説明

イオン空気清浄機

【課題】 空気中の塵埃や細菌、煙り等の不純物を効果的に捕獲することができるイオン空気清浄機を提供する。
【解決手段】 マイナスイオンを利用して空気を浄化する装置として、ハウジング11を有し、ハウジング11はその一面に開口12を有し、開口内に吸引ファン21を有し、吸引した空気を排出する排気口13を有しており、開口12から排気口13へ到る気流路14に導体より成る板体22を配置するとともに、その板体表面に対して電極23を配置してイオン発生装置20から供給されるマイナスイオンを指向させ、イオン化粒子と反対の極性に帯電している微粒子を付着させる捕獲シート30を板体22に重ねて配置した構成を有するものとする。板体22は銅又は銅合金製とし、また捕獲シートは和製として、外部から出し入れし交換可能とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイナスイオンを利用して空気を浄化するイオン空気清浄機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気中に浮遊する微細な粉塵やダスト、細菌等を捕集し、空気を浄化する目的で様々な空気清浄機が提供されており、これまではフィルターを通過させて濾過捕集する方式のものや、粉塵等の微粒子を帯電させて、それと反対の極性に設定した捕集部に静電捕集する方式のものが主流であった。これらに加えて最近はプラスに帯電させた塵埃、煙り等の微粒子をマイナスイオンにより中和し、浮遊できない程度の大きさにまとめて落下させるというイオンによる空気清浄方式も取られるようになって来た。さらに、空気中の酸素分子や、水蒸気分子から生成したイオンにより粉塵等に含まれているカビ菌やアレルゲンとなるだに等を無害化する技術も適用されている。
【0003】
しかしながら従来のマイナスイオン発生機では、プラスイオンとマイナスイオンが同時に同位置に生成されるため、マイナスイオンだけを有効に利用し難い。また従来のマイナスイオン空気清浄機では粉塵等の微粒子や煙り等、空気中の不純物を捕集することが困難であり、揮発性有機化合物(VOC)に対しても同様に無力である。マイナスイオンを効果的に利用することができれば、一般的にプラス側に帯電している空気中の塵埃、細菌、煙り等を効率よく捕獲することができると考えられるが、多少なりとも関連性のある特開2001−321661号、同2003−326193号等の発明には、本件のヒントとなるような事項は何も記載されていない。
【0004】
【特許文献1】特開2001−321661号
【特許文献2】特開2003−326193号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、空気中の塵埃や細菌、煙り等の不純物を効果的に捕獲することができるイオン空気清浄機を提供することである。また本発明の他の課題は、例えば卓上に於いて煙草の煙りを確実に捕獲することができるイオン空気清浄機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するため本発明は、マイナスイオンを利用して空気を浄化するイオン空気清浄機として、ハウジングを有し、ハウジングはその一面に開口を有し、開口内に吸引ファンを有し、吸引した空気を排出する排気口を適所に有しており、開口から排気口へ到る気流路に導体より成る板体を配置するとともに、その板体表面に対して電極を配置してイオン発生装置から供給されるマイナスイオンを指向させ、イオン化粒子と反対の極性に帯電している微粒子を付着させる捕獲シートを板体に重ねて配置した構成を具備している。本発明の空気清浄機は、マイナスイオン発生装置によって得られるマイナスイオンを使用することが望ましい。
【0007】
マイナスイオン発生装置がどのようなものでなければならないということはないけれども、前に触れた特開2003−326193号の装置は、本発明のイオン空気清浄機用マイナスイオン発生装置に適合している。同発明の装置は、マイナスイオンだけを高密度で安定して放出することができるので本発明には好都合なのである。
【0008】
上記発明の装置は、一次側入力が例えば1乃至100キロHzの高周波交流で入力され且二次側出力が例えば1乃至100キロHzで、而もその電圧が例えば3000乃至30000Vの範囲で可変出力される一対組の高周波出力トランスの一方の高周波出力トランスの一側には整流器を介してアースされることにより他側がマイナス高電圧でそのパルス数が例えば0.5乃至50キロパルス/秒のマイナス高電圧直流パルスを発生せしめ、更に他方の高周波出力トランスの一側には整流器を介してアースされることにより他側がプラス電圧でそのパルス数が例えば0.5乃至50キロパルス/秒のプラス高電圧直流パルスを発生せしめ、このマイナス高電圧直流パルスとプラス高電圧直流パルスとを一対組からなるスイッチングコンバーターにそれぞれ入力させ、且一方のスイッチングコンバーターではマイナス高電圧直流パルスに対しプラス高電圧直流パルスが例えば1/20乃至1/100の割合で、更に他方のスイッチングコンバーターではプラス高電圧直流パルスに対しマイナス高電圧直流パルスを例えば1/20乃至1/100の割合で間欠的に変換混在せしめて出力させ、且切換スイッチによりマイナス高電圧直流パルス若しくはプラス高電圧直流パルスをイオン放出極に付加せしめ、以って高還元電位若しくは高酸化電位のイオンを高密度で発生させるという構成を有しているものを使用することができる。
【0009】
スイッチングコンバーターで間欠的に変換混在されたマイナス高電圧直流パルス及びプラス高電圧直流パルスの出力は、切替スイッチを介して放出極に付加することにより、高還元電位のマイナスイオン若しくは高酸化電位のプラスイオンを高密度に放出させることができる。よって高還元電位のマイナスイオンのみを発生させ、本発明に使用することができる。このマイナスイオンにより周囲に存在する気体、流体、固体の微細な粒子はイオン化される可能性があり、また捕獲シートなど特定の部材をマイナスに帯電させることができる。
【0010】
本発明のイオン空気清浄機はハウジングを有しており、その内部に主要な構成が組み込まれている。ハウジングは、空気吸引口である開口を有し、かつ空気排出口である排気口を有していて、開口から排気口へ到る気流路に、導体より成る板体を配置し、同板体表面に対して放電電極を配置する。板体は、本発明における捕獲対象である空気中の不純物を付着させる側の部材であり、そのために面積が広い方が良い。板体表面に対して配置する放電電極は、上記の広い面積の全体に均等に分布するものとし、前述のイオン発生装置から供給されるマイナスイオンを、板体表面に指向させるものである。
【0011】
板体は電気の良導体が適しており、試験した範囲では銅及び銅合金製がベストであり、アルミニウム及びその合金製のものがそれに次ぐ。さらに、導体である金属が一般に好適であり、またカーボンを材料とするものも使用可能である。板体には、捕獲シートを重ねて配置する。捕獲シートは、板体に対置された電極から供給されるマイナスイオンによってマイナスに帯電し、かつその状態を保つものである。この捕獲シートは紙製のものが適している。捕獲シートに、プラスに帯電している空気中の不純物を吸い付け完全に捕獲する。一旦捕獲されたものは強固に付着しているが、或る程度の量が付着したら拡散しない内に処分し、新しいものと交換することが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上記のように構成されかつ作用するものであるから、空気中の塵埃や細菌、煙り等の不純物を効果的に捕獲することができるものであり、また従来は捕獲効果の十分とはいえなかった煙草の煙りのような物質も確実に捕獲することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図示の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。図1は、本発明に係るイオン空気清浄機10の1例を示すもので、卓上型であり、円筒状のハウジング11の上部に傾斜した開口12を有し、下部側面に排気口13を有していて、ハウジング内部のほぼ全域が開口12から排気口13へ到る気流路14になっている。例示の開口12は通気孔を全面に設けたグリル15によって装飾されている。ハウジング11の排気口13よりやや上位には捕獲シートを出し入れするための挿入口16が設けてあり、また電源に接続されるアダプター17のプラグ18を差し込む差し込み口19が設けてある。
【0014】
イオン発生装置20は上記ハウジング11の内部の、気流路14を妨げない位置に、固定的に配置されている。このイオン発生装置20は、前記のように一次側入力が1乃至100キロHzの高周波交流で入力され且二次側出力が1乃至100キロHzで、而もその電圧が3000乃至30000Vの範囲で可変出力される一対組の高周波出力トランスの一方の高周波出力トランスの一側には整流器を介してアースされることにより他側がマイナス高電圧でそのパルス数が0.5乃至50キロパルス/秒のマイナス高電圧直流パルスを発生せしめ、更に他方の高周波出力トランスの一側には整流器を介してアースされることにより他側がプラス電圧でそのパルス数が0.5乃至50キロパルス/秒のプラス高電圧直流パルスを発生せしめ、このマイナス高電圧直流パルスとプラス高電圧直流パルスとを一対組からなるスイッチングコンバーターにそれぞれ入力させ、且一方のスイッチングコンバーターではマイナス高電圧直流パルスに対しプラス高電圧直流パルスが1/20乃至1/100の割合で、更に他方のスイッチングコンバーターではプラス高電圧直流パルスに対しマイナス高電圧直流パルスを1/20乃至1/100の割合で間欠的に変換混在せしめて出力させ、且切換スイッチによりマイナス高電圧直流パルス若しくはプラス高電圧直流パルスをイオン放出極に付加せしめ、以って高還元電位若しくは高酸化電位のイオンを高密度で発生させるという構成を有している。
【0015】
ハウジング11は左右2部分11a、11bから成る組み合わせ式のもので、その内部には、開口近くに吸引ファン21が設置されており、その吸引気流の方向は開口12の中心部からハウジング底部の中心部にほぼ向けられている(図3参照)。この吸引ファン21の下方かつ排気口13より上位の位置には、空間をおいて、導体である銅板より成る板体22が配置されており、さらにこの板体表面に対して、マイナスイオンを指向させる電極23が配置されている。例示の電極23は、円形の板体22に適合した大きさを有する銅製の環状ホルダー24を有しており、それに等間隔に配置した状態とされ、環状ホルダー24を支持部25によりハウジング内壁に固定するという構成によって取り付けられている。
【0016】
各図中、26はソケット、27はオンオフスイッチであり、押し込みによって吸引ファン21及びイオン発生装置20を含む電気的構成に電力を供給し、再押し込みによって供給を遮断する。また28は通電状態を表示するランプを示す。各部は配線により接続されており、また図4に示したような電気的構成を持っている。29aは接地用電線で板体22の裏面に接続されており、29bは高圧用電線で、イオン発生装置20と電極23を接続している。
【0017】
このように構成されている本発明のイオン空気清浄機10を始動すると、吸引ファン21が回転し、空気が開口12からハウジング内に流入し、気流路14を経て排気口13より排出される気流が形成される。同時にイオン発生装置20が作動し、高還元電位のマイナスイオンが高密度で電極23より導体である銅製板体22に向かうようになる。その結果、補導シート30は瞬時にマイナスに帯電し、プラスに帯電している塵埃や細菌、煙り等の不純物を吸い付け完全に捕獲することになる。捕獲した不純物は夫々個有の色で捕獲シート30を埋めるようになり、例えば煙草の煙りの付着した捕獲シート30の表面は時間の経過とともに茶色の濃さを増す。
【0018】
次に本発明のイオン空気清浄機10を使用して、揮発性有機化合物(VOC)を捕獲する実験を行ったのでその結果を図5A、Bに示す。図5AはマイナスイオンによりVOC吸着前の状態の空気試料のガスクロマトグラフィ質量分析計(GC/MS)による分析結果を示すグラフであり、空気(air)の他に、ベンゼン、酢酸、トルエン、p−キシレン及びm−キシレン、並びにo−キシレン、そしてエチルベンゼンが相当量含まれていることがm/z値(質量/電荷比)から分かる。しかし、それらの成分は本発明装置を始動して4時間経過後殆んど消失していることが分かる。トルエンのみ残っているが、これはもともとの量が多いこと、或いは試験雰囲気中に恒常的に溶剤が残留しているためとも考えられる。この分析結果の数値を表1に示す。
<表1>


【0019】
※表中のピーク番号は図5のピーク頂点に附した番号である。
【0020】
表1から明らかなように、マイナスイオン発生後4時間の時点における各物質の減少率はいずれも50ppm以下であり、トルエンについても89%の減少率を示していることが分かる。このように本発明のマイナスイオンによる空気清浄機10は気体分子や煙り等の極く小さい微粒子の捕獲に好適である。
【産業上の利用可能性】
【0021】
個人用の小型の空気清浄機から、車室や部屋全体を対象とする大型の空気清浄機までの適用が可能である。例えば花粉の捕獲、病院内における空気の清浄保持、病室における病原菌の流出防止や、遊戯店内に充満する煙草の煙の捕獲による清浄化等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るイオン空気清浄機の1例を示す斜視図。
【図2】同じく分解斜視図。
【図3】同じく縦断面図。
【図4】同じく本発明の装置のブロック図。
【図5】本発明の装置の作業前(A)と作業後(B)の捕獲成績を示すグラフ。
【符号の説明】
【0023】
10 イオン空気清浄機
11 ハウジング
12 開口
13 排気口
14 気流路
15 グリル
16 挿入口
20 イオン発生装置
21 吸引ファン
22 板体
23 電極
24 環状ホルダー
25 支持部
29a 設置用電線
29b 高圧用電線
30 捕獲シート



【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイナスイオンを利用して空気を浄化する装置であって、
ハウジングを有し、ハウジングはその一面に開口を有し、開口内に吸引ファンを有し、吸引した空気を排出する排気口を適所に有しており、開口から排気口へ到る気流路に導体より成る板体を配置するとともに、その板体表面に対して電極を配置してイオン発生装置から供給されるマイナスイオンを指向させ、イオン化粒子と反対の極性に帯電している微粒子を付着させる捕獲シートを板体に重ねて配置した構成を有するイオン空気清浄機。
【請求項2】
板体は銅又は銅合金製である請求項1記載のイオン空気清浄機。
【請求項3】
捕獲シートは紙製であり、交換のために外部から出し入れ操作可能に設けられている請求項1記載のイオン空気清浄機。
【請求項4】
放電電極は、板体に適合した大きさの環状ホルダーを有し、同ホルダーに任意の間隔で設置した複数個のブラシ状電極を有している請求項1記載のイオン空気清浄機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−44576(P2007−44576A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−228855(P2005−228855)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(502068414)株式会社エコ (6)
【Fターム(参考)】