説明

イソインドール類およびそのポリマー、並びにそれらの製造方法

【課題】イソインドール類を、簡便に得ることができる新規な製造方法を提供すること。
【解決手段】下記式(1)で示されるフタロニトリルを還元することを特徴とする、下記式(2)で示されるイソインドールの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソインドール類の新規製造方法および新規イソインドール類に関するものである。さらに本発明は、前記製法に基づくポリマーの製造方法、および新規のイソインドール類ポリマーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
イソインドール類は、ポルフィリン等の色素原料として用いられ、またポリマー化することで、有機薄膜トランジスタや有機太陽電池、有機EL、電子写真感光体、フォトリフラクティブ材料、二次電池、キャパシタ、帯電防止剤、エレクトロクロミック材料等に用いることが期待されている。しかしイソインドール類の製造は、従来、多段階の反応工程が必要であり、製造コストがかかるという問題があった。
【0003】
例えば非特許文献1では、下記式で示されるように、まずペンタフルオロベンゼンとn−ブチルリチウムとの反応などによりテトラフルオロベンザインを形成し、次いでこれとN−ベンジルピロールとのディールス−アルダー反応によりN−ベンジル−7−アザ−テトラフルオロベンゾノルボルナジエンを形成し、さらに水素添加、熱分解を経て、4,5,6,7−テトラフルオロ−2H−イソインドールを製造することが開示されている。
【0004】
【化1】

【0005】
また非特許文献2では、下記式で示されるように、まず上述の方法などで形成したテトラフルオロベンザインとN−トリメチルシリルピロールとを反応させた後、水でクエンチして、テトラフルオロ−1,4−ジヒドロナフタレン−1,4−イミンを形成し、さらにこれとN’−α−クロロベンジリデン−N2−フェニルヒドラジンとを反応させて、4,5,6,7−テトラフルオロ−2H−イソインドールを製造することが開示されている。
【0006】
【化2】

【非特許文献1】J. Borstein, D. E. Remy, and J. E. Shields, "SYNTHESIS AND REACTIONS OF 4,5,6,7-TETRAFLUOROISOINDOLE", Tetrahedron Lett., 1974, p. 4247 - 4250
【非特許文献2】P. S. Anderson, M. E. Christry, E. L. Engelhardt, G. F. Lundell and G. S. Ponticello, "N-Trimethlysilylpyrroles as Diense in the Syntehsis of 1,4-Dihydoronaphthalen-1,4-imines and Isoindoles (1)", J. Hetercyclic Chem., 1977, 14, p. 213 - 218
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、色素またはポリマー原料として有用なイソインドール類を、簡便に得ることができる新規な製造方法を提供することにある。また本発明は、新規なイソインドール類、イソインドール類ポリマー、および該ポリマーの製造方法も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成し得た本発明の製造方法とは、下記式(1)で示されるフタロニトリル(以下「フタロニトリル(1)」と略称することがある)を還元することを特徴とする、下記式(2)で示されるイソインドール(以下「イソインドール(2)」と略称することがある)の製造方法である。
【0009】
【化3】

【0010】
上記式(1)および(2)中、Xは、ハロゲン原子を表す。Yは、R1、OR2またはSR3(式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、アルキル、アリールまたはアルキルアリール基を表す。)を表す。m+n≦4であることを条件として、mは1〜4の整数を表し、nは0〜3の整数を表す。
【0011】
本発明において、フタロニトリル(1)をヒドリド還元試薬により還元することが好ましく、フタロニトリル(1)1モルに対し、ヒドリドが2〜6モルになるようにヒドリド還元試薬を使用することがより好ましい。さらにフタロニトリル(1)とヒドリド還元試薬とを混合し、還元反応を行った後、反応混合物とプロトン酸またはアルカリとを混合することが推奨される。好ましいヒドリド還元試薬は、アルミニウム水素化物若しくはその錯体、またはホウ素水素化物若しくはその錯体である。
【0012】
また本発明において、フタロニトリル(1)を接触水素化法で還元することも、好ましい実施態様である。ここで「フタロニトリル(1)を接触水素化法で還元する」とは、触媒存在下にて、フタロニトリル(1)を水素ガスと接触させて還元することを意味する。
【0013】
本発明は、下記式(2)で示される新規のイソインドール(4,5,6,7−テトラフルオロ−2H−イソインドールを除く)、または下記式(3)で示される新規のN−置換イソインドール(Xがフッ素原子であり、且つm=4であるものを除く。以下「N−置換イソインドール(3)」と略称することがある)を提供する(下記式(2)および(3)中、X、Y、mおよびnは、上記と同じ意味であり、R4は、アルキル、アリール、アルキルアリールまたはアシル基を表す)。
【0014】
【化4】

【0015】
本発明は、さらに、上記製造方法によって製造されるイソインドール(2)またはN−置換イソインドール(3)を酸化重合することによって、下記式(4)または(5)で示される繰返し単位を有するポリマーを製造する方法、並びに下記式(4)または(5)で示される繰返し単位を有するポリマー自体(Xがフッ素原子であり、且つm=4であるものを除く、以下「ポリイソインドール(4)」または「ポリイソインドール(5)」と略称することがある)も提供する(下記式(4)および(5)中、X、Y、R4、mおよびnは、上記と同じ意味である)。
【0016】
なお本発明において酸化重合とは、酸化剤による化学的酸化重合、または電解質の存在下で溶媒中のモノマーを電気的に酸化することによる電解酸化重合を意味する。
【0017】
【化5】

【発明の効果】
【0018】
本発明者らが鋭意検討した結果、フタロニトリル(1)を、還元することにより、イソインドール(2)が簡便に得られることを見出した。本発明の製造方法は、従来の方法と比べて、反応工程が少なく、より安価にイソインドール類を製造することができる。本発明の製造方法は、反応工程が簡便であるため、様々なフタロニトリル類を用いることができ、それにより様々な新規なイソインドール類を製造することができる。これらの新規イソインドール類は、色素原料として、またはポリマー化することで、有機薄膜トランジスタや有機太陽電池等の構成材料として用いることが期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の製造方法は、フタロニトリル(1)を還元するという簡便な反応工程により(好ましくはヒドリド還元試薬を用いた還元または接触水素化法での還元により)、イソインドール(2)を製造できることを特徴とする。よって、まずヒドリド還元試薬による還元について説明する。
【0020】
テトラフルオロフタロニトリルを、水素化ジイソブチルアルミニウムで還元することにより、4,5,6,7−テトラフルオロ−2H−イソインドールを製造するという本発明の好ましい実施態様において、下記式で示すような反応機構が進行すると推定される。なお接触水素化法でも、同様の反応機構が進行すると推定される。但し本発明は、このような推定に限定されない:
【0021】
【化6】

【0022】
ヒドリド還元試薬が少なすぎると、目的物であるイソインドール(2)の収率が低下する。一方、ヒドリド還元試薬が多すぎると、フタロニトリル(1)のハロゲンがヒドリドにより置換される副反応が起こるおそれがある。よってフタロニトリル(1)1モルに対し、ヒドリドが、好ましくは2〜6モル、より好ましくは2.5〜5モル、さらに好ましくは2.7〜4.5モルになるようにヒドリド還元試薬を使用することが推奨される。なお上記の推定反応機構から分かるように、ヒドリド還元試薬の最適量は、フタロニトリル(1)1モルに対し、ヒドリドが3モルとなるような量である。
【0023】
フタロニトリル(1)とヒドリド還元試薬との還元反応後に、ヒドリド還元試薬を水でクエンチする。この際、水と共に酸(好ましくはプロトン酸)またはアルカリを用いることが好ましい。なぜならイソインドール(2)の収率が向上するからである。
【0024】
プロトン酸またはアルカリを用いることで収率が向上する理由として、以下のようなことが推定される。但し本発明はこの推定に限定されない:上記の推定反応機構で示したように、還元反応後では、ヒドリド還元試薬の残基(例えばアルミニウムまたはホウ素)がイソインドール(2)の窒素に付加したままの状態であると考えられる。この残基が付加したままだと、その後のシリカゲルカラムクロマトグラフィーなどの精製が上手くいかないことも考えられる。そこでプロトン酸またはアルカリを添加して、残基の脱離を促進することにより、精製収率が向上すると考えられる。なおNaOH等の強塩基を混合することによっても、イソインドール(2)の収率が向上することは驚くべきことである。なぜなら出発原料であるフタロニトリル(1)は、NaOH等と混合すると、炭素と結合しているハロゲンが外れるからである。しかし本発明者らが検討した結果、反応混合物とNaOH等とを混合しても、ハロゲンが外れず、イソインドール(2)の精製収率が向上することを見出した。
【0025】
還元反応後に水でクエンチする際には、酸またはアルカリを用いなくても、またはヒドリド還元試薬に対して過少量の酸またはアルカリを用いても良い。しかし収率の観点から、好ましくは反応系が中性ないし酸性になる量の酸、殊にプロトン酸を用いることが推奨される。具体的にはプロトン酸を、ヒドリド還元試薬1モルに対してプロトン(H+)が、好ましくは1モル以上、より好ましくは1.5モル以上となるような量で使用することが推奨される。但しプロトン酸も、その後の処理工程、殊に精製工程に悪影響を及ぼすおそれがあるので、過剰量のプロトン酸を用いた場合、残りのプロトン酸を塩基で中和することが好ましい。よってその後の処理工程を考慮すると、プロトン(H+)量は、ヒドリド還元試薬1モルに対して、好ましくは4モル以下、より好ましくは3モル以下である。
【0026】
同様に収率の観点から、還元反応後に、反応混合物とアルカリとを混合することが推奨される。アルカリの使用量は、ヒドリド還元試薬1モルに対して、好ましくは1モル以上(より好ましくは2モル以上)、好ましくは5モル以下(より好ましくは3モル以下)である。過剰量のアルカリを用いた場合、必要に応じて、次の精製工程の前に中和してもよい。
【0027】
本発明の製造方法では、上で示したように、シアノ基の部分が還元反応を受けることにより、イソインドール(2)が製造されていると推定され、上記式中のハロゲンXおよび置換基Yは、この還元反応に大きな影響を及ぼさないと考えられる。そのため本発明では、あらゆる種類のハロゲンXおよび置換基Yを有するフタロニトリル(1)を使用できると考えられる。但し、目的物のイソインドール(2)は、ハロゲン原子が存在することによって安定化されると考えられるので、イソインドール(2)の安定性の観点からは、フタロニトリル(1)中のハロゲン原子Xの数は、1以上(即ちm≧1)、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4であることが推奨される。フタロニトリル(1)として、例えばアルドリッチ社、シンクエスト社、アズマックス株式会社若しくはセントラル薬品株式会社などから市販されているもの、または既知の方法で合成できるものが使用できる。
【0028】
上記式中のXは、ハロゲン原子を表し、好ましくはフッ素、塩素または臭素原子、より好ましくはフッ素または塩素原子、さらに好ましくはフッ素原子である。Xとして、同時に複数種のハロゲン原子が存在しても良い。上記式中のR1、R2およびR3は、それぞれ独立に、好ましくはC1-20アルキル基、より好ましくはC1-10アルキル基、さらに好ましくはC1-5アルキル基;好ましくはC6-20アリール基、より好ましくはC6-12アリール基;または好ましくはC7-20アルキルアリール基、より好ましくはC7-15アルキルアリール基、さらに好ましくはC7-10アルキルアリール基である。なお本発明において、Ca-bとは、炭素数がa以上、b以下であることを意味する。R1、R2およびR3は、その炭素骨格上に、ハロゲン原子を含有していても良い。置換基Yとして、R1、OR2およびSR3のいずれかが複数存在する場合、複数存在するR1、R2およびR3は、異なる置換基(例えばアルキル基とアリール基)であっても良い。
【0029】
フタロニトリル(1)として、まずn=0であるもの、即ち置換基としてハロゲン原子Xのみを有する含ハロゲンフタロニトリルが挙げられる。含ハロゲンフタロニトリルは、アルドリッチ社などから販売されている。また市販の含ハロゲンフタロニトリルから、従来既知のハロゲン置換反応により、市販されていない含ハロゲンフタロニトリルを製造することもできる。
【0030】
例えば特開2002−332254号には、含フッ素イソフタロニトリルのフッ素原子を、臭化剤(例えば臭化ナトリウム、臭化カリウムおよび臭化リチウム、好ましくは臭化ナトリウムおよび臭化カリウム)を用いて、臭素原子で置換する技術が開示されている。また By J. M. Birchell, R. N. Haszeldlne, and J. O. Morley, "Polyfluoroarenes. Part XI. Reactions of Tetrafluorophthalronitrile with Nucleophilic Reagents", J. Chem. Soc. (C), 1970, p. 456 - 462 には、テトラフルオロイソフタロニトリルのフッ素原子を、LiClを用いて、塩素原子で置換する技術が開示されている。
【0031】
含ハロゲンフタロニトリルの具体例として、4−フルオロフタロニトリル、テトラフルオロフタロニトリル、4,5−ジクロロフタロニトリル、テトラクロロフタロニトリル、4−クロロ−3,5,6−トリフルオロフタロニトリルなどが挙げられる。これらの中でも、入手容易性などの観点から、テトラフルオロフタロニトリルが好ましい。
【0032】
置換基Yとして、R1基を有するフタロニトリル(1)は、含ハロゲンフタロニトリルを用いて、合成化学分野で周知であるカップリング反応により製造することができる。例えばR1基を有するフタロニトリル(1)は、ニッケルやパラジウム触媒の存在下で、含ハロゲンフタロニトリルとグリニャール試薬とのカップリング反応を行うことにより、詳しくは含ハロゲンフタロニトリルのハロゲン原子を、グリニャール試薬からのアルキル、アリールまたはアルキルアリール基で置換することにより、得ることができる。このカップリング反応は、熊田−玉尾カップリングとして、合成化学分野でよく知られている。またR1基を有するフタロニトリル(1)は、パラジウム触媒の存在下で、含ハロゲンフタロニトリルと有機ホウ素化合物とのカップリング反応を行うことによっても得ることができる。このカップリング反応も、鈴木−宮浦カップリングとして、合成化学分野でよく知られている。
【0033】
置換基Yとして、OR2基またはSR3基を有するフタロニトリル(1)は、従来既知の方法、例えば特開2002−302477号に記載されているような方法により、含ハロゲンフタロニトリルのハロゲン原子を、HOR2および/またはHSR3で置換することによって、製造することができる。この芳香族求核置換反応に用いる含ハロゲンフタロニトリルは、ハロゲンの置換反応に対する反応性の観点から、好ましくは含フッ素および/または含塩素フタロニトリル、より好ましくは含フッ素フタロニトリル、さらに好ましくはテトラフルオロフタロニトリルである。また含ハロゲンフタロニトリルの求核置換反応は、フタロニトリルの4位および5位で優先的に進行する。よって入手容易性の観点から、OR2基またはSR3基を有するフタロニトリル(1)として、下記式(6)または(9)、殊に下記式(7)または(8)、あるいは下記式(10)または(11)で示されるフタロニトリル類が好ましい。
【0034】
【化7】

【0035】
上記式(6)〜(11)中、Z1およびZ2は、それぞれ独立にOR2またはSR3を表し、R2およびR3は、それぞれ独立に、好ましくはC1-20アルキル基、より好ましくはC1-10アルキル基、さらに好ましくはC1-5アルキル基;好ましくはC6-20アリール基、より好ましくはC6-12アリール基;または好ましくはC7-20アルキルアリール基、より好ましくはC7-15アルキルアリール基、さらに好ましくはC7-10アルキルアリール基を表す。またR2およびR3は、その炭素骨格上に、ハロゲン原子を含有していても良い。上記式(10)または(11)中のR2およびR3は、同一のものでも、異なるものでも良いが、製造の容易性の観点から、同一のものであることが好ましい。
【0036】
ヒドリド還元試薬として、金属若しくは半金属の水素化物またはそれらの錯体を用いることができる。金属水素化物等として、例えば以下のものを挙げることができる。
【0037】
アルキルアラン、ジアルキルアラン、アルコキシアラン、ジアルコキシアラン等のアルミニウム水素化物。
【0038】
LiAlH4、LiAlH3R、LiAlH22、LiAlHR3、NaAlH4、NaAlH3R、NaAlH22、NaAlHR3、NaAlH2(OCH2CH2OCH32、Al23(OCH2CH2OCH33、R3N−AlH3、Et2O−AlH3等のアルミニウム水素化物の錯体(式中Rは、アルキル、アリールまたはアルコキシ基を表す。)。
【0039】
ジボラン(B26)、アルキルボラン、ジアルキルボラン、アルコキシボラン、ジアルコキシボラン等のホウ素水素化物。
【0040】
NaBH4、NaBH3R、NaBH22、NaBHR3、NaBH3CN、NaBH3N(CH32、NaBH3(NH(t−Bu))NaBH33、NaBH2(SCH2CH2S)、LiBH4、LiBH3R、LiBH22、LiBHR3、H3N−BH3、RH2N−BH3、R2HN−BH3、R3N−BH3、THF−BH3、ピリジン−BH3、R2HP−BH3、R3P−BH3、KBHR3等のホウ素水素化物の錯体(式中Rは、アルキル、アリールまたはアルコキシ基を表す。)。
【0041】
Cl2SiH2、Cl3SiH、R2SiH2、R3SiH、((CH33Si)3SiH、ポリメチルヒドロシラン等のケイ素水素化物(式中Rは、アルキル、アリール、ベンジルまたはアルコキシ基を表す。)。
【0042】
2SnH2、R3SnH、Ph2SnH2、Ph3SnH、(n−Bu)2SnH2、水素化トリエチルスズ、水素化トリメチルスズ等のスズ水素化物(式中Rは、アルキル、アリールまたはアルコキシ基を表す。)。
【0043】
上記のものの中でも、反応性の観点から、アルミニウム水素化物若しくはその錯体、またはホウ素水素化物若しくはその錯体が好ましく、水素化ジイソブチルアルミニウム、およびBH3錯体がより好ましい。ヒドリド還元試薬は、1種のみを単独で用いることができ、2種以上を併用することもできる。
【0044】
ヒドリド還元試薬は、ルイス酸と組み合わせて使用してもよい。ルイス酸を添加すると、殊にケイ素水素化物またはスズ水素化物を使用する場合、還元反応の進行が促進されると考えられる。本発明において、1種のみのルイス酸を単独で、または2種以上のルイス酸を組み合わせて用いることができる。
【0045】
ルイス酸としては、特に限定は無く、例えばAlCl3、AlBr3、TiCl4、SnCl2、SnCl4、FeCl3、BF3、BF3・O(C252、トリスペンタフルオロフェニルホウ素、NbF5、TaF5、PF5、AsF5、SbF5等の周期律表第IIIB族、第IVA族、第IVB族、第VA族または第VB族元素のハロゲン化合物、その錯体またはアルコキシド化合物が挙げられる。
【0046】
本発明の方法における還元反応は、通常、溶媒を用いて行われる。溶媒としては特に限定は無いが、出発原料であるフタロニトリル(1)を溶解できるものが好ましい。溶媒として、例えばクロロホルム、塩化メチレン等の塩素系炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;THF、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;およびスルホラン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン等のスルホラン類などを挙げることができる。溶媒は、単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。溶媒を用いる場合、フタロニトリル(1)の濃度は、好ましくは0.01〜1M程度、より好ましくは0.05〜0.5M程度である。
【0047】
ヒドリド還元試薬を用いた還元反応では、還元試薬の分解を抑制するために、窒素またはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。またフタロニトリル類の溶液を冷却しながら、ヒドリド還元試薬の溶液をゆっくりと添加しても良いし、ヒドリド還元試薬の溶液を冷却しながら、フタロニトリル類の溶液をゆっくりと添加しても良い。還元反応の温度は、用いる溶媒などにも影響されるが、好ましくは0℃以上、より好ましくは20℃以上であり、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下である。還元反応の時間は、好ましくは30分以上、より好ましくは1時間以上、さらに好ましくは2時間以上であり、好ましくは48時間以下、より好ましくは24時間以下である。
【0048】
目的物であるイソインドール(2)の収率を向上させるために、ヒドリド還元試薬を用いた還元反応の後に、反応混合物とプロトン酸またはアルカリとを混合することが好ましい。
【0049】
まずプロトン酸を用いる場合について説明する。プロトン酸には特に限定は無く、有機または無機プロトン酸を使用することができる。本発明において、1種のみのプロトン酸を単独で、または2種以上のプロトン酸を組み合わせて用いることができる。還元反応後の反応混合物とプロトン酸とは、好ましくは−30℃〜30℃程度、より好ましくは−10℃〜10℃程度の温度で、さらに好ましくは氷浴などでの冷却下(0℃程度)で混合することが推奨される。
【0050】
無機プロトン酸としては、例えば塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸;オルトリン酸、ピロリン酸等のリン酸;過塩素酸等の過ハロゲン酸;リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸、リンタングステン酸、ケイタングステン酸、リンタングストモリブデン酸、リンバナドモリブデン酸等のヘテロポリ酸などが挙げられる。
【0051】
有機プロトン酸としては、例えばベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等のアリールスルホン酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリクロロメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、t−ブチルスルホン酸等のアルキルスルホン酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、ピバリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、シクロヘキサンカルボン酸等の飽和脂肪族カルボン酸;アクリル酸、メタクリル酸、プロピオール酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、オレイン酸等の不飽和脂肪族カルボン酸;安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族カルボン酸などが挙げられる。
【0052】
次にアルカリを用いる場合について説明する。還元反応後に反応混合物とアルカリとを、好ましくは−30℃〜30℃程度、より好ましくは−10℃〜10℃程度の温度で混合することが推奨される。アルカリとしては、好ましくはアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、モノカルボン酸塩(酢酸塩など)、ジカルボン酸塩(シュウ酸塩など);有機アミンなどが挙げられる。これらの中でも、強塩基であるアルカリ金属水酸化物(殊にLiOH、NaOH、KOH)が好ましい。コストの観点から、NaOHがより好ましい。また有機アミンとして、ホウ素などと錯体を形成してヒドリド還元試薬残基の脱離を促進できるエタノールアミン、メチルアミンがより好ましい。これらアルカリの1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
ヒドリド還元試薬による還元反応の後、反応混合物から通常の処理工程により、目的物であるイソインドール(2)を精製することが推奨される。例えば過剰のプロトン酸またはアルカリを用いた場合は、中和工程、水または食塩水などによる洗浄工程、濃縮工程および精製工程を行うことが推奨される。本発明において精製手段には特に限定はなく、該技術分野で通常使用されている手段、例えばシリカゲルカラムクロマトグラフィー、アルミナカラムクロマトグラフィー、昇華精製、再結晶などを使用することができる。
【0054】
本発明において、フタロニトリル(1)を接触水素化法で還元することによっても、イソインドール(2)を製造することができる。接触水素化反応に用いる触媒としては、該技術分野で知られている通常の金属触媒を使用することができる。フタロニトリル(1)に対して触媒の中心金属が好ましくは0.01〜30モル%、より好ましくは0.1〜20モル%、さらに好ましくは1〜10モル%となるような量で金属触媒を使用することが推奨される。
【0055】
金属触媒として、ルテニウムやロジウムにホスフィンなどが配位して構成される均一触媒が挙げられる。但し反応性、反応後の回収および再生処理の容易性を考慮すると、本発明において、不均一触媒を用いることが好ましい。不均一触媒の中でも、表面積を増大させて触媒活性を向上させるために、金属の微粉末を担体に担持させた触媒が好ましい。不均一触媒として、例えばニッケル、ラネーニッケル、銅−酸化クロム、ルテニウム、パラジウム、ロジウム、白金などの金属またはこれらの酸化物若しくは水酸化物など(粉末形状のものを含む)を活性炭、アルミナ、珪藻土などの担体に担持させたものが挙げられる。これらの中でも、活性炭にパラジウムを担持させた触媒が、優れた触媒活性を示すので、より好ましい。
【0056】
不均一触媒を使用する場合、接触水素化反応の前に触媒を、水素雰囲気下においてプロトン酸と混合して活性化する工程を、必要に応じて採用しても良い。プロトン酸を用いなくても目的物のイソインドール(2)は得られるが、収率を向上させるためには、プロトン酸を用いることが推奨される。活性化に用いるプロトン酸としては、上述のプロトン酸を用いることができる。中でも、トリフルオロ酢酸、塩酸、硝酸、硫酸が好ましい。プロトン酸の量が、フタロニトリル(1)に対して、多くても、少なくても、不純物が多く生成し、収率が低下する。よって原料のフタロニトリル(1)1モルに対し、プロトン(H+)が、好ましくは0.6〜1.6モル、より好ましくは0.8〜1.2モル、さらに好ましくは0.9〜1.1モル、最も好ましくは1モルになるようにプロトン酸を使用することが推奨される。活性化の温度は、通常、室温〜50℃程度であり、活性化の時間は、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上、さらに好ましくは1時間以上であり、好ましくは5時間以下、より好ましくは3時間以下、さらに好ましくは2時間以下である。
【0057】
接触水素化による還元の場合も、通常、溶媒を用いて行われる。溶媒としては特に限定は無いが、出発原料である上記フタロニトリル(1)を溶解できるものが好ましい。溶媒として、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;THF、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル類;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;スルホラン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン等のスルホラン類;およびギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸類などを挙げることができる。また接触水素化法では、アミド類または酢酸類と水との混合溶媒も使用できる。溶媒は、単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。溶媒を用いる場合、フタロニトリル(1)の濃度は、好ましくは0.01〜1M程度、より好ましくは0.05〜0.5M程度である。
【0058】
接触水素化の温度は、用いる溶媒などにも影響されるが、好ましくは0℃以上、より好ましくは20℃以上であり、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下である。還元反応の時間は、好ましくは30分以上、より好ましくは1時間以上、さらに好ましくは2時間以上であり、好ましくは72時間以下、より好ましくは48時間以下である。接触水素化を促進するために、水素を加圧状態で用いることが好ましい。水素圧は、好ましくは1.1気圧以上、より好ましくは1.5気圧以上、さらに好ましくは2気圧以上である。但し設備の制約などから水素圧は、好ましくは5気圧以下、より好ましくは3気圧以下である。
【0059】
反応系に絶えず水素ガスを供給して、接触水素化反応を行うことができる。また一定圧まで水素ガスを供給した後に、反応系を密閉して接触水素化反応を行い、反応の進行に伴い系内の圧力が低下してから、再び水素ガスを供給することもできる。水素ガス供給の前に、反応系を減圧にすることが望ましい。また触媒に多くの水素原子を吸着させるために、減圧および水素ガスの供給を複数回繰り返して行うことが、好ましい実施態様である。
【0060】
上で説明した本発明の製造方法により、4,5,6,7−テトラフルオロ−2H−イソインドール以外の、上記式(2)で示される新規イソインドールを製造することができる。よって本発明は、このような新規イソインドール(2)も提供する。さらに本発明は、イソインドール(2)から得られる新規のN−置換イソインドール(3)(Xがフッ素原子であり、且つm=4であるものを除く)も提供する。本発明の新規イソインドール(2)またはN−置換イソインドール(3)はポリイソインドールまたは色素等の原料として用いることができる。またイソインドール(2)は、さらにポルフィリンの原料として用いることができる。
【0061】
上記式(3)(および式(5))中のR4は、好ましくはC1-10アルキル基、より好ましくはC1-5アルキル基(例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基など);好ましくはC6-20アリール基、より好ましくはC6-12アリール基(例えばフェニル基、トリル基など);好ましくはC7-15アルキルアリール基、より好ましくはC7-10アルキルアリール基(例えばベンジル基など);または好ましくはC2-10アシル基、より好ましくはC2-5アシル基(例えばアセチル基、ベンゾイル基、t−ブトキシカルボニル基など)である。
【0062】
イソインドール(2)からN−置換イソインドール(3)を得る方法には特に限定は無く、アミンから置換アミンを得るために知られている様々な方法を用いることができる。以下では、いくつかの例を示す。
【0063】
イソインドール(2)とハロゲン化アルキルまたはハロゲン化アルキルアリール(ハロゲンがアルキル部分の炭素原子と結合しているもの)とを、塩基の存在下で反応させることにより、R4がアルキル基またはアルキルアリール基であるN−置換イソインドール(3)を製造できる。塩基としては、強塩基(例えばn−ブチルリチウム、水素化アルカリ金属(例えばNaH、KH)など)が好ましい。このアルキル化反応は、通常、低温(例えば−100℃〜100℃程度、好ましくは−80℃〜70℃程度)で行われる。ハロゲン化アルキルとしては、炭素数が1〜10程度(好ましくは1〜5程度)のものが好ましく、より好ましくは第1級ハロゲン化アルキル、さらに好ましくは第1級ヨウ化アルキル(例えばヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化−n−プロピル、ヨウ化−n−ブチル、ヨウ化−n−ペンチルなど)である。ハロゲン化アルキルアリールとしては、炭素数が7〜15程度(好ましくは7〜10程度)のものが好ましく、より好ましくはヨウ化ハロゲン化アルキルアリール(例えばヨウ化ベンジルなど)である。
【0064】
4がアリール基であるN−置換イソインドール(3)は、例えば有名な人名反応であるバッフバルド−ハートウィック(Buchwald−Hartwig)クロスカップリング反応により製造できる。具体的にはPd触媒および強塩基の存在下で、イソインドール(2)とハロゲン化アリールまたはアリールトリフラートとを反応させることにより、R4がアリール基であるN−置換イソインドール(3)を製造できる。Pd触媒としては、一般的に、ホスフィン配位子(例えば2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1−ビナフチル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)ビフェニルなど)またはジベンジリデンアセトン配位子などを含むものが使用される。強塩基としては、一般的に、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、NaO−t−Bu、K2CO3などが用いられる。イソインドール(2)との反応相手として、炭素数が6〜20程度(好ましくは6〜12程度)のハロゲン化アリールが好ましく、ヨウ化または臭化アリール(例えばヨードベンゼン、4−ヨードトルエンなど)がより好ましい。この反応は室温程度の低い温度で進行することもあるが、その反応温度は、一般的に50〜150℃程度である。
【0065】
4がアシル基であるN−置換イソインドール(3)は、炭素数が2〜10程度(好ましくは2〜5程度)のハロゲン化アシル、酸無水物、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、カルボン酸を用いるアシル化反応によって製造できる。但し反応性の観点から、ハロゲン化アシル(好ましくは塩化アシル)または酸無水物を用いることが推奨される。具体的には塩基性水溶液(例えばNaOH水溶液)または塩基性の有機溶液(例えばピリジン溶液)中で、イソインドール(2)とハロゲン化アシルまたは酸無水物とを反応させることにより(ショッテン−バウマン(Schotten−Baumann)反応)、R4がアシル基であるN−置換イソインドール(3)を製造できる。イソインドール(2)の反応相手としては、例えば無水酢酸、塩化アセチル、塩化ベンゾイルなどが挙げられる。
【0066】
またR4のアシル基の特殊な例として、t−ブトキシカルボニル基((CH3)CO−C(=O)−)を挙げることができる。t−ブトキシカルボニル基は、アミノ基の保護基としてよく知られており、例えばピリジン、トリエチルアミン、n−BuLiまたはNaHなどの塩基の存在下で、ジ−t−ブチルジカルボネートとイソインドール(2)とを反応させることで導入することができる。
【0067】
本発明のイソインドール(2)またはN−置換イソインドール(3)(「以下、イソインドール(2)または(3)」と略称することがある)を重合することで得られるポリイソインドール(4)または(5)、特にポリ(含フッ素イソインドール)は、導電性材料として、より詳しくは有機薄膜トランジスタや有機太陽電池等の分野における電極材料、表示材料、電磁波遮蔽材料等として有用である。ポリマー化は、電解酸化重合や化学的酸化重合等の公知の方法で行うことができる。ポリイソインドール(4)または(5)には、必要に応じてドープしてもよい。
【0068】
重合法として、まず化学的酸化重合から説明する。化学的酸化重合で用いられる酸化剤としては、例えば酸素、過酸化水素;テトラクロロ−1,2−ベンゾキノン、テトラクロロ−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノンなどのキノン類;ヨウ素、臭素、塩素などのハロゲン;塩化鉄(III)、塩化銅(II)などの金属塩化物;二酸化マンガン、二酸化鉛、四酸化オスミウムなどの金属酸化物;硝酸、塩素酸などのオキソ酸;塩素酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウム、臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム、過マンガン酸カリウム、二クロム酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどのオキソ酸塩が挙げられる。これら酸化剤の中でも、酸素、過酸化水素、キノン類、ハロゲン、金属塩化物が好ましく、酸素、金属塩化物がより好ましい。酸化剤は、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。酸化重合では、必要に応じて酸触媒(例えば塩酸、硝酸、硫酸などの無機酸)または金属触媒(例えば鉛、マンガン、銀などの酸化物、塩化銅(I)、塩化銅(I)−塩化アルミニウムなど)を用いてもよい。殊に酸素を酸化剤として用いる場合、触媒を使用することが推奨される。酸素を除く酸化剤の量は、イソインドール類1モルに対して、好ましくは1モル以上(より好ましくは2モル以上)であり、好ましくは6モル以下(より好ましくは5モル以下)である。
【0069】
化学的酸化重合は、通常、溶媒中で行われる。化学的酸化重合のための溶媒としては、例えばクロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン等の塩素系炭化水素類;ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロベンゼン等のニトロ系炭化水素類;N−メチルピロリドン等のアミド類;および二硫化炭素などを挙げることができる。溶媒は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。溶媒を用いる場合のイソインドール(2)または(3)の濃度は、好ましくは0.01〜1M程度、より好ましくは0.05〜0.5M程度である。化学的酸化重合は、使用する溶媒に応じて、一般に−80℃〜100℃程度(好ましくは−20℃〜60℃程度)の範囲の温度で、一般に0.1〜100時間程度(好ましくは0.5〜72時間程度)行われる。
【0070】
次に電解酸化重合について説明する。本発明では、反応装置について限定は無く、電解酸化重合によるポリピロールやポリチオフェン等の製造で用いられる反応装置を用いることができる。電解質としては、例えばテトラエチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムフルオリド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロリド、テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリド、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラ−n−ブチルアンモニウムヘキサフルオロアンチモン等のアンモニム塩;テトラフェニルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムクロリド等のホスホニウム塩;リチウムパークロレート、リチウムヘキサフルオロボレート等のリチウム塩;ベンゼンスルホン酸カリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸塩;硫酸、塩酸、トリフルオロ酢酸等の酸などが挙げられる。これら電解質は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これら電解質の陰イオンは、電解酸化重合の際にドーパントとしてポリマー中に取り込まれる。
【0071】
電解酸化重合の溶媒としては、例えばアセトニトリル、ベンゾニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネート等の環状エーテル類;スルホラン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン等のスルホラン類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類などが挙げられる。溶媒は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。溶媒を用いる場合のイソインドール(2)または(3)の濃度は、好ましくは0.01〜1M程度、より好ましくは0.05〜0.5M程度である。電解酸化重合は、使用する溶媒に応じて、一般に−80℃〜100℃程度(好ましくは−20℃〜60℃程度)の範囲の温度で、一般に0.1〜100時間程度(好ましくは0.5〜72時間程度)行われる。電解酸化重合の際の電流密度は、一般に1.0〜5.0mA/cm2程度である。
【0072】
上記のような酸化重合により、イソインドール(2)または(3)を重合してポリマーを製造できる。本発明の方法では、イソインドール(2)または(3)の1種のみを用いてホモポリマーを形成するだけでなく、これらの2種以上を併用してコポリマーを形成することもできる。またイソインドール(2)および/または(3)と、それ以外のモノマー(例えばピロール、チオフェン)とを共重合してコポリマーを形成することもできる。よって本発明のポリイソインドール(4)または(5)は、ホモポリマーおよびコポリマーの両方を包含する。ピロール等の他のモノマーを用いてコポリマーを形成する場合、使用モノマー中のイソインドール(2)および/または(3)の合計含有量(即ちコポリマー中の上記式(4)および/または(5)の合計含有量)は、好ましくは10質量%以上である。
【0073】
本発明のポリイソインドール(4)または(5)の重量平均分子量(スチレン換算でのGPC測定による値)は、通常、1,000〜50万程度、好ましくは3,000〜30万程度、より好ましくは5,000〜10万程度である。
【実施例】
【0074】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0075】
実験例1(テトラフルオロフタロニトリルの水素化ジイソブチルアルミニウムによる還元)
【0076】
【化8】

【0077】
還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた四つ口反応容器に、テトラフルオロフタロニトリル(株式会社日本触媒製)3.0g(15.0mmol)を加え、窒素置換した後、シリンジで脱水トルエン75mlを加えた。氷浴中で冷却しながら、0.99Mの水素化ジイソブチルアルミニウム(関東化学株式会社から購入)のトルエン溶液61ml(60.3mmol)を、滴下ロートからゆっくりと滴下した。滴下終了後に室温で終夜撹拌した後、氷浴中で冷却しながら、2Mの塩酸45ml(90mmol)を加えてクエンチした。反応物を酢酸エチルで抽出し、重曹水で中和し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水した後、抽出物をエバポレーターにより濃縮した。この濃縮物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ジクロロメタン)により精製した。目的物の4,5,6,7−テトラフルオロ−2H−イソインドールを、収率22.6%(0.64g、3.4mmol)で得た。
【0078】
実験例2(テトラフルオロフタロニトリルの水素化ジイソブチルアルミニウムによる還元)
実験例1と同じ条件で反応を行ったが、クエンチの際にプロトン酸を用いずに、水100mlのみを添加した。水を加え始めて間もなく、反応溶液はゲル化した。セルライトろ過で固形物を除き、実験例1と同じ操作で精製を行ったところ、目的物の4,5,6,7−テトラフルオロ−2H−イソインドールを収率0.6%(0.017g、0.09mmol)で得た。
【0079】
実験例3(テトラフルオロフタロニトリルの水素化ジイソブチルアルミニウムによる還元)
濃縮物を昇華精製したこと以外は、実験例1と同様の操作で、4,5,6,7−テトラフルオロ−2H−イソインドールを収率9.87%(0.28g、1.48mmol)で得た。
【0080】
実験例4(テトラフルオロフタロニトリルの水素化ジイソブチルアルミニウムによる還元)
テトラフルオロフタロニトリル0.2g(1.06mmol)をナスフラスコに加え、窒素置換した後、脱水トルエン6mlを加えた。氷浴中で冷却しながら、0.95Mの水素化ジイソブチルアルミニウムのトルエン溶液4.21ml(4mmol)をゆっくりと滴下し、室温に戻した後、23時間撹拌した。その後、反応混合物に1MのNaOH水溶液15ml(15mmol)をゆっくりと加えた。さらに酢酸エチルを加えて、ゲル状物をセルライトろ過し、反応物を酢酸エチルで抽出し、純水で数回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、減圧下で溶媒を除去し、濃縮物を、シリカゲルショートカラムでのクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム)により精製した。目的物の4,5,6,7−テトラフルオロ−2H−イソインドール(肌色の固体)を、収率20.8%(39.4mg、0.21mmol)で得た。
【0081】
実験例5(4,5−ビス(ペンタフルオロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルの水素化ジイソブチルアルミニウムによる還元)
【0082】
【化9】

【0083】
まず原料の4,5−ビス(ペンタフルオロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルを以下のようにして製造した:滴下ロートおよび温度計を備えた200ml反応容器にテトラフルオロフタロニトリル20.1g(100.45mmol)、フッ化カリウム13.99g(240.79mmol)、メチルイソブチルケトン130mlを加えた。氷浴により冷却した後、滴下ロートから、メチルイソブチルケトン70ml中にペンタフルオロフェノール37.0g(201.02mmol)を溶解させた溶液をゆっくりと加え、次いで室温下で2日間撹拌して反応を行った。この反応溶液をろ過して無機塩を除き、分液ロートを用いて水洗し、無水硫酸ナトリウムで脱水した後、反応溶液をエバポレーターで濃縮した。濃縮物を、トルエン/ヘキサン溶媒で再沈精製することにより、4,5−ビス(ペンタフルオロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルを、収率70.83%(37.4g、70.81mmol)で得た。
【0084】
次いで還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた四つ口反応容器に、4,5−ビス(ペンタフルオロフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル1.50g(2.84mmol)を加え、窒素置換した後、シリンジで脱水トルエン25.5mlを加えた。氷浴で冷却しながら、0.99Mの水素化ジイソブチルアルミニウム(関東化学株式会社から購入)のトルエン溶液11.5ml(11.4mmol)を、滴下ロートからゆっくりと滴下した。滴下終了後、95℃で4時間反応させた後、室温まで放冷し、続いて氷浴中で冷却しながら、2Mの塩酸10ml(20mmol)を加えてクエンチした。反応物を酢酸エチルで抽出し、重曹水で中和し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水した後、抽出物をエバポレーターにより濃縮した。この濃縮物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ジクロロメタン)により精製した。目的物の5,6−ビス(ペンタフルオロフェノキシ)−4,7−ジフルオロ−2H−イソインドールを、収率34.04%(0.50g、0.97mmol)で得た。
【0085】
5,6−ビス(ペンタフルオロフェノキシ)−4,7−ジフルオロ−2H−イソインドールのスペクトルデータ
(1)NMRスペクトル(装置:日本電子製、型式:JNM−AL400)
1H−NMR(CDCl3):δ7.31(m、2H)、9.62(brs、1H)
19F−NMR(CDCl3):δ−143.57(s、2F)、−157.50(m、4F)、−162.50(m、2F)、−163.49(m、4F)
(2)マススペクトル(装置:日本電子製、型式:JMS-MS 700v)
MS(EI):m/z=518(M+)(計算分子量:517)
【0086】
実験例6(4−ペンタフルオロフェノキシ−3,5,6−トリフルオロフタロニトリルの水素化ジイソブチルアルミニウムによる還元)
【0087】
【化10】

【0088】
実験例5と同様の方法で製造した4−ペンタフルオロフェノキシ−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル0.364g(1mmol)をナスフラスコに加え、窒素置換した後、脱水トルエン7mlを加えた。氷浴中で冷却しながら、0.99Mの水素化ジイソブチルアルミニウムのトルエン溶液4.04ml(4mmol)をゆっくりと滴下し、室温に戻した後、24時間撹拌した。その後、反応混合物に1MのNaOH水溶液16ml(16mmol)をゆっくりと加えた。さらに酢酸エチルを加えて、ゲル状物をセルライトろ過し、反応物を酢酸エチルで抽出し、純水で数回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、減圧下で溶媒を除去し、濃縮物を、シリカゲルショートカラムでのクロマトグラフィー(溶媒:ジクロロメタン)により精製した。目的物の5−ペンタフルオロフェノキシ−4,6,7−トリフルオロ−2H−イソインドール(褐色の固体)を、収率17.5%(61.7mg、0.17mmol)で得た。
【0089】
5−ペンタフルオロフェノキシ−4,6,7−トリフルオロ−2H−イソインドールのNMRスペクトル(装置:日本電子製、型式:JNM−AL400)
1H−NMR(CDCl3):δ7.35(m、2H)、9.57(brs、1H)
19F−NMR(CDCl3):δ−143.22(s、1F)、−151.45(m、1F)、−157.15(m、2F)、−162.22(m、1F)、−163.02(m、1F)、163.31(m、2F)
【0090】
実験例7(4,5−ビス(ペンタフルオロチオフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルの水素化ジイソブチルアルミニウムによる還元)
【0091】
【化11】

【0092】
実験例5と同様の方法で製造した4,5−ビス(ペンタフルオロチオフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル0.560g(1mmol)をナスフラスコに加え、窒素置換した後、脱水トルエン30mlを加えた。氷浴中で冷却しながら、0.99Mの水素化ジイソブチルアルミニウムのトルエン溶液4.04ml(4mmol)をゆっくりと滴下し、室温に戻した後、24時間撹拌した。その後、反応混合物に1MのNaOH水溶液16ml(16mmol)をゆっくりと加えた。さらに酢酸エチルを加えて、ゲル状物をセルライトろ過し、反応物を酢酸エチルで抽出し、純水で数回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、減圧下で溶媒を除去し、濃縮物を、シリカゲルショートカラムでのクロマトグラフィー(溶媒:ジクロロメタン)により精製した。目的物の5,6−ビス(ペンタフルオロチオフェノキシ)−4,7−ジフルオロ−2H−イソインドール(緑色の固体)を、収率20.2%(110.7mg、0.20mmol)で得た。
【0093】
5,6−ビス(ペンタフルオロチオフェノキシ)−4,7−ジフルオロ−2H−イソインドールのスペクトルデータ
(1)NMRスペクトル(装置:日本電子製、型式:JNM−AL400)
1H−NMR(CDCl3):δ7.35(q、J=1.5Hz、2H)、9.62(brs、1H)
19F−NMR(CDCl3):δ−109.65(s、2F)、−134.32(m、4F)、−153.89(t、J=20.8Hz、2F)、−161.71(m、4F)
(2)マススペクトル(装置:日本電子製、型式:JMS-MS 700v)
MS(EI):m/z=549(M+)(計算分子量:548.95)
【0094】
実験例8(4−クロロ−3,5,6−トリフルオロフタロニトリルの水素化ジイソブチルアルミニウムによる還元)
【0095】
【化12】

【0096】
まず原料の4−クロロ−3,5,6−トリフルオロフタロニトリルを以下のようにして製造した:還流冷却器を備えた5L反応容器にテトラフルオロフタロニトリル1000g(5mol)、N−メチル−2−ピロリドン1004g、アセトニトリル2343gを仕込み、75℃まで昇温した後、塩化リチウム233g(5.5mol)を逐次加え、この温度で7時間反応させた。反応溶液をエバポレーターにより濃縮し、あらかたのアセトニトリルを除去した後に、濃縮物を水へ注ぎ、析出物をろ過することで、粗精製物を得た。引き続き粗精製物をメチルイソブチルケトンに溶解させ、水洗することで無機塩を除去し、水相と有機相とを分離して、有機相を無水硫酸ナトリウムで脱水し、エバポレーターにより濃縮し、濃縮物を減圧蒸留することで、4−クロロ−3,5,6−トリフルオロフタロニトリルを、収率40.7%(440.5g、2.03mol)で得た。
【0097】
次いで還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた四つ口反応容器に、4−クロロ−3,5,6−トリフルオロフタロニトリル1.50g(6.93mmol)を加え、窒素置換した後、シリンジで脱水トルエン7mlを加えた。氷浴で冷却しながら、0.99Mの水素化ジイソブチルアルミニウム(関東化学株式会社から購入)のトルエン溶液28ml(27.7mmol)を、滴下ロートからゆっくりと滴下した。滴下終了後、95℃で4時間反応させた後、室温まで放冷し、続いて氷浴中で冷却しながら、2Mの塩酸21ml(42mmol)を加えてクエンチした。反応物を酢酸エチルで抽出し、重曹水で中和し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水した後、抽出物をエバポレーターにより濃縮した。この濃縮物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ジクロロメタン)により精製した。目的物の5−クロロ−4,6,7−トリフルオロ−2H−イソインドールを、収率12.64%(0.18g、0.88mmol)で得た。
【0098】
5−クロロ−4,6,7−トリフルオロ−2H−イソインドールのスペクトルデータ
(1)NMRスペクトル(装置:日本電子製、型式:JNM−AL400)
1H−NMR(CDCl3):δ7.29(m、2H)、9.39(brs、1H)
19F−NMR(CDCl3):δ−125.66(dt、J=19.5Hz,2.4Hz、1F)、−150.76(dd、J=15.9Hz,2.4Hz、1F)、−151.58(ddd、J=19.5Hz,15.9Hz,2.4Hz、1F)、
(2)マススペクトル(装置:日本電子製、型式:JMS-MS 700v)
MS(EI):m/z=205(M+)(計算分子量:204.99)
【0099】
実験例9(4,5−ジクロロ−3,6−ジフルオロフタロニトリルの水素化ジイソブチルアルミニウムによる還元)
【0100】
【化13】

【0101】
実験例8と同様の方法で製造した4,5−ジクロロ−3,6−ジフルオロフタロニトリル0.233g(1mmol)をナスフラスコに加え、窒素置換した後、脱水トルエン7mlを加えた。氷浴中で冷却しながら、0.99Mの水素化ジイソブチルアルミニウムのトルエン溶液4.04ml(4mmol)をゆっくりと滴下し、室温に戻した後、24時間撹拌した。その後、反応混合物に1MのNaOH水溶液16ml(16mmol)をゆっくりと加えた。さらに酢酸エチルを加えて、ゲル状物をセルライトろ過し、反応物を酢酸エチルで抽出し、純水で数回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、減圧下で溶媒を除去し、濃縮物を、シリカゲルショートカラムでのクロマトグラフィー(溶媒:ジクロロメタン)により精製した。目的物の5,6−ジクロロ−4,7−ジフルオロ−2H−イソインドール(淡黄色の固体)を、収率27.1%(60.3mg、0.27mmol)で得た。
【0102】
5,6−ジクロロ−4,7−ジフルオロ−2H−イソインドールのスペクトルデータ
(1)NMRスペクトル(装置:日本電子製、型式:JNM−AL400)
1H−NMR(CDCl3):δ7.33(q、J=1.5Hz、2H)、9.50(brs、1H)
19F−NMR(CDCl3):δ−122.01(s、2F)
(2)マススペクトル(装置:日本電子製、型式:JMS-MS 700v)
MS(EI):m/z=221(M+)(計算分子量:220.96)
【0103】
実験例10(4,5−ビス(ヘキシルチオ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルの水素化ジイソブチルアルミニウムによる還元)
【0104】
【化14】

【0105】
実験例5と同様の方法で製造した4,5−ビス(ヘキシルチオ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル2.0g(5.04mmol)をナスフラスコに加え、窒素置換した後、脱水トルエン40mlを加えた。氷浴中で冷却しながら、0.99Mの水素化ジイソブチルアルミニウムのトルエン溶液20.5ml(20.30mmol)をゆっくりと滴下し、室温に戻した後、16時間撹拌した。その後、反応混合物に1MのNaOH水溶液20ml(20mmol)をゆっくりと加えた。さらに酢酸エチルを加えて、ゲル状物をセルライトろ過し、反応物を酢酸エチルで抽出し、純水で数回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、減圧下で溶媒を除去し、濃縮物を、シリカゲルショートカラムでのクロマトグラフィー(溶媒:ジクロロメタン)により精製した。目的物の5,6−ビス(ヘキシルチオ)−4,7−ジフルオロ−2H−イソインドール(黄色の液体)を、収率22.1%(60.429g、1.11mmol)で得た。
【0106】
5,6−ビス(ヘキシルチオ)−4,7−ジフルオロ−2H−イソインドールのNMRスペクトル(装置:バリアン社製、型式:マーキュリー2000)
1H−NMR(CDCl3):δ0.85(t、6H、J=6.4Hz)、1.26〜1.66(m、16H)、2.89(t、4H,J=7.3Hz)、7.32(m、2H)、9.6(brs、1H)
19F−NMR(CDCl3、ヘキサフルオロベンゼン):δ50.08(s、2F)
【0107】
実験例11(テトラフルオロフタロニトリルのBH3による還元)
【0108】
【化15】

【0109】
還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた三つ口反応容器を窒素置換した後、0.99MのTHF−BH3錯体(関東化学株式会社より購入)のTHF溶液20ml(19.8mmol)およびTHF35mlを加えた。別途、テトラフルオロフタロニトリル3.0g(14.99mmol)をトルエン10mlに溶解させた溶液を準備し、この溶液を、室温下で反応容器にゆっくりと滴下した。滴下終了後、65℃まで加熱して4時間反応させた。その後、再び反応溶液を室温まで戻し、氷浴中で冷却しながら、2Mの塩酸18ml(36mmol)を加えてクエンチした。反応物を酢酸エチルで抽出し、蒸留水、次いで飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水した後、抽出物をエバポレーターにより濃縮した。この濃縮物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ジクロロメタン)により精製した。目的物の4,5,6,7−テトラフルオロ−2H−イソインドールを、収率37%(1.05g、5.55mmol)で得た。
【0110】
実験例12(テトラフルオロフタロニトリルの接触水素化法による還元)
【0111】
【化16】

【0112】
100mlの三つ口フラスコに、活性炭にパラジウムを担持させた触媒(アルドリッチ社より購入、Pd:10質量%)0.75g(Pd量:0.70mmol)、メタノール30ml、3Mの硫酸1.3ml(3.9mmol)を添加した。次いで系内を減圧にしてから水素を供給する操作(水素置換)を3回繰り返した後、水素バルーンで加圧(約1.1気圧)した状態で、室温で10分間撹拌して触媒を活性化させた。その後にテトラフルオロフタロニトリル1.50g(7.5mmol)をトルエン20mlに溶解させた溶液をナスフラスコに加えて、室温で13時間激しく撹拌した。反応溶液を重曹水で中和した後、セライトろ過によりPd触媒(Pd/C)を除去し、クロロホルムで抽出し、蒸留水、次いで飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水した後、抽出物をエバポレーターにより濃縮した。この濃縮物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム)により精製した。目的物の4,5,6,7−テトラフルオロ−2H−イソインドールを、収率41.6%(0.59g、3.12mmol)で得た。
【0113】
実験例13(テトラフルオロフタロニトリルの接触水素化法による還元)
【0114】
【化17】

【0115】
100mlの三つ口フラスコに、活性炭にパラジウムを担持させた触媒(アルドリッチ社より購入、Pd:10質量%)0.5g(Pd量:0.47mmol)、酢酸エチル20ml、トリフルオロ酢酸0.6g(5.26mmol)を添加した。次いで系内を減圧にしてから水素を供給する操作(水素置換)を3回繰り返した後、水素バルーンで加圧(約1.1気圧)した状態で、室温下で30分間撹拌して触媒を活性化させた。その後にテトラフルオロフタロニトリル1.00g(5mmol)を酢酸エチル20mlに溶解させた溶液をナスフラスコに加えて、室温で13時間激しく撹拌した。反応溶液を重曹水で中和した後、セライトろ過によりPd触媒(Pd/C)を除去し、クロロホルムで抽出し、蒸留水、次いで飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水した後、抽出物をエバポレーターにより濃縮した。この濃縮物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム)により精製した。目的物の4,5,6,7−テトラフルオロ−2H−イソインドールを、収率33.4%(0.316g、1.67mmol)で得た。
【0116】
実験例14(テトラフルオロフタロニトリルの接触水素化法による還元)
【0117】
【化18】

【0118】
100mlのナスフラスコに、Rh/アルミナ触媒(アルドリッチ社より購入、Rh:5質量%)1.0g(Rh量:0.49mmol)およびメタノール20mlを加えて、水素置換し、室温下で45分間撹拌した。その後に酢酸0.28ml(5mmol)を加え、テトラフルオロフタロニトリル1.0g(5mmol)をメタノール20mlに溶解させた溶液を滴下し、再び水素置換した後、室温で65時間撹拌した。その後に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液4.5mlを加え、セライトろ過し、酢酸エチル、クロロホルムで抽出し、蒸留水で洗浄し、減圧下で濃縮して黒紫色の固体0.96gを得た。これをシリカシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム)により精製して、肌色の固体として、目的物の4,5,6,7−テトラフルオロ−2H−イソインドールを、収率4.1%(0.038g、0.20mmol)で得た。
【0119】
実験例15(テトラフルオロフタロニトリルの接触水素化法による還元)
【0120】
【化19】

【0121】
1000mlの三つ口フラスコに、活性炭に水酸化パラジウムを担持させた触媒(アルドリッチ社より購入、Pd:20質量%)3.77g(Pd量:7.09mmol)、メタノール300ml、3Mの硫酸12.5ml(37.5mmol)を添加した。次いで系内を減圧にしてから水素を供給する操作(水素置換)を3回繰り返した後、水素バルーンで加圧(約1.1気圧)した状態で、室温で10分間撹拌して触媒を活性化させた。その後にテトラフルオロフタロニトリル15g(75mmol)をトルエン200mlおよび酢酸エチル200mlの混合溶媒に溶解させた溶液をナスフラスコに加えて、室温で14時間撹拌した。反応溶液を重曹水で中和した後、セライトろ過によりPd触媒を除去し、トルエンで抽出し、蒸留水、次いで飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水した後、抽出物をエバポレーターにより濃縮した。この濃縮物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム)により精製した。目的物の4,5,6,7−テトラフルオロ−2H−イソインドールを、収率28%(3.976g、21.02mmol)で得た。
【0122】
実験例16(4,5−ビス(ペンタフルオロフェニル)−3,6−ジフルオロフタロニトリルの接触水素化法による還元)
【0123】
【化20】

【0124】
100mlの三つ口反応容器に、活性炭にパラジウムを担持させた触媒(アルドリッチ社より購入、Pd:10質量%)0.86g(Pd量:0.81mmol)、メタノール30ml、3Mの硫酸0.5ml(1.5mmol)を添加した。系内を減圧にしてから窒素を供給する操作(窒素置換)を3回繰り返し、次いで減圧にしてから水素を供給する操作(水素置換)を3回繰り返した後、水素バルーンで加圧(約1.1気圧)にした状態で、室温で約5分間撹拌して触媒を活性化させた。その後に4,5−ビス(ペンタフルオロフェニル)−3,6−ジフルオロフタロニトリル1.50g(3.02mmol)をトルエン15mlおよび酢酸エチル30mlの混合溶媒に溶解させた溶液を反応溶液に加えて、室温で15時間激しく撹拌した。反応溶液を重曹水で中和した後、酢酸エチルで抽出し、蒸留水、次いで飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水した後、抽出物をエバポレーターにより濃縮した。この濃縮物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム)により精製した。目的物の5,6−ビス(ペンタフルオロフェニル)−4,7−ジフルオロ−2H−イソインドールを、収率49.1%(0.72g、1.48mmol)で得た。
【0125】
5,6−ビス(ペンタフルオロフェニル)−4,7−ジフルオロ−2H−イソインドールのスペクトルデータ
(1)NMRスペクトル(装置:日本電子製、型式:JNM−AL400)
1H−NMR((CD32CO):δ7.78(s、2H)、12.34(brs、1H)
19F−NMR((CD32CO):δ−115.2179(s、2F)、−133.78(d、J=22Hz、4F)、−147.68(t、J=20.7Hz、2F)、−156.37(t、J=18.3Hz、4F)
(2)マススペクトル(装置:日本電子製、型式:JMS−MS 700V)
MS(EI):m/z=485(M+)(計算分子量:485.01)
【0126】
実験例17(4,5−ビス(2,5−ジメチルフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリルの接触水素化法による還元)
【0127】
【化21】

【0128】
100mlの三つ口フラスコに、活性炭にパラジウムを担持させた触媒(アルドリッチ社より購入、Pd:10質量%)1.00g(Pd量:0.94mmol)、メタノール5ml、3Mの硫酸1.25ml(3.75mmol)を添加した。系内を減圧にしてから水素を供給する操作(水素置換)を3回繰り返した後、水素バルーンで加圧(約1.1気圧)にした状態で、室温で10分間撹拌して触媒を活性化させた。その後に4,5−ビス(2,5−ジメチルフェノキシ)−3,6−ジフルオロフタロニトリル3.00g(7.42mmol)を酢酸エチル20mlに溶解させた溶液をフラスコに加えて、室温で14時間激しく撹拌した。反応溶液を重曹水で中和した後、セライトろ過によりPd触媒を除去し、トルエンで抽出し、蒸留水、次いで飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水した後、抽出物をエバポレーターにより濃縮した。この濃縮物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:クロロホルム)により精製した。目的物の5,6−ビス(2,5−ジメチルフェノキシ)−4,7−ジフルオロ−2H−イソインドールを、収率21%(0.623g、1.58mmol)で得た。
【0129】
5,6−ビス(2,5−ジメチルフェノキシ)−4,7−ジフルオロ−2H−イソインドールのNMRスペクトル(装置:バリアン社製、型式:マーキュリー2000)
1H−NMR(CDCl3):δ1.83(s、3H)、2.16(s、3H)、6.46(s、1H)、6.67(d、1H、J=7.30Hz)、6.93(d、1H、J=7.30Hz)、7.35(m、2H)、9.47(brs、1H)
19F−NMR(CDCl3、ヘキサフルオロベンゼン):δ19.39(s、2F)
【0130】
実験例18(4,5,6,7−テトラフルオロ−2H−イソインドールのヨウ化メチルによるアルキル化)
【0131】
【化22】

【0132】
10mlの二口反応容器に4,5,6,7−テトラフルオロ−2H−イソインドール0.096g(0.507mmol)を加え、窒素置換した後、脱水THF3.5mlを加えて−78℃まで冷却した。その中へ、シリンジを用いて1.57Mのn−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液0.6ml(0.942mmol)をゆっくりと加えた後、−78℃で30分撹拌した。次いでその中へ、シリンジを用いてヨウ化メチル0.2g(1.409mmol)をゆっくりと加えた後、冷却せずにそのまま14時間撹拌した。水を加えて反応を終了させ、酢酸エチルで反応物を抽出し、その有機相を、順に重曹水、水および飽和食塩水で洗浄してから、無水硫酸ナトリウムで脱水した。ろ過により無水硫酸ナトリウムを除去した後、有機相を濃縮した。この濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:酢酸エチル)で精製して、目的物の4,5,6,7−テトラフルオロ−2−メチルイソインドールを、収率58.2%(0.060g、0.295mmol)で得た。
【0133】
実験例19(4,5,6,7−テトラフルオロ−2H−イソインドールのヨウ化−n−ペンチルによるアルキル化)
【0134】
【化23】

【0135】
10mlの二口反応容器に4,5,6,7−テトラフルオロ−2H−イソインドール0.49g(2.59mmol)を加え、窒素置換した後、脱水THF17mlを加えて−78℃まで冷却した。その中へ、シリンジを用いて1.57Mのn−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液2ml(3.14mmol)をゆっくりと加えた後、−78℃で30分撹拌した。次いでその中へ、シリンジを用いてヨウ化−n−ペンチル0.67g(3.38mmol)をゆっくりと加えた後、冷却せずにそのまま14時間撹拌した。水を加えて反応を終了させ、酢酸エチルで反応物を抽出し、その有機相を、順に重曹水、水および飽和食塩水で洗浄してから、無水硫酸ナトリウムで脱水した。ろ過により無水硫酸ナトリウムを除去した後、有機相を濃縮した。この濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:酢酸エチル)で精製して、目的物の4,5,6,7−テトラフルオロ−2−n−ペンチルイソインドールを、収率83.6%(0.564g、2.176mmol)で得た。
【0136】
4,5,6,7−テトラフルオロ−2−n−ペンチルイソインドールのマススペクトル(装置:日本電子製、型式:JMS-MS 700v)
MS(EI):m/z=259(M+)(計算分子量:259.1)
【0137】
実験例20(4,5,6,7−テトラフルオロ−2H−イソインドールの酸化重合)
ナスフラスコに4,5,6,7−テトラフルオロ−2H−イソインドール0.18g(0.95mmol)を秤り取り、これにクロロホルム4.3gを添加・撹拌して、イソインドール溶液を調製した。別の容器に塩化鉄(III)0.63g(3.88mmol)を秤り取り、水3.4gを加えて塩化鉄水溶液を調製した。この塩化鉄水溶液を、先に調製したイソインドール溶液にゆっくりと加え、室温下で48時間撹拌した後、反応溶液を大量の水に注いだ。この溶液をろ過して得た残渣を、希塩酸、水、次いでクロロホルムをかけて洗い流した後、真空乾燥することで、黒色のポリ(4,5,6,7−テトラフルオロ−2H−イソインドール)0.109g(換算収率61.2%)を得た。
【0138】
得られたポリマーの平均分子量(ポリスチレン換算でのGPCにより測定値)は、Mn=23,400、Mw=41,200であった。またポリマーの電導度(2端子法による測定値)は、4×10-6S/cm2であった。
【0139】
実験例21(4,5,6,7−テトラフルオロ−2−n−ペンチルイソインドールの酸化重合)
ナスフラスコに4,5,6,7−テトラフルオロ−2−n−ペンチルイソインドール0.248g(0.96mmol)を秤り取り、これにクロロホルム4.5gを添加・撹拌して、イソインドール溶液を調製した。別の容器に塩化鉄(III)0.62g(3.82mmol)を秤り取り、水3.5gを加えて塩化鉄水溶液を調製した。この塩化鉄水溶液を、先に調製したイソインドール溶液にゆっくりと加え、室温下で48時間撹拌した後、反応溶液を大量の水に注いだ。この溶液をろ過して得た残渣を、希塩酸、水、次いでクロロホルムをかけて洗い流した後、真空乾燥することで、黒色のポリ(4,5,6,7−テトラフルオロ−2−n−ペンチルイソインドール)0.05g(換算収率20.3%)を得た。得られたポリマーの平均分子量(ポリスチレン換算でのGPCにより測定値)は、Mn=20,400、Mw=29,500であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示されるフタロニトリルを還元することを特徴とする、下記式(2)で示されるイソインドールの製造方法。
【化1】

〔式中、Xは、ハロゲン原子を表す。
Yは、R1、OR2またはSR3(式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、アルキル、アリールまたはアルキルアリール基を表す。)を表す。
m+n≦4であることを条件として、mは1〜4の整数を表し、nは0〜3の整数を表す。〕
【請求項2】
上記式(1)で示されるフタロニトリルをヒドリド還元試薬により還元する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
上記式(1)で示されるフタロニトリル1モルに対し、ヒドリドが2〜6モルになるようにヒドリド還元試薬を使用する、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
上記式(1)で示されるフタロニトリルとヒドリド還元試薬とを混合し、還元反応を行った後、反応混合物とプロトン酸とを混合する、請求項2または3に記載の製造方法。
【請求項5】
上記式(1)で示されるフタロニトリルとヒドリド還元試薬とを混合し、還元反応を行った後、反応混合物とアルカリとを混合する、請求項2または3に記載の製造方法。
【請求項6】
ヒドリド還元試薬が、アルミニウム水素化物若しくはその錯体、またはホウ素水素化物若しくはその錯体である、請求項2〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
上記式(1)で示されるフタロニトリルを接触水素化法で還元する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
下記式(2)で示されるイソインドール(4,5,6,7−テトラフルオロ−2H−イソインドールを除く)。
【化2】

〔式中、Xは、ハロゲン原子を表す。
Yは、R1、OR2またはSR3(式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、アルキル、アリールまたはアルキルアリール基を表す。)を表す。
m+n≦4であることを条件として、mは1〜4の整数を表し、nは0〜3の整数を表す。〕
【請求項9】
下記式(3)で示されるN−置換イソインドール(Xがフッ素原子であり、且つm=4であるものを除く)。
【化3】

〔式中、Xは、ハロゲン原子を表す。
Yは、R1、OR2またはSR3(式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、アルキル、アリールまたはアルキルアリール基を表す。)を表す。
4は、アルキル、アリール、アルキルアリールまたはアシル基を表す。
m+n≦4であることを条件として、mは1〜4の整数を表し、nは0〜3の整数を表す。〕
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法によって下記式(2)で示されるイソインドールを製造し、このイソインドールを酸化重合することによって下記式(4)で示される繰返し単位を有するポリマーを製造する方法。
【化4】

〔式中、Xは、ハロゲン原子を表す。
Yは、R1、OR2またはSR3(式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、アルキル、アリールまたはアルキルアリール基を表す。)を表す。
m+n≦4であることを条件として、mは1〜4の整数を表し、nは0〜3の整数を表す。〕
【請求項11】
請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法によって下記式(2)で示されるイソインドールを製造し、このイソインドールから下記式(3)で示されるN−置換イソインドールを製造し、このN−置換イソインドールを酸化重合することによって下記式(5)で示される繰返し単位を有するポリマーを製造する方法。
【化5】

〔式中、Xは、ハロゲン原子を表す。
Yは、R1、OR2またはSR3(式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、アルキル、アリールまたはアルキルアリール基を表す。)を表す。
4は、アルキル、アリール、アルキルアリールまたはアシル基を表す。
m+n≦4であることを条件として、mは1〜4の整数を表し、nは0〜3の整数を表す。〕
【請求項12】
下記式(4)で示される繰返し単位を有するポリマー(Xがフッ素原子であり、且つm=4であるものを除く)。
【化6】

〔式中、Xは、ハロゲン原子を表す。
Yは、R1、OR2またはSR3(式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、アルキル、アリールまたはアルキルアリール基を表す。)を表す。
m+n≦4であることを条件として、mは1〜4の整数を表し、nは0〜3の整数を表す。〕
【請求項13】
下記式(5)で示される繰返し単位を有するポリマー(Xがフッ素原子であり、且つm=4であるものを除く)。
【化7】

〔式中、Xは、ハロゲン原子を表す。
Yは、R1、OR2またはSR3(式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、アルキル、アリールまたはアルキルアリール基を表す。)を表す。
4は、アルキル、アリール、アルキルアリールまたはアシル基を表す。
m+n≦4であることを条件として、mは1〜4の整数を表し、nは0〜3の整数を表す。〕

【公開番号】特開2008−266281(P2008−266281A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188858(P2007−188858)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(504147254)国立大学法人愛媛大学 (214)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】