説明

イオン源

【課題】本発明は、イオン源に関する。
【解決手段】本発明のイオン源は、真空容器と、電界放出電子源と、イオン電極と、を含む。前記イオン電極は、真空容器の一端に設置される。前記電界放出電子源は、真空容器に設置される。前記電界放出電子源は、絶縁基板、電子引き出し電極、二次電子放出層、陰極板及び電界放出ユニットを含む。前記電子引き出し電極及び二次電子放出層は、前記絶縁基板に配置され、前記陰極板は、前記電子引き出し電極と間隔をおいて絶縁的に配置され、前記陰極板の一部が前記二次電子放出層に対向する。前記陰極板は、一つの電子放出部を含む。前記電界放出ユニットは、前記陰極板の二次電子放出層に対向する表面に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン源に関し、特に電界放出電子源を採用するイオン源に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電界放出電子源は、イオン源の重要な部品として用いられている。前記電界放出電子源は、イオン源に電子を提供して作業気体分子と衝突させることにより、前記気体分子が電離されてイオンを生じる。
【0003】
従来の電界放出電子源は、絶縁基板と、前記絶縁基板に配置された陰極と、前記陰極の上に配置された複数の電界放出体と、貫通孔を含む絶縁隔離層と、陽極と、を含む。前記絶縁隔離層は、前記絶縁基板に配置され、前記電界放出体は、前記絶縁隔離層の貫通孔によって暴露される。前記陽極と陰極は、間隔おいて対向するように配置される。前記陽極と陰極の間に電圧を印加すると、その間に電場が形成される。これにより、前記電界放出体から電子が放出され、前記電子は、前記絶縁隔離層の貫通孔を通じて陽極に到達する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記電界放出体から放出された電子が、イオン源の作業気体分子と衝突し、これにより前記気体分子が電離されてイオンになる。且つ、該イオンは、低電位である陰極の方向に移動する。この場合、前記電界放出体は、前記絶縁隔離層の貫通孔で暴露されており、前記電界放出体は前記イオンに衝突されやすい。従って、前記電界放出体が破壊されるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、前記課題を解決するために、本発明は、電界放出体にイオンが衝突することを防止できるイオン源を提供する。
【0006】
本発明のイオン源は、真空容器と、電界放出電子源と、イオン電極と、を含む。前記真空容器は、電離室と、イオン放出口と、進気口と、を含む。前記イオン電極は、前記真空容器のイオン放出口に設置される。前記電界放出電子源は、前記真空容器の電離室に設置される。前記電界放出電子源は、絶縁基板と、電子引き出し電極と、二次電子放出層と、陰極板と、電界放出ユニットと、を含む。前記電子引き出し電極及び二次電子放出層は、前記絶縁基板の一つの表面に配置される。前記陰極板は、一つの第一絶縁隔離層によって前記電子引き出し電極と間隔をおいて絶縁的に配置される。前記陰極板の少なくとも一部が前記二次電子放出層に対向し、前記陰極板は、少なくとも一つの電子放出部を含み、該電子放出部が前記真空容器のイオン放出口に対向し、前記電界放出ユニットは、前記陰極板の前記二次電子放出層に対向する表面に配置される。
【0007】
本発明のイオン源は、真空容器と、電界放出電子源と、陽極と、を含む。前記真空容器は、対向する二つの端部と、側壁と、を含み、該対向する二つの端部及び側壁は、一つの電離室を構成し、該側壁に進気口が形成され、前記二つの端部にそれぞれイオン放出口及び電子注入孔が形成される。前記陽極は、前記真空容器の電離室に設置される。前記電界放出電子源は、前記電子注入孔に隣接して前記真空容器の外部に配置される。前記電界放出電子源は、絶縁基板と、電子引き出し電極と、二次電子放出層と、陰極板と、電界放出ユニットと、を含む。前記電子引き出し電極及び二次電子放出層は、前記絶縁基板の一つの表面に配置される。前記陰極板は、一つの第一絶縁隔離層によって前記電子引き出し電極と間隔をおいて絶縁的に配置される。前記陰極板の少なくとも一部が前記二次電子放出層に対向し、前記陰極板は、少なくとも一つの電子放出部を含み、該電子放出部が前記真空容器の電子注入孔に対向し、前記電界放出ユニットは、前記陰極板の前記二次電子放出層に対向する表面に配置される。
【0008】
本発明のイオン源は、絶縁層と、電界放出電子源と、イオン電極と、を含む。前記電界放出電子源は、絶縁基板と、電子引き出し電極と、二次電子放出層と、陰極板と、電界放出ユニットと、グリッド電極と、を含む。前記電子引き出し電極及び二次電子放出層は、前記絶縁基板の一つの表面に順に配置される。前記陰極板は、一つの第一絶縁隔離層によって前記電子引き出し電極と間隔をおいて絶縁的に配置される。前記陰極板の少なくとも一部が前記二次電子放出層に対向し、前記陰極板は、少なくとも一つの電子放出部を含み、前記電界放出ユニットは、前記陰極板の二次電子放出層に対向する表面に配置される。前記グリッド電極は、前記陰極板の二次電子放出層と反対側の表面にそれに絶縁的に配置される。前記絶縁層は、前記電界放出電子源のグリッド電極の前記絶縁基板と反対側の表面に設置される。前記絶縁層は、真空な第五スルーホールを含み、前記絶縁層の側壁に進気口が形成されている。前記イオン電極は、前記絶縁層のグリッド電極と反対側の端面に接触するように配置される。
【0009】
前記電界放出ユニットは、複数の電界放出体を含み、各々の電界放出体は、電界放出部を含み、前記電界放出部は、前記二次電子放出層と対向し、前記電界放出部と前記二次電子放出層の間の最大距離が電子とガス分子の平均自由行程より小さい。
【発明の効果】
【0010】
従来の技術と比べて、本発明のイオン源において、前記電界放出ユニットは、前記陰極板の前記二次電子放出層に対向する一部表面に配置されており、電界放出表示装置などの陽極又はグリッド電極の電圧が前記電界放出電子源の電子引き出し電極及び陰極の電圧より更に高いので、前記電子引き出し電極及び陰極の間の電場を、グリッド電極及び電子引き出し電極の間の電場又は陽極及び電子引き出し電極の間の電場に比べて、小さくすることができる。前記電界放出体から放出された電子が、前記真空環境で移動している少量の気体分子と衝突し、これにより前記気体分子が電離されてイオンになって、前記イオンは前記電子引き出し電極に向かって移動するので、前記電界放出体に前記イオンが衝突しない。これにより、前記電界放出電子源の寿命が長くなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1に係る電界放出電子源の構造を示す図である。
【図2】図1のII‐IIに沿って切断した断面図である。
【図3】図1のIII‐IIIに沿って切断した断面図である。
【図4】図1に示す電界放出電子源の製造工程を示す図である。
【図5】本発明の実施例2に係る電界放出電子源の構造を示す断面図である。
【図6】本発明の実施例3に係る電界放出電子源の構造を示す断面図である。
【図7】本発明の実施例4に係る電界放出電子源の構造を示す断面図である。
【図8】本発明の実施例5に係るイオン源の構造を示す断面図である。
【図9】本発明の実施例6に係るイオン源の構造を示す断面図である。
【図10】本発明の実施例7に係るイオン源の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0013】
本実施例では、電界放出電子源から、イオン源に電子を放射して、該イオン源における気体分子と衝突することにより、前記気体分子を電離させてイオンを生じる。以下、数種のイオン源に利用できる電界放出電子源について説明する。電界放出電子源は、一つのユニット又は複数のユニットを含むことができる。本発明の実施例には、一つのユニットだけを含む電界放出電子源について説明する。
【0014】
(実施例1)
図1〜図3を参照すると、本実施例は、電界放出装置100を提供する。前記電界放出装置100は、絶縁基板110と、第一絶縁隔離層112と、陰極114と、電界放出ユニット116と、電子引き出し電極118と、二次電子放出層120と、第二絶縁隔離層121と、グリッド電極122と、を含む。前記電子引き出し電極118は、前記絶縁基板110の一つの表面(図示せず)に配置される。前記二次電子放出層120は、前記電子引き出し電極118の前記絶縁基板110と反対側の表面に配置される。前記陰極114は、第一絶縁隔離層112によって前記電子引き出し電極118と間隔をおいて対向して配置される。前記電子引き出し電極118は、前記陰極114及び前記絶縁基板110の間に配置されている。前記陰極114に一つの第一スルーホール1140が形成されている。前記陰極114の第一スルーホール1140は、前記電子引き出し電極118と対向するように配置される。前記電界放出ユニット116は、前記陰極114の前記電子引き出し電極118と対向する表面に配置される。前記グリッド電極122は、前記第二絶縁隔離層121によって前記陰極114と間隔をおいて配置される。前記電界放出ユニット116から放出された電子が、前記二次電子放出層120に衝突して二次電子が生じる。前記二次電子放出層120から放出された二次電子は、前記グリッド電極122の作用で前記陰極114の第一スルーホール1140から放出される。
【0015】
前記絶縁基板110は、シリコン、ガラス、セラミックス、酸化珪素、ポリマーなどの絶縁材料からなる。前記絶縁基板110の形状は、円形、方形、矩形である。本実施例において、前記絶縁基板110は、厚さが1mmであり、辺長が10mmの方形ガラス基板である。
【0016】
前記電子引き出し電極118は、金属、合金、酸化インジウムスズ(ITO)又は導電ペーストからなる導電層である。前記金属は、銅、アルミニウム、金、銀又は鉄である。前記導電ペーストは、金属粉末、低融点ガラス粉末及び接着剤を含む。ここで、前記金属粉末が銀の粉末であり、前記接着剤がテルピネオール又はエチルセルロースであることが好ましい。前記導電ペーストにおける前記金属粉の質量パーセンテージの含有量は50%〜90%であり、前記低融点ガラスパウダーの質量パーセンテージの含有量は2%〜10%であり、前記接着剤の質量パーセンテージの含有量は10%〜40%である。前記絶縁基板110は、シリコンからなる場合、前記電子引き出し電極118は、ドープシリコンであることができる。本実施例において、前記電子引き出し電極118は、厚さが20μmの円形のアルミニウムフィルムである。前記アルミニウムフィルムは、マグネトロンスパッタリング方法によって前記絶縁基板110に堆積されている。
【0017】
前記二次電子放出層120及び前記電子引き出し電極118は、積層されている。前記電子引き出し電極118は、前記二次電子放出層120と前記絶縁基板110の間に位置する。前記二次電子放出層120は、酸化マグネシウム(MgO)、ベリリウム酸化物(BeO)、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化ベリリウム(BeF)、セシウム酸化物(CsO)、酸化バリウム(BaO)、銀の酸素セシウム(AgOCs)、アンチモニー・セシウム合金、銀のマグネシウム合金、ニッケル・ベリリウムの合金、銅のベリリウムの合金またはアルミニウム・マグネシウム合金からなる。前記二次電子放出層120の前記電界放出ユニット116に対向する表面は、凹凸構造を有する曲面であることができる。本実施例において、前記二次電子放出層120は、厚さが20μmの円形の酸化バリウムフィルムである。
【0018】
前記陰極114の少なくとも一部が前記二次電子放出層120と対向する。前記陰極114は、銅、アルミニウム、金、銀などの金属、酸化インジウムスズ(ITO)又は導電ペーストからなる。前記陰極114は、少なくとも一つの孔を含む平板であり、又は、間隔をおいて配列する複数のストリップ状体からなるものである。この場合、前記第一スルーホール1140は、前記平板の孔又は前記複数のストリップ状体の間の隙間である。本実施例において、前記陰極114は、円形孔を有するアルミニウム導電層である。
【0019】
前記第一絶縁隔離層112を、前記陰極114と前記電子引き出し電極118の間に配置することにより、前記陰極114と前記電子引き出し電極118を電気的に絶縁させる。前記第一絶縁隔離層112は、感光乳剤、ガラス、酸化物、セラミックス又は酸化珪素などの絶縁材料からなる。前記酸化物は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム又はビスマス酸化物である。前記第一絶縁隔離層112は、前記絶縁基板110、前記電子引き出し電極118又は前記二次電子放出層120に配置されることができる。前記第一絶縁隔離層112に少なくとも一つの第二スルーホール1120が形成されている。前記スルーホール1120によって前記二次電子放出層120の一部を露出させる。前記第一絶縁隔離層112も、少なくとも一つの孔を含む平板であり、又は、間隔をおいて配列する複数のストリップ状体からなるものである。この場合、前記第二スルーホール1120は、前記平板の孔又は前記複数のストリップ状体の間の隙間である。前記第一絶縁隔離層112の第二スルーホール1120は、前記陰極114の少なくとも一部に対向する。前記陰極114の少なくとも一部は、前記第二スルーホール1120によって前記二次電子放出層120に対向する。前記第一絶縁隔離層112の第二スルーホール1120は、前記陰極114の第一スルーホール1140の少なくとも一部と重畳する。前記第一スルーホール1140と第二スルーホール1120とが重畳した部分から、電子が放出されることができる。本実施例において、前記第一絶縁隔離層112は、SU−8感光乳剤からなり、その厚さが100μmである円環状物であり、前記第一絶縁隔離層112は、直接的に前記絶縁基板110に配置されている。前記陰極114の第一スルーホール1140が、前記第一絶縁隔離層112の第二スルーホール1120の内部領域に位置する。
【0020】
前記グリッド電極122は、前記陰極114の前記前記絶縁基板110と反対側の表面に配置され、前記第二絶縁隔離層121によって前記陰極114と電気的に絶縁される。前記グリッド電極122は、均一的に分布された複数の微孔を有するネット状構造体である。前記グリッド電極122は、金属、合金、酸化インジウムスズ(ITO)又は導電ペーストからなる。前記グリッド電極122の微孔の孔径が3μm〜1000μmである。前記グリッド電極122と前記陰極114の間の距離は、10μmより大きい。本実施例において、前記グリッド電極122は、ステンレス鋼ネットである。更に、前記ステンレス鋼ネットに二次電子放出材料を堆積させて、前記電界放出装置100の電界放出電流密度を増強させることができる。
【0021】
前記第二絶縁隔離層121は、前記前記グリッド電極122と前記陰極114の間に配置される。前記第二絶縁隔離層121の材料及び形成方法は前記第一絶縁隔離層112の材料及び形成方法と同じである。前記第二絶縁隔離層121は層状構造を有し、その形状と寸法が前記陰極114に対応する。前記第二絶縁隔離層121に少なくとも一つの第三スルーホール1212が形成されている。前記第三スルーホール1212の少なくとも一部は、第一スルーホール1140と第二スルーホール1120とに重畳する。更に、前記第二絶縁隔離層121の前記第三スルーホール1212に対応する壁に、二次電子放出材料を堆積することができる。この場合、前記第二絶縁隔離層121の厚さが500μm〜1000μmである。これにより、前記第二絶縁隔離層121の前記第三スルーホール1212に対応する壁の二次電子放出材料の面積を増大させる。更に、前記第二絶縁隔離層121の前記第三スルーホール1212に対応する壁を凹凸構造に形成することにより、前記第二絶縁隔離層121の前記第三スルーホール1212に対応する壁の二次電子放出材料の面積を増大させることができる。
【0022】
前記電界放出ユニット116は前記二次電子放出層120に対向して、前記陰極114の前記第二絶縁隔離層121と反対側の表面に配置される。好ましくは、前記電界放出ユニット116は、前記陰極114の第一スルーホール1140の近くに配置される。前記電界放出ユニット116は、複数の尖端を有する電界放出体1162を含む。前記電界放出体1162は、カーボンナノチューブ、ナノ炭素繊維又はシリコンナノラインである。各々の前記電界放出体1162は、一つの電界放出部1164を含んで、前記電界放出部1164は前記二次電子放出層120に向いている。各々の前記電界放出体1162の表面に保護層(図示せず)を形成することができる。前記保護層は、ジルコニウム炭化物、ハフニウム炭化物及びランタン六ホウ化物など抗イオン衝撃材料の一種又は数種からなる。本実施例において、前記電界放出ユニット116は、輪状カーボンナノチューブ導電ペーストであり、その外径が前記二次電子放出層120の直径と同じ、又は該直径よりも小さく、その内径が前記陰極114の第一スルーホール1140の直径と同じ、又は該直径よりも大きい。
【0023】
前記電界放出部1164と前記二次電子放出層120の間の距離は、ガス分子及び自由電子の平均自由行程より小さい。従って、前記電界放出体1162から放出された電子は、前記電界放出部1164と前記二次電子放出層120の間のガス分子と衝突する前に前記二次電子放出層120に衝突する。これにより、前記電界放出体1162から放出された電子と、前記電界放出部1164と前記二次電子放出層120の間のガス分子とが衝突する可能性が下がる。即ち、前記ガス分子が電離される可能性が下がる。従って、前記電界放出体1162に、前記イオンが衝突し、前記電界放出体1162が損傷することを防止できる。
【0024】
ここで、ガス分子の平均自由行程
【数1】

が次の公式(1)を満足し、ガス分子及び自由電子の間の平均自由行程
【数2】

が次の公式(2)を満足する。
【0025】
【数3】

【0026】
【数4】

【0027】
上記公式(1)において、kはボルツマン定数であり、且つkは、次の公式(3)を満足する。
【0028】
【数5】

【0029】
ここで、Tは絶対温度であり、dはガス分子の有効直径であり、Pはガス圧力である。本実施例において、前記ガスは、窒素であり、その絶対温度Tは300Kである。ガス圧力Pが1トルである場合、前記窒素のガス分子の平均自由行程
【数6】

が50μmであり、該ガス分子及び自由電子の間の平均自由行程
【数7】

が283μmである。前記電界放出部1164と前記二次電子放出層120の間の距離が十分に小さい場合、前記電界放出装置100は、低真空又は不活性ガス環境下の作業でも破損されない。本実施例において、前記電界放出部1164と前記二次電子放出層120の間の距離は、10μm〜30μmであり、前記電界放出装置100は、ガス圧力Pが9トル〜27トルの低真空環境下で作業することができる。
【0030】
前記電界放出装置100を使用する場合、前記電子引き出し電極118に印加する電圧は、前記陰極114に印加する電圧より高い。前記グリッド電極122に印加する電圧は、前記電子引き出し電極118に印加する電圧より高い。本実施例において、前記陰極114に印加する電圧は、ゼロであり、前記電子引き出し電極118に印加する電圧は、100Vであり、前記グリッド電極122に印加する電圧は、500Vである。前記電界放出体1162は、前記電子引き出し電極118及び前記陰極114の間の電場の作用で、複数の電子を放出する。前記電界放出体1162からの電子が前記二次電子放出層120に衝突して、前記二次電子放出層120から複数の二次電子を放出させることができる。前記二次電子が、前記陰極114及び前記グリッド電極122の間の電場の作用で、前記電子放出部1150によって放出される。
【0031】
図4を参照すると、前記電界放出装置100の製造方法は、絶縁基板110を設置するステップ(a)と、前記絶縁基板110の一つの表面に電子引き出し電極118を形成するステップ(b)と、前記電子引き出し電極118の前記絶縁基板110と反対側の表面に二次電子放出層120を形成するステップ(c)と、前記絶縁基板110の前記電子引き出し電極118が形成された表面に、第二スルーホール1120を有する第一絶縁隔離層112を形成し、前記第二スルーホール1120により、前記二次電子放出層120の表面の一部を露出させるステップ(d)と、電子放出部1150を含む陰極板115を設置するステップ(e)と、前記陰極板115の前記電子放出部1150に近い表面に、電界放出ユニット116を形成するステップ(f)と、前記陰極板115を前記第一絶縁隔離層112の前記絶縁基板110と反対側の表面に固定し、前記第二スルーホール1120を前記電子放出部1150の一部と重畳させ、前記電界放出ユニット116の少なくとも一部が前記二次電子放出層120に対向するステップ(g)と、前記陰極板115の前記電子引き出し電極118と反対側の表面にグリッド電極122を設置するステップ(h)と、を含む。
【0032】
前記ステップ(b)において、前記電子引き出し電極118は、電気めっき、化学めっき、真空めっき、マグネトロンスパッタリングなどの方法によって形成される。本実施例において、前記電子引き出し電極118は、マグネトロンスパッタリング方法によって前記絶縁基板110に形成された円形のアルミニウムフィルムである。
【0033】
前記ステップ(c)において、前記二次電子放出層120は、電気めっき、化学めっき、真空めっき、マグネトロンスパッタリング、コーティング、熱堆積などの方法によって形成される。本実施例において、前記二次電子放出層120は、コーティング方法によって前記電子引き出し電極118に形成された円形の酸化バリウムフィルムである。
【0034】
前記ステップ(d)において、前記第一絶縁隔離層112は、スクリーン印刷、スピンコーティング、厚膜技術などの方法によって形成される。前記第一絶縁隔離層112は、前記絶縁基板110、前記電子引き出し電極118又は前記二次電子放出層120に形成することができる。本実施例において、前記第一絶縁隔離層112は、スクリーン印刷によって絶縁基板110に形成されている。
【0035】
前記ステップ(e)において、前記陰極板115は、第二絶縁隔離層121及び陰極114を含む。前記第二絶縁隔離層121及び陰極114は積層されている。前記陰極114は、導電層又は絶縁層の外側に導電材料を被覆させて形成した自立構造の薄膜である。前記陰極板115は次の階段によって形成される。第一階段において、第三スルーホール1212を含む第二絶縁隔離層121を形成する。第二階段において、前記第二絶縁隔離層121の一つの表面に第一スルーホール1140を含む陰極114を積層する。
【0036】
前記第一階段において、前記第二絶縁隔離層121は、少なくとも一つの孔を含む平板であり、又は、間隔をおいて配列する複数のストリップ状体からなるものである。この場合、前記第三スルーホール1212は、前記平板の孔又は前記複数のストリップ状体の間の隙間である。本実施例において、前記第二絶縁隔離層121は、前記第三スルーホール1212としての直通穴を有する輪形のガラス板である。
【0037】
前記第二階段において、前記陰極114は、スクリーン印刷、電気めっき、CVD、マグネトロンスパッタリング、回転コーティング又は熱堆積などの方法によって形成された導電層である。本実施例において、前記陰極114は、マグネトロンスパッタリング方法によって前記第二絶縁隔離層121に形成された輪形のアルミニウム層である。前記第一スルーホール1140及び第三スルーホール1212の少なくとも一部を重畳させることにより、前記電子放出部1150を形成する。本実施例において、前記第一スルーホール1140と第三スルーホール1212とを、完全に重畳させる。
【0038】
前記ステップ(f)において、前記電界放出ユニット116は、カーボンナノチューブ導電ペーストを印刷して形成し、又は化学気相堆積法によって形成する。本実施例において、前記電界放出ユニット116の形成方法は、前記陰極114に輪形の導電ペースト層を堆積するステップ(f1)と、300℃〜400℃の温度で前記導電ペースト層を乾燥するステップ(f2)と、300℃〜400℃の温度で前記導電ペースト層を焼結(baking)するステップ(f3)と、前記導電ペースト層を冷却して前記電界放出ユニット116を形成するステップ(f4)と、を含む。
【0039】
前記ステップ(f1)において、前記カーボンナノチューブ導電ペースト層は、スクリーン印刷方法によって前記陰極114に堆積される。前記カーボンナノチューブ導電ペーストは、カーボンナノチューブ、低融点ガラス粉末及び有機基材を含む。本実施例において、前記カーボンナノチューブの直径が1nm〜10nmであり、その長さが5μm〜15μmである。前記低融点ガラス粉末の直径が10nmより小さい。前記有機基材は、テルピネオール、エチルセルロース及びセバシン酸ジブチルを含む。前記テルピネオール、エチルセルロース及びセバシン酸ジブチルの重量比が180:11:10である。
【0040】
前記ステップ(f2)において、前記有機基材を揮発させる。本実施例において、真空環境、350℃の温度で前記導電ペースト層を20分間焼結する。
【0041】
前記ステップ(f3)において、前記低融点ガラス粉末が融化される。本実施例において、真空環境、430℃の温度で前記導電ペースト層を30分間焼結する。
【0042】
前記ステップ(f4)において、前記融化されたガラス粉末を凝固させることにより、前記カーボンナノチューブを前記陰極114に固定させる。
【0043】
更に、前記ステップ(f)は、前記ステップ(f4)の後、前記電界放出ユニット116を表面処理するステップ(f5)を含むことができる。前記電界放出ユニット116を表面処理する方法は、プラズマエッチング、レーザーエッチング又は接着テープピーリングなどがある。本実施例において、前記電界放出ユニット116の表面を、接着テープによってピーリングすることにより、前記電界放出ユニット116のカーボンナノチューブを前記電界放出ユニット116の表面に対して垂直に配置し、均一的に分散させることができる。
【0044】
更に、前記ステップ(f)は、前記ステップ(f5)後、前記電界放出ユニット116に保護層を被覆するステップ(f6)を含むことができる。前記保護層は、ジルコニウム炭化物、ハフニウム炭化物及びランタン六ホウ化物など抗イオン衝撃材料の一種又は数種からなる。本実施例において、前記保護層は、前記電界放出ユニット116に露出した各々のカーボンナノチューブの表面を覆っている。
【0045】
前記ステップ(g)において、前記電子放出部1150及び第二スルーホール1120の少なくとも一部を、重畳させる。本実施例において、前記陰極板115を前記第一絶縁隔離層112の前記絶縁基板110と反対側の表面に固定する場合、前記電子放出部1150の全体が前記第二スルーホール1120の中に位置する。
【0046】
前記ステップ(h)において、前記グリッド電極122は、スクリーン印刷、電気めっき、CVD、マグネトロンスパッタリング、コーティング、熱堆積方法によって形成され、又は、メタルメッシュを直接的に前記第二絶縁隔離層121に設置してなるものであることができる。本実施例において、前記グリッド電極122は、ステンレス鋼ネットを直接的に前記第二絶縁隔離層121に設置して形成したものである。
【0047】
(実施例2)
図5を参照すると、本実施例は、電界放出装置200を提供する。本実施例の電界放出装置200は実施例1の電界放出装置100と比べて、次の異なる点がある。本実施例の二次電子放出層220において、陰極214の第一スルーホール2140に対向する領域に、少なくとも一つの第一突出部2202が形成されている。前記陰極214の、前記二次電子放出層220の第一突出部2202に対向する領域に、少なくとも一つの第二突出部2142が形成されている。前記電界放出ユニット216は、前記陰極214の第二突出部2142に配置されて、且つ前記電界放出ユニット216の電界放出体2162は前記第一突出部2202に向いている。
【0048】
前記第一突出部2202は、円錐体であるが、前記第二突出部2142は、前記第一突出部2202の周囲を囲う環形突出物である。前記第二突出部2142と前記第一突出部2202との対向する表面は、互いに平行する。前記電界放出ユニット216の電界放出体2162は、前記第一突出部2202の前記第二突出部2142に対向する表面に垂直に延伸する。
【0049】
(実施例3)
図6を参照すると、本実施例は、電界放出装置300を提供する。本実施例の電界放出装置300は実施例1の電界放出装置100と比べて、次の異なる点がある。本実施例において、第二絶縁隔離層321の厚さが500μmより大きい。前記第二絶縁隔離層321の第三スルーホール3212の壁に、二次電子放出材料が堆積されている。好ましくは、前記第三スルーホール3212の孔径が、陰極314からグリッド電極322に向かう方向に、次第に減少している。前記グリッド電極322は、円環状導電層である。前記円環状グリッド電極322の円孔の直径は、前記第三スルーホール3212の前記グリッド電極322に隣接する端部の直径と同じであることができる。
【0050】
(実施例4)
図7を参照すると、本実施例は、電界放出装置400を提供する。前記電界放出装置400は、実施例1の電界放出装置100と比べて、次の異なる点がある。前記電界放出装置400は、更に一つの二次電子増強電極424及び一つの第三絶縁隔離層426を含む。前記二次電子増強電極424及び第三絶縁隔離層426は、前記第二絶縁隔離層421と前記グリッド電極422の間に、配置されている。前記二次電子増強電極424は、グリッド電極422と前記第三絶縁隔離層426によって電気的に絶縁される。
【0051】
前記二次電子増強電極424は、導電層であり、その厚さは500μmより大きい。前記二次電子増強電極424は、第四スルーホール4240を含む。前記第四スルーホール4240は、陰極414の第一スルーホール4140に対応して配置される。前記二次電子増強電極424の第四スルーホール4240の壁に、二次電子放出材料層4242が堆積されている。前記二次電子増強電極424の第四スルーホール4240の壁が凹凸構造を有することができる。前記第三絶縁隔離層426も、第四スルーホール4240と対応する開口(図示せず)を有する。前記電界放出装置400を使用する場合に、電子引き出し電極418に印加する電圧は、前記陰極414に印加する電圧より高い。前記二次電子増強電極424に印加する電圧は、電子引き出し電極418に印加する電圧より高い。前記グリッド電極422に印加する電圧は、前記二次電子増強電極424に印加する電圧より高い。
【0052】
(実施例5)
図8を参照すると、本実施例は、イオン源10を提供する。前記イオン源10は、真空容器12と、電界放出電子源と、イオン電極14と、を含む。前記電界放出電子源と前記イオン電極14は、それぞれ前記真空容器12の対向する両端に配置される。前記電界放出電子源から放出する電子は、前記真空容器12の中で気体分子と衝突して、前記気体分子が電離されてイオンが生じ、前記イオンは前記イオン電極14の作用で前記真空容器12から放出される。
【0053】
前記真空容器12は、筒状容器である。前記筒状真空容器12の一端が密封されるが、その一端に対向する他の端部にイオン放出口18が形成されている。前記筒状真空容器12の側壁に進気口16が形成されている。前記真空容器12の材料、寸法及び形状に対しては特に制限がない。前記真空容器12は、絶縁材料又は半導体材料からなる場合、その内壁に導電層を形成する必要がある。本実施例において、前記筒状真空容器12は、金属からなり、その断面が、辺長が15mmの正方形である。即ち、前記真空容器12は、一側が密封されない正方体の金属筐体である。金属筐体の前記真空容器12には、一つの電離室15が形成されている。前記真空容器12の密封されない側をイオン放出口18としている。前記イオン源10は、真空環境で作業する必要があるので、前記真空容器12の電離室15が所定の真空度を有することを確保する。前記筒状真空容器12の側壁に形成された進気口16によって、作業気体を該真空容器12に導入させる。前記作業気体は、アルゴンガス、水素ガス、ヘリウムガス及びキセノンガスの一種又は数種である。
【0054】
前記電界放出電子源は、実施例1〜4において提供された電界放出電子源100、200、300、400であることができる。本実施例において、前記イオン源10には、実施例1において提供された電界放出電子源100を採用する。前記電界放出電子源100は、前記真空容器12の電離室15に配置される。前記電界放出電子源100の絶縁基板110は、前記真空容器12のイオン放出口18に対向する面に接触する。前記電界放出電子源100の電界放出ユニット116は、前記絶縁基板110とイオン放出口18の間に位置し、前記電界放出電子源100の電子放出部1150が、前記イオン放出口18に対向する。
【0055】
前記イオン電極14は、金属網状構造体である。前記イオン電極14は、前記真空容器12のイオン放出口18に配置され、且つ前記イオン電極14は、前記真空容器12の側壁によって支持される。前記イオン電極14は、前記真空容器12と絶縁層13によって電気的に絶縁される。
【0056】
前記イオン源10を使用する場合に、前記イオン電極14に負電圧を印加する。前記電界放出電子源100の電界放出ユニット116からの電子が前記電子放出部1150によって放出された後、グリッド電極122を通じて加速されて、前記真空容器12に入射される。前記真空容器12に入射した電子を、気体分子と衝突させることにより、前記気体分子が電離されてイオンが生じ、前記イオンは前記イオン電極14の作用で前記真空容器12から放出される。
【0057】
(実施例6)
図9を参照すると、本実施例は、イオン源20を提供する。前記イオン源20は、真空容器22、電界放出電子源と、陽極24を含む。
【0058】
前記真空容器22は、筒状容器であり、前記筒状真空容器22が対向する二つの端部22a、22bと、側壁22cと、を含む。該対向する二つの端部22a、22b及び側壁22cは、一つの電離室227を構成する。前記筒状真空容器22の一つの端部22aにイオン放出口28が形成され、前記筒状真空容器22の一つの端部22bに電子注入孔27が形成されている。前記筒状真空容器22の側壁22cに進気口26が形成されている。前記真空容器22の材料、寸法及び形状に対しては特に制限がない。前記真空容器22は、絶縁材料又は半導体材料からなる場合、側壁22cの内側に導電層を形成する必要がある。前記真空容器22は、金属材料からなる場合、該金属材料は、モリブデン、鋼又はチタンである。前記イオン源20は、真空環境で作業する必要があるので、前記真空容器22の電離室227が所定の真空度を有することを確保する。前記筒状真空容器22の側壁22cに形成された進気口26によって、作業気体を該真空容器22に導入させる。前記作業気体は、アルゴンガス、水素ガス、ヘリウムガス及びキセノンガスの一種又は数種である。
【0059】
本実施例において、前記筒状真空容器22の断面が円形である。即ち、前記真空容器22は円筒形筐体である。前記筒状真空容器22の長さは、その断面の直径の2倍よりも長くすることができる。好ましくは、前記真空容器22の直径が10mmであり、その長さが36mmである。前記筒状真空容器22の端部22aに形成されたイオン放出口28は、円形である。前記円形イオン放出口28の中心点は、前記円筒形真空容器22の軸線上に位置する。前記筒状真空容器22の端部22bに形成された電子注入孔27は、前記円筒形真空容器22の軸線の一側に位置する。前記イオン放出口28の孔径が1mmであり、前記電子注入孔27の孔径が4mmである。
【0060】
前記電界放出電子源は、実施例1〜4において提供された電界放出電子源100、200、300、400であることができる。本実施例において、前記イオン源20は、実施例1において提供された電界放出電子源100を採用する。前記電界放出電子源100は、前記真空容器22の外部であって、前記筒状真空容器22の電子注入孔27に隣接するように配置される。前記電界放出電子源100の電子放出部1150が、前記電子注入孔27に対向する。前記電界放出電子源100から放出された電子が前記電子注入孔27によって前記筒状真空容器22の電離室227に入射する。
【0061】
前記陽極24は、金属環であり、前記円筒状真空容器22の電離室227に配置される。前記陽極24の内径が0.2mmである。前記環状陽極24の中心点は、前記円筒形真空容器22の軸線上に位置することが好ましい。前記陽極24と真空容器22との間に電位差がある場合、前記電離室227にサドル形の電場が生じる。前記電離室227のサドル形の電場は、電子の運動軌跡を延長するので、電子と作業気体分子の間の衝突率を高めて、前記気体分子が電離されてイオンになることを促進できる。
【0062】
更に、イオン源20は、開口レンズ29を含むことができる。前記開口レンズ29は、前記真空容器22の外部であって、前記イオン放出口28に隣接するように配置される。前記開口レンズ29は、前記イオン放出口28から放出されたイオンを集中させるために配置されている。前記開口レンズ29は、第一電極21、第二電極23及び第三電極25を含む。前記開口レンズ29には、前記第三電極25、前記第二電極23及び前記第一電極21が、前記イオン放出口28を離れる方向に順に積層されている。前記開口レンズ29には、前記第一電極21、第二電極23及び第三電極25を貫通したスルーホール211が形成されている。前記スルーホール211の孔径は、前記第三電極25から前記第一電極21までの方向に、次第に減少している。
【0063】
前記イオン源20を使用する場合に、前記電界放出電子源100の電界放出ユニット116からの電子が前記電子放出部1150によって放出した後、グリッド電極122で加速されて、該グリッド電極122を通じて前記真空容器22の電子注入孔27から電離室227に入射する。前記電離室227に入射した電子は、前記電離室227のサドル形の電場作用で前記電離室227に繰り返して振動され、作業気体分子と衝突して、前記気体分子が電離されてイオンが生じ、該イオンは前記イオン放出口28から放出される。前記真空容器22から放出したイオンは、前記開口レンズ29に達し、且つ前記開口レンズ29に所定のイオン束を形成することができる。
【0064】
(実施例7)
図10を参照すると、本実施例は、イオン源30を提供する。前記イオン源30は、第四絶縁層128と、電界放出電子源と、イオン電極130とを含む。前記電界放出電子源は、実施例1〜4において提供された電界放出電子源100、200、300、400であることができる。本実施例において、前記イオン源30は、実施例1において提供された電界放出電子源100を採用する。
【0065】
前記第四絶縁層128は、前記電界放出電子源100のグリッド電極122の前記絶縁基板110と反対側の表面に設置される。前記第四絶縁層128は、第五スルーホール1280を含む。前記第五スルーホール1280は、前記電子放出部1150に対応するように設置される。前記第五スルーホール1280は、一つの真空空間を画定する。前記第五スルーホール1280の体積が、前記第二スルーホール1120の体積と同じ、又は、前記第二スルーホール1120の体積よりも大きい。前記第四絶縁層128は、筒状構造体であり、その側壁に一つの進気口1282が形成されている。前記進気口1282によって、作業気体を該真空空間に導入させる。前記イオン電極130は、金属網状構造体であり、それは前記第四絶縁層128の側壁によって支持される。前記イオン電極130は、前記第四絶縁層128のグリッド電極122と反対側の端面に接触する。前記イオン源30は、真空環境で作業する必要があるので、前記第四絶縁層128の第五スルーホール1280が所定の真空度を有することを確保する。前記イオン源30を使用する場合に、前記イオン電極130に負電圧を印加する。前記電界放出電子源100の電界放出ユニット116からの電子が前記電子放出部1150によって放出された後、グリッド電極122で加速されて、該グリッド電極122を通じて前記第四絶縁層128の第五スルーホール1280に入射する。前記第四絶縁層128に入射した電子が作業気体分子と衝突することにより、前記気体分子が電離されてイオンを生じ、前記イオンは前記イオン電極130の作用で前記第四絶縁層128から放出される。
【符号の説明】
【0066】
100、200、300、400 電界放出電子源
110、210、310、410 絶縁基板
120、220、320、420 二次電子放出層
118、218、318、418 電子引き出し電極
112、212、312、412 第一絶縁隔離層
1120 第二スルーホール
116、216、316、416 電界放出ユニット
114、214、314、414 陰極
1162、2162 電界放出体
1164、2164 電界放出部
121、221、321、421 第二絶縁隔離層
122、222、322、422 グリッド電極
1140、2140、4140 第一スルーホール
1212、3212 第三スルーホール
1150 電子放出部
115 陰極板
2142 第二突出部
2202 第一突出部
4240 第四スルーホール
3214、4242 二次電子放出材料層
426 第三絶縁隔離層
424 二次電子増強電極
10、20、30 イオン源
12、22 真空容器
14、130 イオン電極
18、28 イオン放出口
16、26、1282 進気口
15、227 電離室
13 絶縁層
24 陽極
211 スルーホール
29 開口レンズ
21 第一電極
23 第二電極
25 第三電極
22a、22b 端部
22c 側壁
27 電子注入孔
128 第四絶縁層
1280 第五スルーホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器と、電界放出電子源と、イオン電極と、を含むイオン源であって、
前記真空容器は、電離室と、イオン放出口と、進気口と、を含み、
前記イオン電極は、前記真空容器のイオン放出口に設置され、
前記電界放出電子源は、前記真空容器の電離室に設置され、
前記電界放出電子源は、絶縁基板と、電子引き出し電極と、二次電子放出層と、陰極板と、電界放出ユニットと、を含み、
前記電子引き出し電極及び二次電子放出層は、前記絶縁基板の一つの表面に配置され、
前記陰極板は、一つの第一絶縁隔離層によって前記電子引き出し電極と間隔をおいて絶縁的に配置され、
前記陰極板の少なくとも一部が前記二次電子放出層に対向し、
前記陰極板は、少なくとも一つの電子放出部を含み、該電子放出部が前記真空容器のイオン放出口に対向し、
前記電界放出ユニットは、前記陰極板の前記二次電子放出層に対向する表面に配置されることを特徴とするイオン源。
【請求項2】
真空容器と、電界放出電子源と、陽極と、を含むイオン源であって、
前記真空容器は、対向する二つの端部と、側壁と、を含み、該対向する二つの端部及び側壁は、一つの電離室を構成し、該側壁に進気口が形成され、前記二つの端部にそれぞれイオン放出口及び電子注入孔が形成され、
前記陽極は、前記真空容器の電離室に設置され、
前記電界放出電子源は、前記電子注入孔に隣接して前記真空容器の外部に配置され、
前記電界放出電子源は、絶縁基板と、電子引き出し電極と、二次電子放出層と、陰極板と、電界放出ユニットと、を含み、
前記電子引き出し電極及び二次電子放出層は、前記絶縁基板の一つの表面に配置され、
前記陰極板は、一つの第一絶縁隔離層によって前記電子引き出し電極と間隔をおいて絶縁的に配置され、
前記陰極板の少なくとも一部が前記二次電子放出層に対向し、
前記陰極板は、少なくとも一つの電子放出部を含み、該電子放出部が前記真空容器の電子注入孔に対向し、
前記電界放出ユニットは、前記陰極板の前記二次電子放出層に対向する表面に配置されることを特徴とするイオン源。
【請求項3】
絶縁層と、電界放出電子源と、イオン電極と、を含むイオン源であって、
前記電界放出電子源は、絶縁基板と、電子引き出し電極と、二次電子放出層と、陰極板と、電界放出ユニットと、グリッド電極と、を含み、
前記電子引き出し電極及び二次電子放出層は、前記絶縁基板の一つの表面に配置され、
前記陰極板は、一つの第一絶縁隔離層によって前記電子引き出し電極と間隔をおいて絶縁的に配置され、
前記陰極板の少なくとも一部が前記二次電子放出層に対向し、
前記陰極板は、少なくとも一つの電子放出部を含み、
前記電界放出ユニットは、前記陰極板の二次電子放出層に対向する表面に配置され、
前記グリッド電極は、前記陰極板の二次電子放出層と反対側の表面に、絶縁的に配置され、
前記絶縁層は、前記電界放出電子源のグリッド電極の前記絶縁基板と反対側の表面に設置され、
前記絶縁層は、第五スルーホールを含み、前記絶縁層の側壁に進気口が形成され、
前記イオン電極は、前記絶縁層のグリッド電極と反対側の端面に接触するように配置されたことを特徴とするイオン源。
【請求項4】
前記電界放出ユニットは、複数の電界放出体を含み、各々の前記電界放出体は、電界放出部を含み、前記電界放出部は、前記二次電子放出層と対向し、前記電界放出部と前記二次電子放出層の間の最大距離が電子とガス分子の平均自由行程より小さいことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかの一項に記載のイオン源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−18905(P2012−18905A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293192(P2010−293192)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】