、例えば導電配線(ワイヤ)等の平面構成を複数備え、それらの構成は異なる層に配置され、ビアにて互いに接続される。通常、半導体製品内の構成は互いに適切に位置合わせされていることが望ましい。
【0154】
半導体製品の欠陥検出の付加的な例として、限界寸法計測が挙げられる。用語「限界寸法計測」とは、半導体製品内の構成であって、デバイスの性能に決定的な影響を及ぼす可能性のある構成の線寸法を計測することである。そのような構成の例としては、例えばライン(例えば、導電性材料のライン、半導電性材料のライン、非導電性材料のライン)が挙げられる。1つの半導体製品は、1つまたは複数の構成を備え、その規模寸法は20nm以下(例えば、10nm以下、5nm以下、4nm以下、3nm以下、2nm以下、1nm以下)である。いくつかの実施形態において、構成の寸法を複数回計測して、構成のサイズに関する統計情報を得る。限界寸法計測においては、多くの場合、例えば、ウエハ上のパターン化構成の長さを測定することを必要とする。複数のウエハ(複数のダイスを含み、各ダイスが半導体製品を形成するウエハ)を製造ラインからランダムに選択して検査すること、またはラインの全てのウエハを検査することができる。選択した限界寸法の計測には、画像化器機を用いると比較的ハイスループット率で計測を行うことができる。計測した限界寸法が許容範囲外であれば、そのウエハを廃棄する。ある特定の製造機により製造される試料のうち複数が限界寸法の許容範囲外であった場合、その製造機の稼動を停止する、または、その製造機の稼動パラメータを変更する。
【0155】
欠陥検出のさらなる例として、ラインエッジラフネスおよび/またはライン幅ラフネスの計測が挙げられる。用語「ラインエッジラフネス」は、一般に、半導体製品内の材料のラインエッジ粗さのことであり、用語「ライン幅ラフネス」は、一般に、半導体製品内の材料のライン幅粗さのことである。望ましくは、これらの値を検出して、所与の半導体製品に実際にまたは潜在的に問題が内在するかを究明する。例えば、導電性材料からなる隣接するラインのエッジが互いに外側へ突出していると、そのラインが互いに接触し、短絡することがある。望ましくは、ラインエッジラフネスおよび/またはライン幅ラフネスが5nm以下(例えば、4nm以下、3nm以下、2nm以下、1nm以下、0.9nm以下、0.8nm以下、0.7nm以下、0.6nm以下、0.5nm以下、または0.5nm未満)の範囲にあることを確かめる。
【0156】
以上、半導体製品を試料として構成した実施形態について説明したが、より一般的には、任意のタイプの試料を用いることができる。試料の例としては、生物学的試料(例えば、組織、核酸、タンパク質、炭水化物、脂質、および細胞膜)、薬剤試料(例えば、小分子薬)、凍結水(例えば、氷)、磁気記憶デバイスに用いるリード/ライトヘッド、ならびに金属試料類および合金試料類が挙げられる。
【0157】
試料、試料検査、および試料改変の例については、例えば、特許文献3に開示される。
【0158】
上述した実施形態の様々な態様は、概して、所望により組み合わせることができる。
【0159】
その他の実施形態は特許請求の範囲に包含される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスの最良結像電圧よりも少なくとも5%高い電圧で動作するチップを有するガス電界イオン源を用いてイオンビームを生成する、イオンビーム生成ステップ、および
前記イオンビームを用いて試料を検査/または改変するステップ、を含む方法であって、
前記試料は前記チップとは異なることを特徴とする、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記ガス電界イオン源の前記チップの電圧は、前記ガスの前記最良結像電圧よりも10%〜20%高いことを特徴とする、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記ガスは希ガスであることを特徴とする、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記ガスはネオンであることを特徴とする、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記ガス電界イオン源はガス電界イオン顕微鏡の一部であることを特徴とする、方法。
【請求項6】
(a)第1ガスを用いて、ガス電界イオン源からイオンビームを生成し、試料を検査および/または改変するステップ、および
(b)ステップ(a)の後、前記ガス電界イオン源のチップの再形成中に、前記第1ガスとは異なる第2ガスを用いて前記ガス電界イオン源の前記チップの端子棚の原子構造をモニタして、前記ガス電界イオン源の前記チップの前記端子棚の発光パターンを生成するステップ、
を含む方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記第2電圧は前記第1電圧よりも高いことを特徴とする、方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法であって、前記第2ガスはヘリウムであることを特徴とする、方法。
【請求項9】
ガス電界イオン源を用いて、第1ガスのイオンおよび該第1ガスとは異なる第2ガスのイオンを含む第1イオンビームを生成するステップ、および、
前記第1イオンビームを、第2ビームおよび第3ビームに分離する、分離ステップであって、該第1イオンビームは前記第1ガスのイオンを少なくとも10%および前記第2ガスのイオンを多くとも1%含み、該第2イオンビームは前記第2ガスのイオンを少なくとも10%および前記第1ガスのイオンを多くとも1%含むことを特徴とする、分離ステップ、
を含む方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記第2ガスは第2希ガスであることを特徴とする、方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法であって、前記分離ステップは、磁界源を用いて前記第1イオンビームを前記第2イオンビームおよび前記第3ビームに分離するステップを含むことを特徴とする、方法。
【請求項12】
請求項9に記載の方法であって、前記第1イオンビームは、原子の種々の同位体のイオンを含み、前記第2イオンビームは原子の第1同位体のイオンを含み、前記第3イオンビームは、原子の第2同位体のイオンを含むことを特徴とする、方法。
【請求項13】
システムであって、
質量のそれぞれ異なるイオンからなる第1イオンビームを生成可能なガス電界イオン源、および
該システムの使用中に、前記第1イオンビーム中のイオンを第2イオンビームおよび第3イオンビームに分離するように構成したイオンビーム分離器であって、該第2イオンビームは、第1質量のイオンを少なくとも10%および該第1質量とは異なる第2質量のイオンを多くとも1%含み、該第3イオンビームは、前記第2質量のイオンを少なくとも10%および前記第1質量のイオンを多くとも1%含むことを特徴とする、イオンビーム分離器、
を備えるシステム。
【請求項14】
請求項13に記載のシステムであって、前記システムの使用中に、前記第3イオンビームは絞りを通過しないことを特徴とする、システム。
【請求項15】
請求項13に記載のシステムであって、前記イオンビーム分離器は磁界源を含むことを特徴とする、システム。
【請求項16】
第1ガスを少なくとも80%含み該第1ガスとは異なる第2ガスを多くとも20%含む混合気体にガス電界イオン源を露出すると同時に該ガス電界イオン源を用いてイオンビームを生成するイオンビーム生成ステップ、を含む方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、前記第1ガスはヘリウムであり、前記第2ガスはネオンであることを特徴とする、方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法であって、前記第2ガスが存在することにより、前記システムは、電流角密度が少なくとも20%増加したイオンビームを生成することができることを特徴とする、方法。
【請求項19】
請求項16に記載の方法であって、前記第2ガスが存在することにより、前記システムは、エネルギー拡散が少なくとも20%減少したイオンビームを生成することができることを特徴とする、方法。
【請求項20】
請求項16に記載の方法であって、前記第2ガスが存在することにより、放出電流の変動を50%低減することができることを特徴とする、方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法であって、
前記イオンビーム生成ステップは、
種々のガスを含む混合気体に前記ガス電界イオン源を露出して、該種々のガスのイオンからなる前記イオンビームを生成するようにするステップ、および
前記イオンビーム中のイオンの所望の相対存在比に基づいて、前記ガス電界イオン源の前記チップにおける電界を選択するステップ、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、前記混合気体はヘリウムおよび重質ガスを含む、方法。
【請求項23】
請求項21に記載の方法であって、前記混合気体はヘリウムおよびネオンを含む、方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、
前記電界は、第1値と該第1値とは異なる第2値との間で切り替え可能であり、
前記電界を前記第1値として生成した前記イオンビームは、ヘリウムを80%よりも多く含み、
前記電界を前記第2値として生成した前記イオンビームは、ネオンを少なくとも20%含むことを特徴とする、方法。
【請求項1】
ガスの最良結像電圧よりも少なくとも5%高い電圧で動作するチップを有するガス電界イオン源を用いてイオンビームを生成する、イオンビーム生成ステップ、および
前記イオンビームを用いて試料を検査/または改変するステップ、を含む方法であって、
前記試料は前記チップとは異なることを特徴とする、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記ガス電界イオン源の前記チップの電圧は、前記ガスの前記最良結像電圧よりも10%〜20%高いことを特徴とする、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記ガスは希ガスであることを特徴とする、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記ガスはネオンであることを特徴とする、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記ガス電界イオン源はガス電界イオン顕微鏡の一部であることを特徴とする、方法。
【請求項6】
(a)第1ガスを用いて、ガス電界イオン源からイオンビームを生成し、試料を検査および/または改変するステップ、および
(b)ステップ(a)の後、前記ガス電界イオン源のチップの再形成中に、前記第1ガスとは異なる第2ガスを用いて前記ガス電界イオン源の前記チップの端子棚の原子構造をモニタして、前記ガス電界イオン源の前記チップの前記端子棚の発光パターンを生成するステップ、
を含む方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記第2電圧は前記第1電圧よりも高いことを特徴とする、方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法であって、前記第2ガスはヘリウムであることを特徴とする、方法。
【請求項9】
ガス電界イオン源を用いて、第1ガスのイオンおよび該第1ガスとは異なる第2ガスのイオンを含む第1イオンビームを生成するステップ、および、
前記第1イオンビームを、第2ビームおよび第3ビームに分離する、分離ステップであって、該第1イオンビームは前記第1ガスのイオンを少なくとも10%および前記第2ガスのイオンを多くとも1%含み、該第2イオンビームは前記第2ガスのイオンを少なくとも10%および前記第1ガスのイオンを多くとも1%含むことを特徴とする、分離ステップ、
を含む方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記第2ガスは第2希ガスであることを特徴とする、方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法であって、前記分離ステップは、磁界源を用いて前記第1イオンビームを前記第2イオンビームおよび前記第3ビームに分離するステップを含むことを特徴とする、方法。
【請求項12】
請求項9に記載の方法であって、前記第1イオンビームは、原子の種々の同位体のイオンを含み、前記第2イオンビームは原子の第1同位体のイオンを含み、前記第3イオンビームは、原子の第2同位体のイオンを含むことを特徴とする、方法。
【請求項13】
システムであって、
質量のそれぞれ異なるイオンからなる第1イオンビームを生成可能なガス電界イオン源、および
該システムの使用中に、前記第1イオンビーム中のイオンを第2イオンビームおよび第3イオンビームに分離するように構成したイオンビーム分離器であって、該第2イオンビームは、第1質量のイオンを少なくとも10%および該第1質量とは異なる第2質量のイオンを多くとも1%含み、該第3イオンビームは、前記第2質量のイオンを少なくとも10%および前記第1質量のイオンを多くとも1%含むことを特徴とする、イオンビーム分離器、
を備えるシステム。
【請求項14】
請求項13に記載のシステムであって、前記システムの使用中に、前記第3イオンビームは絞りを通過しないことを特徴とする、システム。
【請求項15】
請求項13に記載のシステムであって、前記イオンビーム分離器は磁界源を含むことを特徴とする、システム。
【請求項16】
第1ガスを少なくとも80%含み該第1ガスとは異なる第2ガスを多くとも20%含む混合気体にガス電界イオン源を露出すると同時に該ガス電界イオン源を用いてイオンビームを生成するイオンビーム生成ステップ、を含む方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、前記第1ガスはヘリウムであり、前記第2ガスはネオンであることを特徴とする、方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法であって、前記第2ガスが存在することにより、前記システムは、電流角密度が少なくとも20%増加したイオンビームを生成することができることを特徴とする、方法。
【請求項19】
請求項16に記載の方法であって、前記第2ガスが存在することにより、前記システムは、エネルギー拡散が少なくとも20%減少したイオンビームを生成することができることを特徴とする、方法。
【請求項20】
請求項16に記載の方法であって、前記第2ガスが存在することにより、放出電流の変動を50%低減することができることを特徴とする、方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法であって、
前記イオンビーム生成ステップは、
種々のガスを含む混合気体に前記ガス電界イオン源を露出して、該種々のガスのイオンからなる前記イオンビームを生成するようにするステップ、および
前記イオンビーム中のイオンの所望の相対存在比に基づいて、前記ガス電界イオン源の前記チップにおける電界を選択するステップ、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、前記混合気体はヘリウムおよび重質ガスを含む、方法。
【請求項23】
請求項21に記載の方法であって、前記混合気体はヘリウムおよびネオンを含む、方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、
前記電界は、第1値と該第1値とは異なる第2値との間で切り替え可能であり、
前記電界を前記第1値として生成した前記イオンビームは、ヘリウムを80%よりも多く含み、
前記電界を前記第2値として生成した前記イオンビームは、ネオンを少なくとも20%含むことを特徴とする、方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【公表番号】特表2012−501448(P2012−501448A)
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525186(P2011−525186)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/055127
【国際公開番号】WO2010/025211
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(510237435)カール ツァイス エヌティーエス エルエルシー (14)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/055127
【国際公開番号】WO2010/025211
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(510237435)カール ツァイス エヌティーエス エルエルシー (14)
【Fターム(参考)】
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