イオン量測定装置、イオン量測定システム及びイオン発生装置
【課題】イオン発生装置から室内に放出されるべきイオンの量が減少することがなく、湿度等の環境が変化した場合にも測定精度に影響を与えないイオン量測定装置、イオン量測定システム及びイオン発生装置を提供する。
【解決手段】イオン量測定装置7は、イオン発生素子の画像を撮像する撮像部71と、該撮像部71にて撮像したイオン発生素子の画像を、参照画像と比較する比較部72とを有し、該比較部72による比較結果に基づいてイオン発生素子に発生されたイオンの量を測定するようにしてある。
【解決手段】イオン量測定装置7は、イオン発生素子の画像を撮像する撮像部71と、該撮像部71にて撮像したイオン発生素子の画像を、参照画像と比較する比較部72とを有し、該比較部72による比較結果に基づいてイオン発生素子に発生されたイオンの量を測定するようにしてある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン発生素子に発生されたイオンの量を測定するイオン量測定装置、並びに該イオン量測定装置を有するイオン量測定システム及びイオン発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向の高まりからウイルス除去対策、花粉等のアレルギー物質対策、カビ菌対策として、イオンを発生する空調機器が各種商品化されている。また人体に悪影響が無い場合には、放出されるイオンの量が多いほど効能が高いと認められている。しかし、使用者は、イオンの脱臭効果に関しては直接感じることができても、放出されているイオン自体が見えないため、ウイルス不活性化やカビ菌成長の抑制やアレルギー物質の分解除去に関しては製造会社が発表している学術的な実験結果等を信じるしかなく、イオンを発生する空調機器等の効果が実感し難い。そこで、イオン発生装置を備えた空気調和機では、使用者に安心感を与えるために、イオン量測定装置でイオン発生素子に発生されたイオンの量(イオン数やイオン濃度)を測定し、測定したイオンの量をモニター等に表示している。
【0003】
イオン量測定装置としては、例えば、特許文献1に開示されている空気イオン測定器が公知である。該空気イオン測定器は、正イオンを収集する電荷集電板及び負イオンを収集する電荷集電板の各電荷を測定し、正若しくは負イオンの量として演算処理することにより、空気中の正イオンの量と負イオンの量とを同時に算出することができる。
【0004】
また、特許文献2には、捕集電極を有するイオンセンサが開示されている。該イオンセンサでは、捕集電極に捕集されたイオンにより微小なイオン電流が発生し、このイオン電流を増幅回路部で増幅することにより、捕集したイオン数に応じた出力電圧を得て、イオンの量を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−194777号公報
【特許文献2】特開2003−336872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の空気イオン測定器であっても、特許文献2のイオンセンサであっても、いずれも捕集電極で空気中のイオンを捕集してイオンの量を測定するものである。イオンの量を得るために、イオン発生装置によって発生されたイオンの一部が捕集電極に消耗されるので、イオン発生装置から室内に放出されるべきイオンの量が減少する問題があった。
【0007】
また、これらの従来のイオン量測定装置は、捕集されたイオンにより発生したpA(ピコアンペア)オーダの微少な電流をAD変換器で読み取り可能な電圧に変換するために、GΩ(ギガオーム)オーダの高抵抗が使用されることがある。このような高抵抗は湿度の影響を受けて抵抗値が変化しやすいので、抵抗値が不安定で、測定精度が下がるという問題があった。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、イオン発生装置から室内に放出されるべきイオンの量が減少することがなく、湿度等の環境が変化した場合にも測定精度に影響を与えないイオン量測定装置、イオン量測定システム及びイオン発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るイオン量測定装置は、イオン発生素子によって発生されたイオンの量を測定するイオン量測定装置において、前記イオン発生素子の画像を撮像する撮像手段と、該撮像手段にて撮像した前記イオン発生素子の画像を、所定の画像と比較する比較手段とを有し、該比較手段による比較結果に基づいてイオンの量を測定するようにしてあることを特徴とする。
【0010】
本発明においては、撮像手段にてイオン発生素子の画像を撮像し、撮像した画像を、参照画像としての所定の画像と比較することにより、イオン発生素子の異物付着状態を把握することが可能であり、予め計測した複数の付着程度が異なる異物付着状態におけるイオン発生量又はイオン発生減少量に基づいて、撮像されたイオン発生素子の画像に対応しているイオン発生量又はイオン発生減少量を推定することにより、イオン発生素子に発生されたイオンの量を測定することが可能である。
【0011】
本発明に係るイオン量測定装置は、前記所定の画像は、前記イオン発生素子の新品時の画像であることを特徴とする。
【0012】
本発明においては、イオン発生素子の新品時の画像を参照画像として、イオン発生素子の各程度の異物付着状態を容易に把握することが可能であり、各程度の異物付着状態でのイオン発生量を容易に推定することが可能である。
【0013】
本発明に係るイオン量測定装置は、前記比較手段は、前記イオン発生素子の画像と前記所定の画像との輝度に係る相違度を算出して前記比較結果とするようにしてあることを特徴とする。
【0014】
本発明においては、イオン発生素子の画像と参照画像としての所定の画像との輝度に係る相違度を算出することにより、イオン発生素子の画像を簡単かつ迅速に数値化することが可能であり、このように数値化した画像と参照画像との相違度を算出することにより、画像の比較を容易に行うことが可能である。
【0015】
本発明に係るイオン量測定装置は、前記比較結果と前記イオン発生素子に発生されたイオンの量との対応関係に係る情報を記憶する記憶手段を有することを特徴とする。
【0016】
本発明においては、記憶手段に比較結果とイオン発生素子に発生されたイオンの量との対応関係に係る情報を記憶しておくことにより、イオン発生素子の画像に基づいてイオン発生素子に発生されたイオンの量を迅速かつ直接に得ることが可能である。
【0017】
本発明に係るイオン量測定装置は、前記比較結果に基づいてイオン発生素子に異常が発生したか否かを判断する判断手段を有することを特徴とする。
【0018】
本発明においては、イオン発生素子の画像に基づいてイオン発生素子の使用状態を監視することが可能である。
【0019】
本発明に係るイオン量測定装置は、イオンを捕集する捕集電極を有し、該補集電極にて補集したイオンによる電流に基づいてイオンの量を測定するようにしてあることを特徴とする。
【0020】
本発明においては、イオン発生素子の画像に基づいてイオンの量を測定する装置と捕集電極で捕集したイオンによる電流に基づいてイオンの量を測定する装置とを併用することにより、必要に応じてイオン量測定装置を選んでイオンの量を測定することが可能であり、主に使用するのは画像に基づいてイオンの量を測定する装置であるため、室内に放出するイオンの量をほとんど減らすことなく、イオン量測定の精度をより高くさせることが可能である。
【0021】
本発明に係るイオン量測定システムは、上述のイオン量測定装置と、該イオン量測定装置の測定結果を表示する表示装置とを有することを特徴とする。
【0022】
本発明においては、表示装置にてイオン量測定装置の測定結果を表示することにより、使用者が測定対象のイオンの状態を容易に確認することが可能である。
【0023】
本発明に係るイオン発生装置は、イオン発生素子と、上述のイオン量測定装置とを有することを特徴とする。
【0024】
本発明においては、イオン発生素子に発生されたイオンの量をイオン量測定装置で測定することが可能である。
【0025】
本発明に係るイオン発生装置は、前記イオン量測定装置の測定結果を表示する表示装置を有することを特徴とする。
【0026】
本発明においては、表示装置にてイオン量測定装置の測定結果を表示することにより、使用者が測定対象のイオンの状態を容易に確認することが可能である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、イオン発生素子の画像に基づいてイオン発生素子の異物付着状態を把握してイオン発生量又はイオン発生減少量を推定することにより、捕集電極を設けなくてもイオン発生素子によって発生されたイオンの量を測定することができる。このため、イオン発生装置から室内に放出されるべきイオンの量が減少することがない。また、電流を電圧に変換する高抵抗を設けないので、湿度等の環境が変化した場合にも測定精度に影響を与えることはない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態1に係るイオン量測定装置を備えた空気調和機を模式的に示す正面図である。
【図2】図1のA−A線における側面断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るイオン量測定装置を備えた空気調和機の一部を拡大した側面断面図である。
【図4】針電極と撮像部と光源との配置例を模式的に示す図である。
【図5】針電極の異物付着状態を例示する図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係るイオン量測定装置の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係るイオン量測定装置の撮像部により撮像される画像を例示する図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係るイオン量測定装置によるパターンマッチングの一例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態1に係るイオン量測定装置によるパターンマッチングの他の例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態1に係るイオン量測定装置によるイオン量測定の一例の手順を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態2に係るイオン量測定装置を備えた空気調和機の一部を拡大した側面断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面に基づいて、本発明に係るイオン量測定装置を空気調和機に適用した実施の形態について詳述する。
【0030】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1に係るイオン量測定装置7を備えた空気調和機を模式的に示す正面図であり、図2は図1のA−A線における側面断面図である。
【0031】
図1及び図2に示すように、空気調和機は縦長の直方体状のハウジング1を備え、ハウジング1は前面1a、後面1b、左右の側面1c、底面1d及び天面1eを有する。後面1bの下部に外部の空気を吸い込む吸込口2を設け、前面1aの上部に外部へ空気を吹き出す吹出口4を設けている。ハウジング1内には、吸込口2から吹出口4に至る通風路3が形成されている。通風路3は前後に間隔を隔てて平行配置された前壁3a及び後壁3bと、図示しない左右の側壁とで囲まれた長方形の断面を有する。前壁3aの上端は前側に屈曲して吹出口4の下縁部3eとなり、後壁3bの上端は前側に屈曲して吹出口4の上縁部3cとなり、後壁3bの下端は後側に屈曲して吸込口2の上縁部3dとなる。通風路3内の下部に、吸込口2から空気を吸い込み、上向きの風の流れを発生させるファン5が配置してある。
【0032】
前壁3aには、ファン5より上側にイオン発生部6を設け、イオン発生部6の付近にイオン量測定装置7を設けてある。尚、ファン5を通風路3内の上下中間部又は上部に設け、イオン発生部6及びイオン量測定装置7をファン5より下側に配置してもよい。イオン発生部6は、例えば環状電極とその中央に位置する針電極との間に高電圧を印加して正負イオン又は負イオンを発生させ、通風路3内に供給する。イオン量測定装置7はイオン発生部6で発生し、空気と共に送風されてきたイオンの量を測定する。
【0033】
図3は本発明の実施の形態1に係るイオン量測定装置7を備えた空気調和機の一部を拡大した側面断面図である。図3に示すように、イオン発生部6は、イオン発生素子である針電極6a、6bを備え、通風路3内で、針電極6a、6bにてイオンを発生するようにしてある。イオン発生部6の付近には、針電極6a、6bの画像を撮像する撮像部71と、針電極6a、6bを明るく照らす光源8とが設けられている。
【0034】
図4は針電気6a、6bと撮像部71と光源8との配置例を模式的に示す図である。図4Aにおいて、撮像部71と光源8とが針電極6aの横に設けられている例を示している。図4Bにおいて、撮像部71と光源8とが針電極6bの横に設けられている例を示している。本実施の形態では、針電気6a、6bと撮像部71と光源8との配置例は図4A、Bに示している場合に限らない。撮像部71の配置位置として、針電極6a、6bの画像を撮像することができる位置であれば、任意の位置でもよい。例えば、イオン発生部6の上方又は下方であってもよいし、イオン発生部6の内部であってもよい。また、光源8の配置位置として、針電極6a、6bを明るく照らすことができる位置であれば、任意の位置でもよい。
【0035】
本実施の形態では、針電極6a、6bは例えばコロナ放電により正負イオンを発生させるようにしてある。この放電に伴い、針電極6a、6bは空気中の埃、ゴミなどの異物を吸着することがある。一定時間が経過した針電極6a、6bは異物が付着されている状態となる。以下、針電極6aの場合を例として、本発明について詳述する。
【0036】
図5は、針電極6aの異物付着状態を例示する図である。図5に例示されたA、B、C、D、Eのような状態の何れかでは、針電極6aの先端は異物が付着されているので、放電が起こりにくくなり、針電極6aのイオン発生量が減少する。通常、このように減少した量(以下、イオン発生減少量と記す)は、針電極6aの異物付着状態(例えば、異物の面積、体積等)によって決定されるものである。従って、針電極6aのイオン発生量も異物付着状態によって違うものである。本実施の形態に係るイオン量測定装置7では、針電極6aの画像に基づいて針電極6aの異物付着状態を把握することができる。また、予め計測した複数の付着程度が異なる異物付着状態におけるイオン発生量又はイオン発生減少量に基づいて、撮像された針電極6aの画像に対応するイオン発生量又はイオン発生減少量を推定することにより、針電極6aに発生されたイオンの量を測定することができる。
【0037】
図6は本発明の実施の形態1に係るイオン量測定装置7の構成を示すブロック図である。説明の便宜上、図6において、針電極6aと、空気調和機に搭載した表示部9とも示している。図6に示すように、イオン量測定装置7は、測定用の各種情報を記憶する記憶部70と、針電極6aの画像を撮像する撮像部71と、撮像部71にて撮像した画像を所定の画像と比較する比較部72と、比較部72による比較結果に基づいて針電極6aに異常が発生したか否かを判断する判断部73と、比較部72による比較結果に基づいてイオン発生量又はイオン発生減少量を推定する推定部74とを有する。
【0038】
記憶部70は、例えば、汎用なメモリである。記憶部70には、所定の画像である比較用の参照画像のデータと、判断用の閾値と、推定用のテーブルとが記憶されている。本実施の形態では、参照画像として、針電極の新品時の画像を使用し、判断用の閾値は、針電極に異常が発生したか否かを判断するために設定されたものである。また、本実施の形態で、複数の異物付着状態における針電極の画像及びイオン発生量を予め計測し、針電極のこれらの画像と新品時の画像との相違度を夫々算出し、算出した相違度とイオン発生量との対応関係をテーブルとして作成することにより、推定用のテーブルを得たが、本発明はこれに限らず、推定用のテーブルとして、相違度と算出したイオン発生減少量との対応関係を示すテーブルであってもよい。
【0039】
撮像部71は、例えば、針電極6aの画像を撮像することができるイメージセンサであり、イオン発生部6の付近に設けられている。図4において、撮像部71として、イメージセンサのモジュール形態で示しているが、針電極6aの画像を撮像することができるものであれば、このような形態に限らず、例えば、イメージセンサ単体でもよいし、製品としての小型のカメラでもよい。
【0040】
比較部72は、撮像部71にて撮像した針電極画像が入力され、入力された針電極画像と参照画像とのパターンマッチングを行うようにしてある。具体的には、比較部72は、入力された針電極画像に対して、画素毎に輝度を計測して数値化し、同様に数値化した参照画像との輝度に係る相違度を算出して比較結果として出力するようにしてある。
【0041】
判断部73は、比較部72で算出された相違度が入力され、この相違度を記憶部70に記憶しておいた閾値と比較し、相違度が閾値未満である場合、針電極6aの使用が正常であると判断し、相違度が閾値以上である場合、針電極6aの使用が異常であると判断するようにしてある。ここで、閾値は必要に応じて任意に設定することができる。例えば、針電極6aの清掃又は更新するか否かを判断するために設定した閾値であってもよい。なお、判断部73による判断結果は、表示部9に出力されて表示されてもよいし、空気調和機の運転の制御に用いられてもよい。また、表示部9での判断結果の表示は、閾値の設定によって各種の形式として表示することが可能である。例えば、針電極の清掃を考慮して閾値を設定した場合、相違度が閾値以上となるときに、表示部9で針電極を清掃する旨の警告を表示するようにする。また、針電極の更新を考慮して閾値を設定した場合、相違度が閾値以上となるときに、表示部9で針電極を更新する旨の警告を表示するようにする。なお、閾値の設定によって、指示灯の点灯又は点滅、若しくは風景パターン等で判断結果を表示するようにしてもよい。
【0042】
推定部74は、判断部73によりイオン発生素子の使用が正常であると判断される場合、記憶部70に記憶しておく推定用テーブルに従って、撮像された針電極画像に対応しているイオン発生量を推定するようにしてある。本実施の形態では、推定部74にて推定したイオン発生量を、イオン量測定装置7の測定結果、即ち針電極6aに発生されたイオンの量として出力するようにしてある。また、この測定結果は、表示部9に出力され、数値又はパターン等に表示されてもよいし、空気調和機の運転の制御に用いられてもよい。
【0043】
次に、図7〜9に基づいて、比較部72によるパターンマッチングの具体的な手段について説明する。
【0044】
図7は本発明の実施の形態1に係るイオン量測定装置7の撮像部71により撮像される画像を例示する図である。図7A及び図7Bでは、上段は針電極6aの新品時の画像であり、下段は一定の時間使われた針電極6aの画像である。図8は本発明の実施の形態1に係るイオン量測定装置によるパターンマッチングの一例(図7Aの例)を示す図である。図9は本発明の実施の形態1に係るイオン量測定装置によるパターンマッチングの他の例(図7Bの例)を示す図である。ここで、説明の便宜上、8×8のメッシュに分割された領域に針電極6aを画像として読み込んで画像処理を行う例を示しているが、64×64、256×256等、要求仕様に応じて高解像度の撮像部71で針電極6aの画像を撮像して、比較部72にて高解像度の画像処理を行ってもよい。
【0045】
図8において、上段左は参照画像としての新品時の針電極6aの画像であり、上段右はこの参照画像に対し、物体がある画素を「1」、無い画素を「0」と数値に変換した図である。また、図8において、下段左は、撮像部71にて撮像した画像(以下、針電極画像と記す)としての一定の時間使われた後の針電極6aの画像であり、下段右はこの針電極画像に対し、物体がある画素を「1」、無い画素を「0」と数値に変換した図である。この例では、針電極6aが一定の時間使われたが、異物が付着されていないため、上段の参照画像に比べると、各画素の数値には変化がない。
【0046】
図9において、上段左は参照画像としての新品時の針電極6aの画像であり、上段右はこの参照画像に対し、物体がある画素を「1」、無い画素を「0」と数値に変換した図である。また、図9において、下段左は、針電極画像としての一定の時間使われた後の針電極6aの画像であり、下段右はこの針電極画像に対し、物体がある画素を「1」、無い画素を「0」と数値に変換した図である。この例では、針電極6aに異物が付着されているため、上段の参照画像に比べると、下段の針電極6aの先端部に近い複数の画素B4、B5、C4、C5では、数値には変化が発生した。
【0047】
ここで、物体の有無は、例えば画像の各画素の輝度によって判定すればよい。例えば、一つの画素では、輝度が一定値より大きい場合、該画素に物体があると判定し、輝度が一定値未満である場合、該画素に物体がないと判定する。また、本実施の形態では、画素に物体があれば「1」、無ければ「0」の2値として数値変換したが、これも要求仕様に応じて、例えば8段階、256段階、1024段階等の多値を用いて数値変換してもよい。
【0048】
本実施の形態では、2つの画像の相違の程度は「相違度」で表した。相違度は、各画素の数値変換後の差分のRMS(Root Mean Square)で簡単に算出できる。
【0049】
図8の場合、相違度1は、
相違度1=[(0−0)2 +(0−0)2 +・・・(1−1)2 +(1−1)2 ・・・(0−0)2 +(0−0)2 ]1/2
=(0)1/2=0
である。
【0050】
図9の場合、相違度2も同様にRMSで算出でき、
相違度2=[(0−0)2 +(1−0)2 +・・・(1−1)2 +(1−1)2 ・・・(0−0)2 +(0−0)2 ]1/2
=(4)1/2=2
である。
【0051】
このように針電極画像と参照画像との相違度を求めることにより、針電極6aの異物付着の状態を認識することができる。よって、針電極6aの画像に基づいて針電極6aに発生されたイオンの量を測定することができる。
【0052】
次に、図10に基づいて本実施形態におけるイオン量測定の手順を説明する。図10は本発明の実施の形態1に係るイオン量測定装置7によるイオン量測定の一例の手順を示すフローチャートである。
【0053】
図10に示すように、イオンの量を測定する場合、まず、撮像部71は針電極6aの画像を撮像し(ステップS1)、次に、撮像した針電極画像を比較部72に入力し、比較部72は、画素毎に輝度を計測し、針電極画像を数値化し(ステップS2)、針電極画像と記憶部70に記憶しておく参照画像との輝度に係る相違度を算出し(ステップS3)、判断部73は、算出した相違度が所定の閾値未満であるか否かを判断し(ステップS4)、相違度が所定の閾値以上であると判断した場合(ステップS4:NO)、表示部9は判断結果に係る情報を表示し(ステップS5)、処理が終了する。また、判断部73にて相違度が所定の閾値未満であると判断した場合(ステップS4:YES)、推定部74は記憶部70に記憶しておいた推定用のテーブルに従って、撮像した針電極画像に対応しているイオン発生量を推定し(ステップS6)、推定したイオン発生量を測定すべき針電極6aに発生されたイオンの量として、表示部9に出力し(ステップS7)、表示部9にて測定されたイオンの量に係る情報を表示し(ステップS8)、処理が終了する。これにより針電極6aに発生されたイオンの量を測定することができる。
【0054】
以上のように、実施の形態1に係るイオン量測定装置では、針電極の画像を利用してイオンの量を得ることにより、捕集電極を設けなくてもイオンの量を測定することができる。このため、イオン発生部から室内に放出されるべきイオンの量が減少することがない。また、電流を電圧に変換する高抵抗を設けないので、湿度等の環境変化がある場合にも測定精度に影響を与えることはない。
【0055】
前記実施の形態1では、推定部74が判断部73による判断結果に応じてイオン発生量を推定する例を説明したが、本発明はこれに限らず、判断部73を設けず、推定部74にて直接に比較部72の比較結果に基づいてイオン発生量を推定するようにしてもよい。
【0056】
また、前記実施の形態1では、パターンマッチング用の参照画像は、新品時の針電極画像である例を説明したが、本発明はこれに限らず、参照画像としては、予め計測した複数の異物付着状態における針電極の画像から任意に選択してもよい。ある異物付着状態における針電極の画像を参照画像とする場合、まず、前述したように撮像部71に撮像された針電極画像の参照画像との相違度を算出し、次に、推定用のテーブルにおいて参照画像に対応する相違度を用いて算出した相違度を補正し、推定用のテーブルに基づいて、補正した相違度に対応するイオン発生量を推定して測定結果とすればよい。
【0057】
(実施の形態2)
実施の形態2は、実施の形態1において、捕集電極を利用してイオンの量を測定する従来のイオンセンサを設けてある形態である。なお、以降の説明において、実施の形態1と同様の構成については、実施の形態1を参照するものとし、その説明を省略する。なお、実施の形態1と同様の構成については実施の形態1と同じ符号を付している。
【0058】
図11は、本発明の実施の形態2に係るイオン量測定装置を備えた空気調和機の一部を拡大した側面断面図である。図11に示すように、イオン量測定装置は前壁3aと平行に配置されたセンサ基板76を有する。尚、センサ基板76は前壁3aと平行でなくてもよい。センサ基板76の通風路3側の面には、イオンを捕集する捕集電極77が形成されている。センサ基板76の通風路3側と反対側の面には、捕集電極77に捕集されたイオンの電荷による電流に基づいてイオンの量を測定する、図示しない測定部が設けられている。
【0059】
本実施の形態では、必要に応じてイオン量測定装置7の測定モードを選ぶことができる。例えば、通常のイオン発生時には、主に撮像部71にて撮像した針電極の画像に基づいてイオンの量を測定し、一定の期間おきに捕集電極77でイオンを捕集して、捕集したイオンの電荷による電流に基づいてイオンの量を測定するようにしてもよい。また、イオン発生の初期に針電極画像に基づいてイオン発生素子の使用状態を監視し、例えば判断部73にてイオン発生素子に異常が発生したと判断した場合に、精度がより高いイオンセンサでイオンの量を測定するようにしてもよい。
【0060】
以上のように、実施の形態2に係るイオン量測定装置7では、針電極の画像に基づくイオン量測定は、発生したイオンを捕集しないので、室内に放出されるイオンの量は減らない。また、一定の期間おきに、発生したイオンを捕集してイオンの量を測定する従来型のイオンセンサ等を用いてイオンの量を確かめることで、室内に放出するイオンの量をほとんど減らすことなくより精度が高いイオン量測定を可能とする。
【0061】
以上、空気調和機に内蔵されたイオン量測定装置7について説明したが、実施の形態1及び2に係るイオン量測定装置7は、例えば、空気清浄機、イオン発生機等の他のイオン発生装置に適用してもよいし、モニターを備えるイオン量測定システムに適用してもよい。
【0062】
要するに、本実施の形態は例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0063】
1 ハウジング
2 吸込口
3 通風路
4 吹出口
5 ファン
6 イオン発生部
6a、6b 針電極
7 イオン量測定装置
8 光源
9 表示部
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン発生素子に発生されたイオンの量を測定するイオン量測定装置、並びに該イオン量測定装置を有するイオン量測定システム及びイオン発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向の高まりからウイルス除去対策、花粉等のアレルギー物質対策、カビ菌対策として、イオンを発生する空調機器が各種商品化されている。また人体に悪影響が無い場合には、放出されるイオンの量が多いほど効能が高いと認められている。しかし、使用者は、イオンの脱臭効果に関しては直接感じることができても、放出されているイオン自体が見えないため、ウイルス不活性化やカビ菌成長の抑制やアレルギー物質の分解除去に関しては製造会社が発表している学術的な実験結果等を信じるしかなく、イオンを発生する空調機器等の効果が実感し難い。そこで、イオン発生装置を備えた空気調和機では、使用者に安心感を与えるために、イオン量測定装置でイオン発生素子に発生されたイオンの量(イオン数やイオン濃度)を測定し、測定したイオンの量をモニター等に表示している。
【0003】
イオン量測定装置としては、例えば、特許文献1に開示されている空気イオン測定器が公知である。該空気イオン測定器は、正イオンを収集する電荷集電板及び負イオンを収集する電荷集電板の各電荷を測定し、正若しくは負イオンの量として演算処理することにより、空気中の正イオンの量と負イオンの量とを同時に算出することができる。
【0004】
また、特許文献2には、捕集電極を有するイオンセンサが開示されている。該イオンセンサでは、捕集電極に捕集されたイオンにより微小なイオン電流が発生し、このイオン電流を増幅回路部で増幅することにより、捕集したイオン数に応じた出力電圧を得て、イオンの量を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−194777号公報
【特許文献2】特開2003−336872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の空気イオン測定器であっても、特許文献2のイオンセンサであっても、いずれも捕集電極で空気中のイオンを捕集してイオンの量を測定するものである。イオンの量を得るために、イオン発生装置によって発生されたイオンの一部が捕集電極に消耗されるので、イオン発生装置から室内に放出されるべきイオンの量が減少する問題があった。
【0007】
また、これらの従来のイオン量測定装置は、捕集されたイオンにより発生したpA(ピコアンペア)オーダの微少な電流をAD変換器で読み取り可能な電圧に変換するために、GΩ(ギガオーム)オーダの高抵抗が使用されることがある。このような高抵抗は湿度の影響を受けて抵抗値が変化しやすいので、抵抗値が不安定で、測定精度が下がるという問題があった。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、イオン発生装置から室内に放出されるべきイオンの量が減少することがなく、湿度等の環境が変化した場合にも測定精度に影響を与えないイオン量測定装置、イオン量測定システム及びイオン発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るイオン量測定装置は、イオン発生素子によって発生されたイオンの量を測定するイオン量測定装置において、前記イオン発生素子の画像を撮像する撮像手段と、該撮像手段にて撮像した前記イオン発生素子の画像を、所定の画像と比較する比較手段とを有し、該比較手段による比較結果に基づいてイオンの量を測定するようにしてあることを特徴とする。
【0010】
本発明においては、撮像手段にてイオン発生素子の画像を撮像し、撮像した画像を、参照画像としての所定の画像と比較することにより、イオン発生素子の異物付着状態を把握することが可能であり、予め計測した複数の付着程度が異なる異物付着状態におけるイオン発生量又はイオン発生減少量に基づいて、撮像されたイオン発生素子の画像に対応しているイオン発生量又はイオン発生減少量を推定することにより、イオン発生素子に発生されたイオンの量を測定することが可能である。
【0011】
本発明に係るイオン量測定装置は、前記所定の画像は、前記イオン発生素子の新品時の画像であることを特徴とする。
【0012】
本発明においては、イオン発生素子の新品時の画像を参照画像として、イオン発生素子の各程度の異物付着状態を容易に把握することが可能であり、各程度の異物付着状態でのイオン発生量を容易に推定することが可能である。
【0013】
本発明に係るイオン量測定装置は、前記比較手段は、前記イオン発生素子の画像と前記所定の画像との輝度に係る相違度を算出して前記比較結果とするようにしてあることを特徴とする。
【0014】
本発明においては、イオン発生素子の画像と参照画像としての所定の画像との輝度に係る相違度を算出することにより、イオン発生素子の画像を簡単かつ迅速に数値化することが可能であり、このように数値化した画像と参照画像との相違度を算出することにより、画像の比較を容易に行うことが可能である。
【0015】
本発明に係るイオン量測定装置は、前記比較結果と前記イオン発生素子に発生されたイオンの量との対応関係に係る情報を記憶する記憶手段を有することを特徴とする。
【0016】
本発明においては、記憶手段に比較結果とイオン発生素子に発生されたイオンの量との対応関係に係る情報を記憶しておくことにより、イオン発生素子の画像に基づいてイオン発生素子に発生されたイオンの量を迅速かつ直接に得ることが可能である。
【0017】
本発明に係るイオン量測定装置は、前記比較結果に基づいてイオン発生素子に異常が発生したか否かを判断する判断手段を有することを特徴とする。
【0018】
本発明においては、イオン発生素子の画像に基づいてイオン発生素子の使用状態を監視することが可能である。
【0019】
本発明に係るイオン量測定装置は、イオンを捕集する捕集電極を有し、該補集電極にて補集したイオンによる電流に基づいてイオンの量を測定するようにしてあることを特徴とする。
【0020】
本発明においては、イオン発生素子の画像に基づいてイオンの量を測定する装置と捕集電極で捕集したイオンによる電流に基づいてイオンの量を測定する装置とを併用することにより、必要に応じてイオン量測定装置を選んでイオンの量を測定することが可能であり、主に使用するのは画像に基づいてイオンの量を測定する装置であるため、室内に放出するイオンの量をほとんど減らすことなく、イオン量測定の精度をより高くさせることが可能である。
【0021】
本発明に係るイオン量測定システムは、上述のイオン量測定装置と、該イオン量測定装置の測定結果を表示する表示装置とを有することを特徴とする。
【0022】
本発明においては、表示装置にてイオン量測定装置の測定結果を表示することにより、使用者が測定対象のイオンの状態を容易に確認することが可能である。
【0023】
本発明に係るイオン発生装置は、イオン発生素子と、上述のイオン量測定装置とを有することを特徴とする。
【0024】
本発明においては、イオン発生素子に発生されたイオンの量をイオン量測定装置で測定することが可能である。
【0025】
本発明に係るイオン発生装置は、前記イオン量測定装置の測定結果を表示する表示装置を有することを特徴とする。
【0026】
本発明においては、表示装置にてイオン量測定装置の測定結果を表示することにより、使用者が測定対象のイオンの状態を容易に確認することが可能である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、イオン発生素子の画像に基づいてイオン発生素子の異物付着状態を把握してイオン発生量又はイオン発生減少量を推定することにより、捕集電極を設けなくてもイオン発生素子によって発生されたイオンの量を測定することができる。このため、イオン発生装置から室内に放出されるべきイオンの量が減少することがない。また、電流を電圧に変換する高抵抗を設けないので、湿度等の環境が変化した場合にも測定精度に影響を与えることはない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態1に係るイオン量測定装置を備えた空気調和機を模式的に示す正面図である。
【図2】図1のA−A線における側面断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るイオン量測定装置を備えた空気調和機の一部を拡大した側面断面図である。
【図4】針電極と撮像部と光源との配置例を模式的に示す図である。
【図5】針電極の異物付着状態を例示する図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係るイオン量測定装置の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係るイオン量測定装置の撮像部により撮像される画像を例示する図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係るイオン量測定装置によるパターンマッチングの一例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態1に係るイオン量測定装置によるパターンマッチングの他の例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態1に係るイオン量測定装置によるイオン量測定の一例の手順を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態2に係るイオン量測定装置を備えた空気調和機の一部を拡大した側面断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面に基づいて、本発明に係るイオン量測定装置を空気調和機に適用した実施の形態について詳述する。
【0030】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1に係るイオン量測定装置7を備えた空気調和機を模式的に示す正面図であり、図2は図1のA−A線における側面断面図である。
【0031】
図1及び図2に示すように、空気調和機は縦長の直方体状のハウジング1を備え、ハウジング1は前面1a、後面1b、左右の側面1c、底面1d及び天面1eを有する。後面1bの下部に外部の空気を吸い込む吸込口2を設け、前面1aの上部に外部へ空気を吹き出す吹出口4を設けている。ハウジング1内には、吸込口2から吹出口4に至る通風路3が形成されている。通風路3は前後に間隔を隔てて平行配置された前壁3a及び後壁3bと、図示しない左右の側壁とで囲まれた長方形の断面を有する。前壁3aの上端は前側に屈曲して吹出口4の下縁部3eとなり、後壁3bの上端は前側に屈曲して吹出口4の上縁部3cとなり、後壁3bの下端は後側に屈曲して吸込口2の上縁部3dとなる。通風路3内の下部に、吸込口2から空気を吸い込み、上向きの風の流れを発生させるファン5が配置してある。
【0032】
前壁3aには、ファン5より上側にイオン発生部6を設け、イオン発生部6の付近にイオン量測定装置7を設けてある。尚、ファン5を通風路3内の上下中間部又は上部に設け、イオン発生部6及びイオン量測定装置7をファン5より下側に配置してもよい。イオン発生部6は、例えば環状電極とその中央に位置する針電極との間に高電圧を印加して正負イオン又は負イオンを発生させ、通風路3内に供給する。イオン量測定装置7はイオン発生部6で発生し、空気と共に送風されてきたイオンの量を測定する。
【0033】
図3は本発明の実施の形態1に係るイオン量測定装置7を備えた空気調和機の一部を拡大した側面断面図である。図3に示すように、イオン発生部6は、イオン発生素子である針電極6a、6bを備え、通風路3内で、針電極6a、6bにてイオンを発生するようにしてある。イオン発生部6の付近には、針電極6a、6bの画像を撮像する撮像部71と、針電極6a、6bを明るく照らす光源8とが設けられている。
【0034】
図4は針電気6a、6bと撮像部71と光源8との配置例を模式的に示す図である。図4Aにおいて、撮像部71と光源8とが針電極6aの横に設けられている例を示している。図4Bにおいて、撮像部71と光源8とが針電極6bの横に設けられている例を示している。本実施の形態では、針電気6a、6bと撮像部71と光源8との配置例は図4A、Bに示している場合に限らない。撮像部71の配置位置として、針電極6a、6bの画像を撮像することができる位置であれば、任意の位置でもよい。例えば、イオン発生部6の上方又は下方であってもよいし、イオン発生部6の内部であってもよい。また、光源8の配置位置として、針電極6a、6bを明るく照らすことができる位置であれば、任意の位置でもよい。
【0035】
本実施の形態では、針電極6a、6bは例えばコロナ放電により正負イオンを発生させるようにしてある。この放電に伴い、針電極6a、6bは空気中の埃、ゴミなどの異物を吸着することがある。一定時間が経過した針電極6a、6bは異物が付着されている状態となる。以下、針電極6aの場合を例として、本発明について詳述する。
【0036】
図5は、針電極6aの異物付着状態を例示する図である。図5に例示されたA、B、C、D、Eのような状態の何れかでは、針電極6aの先端は異物が付着されているので、放電が起こりにくくなり、針電極6aのイオン発生量が減少する。通常、このように減少した量(以下、イオン発生減少量と記す)は、針電極6aの異物付着状態(例えば、異物の面積、体積等)によって決定されるものである。従って、針電極6aのイオン発生量も異物付着状態によって違うものである。本実施の形態に係るイオン量測定装置7では、針電極6aの画像に基づいて針電極6aの異物付着状態を把握することができる。また、予め計測した複数の付着程度が異なる異物付着状態におけるイオン発生量又はイオン発生減少量に基づいて、撮像された針電極6aの画像に対応するイオン発生量又はイオン発生減少量を推定することにより、針電極6aに発生されたイオンの量を測定することができる。
【0037】
図6は本発明の実施の形態1に係るイオン量測定装置7の構成を示すブロック図である。説明の便宜上、図6において、針電極6aと、空気調和機に搭載した表示部9とも示している。図6に示すように、イオン量測定装置7は、測定用の各種情報を記憶する記憶部70と、針電極6aの画像を撮像する撮像部71と、撮像部71にて撮像した画像を所定の画像と比較する比較部72と、比較部72による比較結果に基づいて針電極6aに異常が発生したか否かを判断する判断部73と、比較部72による比較結果に基づいてイオン発生量又はイオン発生減少量を推定する推定部74とを有する。
【0038】
記憶部70は、例えば、汎用なメモリである。記憶部70には、所定の画像である比較用の参照画像のデータと、判断用の閾値と、推定用のテーブルとが記憶されている。本実施の形態では、参照画像として、針電極の新品時の画像を使用し、判断用の閾値は、針電極に異常が発生したか否かを判断するために設定されたものである。また、本実施の形態で、複数の異物付着状態における針電極の画像及びイオン発生量を予め計測し、針電極のこれらの画像と新品時の画像との相違度を夫々算出し、算出した相違度とイオン発生量との対応関係をテーブルとして作成することにより、推定用のテーブルを得たが、本発明はこれに限らず、推定用のテーブルとして、相違度と算出したイオン発生減少量との対応関係を示すテーブルであってもよい。
【0039】
撮像部71は、例えば、針電極6aの画像を撮像することができるイメージセンサであり、イオン発生部6の付近に設けられている。図4において、撮像部71として、イメージセンサのモジュール形態で示しているが、針電極6aの画像を撮像することができるものであれば、このような形態に限らず、例えば、イメージセンサ単体でもよいし、製品としての小型のカメラでもよい。
【0040】
比較部72は、撮像部71にて撮像した針電極画像が入力され、入力された針電極画像と参照画像とのパターンマッチングを行うようにしてある。具体的には、比較部72は、入力された針電極画像に対して、画素毎に輝度を計測して数値化し、同様に数値化した参照画像との輝度に係る相違度を算出して比較結果として出力するようにしてある。
【0041】
判断部73は、比較部72で算出された相違度が入力され、この相違度を記憶部70に記憶しておいた閾値と比較し、相違度が閾値未満である場合、針電極6aの使用が正常であると判断し、相違度が閾値以上である場合、針電極6aの使用が異常であると判断するようにしてある。ここで、閾値は必要に応じて任意に設定することができる。例えば、針電極6aの清掃又は更新するか否かを判断するために設定した閾値であってもよい。なお、判断部73による判断結果は、表示部9に出力されて表示されてもよいし、空気調和機の運転の制御に用いられてもよい。また、表示部9での判断結果の表示は、閾値の設定によって各種の形式として表示することが可能である。例えば、針電極の清掃を考慮して閾値を設定した場合、相違度が閾値以上となるときに、表示部9で針電極を清掃する旨の警告を表示するようにする。また、針電極の更新を考慮して閾値を設定した場合、相違度が閾値以上となるときに、表示部9で針電極を更新する旨の警告を表示するようにする。なお、閾値の設定によって、指示灯の点灯又は点滅、若しくは風景パターン等で判断結果を表示するようにしてもよい。
【0042】
推定部74は、判断部73によりイオン発生素子の使用が正常であると判断される場合、記憶部70に記憶しておく推定用テーブルに従って、撮像された針電極画像に対応しているイオン発生量を推定するようにしてある。本実施の形態では、推定部74にて推定したイオン発生量を、イオン量測定装置7の測定結果、即ち針電極6aに発生されたイオンの量として出力するようにしてある。また、この測定結果は、表示部9に出力され、数値又はパターン等に表示されてもよいし、空気調和機の運転の制御に用いられてもよい。
【0043】
次に、図7〜9に基づいて、比較部72によるパターンマッチングの具体的な手段について説明する。
【0044】
図7は本発明の実施の形態1に係るイオン量測定装置7の撮像部71により撮像される画像を例示する図である。図7A及び図7Bでは、上段は針電極6aの新品時の画像であり、下段は一定の時間使われた針電極6aの画像である。図8は本発明の実施の形態1に係るイオン量測定装置によるパターンマッチングの一例(図7Aの例)を示す図である。図9は本発明の実施の形態1に係るイオン量測定装置によるパターンマッチングの他の例(図7Bの例)を示す図である。ここで、説明の便宜上、8×8のメッシュに分割された領域に針電極6aを画像として読み込んで画像処理を行う例を示しているが、64×64、256×256等、要求仕様に応じて高解像度の撮像部71で針電極6aの画像を撮像して、比較部72にて高解像度の画像処理を行ってもよい。
【0045】
図8において、上段左は参照画像としての新品時の針電極6aの画像であり、上段右はこの参照画像に対し、物体がある画素を「1」、無い画素を「0」と数値に変換した図である。また、図8において、下段左は、撮像部71にて撮像した画像(以下、針電極画像と記す)としての一定の時間使われた後の針電極6aの画像であり、下段右はこの針電極画像に対し、物体がある画素を「1」、無い画素を「0」と数値に変換した図である。この例では、針電極6aが一定の時間使われたが、異物が付着されていないため、上段の参照画像に比べると、各画素の数値には変化がない。
【0046】
図9において、上段左は参照画像としての新品時の針電極6aの画像であり、上段右はこの参照画像に対し、物体がある画素を「1」、無い画素を「0」と数値に変換した図である。また、図9において、下段左は、針電極画像としての一定の時間使われた後の針電極6aの画像であり、下段右はこの針電極画像に対し、物体がある画素を「1」、無い画素を「0」と数値に変換した図である。この例では、針電極6aに異物が付着されているため、上段の参照画像に比べると、下段の針電極6aの先端部に近い複数の画素B4、B5、C4、C5では、数値には変化が発生した。
【0047】
ここで、物体の有無は、例えば画像の各画素の輝度によって判定すればよい。例えば、一つの画素では、輝度が一定値より大きい場合、該画素に物体があると判定し、輝度が一定値未満である場合、該画素に物体がないと判定する。また、本実施の形態では、画素に物体があれば「1」、無ければ「0」の2値として数値変換したが、これも要求仕様に応じて、例えば8段階、256段階、1024段階等の多値を用いて数値変換してもよい。
【0048】
本実施の形態では、2つの画像の相違の程度は「相違度」で表した。相違度は、各画素の数値変換後の差分のRMS(Root Mean Square)で簡単に算出できる。
【0049】
図8の場合、相違度1は、
相違度1=[(0−0)2 +(0−0)2 +・・・(1−1)2 +(1−1)2 ・・・(0−0)2 +(0−0)2 ]1/2
=(0)1/2=0
である。
【0050】
図9の場合、相違度2も同様にRMSで算出でき、
相違度2=[(0−0)2 +(1−0)2 +・・・(1−1)2 +(1−1)2 ・・・(0−0)2 +(0−0)2 ]1/2
=(4)1/2=2
である。
【0051】
このように針電極画像と参照画像との相違度を求めることにより、針電極6aの異物付着の状態を認識することができる。よって、針電極6aの画像に基づいて針電極6aに発生されたイオンの量を測定することができる。
【0052】
次に、図10に基づいて本実施形態におけるイオン量測定の手順を説明する。図10は本発明の実施の形態1に係るイオン量測定装置7によるイオン量測定の一例の手順を示すフローチャートである。
【0053】
図10に示すように、イオンの量を測定する場合、まず、撮像部71は針電極6aの画像を撮像し(ステップS1)、次に、撮像した針電極画像を比較部72に入力し、比較部72は、画素毎に輝度を計測し、針電極画像を数値化し(ステップS2)、針電極画像と記憶部70に記憶しておく参照画像との輝度に係る相違度を算出し(ステップS3)、判断部73は、算出した相違度が所定の閾値未満であるか否かを判断し(ステップS4)、相違度が所定の閾値以上であると判断した場合(ステップS4:NO)、表示部9は判断結果に係る情報を表示し(ステップS5)、処理が終了する。また、判断部73にて相違度が所定の閾値未満であると判断した場合(ステップS4:YES)、推定部74は記憶部70に記憶しておいた推定用のテーブルに従って、撮像した針電極画像に対応しているイオン発生量を推定し(ステップS6)、推定したイオン発生量を測定すべき針電極6aに発生されたイオンの量として、表示部9に出力し(ステップS7)、表示部9にて測定されたイオンの量に係る情報を表示し(ステップS8)、処理が終了する。これにより針電極6aに発生されたイオンの量を測定することができる。
【0054】
以上のように、実施の形態1に係るイオン量測定装置では、針電極の画像を利用してイオンの量を得ることにより、捕集電極を設けなくてもイオンの量を測定することができる。このため、イオン発生部から室内に放出されるべきイオンの量が減少することがない。また、電流を電圧に変換する高抵抗を設けないので、湿度等の環境変化がある場合にも測定精度に影響を与えることはない。
【0055】
前記実施の形態1では、推定部74が判断部73による判断結果に応じてイオン発生量を推定する例を説明したが、本発明はこれに限らず、判断部73を設けず、推定部74にて直接に比較部72の比較結果に基づいてイオン発生量を推定するようにしてもよい。
【0056】
また、前記実施の形態1では、パターンマッチング用の参照画像は、新品時の針電極画像である例を説明したが、本発明はこれに限らず、参照画像としては、予め計測した複数の異物付着状態における針電極の画像から任意に選択してもよい。ある異物付着状態における針電極の画像を参照画像とする場合、まず、前述したように撮像部71に撮像された針電極画像の参照画像との相違度を算出し、次に、推定用のテーブルにおいて参照画像に対応する相違度を用いて算出した相違度を補正し、推定用のテーブルに基づいて、補正した相違度に対応するイオン発生量を推定して測定結果とすればよい。
【0057】
(実施の形態2)
実施の形態2は、実施の形態1において、捕集電極を利用してイオンの量を測定する従来のイオンセンサを設けてある形態である。なお、以降の説明において、実施の形態1と同様の構成については、実施の形態1を参照するものとし、その説明を省略する。なお、実施の形態1と同様の構成については実施の形態1と同じ符号を付している。
【0058】
図11は、本発明の実施の形態2に係るイオン量測定装置を備えた空気調和機の一部を拡大した側面断面図である。図11に示すように、イオン量測定装置は前壁3aと平行に配置されたセンサ基板76を有する。尚、センサ基板76は前壁3aと平行でなくてもよい。センサ基板76の通風路3側の面には、イオンを捕集する捕集電極77が形成されている。センサ基板76の通風路3側と反対側の面には、捕集電極77に捕集されたイオンの電荷による電流に基づいてイオンの量を測定する、図示しない測定部が設けられている。
【0059】
本実施の形態では、必要に応じてイオン量測定装置7の測定モードを選ぶことができる。例えば、通常のイオン発生時には、主に撮像部71にて撮像した針電極の画像に基づいてイオンの量を測定し、一定の期間おきに捕集電極77でイオンを捕集して、捕集したイオンの電荷による電流に基づいてイオンの量を測定するようにしてもよい。また、イオン発生の初期に針電極画像に基づいてイオン発生素子の使用状態を監視し、例えば判断部73にてイオン発生素子に異常が発生したと判断した場合に、精度がより高いイオンセンサでイオンの量を測定するようにしてもよい。
【0060】
以上のように、実施の形態2に係るイオン量測定装置7では、針電極の画像に基づくイオン量測定は、発生したイオンを捕集しないので、室内に放出されるイオンの量は減らない。また、一定の期間おきに、発生したイオンを捕集してイオンの量を測定する従来型のイオンセンサ等を用いてイオンの量を確かめることで、室内に放出するイオンの量をほとんど減らすことなくより精度が高いイオン量測定を可能とする。
【0061】
以上、空気調和機に内蔵されたイオン量測定装置7について説明したが、実施の形態1及び2に係るイオン量測定装置7は、例えば、空気清浄機、イオン発生機等の他のイオン発生装置に適用してもよいし、モニターを備えるイオン量測定システムに適用してもよい。
【0062】
要するに、本実施の形態は例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0063】
1 ハウジング
2 吸込口
3 通風路
4 吹出口
5 ファン
6 イオン発生部
6a、6b 針電極
7 イオン量測定装置
8 光源
9 表示部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン発生素子によって発生されたイオンの量を測定するイオン量測定装置において、
前記イオン発生素子の画像を撮像する撮像手段と、
該撮像手段にて撮像した前記イオン発生素子の画像を、所定の画像と比較する比較手段とを有し、
該比較手段による比較結果に基づいてイオンの量を測定するようにしてあることを特徴とするイオン量測定装置。
【請求項2】
前記所定の画像は、前記イオン発生素子の新品時の画像であることを特徴とする請求項1に記載のイオン量測定装置。
【請求項3】
前記比較手段は、前記イオン発生素子の画像と前記所定の画像との輝度に係る相違度を算出して前記比較結果とするようにしてあることを特徴とする請求項1又は2に記載のイオン量測定装置。
【請求項4】
前記比較結果と前記イオン発生素子に発生されたイオンの量との対応関係に係る情報を記憶する記憶手段を有することを特徴とする請求項1から3の何れか一つに記載のイオン量測定装置。
【請求項5】
前記比較結果に基づいてイオン発生素子に異常が発生したか否かを判断する判断手段を有することを特徴とする請求項1から4の何れか一つに記載のイオン量測定装置。
【請求項6】
イオンを捕集する捕集電極を有し、
該補集電極にて補集したイオンによる電流に基づいてイオンの量を測定するようにしてあることを特徴とする請求項1から5の何れか一つに記載のイオン量測定装置。
【請求項7】
請求項1から5の何れか一つに記載のイオン量測定装置と、
該イオン量測定装置の測定結果を表示する表示装置と
を有することを特徴とするイオン量測定システム。
【請求項8】
イオン発生素子と、
請求項1から6の何れか一つに記載のイオン量測定装置と
を有することを特徴とするイオン発生装置。
【請求項9】
前記イオン量測定装置の測定結果を表示する表示装置を有することを特徴とする請求項8に記載のイオン発生装置。
【請求項1】
イオン発生素子によって発生されたイオンの量を測定するイオン量測定装置において、
前記イオン発生素子の画像を撮像する撮像手段と、
該撮像手段にて撮像した前記イオン発生素子の画像を、所定の画像と比較する比較手段とを有し、
該比較手段による比較結果に基づいてイオンの量を測定するようにしてあることを特徴とするイオン量測定装置。
【請求項2】
前記所定の画像は、前記イオン発生素子の新品時の画像であることを特徴とする請求項1に記載のイオン量測定装置。
【請求項3】
前記比較手段は、前記イオン発生素子の画像と前記所定の画像との輝度に係る相違度を算出して前記比較結果とするようにしてあることを特徴とする請求項1又は2に記載のイオン量測定装置。
【請求項4】
前記比較結果と前記イオン発生素子に発生されたイオンの量との対応関係に係る情報を記憶する記憶手段を有することを特徴とする請求項1から3の何れか一つに記載のイオン量測定装置。
【請求項5】
前記比較結果に基づいてイオン発生素子に異常が発生したか否かを判断する判断手段を有することを特徴とする請求項1から4の何れか一つに記載のイオン量測定装置。
【請求項6】
イオンを捕集する捕集電極を有し、
該補集電極にて補集したイオンによる電流に基づいてイオンの量を測定するようにしてあることを特徴とする請求項1から5の何れか一つに記載のイオン量測定装置。
【請求項7】
請求項1から5の何れか一つに記載のイオン量測定装置と、
該イオン量測定装置の測定結果を表示する表示装置と
を有することを特徴とするイオン量測定システム。
【請求項8】
イオン発生素子と、
請求項1から6の何れか一つに記載のイオン量測定装置と
を有することを特徴とするイオン発生装置。
【請求項9】
前記イオン量測定装置の測定結果を表示する表示装置を有することを特徴とする請求項8に記載のイオン発生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−173214(P2012−173214A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37420(P2011−37420)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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