説明

イオン注入シミュレーション方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はイオン注入シミュレーション方法に係り、特に半導体デバイス製造工程における多層構造の基板に対してイオン注入したときの、不純物分布及び点欠陥分布をシミュレーションにより求めるイオン注入シミュレーション方法に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体デバイス製造工程において、半導体基板に不純物領域を形成するなどのためイオン注入が広く行われているが、そのイオン注入を適切に行うためには基板内でのイオン濃度がどのような分布を示すか、つまり不純物分布がどのようなものになるか、また基板内での点欠陥分布がどのようになるかを予め把握しておく必要があり、そのために不純物分布及び点欠陥分布をシミュレーションにより求めるイオン注入シミュレーションが行われる。
【0003】図2に示すような多層構造基板に対する不純物分布及び点欠陥分布を求める従来のイオン注入シミュレーション方法は次のようにして行われている。図2の1層目からk層目の多層構造基板において、まずk=1、注入される1層目のドーズ量をQ1とし、続いてk>(層の数)であるかどうか判断し、k>(層の数)であれば、処理を終了し、k≦(層の数)であれば、ガウス型分布、結合ガウス型分布、ピアソン分布、ドュアルピアソン分布等を用いてk層の材質1層に定義される規格化された不純物分布Ik(x)を求める。不純物分布Ik(x)をガウス型分布で求める場合は、不純物分布Ik(x)は次式で表わされる。
【0004】
【数3】


ただし、(1)式中、Rpkはk層の不純物分布の材質に定義されるイオンの飛程、σkはk層の不純物分布の材質に定義されるモーメントで標準偏差、xは深さ方向の座標を示す。また、Ckはk層目の物質に変換されたデバイスの表面座標をxskとすると、
【0005】
【数4】


となるように、決める。ただし、(3)式中、diはi層目の層の幅(層厚)で、di=xi+1−xiである。そして、k層目の不純物分布fk(x)が次式により求められる。
【0006】
【数5】


次に、点欠陥分布が求められる。この点欠陥分布は、本発明者が先に提案した特開平9−45630号公報の(35)式に対応する次式により求めることができることが知られている。
【0007】
【数6】


ここで、(5)式中、fdk(x)はk層の点欠陥分布、Fkは(点欠陥の総量)/(不純物の総量)、Qkは前述したように、k層での不純物分布に対するドーズ量、Jdk(x)はモーメントRpk、σdk、γdk、βdk等から計算される規格化した点欠陥分布、σdk、γdk、βdkはk層の点欠陥分布の材質に定義されるモーメントでそれぞれ標準偏差、歪み、尖りを示す。また、Rpdkはk層の点欠陥分布の材質に定義される飛程である。
【0008】(5)式で使われている規格化された点欠陥分布Jdk(x)の定義がモーメントRpk、σdk、γdk、βdkから計算されるものとなっているが、この定義はモーメントに不純物のものと点欠陥のものと両方が混ざっていて不自然なため、規格化された点欠陥分布の定義をRpdk、σdk、γdk、βdkから計算されたものとし、関数名を新たにIdk(x)として説明する。このようにすると、Jdk(x)とIdk(x)の間には、 Idk(x)=Jdk(x+Rpk−Rpdk) (6)
の関係があるため、(5)式は次式に書き改めることができる。
【0009】
【数7】


ここで、不純物分布fk(x)が
【0010】
【数8】


となるのに類似して、点欠陥分布fdk(x)を次式で定義する。
【0011】
【数9】


そのため、規格化された点欠陥分布Idk(x)は次式
【0012】
【数10】


により規格化される。これにより、例えば2層目の点欠陥分布は、(8)式及び(9)式からQkを消去し、k=2とすることにより、
【0013】
【数11】


により、求めることができる。
【0014】この本発明者の提案になるイオン注入シミュレーション方法は、ガウス型分布、結合ガウス型分布、ピアソン型分布などの解析式を用いて行うシミュレーション方法であるため、解析式のシミュレーション方法の一つである。
【0015】一方、従来、イオン注入シミュレーション方法として、モンテカルロイオン注入シミュレーション方法も文献(Masami Hane and Masao Fukuma,"ION IMPLATION MODEL CONSIDERING CRYSTAL STRUCTURE EFFECTS",IEDM,(1988))に開示されている。このモンテカルロイオン注入シミュレーション方法では、半導体基板に対してイオンが注入されると、注入されたイオンは原子核に散乱を受けながら進み、エネルギーを失っていき、また原子核の周りに存在する電子との散乱によってもエネルギーを失う。このような過程を粒子一つ一つについてシミュレーションし、最終的に基板内で停止した粒子の分布をイオン注入後の不純物分布として得る。
【0016】また、イオンが結晶を構成している電子を弾き出す過程をシミュレーションすることにより、イオン注入後の空位(vacancy)や格子の隙間に粒子が侵入した格子間原子などの点欠陥の分布を計算することもできる。
【0017】しかし、このモンテカルロイオン注入シミュレーション方法では、注入されるイオンの一つ一つの散乱過程をシミュレーションするものであるので、シミュレーション結果を得るのに計算時間がかかるという問題がある。そこで、本発明者は特開平9−45630号公報により、前述した解析式によるイオン注入シミュレーションにより不純物分布と点欠陥分布のシミュレーション結果を短時間で得ることができるようにしたイオン注入シミュレーション方法を開示した。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】しかるに、モンテカルロイオン注入シミュレーション方法では、チャネリングしない条件でイオン注入を行った場合、シリコン基板内の点欠陥分布は酸化膜や窒化膜がある場合と、酸化膜や窒化膜等が無い場合とで殆ど変わらない結果が得られるのに対し、上記の公報記載のイオン注入シミュレーション方法では、酸化膜や窒化膜をシリコン基板上に形成すると、シリコン基板内の点欠陥分布が変化するため、点欠陥分布がモンテカルロイオン注入シミュレーション方法の点欠陥分布の結果と異なってしまう。
【0019】例えば、図4に示すように、モンテカルロイオン注入シミュレーション方法では、IIIで示す不純物分布やIVで示す点欠陥分布が得られるのに対し、上記の公報記載のイオン注入シミュレーション方法では、不純物分布はVで示すように、モンテカルロイオン注入シミュレーション方法により得られた不純物分布IIIと大差の無い結果が得られるが、点欠陥分布は、VIで示すように、モンテカルロイオン注入シミュレーション方法により得られた点欠陥分布IVに比べて異なってしまう。窒化膜や酸化膜がシリコン基板上にあると、解析式によるシミュレーション結果ではシリコン基板内の点欠陥分布が変化するためである。
【0020】本発明は以上の点に鑑みなされたもので、半導体基板上に酸化物や窒化物があっても、モンテカルロイオン注入シミュレーション方法と殆ど同じ半導体基板の点欠陥分布のシミュレーション結果を得ることができる、解析式を用いたイオン注入シミュレーション方法を提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】本発明は上記の目的を達成するため、多層構造基板に対してイオン注入したときの、各層の不純物分布及び点欠陥分布を、解析式を用いてシミュレーションにより求めるイオン注入シミュレーション方法において、イオン注入によるk層目の点欠陥分布fdk(x)を発生させる際、点欠陥分布fdk(x)と不純物分布f(x)との関係が、次式
【0022】
【数12】


(ただし、fdk(x)はk層の実際の点欠陥分布、f(x)はk層の不純物分布、Fはk層の(点欠陥の総量)/(不純物の総量)、xは多層構造基板の深さ方向の座標、xsはk層目の材質に変換された基板の表面座標)
を満足するように、k層目の材質に変換したときの基板表面座標から、点欠陥を定義しない材質の層についてk層目の材質と区別することなく点欠陥分布fdk(x)を発生させてシミュレーションするようにしたものである。
【0023】ここで、上記のFは、ベアの半導体基板又は点欠陥を定義しない材質の薄膜が表面に形成された半導体基板に対して、チャネリングしない条件でモンテカルロイオン注入シミュレーションで計算された不純物分布f(x)と点欠陥分布fd(x)とから次式
【0024】
【数13】


により予め計算されている値である。
【0025】また、本発明方法は、上記の目的を達成するため、多層構造基板に対してイオン注入したときの、各層の不純物分布及び点欠陥分布を、解析式を用いてシミュレーションにより求めるイオン注入シュミレーション方法において、各層について、規格化された不純物分布を求める第1のステップと、規格化された不純物分布から実際の不純物分布を計算する第2のステップと、点欠陥を定義する材質に変換したときの基板表面座標から、点欠陥を定義しない材質の層について点欠陥を定義する材質の層の材質と区別することなく、基準となる点欠陥分布を求める第3のステップと、基準となる点欠陥分布から、チャネリングが抑制されるイオン注入条件で実際の点欠陥分布を計算する第4のステップとを含むことを特徴とする。
【0026】ここで、上記の第4のステップは、チャネリングしない条件でモンテカルロイオン注入シミュレーションで計算された不純物分布と点欠陥分布から予め計算しておいた点欠陥の総量と不純物の総量の比と、第2のステップで求めた実際の不純物分布とを用いて、実際の点欠陥分布を計算する。
【0027】また、上記の第1のステップは、規格化された不純物分布をガウス型分布、ピアソン分布及びドュアルピアソン分布のうちのいずれか一つを用いて求めることを特徴とする。
【0028】更に、上記の第3のステップは、基準となる点欠陥分布をガウス型分布、ピアソン分布及びドュアルピアソン分布のうちのいずれか一つを用いて求め、点欠陥分布の規格化はしないことを特徴とする。
【0029】本発明は、酸化物や窒化物などの通常、点欠陥を定義しない材質の層中には点欠陥は生じないが、注入イオンによってシリコンなどの点欠陥を定義する材質の層と同じ程度のダメージを受けるため、点欠陥分布を求めるためには点欠陥を定義する材質の層であるか否かを区別する必要がないということに着目したものである。そこで、本発明では、チャネリングが抑制されるイオン注入条件でのシミュレーションを行う際、酸化物や窒化物などの通常、点欠陥を定義しない材質の層がある基板でも、これらの材質の層が存在しない基板でも、点欠陥を定義する材質の層内の点欠陥分布は同じ分布として点欠陥分布のシミュレーションをする。
【0030】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態について図面と共に説明する。図1は本発明になるイオン注入シミュレーション方法の一実施の形態のフローチャートを示す。この実施の形態では、図2に示したような、k層の多層構造基板に対してイオン注入したときの不純物分布および点欠陥分布をシミュレーションにより求めるものである。
【0031】図1において、まず、初期設定が行われる(ステップ11)。この初期設定では、変数kを初期値”1”に設定し、また注入されるドーズ量をQ1とする。続いて、変数kの値が多層構造基板の層の数より大であるか否か判定し(ステップ12)、kが層の数以下であれば、ガウス型分布、結合ガウス型分布、ピアソン分布、ドュアルピアソン分布等を用いて規格化された不純物分布Ik(x)を求める(ステップ13)。不純物分布Ik(x)をガウス型分布で求める場合は、不純物分布Ik(x)は次式で表わされる。
【0032】
【数14】


ただし、(12)式中、Rpkはk層の不純物分布の材質に定義されるイオンの飛程、σkはk層の不純物分布の材質に定義されるモーメントで標準偏差、xは深さ方向の座標を示す。また、Ckは規格化のための定数で、k層目の物質に変換されたデバイスの表面座標をxskとすると、
【0033】
【数15】


となるように決める。ただし、(14)式中、diはi層目の層の幅(層厚)で、di=xi+1−xiである。
【0034】次に、規格化された不純物分布Ik(x)から、実際の不純物分布fk(x)を次式により計算する(ステップ14)。
【0035】
【数16】


以上のステップ11〜14は、本発明者が先に開示した解析式によるイオン注入シミュレーション方法と同様である。
【0036】次に、k層での基準となる点欠陥分布Idk(x)を求める(ステップ15)。不純物分布と同様に、k層目の点欠陥分布をガウス型分布で求める場合は、点欠陥分布Idk(x)は次式により求める。
【0037】
【数17】


ただし、(16)式中、Rpdkはk層の点欠陥分布の材質に定義されるイオンの飛程、σdkはk層の点欠陥分布の材質に定義されるモーメントで標準偏差、xは深さ方向の座標を示す。
【0038】ここでは、規格化された点欠陥分布については特に規格化せず、Cdkは幾つでもよいことにする。そのため、ここでは、(16)式のIdk(x)を規格化された点欠陥分布でなく、基準となる点欠陥分布と呼ぶこととする。ただし、酸化膜のような通常、点欠陥を定義しない物質については、k層に定義されるモーメントRpdk及びσdkは定義されないので、ステップ15の基準となる点欠陥計算処理は行わない。
【0039】次に、基準となる点欠陥分布Idk(x)から、実際の点欠陥分布fdk(x)を次式により求める(ステップ16)。
【0040】
dk(x)=Qdkdk(x−xsk) (17)
ここで、Qdkは次式により定義する。
【0041】
【数18】


これは、次式により定義していることと同義である。
【0042】
【数19】


ここで、(19)式中、(点欠陥の総量)/(不純物の総量)の比であるFkは、ベアのウェハー又は薄い酸化膜等のついたウェハーに対して、チャネリングをしない条件でモンテカルロイオン注入シミュレーションで計算された不純物分布f(x)と点欠陥分布fd(x)とから次式により予め計算されている値である。
【0043】
【数20】


すなわち、この実施の形態では、(19)式から分かるように、各層の点欠陥分布fdk(x)は、その層の材質に変換したときのデバイス表面座標から求めており、酸化膜や窒化膜などのような通常、点欠陥を定義しない材質の層については特に区別せずに点欠陥分布を求めるようにしている。
【0044】次に、次層(k+1層目)の不純物分布及び点欠陥分布を求めるために、次層(k+1層目)のドーズ量Qk+1を次式により求める(ステップ17)。
【0045】
【数21】


そして、変数kの値を1だけインクリメントした後(ステップ18)、ステップ12に戻り、再び更新後のkの値がシミュレーション対象の多層構造基板の層の数より大であるかどうか比較判定する。以下、ステップ13〜18の計算処理を、ステップ12で変数kの値がシミュレーション対象の多層構造基板の層の数より大と判定されるまで、つまり多層構造基板のすべての層について、不純物分布と点欠陥分布を計算した後、処理を終了する(ステップ19)。
【0046】図3は2層の多層構造基板について、不純物分布と点欠陥分布とを求める様子を模式的に示す。まず、図3(a)に示すように、1層目の不純物分布を計算する。この1層目はここでは層厚がd1(=x2−x1)の酸化物(酸化膜)である。次に、図3(b)に示すように、酸化物(酸化膜)を2層目と同じシリコンに置き換えた場合の酸化物(酸化膜)の実効的な厚さを計算し、表面の座標xs2を求める。
【0047】その後、2層目の不純物と点欠陥分布とを計算する。このとき、点欠陥分布は、(19)式中のk=2とした次式
【0048】
【数22】


を満たす。
【0049】このように、1層目の酸化物や窒化物などの点欠陥を通常生じないような材質の層についても、注入イオンによってシリコン基板と同じ程度のダメージを受けるため、点欠陥分布を求める際には2層目のシリコン基板と酸化物や窒化物などの1層目とを区別する必要はないということが考えられる。そのため、酸化物や窒化物が存在しても、存在しなくても、シリコン基板内のダメージには影響せず、点欠陥分布にもあまり影響しない。不純物分布が変化すれば、シリコン基板内の点欠陥分布も変化するが、チャネリングしない条件では、酸化膜や窒化膜がピーク位置と同程度の厚さになってもあまり変化しない。
【0050】そこで、この実施の形態では、点欠陥分布を求める際には2層目のシリコン基板と酸化物や窒化物などの1層目とを区別することなく計算するようにしたため、図4にVIIで示すように、この実施の形態により求めた酸化膜や窒化膜の厚さを変化させたときの点欠陥分布は、従来のモンテカルロイオン注入シミュレーション法により求めた点欠陥分布IVと比較して、特にピーク付近のシミュレーション結果と一致することが確かめられた。
【0051】次に、この発明の他の実施の形態について説明する。この他の実施の形態では点欠陥分布を図5に示すような、ドュアルピアソン分布で計算するようにしたものである。ドュアルピアソン分布は、図5にVIIIで示すピアソン分布とIXで示すピアソン分布を足し合わせた分布であり、より複雑な分布を表現できる。
【0052】この実施の形態では、前記図1のステップ15において、以下のように動作する。すなわち、k層での基準となる点欠陥分布として、I1dk(x)とI2dk(x)とを求める。I1dk(x)とI2dk(x)と、k層に定義されたモーメントの一つで、I1dk(x)とI2dk(x)を足す割合ratiodkを用いて、後述のようにして基準となる点欠陥分布を求める。
【0053】点欠陥分布I1dk(x)に定義されたk層でのモーメントがRp1dk、σ1dk、γ1dk、β1dkとすると、点欠陥分布I1dk(x)はこれらのモーメントを満たすように計算される。また、もう一つの点欠陥分布I2dk(x)についても同様に、k層に定義されたモーメントを満たすように計算された分布である。ただし、点欠陥分布I1dk(x)及びI2dk(x)はそれぞれ次式を満たすように定められる。
【0054】
【数23】


次に、基準となる点欠陥分布Idk(x)を次式により求める。
【0055】
dk(x)=ratiodkI1dk(x)
+(1−ratiodk)I2dk(x) (24)
(24)式の右辺第1項が図5の分布VIIIであり、右辺第2項が図5の分布IXである。これらを加算することにより、基準となる点欠陥分布Idk(x)が得られる。ただし、酸化膜や窒化膜のような、通常、点欠陥を定義しない材質の層については、点欠陥のモーメントは定義されないので、上述のドュアルピアソン分布での計算は行わない。
【0056】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、チャネリングが抑制されるイオン注入条件でのシミュレーションを行う際、酸化物や窒化物などの通常、点欠陥を定義しない材質の層がある基板でも、これらの材質の層が存在しない基板でも、点欠陥を定義する材質の層内の点欠陥分布は同じ分布として点欠陥分布のシミュレーションをするようにしたため、点欠陥を定義しない材質の層の厚さを変化させた時の点欠陥を定義する材質の層の点欠陥分布を、モンテカルロイオン注入シミュレーションの点欠陥分布の結果に特にピーク付近において一致させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明になるイオン注入シミュレーション方法の一実施の形態のフローチャートである。
【図2】イオン注入される多層構造基板の一例の概略構成図である。
【図3】2層基板に対して本発明方法により不純物分布と点欠陥分布を求めることを説明する模式図である。
【図4】本発明方法による点欠陥分布のシミュレーション結果と、モンテカルロイオン注入シミュレーション等による点欠陥分布及び不純物分布のシミュレーション結果とを対比して示す図である。
【図5】本発明になるイオン注入シミュレーション方法の他の実施の形態で用いるドュアルピアソン分布を示す図である。
【符号の説明】
11〜19 本発明方法の一実施の形態の処理ステップ
I、III 、V 不純物分布
II、IV、VI 点欠陥分布
VII 本発明の実施の形態の点欠陥分布

【特許請求の範囲】
【請求項1】 多層構造基板に対してイオン注入したときの、各層の不純物分布及び点欠陥分布を、解析式を用いてシミュレーションにより求めるイオン注入シミュレーション方法において、イオン注入によるk層目の点欠陥分布fdk(x)を発生させる際、該点欠陥分布fdk(x)と前記不純物分布fk(x)との関係が、次式
【数1】


(ただし、fdk(x)はk層の実際の点欠陥分布、fk(x)はk層の不純物分布、Fkはk層の(点欠陥の総量)/(不純物の総量)、xは前記多層構造基板の深さ方向の座標、xskはk層目の材質に変換された基板の表面座標)を満足するように、k層目の材質に変換したときの基板表面座標から、点欠陥を定義しない材質の層についてk層目の材質と区別することなく該点欠陥分布fdk(x)を発生させてシミュレーションすることを特徴とするイオン注入シミュレーション方法。
【請求項2】 前記Fkは、ベアの半導体基板又は点欠陥を定義しない材質の薄膜が表面に形成された半導体基板に対して、チャネリングしない条件でモンテカルロイオン注入シミュレーションで計算された不純物分布f(x)と点欠陥分布fd(x)とから次式
【数2】


により予め計算されている値であることを特徴とする請求項1記載のイオン注入シミュレーション方法。
【請求項3】 多層構造基板に対してイオン注入したときの、各層の不純物分布及び点欠陥分布を、解析式を用いてシミュレーションにより求めるイオン注入シュミレーション方法において、前記各層について、規格化された不純物分布を求める第1のステップと、前記規格化された不純物分布から実際の不純物分布を計算する第2のステップと、点欠陥を定義する材質に変換したときの基板表面座標から、点欠陥を定義しない材質の層について前記点欠陥を定義する材質の層の材質と区別することなく、基準となる点欠陥分布を求める第3のステップと、前記基準となる点欠陥分布から、チャネリングが抑制されるイオン注入条件で実際の点欠陥分布を計算する第4のステップとを含むことを特徴とするイオン注入シミュレーション方法。
【請求項4】 前記第4のステップは、チャネリングしない条件でモンテカルロイオン注入シミュレーションで計算された不純物分布と点欠陥分布から予め計算しておいた点欠陥の総量と不純物の総量の比と、前記第2のステップで求めた前記実際の不純物分布とを用いて、前記実際の点欠陥分布を計算することを特徴とする請求項3記載のイオン注入シミュレーション方法。
【請求項5】 前記第1のステップは、前記規格化された不純物分布をガウス型分布、ピアソン分布及びドュアルピアソン分布のうちのいずれか一つを用いて求めることを特徴とする請求項3又は4記載のイオン注入シミュレーション方法。
【請求項6】 前記第3のステップは、前記基準となる点欠陥分布をガウス型分布、ピアソン分布及びドュアルピアソン分布のうちのいずれか一つを用いて求め、点欠陥分布の規格化はしないことを特徴とする請求項3又は4記載のイオン注入シミュレーション方法。

【図2】
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【図1】
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【図5】
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【図3】
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【図4】
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【特許番号】特許第3228220号(P3228220)
【登録日】平成13年9月7日(2001.9.7)
【発行日】平成13年11月12日(2001.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−133060
【出願日】平成10年5月15日(1998.5.15)
【公開番号】特開平11−329994
【公開日】平成11年11月30日(1999.11.30)
【審査請求日】平成10年5月15日(1998.5.15)
【前置審査】 前置審査
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【参考文献】
【文献】特開 平9−45630(JP,A)