説明

イオン発生装置

【課題】長寿命のイオンを天井から広範囲に送り出して室内の除菌や脱臭を行うイオン発生装置を提供することを目的とするものである。
【解決手段】天井に本体を埋め込み、天井面からイオンを発生させるイオン発生装置であって、本体は、円筒状の本体ケース内に仕切板と、この仕切板の下方に送風手段と、前記仕切板を貫通した開口に静電霧化手段と、前記本体ケースの下端に吸込み口と吹出し口を有するグリルとを備え、前記静電霧化手段は、ペルチェ素子と、ペルチェ素子の冷却面に接する放電電極および対向電極からなる霧化部と、放熱面に接する冷却フィンとで構成され、本体ケース内に螺旋状の空気流路を設けて旋回気流を作り出し、冷却フィンに当てた旋回気流を吹出し口から左右斜め下方向に向きを変えて吹出すことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内空間の除菌や脱臭を行うイオン発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、空気中にイオンやラジカルなどの活性種(以後イオンと記載)を供給して空気中の菌を抑制したり(除菌)、空気中の臭いを分解して取り除く(脱臭)イオン発生装置が空気浄化を目的として開発され、一般家庭に広く普及している。ここで、天井への設置を目的としたものとして特許文献1に記載されるようなイオン発生装置が考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−230706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるイオン発生装置は、発生したイオンを気流に載せて下方に流出させる構造となっているが、この場合、真下の空間のみにイオンを供給することになり、部屋の隅々までというように幅広い範囲に供給できないという課題を有する。
【0005】
また、イオンは単体では不安定で寿命が短いため遠くまで供給する前に消えてしまうという課題を有する。
【0006】
また、下方向に気流を流すための送風機および流路が高さ方向に大きくなっており、高さ寸法に限りある天井に取り付けることが難しくなるという課題を有する。
【0007】
そこで、本発明のイオン発生装置は薄型で簡単に天井に設置でき、また、広範囲にわたって長寿命のイオンを供給して部屋の隅々まで空気をきれいにするのみならず物質の付着菌および付着臭を取り除くことを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、この目的を達成するために、本発明のイオン発生装置は、天井に本体を埋め込み、天井面からイオンを発生させるイオン発生装置であって、本体は、円筒状の本体ケース内に仕切板と、この仕切板の下方に送風手段と、前記仕切板を貫通した開口に静電霧化手段と、前記本体ケースの下端に吸込み口と吹出し口を有するグリルとを備え、前記静電霧化手段は、ペルチェ素子と、ペルチェ素子の冷却面 に接する放電電極および対向電極からなる霧化部と、放熱面に接する冷却フィンとで構成され、本体ケース内に螺旋状の空気流路を設けて旋回気流を作り出し、冷却フィンに当てた旋回気流を吹出し口から左右斜め下方向に吹出すことにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のイオン発生装置は天井裏につかえることなく天井に設置が可能でかつ、長寿命のイオンを供給して部屋の隅々まで空気をきれいにするのみならず物質の付着菌および付着臭を取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の静電霧化手段の霧化部における水被覆イオンの発生原理を示す図
【図2】同イオン発生装置の構成図
【図3】同イオン発生装置の下半分を示す構成図
【図4】同イオン発生装置の上半分を示す構成図
【図5】同イオン発生装置の組立図
【図6】同グリルを示す構成図
【図7】同イオン発生装置による部屋内各面の水被覆イオン濃度を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
(実施の形態1)
本発明の静電霧化手段における水被覆イオンの発生原理を図1に示す。
【0013】
静電霧化手段1は霧化部6と熱電素子の一種であるペルチェ素子7およびペルチェ素子を冷却する冷却フィン8とで構成される。更に霧化部は球状の先端を有する放電電極2と中央に孔の開いたリング状の対向電極3とで構成され、放電電極2はペルチェ素子7の冷却面と接合されている。
【0014】
その際放熱面と接する冷却フィンを冷やすことで放熱面に発生する熱を逃がし、ペルチェ素子7の冷却面の冷却性能を確保している。そしてペルチェ素子7によって放電電極2を冷却して露点温度以下にすることで放電電極2の先端に結露水を生成する。
【0015】
具体的には、高圧電源9を接続し、放電電極2の先端に結露水を有する状態で放電電極2に例えば−3〜−5kV程度、対向電極3に0kVの電圧をそれぞれ印加すると、電場によって対向電極3に引き寄せられ、引き寄せられた結露水の先端に電荷が集中する。
【0016】
結露水の先端は集中した電荷を保持するだけの表面積が不足し、表面積を増やすために直径数ナノメートルの微細な水粒子に分裂する。分裂した水粒子は電場の向きに沿って対向電極3に向かって飛んでいき、対向電極3中央にある孔を通過して静電霧化手段1の外側に流出する。
【0017】
この現象によって結露水の先端は針のように尖った形状となる。この尖った先端形状を有する状態の結露水のことをテイラーコーン4と呼ぶ。ここで、放電電極2の先端はテイラーコーン4を作り出すのに必要な量の結露水を得るためにある一定以上の表面積を有することが必要となる。したがって半径0.1〜1mm程度の球体状としている。
【0018】
テイラーコーン4の有する尖った先端には電荷が集中する。そのため対向電極3との間でコロナ放電が発生する。テイラーコーン4の先端近傍ではコロナ放電によって空気中に含まれる水や酸素分子が分解され、OHラジカルなど強い酸化分解作用を有する活性種が発生する。そして活性種は前述の水粒子に覆われる。これを水被覆イオン5と呼ぶ。
【0019】
OHラジカル等の活性種は化学的に不安定であり、空気中に含まれる窒素や硫黄成分などと結合し、それらを酸化して自身は分解し消滅する。このプロセスは数マイクロ秒で起こるため、単体で存在した場合の活性種の寿命はとても短い。
【0020】
しかし、水被覆イオン5に含まれる活性種は微細な水粒子によって守られるため、600秒程度ととても長い寿命を有する。その長い寿命の間に水被覆イオン5は空気中の臭気や浮遊菌、または壁面や床面に存在する臭気や菌に付着し、分解や除菌を行うことが可能となる。
【0021】
次にイオン発生装置27の本体全体の構造について図2、3、4、5および図6を用いて説明する。図2は、イオン発生装置27を天井に設置した状態で斜め下から見た構成を示し、図3は、図2のグリル11を取ったイオン発生装置27を斜め下から見た構成を示し、図4は、図3の仕切り板18の取付け断面を斜め下から見た構成を示している。図5はイオン発生装置27の組立図である。
【0022】
図5に示すとおり本体ケース10内部の部品配置は下からグリル11、霧化部カバー19、霧化部6、霧化部6をメインの空気流路から分離するための仕切り板18、冷却フィン8、横に寝かせて吸込みを下に向けたシロッコファン23となっている。
【0023】
また、全体の高さ寸法を小さくするために(本体ケース10よりも幅と奥行寸法が大きくて)高さ寸法を小さくした制御基板の入った制御ボックス16が本体ケース10の上に設けられている。
【0024】
グリル11の構造を図6に示す。グリル11は左右にそれぞれ本体吹出し口左13および本体吹出し口右25を有しており、空気を送るための内部ダクト26がそれぞれの吹出し口に接続されている。内部ダクト26は例えば図6に示すようにドームの内側に肉を盛るような形状をしており、メインの空気流路を流れてきた旋回状の気流をドーム内に集めるとともに、旋回してきた気流の向きをコアンダ効果により斜め下方向に変える機能を有する。
【0025】
本体ケース10と、バネ性を有する板15を有する固定リング14とを接合した後に天井穴にはめ込み、バネ性を有する板15の横に拡がる力を用いて天井に固定している。
【0026】
上記構成において、図2に示すメインの空気流路17を上流から追っていくと、図2と図4に示すようにシロッコファン23はグリル中央の本体吸込み口12を通じて部屋の空気を吸込み、シロッコファンの吹出し口24から空気が送り出される。送り出された空気は螺旋を描くメインの空気流路17を通って本体ケース10内をその内壁に沿って旋回して流れる。そして仕切り板18よりも上にはみ出した冷却フィン8に当たって冷却フィン8を冷やす。ここで、空気はグリル11中央に設けられた吸込み口からイオン発生装置本体に吸い込まれるため、グリル11の外側から吸い込まれる場合に比べて空気中に含まれる粉塵が付着して天井が汚れる割合を小さくすることができる。
【0027】
また、図3に示すように、霧化部6への埃の付着を防ぎながら水被覆イオン5を室内に供給するために、メインの空気流路17を流れる空気の一部が霧化部カバー19内に入り、そして出ていってメインの空気流路17に合流させるためのサブの空気流路22を設ける構造とした。
【0028】
具体的には静電霧化手段1の手前および後ろに位置する仕切り板18に上流側バイパス孔20および下流側バイパス孔21を設けている。このようにしてメインの空気流路17を流れる空気は一部が上流側バイパス孔20を通り霧化部カバー19内に送り込まれる。霧化部カバー19内に送り込まれた空気は霧化部カバー19内のサブの空気流路22を流れ、霧化部カバー19内に充満する霧化部6で発生させた水被覆イオン5を含みながら、静電霧化手段1の後ろの位置に設けられた下流側バイパス孔21を通ってメインの空気流路17に合流する。
【0029】
このようにして水被覆イオンを含んだ空気はそのままメインの空気流路17を通って本体ケース10の中を旋回するように流れ、そして本体を横から見たときにそれぞれ左右斜め下方向に向かって本体吹出し口左13および本体吹出し口右25から室内へ送り出される。この時、本体ケース10の中を旋回する気流を左右それぞれの内部ダクト26に導き、内部ダクト26によって左右斜め下方向に気流の向きを変えた後に本体吹出し口左13および本体吹出し口右25からそれぞれ左右斜め下方向に空気が送り出される。
【0030】
このように寿命の長い水被覆イオン5を生成し、生成した水被覆イオン5を本体吹出し口左13および本体吹出し口右25から斜め下方向に送り出すことで部屋の隅々まで水被覆イオンを行き渡らせることで、本発明のイオン発生装置は部屋中の空気に含まれる浮遊菌や臭いを分解除去し、さらには部屋中の壁面や床上に付着した菌および臭いを分解除去することができる。
【0031】
また、シロッコファン23を横に寝かせて配置すると同時に、螺旋を描く長いメインの空気流路17を得ているため薄型にすることができる。
【0032】
ここで、霧化部6に埃が付着した場合、放電電極2と対向電極3に付着して電極間の空間絶縁距離や沿面絶縁距離が縮まって電気的に短絡して放電できなくなるという不具合が発生する。霧化部6の存在する霧化部カバー19内に埃が浸入することを防ぐために、仕切り板18に設けた上流側バイパス孔20および下流側バイパス孔21を、螺旋を描くメインの空気流路17の中心線よりも内側に設ける。こうすることで、埃が遠心力によって外側に寄せられて取り除かれた空気を霧化部カバー19内に取り入れることが可能となり、霧化部6への埃の付着を防止することができる。
【0033】
ここで、本発明のイオン発生装置は仕切り板18を設けることで静電霧化手段1のうち冷却フィン8のみをメインの空気流路17にさらす構造となっている。こうすることで冷却フィン8のみに多量の空気が当たり、冷却効果を高めることができる。
【0034】
また、本体吸込み口12と本体吹出し口左13および本体吹出し口右25とを有するグリル11は天井から見える部品であるため、汚れると天井の美観を損ねる。これはグリル11に帯電防止加工を行うことで防ぐことが可能である。ここで帯電防止加工については界面活性剤や永久帯電防止剤を含んだ樹脂などで成型したり、または表面に帯電防止剤をコーティングするなどの方法が選択できる。
【0035】
また、制御基盤を本体ケース10の内部に納めようとした場合、本体ケース10が丸型で制御基盤の形状が四角と一致しないため、制御基盤を多層にしないと納まらない可能性がある。多層にすると高さ寸法が大きくなり、天井に納まらなくなる。ここで、制御ボックス16を本体ケース10の上に別途設けることで限られた高さの天井裏に収めることが可能な高さ寸法にすることができる。
【0036】
また、バネ性を有する板15を備えた固定リング14と本体ケース10とを接合した後に天井穴にはめ込んで固定するため、どのような天井穴にも簡単に設置することが可能である。すなわちダウンライトなど別の天井設置型デバイス用の穴にも簡単に設置することができる。
【0037】
ここで、左右斜め下方向に向かって空気を吹出した時に、空気中に含まれる水被覆イオンがどの程度均一に部屋に拡散させることができるかについて有限要素法に基づいた計算手段によって解析を行った。解析条件を部屋の大きさを27m3、吹出し空気量を0.75m3/min、吹出し空気の向きを天井から左右斜め下方向30度から50度の範囲とした。イオン発生装置27の設置位置は部屋の天井の中央とした。結果を図7に示す。
【0038】
図7に示すとおり運転開始から20分後には、各面の平均値のバラツキが10分後に比べ小さくなり、部屋のほとんどの領域に均一に水被覆イオンが行き渡った。この解析の結果、左右斜め下方向に空気を吹出すことで部屋の隅々まで水被覆イオンを届かせることができることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のごとく本発明のイオン発生装置は天井に取り付けて部屋の隅々までイオンを供給し、部屋の隅々に渡って空気の除菌や脱臭を行うだけでなく、部屋の隅々に渡って壁面や床上などの付着菌の除菌や付着臭の脱臭をも行うことができるため、清浄な居住空間を作り出すことに有用である。また、クローゼットやバス、トイレ、または倉庫などの非居住空間においても菌の繁殖を抑制し、不快な臭いを除去して快適な空間とすることに有用であり、人々の快適かつ健康的な生活に貢献するものとして大いに活用が期待できるものである。
【符号の説明】
【0040】
1 静電霧化手段
2 放電電極
3 対向電極
4 テイラーコーン
5 水被覆イオン
6 霧化部
7 ペルチェ素子
8 冷却フィン
9 高圧電源
10 本体ケース
11 グリル
12 本体吸込み口
13 本体吹出し口左
14 固定リング
15 バネ性を有する板
16 制御ボックス
17 メインの空気流路
18 仕切り板
19 霧化部カバー
20 上流側バイパス孔
21 下流側バイパス孔
22 サブの空気流路
23 シロッコファン
24 シロッコファンの吹出し口
25 本体吹出し口右
26 内部ダクト
27 イオン発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井に本体を埋め込み、天井面からイオンを発生させるイオン発生装置であって、本体は、円筒状の本体ケース内に仕切板と、この仕切板の下方に送風手段と、前記仕切板を貫通した開口に静電霧化手段と、前記本体ケースの下端に吸込み口と吹出し口を有するグリルとを備え、前記静電霧化手段は、ペルチェ素子と、ペルチェ素子の冷却面 に接する放電電極および対向電極からなる霧化部と、放熱面に接する冷却フィンとで構成され、本体ケース内に螺旋状の空気流路を設けて旋回気流を作り出し、冷却フィンに当てた旋回気流を吹出し口から左右斜め下方向に向きを変えて吹出すことを特徴とするイオン発生装置。
【請求項2】
前記グリルの中央には前記吸込み口を有し、この吸込み口の左右に前記吹出し口を有することを特徴とする請求項1記載のイオン発生装置。
【請求項3】
送風手段はシロッコファンであることを特徴とする請求項1または2いずれかに記載のイオン発生装置。
【請求項4】
静電霧化手段の霧化部を仕切り板の下方に、かつ、冷却フィンを仕切り板の上方に配置することを特徴とする請求項1乃至3いずれに記載のイオン発生装置。
【請求項5】
静電霧化手段の霧化部をカバーで覆い、静電霧化手段の霧化部へのバイパス孔を仕切り板に設けることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のイオン発生装置。
【請求項6】
仕切り板のバイパス孔を風路の中心線よりも内側に設けることを特徴とする請求項5に記載のイオン発生装置。
【請求項7】
グリルは帯電防止加工が施されていることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載のイオン発生装置。
【請求項8】
制御部を納める制御ボックスを本体ケースの上方に配置することを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載のイオン発生装置。
【請求項9】
バネ性を有する逆ハの字状の板を本体ケースの外に設けることを特徴とするから請求項1乃至8いずれかに記載のイオン発生装置。
【請求項10】
本体ケースはダウンライトの筐体用天井穴に収まる寸法であることを特徴とする請求項1乃至請求項9いずれかに記載のイオン発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−104304(P2012−104304A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250448(P2010−250448)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】