説明

イオン導電剤及び導電性ウレタン樹脂組成物

【課題】導電性樹脂に含有させることで導電性が良好で、しかも使用環境が変化しても、特に長期間の温湿度下においても導電性の経時変化が少なく、ブリードの発生が抑えられた導電性樹脂組成物を与えるイオン導電剤及び該イオン導電剤が含有された導電性ウレタン樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】エチレンオキサイド基を有する第四級アンモニウムカチオンと、フッ素含有アニオンとの塩からなるイオン導電剤。及び該イオン導電剤と、ポリオール類、ポリイソシアネート類とを含有し重合されてなる導電性ウレタン樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁性樹脂に添加し導電性を付与するためのイオン導電剤、及び該イオン導電剤が含有され、使用環境が変化しても導電特性の経時変化が少なく、ブリードの発生が抑えられ安定した帯電防止性能を有する導電性ウレタン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電子機器あるいは電子部品などの包装材料に用いられる樹脂材料は、電気絶縁性を必要とする用途には極めて有用である反面、表面に静電気を帯びやすく、剥離時等に発生する静電気により該電子機器あるいは電子部品を損傷させるおそれがある。従ってこのような用途向けの包装材料には、予め導電性が付与され帯電防止能を有した導電性樹脂が用いられている。
【0003】
そのような導電性樹脂は、各種メーター類の窓、テレビのブラウン管、クリーンルームの窓、携帯電話等の液晶表示パネル、電磁波遮断壁等の保護フィルムのように透明性を必要とする用途においても需要が高まっている。
【0004】
従来、絶縁性樹脂に導電性を付与させるには、樹脂原料に導電性付与剤をあらかじめ添加、混練させるか、または、樹脂基体表面に導電性塗膜を被覆させる方法が知られている。上記導電性付与剤としては、カーボンブラックやITO等の電子導電剤が知られているが、これらを樹脂またはゴムに添加させた場合、得られる導電性樹脂の硬度が高くなることから、用途によっては、軟化剤を配合させて硬度を低下させる必要があった。しかしながら、時間の経過とともに軟化剤がブリードしやすく、また、これらの電子導電剤では、十分な透明性が確保できないという短所がある。
【0005】
一方電子導電剤に代えて、樹脂の柔軟性を保ちつつ、透明性に優れる等の利点を有するイオン導電剤を用いることが提案されている。特許文献1、特許文献2では、このイオン導電剤として、第四級アンモニウムのハロゲン化塩、過塩素酸塩、カルボン酸塩のような第四級アンモニウム塩が開示されている。しかしながら、これら塩を含有する導電性付与剤では、温湿度の変化による抵抗値の環境変動が大きく、安定した導電性を確保できない、ブリード現象により徐々に経時劣化する、という欠点があった。
【0006】
特許文献3、特許文献4ではイオン導電剤として、アンモニウムカチオンのNにエチレンオキサイド基が置換している第四級アンモニウムの過塩素酸塩を添加したウレタン樹脂が開示されている。該文献によれば、イオン導電剤の末端アルコール基とポリイソシアネートとが重付加反応し、第四級アンモニウム塩がウレタン樹脂骨格に化学的に結合しているため、耐ブリード性に優れているが、継続的な電圧印加により電気抵抗が経時変化する、あるいは温湿度の変化による抵抗値の環境変動が大きい、という欠点があり、より安定性に優れたイオン導電剤及び導電性樹脂組成物が望まれていた。
【0007】
【特許文献1】特開平11―021445号公報
【特許文献2】特開平11―140306号公報
【特許文献3】特開平11―199643号公報
【特許文献4】特開平8―157556号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、導電性樹脂に含有させることで導電性が良好で、しかも使用環境が変化しても、特に長期間の温湿度下においても導電性の経時変化が少なく、ブリードの発生が抑えられた導電性樹脂組成物を与えるイオン導電剤及び該イオン導電剤が含有された導電性ウレタン樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を重ねた結果、エチレンオキサイド基を有する第四級アンモニウムカチオンと、フッ素含有アニオンとの塩が、導電性を付与させるイオン導電剤として極めて有用であることを見出し、該イオン導電剤と、ポリオール類、ポリイソシアネート類とを含有し重合されてなる導電性ウレタン樹脂組成物が上記課題を解決できることを見出し本発明の完成に至った。すなわち本発明は以下に示すものである。
【0010】
第1の発明は、下記一般式(1)又は下記一般式(2)で表されることを特徴とするイオン導電剤である。
【0011】
【化1】

【0012】
上式中、R及びRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい炭素数1〜18のアルキル基を示す。また、m及びnは1〜30の整数を示す。Xはビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸アニオン(TFSI)及び/又はトリフルオロメタンスルホン酸アニオン(Tf)を示す。
【0013】
【化2】

【0014】
上式中、R〜Rはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい炭素数1〜18のアルキル基を示す。また、pは1〜30の整数を示す。Xはビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸アニオン(TFSI)及び/又はトリフルオロメタンスルホン酸アニオン(Tf)を示す。
【0015】
第2の発明は、第1の発明に記載のイオン導電剤と、ポリオール類と、ポリイソシアネート類とを含有し、重合されてなることを特徴とする導電性ウレタン樹脂組成物である。
【0016】
第3の発明は、前記ポリオール類100重量部に対し、第1の発明に記載のイオン導電剤が0.01〜20重量部含有され、ポリイソシアネート類と重合されてなることを特徴とする第2の発明に記載の導電性ウレタン樹脂組成物である。
【0017】
第4の発明は、第2又は第3の発明に記載の導電性ウレタン樹脂組成物を用いて得られることを特徴とする導電性樹脂フィルムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明による導電性ウレタン樹脂組成物では、フッ素を含有するアニオンを含有しているため、環境変化による導電性の変化の少なく、かつ、第四級アンモニウムカチオンが高分子中に固定されるため、ブリードせずに長期にわたって安定した導電性の維持が可能である。
【0019】
本発明により得られた導電性ウレタン樹脂組成物は、導電性塗料、導電性接着剤、導電性フィルム等の導電性の要求される各種の用途に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明のイオン導電剤及び導電性ウレタン樹脂組成物について、詳細に説明する。
【0021】
本発明で用いられるイオン導電剤は、上記一般式(1)又は(2)で表される第四級アンモニウム塩である。
【0022】
本発明に用いる第四級アンモニウム塩は一種類または二種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0023】
一般式(1)中、R又はRが互いに異なってもよい炭素数1〜18のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、があげられる。一般式(2)中、R〜Rの互いに異なってもよい炭素数1〜18のアルキル基としても同様である。
【0024】
ここで、より好ましくは(1)式中R又はRの一つが炭素数8〜18のアルキル基であり、かつ他方の基が炭素数1〜2のアルキル基であるものである。また、より好ましくは(2)式中R〜Rの内一つ以上が炭素数8〜18のアルキル基であり、かつ残りの基が炭素数1〜2のアルキル基であるものである。このようなものは、一つの基のアルキル鎖を延ばすことで疎水性となり、より耐水性や湿度依存性の面で性能が向上するためである。
【0025】
一般式(1)中のエチレンオキサイド付加の数m及びnはそれぞれ同一でも異なっていてもよい1〜30の整数であることが好ましい。一般式(2)中のエチレンオキサイド付加の数pについても同様である。
【0026】
前記(1)式及び/又は(2)式で示されるイオン導電剤のアニオンXは、フッ素を含有したアニオンが好ましく、耐熱性及び特に耐湿性に優れ、使用環境が変化しても導電率の影響を受けにくく、製造後の環境依存性に優れ、抵抗の維持安定性に優れているという面から、より好ましくはビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸アニオン(TFSI)及び/又はトリフルオロメタンスルホン酸アニオン(Tf)である。
【0027】
これらの中でより好ましいイオン導電剤として具体的には、オレイルビス(2−ヒドロキシルエチル)メチルアンモニウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、オレイルビス(2−ヒドロキシルエチル)メチルアンモニウム−トリフルオロメタンスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキル(C8−C18)メチルアンモニウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ポリオキシエチレンアルキル(C8−C18)メチルアンモニウム−トリフルオロメタンスルホン酸、ラウリル(2−ヒドロキシエチル)ジメチルアンモニウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ラウリル(2−ヒドロキシエチル)ジメチルアンモニウム−トリフルオロメタンスルホン酸、オクチルビス(2−ヒドロキシエチル)エチルアンモニウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、オクチルビス(2−ヒドロキシエチル)エチルアンモニウム−トリフルオロメタンスルホン酸、オクチル(2−エトキシエタノール)ジメチルアンモニウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、オクチル(2−エトキシエタノール)ジメチルアンモニウム−トリフルオロメタンスルホン酸である。
なお、上記アルキル(C8−C18)とは炭素数8〜18のアルキル基を示し、該炭素数の範囲内にて、異なるアルキル鎖長のものが混合されたものも含む。
【0028】
本発明のイオン導電剤であるエチレンオキサイド基を有する第四級アンモニウムカチオンと含フッ素アニオンとの塩は以下に示す方法によって得ることができる。すなわち、エチレンオキサイド基を有する第四級アンモニウムの塩化物又は臭化物をリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド及び/又はカリウムトリフルオロメタンスルホン酸を等モルで水中又はアセトン中にて反応させ、分離した油状物を抽出、水洗浄、減圧乾燥して得ることができる。
【0029】
次に、本発明の導電性ウレタン樹脂組成物について説明する。本発明の導電性ウレタン樹脂は、一般式(1)及び/又は(2)で表されるエチレンオキサイド基を有する第四級アンモニウム塩をイオン導電剤とし、ポリオール類及びポリイソシアネート類とともに含有され、重合又は架橋されてなるウレタン樹脂であることを特徴とする。
【0030】
すなわち本発明に用いられるウレタン樹脂はポリオール類とポリイソシアネート類との重付加反応によって得られるウレタン樹脂である。
【0031】
本発明の導電性ウレタン樹脂組成物は、OH基を有するポリオール類及びイオン導電剤とNCO基を有するポリイソシアネート類とが重合付加されてなり、かつ、OH基/NCO基のモル比が0.9〜1.2であることが好ましく、より好ましくは0.95〜1.10である。
【0032】
OH基/NCO基の比が0.9未満または1.2超の場合、ウレタンの重合度が低下し、硬化不良が発生しやすく、未反応ウレタンモノマーの析出による表面汚染などの不都合が生じる。
【0033】
また、本発明において使用されるイオン導電剤は、エチレンオキサイド基を含有しており、液状のためポリオール類との相溶性が良好で混合攪拌の均一化が容易であり、その分散性も均一で抵抗ムラがなく製造安定性に優れ、製造後のブリード性が少なく、抵抗の維持安定性に優れる。また、末端に反応性の水酸基をもつためウレタン樹脂内に高分子反応で取り込まれ安定した抵抗を長期にわたり維持することが可能である。
【0034】
本発明に使用されるポリオール類として、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、疎水性ポリオールなどがあげられる。上記ポリエーテルポリオールとしては、例えばグリセリンなどの多価アルコールにエチレンオキシドやプロピレンオキシドを付加させて得られたポリオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブタンジオールなどが好ましくあげられる。ポリエステルポリオールとしては、例えばジカルボン酸とジオールやトリオールなどとの縮合により得られる縮合系ポリエステルポリオール、ジオールやトリオールの存在下にラクトンを開環重合して得られるラクトン系ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールの末端をラクトンでエステル変性したエステル変性ポリオールなどが好ましくあげられる。さらに、疎水性ポリオールとしては、例えばポリイソプレンポリオール、ポリブタジエンポリオール,水素添加ポリブタジエンポリオールなどが好ましくあげられる。
【0035】
本発明に使用されるポリイソシアネート類として、脂肪族、脂環族および芳香族ポリイソシアネートがあげられ、具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどがあげられ、また、これらのポリイソシアネートは、過少当量の低分子量多価アルコールと反応させて得られるウレタン変性品であってもよく、また、一価フェノール、一価アルコール等と反応させたブロック化イソシアネートであってもよい。
【0036】
本発明に用いる第四級アンモニウム塩は一種類でもよく、二種類以上組み合わせてもよい。これらの第四級アンモニウム塩の使用量は、目的とする導電性の程度に応じて適宜変更することができるが、好ましくは、ポリオール類の100質量部に対して、0.01〜20質量部、より好ましくは0.05〜15質量部、更に好ましくは0.05〜10質量部である。
【0037】
また、本発明に係る導電性ウレタン樹脂を製造する際に、重合触媒として、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジシクロヘキシルメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、テトラメチルエチレンジアミン、トリエチレンジアミン等の有機アミン化合物:ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫酸化物、第一錫オクトエート等の錫化合物:カリウムアセテート、重炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム等の金属化合物を用いることができる。
【0038】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、バインダー樹脂、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、易滑剤、架橋剤等を併用することもできる。
【0039】
本発明のイオン導電剤は、アクリル樹脂等の汎用樹脂と直接混練することにより導電性樹脂組成物を得ることもできるが、本発明のようにポリオール類、ポリイソシアネート類と混合し重合させウレタン樹脂とすることが好ましい。後者の導電性ウレタン樹脂組成物は第四級アンモニウムカチオンがポリイソシアネート類と架橋することによって高分子中に固定されるため、経時変化によるブルーム、ブリードの発生が抑制され、長期にわたって安定した導電性を示す。また、上記導電性ウレタン樹脂組成物をプレポリマーとし、これを他の樹脂と混練して使用することも可能である。
【0040】
本発明の導電性ウレタン樹脂組成物は、ポリオール類及びポリイソシアネート類から重合されたウレタン樹脂に本発明の第四級アンモニウム塩が含有あるいは架橋されてなるものであり、該樹脂組成物を所望の形状に形成して用いるか、または用途に応じて本発明の導電性樹脂組成物を有機溶剤に溶解または微分散させて基体に塗布することにより導電性樹脂皮膜を形成させて用いることができる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明する。なお、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例中、「部」は「質量部」を表す。
【0042】
以下の各実施例及び比較例において、ポリオール類とポリイソシアネート類は下記のものを用いた。
【0043】
ポリオール類:「N1244」(第一工業製薬社製)、ポリエーテルポリオール(分子量1165、1分子のOH基数2)
ポリイソシアネート類:「コロネート2030」(日本ポリウレタン工業社製)、トリエチレンジイソシアネートをベースにイソシアヌレート環を有したポリイソシアネート(NCO含有率8%)
【0044】
(実施例1)
ポリオール(N1244)100部に対し、オレイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(ライオン・アクゾ社製、「エソカードO/12」(重量平均分子量408、エチレンオキサイド付加モル数1)を塩交換しTFSI塩にしたもの、以下「イオン導電剤1」と略記する。)3又は5部、ポリイソシアネート(コロネート2030)92〜95部、酢酸エチル120部加えて十分混合してウレタン樹脂を得た。このとき、OH基/NCO基の比は1.01であった。得られたウレタン樹脂を、市販のPETフィルム(50μm厚)上に、バーコーター#20を用いて塗工し、送風乾燥機にて、120℃10分で重合させて、導電性フィルムを形成させた。
【0045】
(実施例2〜6)
実施例2は実施例1で用いた「イオン導電剤1」をオレイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム−トリフルオロメタンスルホン酸(ライオン・アクゾ社製、「エソカードO/12」(重量平均分子量408、エチレンオキサイド付加モル数1)を塩交換しTf塩にしたもの、以下「イオン導電剤2」と略記する。)に変更した。このとき、OH基/NCO基の比は1.00であった。
実施例3は実施例1で用いた「イオン導電剤1」をポリオキシエチレンアルキル(C8−C18)メチルアンモニウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(ライオン・アクゾ社製、「エソカードC/25」(重量平均分子量911、エチレンオキサイド付加モル数15)を塩交換しTFSI塩にしたもの、以下「イオン導電剤3」と略記する。)に変更した。このとき、OH基/NCO基の比は1.01であった。
実施例4は実施例1で用いた「イオン導電剤1」をポリオキシエチレンアルキル(C8−C18)メチルアンモニウム−トリフルオロメタンスルホン酸(ライオン・アクゾ社製、「エソカードC/25」(重量平均分子量911、エチレンオキサイド付加モル数15)を塩交換しTf塩にしたもの、以下「イオン導電剤4」と略記する。)に変更した。このとき、OH基/NCO基の比は1.02であった。
実施例5は実施例1で用いた「イオン導電剤1」をラウリルビス(2−ヒドロキシエチル)エチルアンモニウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(ラウリルビス(2−ヒドロキシエチル)エチルアンモニウム−クロライドを塩交換しTFSI塩にしたもの、以下「イオン導電剤5」と略記する。)に変更した。このとき、OH基/NCO基の比は1.02であった。
実施例6は実施例1で用いた「イオン導電剤1」をラウリルビス(2−ヒドロキシエチル)エチルアンモニウム−トリフルオロメタンスルホン酸(ラウリルビス(2−ヒドロキシエチル)エチルアンモニウム−クロライドを塩交換しTf塩にしたもの、以下「イオン導電剤6」と略記する。)に変更した。このとき、OH基/NCO基の比は1.02であった。
実施例7は実施例1で用いた「イオン導電剤1」をオクチル(2−エトキシエタノール)ジメチルアンモニウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(オクチル(2−エトキシエタノール)ジメチルアンモニウム−クロライドを塩交換しTFSI塩にしたもの、以下「イオン導電剤7」と略記する。)に変更した。このとき、OH基/NCO基の比は1.01であった。
実施例8は実施例1で用いた「イオン導電剤1」をオクチル(2−エトキシエタノール)ジメチルアンモニウム−トリフルオロメタンスルホン酸(オクチル(2−エトキシエタノール)ジメチルアンモニウム−クロライドを塩交換しTf塩にしたもの、以下「イオン導電剤8」と略記する。)に変更した。このとき、OH基/NCO基の比は1.03であった。
実施例9は実施例1で用いた「イオン導電剤1」をオクチル(2−ヒドロキシエチル)ジエチルアンモニウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(オクチル(2−ヒドロキシエチル)ジエチルアンモニウム−クロライドを塩交換しTFSI塩にしたもの、以下「イオン導電剤9」と略記する。)に変更した。このとき、OH基/NCO基の比は1.02であった。
実施例10は実施例1で用いた「イオン導電剤1」をオクチル(2−ヒドロキシエチル)ジエチルアンモニウム−トリフルオロメタンスルホン酸(オクチル(2−ヒドロキシエチル)ジエチルアンモニウム−クロライドを塩交換しTf塩にしたもの、以下「イオン導電剤10」と略記する。)に変更した。このとき、OH基/NCO基の比は1.01であった。
それ以外は全て実施例1と同様にして導電性フィルムを形成させた。
【0046】
(比較例1〜5)
比較例1は実施例1で用いた「イオン導電剤1」をオレイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム−パークロレート(ライオン・アクゾ社製、「エソカードO/12」を塩交換しClO4塩にしたもの、以下「イオン導電剤11」と略記する。)に変更した。
比較例2は実施例1で用いた「イオン導電剤1」をポリオキシエチレンアルキル(C8−C18)メチルアンモニウム−パークロレート(ライオン・アクゾ社製、「エソカードC/25」を塩交換しClO4塩にしたもの、以下「イオン導電剤12」と略記する。)に変更した。
比較例3は実施例1で用いた「イオン導電剤1」をドデシルトリメチルアンモニウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(ドデシルトリメチルアンモニウム−クロライドを塩交換しTFSI塩にしたもの、以下「イオン導電剤13」と略記する。)に変更した。
比較例4は実施例1で用いた「イオン導電剤1」をラウリルトリメチルアンモニウム−トリフルオロメタンスルホン酸(ラウリルトリメチルアンモニウム−クロライドを塩交換しTf塩にしたもの、以下「イオン導電剤14」と略記する。)に変更した。
比較例5ではオクチルトリメチルアンモニウム−パークロレート(オクチルトリメチルアンモニウム−クロライドを塩交換しClO4塩にしたもの、以下「イオン導電剤15」と略記する。)に変更した。
それ以外は全て実施例1と同様にして導電性フィルムを形成させた。
【0047】
得られた導電性フィルムの導電性、環境依存性、ブリード性について以下の評価試験を行い、結果を表1に示した。
【0048】
(導電性と環境依存性の評価)
温度25℃で湿度20%(条件A)、40%(条件B)、60%(条件C)の各条件下における導電性を測定し、条件Aと条件Cとの比率(条件A/条件C)を環境依存性として評価した。それらの結果を表1に示す。なお、環境依存性は小さいほど好ましい。
【0049】
(ブリード性の評価)
導電性フィルムを、温度40℃、湿度80%の環境下で90日間放置した後、イオン導電剤のしみ出しを目視により観察し、ブリードが発生するか否か調べ、下記の基準で評価した。
『評価基準』
○:イオン導電剤のしみ出しがない。
×:イオン導電剤のしみ出しがある。
【0050】
【表1】

【0051】
表1に示すように実施例1〜10の導電性フィルムは導電性と環境依存性が良好で、かつブリード性が良好であるのに対し、比較例1〜2ではブリード性が良好であるが環境依存性が悪く、比較例3〜4では環境依存性が良好であるが、ブリード性が悪く、実施例5では環境依存性、ブリード性ともに悪い結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の導電性ウレタン樹脂は、導電性が良好で、しかも使用環境が変化しても導電率の変化が少なく、ブリードの発生を抑制しているため、導電性塗料、導電性接着剤、導電性フィルム等の導電性の要求される各種の用途に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)、
【化1】

(上式中、R及びRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい炭素数1〜18のアルキル基を示す。また、m及びnは1〜30の整数を示す。Xはビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸アニオン及び/又はトリフルオロメタンスルホン酸アニオンを示す。)
及び下記一般式(2)、
【化2】

(上式中、R〜Rはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい炭素数1〜18のアルキル基を示す。また、pは1〜30の整数を示す。X−はビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸アニオン及び/又はトリフルオロメタンスルホン酸アニオンを示す。)
で表されることを特徴とするイオン導電剤。
【請求項2】
請求項1に記載のイオン導電剤と、ポリオール類と、ポリイソシアネート類とを含有し、重合されてなることを特徴とする導電性ウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリオール類100重量部に対し、請求項1に記載のイオン導電剤が0.01〜20重量部含有され、ポリイソシアネート類と重合されてなることを特徴とする請求項2に記載の導電性ウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の導電性ウレタン樹脂組成物を用いて得られることを特徴とする導電性樹脂フィルム。

【公開番号】特開2009−144051(P2009−144051A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322673(P2007−322673)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000228349)日本カーリット株式会社 (269)
【Fターム(参考)】