イオン液体及びその製造方法
【課題】種々のイオン密度を有し、非水系有機溶媒への溶解性に優れた、しかも経時安定性に優れたイオン液体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】式(1)
(ただし、Yは置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、mは3〜20の整数を示し、X+はN+を含む炭素数2〜30の置換基)、または式(2)
(ただし、nは3〜20の整数を示し、X+はN+を含む炭素数2〜30の置換基)で表される重合体からなるイオン液体。
【解決手段】式(1)
(ただし、Yは置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、mは3〜20の整数を示し、X+はN+を含む炭素数2〜30の置換基)、または式(2)
(ただし、nは3〜20の整数を示し、X+はN+を含む炭素数2〜30の置換基)で表される重合体からなるイオン液体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン液体及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、種々のイオン密度を有し、非水系有機溶媒への溶解性に優れた、しかも経時安定性に優れたイオン液体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、常温溶融塩やイオン性液体とも呼ばれていたイオン液体は、リチウム二次電池、太陽電池、アクチュエータ及び電気二重層キャパシタなどの各種電気化学デバイス用の電解質、反応媒体、有機合成の触媒としての応用可能性のために最近、注目されている。この場合、イオン液体は、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン等の有機溶媒に希釈して使用されている。
【0003】
また、近年、グリーンサステイナブルケミストリーの観点からイオン液体が注目されており、種々の有機合成反応や酵素反応の溶媒として使用可能であることが報告されている(非特許文献1)。この用途では、不揮発性、不燃性を有するイオン液体を、反応溶媒として用いるので反応生成物をうまく分離でき、溶媒、酵素、試薬が繰り返し再利用可能となる。この場合、反応性を制御するため様々なイオン密度を有する安定なイオン液体が提供されることが望ましい。
【0004】
イオン液体の使用例として、例えば特許文献1には、イオン液体を用いる電解液及び色素増感型太陽電池として、ヨウ化物イオンを含むイオン液体の粘度を低下させるために非イオン性の有機化合物であるポリエチレングリコールジアルキルエーテルを用いることが開示されている。特許文献2には、イオン液体を用いる電気剥離性粘着剤組成物として、イオン液体の移動を助けるためポリエチレングリコールを用いることが開示されている。特許文献3には、金属電着法に用いるイオン液体として、ポリオキシアルキレン基を有するアンモニウムクロリド塩、アンモニウムサルフェート塩が開示されている。
【0005】
イオン液体と有機溶媒を使用して製造した電解液、反応溶媒を用いた場合、有機溶媒は揮発性がありまた、系内のイオン密度や濃度が不安定な場合が多くあるという問題点があった。また、特許文献1、2に開示された技術は、イオン液体とこれを希釈する不揮発性媒体を用いるものであり、別々の成分をそれぞれの用途に応じて調整して使用する必要があり、取り扱いが困難であるという問題点があった。特許文献3に開示された技術は、反応溶媒として揮発性有機溶媒を使用するものであり、反応後蒸発により溶媒を除去する必要があり、環境への負荷やプロセスコストが増大する可能性があるという問題点があった。
【0006】
そこで、各種用途に使用されるために種々のイオン密度を有し、しかも安定な電解液、反応溶媒を製造可能なイオン液体を開発することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−231008号公報
【特許文献2】特開2010−37355号公報
【特許文献3】特表2009−526910号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】T.Welton, Chem. Rev., 1999, 99, 2071
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記問題点に鑑み、本発明は、希釈する媒体を必要としないイオン液体であって、種々のイオン密度を有し、しかも経時安定性に優れたイオン液体を提供することを目的とする。また、本発明は、そのイオン液体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、アンモニウムイオン、CH2CH(−OH)CH2、[CH2CH2O]n、ヨウ化物イオンを有する重合体であり、[CH2CH2O]nの重合度を調整することにより、種々のイオン密度を有するイオン液体を供給可能であり、しかも非水系有機溶媒への溶解性に優れ、経時安定性に優れたイオン液体を合成できることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)
【化1】
(ただし、Yは置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、mは3〜20の整数を示し、X+はN+を含む炭素数2〜30の置換基)
または下記一般式(2)
【化2】
(ただし、nは3〜20の整数を示し、X+はN+を含む炭素数2〜30の置換基)
で表される重合体からなるイオン液体に関する。
【0012】
本発明のイオン液体は、一般式(1)、(2)におけるX+I-が、下記一般式(3)
【化3】
(ただし、R1は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR1、R2はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基により置換されていてもよい)で表される置換基の
下記一般式(4)
【化4】
(R7は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基を示す)
で表されるヨウ化アルキルによる塩であるイオン液体であることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、下記一般式(5)
【化5】
(ただし、R1は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR1、R2はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基により置換されていてもよく、Yは置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、mは3〜20の整数を示す)
または下記一般式(6)
【化6】
(ただし、R3は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R4は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR3、R4はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基を有してもよく、R5は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R6は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR5、R6はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基を有してもよく、nは3〜20の整数を示す)
で表されるアミン化合物と
下記一般式(4)
【化7】
(R7は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基を示す)
で表されるヨウ化アルキルとの塩生成反応により生成される重合体であるイオン液体にも関する。
【0014】
さらに、本発明は、上記一般式(5)または上記一般式(6)で表されるアミン化合物と、上記一般式(4)で表わされるヨウ化アルキルとを反応させてイオン液体を製造する製造方法にも関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のイオン液体は、主骨格にポリエチレングリコールユニット及びヒドロキシプロピル基が結合している重合体からなるもので、希釈する等のための媒体を必要とせず、[CH2CH2O]nの繰り返し単位数(n数)を変えることにより、種々のイオン密度を有するイオン液体とすることができる。また、合成されたイオン液体は、非水系有機溶媒への溶解性に優れ、しかも経時安定性にも優れているので、様々な用途に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1で得たイオン液体のIRスペクトル図である。
【図2】実施例2で得たイオン液体のIRスペクトル図である。
【図3】実施例3で得たイオン液体のIRスペクトル図である。
【図4】実施例4で得たイオン液体のIRスペクトル図である。
【図5】実施例5で得たイオン液体のIRスペクトル図である。
【図6】実施例6で得たイオン液体のIRスペクトル図である。
【図7】実施例7で得たイオン液体のIRスペクトル図である。
【図8】実施例8で得たイオン液体のIRスペクトル図である。
【図9】実施例9で得たイオン液体のIRスペクトル図である。
【図10】実施例10で得たイオン液体のIRスペクトル図である。
【図11】実施例11で得たイオン液体のIRスペクトル図である。
【図12】実施例12で得たイオン液体のIRスペクトル図である。
【図13】実施例13で得たイオン液体のIRスペクトル図である。
【図14】実施例14で得たイオン液体のIRスペクトル図である。
【図15】実施例15で得たイオン液体のIRスペクトル図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明においてイオン液体とは、アニオンとカチオンの組合せからなる100℃以下の融点を有し、常温において液体を構成する化合物をいう。
【0018】
本発明のイオン液体は、下記一般式(1)
【化8】
(ただし、Yは置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、mは3〜20の整数を示し、X+はN+を含む炭素数2〜30の置換基)
または下記一般式(2)
【化9】
(ただし、nは3〜20の整数を示し、X+はN+を含む炭素数2〜30の置換基)
で表される重合体からなる。
【0019】
本発明のイオン液体は、主骨格にポリエチレングリコールユニット及びヒドロキシプロピル基が結合している重合体からなり、これら主骨格の末端にアンモニウムイオン、ヨウ化物イオンを1種又は2種有するもので、 [CH2CH2O]nの繰り返し単位数(n数)を変えることにより、種々のイオン密度を有するイオン液体とすることができる。
【0020】
本発明において、一般式(1)、(2)のX+I-は、下記一般式(3)
【化10】
(ただし、R1は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR1、R2はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基により置換されていてもよい)で表される置換基の
下記一般式(4)
【化11】
(R7は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基を示す)
で表されるヨウ化アルキルによる塩であることが好ましい。
【0021】
また、本発明は、下記一般式(5)
【化12】
(ただし、R1は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR1、R2はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基により置換されていてもよく、Yは置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、mは3〜20の整数を示す)
または下記一般式(6)
【化13】
(ただし、R3は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R4は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR3、R4はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基を有してもよく、R5は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R6は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR5、R6はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基を有してもよく、nは3〜20の整数を示す)
で表されるアミン化合物と
下記一般式(4)
【化14】
(R7は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基を示す)
で表されるヨウ化アルキルとの塩生成反応により生成される重合体であるイオン液体であることが好ましい。
【0022】
本発明において、具体的なアミン化合物は、一般式(5)のアミン化合物I、又は一般式(6)のアミン化合物IIを用いることができる。次に、アミン化合物I、アミン化合物IIを示し、更にそのイオン液体の製法を示す。
【0023】
[アミン化合物I]
【化15】
【0024】
一般式(5)において、R1は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR1、R2はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基により置換されていてもよい。
炭素数1〜10の炭化水素基としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基、フェニル基、ベンジル基が例示できる。
炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが例示でき、これらは直鎖であってもよく、分岐してもよい。炭素数1〜10のアルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、へキセニル基、シクロヘキセニル基、アリル基などが例示でき、これらは直鎖であってもよく、分岐してもよく、また、二重結合が適当な位置にあってよい。置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基中の置換基としては、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基、ヒドロキシ基、シアノ基、メチル基、エチル基等が例示できる。
【0025】
R1とR2はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成する場合、その含窒素複素環は、不飽和結合を有していてもよく、例えば、ピロリジン、ピペリジン、イミダゾール、ピラゾール等が挙げられる。また、該複素環は酸素原子を含んでいてもよく、例えばモルホリン等が挙げられる。なお、これら複素環は置換基を有してもよく、そのような置換基としては、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基、ヒドロキシ基、シアノ基、メチル基、エチル基等が例示できる。
【0026】
アミン化合物I中の置換基NR1R2としては、具体的には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジエタノールアミノ基、ジアリルアミノ基、イミダゾリノ基、モルホリノ基、p−メチルアニリノ基、p−エチルアニリノ基等を用いることができる。
【0027】
一般式(5)において、Yは置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示す。
炭素数1〜20の炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルケニル基、フェニル基、ベンジル基が例示できる。
炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、アラキル基などが例示でき、これらは直鎖であってもよく、分岐してもよい。炭素数1〜20のアルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、へキセニル基、シクロヘキセニル基、アリル基などが例示でき、これらは直鎖であってもよく、分岐してもよく、また、二重結合が適当な位置にあってよい。
置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基中の置換基としては、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基、ヒドロキシ基、シアノ基、メチル基、エチル基等が例示できる。
【0028】
一般式(5)において、mは3〜20の整数を示す。
【0029】
アミン化合物Iとしては、NR1R2がジエチルアミノ基である場合、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−フェノキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−エトキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−プロポキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−ブトキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−ペンチルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−ヘキシルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−ヘプチルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−オクチルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−ノニルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−デシルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−ウンデシルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−ドデシルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−トリデシルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−テトラデシルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−ペンタデシルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−アリルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−シクロヘキシルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−フェノキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−ベンジルオキシ−ポリ(オキシエチレン)等のジエチルアミノ体を例示することができる。オキシエチレンの重合度mは3〜20の整数であるが、4〜17の整数が好ましい。
【0030】
また、アミン化合物Iとしては、NR1R2がジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジメタノールアミノ基、ジエタノールアミノ基、ジアリルアミノ基、イミダゾリノ基、モルホリノ基、p−メチルアニリノ基、p−エチルアニリノ基の場合、上記のジエチルアミノ体のジエチルアミノをそれぞれのアミノ基に置き換えたものを例示できる。
【0031】
[アミン化合物Iの製造]
アミン化合物Iの製造は、例えば、次のとおりである。一般式(7)で表わされるアミンと一般式(8)で表わされるグリシジルオキシ化合物とを両者、等モル量と反応させて製造することができる。
【0032】
一般式(7)で表わされるアミン
【化16】
(ただし、R1は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR1、R2はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基により置換されていてもよい)
【0033】
R1、R2は前記アミン化合物に記載したとおりである。このアミンとして具体的には、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジエタノールアミン、ジアリルアミン、イミダゾール、モルホリン、p−メチルアニリン、p−エチルアニリンが好適である。
【0034】
一般式(8)で表わされるグリシジルオキシ化合物
【化17】
(ただし、Yは置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、mは3〜20の整数を示す)
【0035】
一般式(8)で表わされるグリシジルオキシ化合物は、好ましくは、α−グリシジル−ω−メトキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−グリシジル−ω−エトキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−グリシジル−ω−プロポキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−グリシジル−ω−ブトキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−グリシジル−ω−ペンチルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−グリシジル−ω−ヘキシルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−グリシジル−ω−ヘプチルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−グリシジル−ω−オクチルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−グリシジル−ω−ノニルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−グリシジル−ω−デシルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−グリシジル−ω−ウンデシルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−グリシジル−ω−ドデシルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−グリシジル−ω−トリデシルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−グリシジル−ω−テトラデシルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−グリシジル−ω−ペンタデシルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−グリシジル−ω−アリルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−グリシジル−ω−シクロヘキシルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−グリシジル−ω−フェノキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−グリシジル−ω−ベンジルオキシ−ポリ(オキシエチレン)を用いることができる。オキシエチレンの重合度mは3〜20の整数であるが、4〜17の整数が好ましい。
【0036】
得られるアミン化合物Iが3級アミンである場合、反応率は、例えば過塩素酸滴定等にて求めることができ、反応率が低い場合、例えば95%以下の場合、原料のグリシジルオキシ化合物をさらに少しずつ添加して反応させ反応率が99%以上とさせることが好ましい。反応溶媒は、無溶媒が好ましいが、水、メタノール、エタノール等のアルコール、アセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、N,N'-ジメチルアセトアミド、N,N'−ジメチルホルムアミド、N,N'−ジメチルスルホキシド等でもよい。反応温度は、通常、30〜80℃が好ましい。反応時間は、通常、1〜48時間である。
【0037】
[アミン化合物II]
【化18】
【0038】
一般式(6)において、R3は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R4は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR3、R4はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基を有してもよい。R3、R4は、R1、R2で説明したのと同じであり、R1、R2の説明において、それぞれ、R3、R4と置き換えたのと同様である。
【0039】
また、一般式(6)において、R5は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R6は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR5、R6はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基を有してもよい。R5、R6はR1、R2で説明したのと同じであり、それぞれ、R5、R6と置き換えたのと同様である。アミン化合物IIの製造のしやすさから,R5、R6は、それぞれR3、R4と同じであることが好ましい。
【0040】
アミン化合物II中の置換基NR3R4またはNR5R6としては、具体的には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジエタノールアミノ基、ジアリルアミノ基、イミダゾリノ基、モルホリノ基、p−メチルアニリノ基、p−エチルアニリノ基等を用いることができる。
【0041】
一般式(6)において、nは3〜20の整数を示す。
【0042】
アミン化合物IIとしては、α−[(3−(ジメチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル)−ω−[3−(ジメチルアミノ)−2−ヒドロキシプロポキシ]−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロポキシ]−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジプロピルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−[3−(ジプロピルアミノ)−2−ヒドロキシプロポキシ]−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエタノールアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−[3−(ジエタノールアミノ)−2−ヒドロキシプロポキシ]−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジアリルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−[3−(ジアリルアミノ)−2−ヒドロキシプロポキシ]−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−イミダゾリノ−2−ヒドロキシプロピル]−ω−[3−イミダゾリノ−2−ヒドロキシプロポキシ]−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−イミダゾリノ−2−ヒドロキシプロピル]−ω−[3−イミダゾリノ−2−ヒドロキシプロポキシ]−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−モルホリノ−2−ヒドロキシプロピル]−ω−[3−モルホリノ−2−ヒドロキシプロポキシ]−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(p−メチルアニリノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−[3−(p−メチルアニリノ)−2−ヒドロキシプロポキシ]−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(p−エチルアニリノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−[3−(p−エチルアニリノ)−2−ヒドロキシプロポキシ]−ポリ(オキシエチレン)を例示することができる。オキシエチレンの重合度nは3〜20の整数を示すが、4〜18の整数が好ましい。
【0043】
[アミン化合物IIの製造]
アミン化合物IIの製造について、R5、R6が、それぞれR3、R4と同じである場合を例に以下に説明する。一般式(7)で表わされるアミンと一般式(9)で表わされるグリシジルオキシ化合物とを用い、一般式(9)で表わされるグリシジルオキシ化合物を一般式(7)で表わされるアミンの2倍モル量と反応させて製造することが好ましい。
【0044】
一般式(7)で表わされるアミン
【化19】
(ただし、R1は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR1、R2はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基により置換されていてもよい)
【0045】
一般式(9)で表わされるグリシジルオキシ化合物
【化20】
(ただし、nは3〜20の整数を示す)
【0046】
反応率は、例えば過塩素酸滴定等にて求めることができ、反応率が低い場合、例えば95%以下の場合、原料のジグリシジルオキシ化合物をさらに少しずつ添加して反応させ反応率が99%以上とさせることが好ましい。反応溶媒は、無溶媒が好ましいが、水、メタノール、エタノール等のアルコール、アセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、N,N'−ジメチルアセトアミド、N,N'−ジメチルホルムアミド、N,N'−ジメチルスルホキシド等でもよい。反応温度は、通常、20〜60℃が好ましい。反応時間は、通常、1〜48時間である。
【0047】
[イオン液体の製造]
本発明におけるイオン液体は、上記一般式(5)のアミン化合物又は一般式(6)のアミン化合物と、一般式(4)で示されるヨウ化アルキルとを塩形成反応することにより合成することができる。
【0048】
一般式(4)のヨウ化アルキル
【化21】
R7は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基を示す。炭素数1〜10の炭化水素基としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基、フェニル基、ベンジル基が例示できる。炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが例示でき、これらは直鎖であってもよく、分岐してもよい。炭素数1〜10のアルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、へキセニル基、シクロヘキセニル基、アリル基などが例示でき、これらは直鎖であってもよく、分岐しても良く、また、二重結合が適当な位置にあってよい。
置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基中の置換基としては、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基、ヒドロキシ基、シアノ基、メチル基、エチル基等が例示できる。
【0049】
一般式(4)のヨウ化アルキルとしては、好ましくはヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、ヨウ化ブチル、ヨウ化ペンチル、ヨウ化ヘキシル、ヨウ化ヘプチル、ヨウ化オクチル、ヨウ化ノニル、ヨウ化デシルを用いることができる。
【0050】
アミン化合物Iとヨウ化アルキルとを反応させる場合、ヨウ化アルキルの量は、アミン化合物Iと等モル量を用い、また、アミン化合物IIとヨウ化アルキルとを反応させる場合、ヨウ化アルキルの量は、アミン化合物IIの2倍モル量を用いることが一般的である。反応条件は、無溶媒が好ましく、水、メタノール、エタノール等のアルコール、アセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリル、N,N'−ジメチルアセトアミド、N,N'−ジメチルホルムアミド、N,N'-ジメチルスルホキシド等でもよい。反応温度は、通常、40〜80℃が好ましい。反応時間は、通常、1〜48時間である。
【0051】
本発明のイオン液体は、リチウム二次電池、燃料電池、太陽電池、電気二重層キャパシタ等の電気化学デバイス、化学反応の溶剤、潤滑油として好適である。なお、本発明のイオン液体を電気化学デバイスのための電解質材料として用いるに当たり、上記本発明のイオン液体は、1種を単独で用いてもよく、複数種を任意の割合で組み合わせて用いてもよい。また、イオン液体を他の電解質(例えば、Nafionなど)に混合しても使用することもできる。
【0052】
本発明のイオン液体を用いて電解液を調製した場合に、無溶媒、または従来よりも有機溶媒を少なく用いることができ、更に、低温時に電解質塩が析出することがないため、低温特性に優れるので蓄電デバイスに用いることができ、様々な化学反応のための溶媒に用いるためのイオン液体を提供しうる。
【0053】
本発明は、有機合成の溶媒、溶媒抽出法(例えば、固体から所望の成分を除去するための)の溶媒、ガスクロマトグラフィーの担体、滑剤、作動流体もしくは殺生物剤における、またはそれらとしての、本発明のイオン液体の使用を更に提供する。また、触媒反応、液化、核燃料再処理、燃料電池、電気化学用途、光学(光電子を含む)系、浸透気化、薬物送達、接着またはセンサーにおける本発明のイオン液体の使用を更に提供する。
【実施例】
【0054】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0055】
[実施例1]
(1)α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−フェノキシ−ポリ(オキシエチレン)(重合度5)の合成
温度計、還流冷却管を備えた100ml三口フラスコに、ジエチルアミン14.63g(0.20モル)、デナコールEX−145(ナガセケムテックス株式会社製)すなわちα−グリシジル−ω−フェノキシ−ポリ(オキシエチレン)(重合度5)74.09g(0.20モル)を入れ、40℃に加温し、攪拌により均一に溶解した。その後60℃に加温し、反応を行った。反応は、過塩素酸滴定により、反応率が99%を超えるまでさらにデナコールEX−145(11.35g,0.03モル)を少しずつ加えながら反応を行い、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−フェノキシ−ポリ(オキシエチレン)(重合度5)を黄色の均一透明液体として得た。
【0056】
(2)α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−フェノキシ−ポリ(オキシエチレン)(重合度約5)のヨウ化メチル塩の合成
得られた均一透明液体にヨウ化メチル28.39g(0.20モル)を1時間かけ滴下添加し、室温下24時間反応を行い、表1に示すα−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−フェノキシ−ポリ(オキシエチレン)(重合度約5)のヨウ化メチル塩を得た。なお、ナトリウムテトラフェニルホウ素滴定により、反応率は99%以上となったことを確認した。図1にこの重合体のIRスペクトルを示すが、3600-1〜3400cm-1(OH由来)、3300cm-1(アンモニウム塩由来)、1095cm-1(C−O−C由来)よりこの構造を支持している。
【0057】
[実施例2−15]
アミン及び原料のポリオキシエチレンの種類と使用量(モル)を表1の通り変更した以外は、実施例1と同様の操作を行ない、表1に示す重合体のヨウ化メチル塩を得た。なお、原料のヨウ化メチルの使用モル量は、使用したアミンのモル量と同じにした。アミンの量は、ポリオキシエチレンとしてSR−8EG(阪本薬品工業株式会社製)を用いた場合、ポリオキシエチレンの2倍のモル量を目安として用い、その他の場合は、等モル量を目安とした。図2〜15にこの重合体のIRスペクトルを示すが、3600-1〜3400cm-1(OH由来)、3300cm-1(アンモニウム塩由来)、1095cm-1(C−O−C由来)よりこの構造を支持している。
【0058】
【表1−1】
【表1−2】
【0059】
注)
EX−145:α−グリシジル−ω−フェノキシ−ポリ(オキシエチレン)重合度5、すなわちα-(2-oxiranylmethyl)-ω-phenoxy-poly(oxy-1,2-ethanediyl) (ナガセケムテックス株式会社製)
EX−171:α−グリシジル−ω−ドデシルオキシ−ポリ(オキシエチレン)重合度15、すなわちα-dodecyl-ω-(2-oxiranylmethoxy)-poly(oxy-1,2-ethanediyl)(ナガセケムテックス株式会社製)
SR−8EG:α−グリシジル−ω−グリシジルオキシ−ポリ(オキシエチレン)重合度5、すなわちα-(2-oxiranylmethyl)-ω-(2-oxiranylmethoxy)-poly(oxy-1,2-ethanediyl)
(阪本薬品工業株式会社製)
EPM−9:α−グリシジル−ω−ブトキシ−ポリ(オキシエチレン)重合度4、すなわちα-butyl-ω-(2-oxiranylmethoxy)-poly(oxy-1,2-ethanediyl)(阪本薬品工業株式会社製)
【0060】
[比較例1]
N−メチルモルホリンのヨウ化メチル塩の合成
温度計、還流冷却管を備えた100ml三口フラスコに、N−メチルモルホリン20.21g(0.20モル)、ヨウ化メチル28.39g(0.20モル)を1時間かけ滴下添加し、室温下24時間反応を行い、N−メチルモルホリンのヨウ化メチル塩を得た。その性状は白色固体であった。
【0061】
[比較例2]
N,N−ジアリルエチルアミンのヨウ化メチル塩の合成
温度計、還流冷却管を備えた100ml三口フラスコに、N,N−ジアリルエチルアミン25.04g(0.20モル)、ヨウ化メチル28.39g(0.20モル)を1時間かけ滴下添加し、室温下24時間反応を行い、N,N−ジアリルエチルアミンのヨウ化メチル塩を得た。その性状は白色固体であった。
【0062】
[イオン液体の物性評価]
イオン液体の物性について、(1)外観、透明性、(2)溶解性、(3)凍結温度、(4)経時安定性について以下に述べる手法で、評価した。
【0063】
(1)外観、透明性:実施例1〜15で得られた重合体のヨウ化メチル塩は、すべて、少なくとも0〜100℃で液体であり、外観を目視すると透明であり、表1に示すとおり黄色透明液体、茶黄色透明液体、淡黄色透明液体、赤色透明液体、ないし無色透明液体であった。
【0064】
(2)溶解性:実施例1〜15で得られた重合体は、すべてアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、炭酸プロピレンに室温で溶解した。実施例14で得られたイオン液体の各種溶媒への溶解性を表2に示す。広範囲な有機溶媒に溶解可能であることが判明した。なお、溶解性は、室温においてイオン液体が溶媒100gに10g以上溶けたとき「溶解」とし、10g未満の時「不溶」とした。
【0065】
【表2】
【0066】
(3)凍結温度:実施例1〜15で得られたイオン液体の凍結温度を表3に示す。
【0067】
【表3】
【0068】
(4)経時安定性:経時安定性はガードナー法を用いた色相、及びFT−IRスペクトルについて経時変化を調査した。結果、作成から2,3ヶ月経過しても、色相、及びFT−IRスペクトル等の液体の性状は変化しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のイオン液体は、リチウム二次電池、燃料電池、太陽電池、電気二重層キャパシタ等の電気化学デバイス、化学反応の溶剤、また潤滑油として好適である。本発明は、有機合成の溶媒、溶媒抽出法(例えば、固体から所望の成分を除去するための)の溶媒、ガスクロマトグラフィーの担体、滑剤、作動流体もしくは殺生物剤における、またはそれらとしての、本発明のイオン液体の使用を更に提供する。また、触媒反応、液化、核燃料再処理、燃料電池、電気化学用途、光学(光電子を含む)系、浸透気化、薬物送達、接着またはセンサーにおける本発明のイオン液体の使用を更に提供する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン液体及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、種々のイオン密度を有し、非水系有機溶媒への溶解性に優れた、しかも経時安定性に優れたイオン液体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、常温溶融塩やイオン性液体とも呼ばれていたイオン液体は、リチウム二次電池、太陽電池、アクチュエータ及び電気二重層キャパシタなどの各種電気化学デバイス用の電解質、反応媒体、有機合成の触媒としての応用可能性のために最近、注目されている。この場合、イオン液体は、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン等の有機溶媒に希釈して使用されている。
【0003】
また、近年、グリーンサステイナブルケミストリーの観点からイオン液体が注目されており、種々の有機合成反応や酵素反応の溶媒として使用可能であることが報告されている(非特許文献1)。この用途では、不揮発性、不燃性を有するイオン液体を、反応溶媒として用いるので反応生成物をうまく分離でき、溶媒、酵素、試薬が繰り返し再利用可能となる。この場合、反応性を制御するため様々なイオン密度を有する安定なイオン液体が提供されることが望ましい。
【0004】
イオン液体の使用例として、例えば特許文献1には、イオン液体を用いる電解液及び色素増感型太陽電池として、ヨウ化物イオンを含むイオン液体の粘度を低下させるために非イオン性の有機化合物であるポリエチレングリコールジアルキルエーテルを用いることが開示されている。特許文献2には、イオン液体を用いる電気剥離性粘着剤組成物として、イオン液体の移動を助けるためポリエチレングリコールを用いることが開示されている。特許文献3には、金属電着法に用いるイオン液体として、ポリオキシアルキレン基を有するアンモニウムクロリド塩、アンモニウムサルフェート塩が開示されている。
【0005】
イオン液体と有機溶媒を使用して製造した電解液、反応溶媒を用いた場合、有機溶媒は揮発性がありまた、系内のイオン密度や濃度が不安定な場合が多くあるという問題点があった。また、特許文献1、2に開示された技術は、イオン液体とこれを希釈する不揮発性媒体を用いるものであり、別々の成分をそれぞれの用途に応じて調整して使用する必要があり、取り扱いが困難であるという問題点があった。特許文献3に開示された技術は、反応溶媒として揮発性有機溶媒を使用するものであり、反応後蒸発により溶媒を除去する必要があり、環境への負荷やプロセスコストが増大する可能性があるという問題点があった。
【0006】
そこで、各種用途に使用されるために種々のイオン密度を有し、しかも安定な電解液、反応溶媒を製造可能なイオン液体を開発することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−231008号公報
【特許文献2】特開2010−37355号公報
【特許文献3】特表2009−526910号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】T.Welton, Chem. Rev., 1999, 99, 2071
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記問題点に鑑み、本発明は、希釈する媒体を必要としないイオン液体であって、種々のイオン密度を有し、しかも経時安定性に優れたイオン液体を提供することを目的とする。また、本発明は、そのイオン液体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、アンモニウムイオン、CH2CH(−OH)CH2、[CH2CH2O]n、ヨウ化物イオンを有する重合体であり、[CH2CH2O]nの重合度を調整することにより、種々のイオン密度を有するイオン液体を供給可能であり、しかも非水系有機溶媒への溶解性に優れ、経時安定性に優れたイオン液体を合成できることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)
【化1】
(ただし、Yは置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、mは3〜20の整数を示し、X+はN+を含む炭素数2〜30の置換基)
または下記一般式(2)
【化2】
(ただし、nは3〜20の整数を示し、X+はN+を含む炭素数2〜30の置換基)
で表される重合体からなるイオン液体に関する。
【0012】
本発明のイオン液体は、一般式(1)、(2)におけるX+I-が、下記一般式(3)
【化3】
(ただし、R1は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR1、R2はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基により置換されていてもよい)で表される置換基の
下記一般式(4)
【化4】
(R7は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基を示す)
で表されるヨウ化アルキルによる塩であるイオン液体であることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、下記一般式(5)
【化5】
(ただし、R1は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR1、R2はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基により置換されていてもよく、Yは置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、mは3〜20の整数を示す)
または下記一般式(6)
【化6】
(ただし、R3は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R4は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR3、R4はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基を有してもよく、R5は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R6は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR5、R6はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基を有してもよく、nは3〜20の整数を示す)
で表されるアミン化合物と
下記一般式(4)
【化7】
(R7は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基を示す)
で表されるヨウ化アルキルとの塩生成反応により生成される重合体であるイオン液体にも関する。
【0014】
さらに、本発明は、上記一般式(5)または上記一般式(6)で表されるアミン化合物と、上記一般式(4)で表わされるヨウ化アルキルとを反応させてイオン液体を製造する製造方法にも関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のイオン液体は、主骨格にポリエチレングリコールユニット及びヒドロキシプロピル基が結合している重合体からなるもので、希釈する等のための媒体を必要とせず、[CH2CH2O]nの繰り返し単位数(n数)を変えることにより、種々のイオン密度を有するイオン液体とすることができる。また、合成されたイオン液体は、非水系有機溶媒への溶解性に優れ、しかも経時安定性にも優れているので、様々な用途に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1で得たイオン液体のIRスペクトル図である。
【図2】実施例2で得たイオン液体のIRスペクトル図である。
【図3】実施例3で得たイオン液体のIRスペクトル図である。
【図4】実施例4で得たイオン液体のIRスペクトル図である。
【図5】実施例5で得たイオン液体のIRスペクトル図である。
【図6】実施例6で得たイオン液体のIRスペクトル図である。
【図7】実施例7で得たイオン液体のIRスペクトル図である。
【図8】実施例8で得たイオン液体のIRスペクトル図である。
【図9】実施例9で得たイオン液体のIRスペクトル図である。
【図10】実施例10で得たイオン液体のIRスペクトル図である。
【図11】実施例11で得たイオン液体のIRスペクトル図である。
【図12】実施例12で得たイオン液体のIRスペクトル図である。
【図13】実施例13で得たイオン液体のIRスペクトル図である。
【図14】実施例14で得たイオン液体のIRスペクトル図である。
【図15】実施例15で得たイオン液体のIRスペクトル図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明においてイオン液体とは、アニオンとカチオンの組合せからなる100℃以下の融点を有し、常温において液体を構成する化合物をいう。
【0018】
本発明のイオン液体は、下記一般式(1)
【化8】
(ただし、Yは置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、mは3〜20の整数を示し、X+はN+を含む炭素数2〜30の置換基)
または下記一般式(2)
【化9】
(ただし、nは3〜20の整数を示し、X+はN+を含む炭素数2〜30の置換基)
で表される重合体からなる。
【0019】
本発明のイオン液体は、主骨格にポリエチレングリコールユニット及びヒドロキシプロピル基が結合している重合体からなり、これら主骨格の末端にアンモニウムイオン、ヨウ化物イオンを1種又は2種有するもので、 [CH2CH2O]nの繰り返し単位数(n数)を変えることにより、種々のイオン密度を有するイオン液体とすることができる。
【0020】
本発明において、一般式(1)、(2)のX+I-は、下記一般式(3)
【化10】
(ただし、R1は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR1、R2はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基により置換されていてもよい)で表される置換基の
下記一般式(4)
【化11】
(R7は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基を示す)
で表されるヨウ化アルキルによる塩であることが好ましい。
【0021】
また、本発明は、下記一般式(5)
【化12】
(ただし、R1は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR1、R2はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基により置換されていてもよく、Yは置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、mは3〜20の整数を示す)
または下記一般式(6)
【化13】
(ただし、R3は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R4は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR3、R4はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基を有してもよく、R5は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R6は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR5、R6はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基を有してもよく、nは3〜20の整数を示す)
で表されるアミン化合物と
下記一般式(4)
【化14】
(R7は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基を示す)
で表されるヨウ化アルキルとの塩生成反応により生成される重合体であるイオン液体であることが好ましい。
【0022】
本発明において、具体的なアミン化合物は、一般式(5)のアミン化合物I、又は一般式(6)のアミン化合物IIを用いることができる。次に、アミン化合物I、アミン化合物IIを示し、更にそのイオン液体の製法を示す。
【0023】
[アミン化合物I]
【化15】
【0024】
一般式(5)において、R1は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR1、R2はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基により置換されていてもよい。
炭素数1〜10の炭化水素基としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基、フェニル基、ベンジル基が例示できる。
炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが例示でき、これらは直鎖であってもよく、分岐してもよい。炭素数1〜10のアルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、へキセニル基、シクロヘキセニル基、アリル基などが例示でき、これらは直鎖であってもよく、分岐してもよく、また、二重結合が適当な位置にあってよい。置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基中の置換基としては、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基、ヒドロキシ基、シアノ基、メチル基、エチル基等が例示できる。
【0025】
R1とR2はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成する場合、その含窒素複素環は、不飽和結合を有していてもよく、例えば、ピロリジン、ピペリジン、イミダゾール、ピラゾール等が挙げられる。また、該複素環は酸素原子を含んでいてもよく、例えばモルホリン等が挙げられる。なお、これら複素環は置換基を有してもよく、そのような置換基としては、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基、ヒドロキシ基、シアノ基、メチル基、エチル基等が例示できる。
【0026】
アミン化合物I中の置換基NR1R2としては、具体的には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジエタノールアミノ基、ジアリルアミノ基、イミダゾリノ基、モルホリノ基、p−メチルアニリノ基、p−エチルアニリノ基等を用いることができる。
【0027】
一般式(5)において、Yは置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示す。
炭素数1〜20の炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルケニル基、フェニル基、ベンジル基が例示できる。
炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、アラキル基などが例示でき、これらは直鎖であってもよく、分岐してもよい。炭素数1〜20のアルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、へキセニル基、シクロヘキセニル基、アリル基などが例示でき、これらは直鎖であってもよく、分岐してもよく、また、二重結合が適当な位置にあってよい。
置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基中の置換基としては、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基、ヒドロキシ基、シアノ基、メチル基、エチル基等が例示できる。
【0028】
一般式(5)において、mは3〜20の整数を示す。
【0029】
アミン化合物Iとしては、NR1R2がジエチルアミノ基である場合、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−フェノキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−エトキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−プロポキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−ブトキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−ペンチルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−ヘキシルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−ヘプチルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−オクチルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−ノニルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−デシルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−ウンデシルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−ドデシルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−トリデシルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−テトラデシルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−ペンタデシルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−アリルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−シクロヘキシルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−フェノキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−ベンジルオキシ−ポリ(オキシエチレン)等のジエチルアミノ体を例示することができる。オキシエチレンの重合度mは3〜20の整数であるが、4〜17の整数が好ましい。
【0030】
また、アミン化合物Iとしては、NR1R2がジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジメタノールアミノ基、ジエタノールアミノ基、ジアリルアミノ基、イミダゾリノ基、モルホリノ基、p−メチルアニリノ基、p−エチルアニリノ基の場合、上記のジエチルアミノ体のジエチルアミノをそれぞれのアミノ基に置き換えたものを例示できる。
【0031】
[アミン化合物Iの製造]
アミン化合物Iの製造は、例えば、次のとおりである。一般式(7)で表わされるアミンと一般式(8)で表わされるグリシジルオキシ化合物とを両者、等モル量と反応させて製造することができる。
【0032】
一般式(7)で表わされるアミン
【化16】
(ただし、R1は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR1、R2はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基により置換されていてもよい)
【0033】
R1、R2は前記アミン化合物に記載したとおりである。このアミンとして具体的には、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジエタノールアミン、ジアリルアミン、イミダゾール、モルホリン、p−メチルアニリン、p−エチルアニリンが好適である。
【0034】
一般式(8)で表わされるグリシジルオキシ化合物
【化17】
(ただし、Yは置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、mは3〜20の整数を示す)
【0035】
一般式(8)で表わされるグリシジルオキシ化合物は、好ましくは、α−グリシジル−ω−メトキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−グリシジル−ω−エトキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−グリシジル−ω−プロポキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−グリシジル−ω−ブトキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−グリシジル−ω−ペンチルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−グリシジル−ω−ヘキシルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−グリシジル−ω−ヘプチルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−グリシジル−ω−オクチルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−グリシジル−ω−ノニルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−グリシジル−ω−デシルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−グリシジル−ω−ウンデシルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−グリシジル−ω−ドデシルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−グリシジル−ω−トリデシルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−グリシジル−ω−テトラデシルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−グリシジル−ω−ペンタデシルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−グリシジル−ω−アリルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−グリシジル−ω−シクロヘキシルオキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−グリシジル−ω−フェノキシ−ポリ(オキシエチレン)、α−グリシジル−ω−ベンジルオキシ−ポリ(オキシエチレン)を用いることができる。オキシエチレンの重合度mは3〜20の整数であるが、4〜17の整数が好ましい。
【0036】
得られるアミン化合物Iが3級アミンである場合、反応率は、例えば過塩素酸滴定等にて求めることができ、反応率が低い場合、例えば95%以下の場合、原料のグリシジルオキシ化合物をさらに少しずつ添加して反応させ反応率が99%以上とさせることが好ましい。反応溶媒は、無溶媒が好ましいが、水、メタノール、エタノール等のアルコール、アセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、N,N'-ジメチルアセトアミド、N,N'−ジメチルホルムアミド、N,N'−ジメチルスルホキシド等でもよい。反応温度は、通常、30〜80℃が好ましい。反応時間は、通常、1〜48時間である。
【0037】
[アミン化合物II]
【化18】
【0038】
一般式(6)において、R3は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R4は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR3、R4はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基を有してもよい。R3、R4は、R1、R2で説明したのと同じであり、R1、R2の説明において、それぞれ、R3、R4と置き換えたのと同様である。
【0039】
また、一般式(6)において、R5は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R6は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR5、R6はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基を有してもよい。R5、R6はR1、R2で説明したのと同じであり、それぞれ、R5、R6と置き換えたのと同様である。アミン化合物IIの製造のしやすさから,R5、R6は、それぞれR3、R4と同じであることが好ましい。
【0040】
アミン化合物II中の置換基NR3R4またはNR5R6としては、具体的には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジエタノールアミノ基、ジアリルアミノ基、イミダゾリノ基、モルホリノ基、p−メチルアニリノ基、p−エチルアニリノ基等を用いることができる。
【0041】
一般式(6)において、nは3〜20の整数を示す。
【0042】
アミン化合物IIとしては、α−[(3−(ジメチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル)−ω−[3−(ジメチルアミノ)−2−ヒドロキシプロポキシ]−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロポキシ]−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジプロピルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−[3−(ジプロピルアミノ)−2−ヒドロキシプロポキシ]−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジエタノールアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−[3−(ジエタノールアミノ)−2−ヒドロキシプロポキシ]−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(ジアリルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−[3−(ジアリルアミノ)−2−ヒドロキシプロポキシ]−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−イミダゾリノ−2−ヒドロキシプロピル]−ω−[3−イミダゾリノ−2−ヒドロキシプロポキシ]−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−イミダゾリノ−2−ヒドロキシプロピル]−ω−[3−イミダゾリノ−2−ヒドロキシプロポキシ]−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−モルホリノ−2−ヒドロキシプロピル]−ω−[3−モルホリノ−2−ヒドロキシプロポキシ]−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(p−メチルアニリノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−[3−(p−メチルアニリノ)−2−ヒドロキシプロポキシ]−ポリ(オキシエチレン)、α−[3−(p−エチルアニリノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−[3−(p−エチルアニリノ)−2−ヒドロキシプロポキシ]−ポリ(オキシエチレン)を例示することができる。オキシエチレンの重合度nは3〜20の整数を示すが、4〜18の整数が好ましい。
【0043】
[アミン化合物IIの製造]
アミン化合物IIの製造について、R5、R6が、それぞれR3、R4と同じである場合を例に以下に説明する。一般式(7)で表わされるアミンと一般式(9)で表わされるグリシジルオキシ化合物とを用い、一般式(9)で表わされるグリシジルオキシ化合物を一般式(7)で表わされるアミンの2倍モル量と反応させて製造することが好ましい。
【0044】
一般式(7)で表わされるアミン
【化19】
(ただし、R1は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR1、R2はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基により置換されていてもよい)
【0045】
一般式(9)で表わされるグリシジルオキシ化合物
【化20】
(ただし、nは3〜20の整数を示す)
【0046】
反応率は、例えば過塩素酸滴定等にて求めることができ、反応率が低い場合、例えば95%以下の場合、原料のジグリシジルオキシ化合物をさらに少しずつ添加して反応させ反応率が99%以上とさせることが好ましい。反応溶媒は、無溶媒が好ましいが、水、メタノール、エタノール等のアルコール、アセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、N,N'−ジメチルアセトアミド、N,N'−ジメチルホルムアミド、N,N'−ジメチルスルホキシド等でもよい。反応温度は、通常、20〜60℃が好ましい。反応時間は、通常、1〜48時間である。
【0047】
[イオン液体の製造]
本発明におけるイオン液体は、上記一般式(5)のアミン化合物又は一般式(6)のアミン化合物と、一般式(4)で示されるヨウ化アルキルとを塩形成反応することにより合成することができる。
【0048】
一般式(4)のヨウ化アルキル
【化21】
R7は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基を示す。炭素数1〜10の炭化水素基としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基、フェニル基、ベンジル基が例示できる。炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが例示でき、これらは直鎖であってもよく、分岐してもよい。炭素数1〜10のアルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、へキセニル基、シクロヘキセニル基、アリル基などが例示でき、これらは直鎖であってもよく、分岐しても良く、また、二重結合が適当な位置にあってよい。
置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基中の置換基としては、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基、ヒドロキシ基、シアノ基、メチル基、エチル基等が例示できる。
【0049】
一般式(4)のヨウ化アルキルとしては、好ましくはヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、ヨウ化ブチル、ヨウ化ペンチル、ヨウ化ヘキシル、ヨウ化ヘプチル、ヨウ化オクチル、ヨウ化ノニル、ヨウ化デシルを用いることができる。
【0050】
アミン化合物Iとヨウ化アルキルとを反応させる場合、ヨウ化アルキルの量は、アミン化合物Iと等モル量を用い、また、アミン化合物IIとヨウ化アルキルとを反応させる場合、ヨウ化アルキルの量は、アミン化合物IIの2倍モル量を用いることが一般的である。反応条件は、無溶媒が好ましく、水、メタノール、エタノール等のアルコール、アセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリル、N,N'−ジメチルアセトアミド、N,N'−ジメチルホルムアミド、N,N'-ジメチルスルホキシド等でもよい。反応温度は、通常、40〜80℃が好ましい。反応時間は、通常、1〜48時間である。
【0051】
本発明のイオン液体は、リチウム二次電池、燃料電池、太陽電池、電気二重層キャパシタ等の電気化学デバイス、化学反応の溶剤、潤滑油として好適である。なお、本発明のイオン液体を電気化学デバイスのための電解質材料として用いるに当たり、上記本発明のイオン液体は、1種を単独で用いてもよく、複数種を任意の割合で組み合わせて用いてもよい。また、イオン液体を他の電解質(例えば、Nafionなど)に混合しても使用することもできる。
【0052】
本発明のイオン液体を用いて電解液を調製した場合に、無溶媒、または従来よりも有機溶媒を少なく用いることができ、更に、低温時に電解質塩が析出することがないため、低温特性に優れるので蓄電デバイスに用いることができ、様々な化学反応のための溶媒に用いるためのイオン液体を提供しうる。
【0053】
本発明は、有機合成の溶媒、溶媒抽出法(例えば、固体から所望の成分を除去するための)の溶媒、ガスクロマトグラフィーの担体、滑剤、作動流体もしくは殺生物剤における、またはそれらとしての、本発明のイオン液体の使用を更に提供する。また、触媒反応、液化、核燃料再処理、燃料電池、電気化学用途、光学(光電子を含む)系、浸透気化、薬物送達、接着またはセンサーにおける本発明のイオン液体の使用を更に提供する。
【実施例】
【0054】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0055】
[実施例1]
(1)α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−フェノキシ−ポリ(オキシエチレン)(重合度5)の合成
温度計、還流冷却管を備えた100ml三口フラスコに、ジエチルアミン14.63g(0.20モル)、デナコールEX−145(ナガセケムテックス株式会社製)すなわちα−グリシジル−ω−フェノキシ−ポリ(オキシエチレン)(重合度5)74.09g(0.20モル)を入れ、40℃に加温し、攪拌により均一に溶解した。その後60℃に加温し、反応を行った。反応は、過塩素酸滴定により、反応率が99%を超えるまでさらにデナコールEX−145(11.35g,0.03モル)を少しずつ加えながら反応を行い、α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−フェノキシ−ポリ(オキシエチレン)(重合度5)を黄色の均一透明液体として得た。
【0056】
(2)α−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−フェノキシ−ポリ(オキシエチレン)(重合度約5)のヨウ化メチル塩の合成
得られた均一透明液体にヨウ化メチル28.39g(0.20モル)を1時間かけ滴下添加し、室温下24時間反応を行い、表1に示すα−[3−(ジエチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]−ω−フェノキシ−ポリ(オキシエチレン)(重合度約5)のヨウ化メチル塩を得た。なお、ナトリウムテトラフェニルホウ素滴定により、反応率は99%以上となったことを確認した。図1にこの重合体のIRスペクトルを示すが、3600-1〜3400cm-1(OH由来)、3300cm-1(アンモニウム塩由来)、1095cm-1(C−O−C由来)よりこの構造を支持している。
【0057】
[実施例2−15]
アミン及び原料のポリオキシエチレンの種類と使用量(モル)を表1の通り変更した以外は、実施例1と同様の操作を行ない、表1に示す重合体のヨウ化メチル塩を得た。なお、原料のヨウ化メチルの使用モル量は、使用したアミンのモル量と同じにした。アミンの量は、ポリオキシエチレンとしてSR−8EG(阪本薬品工業株式会社製)を用いた場合、ポリオキシエチレンの2倍のモル量を目安として用い、その他の場合は、等モル量を目安とした。図2〜15にこの重合体のIRスペクトルを示すが、3600-1〜3400cm-1(OH由来)、3300cm-1(アンモニウム塩由来)、1095cm-1(C−O−C由来)よりこの構造を支持している。
【0058】
【表1−1】
【表1−2】
【0059】
注)
EX−145:α−グリシジル−ω−フェノキシ−ポリ(オキシエチレン)重合度5、すなわちα-(2-oxiranylmethyl)-ω-phenoxy-poly(oxy-1,2-ethanediyl) (ナガセケムテックス株式会社製)
EX−171:α−グリシジル−ω−ドデシルオキシ−ポリ(オキシエチレン)重合度15、すなわちα-dodecyl-ω-(2-oxiranylmethoxy)-poly(oxy-1,2-ethanediyl)(ナガセケムテックス株式会社製)
SR−8EG:α−グリシジル−ω−グリシジルオキシ−ポリ(オキシエチレン)重合度5、すなわちα-(2-oxiranylmethyl)-ω-(2-oxiranylmethoxy)-poly(oxy-1,2-ethanediyl)
(阪本薬品工業株式会社製)
EPM−9:α−グリシジル−ω−ブトキシ−ポリ(オキシエチレン)重合度4、すなわちα-butyl-ω-(2-oxiranylmethoxy)-poly(oxy-1,2-ethanediyl)(阪本薬品工業株式会社製)
【0060】
[比較例1]
N−メチルモルホリンのヨウ化メチル塩の合成
温度計、還流冷却管を備えた100ml三口フラスコに、N−メチルモルホリン20.21g(0.20モル)、ヨウ化メチル28.39g(0.20モル)を1時間かけ滴下添加し、室温下24時間反応を行い、N−メチルモルホリンのヨウ化メチル塩を得た。その性状は白色固体であった。
【0061】
[比較例2]
N,N−ジアリルエチルアミンのヨウ化メチル塩の合成
温度計、還流冷却管を備えた100ml三口フラスコに、N,N−ジアリルエチルアミン25.04g(0.20モル)、ヨウ化メチル28.39g(0.20モル)を1時間かけ滴下添加し、室温下24時間反応を行い、N,N−ジアリルエチルアミンのヨウ化メチル塩を得た。その性状は白色固体であった。
【0062】
[イオン液体の物性評価]
イオン液体の物性について、(1)外観、透明性、(2)溶解性、(3)凍結温度、(4)経時安定性について以下に述べる手法で、評価した。
【0063】
(1)外観、透明性:実施例1〜15で得られた重合体のヨウ化メチル塩は、すべて、少なくとも0〜100℃で液体であり、外観を目視すると透明であり、表1に示すとおり黄色透明液体、茶黄色透明液体、淡黄色透明液体、赤色透明液体、ないし無色透明液体であった。
【0064】
(2)溶解性:実施例1〜15で得られた重合体は、すべてアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、炭酸プロピレンに室温で溶解した。実施例14で得られたイオン液体の各種溶媒への溶解性を表2に示す。広範囲な有機溶媒に溶解可能であることが判明した。なお、溶解性は、室温においてイオン液体が溶媒100gに10g以上溶けたとき「溶解」とし、10g未満の時「不溶」とした。
【0065】
【表2】
【0066】
(3)凍結温度:実施例1〜15で得られたイオン液体の凍結温度を表3に示す。
【0067】
【表3】
【0068】
(4)経時安定性:経時安定性はガードナー法を用いた色相、及びFT−IRスペクトルについて経時変化を調査した。結果、作成から2,3ヶ月経過しても、色相、及びFT−IRスペクトル等の液体の性状は変化しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のイオン液体は、リチウム二次電池、燃料電池、太陽電池、電気二重層キャパシタ等の電気化学デバイス、化学反応の溶剤、また潤滑油として好適である。本発明は、有機合成の溶媒、溶媒抽出法(例えば、固体から所望の成分を除去するための)の溶媒、ガスクロマトグラフィーの担体、滑剤、作動流体もしくは殺生物剤における、またはそれらとしての、本発明のイオン液体の使用を更に提供する。また、触媒反応、液化、核燃料再処理、燃料電池、電気化学用途、光学(光電子を含む)系、浸透気化、薬物送達、接着またはセンサーにおける本発明のイオン液体の使用を更に提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
(ただし、Yは置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、mは3〜20の整数を示し、X+はN+を含む炭素数2〜30の置換基)
または下記一般式(2)
【化2】
(ただし、nは3〜20の整数を示し、X+はN+を含む炭素数2〜30の置換基)
で表される重合体からなるイオン液体。
【請求項2】
X+I-が、下記一般式(3)
【化3】
(ただし、R1は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR1、R2はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基により置換されていてもよい)で表される置換基の
下記一般式(4)
【化4】
(R7は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基を示す)
で表されるヨウ化アルキルによる塩である、請求項1記載のイオン液体。
【請求項3】
下記一般式(5)
【化5】
(ただし、R1は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR1、R2はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基により置換されていてもよく、Yは置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、mは3〜20の整数を示す)
または下記一般式(6)
【化6】
(ただし、R3は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R4は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR3、R4はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基を有してもよく、R5は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R6は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR5、R6はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基を有してもよく、nは3〜20の整数を示す)
で表されるアミン化合物と
下記一般式(4)
【化7】
(R7は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基を示す)
で表されるヨウ化アルキルとの塩生成反応により生成される重合体であるイオン液体。
【請求項4】
下記一般式(5)
【化8】
(ただし、R1は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR1、R2はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基により置換されていてもよく、Yは置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、mは3〜20の整数を示す)
または下記一般式(6)
【化9】
(ただし、R3は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R4は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR3、R4はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基を有してもよく、R5は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R6は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR5、R6はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基を有してもよく、nは3〜20の整数を示す)
で表されるアミン化合物と
下記一般式(4)
【化10】
(R7は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基を示す)
で表されるヨウ化アルキルとを反応させ請求項3記載のイオン液体を製造することを特徴とする、イオン液体の製造方法。
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
(ただし、Yは置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基、mは3〜20の整数を示し、X+はN+を含む炭素数2〜30の置換基)
または下記一般式(2)
【化2】
(ただし、nは3〜20の整数を示し、X+はN+を含む炭素数2〜30の置換基)
で表される重合体からなるイオン液体。
【請求項2】
X+I-が、下記一般式(3)
【化3】
(ただし、R1は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR1、R2はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基により置換されていてもよい)で表される置換基の
下記一般式(4)
【化4】
(R7は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基を示す)
で表されるヨウ化アルキルによる塩である、請求項1記載のイオン液体。
【請求項3】
下記一般式(5)
【化5】
(ただし、R1は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR1、R2はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基により置換されていてもよく、Yは置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、mは3〜20の整数を示す)
または下記一般式(6)
【化6】
(ただし、R3は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R4は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR3、R4はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基を有してもよく、R5は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R6は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR5、R6はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基を有してもよく、nは3〜20の整数を示す)
で表されるアミン化合物と
下記一般式(4)
【化7】
(R7は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基を示す)
で表されるヨウ化アルキルとの塩生成反応により生成される重合体であるイオン液体。
【請求項4】
下記一般式(5)
【化8】
(ただし、R1は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR1、R2はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基により置換されていてもよく、Yは置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を示し、mは3〜20の整数を示す)
または下記一般式(6)
【化9】
(ただし、R3は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R4は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR3、R4はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基を有してもよく、R5は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基、R6は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基もしくは水素原子を示すか、またはR5、R6はそれらが結合するNとともに炭素数2〜12の含窒素複素環式置換基を形成してもよく、かつその含窒素複素環式置換基はさらに置換基を有してもよく、nは3〜20の整数を示す)
で表されるアミン化合物と
下記一般式(4)
【化10】
(R7は置換基を有してもよい炭素数1〜10の炭化水素基を示す)
で表されるヨウ化アルキルとを反応させ請求項3記載のイオン液体を製造することを特徴とする、イオン液体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−116802(P2012−116802A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269427(P2010−269427)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000003975)日東紡績株式会社 (251)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000003975)日東紡績株式会社 (251)
【Fターム(参考)】
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