イオン発生装置
【課題】 相対湿度が低い場合でも、空間の消臭、殺菌を良好に行うことのできるイオン発生装置を提供する。
【解決手段】 この発明は、イオンを発生させるイオン発生手段と、空間の湿度状態を判定する湿度判定手段とを具備するイオン発生装置において、前記湿度判定手段が前記空間の湿度状態が低湿度状態であることを判定した場合に、高湿度状態である時よりもイオンの数を多く発生させる低湿度制御手段を具備することにある。
【解決手段】 この発明は、イオンを発生させるイオン発生手段と、空間の湿度状態を判定する湿度判定手段とを具備するイオン発生装置において、前記湿度判定手段が前記空間の湿度状態が低湿度状態であることを判定した場合に、高湿度状態である時よりもイオンの数を多く発生させる低湿度制御手段を具備することにある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間、特に車室内の殺菌、消臭を行うプラズマクラスタを発生させるイオン発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン発生装置を空気調和装置の室内側の熱交換機を通る通路に形成する場合、湿度が高い状態でイオン発生装置を運転し、プラスイオンとマイナスイオンとを発生させた場合、イオン量が低減したり、ほとんど発生しなくなるなどの問題があった。これを解決するために、特許文献1に開示されるイオン発生装置及び空気調節装置は、電極を有するイオン発生素子に電圧を印加してプラスイオンとしてH+(H2O)n(nは自然数)と、マイナスイオンO2-(H2O)m(mは自然数)を発生させる鋼製を備えたイオン発生装置において、前記イオン発生素子を加熱するための加熱手段を設けることにより、前記電極の近傍の相対湿度を低下させることを特徴とするものである。
【0003】
特許文献2に開示されるイオン発生装置及び空気調節装置は、イオンを発生するイオン発生装置と、温度を検出する温度センサと、湿度を検出する湿度センサと、温度センサにより検出された温度結果と、湿度センサにより検出された湿度検出結果とに基づき、イオン発生装置を制御して通常運転時よりも多量のイオンを発生させる制御を行う制御部とを備えていることを特徴とする。特に、温湿度検出手段によって検出された室内の状態が所定の状態、具体的にはかびが発生しやすい状態又はウイルスが繁殖しやすい状態、例えば温度が高い、湿度が高い、室内が汚れている等の場合に、イオンを多量に発生させる。また、このイオン発生手段は、正イオンと負イオンを発生させる。
【0004】
特許文献3は、プラズマ放電によってプラスとマイナスとのイオン粒子を発生させるクリーン運転モードと、このモードよりもマイナスイオンのイオン粒子の発生比率を増大させるリフレッシュ運転モードとをガスセンサの出力に依存するパラメータに基づき切り替え可能としている車両用空気清浄装置を開示する。この装置において、車室内の空気が「清」状態であるか、「汚」状態であるかを、制御用ガスセンサ演算値と基準値との比(ガスセンサ比)に基づいて判定し、イオン発生器の運転をリフレッシュモード又はクリーンモードで運転するようにしたものである。
【0005】
特許文献4は、正の電圧の印加によりプラスイオンを発生する針状電極と、負の電圧の印加によりマイナスイオンを発生する針状陰電極と、針状陽電極に正電圧を印加することと針状陰電極に負電圧を印加することとを交互に周期的に繰り返して行う電圧印加手段とを有する空気清浄装置及びこれを搭載した空気清浄装置を開示する。
【0006】
特許文献5には、ガラス板に埋設されたメッシュ状の第1電極と、前記ガラス板の表面に設けられたメッシュ状の第2電極とを対向させ、前記第1及び第2電極間に、交流電圧を印加することにより正イオンと負イオンとを発生させるようにしたイオン発生装置及びそれを備えた空気清浄機並びに空気調和機が開示される。
【特許文献1】特開2003−123939号公報
【特許文献2】特開2005−30685号公報
【特許文献3】特開2005−75234号公報
【特許文献4】特開2005−243288号公報
【特許文献5】特開2002−65838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献に開示されるように、従来の負イオンのみを発生させるイオン発生装置に対して、正イオンと負イオンを同時に発生させるイオン発生装置においては、化学反応によって活性種である過酸化水素H2O2又は水酸化ラジカル・OHが生成し、これらの極めて強力な活性によって、空気中の浮遊細菌、微生物を除去することができるものである。
【0008】
特許文献1で示されるように、湿度が高い状態でイオン発生装置を運転した場合、イオン量が低減したり、ほとんど発生しなくなるなどの問題点があることが指摘されている。このように、イオン発生装置自体においては、湿度は低い方がイオン発生量は多くなることが指摘されている。
【0009】
しかしながら、発生したイオンについて、相対湿度が低い場合(40%RH)及び相対湿度が高い場合(70%RH)のイオン残存率と時間の関係を測定した場合、例えば図6で示すように、相対湿度70%の場合は、イオン残存率50%まで降下するのに1.3秒かかるのに対して、相対湿度40%の場合は、0.9秒であった。このように、湿度が高い環境ほど、イオンとして存在する時間が長くなり、逆に湿度の低い環境ではすぐに中和してしまい、除菌、消臭に有効でないことが分かった。
【0010】
このため、この発明は、相対湿度が低い場合でも、空間の消臭、殺菌を良好に行うことのできるイオン発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
よって、この発明は、イオンを発生させるイオン発生手段と、空間の湿度状態を判定する湿度判定手段とを具備するイオン発生装置において、前記湿度判定手段が前記空間の湿度状態が低湿度状態であることを判定した場合に、高湿度状態である時よりもイオンの数を多く発生させる低湿度制御手段を具備することにある。
【0012】
また、前記イオン発生手段は、車両用空調装置内に設置され、前記空間は車室であることが望ましい。
【0013】
さらに、前記車両用空調装置の稼働の開始と同時にイオン発生手段を起動し、車両用空調装置の稼働の停止と同時にイオン発生手段を停止させる通常制御手段と、前記車両用空調装置の稼働が停止した後、車両用空調装置の吹出口をすべて閉鎖すると同時に所定時間イオン発生手段を稼働させる空調内殺菌手段とを具備することが望ましい。
【0014】
さらにまた、前記イオン発生手段は、プラスイオンとマイナスイオンとを発生させることが望ましい。
【0015】
また、前記湿度判定手段は、前記空間の相対湿度を検出する湿度センサを含むことが望ましいが、車両用空調装置の運転状況から湿度状態を判定する湿度状態判定手段であってもよいものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、前記湿度判定手段が前記空間の湿度状態が低湿度状態であることを判定した場合に、高湿度状態である時よりもイオンの数を多く発生させることができるので、乾燥した季節でも除菌が可能となり、より乗員に対して有効な空気浄化が可能となる。
【0017】
また、本発明によれば、車両用空調装置の停止後に、所定時間空調装置内の除菌、消臭を行う時にも、相対湿度が低い場合にも十分なイオンを発生させることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の実施例について図面により説明する。
【実施例】
【0019】
本発明に係るイオン発生装置1は、例えば図1に示すように車両用空調装置2に設けられる。この車両用空調装置2は、例えば車両のセンターコンソール部に搭載される縦型センター置きタイプの空調装置で、図示しない送風機によって外気又は室内空気を吸引し、車室3内に送風するためのもので、空調ケース4によって画成された空気流路5上に、冷却用のエバポレータ6、加熱用のヒータコア7、加熱用ヒータコア7を通過する空気量を調節するエアミックスドア8、及び前記エバポレータ6の上流側に配置されるエアフィルタ9が設けられる。また、空気流路5の下流側には、フットドア14によって開閉されるフット吹出口10と、ベントドア15によって開閉されるベント吹出口11と、デフドア16によって開閉されるデフ吹出口12とが開口する。
【0020】
本発明に係るイオン発生装置1は、エバポレータ6の下流側に設けられる。このイオン発生装置1としては、例えば図2(a)で示されるように、セラミックプレート20を挟持するように設けられる一対の電極21、22に高圧交流電源23から高圧交流電圧を印加してセラミックプレート20にプラズマ放電を発生させることによって、それぞれの電極から交互に正イオンを有するクラスタと、陰イオンを有するクラスタを発生させる交流放電式のものが望ましい。また、図2(b)で示すように、交流電源に対してダイオード24によって整流された針状陽極放電電極25と、ダイオード26によって整流された針状陰極放電電極27とを有し、それぞれが金網状電極28に対して放電し、正イオンを有するクラスタと、負イオンを有するクラスタとを発生させるタイプのものであっても良い。
【0021】
以上のようなイオン発生装置1は、空調制御を行うコントロールユニット(C/U)40によって空調制御の一環として制御されることが望ましい。このコントロールユニット40には、空調装置の温度設定スイッチからなる温度設定手段31、空調装置の吹出モードを設定するスイッチからなるモード設定手段32、車室内及び外気の温度を検出するセンサからなる温度検出手段33及び車室内の湿度を検出するセンサからなる湿度検出手段34、さらには走行用エンジンの制御を行うエンジンコントロールユニット(ECU)30からの信号が少なくとも入力され、これによってコントロールユニット40は、ミックスドア8、デフドア16、ベントドア15、フットドア14及びブロワ19を制御するものであり、さらにはイオン発生装置1を制御するものである。
【0022】
以上の構成により、イオン発生装置1の制御は、例えば図4のフローチャート図に示すものである。このフローチャートは、図示しないイグニッションの投入(電源ON)によってステップ100から開始される。その信号はECU30から受信される。ステップ110では、図示しない走行用エンジンが始動したか否か(ENGINE ON)が判定され、走行用エンジンが始動しない場合(N)には、この判定が繰り返される。ステップ110の判定において走行用エンジンが始動したこと(Y)が判定されると、ステップ120に進んで、空調装置(AC)2が始動したか否か判定され、始動しない場合(N)にはこの判定が繰り返される。ステップ120の判定において空調装置2の始動が判定される(Y)とステップ130に進んでイオン発生装置1が始動を開始する。
【0023】
このイオン発生装置1の稼働は、ステップ140において空調装置の停止(AC OFF)が判定されるまで継続され、空調装置2が停止と判定された場合には、ステップ150に進んでイオン発生装置1の稼働を停止する。
【0024】
さらに、ステップ160の判定において、走行用エンジンの稼働の停止(ENGINE OFF)が判定された場合、ステップ170において電源を走行用エンジンのジェネレータからバッテリー電源に切り替え、ステップ180においてデフドア16、ベントドア15、フットドア14を作動させてそれぞれの吹出口10,11,12を閉鎖し、ステップ190において、エアミックスドア8をフルクール状態(FC)にしてヒータコア7に至る通路を閉鎖し、ステップ200でイオン発生装置1を稼働させると共にブロワ19を、ステップ200の判定において稼働時間tsが所定時間toに満たない場合(Y)には稼働を継続し、稼働時間tsが所定時間toに到達した場合(N)にはステップ220に進んでイオン発生装置1及びブロワ19を停止させ、ステップ230においてステップ100に回帰するものである。
【0025】
以上のように、上記空調装置2は、通常のイオン発生装置1の制御に加えて、エンジン停止後に、所定時間、空調装置を密閉状態でイオン発生装置1を稼働させて、空調装置2内の消臭、除菌を実行することができるものである。
【0026】
また、上記イオン発生装置1のイオン制御は、例えば図5のフローチャート図に示すものである。前記イオン発生装置1の稼働が開始させると、ステップ300から制御が開始され、ステップ310において、湿度検出手段34によって検出された湿度信号及び/若しくは温度検出手段33によって検出された温度から相対湿度Hrdを演算し、ステップ320において演算された相対湿度Hrdが所定の閾値Hs以上か否か(Hrd<Hs?)が判定される。この判定において、相対湿度Hrdが所定値Hs以上の場合(N)には、ステップ340に進んで通常の電圧にて放電を行うイオン通常制御が実行され、ステップ320の判定において、相対湿度Hrdが所定値Hsより低いと判定された場合(Y)には、前記イオン発生装置1に供給される交流電圧を所定値上昇させて発生するイオン量を多くするように、イオン高濃度制御を実行するものである。
【0027】
これによって、車室内3の相対湿度が低い場合には、イオン量を多くする制御が行われるので、残存するイオン量を維持でき、効率よく除菌、消臭が可能となるものである。
【0028】
また、車両用空調装置2が稼働状態にある場合には、ステップ310の相対湿度の演算及びステップ320の相対湿度の判定に代えて、空調モードを読み込んで、空調モードが冷房モードである場合には、イオン発生装置1を通過する空気の湿度が低下していると判断して、ステップ330に進んでイオン高濃度制御を実行するようにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るイオン発生装置を具備した車両用空調装置の概略構成図である。
【図2】(a)は交流高電圧式のイオン発生装置の例、(b)は針状電極を有するイオン発生装置の例を示したものである。
【図3】空調装置の制御装置の構成を示したブロック図である。
【図4】イオン発生装置の制御例を示したフローチャート図である。
【図5】イオン制御の一例を示したフローチャート図である。
【図6】相対湿度が高い場合と低い場合のイオン残存率と時間とを関係を示した特性線図である。
【符号の説明】
【0030】
1 イオン発生装置
2 車両用空調装置
3 車室内
4 空調ケース
5 空気流路
6 エバポレータ
7 ヒータコア
8 エアミックスドア
9 エアフィルタ
10 フット吹出口
11 ベント吹出口
12 デフ吹出口
14 フットドア
15 ベントドア
16 デフドア
20 セラミックプレート
21、22 電極
23 交流高圧電源
24,26 ダイオード
25 針状陽極放電電極
27 針状陰極放電電極
28 金網状電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間、特に車室内の殺菌、消臭を行うプラズマクラスタを発生させるイオン発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン発生装置を空気調和装置の室内側の熱交換機を通る通路に形成する場合、湿度が高い状態でイオン発生装置を運転し、プラスイオンとマイナスイオンとを発生させた場合、イオン量が低減したり、ほとんど発生しなくなるなどの問題があった。これを解決するために、特許文献1に開示されるイオン発生装置及び空気調節装置は、電極を有するイオン発生素子に電圧を印加してプラスイオンとしてH+(H2O)n(nは自然数)と、マイナスイオンO2-(H2O)m(mは自然数)を発生させる鋼製を備えたイオン発生装置において、前記イオン発生素子を加熱するための加熱手段を設けることにより、前記電極の近傍の相対湿度を低下させることを特徴とするものである。
【0003】
特許文献2に開示されるイオン発生装置及び空気調節装置は、イオンを発生するイオン発生装置と、温度を検出する温度センサと、湿度を検出する湿度センサと、温度センサにより検出された温度結果と、湿度センサにより検出された湿度検出結果とに基づき、イオン発生装置を制御して通常運転時よりも多量のイオンを発生させる制御を行う制御部とを備えていることを特徴とする。特に、温湿度検出手段によって検出された室内の状態が所定の状態、具体的にはかびが発生しやすい状態又はウイルスが繁殖しやすい状態、例えば温度が高い、湿度が高い、室内が汚れている等の場合に、イオンを多量に発生させる。また、このイオン発生手段は、正イオンと負イオンを発生させる。
【0004】
特許文献3は、プラズマ放電によってプラスとマイナスとのイオン粒子を発生させるクリーン運転モードと、このモードよりもマイナスイオンのイオン粒子の発生比率を増大させるリフレッシュ運転モードとをガスセンサの出力に依存するパラメータに基づき切り替え可能としている車両用空気清浄装置を開示する。この装置において、車室内の空気が「清」状態であるか、「汚」状態であるかを、制御用ガスセンサ演算値と基準値との比(ガスセンサ比)に基づいて判定し、イオン発生器の運転をリフレッシュモード又はクリーンモードで運転するようにしたものである。
【0005】
特許文献4は、正の電圧の印加によりプラスイオンを発生する針状電極と、負の電圧の印加によりマイナスイオンを発生する針状陰電極と、針状陽電極に正電圧を印加することと針状陰電極に負電圧を印加することとを交互に周期的に繰り返して行う電圧印加手段とを有する空気清浄装置及びこれを搭載した空気清浄装置を開示する。
【0006】
特許文献5には、ガラス板に埋設されたメッシュ状の第1電極と、前記ガラス板の表面に設けられたメッシュ状の第2電極とを対向させ、前記第1及び第2電極間に、交流電圧を印加することにより正イオンと負イオンとを発生させるようにしたイオン発生装置及びそれを備えた空気清浄機並びに空気調和機が開示される。
【特許文献1】特開2003−123939号公報
【特許文献2】特開2005−30685号公報
【特許文献3】特開2005−75234号公報
【特許文献4】特開2005−243288号公報
【特許文献5】特開2002−65838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献に開示されるように、従来の負イオンのみを発生させるイオン発生装置に対して、正イオンと負イオンを同時に発生させるイオン発生装置においては、化学反応によって活性種である過酸化水素H2O2又は水酸化ラジカル・OHが生成し、これらの極めて強力な活性によって、空気中の浮遊細菌、微生物を除去することができるものである。
【0008】
特許文献1で示されるように、湿度が高い状態でイオン発生装置を運転した場合、イオン量が低減したり、ほとんど発生しなくなるなどの問題点があることが指摘されている。このように、イオン発生装置自体においては、湿度は低い方がイオン発生量は多くなることが指摘されている。
【0009】
しかしながら、発生したイオンについて、相対湿度が低い場合(40%RH)及び相対湿度が高い場合(70%RH)のイオン残存率と時間の関係を測定した場合、例えば図6で示すように、相対湿度70%の場合は、イオン残存率50%まで降下するのに1.3秒かかるのに対して、相対湿度40%の場合は、0.9秒であった。このように、湿度が高い環境ほど、イオンとして存在する時間が長くなり、逆に湿度の低い環境ではすぐに中和してしまい、除菌、消臭に有効でないことが分かった。
【0010】
このため、この発明は、相対湿度が低い場合でも、空間の消臭、殺菌を良好に行うことのできるイオン発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
よって、この発明は、イオンを発生させるイオン発生手段と、空間の湿度状態を判定する湿度判定手段とを具備するイオン発生装置において、前記湿度判定手段が前記空間の湿度状態が低湿度状態であることを判定した場合に、高湿度状態である時よりもイオンの数を多く発生させる低湿度制御手段を具備することにある。
【0012】
また、前記イオン発生手段は、車両用空調装置内に設置され、前記空間は車室であることが望ましい。
【0013】
さらに、前記車両用空調装置の稼働の開始と同時にイオン発生手段を起動し、車両用空調装置の稼働の停止と同時にイオン発生手段を停止させる通常制御手段と、前記車両用空調装置の稼働が停止した後、車両用空調装置の吹出口をすべて閉鎖すると同時に所定時間イオン発生手段を稼働させる空調内殺菌手段とを具備することが望ましい。
【0014】
さらにまた、前記イオン発生手段は、プラスイオンとマイナスイオンとを発生させることが望ましい。
【0015】
また、前記湿度判定手段は、前記空間の相対湿度を検出する湿度センサを含むことが望ましいが、車両用空調装置の運転状況から湿度状態を判定する湿度状態判定手段であってもよいものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、前記湿度判定手段が前記空間の湿度状態が低湿度状態であることを判定した場合に、高湿度状態である時よりもイオンの数を多く発生させることができるので、乾燥した季節でも除菌が可能となり、より乗員に対して有効な空気浄化が可能となる。
【0017】
また、本発明によれば、車両用空調装置の停止後に、所定時間空調装置内の除菌、消臭を行う時にも、相対湿度が低い場合にも十分なイオンを発生させることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の実施例について図面により説明する。
【実施例】
【0019】
本発明に係るイオン発生装置1は、例えば図1に示すように車両用空調装置2に設けられる。この車両用空調装置2は、例えば車両のセンターコンソール部に搭載される縦型センター置きタイプの空調装置で、図示しない送風機によって外気又は室内空気を吸引し、車室3内に送風するためのもので、空調ケース4によって画成された空気流路5上に、冷却用のエバポレータ6、加熱用のヒータコア7、加熱用ヒータコア7を通過する空気量を調節するエアミックスドア8、及び前記エバポレータ6の上流側に配置されるエアフィルタ9が設けられる。また、空気流路5の下流側には、フットドア14によって開閉されるフット吹出口10と、ベントドア15によって開閉されるベント吹出口11と、デフドア16によって開閉されるデフ吹出口12とが開口する。
【0020】
本発明に係るイオン発生装置1は、エバポレータ6の下流側に設けられる。このイオン発生装置1としては、例えば図2(a)で示されるように、セラミックプレート20を挟持するように設けられる一対の電極21、22に高圧交流電源23から高圧交流電圧を印加してセラミックプレート20にプラズマ放電を発生させることによって、それぞれの電極から交互に正イオンを有するクラスタと、陰イオンを有するクラスタを発生させる交流放電式のものが望ましい。また、図2(b)で示すように、交流電源に対してダイオード24によって整流された針状陽極放電電極25と、ダイオード26によって整流された針状陰極放電電極27とを有し、それぞれが金網状電極28に対して放電し、正イオンを有するクラスタと、負イオンを有するクラスタとを発生させるタイプのものであっても良い。
【0021】
以上のようなイオン発生装置1は、空調制御を行うコントロールユニット(C/U)40によって空調制御の一環として制御されることが望ましい。このコントロールユニット40には、空調装置の温度設定スイッチからなる温度設定手段31、空調装置の吹出モードを設定するスイッチからなるモード設定手段32、車室内及び外気の温度を検出するセンサからなる温度検出手段33及び車室内の湿度を検出するセンサからなる湿度検出手段34、さらには走行用エンジンの制御を行うエンジンコントロールユニット(ECU)30からの信号が少なくとも入力され、これによってコントロールユニット40は、ミックスドア8、デフドア16、ベントドア15、フットドア14及びブロワ19を制御するものであり、さらにはイオン発生装置1を制御するものである。
【0022】
以上の構成により、イオン発生装置1の制御は、例えば図4のフローチャート図に示すものである。このフローチャートは、図示しないイグニッションの投入(電源ON)によってステップ100から開始される。その信号はECU30から受信される。ステップ110では、図示しない走行用エンジンが始動したか否か(ENGINE ON)が判定され、走行用エンジンが始動しない場合(N)には、この判定が繰り返される。ステップ110の判定において走行用エンジンが始動したこと(Y)が判定されると、ステップ120に進んで、空調装置(AC)2が始動したか否か判定され、始動しない場合(N)にはこの判定が繰り返される。ステップ120の判定において空調装置2の始動が判定される(Y)とステップ130に進んでイオン発生装置1が始動を開始する。
【0023】
このイオン発生装置1の稼働は、ステップ140において空調装置の停止(AC OFF)が判定されるまで継続され、空調装置2が停止と判定された場合には、ステップ150に進んでイオン発生装置1の稼働を停止する。
【0024】
さらに、ステップ160の判定において、走行用エンジンの稼働の停止(ENGINE OFF)が判定された場合、ステップ170において電源を走行用エンジンのジェネレータからバッテリー電源に切り替え、ステップ180においてデフドア16、ベントドア15、フットドア14を作動させてそれぞれの吹出口10,11,12を閉鎖し、ステップ190において、エアミックスドア8をフルクール状態(FC)にしてヒータコア7に至る通路を閉鎖し、ステップ200でイオン発生装置1を稼働させると共にブロワ19を、ステップ200の判定において稼働時間tsが所定時間toに満たない場合(Y)には稼働を継続し、稼働時間tsが所定時間toに到達した場合(N)にはステップ220に進んでイオン発生装置1及びブロワ19を停止させ、ステップ230においてステップ100に回帰するものである。
【0025】
以上のように、上記空調装置2は、通常のイオン発生装置1の制御に加えて、エンジン停止後に、所定時間、空調装置を密閉状態でイオン発生装置1を稼働させて、空調装置2内の消臭、除菌を実行することができるものである。
【0026】
また、上記イオン発生装置1のイオン制御は、例えば図5のフローチャート図に示すものである。前記イオン発生装置1の稼働が開始させると、ステップ300から制御が開始され、ステップ310において、湿度検出手段34によって検出された湿度信号及び/若しくは温度検出手段33によって検出された温度から相対湿度Hrdを演算し、ステップ320において演算された相対湿度Hrdが所定の閾値Hs以上か否か(Hrd<Hs?)が判定される。この判定において、相対湿度Hrdが所定値Hs以上の場合(N)には、ステップ340に進んで通常の電圧にて放電を行うイオン通常制御が実行され、ステップ320の判定において、相対湿度Hrdが所定値Hsより低いと判定された場合(Y)には、前記イオン発生装置1に供給される交流電圧を所定値上昇させて発生するイオン量を多くするように、イオン高濃度制御を実行するものである。
【0027】
これによって、車室内3の相対湿度が低い場合には、イオン量を多くする制御が行われるので、残存するイオン量を維持でき、効率よく除菌、消臭が可能となるものである。
【0028】
また、車両用空調装置2が稼働状態にある場合には、ステップ310の相対湿度の演算及びステップ320の相対湿度の判定に代えて、空調モードを読み込んで、空調モードが冷房モードである場合には、イオン発生装置1を通過する空気の湿度が低下していると判断して、ステップ330に進んでイオン高濃度制御を実行するようにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るイオン発生装置を具備した車両用空調装置の概略構成図である。
【図2】(a)は交流高電圧式のイオン発生装置の例、(b)は針状電極を有するイオン発生装置の例を示したものである。
【図3】空調装置の制御装置の構成を示したブロック図である。
【図4】イオン発生装置の制御例を示したフローチャート図である。
【図5】イオン制御の一例を示したフローチャート図である。
【図6】相対湿度が高い場合と低い場合のイオン残存率と時間とを関係を示した特性線図である。
【符号の説明】
【0030】
1 イオン発生装置
2 車両用空調装置
3 車室内
4 空調ケース
5 空気流路
6 エバポレータ
7 ヒータコア
8 エアミックスドア
9 エアフィルタ
10 フット吹出口
11 ベント吹出口
12 デフ吹出口
14 フットドア
15 ベントドア
16 デフドア
20 セラミックプレート
21、22 電極
23 交流高圧電源
24,26 ダイオード
25 針状陽極放電電極
27 針状陰極放電電極
28 金網状電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンを発生させるイオン発生手段と、空間の湿度状態を判定する湿度判定手段とを具備するイオン発生装置において、
前記湿度判定手段が前記空間の湿度状態が低湿度状態であることを判定した場合に、高湿度状態である時よりもイオンの数を多く発生させる低湿度制御手段を具備することを特徴とするイオン発生装置。
【請求項2】
前記イオン発生手段は、車両用空調装置内に設置され、前記空間は車室であることを特徴とする請求項1記載のイオン発生装置。
【請求項3】
前記車両用空調装置の稼働の開始と同時にイオン発生手段を起動し、車両用空調装置の稼働の停止と同時にイオン発生手段を停止させる通常制御手段と、
前記車両用空調装置の稼働が停止した後、車両用空調装置の吹出口をすべて閉鎖すると同時に所定時間イオン発生手段を稼働させる空調内殺菌手段とを具備することを特徴とする請求項2に記載のイオン発生装置。
【請求項4】
前記イオン発生手段は、プラスイオンとマイナスイオンとを発生させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のイオン発生装置。
【請求項5】
前記湿度判定手段は、前記空間の相対湿度を検出する湿度センサを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のイオン発生装置。
【請求項6】
前記湿度判定手段は、車両用空調装置の運転状況から湿度状態を判定する湿度状態判定手段であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載のイオン発生装置。
【請求項1】
イオンを発生させるイオン発生手段と、空間の湿度状態を判定する湿度判定手段とを具備するイオン発生装置において、
前記湿度判定手段が前記空間の湿度状態が低湿度状態であることを判定した場合に、高湿度状態である時よりもイオンの数を多く発生させる低湿度制御手段を具備することを特徴とするイオン発生装置。
【請求項2】
前記イオン発生手段は、車両用空調装置内に設置され、前記空間は車室であることを特徴とする請求項1記載のイオン発生装置。
【請求項3】
前記車両用空調装置の稼働の開始と同時にイオン発生手段を起動し、車両用空調装置の稼働の停止と同時にイオン発生手段を停止させる通常制御手段と、
前記車両用空調装置の稼働が停止した後、車両用空調装置の吹出口をすべて閉鎖すると同時に所定時間イオン発生手段を稼働させる空調内殺菌手段とを具備することを特徴とする請求項2に記載のイオン発生装置。
【請求項4】
前記イオン発生手段は、プラスイオンとマイナスイオンとを発生させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のイオン発生装置。
【請求項5】
前記湿度判定手段は、前記空間の相対湿度を検出する湿度センサを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のイオン発生装置。
【請求項6】
前記湿度判定手段は、車両用空調装置の運転状況から湿度状態を判定する湿度状態判定手段であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載のイオン発生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2009−295359(P2009−295359A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146394(P2008−146394)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(500309126)株式会社ヴァレオサーマルシステムズ (282)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(500309126)株式会社ヴァレオサーマルシステムズ (282)
【Fターム(参考)】
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