説明

イオン交換装置

【課題】滞留水を効率よく排出することができると共に、高品質の処理水を実用的な採水量の範囲で得ることができるイオン交換装置を提供する。
【解決手段】イオン交換樹脂床211を収容し、圧力タンク2と、圧力タンク2に洗浄液W1を導入して系外に排出することにより圧力タンク2の内部を洗浄する洗浄手段3と、圧力タンク2の内部に位置する液体の滞留時間Tを算出する滞留時間算出手段51と、滞留時間Tが所定の設定時間T3に達したか否かを判定する滞留時間判定手段52と、滞留時間判定手段52による判定結果に基づいて圧力タンク2の内部を洗浄するように洗浄手段3を制御する洗浄手段制御手段53と、を備える。洗浄手段制御手段53は、イオン交換樹脂床211での洗浄液W1の線速度を5〜60m/hの範囲に設定すると共に、イオン交換樹脂床211に対する洗浄液W1の量を設定時間T3に応じて設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、硬水軟化装置等のイオン交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水道水や地下水等の原水に含まれる硬度成分(カルシウムイオン及びマグネシウムイオン)や硝酸性窒素(硝酸イオン及び亜硝酸イオン)等をイオン交換樹脂により吸着して除去し、処理水を製造するイオン交換装置が知られている。イオン交換装置は、イオン交換樹脂床を収容し、原水等の液体が導入される圧力タンクを備えている。
【0003】
このようなイオン交換装置において、圧力タンクの内部への通水が長時間に亘って行われないでいると、圧力タンクの内部において滞留水が発生して、雑菌が繁殖する虞があり、衛生上好ましくない。また、イオン交換樹脂床から樹脂成分等の有機物が滞留水中に溶出し、通水を再開したときに臭いや色が処理水に付き、処理水の品質が悪化する虞があった。
そのため、圧力タンクの内部に長時間に亘って滞留水が発生しないようにする技術が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−178666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の技術は、滞留水を排出するための洗浄タイミングに着目したものである。しかし、イオン交換装置が使用される環境は様々であるため、洗浄タイミングのみの制御では、高品質の処理水を恒常的に得ることが困難である。
このため、滞留水を効率よく排出することができ、且つ高品質の処理水を恒常的に得ることができるような操作条件で、圧力タンクの内部を洗浄することが望まれている。
【0006】
本発明は、滞留水を効率よく排出することができると共に、高品質の処理水を恒常的に得ることができるイオン交換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、イオン交換樹脂床を収容し、液体が導入される圧力タンクと、前記圧力タンクに洗浄液を導入して系外に排出することにより該圧力タンクの内部を洗浄する洗浄手段と、前記圧力タンクの内部に位置する液体の滞留時間を算出する滞留時間算出手段と、前記滞留時間算出手段によって算出された前記滞留時間が所定の設定時間に達したか否かを判定する滞留時間判定手段と、前記滞留時間判定手段による判定結果に基づいて前記圧力タンクの内部を洗浄するように前記洗浄手段を制御する洗浄手段制御手段と、を備え、前記洗浄手段制御手段は、前記イオン交換樹脂床での洗浄液の線速度を5〜60m/hの範囲に設定すると共に、前記イオン交換樹脂床に対する洗浄液の量を前記設定時間に応じて設定するイオン交換装置に関する。
【0008】
また、前記設定時間が6〜24時間に設定される場合に、前記洗浄手段制御手段は、前記イオン交換樹脂床に対する洗浄液の量を6〜12BVの範囲に設定することが好ましい。
【0009】
また、前記圧力タンクに流通する洗浄液は、塩素を含む水であり、前記洗浄手段制御手段は、前記イオン交換樹脂床の単位樹脂量に対して少なくとも0.5mgCl/L−Rの塩素量を接触させるように前記洗浄手段を制御することが好ましい。
【0010】
また、前記イオン交換樹脂床は、ハロゲン系有機溶媒を使用せずに製造された陽イオン交換樹脂ビーズから形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、滞留水を効率よく排出することができると共に、高品質の処理水を恒常的に得ることができるイオン交換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のイオン交換装置の一実施形態としての硬水軟化装置1の全体構成図である。
【図2】硬水軟化装置1の運転モード及び各運転モードにおけるプロセスを示す状態遷移図である。
【図3】各プロセスにおけるプロセス制御バルブ3の開閉状態を示す図である。
【図4】硬水軟化装置1の制御に係る機能ブロック図である。
【図5】硬水軟化装置1の滞留水排出に係る制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のイオン交換装置の一実施形態としての硬水軟化装置1について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明のイオン交換装置の一実施形態としての硬水軟化装置1の全体構成図である。
【0014】
硬水軟化装置1は、水道水、地下水、工業用水等の原水中に含まれる硬度成分をナトリウムイオンやカリウムイオンへ置換して軟水を生成する。硬水軟化装置1は、軟水を各種の用水として需要箇所へ供給する目的で使用される。硬水軟化装置1は、家屋やマンション等の居住建物、ホテルや大衆浴場等の集客施設、ボイラやクーリングタワー等の冷熱機器、食品加工装置や洗浄装置等の水使用機器等に接続される。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の硬水軟化装置1は、主として、圧力タンク2と、プロセス制御バルブ3と、塩水タンク4と、圧力タンク2の内部を洗浄するようにプロセス制御バルブ3を制御する制御装置5と、を備えて構成される。
【0016】
圧力タンク2は、圧力タンク本体21と、蓋部材22とを備える。
圧力タンク本体21は、上部に開口部を有する有底の筒状体であり、処理材であるイオン交換樹脂床211を収容する。イオン交換樹脂床211は、ハロゲン系有機溶媒を使用せずに製造された陽イオン交換樹脂ビーズから形成される。
【0017】
イオン交換樹脂床211をこのような陽イオン交換樹脂ビーズから形成する理由は、次の通りである。ハロゲン系有機溶媒は、化学的に安定であるため、イオン交換樹脂の製造時に使用されることが多い。例えば、樹脂母体にイオン交換基を導入する工程(例えば、スルホン化工程)においては、反応を促進するために予め樹脂母体を膨潤させておくのがよいとされ、この膨潤剤としてハロゲン系有機溶媒が使用される。その一方で、多くのハロゲン系有機溶媒は、人体に有害であるとされている。このため、軟水の用途に飲料水や風呂水が含まれる場合において、イオン交換樹脂ビーズ内に残留したハロゲン系有機溶媒が、水処理プロセスにおいて軟水W2中に浸出すると、軟水W2の風味を損なうだけでなく、人体に悪影響を及ぼす虞があるからである。
【0018】
イオン交換樹脂ビーズがハロゲン系有機溶媒を使用せずに製造されているか否かは、例えば「水道実務六法・平成14年版」(水道法制研究会監修,平成14年10月1日発行)142−144ページに記載の浸出に関する試験に基づいて評価することができる。そして、ハロゲン系有機溶媒に係る物質の浸出量が基準値を満足していれば、実質的にハロゲン系有機溶媒を使用していないものと判断することができる。
ハロゲン系有機溶媒に係る物質としては、ジクロロメタン;1,2−ジクロロエタン;シス−1,2−ジクロロエチレン;トリクロロエチレン;テトラクロロエチレン;四塩化炭素等が挙げられる。また、各物質に対する上記基準値は、「給水装置に構造及び材質の基準に関する省令」(平成22年2月17日厚生労働省令第18号)の別表第一の下欄が参照される。
【0019】
ハロゲン系有機溶媒を使用せずに製造された強酸性陽イオン交換樹脂の例として、例えば、三菱化学社製:製品名「DIAION UBK10」,「DIAION UBK12」、ランクセス社製:製品名「LEWATIT S1468」、ダウ・ケミカル社製:製品名:「IMAC HP1220」,「AMBERLITE 1220」、ピュロライト社製:製品名「PUROLITE C100x10NS」等を挙げることができる。
【0020】
蓋部材22は、圧力タンク本体21の上部の開口部を閉鎖する。蓋部材22には、プロセス制御バルブ3が一体的に装着されている。
圧力タンク2の詳細については後述する。
【0021】
また、詳細については後述するが、プロセス制御バルブ3は、採水及び再生に関して、原水W1を圧力タンク2の頂部スクリーン241へ配液しながら、底部スクリーン242で集液することにより原水W1の下降流を生成して、処理水である軟水W2を製造する水処理プロセスST1の水(原水W1、軟水W2)の流れ;
再生液である塩水W4を圧力タンク2の頂部スクリーン241へ配液しながら、底部スクリーン242で集液することにより塩水W4の下降流を生成して、イオン交換樹脂床211の全体を再生させる第1再生プロセスST4の塩水W4の流れ;及び、
塩水W4を圧力タンク2の底部スクリーン242へ配液しながら、中間部スクリーン243で集液することにより塩水W4の上昇流を生成して、イオン交換樹脂床211の下部を再生させる第2再生プロセスST6の塩水W4の流れを切り換え可能なバルブである。
【0022】
塩水タンク4は、イオン交換樹脂床211を再生する再生液としての塩水W4を貯留する。再生液は、陽イオン交換樹脂ビーズを用いる硬水軟化装置1では、塩化ナトリウム、塩化カリウムの各水溶液等を利用できる。塩水タンク4の詳細については後述する。
【0023】
圧力タンク2について、更に説明する。蓋部材22は、流体の供給及び排出を行う第1蓋流路221、第2蓋流路222及び第3蓋流路223を有する。これらの各蓋流路221、222、223は、後述するように、プロセス制御バルブ3を構成する各種ラインとそれぞれ接続されている。「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
【0024】
圧力タンク2内において、蓋部材22の下面側であってイオン交換樹脂床211の頂部には、樹脂ビーズの流出を防止する頂部スクリーン241が設けられている。頂部スクリーン241は、樹脂ビーズよりも小さな多数の開孔を有する(後述する底部スクリーン242及び中間部スクリーン243も同様)。第1蓋流路221は、頂部スクリーン241を介して、圧力タンク2内と連通する。頂部スクリーン241による配水位置及び集水位置は、イオン交換樹脂床211の頂部付近に設定される。頂部スクリーン241は、イオン交換樹脂床211の頂部に設けられる頂部配液部、及びイオン交換樹脂床211の頂部に設けられる頂部集液部として機能する。
【0025】
圧力タンク2内において、第2蓋流路222には、圧力タンク本体21の底部付近へ延びる第1集配液管231が接続されている。第1集配液管231の下端部には、樹脂ビーズの流出を防止する底部スクリーン242が設けられている。第1集配液管231は、第2蓋流路222と連通する。底部スクリーン242による配水位置及び集水位置は、イオン交換樹脂床211の底部付近に設定される。底部スクリーン242は、イオン交換樹脂床211の底部に設けられる底部配液部、及びイオン交換樹脂床211の底部に設けられる底部集液部として機能する。
【0026】
圧力タンク2内において、第3蓋流路223には、イオン交換樹脂床211の深さ方向の中間部付近へ延びる第2集配液管232が接続されている。第2集配液管232の下端部には、樹脂ビーズの流出を防止する中間部スクリーン243が設けられている。第2集配液管232は、第3蓋流路223と連通する。中間部スクリーン243による集水位置は、イオン交換樹脂床211の深さ方向の中間部付近に設定される。つまり、中間部スクリーン243は、イオン交換樹脂床211の深さ方向の中間部に設けられる。中間部スクリーン243は、イオン交換樹脂床211の深さ方向の中間部に設けられる中間部集液部として機能する。
【0027】
第2集配液管232の内径は、第1集配液管231の外径よりも大径に設定されている。第1集配液管231及び第2集配液管232の軸芯は、いずれも圧力タンク2の軸芯と同軸上に設定されている。すなわち、第1集配液管231及び第2集配液管232は、第1集配液管231が内管に設定され且つ第2集配液管232が外管に設定された二重管構造を形成して、圧力タンク2に装着されている。
【0028】
第1蓋流路221には、プロセス制御バルブ3を介して原水ラインL1が接続されている。第2蓋流路222には、プロセス制御バルブ3を介して、軟水ラインL2が接続されている。第3蓋流路223には、第5排水ラインL55が接続されている。第5排水ラインL55は、プロセス制御バルブ3の内部において、第1排水ラインL51の接続部J51に接続されている。原水ラインL1、軟水ラインL2及び第1排水ラインL51は、プロセス制御バルブ3の外部まで延びている。すなわち、原水ラインL1、軟水ラインL2及び第1排水ラインL51は、それぞれ、その一部がプロセス制御バルブ3の内部に設けられ、その残部がプロセス制御バルブ3の外部に設けられている。
【0029】
詳細については後述するが、制御装置5は、後述する原水フロースイッチ61、塩水流量計62等からの信号が入力されて、入力された信号等に基づいてプロセス制御バルブ3を制御する。
【0030】
プロセス制御バルブ3は、その内部に、各種のライン、弁等を備え、圧力タンク2の内部を洗浄する洗浄手段として機能する。
具体的には、プロセス制御バルブ3は、ラインとして、原水ラインL1と、軟水ラインL2と、希釈水ラインL3と、第1塩水ラインL41と、第2塩水ラインL42と、第3塩水ラインL43と、第4塩水ラインL44と、第1排水ラインL51と、第2排水ラインL52と、第3排水ラインL53と、第4排水ラインL54と、第5排水ラインL55と、バイパスラインL6とを備える。
【0031】
原水ラインL1における第1蓋流路221側の一部は、第5塩水ラインL45としても機能する。軟水ラインL2における第2蓋流路222側の一部は、第6塩水ラインL46としても機能する。原水ラインL1、軟水ラインL2の一部(後述の第6塩水ラインL46)、第4塩水ラインL44の一部(第4塩水ラインL44における接続部J21と接続部J42との間の部分)、第3排水ラインL53、第2排水ラインL52及び第1排水ラインL51は、洗浄手段として機能する。
【0032】
プロセス制御バルブ3は、弁として、原水通水弁311と、軟水通水弁312と、バイパス弁313と、エゼクタ弁314と、第3排水弁315と、第2排水弁316と、第1排水弁317と、塩水弁318と、第1定流量弁322と、第2定流量弁34とを備える。
また、プロセス制御バルブ3は、エゼクタストレーナ321と、エゼクタ323と、第1オリフィス324と、第2オリフィス325と、軟水ストレーナ33とを備える。
【0033】
原水ラインL1には、原水W1の供給側から第1蓋流路221へ向けて順に、原水フロースイッチ61と、接続部J11と、原水通水弁311と、接続部J12と、接続部J13と、が設けられる。原水ラインL1における接続部J12と第1蓋流路221との間の部分は、第5塩水ラインL45としても機能する。
原水フロースイッチ61は、プロセス制御バルブ3の外部に設けられる。原水フロースイッチ61は、原水W1の流れ(圧力)の有無を検出する。原水フロースイッチ61からの検出信号は、制御装置5へ入力される。
【0034】
軟水ラインL2には、第2蓋流路222から軟水W2の供給先へ向けて順に、接続部J21と、軟水ストレーナ33と、軟水通水弁312と、接続部J22と、が設けられる。軟水ラインL2における第2蓋流路222と接続部J21との間の部分は、第6塩水ラインL46としても機能する。
軟水ストレーナ33は、軟水ラインL2を第2蓋流路222から軟水W2の供給先へ向けて流通する軟水W2中の夾雑物(樹脂ビーズの破砕片、ゴミ等)を捕捉する。
【0035】
希釈水ラインL3は、その上流側の端部において、原水ラインL1の接続部J11に接続されると共に、その下流側の端部において、エゼクタ323の一次側に接続される。希釈水ラインL3には、上流側(接続部J11側)から下流側(エゼクタ323側)に向けて順に、エゼクタストレーナ321と、第1定流量弁322と、エゼクタ323と、が設けられる。
【0036】
エゼクタストレーナ321は、原水W1からなる希釈水に含まれる懸濁物質を除去し、第1定流量弁322及びエゼクタ323の詰まりを防止する。第1定流量弁322は、エゼクタ323へ供給する希釈水を所定範囲の流量に調節する。
エゼクタ323には、ノズル部の吐出側において、第1塩水ラインL41の下流側の端部が接続されている。エゼクタ323は、希釈水(原水W1)が前記ノズル部から吐出されるときに発生する負圧を利用して、塩水タンク4から塩水W4(例えば、塩化ナトリウムの飽和水溶液)を吸引可能に構成されている。そして、エゼクタ323において、塩水タンク4からの塩水W4は、希釈水(原水W1)によって、所定濃度(例えば、8〜12重量%)にまで希釈されるようになっている。
【0037】
バイパスラインL6は、接続部J11と接続部J22とを接続する。つまり、バイパスラインL6は、原水ラインL1と軟水ラインL2とを接続する。
【0038】
再生液供給ラインは、圧力タンク2と塩水タンク(再生液タンク)4とを接続するラインである。第1実施形態において、再生液供給ラインは、2本形成される。
1本目の再生液供給ラインは、第1塩水ラインL41と、第2塩水ラインL42と、第3塩水ラインL43と、第5塩水ラインL45(原水ラインL1の一部)とから構成される。2本目の再生液供給ラインは、第1塩水ラインL41と、第2塩水ラインL42と、第4塩水ラインL44と、第6塩水ラインL46(軟水ラインL2の一部)とから構成される。
【0039】
第1塩水ラインL41の一端部は、塩水タンク4内に配置される。第1塩水ラインL41の他端部は、エゼクタ323の前記ノズル部に接続される。第1塩水ラインL41には、塩水タンク4からエゼクタ323に向けて順に、塩水流量計62と、塩水弁318と、が設けられる。
【0040】
塩水流量計62は、プロセス制御バルブ3の外部に設けられる。塩水流量計62は、第1塩水ラインL41を流通する塩水W4又は補給水としての原水W1の流量を検出する。塩水流量計62からの検出信号は、制御装置5へ入力される。塩水流量計62は、双方向の瞬間流量及び積算流量を検出可能に構成された流量センサであり、例えば、接線式流量センサ、軸流式流量センサ、カルマン渦式流量センサ等を利用することができる。
【0041】
第3塩水ラインL43の上流側の端部と、第4塩水ラインL44の上流側の端部とは、接続部J41において接続される。第2塩水ラインL42は、エゼクタ323の二次側と接続部J41とを接続する。
【0042】
第3塩水ラインL43の下流側の端部は、接続部J12において第5塩水ラインL45(原水ラインL1)に接続される。第3塩水ラインL43の途中には、第1オリフィス324が設けられる。
第4塩水ラインL44の下流側の端部は、接続部J21において第6塩水ラインL46(軟水ラインL2)に接続される。第4塩水ラインL44には、上流側から下流側に向けて順に、第2オリフィス325と、エゼクタ弁314と、が設けられる。
第1オリフィス324及び第2オリフィス325は、後述する第2再生プロセスST6及び第2押出プロセスST7において、再生液である塩水W4又は押出水である原水W1を第2蓋流路222及び第1蓋流路221に均等に分配するためのものである。
【0043】
第1排水ラインL51の下流側の端部からは、各種の排水W5が排出される。第1排水ラインL51の上流側の端部は、接続部J51において、第2排水ラインL52の下流側の端部及び第5排水ラインL55の下流側の端部に接続される。第2排水ラインL52の上流側の端部は、接続部J52において、第3排水ラインL53の下流側の端部及び第4排水ラインL54の下流側の端部に接続される。第3排水ラインL53の上流側の端部は、接続部J42において、第4塩水ラインL44に接続される。第4排水ラインL54の上流側の端部は、接続部J13において、原水ラインL1(第5塩水ラインL45)に接続される。第5排水ラインL55の上流側の端部は、第3蓋流路223に接続される。
【0044】
第2排水ラインL52の途中には、第2定流量弁34が設けられる。第2定流量弁34は、圧力タンク2から排出されて第2排水ラインL52を流通する排水W5の流量を所定範囲に調節する。
第3排水ラインL53の途中には、第1排水弁317が設けられる。第4排水ラインL54の途中には、第3排水弁315が設けられる。第5排水ラインL55の途中には、第2排水弁316が設けられる。
【0045】
プロセス制御バルブ3において、各種の弁311〜318は、種々の作動機構及び弁構造を採用することができる。具体的には、カム機構により作動されるリフト式又はダイアフラム式の流路開閉弁や、リンク機構により作動されるスライドピストン式の流路開閉弁等が好適である。
【0046】
次に、塩水タンク4について説明する。塩水タンク4は、塩水タンク本体41と、塩水ウェル42と、塩水プレート44とを備える。塩水タンク本体41は、上部が開口した有底の形状を有する。塩水ウェル42は、筒状であり、塩水タンク本体41の内側に配置される。塩水プレート44は、塩水ウェル42の外側において、塩水の貯留部(下方)と、再生塩43(例えば、粒状やペレット状の塩化ナトリウム)の貯蔵部(上方)とを、上下に区画する透水性のプレートからなる。
【0047】
塩水タンク本体41の内側であって且つ塩水ウェル42の内側には、塩水ライン配置空間46が形成される。塩水ライン配置空間46には、第1塩水ラインL41の上流側の端部が配置される。塩水ウェル42の下方の側壁には、連通孔45が設けられる、連通孔45は、塩水の貯留部と塩水ライン配置空間46との間を連通する。そのため、塩水W4又は補給水は、塩水の貯留部と塩水ライン配置空間46との間を自在に流通できる。
【0048】
次に、硬水軟化装置1が有する運転モード及び運転モードにおいて実行されるプロセスについて図2及び図3を参照しながら説明する。図2は、硬水軟化装置1の運転モード及び各運転モードにおけるプロセスを示す状態遷移図である。図3は、各プロセスにおけるプロセス制御バルブ3の開閉状態を示す図である。
【0049】
硬水軟化装置1は、運転モードとして、圧力タンク2に原水W1を導入することにより処理水としての軟水W2を製造する水処理モードと、圧力タンク2に再生液としての塩水W4を導入することによりイオン交換樹脂床211を再生させる再生モードと、圧力タンク2に洗浄液としての原水W1を導入することにより圧力タンク2の内部を洗浄する洗浄モードと、原水W1を塩水タンク4へ補給する補水モードと、圧力タンク2に流体を導入しない待機モードと、を有する。
これら各運転モード間及び運転モードにおいて実行されるプロセスにおける流体の流れは、プロセス制御バルブ3によって以下のように制御される。
【0050】
プロセス制御バルブ3は、図2に示すように、各運転モードを切り換えると共に、これらの各運転モードにおいてプロセスを切り換える。
各運転モードは、所定の移行条件(イベント)に基づいて切り換えられる。図2中において、各運転モード間に記載した矢印は、イベントE1〜E8を示す。
イベントE1は、水処理モードから再生モードへ移行する場合を示す。この移行条件としては、例えば、軟水W2の積算採水量(積算使用量)が所定の設定量Q1に達した場合、原水W1の積算通水時間が所定の設定時間T1に達した場合等を挙げることができる。
イベントE2は、再生モードから洗浄モードへ移行する場合を示す。この移行条件としては、例えば、逆洗浄プロセスST3から第2押出プロセスST7までを完了した場合を挙げることができる。
イベントE3は、洗浄モードから補水モードへ移行する場合を示す。この移行条件としては、例えば、洗浄モードへ移行する直前の運転モードが再生モードであり、かつ、圧力タンク2の内部における洗浄液の積算流通時間が所定の設定時間T2に達した場合を挙げることができる。
イベントE4は、補水モードから水処理モードへ移行する場合を示す。この移行条件としては、例えば、補水量が所定の設定量Q2に達した場合を挙げることができる。
イベントE5は、水処理モードから洗浄モードへ移行する場合を示す。この移行条件としては、後述するように、圧力タンク2の内部における水の滞留時間Tが所定の設定時間T3に達した場合を挙げることができる。
イベントE6は、洗浄モードから水処理モードへ移行する場合を示す。この移行条件としては、洗浄モードへ移行する直前の運転モードが水処理モードであり、かつ、圧力タンク2の内部における洗浄液の流通積算時間が所定の設定時間T4に達した場合を挙げることができる。
イベントE7は、洗浄モードから待機モードへ移行する場合を示す。この移行条件としては、例えば、原水ラインL1における原水W1の流通なしの連続検知時間が所定の設定時間T5に達した場合を挙げることができる。
イベントE8は、待機モードから洗浄モードへ移行する場合を示す。この移行条件としては、例えば、原水ラインL1における原水W1の流通ありの連続検知時間が所定の設定時間T6に達した場合を挙げることができる。
【0051】
プロセス制御バルブ3は、流路を切り換えながら、各運転モードにおいて以下のプロセスST1〜ST10を実施する。
(ST1)原水W1をイオン交換樹脂床211の全体に対して上から下へ通過させる水処理プロセス(水軟化プロセス)
(ST2)軟水ストレーナ33を逆洗浄するストレーナ洗浄プロセス
(ST3)洗浄水としての原水W1をイオン交換樹脂床211の全体に対して下から上へ通過させる逆洗浄プロセス
(ST4)再生液としての塩水W4をイオン交換樹脂床211の全体に対して上から下へ通過させる第1再生プロセス
(ST5)押出水としての原水W1をイオン交換樹脂床211の全体に対して上から下へ通過させる第1押出プロセス
(ST6)再生液としての塩水W4をイオン交換樹脂床211の上部に対して上から下へ通過させると共に、イオン交換樹脂床211の下部に対して下から上へ通過させる第2再生プロセス
(ST7)押出水としての原水W1をイオン交換樹脂床211の上部に対して上から下へ通過させると共に、イオン交換樹脂床211の下部に対して下から上へ通過させる第2押出プロセス
(ST8)洗浄液(濯ぎ水)としての原水W1をイオン交換樹脂床211の全体に対して上から下へ通過させ、圧力タンク2の内部(イオン交換樹脂床211)を洗浄する洗浄プロセス(リンスプロセス又は滞留水排出プロセス)
(ST9)原水W1を塩水タンク4へ供給する補水プロセス
(ST10)洗浄液の供給を待機する待機プロセス
【0052】
プロセス制御バルブ3における各弁311〜318の開閉は、図3に示すように、プロセスST1〜ST10毎に、制御装置5により制御される。その結果、圧力タンク2内において、プロセスST1〜ST10毎に、流体の流れが生成されるか、あるいは、流体の流れが生成されない。
なお、再生モードにおいて、逆洗浄プロセスST3の前には、軟水ストレーナ33を逆洗浄するストレーナ洗浄プロセスST2が設けられている。このストレーナ洗浄プロセスST2は、説明の便宜上、図2には記載せず、図3のみに記載してある。また、このストレーナ洗浄プロセスST2と逆洗浄プロセスST3との間には、塩水W4の供給を待機する再生待機プロセス(図示せず)が設けられている。
【0053】
次に、本実施形態に係る硬水軟化装置1の主要な制御(動作)について詳細に説明する。以下、本明細書においては、所定の条件下において、圧力タンク2の内部の液体(滞留水)を系外に排出することを、適宜、「滞留水排出を実施する」ともいう。
なお、水処理プロセスST1を除く各プロセスST2〜ST10においては、バイパス弁313が開放している。そのため、原水ラインL1における接続部J11よりも上流側を流通する過剰な原水W1は、接続部J12からバイパスラインL6へ流通し、接続部J22及び軟水ラインL2を介して、軟水W2の需要箇所へ一時的に供給される。
【0054】
〔水処理プロセスST1〕
制御装置5からの指令信号により、プロセス制御バルブ3の各弁311〜318は、図3のST1に示す開閉状態に設定される。その結果、原水ラインL1を流れる水道水、地下水、工業用水等の原水W1は、原水ラインL1及び第1蓋流路221を介して、圧力タンク本体21の内部に供給され、頂部スクリーン241から配水される。頂部スクリーン241から配水された原水W1は、イオン交換樹脂床211を下降流で通過し、その過程で原水W1の硬度成分はナトリウムイオンへ置換され、原水W1は軟水化される。
【0055】
イオン交換樹脂床211を通過した処理水(軟水W2)は、圧力タンク2の底部で底部スクリーン242へ集水される。その後、軟水W2は、第1集配液管231、第2蓋流路222及び軟水ラインL2を介して、所定の軟水W2の需要箇所へ供給される。そして、所定量の軟水W2を採取することにより、イオン交換樹脂床211が硬度成分を置換できなくなると、再生プロセスを実施する。
【0056】
〔ストレーナ洗浄プロセスST2〕
制御装置5からの指令信号により、プロセス制御バルブ3の各弁311〜318は、図3のST2に示す開閉状態に設定される。その結果、原水ラインL1を流れる原水W1は、原水ラインL1、接続部J11、バイパスラインL6、接続部J22、軟水ラインL2、軟水ストレーナ33、接続部J21、第4塩水ラインL44、接続部J42、第3排水ラインL53、第2排水ラインL52及び第1排水ラインL51を介して、系外へ排出される。この過程において、軟水ストレーナ33を二次側から一次側へ流れる原水W1により、軟水ストレーナ33は逆洗浄され、軟水ストレーナ33によって捕捉されていた夾雑物は、原水W1と共に、系外へ排出される。
【0057】
〔再生プロセス〕
再生プロセスは、イオン交換樹脂床211の硬度成分の除去能力(イオン交換容量)を回復させるために、逆洗浄プロセスST3〜補水プロセスST9を順次実施する(図2参照)。これらのプロセスのうち、逆洗浄プロセスST3、補水プロセスST9及び待機プロセスST10は、特許文献1、2等に開示されるように周知であるので、その説明を省略する。
【0058】
〔再生プロセス:第1再生プロセスST4〕
制御装置5からの指令信号により、プロセス制御バルブ3の各弁311〜318は、図3のST4に示す開閉状態に設定される。その結果、原水ラインL1における接続部J11よりも上流側を流れる原水W1は、塩水W4の希釈水として、希釈水ラインL3を介して、エゼクタ323の一次側へ供給される。
この際、原水W1中の懸濁物質は、エゼクタストレーナ321により除去される。また原水W1の流量は、第1定流量弁322により所定範囲に調節される。
【0059】
エゼクタ323において、原水W1の通過によってノズル部(符号省略)の吐出側で負圧が発生し、第1塩水ラインL41内も負圧となる。その結果、塩水タンク4内の飽和塩水W4は、第1塩水ラインL41を介してエゼクタ323へ吸引される。そして、エゼクタ323内では、飽和塩水W4が原水W1を希釈水として所定濃度まで希釈され、再生液としての塩水W4が調製される。
調製された塩水W4は、第2塩水ラインL42、第3塩水ラインL43、第5塩水ラインL45(原水ラインL1の一部)、及び第1蓋流路221を介して、圧力タンク本体21の内部に供給され、頂部スクリーン241から配水される。
【0060】
頂部スクリーン241から配水された塩水W4は、イオン交換樹脂床211を下降流で通過し、その過程でイオン交換樹脂床211の全体を再生させる。イオン交換樹脂床211を通過した再生液(塩水W4)は、圧力タンク2の底部で底部スクリーン242へ集水される。使用済みの塩水W4は、第1集配液管231、第2蓋流路222、軟水ラインL2、接続部J21、第4塩水ラインL44、接続部J42、第3排水ラインL53、第2排水ラインL52及び第1排水ラインL51を介して、系外へ排出される。
【0061】
第1再生プロセスST4は、いわゆる並流再生である。この並流再生では、再生液である塩水W4の供給容量が設定された再生剤量(=再生レベル×イオン交換樹脂床容量)に達すると、処理は終了し、第1押出プロセスST5へ移行する。
なお、再生剤量、再生液の濃度、再生液の比重、及び再生液の供給容量は、以下の関係を有する。
再生剤量=再生液の濃度×再生液の比重×再生液の供給容量 ・・・ (1)
【0062】
〔再生プロセス:第1押出プロセスST5〕
制御装置5からの指令信号により、プロセス制御バルブ3の各弁311〜318は、図3のST5に示す開閉状態に設定される。その結果、原水ラインL1における接続部J11よりも上流側を流れる原水W1は、押出水として、希釈水ラインL3を介して、エゼクタ323の一次側へ供給される。エゼクタ323を通過した原水W1は、第2塩水ラインL42、第3塩水ラインL43、第5塩水ラインL45(原水ラインL1の一部)、及び第1蓋流路221を介して、圧力タンク本体21の内部に供給され、頂部スクリーン241から配水される。
【0063】
頂部スクリーン241から配水された押出水としての原水W1は、先行して供給された再生液としての塩水W4を押し出しながら、イオン交換樹脂床211を下降流で通過し、引き続き、イオン交換樹脂床211を再生させる。イオン交換樹脂床211を通過した再生液(塩水W4)及び押出水(原水W1)は、圧力タンク2の底部で底部スクリーン242へ集水される。使用済みの塩水W4及び原水W1は、第1集配液管231、第2蓋流路222、軟水ラインL2、接続部J21、第4塩水ラインL44、接続部J42、第3排水ラインL53、第2排水ラインL52及び第1排水ラインL51を介して、系外へ排出される。
【0064】
〔再生プロセス:第2再生プロセスST6〕
制御装置5からの指令信号により、プロセス制御バルブ3の各弁311〜318は、図3のST6に示す開閉状態に設定される。その結果、原水ラインL1における接続部J11よりも上流側を流れる原水W1は、塩水W4の希釈水として、希釈水ラインL3を介して、エゼクタ323の一次側へ供給される。
【0065】
エゼクタ323において調製された塩水W4は、第2塩水ラインL42、第3塩水ラインL43、第5塩水ラインL45(原水ラインL1の一部)、及び第1蓋流路221を介して、圧力タンク本体21の内部に供給され、頂部スクリーン241から配水される。
【0066】
頂部スクリーン241から配水された塩水W4は、イオン交換樹脂床211を下降流で通過し、その過程でイオン交換樹脂床211の上部を再生させる。イオン交換樹脂床211の上部を通過した再生液(塩水W4)は、圧力タンク2の深さ方向の中間部で中間部スクリーン243へ集水される。使用済みの塩水W4は、第2集配液管232、第3蓋流路223、第5排水ラインL55、接続部J55及び第1排水ラインL51を介して、系外へ排出される。
【0067】
また、エゼクタ323において調製された塩水W4は、第2塩水ラインL42の接続部J41から分流し、第4塩水ラインL44、第6塩水ラインL46(軟水ラインL2の一部)及び第2蓋流路222を介して、圧力タンク本体21の内部に供給され、第1集配液管231を介して、底部スクリーン242から配水される。
【0068】
底部スクリーン242から配水された塩水W4は、イオン交換樹脂床211を上昇流で通過し、その過程でイオン交換樹脂床211の下部を再生させる。イオン交換樹脂床211の下部を通過した再生液(塩水W4)は、圧力タンク2の深さ方向の中間部で中間部スクリーン243へ集水される。使用済みの塩水W4は、第2集配液管232、第3蓋流路223、第5排水ラインL55、接続部J55及び第1排水ラインL51を介して、系外へ排出される。
【0069】
第2再生プロセスST6は、部分並流再生と部分向流再生とを同時に行ういわゆるスプリット・フロー再生である。部分向流再生では、第1再生プロセスST4では再生されにくいイオン交換樹脂床211の下部が、効率的に再生される。なお、第2再生プロセスST6においてイオン交換樹脂床211の下部の流動は、再生液としての塩水W4の下降流によって抑制される。
再生液である塩水W4の供給容量が設定された再生剤量に達すると、処理は終了し、第2押出プロセスST7へ移行する。
なお、再生剤量、再生液の濃度、再生液の比重、及び再生液の供給容量の関係は、上述の(1)式で示した通りである。
【0070】
〔再生プロセス:第2押出プロセスST7〕
制御装置5からの指令信号により、プロセス制御バルブ3の各弁311〜318は、図3のST7に示す開閉状態に設定される。その結果、原水ラインL1における接続部J11よりも上流側を流れる原水W1は、押出水として、希釈水ラインL3を介して、エゼクタ323の一次側へ供給される。
エゼクタ323を通過した原水W1は、押出水として、希釈水ラインL3を介して、エゼクタ323の一次側へ供給される。エゼクタ323を通過した原水W1は、第2塩水ラインL42、第3塩水ラインL43、第5塩水ラインL45(原水ラインL1の一部)、及び第1蓋流路221を介して、圧力タンク本体21の内部に供給され、頂部スクリーン241から配水される。
【0071】
頂部スクリーン241から配水された押出水としての原水W1は、先行して供給された再生液としての塩水W4を押し出しながら、イオン交換樹脂床211を下降流で通過し、引き続き、イオン交換樹脂床211の上部を再生させる。イオン交換樹脂床211の上部を通過した再生液(塩水W4)及び押出水(原水W1)は、圧力タンク2の深さ方向の中間部で中間部スクリーン243へ集水される。使用済みの塩水W4及び原水W1は、第2集配液管232、第3蓋流路223、第5排水ラインL55、接続部J55及び第1排水ラインL51を介して、系外へ排出される。
【0072】
また、エゼクタ323を通過した原水W1は、第2塩水ラインL42の接続部J41から分流し、第4塩水ラインL44、第6塩水ラインL46(軟水ラインL2の一部)及び第2蓋流路222を介して、圧力タンク本体21の内部に供給され、第1集配液管231を介して、底部スクリーン242から配水される。
【0073】
底部スクリーン242から配水された押出水としての原水W1は、先行して供給された再生液としての塩水W4を押し出しながら、イオン交換樹脂床211を上昇流で通過し、引き続き、イオン交換樹脂床211の下部を再生させる。イオン交換樹脂床211の下部を通過した再生液(塩水W4)及び押出水(原水W1)は、圧力タンク2の深さ方向の中間部で中間部スクリーン243へ集水される。使用済みの塩水W4及び原水W1は、第2集配液管232、第3蓋流路223、第5排水ラインL55、接続部J55及び第1排水ラインL51を介して、系外へ排出される。
以上の再生モードにおいて、再生液としての塩水W4及び押出水としての原水W1は、圧力タンク2の内部を洗浄する洗浄液としても機能する。
【0074】
〔洗浄プロセスST8〕
制御装置5からの指令信号により、プロセス制御バルブ3の各弁311〜318は、図3のST8に示す開閉状態に設定される。その結果、原水ラインL1を流れる水道水、地下水、工業用水等の原水W1は、原水ラインL1及び第1蓋流路221を介して、圧力タンク本体21の内部に供給され、頂部スクリーン241から配水される。頂部スクリーン241から配水された原水W1は、イオン交換樹脂床211を下降流で通過し、イオン交換樹脂床211を洗浄する。つまり、原水W1は、圧力タンク2の内部(イオン交換樹脂床211)を洗浄する洗浄液として機能する。原水W1の硬度成分は、原水W1がイオン交換樹脂床211を通過する過程でナトリウムイオンへ置換され、原水W1は、軟水化される。
【0075】
イオン交換樹脂床211を通過した処理水(軟水W2)は、圧力タンク2の底部で底部スクリーン242へ集水される。その後、軟水W2は、第1集配液管231、第2蓋流路222、第6塩水ラインL46、第4塩水ラインL44、第3排水ラインL53、第2排水ラインL52及び第1排水ラインL51を介して、排水W5として系外へ排出される。
【0076】
本明細書においては、この洗浄プロセスST8に移行する直前の運転モードが再生モードである場合には、洗浄プロセスST8を「リンスプロセス」と称し、洗浄プロセスST8に移行する直前の運転モードが水処理モード又は待機モードである場合には、「滞留水排出プロセス」と称することとする。
【0077】
次に、図4を参照して、本実施形態に係る硬水軟化装置1の制御に係る機能について説明する。図4は、硬水軟化装置1の制御に係る機能ブロック図である。
制御装置5は、硬水軟化装置1における各部を制御する。図4に示すように、制御装置5は、プロセス制御バルブ3と電気的に接続される。また、制御装置5は、硬水軟化装置1における原水フロースイッチ61及び塩水流量計62と電気的に接続され、原水フロースイッチ61からの流通検知信号及び塩水流量計62からの流量信号を受信する。
【0078】
制御装置5は、滞留時間算出手段としての滞留時間算出部51と、滞留時間判定手段としての滞留時間判定部52と、洗浄手段制御手段としてのバルブ制御部53と、メモリ部54と、を含んで構成される。
【0079】
滞留時間算出部51は、水処理モードにおいて、原水フロースイッチ61によって、原水W1の流通がないと検知されている場合に、圧力タンク2の内部における水の滞留時間Tを算出(計時)するものである。ここで、圧力タンク2の内部における水とは、圧力タンク2の内部に存在している原水W1及び軟水W2を意味する。
【0080】
また、水の「滞留時間」とは、水が流通することなく、圧力タンク2の内部に滞留している時間を意味する。具体的には、水の「滞留時間」は、原水フロースイッチ61によって原水W1の流通停止が検知された後、再び原水フロースイッチ61によって原水W1の流通開始が検知されるまでの時間を指す。水処理モードにおいては、原水ラインL1において原水W1が流通していなければ、圧力タンク2の内部において水が滞留しているとみなすことができるからである。
【0081】
また、滞留時間算出部51は、原水フロースイッチ61によって、原水W1の流通があると検知されている場合に、計時した水の滞留時間Tをリセットする。
【0082】
滞留時間判定部52は、所定の設定時間T3をメモリ部54から読み込むと共に、滞留時間算出部51によって算出された滞留時間Tが、所定の設定時間T3(図5のステップST14参照)に達したか否かを判定するものである。この設定時間T3は、上記滞留時間Tの閾値であり、水の滞留によって圧力タンク2の内部において雑菌が繁殖したり、臭いや色が軟水W2に付いたりしないようにすることができる時間である。つまり、この設定時間T3は、高品質の軟水W2を得ることができる滞留時間の上限閾値を勘案して設定され、例えば、6〜24時間に設定される。
【0083】
バルブ制御部53は、滞留時間判定部52による判定結果に基づいて圧力タンク2の内部を洗浄するようにプロセス制御バルブ3の各弁311〜318を制御するものである。具体的な制御方法については、後述する。
【0084】
メモリ部54は、硬水軟化装置1の制御に必要な制御プログラムや各種データ等を記憶する。具体的には、メモリ部54は、硬水軟化装置1の各種運転モードを動作させる制御プログラム、各種計算値(例えば、滞留時間算出部51によって算出された滞留時間T)、各種設定値(例えば、設定時間T3)等を記憶する。
【0085】
次に、硬水軟化装置1の滞留水排出に係る制御について図5を参照しながら説明する。図5は、硬水軟化装置1の滞留水排出に係る制御を示すフローチャートである。このフローチャートは、後述するステップST15を除き、水処理モード(水処理プロセスST1を実行)での処理を示している。
図5に示すように、ステップST11において、滞留時間判定部52は、所定の設定時間T3をメモリ部54から読み込む。
【0086】
ステップST12において、滞留時間算出部51は、原水フロースイッチ61からの流通検知信号に基づいて、原水ラインL1における原水W1の流通の有無を判定する。すなわち、滞留時間算出部51は、需要箇所で水が使用されているか否かを判定する。原水ラインL1において原水W1の流通なし(YES)と判定された場合には、水が圧力タンク2の内部に滞留し始めると判定することができるため、ステップST13へ進む。一方、原水ラインL1において原水W1の流通あり(NO)と判定された場合には、水が圧力タンク2の内部を流通していると判定することができるため、後述するステップST16へ進む。
【0087】
ステップST13において、滞留時間算出部51は、圧力タンク2の内部における水の滞留時間Tを算出(計時)し、ステップST14へ進む。
【0088】
ステップST14において、滞留時間判定部52は、滞留時間算出部51によって算出された水の滞留時間Tが、ステップST11で読み込まれた設定時間T3に達したか否かを判定する。水の滞留時間Tが設定時間T3に達した(YES)場合には、軟水W2は所定の水質を維持できなくなると考えられるため、ステップST15へ進む(図2のイベントE5が発生)。一方、水の滞留時間Tが設定時間T3に達していない(NO)場合には、軟水W2は所定の水質を維持できていると考えられるため、ステップST12に戻る。すなわち、ステップST12において、原水ラインL1において原水W1の流通あり(NO)と判定されるまで、あるいは、ステップST14において、水の滞留時間Tが設定時間T3に達するまで、滞留時間算出部51は、水の滞留時間Tの計時を継続する。
【0089】
ステップST15は、洗浄モードでの処理である。ステップST15において、バルブ制御部53は、滞留水排出プロセスを実施(圧力タンク2の内部を洗浄)するように、プロセス制御バルブ3の各弁311〜318(図3における洗浄プロセスST8参照)を制御する。
【0090】
詳細には、図3のST8において示すように、プロセス制御バルブ3は、原水通水弁311、バイパス弁313及び第1排水弁317を開弁し、その他の弁312,314,315,316,318を閉弁する。これにより、原水W1は、原水ラインL1及び第1蓋流路221を介して、圧力タンク本体21の内部に供給され、頂部スクリーン241から配水される。頂部スクリーン241から配水された原水W1は、イオン交換樹脂床211を下降流で通過し、イオン交換樹脂床211を洗浄する。
【0091】
イオン交換樹脂床211を通過した処理水(軟水W2)は、圧力タンク2の底部で底部スクリーン242へ集水される。その後、軟水W2は、第1集配液管231、第2蓋流路222、第6塩水ラインL46、第4塩水ラインL44、第3排水ラインL53、第2排水ラインL52及び第1排水ラインL51を介して、排水W5として系外へ排出される。つまり、圧力タンク2の内部の滞留水が新たな軟水2によって置換されることにより、圧力タンク2の内部が洗浄される。
【0092】
硬水軟化装置1が家庭用として使用される場合、滞留水排出プロセスは、具体的には、次のように実施される。
バルブ制御部53は、イオン交換樹脂床211での原水W1(洗浄液)の線速度を5〜60m/hの範囲に設定する。洗浄液の線速度は、洗浄手段としてのプロセス制御バルブ3に組み込まれた第2定流量弁34により、圧力タンク2から排出される排水W5の流量を所定範囲に調節することにより設定される。他の構成としては、例えば第1排水弁317を比例制御弁とし、その開度を調節することによっても、線速度を所望の範囲に設定することができる。なお、原水W1(洗浄液)の線速度とは、原水W1の流量をイオン交換樹脂床211の横断面積で除したものであり、次式で示される。
線速度[m/h]=流量[m/h]÷横断面積[m] ・・・ (2)
【0093】
また、バルブ制御部53は、イオン交換樹脂床211に対する原水W1の量を、上記設定時間T3が長い場合には多く設定し、上記設定時間T3が短い場合には少なく設定する。例えば、上記設定時間T3が6〜24時間に設定される場合に、バルブ制御部53は、イオン交換樹脂床211に対する原水W1(洗浄液)の量を6〜12BVの範囲に設定する。第2定流量弁34等によって排水W5の流量が規定されるため、洗浄液の量は、洗浄プロセスST8の実施時間を変更することにより設定される。
【0094】
また、洗浄液としての原水W1は、塩素を含む水を用いることができる。この場合、バルブ制御部53は、イオン交換樹脂床211の単位樹脂量に対して少なくとも0.5mgCl/L−Rの塩素量を接触させるように、プロセス制御バルブ3による洗浄プロセスST8の実施時間を制御する。なお、塩素は、原水W1に元から含まれる残留塩素であってもよいし、原水W1に別途添加した次亜塩素酸ナトリウム等の塩素剤であってもよい。
【0095】
ステップST15において、原水フロースイッチ61からの流通検知信号に基づく水の流通積算時間が所定の設定時間T4に達すると、滞留水排出プロセスを終了し、ステップST16へ進む(図2のイベントE6が発生)。
【0096】
ステップST16において、滞留時間算出部51は、計時した水の滞留時間Tをリセットし、制御を終了する。
【0097】
本実施形態の硬水軟化装置1によれば、例えば、以下に示す効果が奏される。
本実施形態の硬水軟化装置1は、圧力タンク2と、圧力タンク2に原水W1を導入して系外に排出することにより圧力タンク2の内部を洗浄するプロセス制御バルブ3と、圧力タンク2の内部に位置する液体の滞留時間Tを算出する滞留時間算出部51と、滞留時間Tが所定の設定時間T3に達したか否かを判定する滞留時間判定部52と、滞留時間判定部52による判定結果に基づいて圧力タンク2の内部を洗浄するようにプロセス制御バルブ3を制御するバルブ制御部53と、を備える。バルブ制御部53は、イオン交換樹脂床211での原水W1の線速度を5〜60m/hの範囲に設定すると共に、イオン交換樹脂床211に対する原水W1の量を設定時間T3に応じて設定する。
【0098】
そのため、本実施形態によれば、所定範囲の線速度に設定された原水W1によって圧力タンク2の内部を洗浄するので、圧力タンク2から滞留水を短時間で効率よく排出することができる。また、本実施形態によれば、水の滞留時間に応じた洗浄液(原水W1)の量で圧力タンク2の内部を洗浄するので、洗浄不足を起こすことなく、高品質の処理水(軟水W2)を恒常的に得ることができる。
【0099】
また、本実施形態の硬水軟化装置1においては、水の滞留時間に係る閾値である設定時間T3が6〜24時間に設定される場合に、バルブ制御部53は、イオン交換樹脂床211に対する原水W1の量を6〜12BVの範囲に設定する。そのため、本実施形態によれば、水の滞留時間に応じた最小必要量の洗浄液(原水W1)で圧力タンク2の内部を洗浄するので、洗浄不足を起こすことなく、洗浄液の使用量を節約することができる。
【0100】
また、本実施形態の硬水軟化装置1においては、圧力タンク2に流通する原水W1は、塩素を含む水であり、バルブ制御部53は、イオン交換樹脂床211の単位樹脂量に対して少なくとも0.5mgCl/L−Rの塩素量を接触させるようにプロセス制御バルブ3を制御する。そのため、本実施形態によれば、イオン交換樹脂床211を洗浄の都度、十分な塩素量で殺菌するので、圧力タンク2の内部において雑菌の繁殖を効果的に抑制することができる。
【0101】
また、本実施形態の硬水軟化装置1においては、イオン交換樹脂床211は、ハロゲン系有機溶媒を使用せずに製造された陽イオン交換樹脂ビーズから形成される。そのため、本実施形態によれば、ハロゲン系有機溶媒が軟水W2中に浸出する虞がなく、人体に安全な処理水(軟水W2)を恒常的に得ることができる。
【0102】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
例えば、前述の実施形態においては、圧力タンク2の内部を洗浄する洗浄液として、原水W1を用いるものとして説明したが、これに制限されず、軟水W2や別途調製された洗浄用の薬液であってもよい。
【0103】
また、前述の実施形態においては、圧力タンク2の内部を洗浄する洗浄手段は、圧力タンク2に接続され液体が流通する各種ライン(原水ラインL1、軟水ラインL2の一部、各排水ラインL51,52,53、塩水ラインL44の一部等)及び各種ラインを開閉するプロセス制御バルブ3であるものとして説明したが、これに制限されない。洗浄手段は、洗浄用の薬液を圧力タンク2の内部に供給可能な洗浄装置であってもよい。
【0104】
また、前述の実施形態においては、圧力タンク2の内部における水の滞留時間Tは、原水フロースイッチ61による原水W1の通水の有無に基づいて算出されるものとして説明したが、これに制限されない。圧力タンク2の内部において雑菌が繁殖したり、臭いや色が軟水W2に付かないようにしたりすることができれば、水の滞留時間Tの算出方法は限定されない。例えば、水の滞留時間Tは、圧力タンク2の内部に存在する水のうち、最も長時間に亘って存在する水の滞留時間として算出されてもよい。
【0105】
前述の実施形態は、本発明のイオン交換装置を硬水軟化装置に適用しているが、これに制限されない。例えば、硬水軟化装置におけるイオン交換樹脂を、陽イオン交換樹脂から陰イオン交換樹脂へ置換すれば、硝酸性窒素除去装置として使用することができる。
【符号の説明】
【0106】
1 硬水軟化装置(イオン交換装置)
2 圧力タンク
3 プロセス制御バルブ(洗浄手段)
51 滞留時間算出部(滞留時間算出手段)
52 滞留時間判定部(滞留時間判定手段)
53 バルブ制御部(洗浄手段制御手段)
211 イオン交換樹脂床
L1 原水ライン(洗浄手段)
L44 第4塩水ライン(洗浄手段)
L46 第6塩水ライン(洗浄手段)
L51 第1排水ライン(洗浄手段)
L52 第2排水ライン(洗浄手段)
L53 第3排水ライン(洗浄手段)
T 滞留時間
T3 設定時間
W1 原水(洗浄液)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換樹脂床を収容し、液体が導入される圧力タンクと、
前記圧力タンクに洗浄液を導入して系外に排出することにより該圧力タンクの内部を洗浄する洗浄手段と、
前記圧力タンクの内部に位置する液体の滞留時間を算出する滞留時間算出手段と、
前記滞留時間算出手段によって算出された前記滞留時間が所定の設定時間に達したか否かを判定する滞留時間判定手段と、
前記滞留時間判定手段による判定結果に基づいて前記圧力タンクの内部を洗浄するように前記洗浄手段を制御する洗浄手段制御手段と、
を備え、
前記洗浄手段制御手段は、前記イオン交換樹脂床での洗浄液の線速度を5〜60m/hの範囲に設定すると共に、前記イオン交換樹脂床に対する洗浄液の量を前記設定時間に応じて設定するイオン交換装置。
【請求項2】
前記設定時間が6〜24時間に設定される場合に、前記洗浄手段制御手段は、前記イオン交換樹脂床に対する洗浄液の量を6〜12BVの範囲に設定する請求項1に記載のイオン交換装置。
【請求項3】
前記圧力タンクに流通する洗浄液は、塩素を含む水であり、
前記洗浄手段制御手段は、前記イオン交換樹脂床の単位樹脂量に対して少なくとも0.5mgCl/L−Rの塩素量を接触させるように前記洗浄手段を制御する請求項2に記載のイオン交換装置。
【請求項4】
前記イオン交換樹脂床は、ハロゲン系有機溶媒を使用せずに製造された陽イオン交換樹脂ビーズから形成される請求項1から3のいずれか一つに記載のイオン交換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−166131(P2012−166131A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27927(P2011−27927)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】