説明

イットリウム及びランタンをドープしたジルコニア系材料

ジルコニア系セラミック材料を含有する焼結体、及び焼結体の調製における中間体である部分的焼結体が記載される。ジルコニア系セラミック材料は、ランタン及びイットリウムでドープされる。ジルコニア系セラミック材料のグレイン寸法は、ランタンの添加によって制御され得る。ジルコニア系セラミック材料の結晶相は、イットリウムの添加によって影響を及ぼされ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
イットリウム及びランタンの両方でドープされたジルコニア系材料が記載される。
【背景技術】
【0002】
種々の金属酸化物から調製されるセラミック材料が、多種多様の用途で使用されている。これらのセラミック材料は、最初に金属酸化物粒子を含有する成形体を形成することによって調製され得る。成形体は、その後、粒子を強化して濃密体にし、かつ所望の最終特性を達成するために焼結される。
【0003】
多くのセラミック材料は、アルミニウム系又はシリコン系である。いくつかのジルコニア系セラミックも調製されている。他のセラミック材料と比較して、ジルコニア系セラミックは、ひびがセラミック材料に伝播するときに引き起こされ得る相変態機構と関連した、改善された機械的強度を有し得る。より具体的には、正方相ジルコニアは、そのような条件下で単斜相ジルコニアに転換され得る。単斜相の形成は、セラミック材料全体にわたってひびの進行を阻止する傾向がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
ジルコニア、イットリウム、及びランタンを含有するジルコニア系材料が記載される。これらの材料は、典型的には、粒子、成形体、部分的焼結体、又は焼結体の形態である。200ナノメートル以下の平均グレイン寸法を有する焼結体は、強靱性及び半透明性が所望される用途等の多種多様の用途で使用され得る。焼結体を作製する方法も記載される。
【0005】
第1の態様において、焼結体が提供される。焼結体は、ジルコニア系セラミック材料中の無機酸化物の全モルに基づいて、92.5〜98.0モルパーセントの酸化ジルコニウム、1.5〜2.5モルパーセントの酸化イットリウム、及び0.5〜5.0モルパーセントの酸化ランタンを含有する、ジルコニア系セラミック材料を含有する。ジルコニア系セラミック材料は、200ナノメートル以下の平均グレイン寸法を有する。
【0006】
第2の態様において、ジルコニア系セラミック材料を含む焼結体を作製する方法が提供される。本方法は、結晶性であり、かつ100ナノメートルを超えない平均粒子寸法を有するジルコニア系粒子を含有するジルコニア系ゾルを提供する工程を含む。ジルコニア系粒子は、ジルコニア系粒子中の無機酸化物の全モルに基づいて、少なくとも92.5モルパーセントの酸化ジルコニウム、少なくとも1.5モルパーセントの酸化イットリウム、及び少なくとも0.5モルパーセントの酸化ランタンを含有する。本方法は、成形体が、成形体の総体積に基づいて、少なくとも25体積パーセントの無機酸化物を含有するように、ジルコニア系ゾルからジルコニア系成形体を形成する工程を更に含む。本方法は、ジルコニア系粒子を焼結し、かつジルコニア系セラミック材料を形成するために、ジルコニア系成形体を加熱する工程も更に含む。ジルコニア系セラミック材料は、200ナノメートルを超えない平均グレイン寸法を有する。
【0007】
第3の態様において、部分的焼結体が提供される。部分的焼結体は、ジルコニア系粒子を部分的に焼結することによって形成される生成物を含む。ジルコニア系粒子は、結晶性であり、かつ100ナノメートルを超えない平均粒子寸法を有する。ジルコニア系粒子は、ジルコニア系粒子中の無機酸化物の全モルに基づいて、少なくとも92.5モルパーセントの酸化ジルコニウム、少なくとも1.5モルパーセントの酸化イットリウム、及び少なくとも0.5モルパーセントの酸化ランタンを含有する。部分的焼結体は、部分的焼結体の総体積に基づいて、25〜75体積パーセントの無機酸化物と、25〜75体積パーセントのボイドとを含む。
【0008】
上記概要は、本発明のすべての実施形態又はすべての実装例を説明するものではない。以下の説明は、説明的実施形態及び実装例をより具体的に例証する。以下の説明を通じていくつかの箇所において、実施例のリストを介してガイダンスが提供されており、種々の組み合わせで使用され得る。それぞれの実例において、それと反対の内容が提示されない限り、列挙されるリストは、代表的な群としてのみの機能を果たし、排他的なリストとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】焼結されたジルコニア系材料のイオンでミリングした断面図の電界放射型走査顕微鏡写真。この材料は、3M ESPE(Saint Paul,MN)からLAVAの商標表記で市販されている部分的に焼結されたジルコニアブロックを更に焼結することによって調製された。顕微鏡写真に示される孔(すなわち、ボイド)が丸で囲まれている。
【図2a】入射光を用いて50倍率で表示された実施例13の焼結体を示す図。
【図2b】入射光を用いて50倍率で表示された比較実施例5の焼結体を示す図。
【図3】実施例13の焼結体についての破面の電界放射型走査顕微鏡写真。
【図4】実施例13の焼結体のイオンでミリングした断面図の電界放射型走査顕微鏡写真。
【図5a】実施例13の焼結体を示し。
【図5b】実施例14aの焼結体を示し。
【図5c】実施例14bの焼結体を示し、入射光を用いて50倍率で表示される図。
【図6a】入射光を用いて50倍率で表示された実施例15aの焼結体を示す図。
【図6b】実施例15aの焼結体についての破面の電界放射型走査顕微鏡写真。
【図7a】入射光を用いて50倍率で表示された実施例15bの焼結体を示す図。
【図7b】実施例15bの焼結体についての破面の電界放射型走査顕微鏡写真。
【図8a】入射光を用いて50倍率で表示された実施例15cの焼結体を示す図。
【図8b】実施例15cの焼結体についての破面の電界放射型走査顕微鏡写真。
【図9a】入射光を用いて50倍率で表示された実施例15dの焼結体を示す図。
【図9b】実施例15dの焼結体についての破面の電界放射型走査顕微鏡写真。
【図10a】入射光を用いて50倍率で表示された実施例15eの焼結体を示す図。
【図10b】実施例15eの焼結体についての破面の電界放射型走査顕微鏡写真。
【図11】ジルコニア系粒子を調製するために使用され得る例示の連続的熱水反応器システムの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ジルコニア系セラミック材料を含有する焼結体、並びに焼結体の調製における中間体である成形体及び部分的焼結体が記載される。焼結体中のジルコニア系セラミック材料は、ジルコニウム、イットリウム、及びランタンを含有する。ジルコニア系セラミック材料のグレイン寸法は、ランタンの添加によって制御され得る。ジルコニア系セラミック材料の結晶相は、イットリウムの添加によって影響を及ぼされ得る。焼結体を作製する方法も記載される。
【0011】
本明細書で使用される「a」、「an」、及び「the」という用語は、「少なくとも1つ」と同義に使用され、説明される要素のうちの1つ以上を意味する。
【0012】
本明細書で使用される「ジルコニア」という用語は、酸化ジルコニウムの種々の化学量論式を指す。最も典型的な化学量論式は、ZrOであり、概して、酸化ジルコニウム又は二酸化ジルコニウムのいずれかと称される。
【0013】
本明細書で使用される「ジルコニア系」という用語は、材料の大部分がジルコニアであることを意味する。例えば、粒子又はセラミック材料の少なくとも70モルパーセント、少なくとも80モルパーセント、少なくとも90モルパーセント、又は少なくとも92.5モルパーセントがジルコニアである。ジルコニアは、典型的には、例えば、イットリウム及びランタン等の他の無機材料でドープされる。これらの他の無機材料は、典型的には、無機酸化物の形態で存在する。種々の有機分子は、粒子又はセラミック材料の表面上に吸着され得る。
【0014】
本明細書で使用される「無機酸化物」という用語には、例えば、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、及び酸化ランタン等の種々の無機元素の酸化物が含まれるが、それらに限定されない。
【0015】
本明細書で使用される「半透明性」という用語は、材料が150〜300マイクロメートルの範囲の粒子寸法に破砕及びスクリーニングされ、かつ入射光を用いて50倍率で表示されるときに、光の可視波長に対して少なくとも部分的に透明である材料を指す。
【0016】
本明細書で使用される「範囲内」という用語は、範囲の端点及び端点間のすべての数字を含む。例えば、1〜10の範囲内には、数字1及び10、並びに1〜10の間のすべての数字が含まれる。
【0017】
本明細書において使用される「熱水の」という用語は、水性媒体を、その水性媒体の沸騰を防止するのに必要な圧力又はそれ以上の圧力において、その水性媒体の標準の沸点以上の温度に加熱する方法を指す。
【0018】
ジルコニア系セラミック材料を含む焼結体が提供される。本明細書で使用される「焼結体」という用語は、75体積パーセントを超える無機酸化物及び25体積パーセント未満のボイドを有するセラミック材料を指す。ジルコニア系セラミック材料は、100ナノメートルを超えない平均直径を有するジルコニア系粒子を焼結することによって調製される。ジルコニア系粒子は、結晶性であり、かつイットリウム及びランタンの両方でドープされるジルコニアを含む。すなわち、ジルコニア系粒子は、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、及び酸化ランタンを含有する。
【0019】
ジルコニア系セラミック材料は、典型的には、200ナノメートル以下の平均グレイン寸法を有する。小さいグレイン寸法は、ナノ粒子寸法範囲内にある焼結体を調製するためのジルコニア系粒子の使用、並びにこれらの粒子へのランタンの添加に起因する。グレイン寸法は、多くの場合、175ナノメートル以下、150ナノメートル以下、又は125ナノメートル以下である。小さいグレイン寸法は、有利に半透明であり得る焼結体をもたらし得る。焼結体の半透明性が所望される適用において、平均グレイン寸法は、多くの場合、100ナノメートル以下、90ナノメートル以下、80ナノメートル以下、70ナノメートル以下、60ナノメートル以下、又は50ナノメートル以下である。
【0020】
ジルコニア系セラミック材料中の無機酸化物の少なくとも92.5モルパーセントがジルコニアである。多くの場合、ジルコニア系セラミック材料中の無機酸化物の少なくとも93モルパーセント、少なくとも93.5モルパーセント、少なくとも94モルパーセント、少なくとも94.5モルパーセント、少なくとも95モルパーセント、少なくとも95.5モルパーセント、少なくとも96モルパーセントがジルコニアである。ジルコニアの量は、最大98モルパーセント、最大97.5モルパーセント、最大97モルパーセント、又は最大96.5モルパーセントであり得る。例えば、ジルコニアの量は、92.5〜98モルパーセントの範囲、93〜98モルパーセントの範囲、94〜98モルパーセントの範囲、95〜98モルパーセントの範囲、93〜97モルパーセントの範囲、93〜96モルパーセントの範囲、又は93〜95モルパーセントの範囲であり得る。
【0021】
ジルコニア系セラミック材料中のジルコニアは、結晶性である。結晶性材料は、典型的には立方晶系、正方晶系、又は単斜晶系である。立方相及び正方相は、X線回折技術を用いて区別するのが困難であるため、これらの2つの相は、典型的には、定量目的のために合わせられ、立方/正方相と称される。「立方/正方」又は「C/T」という用語は、同義に使用され、立方結晶相及び正方結晶相を指す。立方/正方相の割合は、例えば、それぞれの相におけるX線回折ピークのピーク面積を測定し、かつ等式(I)を用いることによって決定され得る。
【0022】
%C/T=100(C/T)÷(C/T+M) (I)
【0023】
等式(I)中、C/Tは、立方/正方相における回折ピークのピーク面積を指し、Mは、単斜相における回折ピークのピーク面積を指し、かつ%C/Tは、立方/正方結晶相の重量パーセントを指す。X線回折測定の詳細は、以下の実施例の項でより十分に説明される。
【0024】
大きい割合の正方相(例えば、立方/正方相)が、多くの場合所望される。正方相で存在するジルコニア系セラミック材料は、破砕されるときに転移強化を経験し得る。すなわち、正方相材料の一部は、破砕領域内で単斜相材料に転換され得る。単斜相材料は、正方相材料よりも大きい体積を占める傾向がある。この転換は、破砕の進行を阻止する傾向がある。
【0025】
多くの実施形態において、最初に調製される焼結体中のジルコニア系セラミック材料の少なくとも80パーセントが、立方/正方結晶相で存在する。すなわち、最初に調製されるジルコニア系セラミック材料の少なくとも80パーセント、少なくとも85パーセント、少なくとも90パーセント、少なくとも95パーセント、少なくとも98パーセント、少なくとも99パーセント、又は少なくとも99.5パーセントが、立方/正方結晶相で存在する。ジルコニア系セラミック材料の残りは、典型的には、単斜結晶相で存在する。単斜相の量に関して言及すると、最初に調製されるジルコニア系セラミック材料中のジルコニアの20パーセント未満が、単斜相で存在する。
【0026】
最初に調製される焼結体中のジルコニア系セラミック材料は、典型的には、80〜100パーセントの立方/正方及び0〜20パーセントの単斜、85〜100パーセントの立方/正方及び0〜15パーセントの単斜、90〜100パーセントの立方/正方及び0〜10パーセントの単斜、又は95〜100パーセントの立方/正方及び0〜5パーセントの単斜である。
【0027】
ジルコニア系セラミック材料が破砕されるとき、単斜結晶相の量は、増加する傾向がある。例えば、単斜相の量は、最大25パーセント又はそれ以上増加し得る。言い方を変えると、立方/正方結晶相の量は、最大25パーセント又はそれ以上減少し得る。立方/正方結晶相の減少は、例えば、最大20パーセント、最大15パーセント、最大10パーセントであり得る。場合によっては、減少は、10パーセントを超えない。例えば、減少は、最大8パーセント、最大6パーセント、又は最大5パーセントであり得る。立方/正方結晶相の量の減少は、例えば、1〜10パーセントの範囲、2〜10パーセントの範囲、4〜10パーセントの範囲、又は6〜10パーセントの範囲であり得る。ジルコニア系セラミック材料が1モルパーセントを超える酸化ランタンで調製される場合、ジルコン酸ランタン相の分離相が形成され得る。
【0028】
破砕後、焼結体中のジルコニア系セラミック材料は、多くの場合、70〜99パーセントの立方/正方及び1〜30パーセントの単斜、70〜95パーセントの立方/正方及び5〜30パーセントの単斜、80〜99パーセントの立方/正方及び1〜20パーセントの単斜、80〜95パーセントの立方/正方及び5〜20パーセントの単斜、又は90〜99パーセントの立方/正方及び1〜10パーセントの単斜である。
【0029】
ジルコニア系セラミック材料は、典型的には、ジルコニア系セラミック材料中の無機酸化物のモルの総数に基づいて、1.5〜2.5モルパーセントの範囲の量の酸化イットリウムを含む。酸化イットリウムは、準安定正方相の安定度を高める傾向がある。1.5モルパーセント未満の酸化イットリウムが、最初に調製される焼結体のジルコニア系セラミック材料中に含まれる場合、より多くの量の単斜相が、焼結温度から室温への焼結体の冷却中に形成される傾向がある。正方相から単斜相への転換に関連した体積膨張に関する応力は、冷却中に焼結体を自然発生的に破砕する。最終結果は、破砕される焼結体であり得る。しかしながら、2.5モルパーセントを超える酸化イットリウムが、最初に調製される焼結体のジルコニア系セラミック材料中に含まれるとき、正方相は、非常に安定しているため、結果として生じる焼結体が、多くの場合、形成後(すなわち、焼結及び室温への冷却後)に応力に供されるときに転移強化を経験することができない。すなわち、より大量の酸化イットリウムは、ジルコニア系セラミック材料が使用中に破砕されるときに、単斜相がわずかしか又は全く形成され得ない程度に正方相を安定させる傾向がある。ジルコニア系セラミック材料中に所望される酸化イットリウムの正確な量は、グレイン寸法に依存する。より小さいグレイン寸法は、正方相の安定度に寄与する傾向がある。したがって、グレイン寸法が小さくなるにつれて、正方相の安定度の最適なレベルを達成するのに必要な酸化イットリウムの量は少なくなる。
【0030】
ジルコニア系セラミック材料は、多くの場合、ジルコニア系セラミック材料中に存在する無機酸化物の全モルに基づいて、少なくとも1.5モルパーセント、少なくとも1.6モルパーセント、少なくとも1.7モルパーセント、少なくとも1.8モルパーセント、少なくとも1.9モルパーセント、又は少なくとも2.0モルパーセントの酸化イットリウムを含む。酸化イットリウムの量は、多くの場合、最大2.5モルパーセント、最大2.4モルパーセント、最大2.3モルパーセント、又は最大2.1モルパーセントである。例えば、酸化イットリウムの量は、1.5〜2.5モルパーセントの範囲、1.5〜2.4モルパーセントの範囲、1.5〜2.3モルパーセントの範囲、1.5〜2.2モルパーセントの範囲、1.5〜2.1モルパーセントの範囲、1.5〜2.0モルパーセントの範囲、1.6〜2.5モルパーセントの範囲、1.7〜2.5モルパーセントの範囲、1.8〜2.5モルパーセントの範囲、1.9〜2.5モルパーセントの範囲、又は2.0〜2.5モルパーセントの範囲であり得る。個々のイットリウム含有相は、典型的には、X線回折法を用いて検出される。
【0031】
ジルコニア系セラミック材料は、典型的には、ジルコニア系セラミック材料中の無機酸化物の全モルに基づいて、0.5〜5モルパーセントの範囲の量の酸化ランタンを含む。酸化ランタンは、ジルコニア系セラミック材料のグレイン寸法に影響を及ぼす傾向がある。0.5モルパーセント未満の酸化ランタンが存在する場合、グレイン寸法は、200ナノメートルよりも大きい傾向がある。200ナノメートルよりも大きいグレイン寸法は、ジルコニア系セラミック材料に増加した不透明さをもたらす傾向がある。より小さいグレイン寸法は、ジルコニア系セラミック材料により高い半透明性又はより低い不透明性をもたらす傾向がある。しかしながら、酸化ランタンが5モルパーセント超の量に増加する場合、多くの場合、半透明性に更なる視覚的改善はない。
【0032】
酸化ランタンの量は、多くの場合、ジルコニア系セラミック材料中の無機酸化物の全モルに基づいて、少なくとも0.5モルパーセント、少なくとも0.75モルパーセント、少なくとも1.0モルパーセント、少なくとも1.25モルパーセント、少なくとも1.5モルパーセント、少なくとも1.75モルパーセント、少なくとも2モルパーセント、少なくとも2.25モルパーセント、少なくとも2.5モルパーセント、少なくとも2.75モルパーセント、又は少なくとも3モルパーセントである。この量は、最大5.0モルパーセント、最大4.75モルパーセント、最大4.5モルパーセント、最大4.25モルパーセント、最大4.0モルパーセント、最大3.75モルパーセント、又は最大3.5モルパーセントであり得る。酸化ランタンは、0.5〜5.0モルパーセントの範囲、1.0〜5.0モルパーセントの範囲、1.5〜5.0モルパーセントの範囲、2.0〜5.0モルパーセントの範囲、2.5〜5.0モルパーセントの範囲、0.5〜4.5モルパーセントの範囲、0.5〜4.0モルパーセントの範囲、0.5〜3.5モルパーセントの範囲、又は0.5〜3.0モルパーセントの範囲の量で存在し得る。個々のランタン相は、典型的には、濃度が1モルパーセント未満であるとき、X線回折法を用いて焼結体中で検出されない。しかしながら、ランタンの濃度が焼結体の1モルパーセントを超える場合、個々のランタン含有相が、多くの場合検出され得る。
【0033】
ジルコニア系セラミック材料は、典型的には、無機酸化物の全モルに基づいて、92.5〜98.0モルパーセントの酸化ジルコニウム、1.5〜2.5モルパーセントの酸化イットリウム、及び0.5〜5.0モルパーセントの酸化ランタンを含有する。例えば、ジルコニア系セラミック材料は、94〜98モルパーセントの酸化ジルコニウム、1.5〜2.5モルパーセントの酸化イットリウム、及び0.5〜4.5モルパーセントの酸化ランタンを含み得る。別の例では、ジルコニア系セラミック材料は、94〜98モルパーセントの酸化ジルコニウム、1.5〜2.5モルパーセントの酸化イットリウム、及び0.5〜3.5モルパーセントの酸化ランタンを含み得る。更に別の例では、ジルコニア系セラミック材料は、94.5〜97.5モルパーセントの酸化ジルコニウム、1.5〜2.5モルパーセントの酸化イットリウム、及び1.0〜3.0モルパーセントの酸化ランタンを含み得る。更に別の例では、ジルコニア系セラミック材料は、94.7〜97.1モルパーセントの酸化ジルコニウム、1.9〜2.3モルパーセントの酸化イットリウム、及び1.0〜3.0モルパーセントの酸化ランタンを含み得る。
【0034】
焼結体は、比較的少ない数の孔を有する。焼結体中の孔は、例えば、トレンチを集束イオンミリングしてセラミック材料にし、かつ電界放射型走査電子顕微鏡を用いてトレンチを表示することによって検出され得る。この方法は、実施例の項で更に記載される。平均孔寸法は、それらの平均直径から計算され得る。焼結体中に存在する孔は、100ナノメートルを超えない平均孔寸法(すなわち、平均直径)を有する傾向がある。例えば、80ナノメートルを超えない、60ナノメートルを超えない、50ナノメートルを超えない、又は40ナノメートルを超えない平均孔寸法であり得る。いくつかの焼結体において、平均孔寸法は、10〜100ナノメートルの範囲、20〜100ナノメートルの範囲、10〜80ナノメートルの範囲、20〜80ナノメートルの範囲、10〜60ナノメートルの範囲、20〜60ナノメートルの範囲、25〜75ナノメートルの範囲、又は25〜50ナノメートルの範囲である。
【0035】
焼結体は、焼結体の総体積に基づいて、75体積パーセントを超える無機酸化物及び25体積パーセント未満のボイド(すなわち、孔)を含有する。いくつかの例では、焼結体は、80体積パーセントを超える無機酸化物及び20体積パーセント未満のボイド、90体積パーセントを超える無機酸化物及び10体積パーセント未満のボイド、95体積パーセントを超える無機酸化物及び5体積パーセント未満のボイド、98体積パーセントを超える無機酸化物及び2体積パーセント未満のボイド、又は99体積パーセントを超える無機酸化物及び1体積パーセント未満のボイドを含有する。
【0036】
焼結体が孔(すなわち、ボイド)を有しない場合、その材料にとって最大限の密度を有すると考えられる。この最大限の密度は、「理論密度」と呼ばれる。孔が焼結体中に存在するとき、密度は、理論値未満である。理論密度の割合は、焼結体の断面の電子顕微鏡写真から決定され得る。孔に起因する電子顕微鏡写真中の焼結体の面積の割合が計算され得る。言い方を変えると、理論密度の割合は、100パーセントからボイドの割合を差し引くことによって計算され得る。すなわち、焼結体の電子顕微鏡写真の2パーセントの面積が孔に起因する場合、焼結体は、理論密度の98パーセントに等しい密度を有すると考えられる。この方法は、実施例の項で更に記載される。
【0037】
密度が理論密度に近づくにつれ、ジルコニア系焼結体の半透明性が改善する傾向がある。多くの実施形態において、焼結体は、理論値の少なくとも99パーセントの密度を有する。例えば、密度は、理論密度の少なくとも99.2パーセント、少なくとも99.5パーセント、少なくとも99.6パーセント、少なくとも99.7パーセント、少なくとも99.8パーセント、少なくとも99.9パーセント、又は少なくとも99.95パーセントであり得る。いくつかの焼結体において、孔が検出されない場合もある。理論密度の少なくとも99パーセントの密度を有する焼結体は、多くの場合、人間の目には半透明に見える。孔がより大きい場合、より低い気孔率を有する材料は、より高い気孔率を有する材料よりも不透明に見え得る。すなわち、より低い密度の材料の平均孔寸法がより小さい場合に、理論値の99パーセントの密度を有する焼結体は、理論値の99.5パーセントの密度を有する焼結体よりも半透明に見え得る。
【0038】
ジルコニア系セラミック材料を含む焼結体を作製する方法が提供される。本方法は、ジルコニア系粒子を含有するジルコニア系ゾルを提供する工程を含む。これらの粒子は、結晶性であり、かつ100ナノメートルを超えない平均粒子寸法を有する。ジルコニア系粒子は、ジルコニア系粒子中の無機酸化物の全モルに基づいて、少なくとも92.5モルパーセントの酸化ジルコニウム、少なくとも1.5モルパーセントの酸化イットリウム、及び少なくとも0.5モルパーセントの酸化ランタンを含有する。本方法は、成形体が、成形体の総体積に基づいて、少なくとも25体積パーセントの無機酸化物を含有するように、ジルコニア系ゾルからジルコニア系成形体を形成する工程を更に含む。本方法は、ジルコニア系粒子を焼結し、ジルコニア系セラミック材料を形成するために、ジルコニア系成形体を加熱する工程も更に含む。ジルコニア系セラミック材料は、200ナノメートルを超えない平均グレイン寸法を有する。
【0039】
任意の既知の方法を用いて、100ナノメートルを超えない平均粒子寸法を有するジルコニア系粒子を含有するジルコニア系ゾルを提供することができる。多くの実施形態において、このゾルを水性媒体中の溶解ジルコニウム塩、溶解イットリウム塩、及び溶解ランタン塩を含有する原材料から提供するために、熱水法が使用される。熱水技術は、結晶性かつ非会合性のジルコニア系粒子を調製するために使用され得る。本明細書で使用される「非会合性」という用語は、凝集及び/又は集塊から免れているか、あるいは実質的に免れている粒子を指す。
【0040】
原材料中のジルコニウム塩、イットリウム塩、及びランタン塩は、水又は水と他の水溶性若しくは混和性材料との混合物中に溶解される。溶解された塩は、典型的には、その後の処理工程中に除去可能であり、かつ非腐食性であるように選択される。溶解された塩は、典型的には、カルボン酸塩である。任意のカルボン酸アニオンが使用され得るが、カルボン酸アニオンは、多くの場合、例えば、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、又はそれらの組み合わせのように、4個以下の炭素原子を有する。溶解塩は、多くの場合、酢酸塩である。原材料は、対応するカルボン酸アニオンのカルボン酸を更に含み得る。例えば、酢酸塩から調製される原材料は、多くの場合、酢酸を含有する。
【0041】
原材料中の溶解塩の少なくとも大部分は、通常、ハロゲン化物塩、オキシハロゲン化物塩、硝酸塩、又はオキシ硝酸塩ではなく、むしろカルボン酸塩である。原材料中のハロゲン化物及び硝酸アニオンは、より望ましい正方相又は立方相ではなく、主に単斜相であるジルコニア系粒子の形成をもたらす傾向がある。更に、カルボン酸塩及び/又はその酸はハロゲン化物及び硝酸塩と比較して、有機マトリックス材料に対してより相溶性の傾向がある。
【0042】
多くの実施形態において、溶解ジルコニウム塩は、酢酸ジルコニウム塩である。酢酸ジルコニウムは、ZrO((4−n)/2)n+(CHCOO(式中、nは1〜2の範囲である)などの式により表すことができる。ジルコニウムイオンは、例えば、原材料のpHなどに依存して、様々な構造で存在し得る。酢酸ジルコニウムを作製する方法は、例えば、W.B.Blumenthal,「The Chemical Behavior of Zirconium,」pp.311〜338,D.Van Nostrand Company,Princeton,NJ(1958)に記載されている。適切な酢酸ジルコニウムの水溶液は、例えば、Magnesium Elektron,Inc.(Flemington,NJ)などから市販品として入手可能であり、溶液の合計重量に基づき、最大17重量パーセントのジルコニウム、最大18重量パーセントのジルコニウム、最大20重量パーセントのジルコニウム、最大22重量パーセント、最大24重量パーセント、最大26重量パーセント、又は最大28重量パーセントのジルコニウムを含む。
【0043】
同様に、溶解イットリウム塩は、酢酸イットリウムであり得、溶解ランタン塩は、酢酸ランタンであり得る。これらの塩は、様々な製造業者から市販されている。イットリウム塩及びランタン塩がジルコニウム塩よりもはるかに低い濃度レベルで使用されるため、カルボン酸塩以外の塩(例えば、酢酸塩)が選択され得る。例えば、イットリウム塩及びランタン塩のいずれか又は両方が、硝酸塩であり得る。
【0044】
原材料中に溶解される種々の塩の量は、原材料に対して選定される固体の総割合に基づいて容易に決定され得る。種々の塩の相対量を計算して、選定された割合の固体を提供し、かつ少なくとも92.5モルパーセントの酸化ジルコニウム(ZrO2)、少なくとも1.5モルパーセントの酸化イットリウム(Y)、及び少なくとも0.5モルパーセントの酸化ランタン(La)を含有するジルコニア系材料を調製することができる。それぞれのモルパーセントは、ジルコニア系材料中の無機酸化物の全モルに基づいている。
【0045】
通常は原材料は溶液であり、分散又は懸濁された固体を含まない。例えば、種粒子は通常、原材料中に存在しない。原材料は通常、5重量パーセントを超える固体を含有し、これらの固体は、典型的には溶解される。本明細書で使用される「重量パーセントの固体」は、試料を120℃で乾燥させることによって計算され、水、水混和性共溶媒、又は最大120℃の温度で蒸発し得る別の化合物ではない原材料の部分を指す。重量パーセントの固体は
100(乾燥重量)÷(湿重量)に等しい。
【0046】
この等式において、「湿重量」という用語は、乾燥させる前の原材料試料の重量を指し、「乾燥重量」という用語は、例えば、120℃で少なくとも30分間乾燥させた後の試料の重量を指す。
【0047】
多くの実施形態において、原材料は、5重量パーセントを超えるか、10重量パーセントを超えるか、12重量パーセントを超えるか、又は15重量パーセントを超える固体を含有する。いくつかの原材料は、最大25重量パーセント以上の固体を含有する。例えば、原材料は、最大24重量パーセント、最大22重量パーセント、最大20重量パーセント、又は最大19重量パーセントの固体を含有し得る。いくつかの例示の原材料は、10〜25重量パーセント、12〜22重量パーセント、14〜20重量パーセント、又は15〜19重量パーセントの範囲の固体を有する。
【0048】
熱水処理に供されるとき、原材料中の種々の溶解塩は、加水分解及び縮合反応を経験して、ジルコニア系粒子を形成する。これらの反応は、多くの場合、酸性副生成物の放出を伴う。すなわち、副生成物は、多くの場合、原材料中のカルボン酸ジルコニウム塩に加えて、任意のカルボン酸イットリウム塩及びカルボン酸ランタン塩に相当する1つ以上のカルボン酸である。例えば、塩が酢酸ジルコニウム、酢酸イットリウム、及び酢酸ランタンである場合、酢酸は、熱水反応の副生成物として形成される。
【0049】
任意の好適な熱水反応器は、ジルコニア系粒子の調製のために使用され得る。反応器は、バッチ式又は連続的反応器であり得る。バッチ式熱水反応器に比較して連続的熱水反応器では、通常は、加熱時間はより短く、温度はより高い。熱水処理の時間は、反応器の種類、反応器の温度、及びの原材料濃度に応じて変化する。反応器内の圧力は、自己生成性(すなわち、反応器の温度での水の蒸気圧)であることができ、水圧(すなわち、絞りに対する流体のポンピングに起因する圧力)であることができ又は窒素若しくはアルゴンなどの不活性ガスの添加に起因することができる。好適なバッチ水熱反応器は、例えば、Parr Instruments Co.(Moline,IL)から入手できる。いくつかの適切な連続的熱水反応器は、例えば、米国特許第5,453,262号(Dawsonら)、及び同第5,652,192号(Matsonら);Adschiriら、Am.Ceram.Soc.,75,1019〜1022(1992);及びDawson,Ceramic Bulletin,67(10),1673〜1678(1988)に記載されている。
【0050】
バッチ反応器を用いてジルコニア系粒子を形成するとき、温度は、多くの場合、160℃〜275℃の範囲、160℃〜250℃の範囲、170℃〜250℃の範囲、175℃〜250℃の範囲、200℃〜250℃の範囲、175℃〜225℃の範囲、180℃〜220℃の範囲、180℃〜215℃の範囲、又は190℃〜210℃の範囲である。原材料は、通常は、室温でバッチ式反応器内に配置される。バッチ式反応器内の原材料は、指定された温度まで加熱され、及びその温度に少なくとも30分間、少なくとも1時間、少なくとも2時間、又は少なくとも4時間保持される。この温度は、最大24時間、最大20時間、最大16時間、又は最大8時間保持される。例えば、この温度は0.5〜24時間の範囲、1〜18時間の範囲、1〜12時間の範囲、又は1〜8時間の範囲保持される。いずれのサイズのバッチ式反応器でも使用し得る。例えば、バッチ式反応器の体積は数ミリリットル〜数リットル以上までの範囲であってもよい。
【0051】
多くの実施形態において、原材料は、連続的熱水反応器を通過させられる。熱水反応器システムに関連して本明細書において使用される用語「連続的」は、原材料が連続的に導入され、かつ排液が加熱された領域から連続的に除去されることを意味する。原材料の導入及び排液の除去は、通常、反応器の異なる位置で起こる。この連続的導入及び除去は一定であっても、パルス化されていてもよい。
【0052】
1つの例示的な連続的熱水反応器システム100が模式的に図11に示される。原材料110は、原材料タンク115内に収納されている。原材料タンクは管又はパイプ117によりポンプ120に連結されている。同様の管又はパイプを用いて、管状反応器システムの他の構成要素を連結することができる。管又はパイプ117は金属、ガラス、セラミック又はポリマーなどの任意の適切な材料により構築され得る。管又はパイプ117は、連続的熱水反応器システム100の加熱されない高圧のかからない部分において、例えば、ポリエチレン管又はポリプロピレン管であってもよい。加熱されるか、圧力がかかる任意の管は、多くの場合、金属(例えば、ステンレス鋼、炭素鋼、チタン、ニッケル、又は同種のもの)で形成されるか、又は金属外部ハウジングを有する。原材料110を管状反応器130に導入するためにポンプ120が用いられる。つまり、ポンプ120を管状反応器130の入口に連結することができる。管状反応器130内の圧力に抗して揚送する能力のある任意の種類のポンプ120が用いられ得る。このポンプは一定又はパルス状の原材料溶液の流れを管状反応器130内に提供し得る。
【0053】
本明細書において使用される用語「管状反応器」は連続的熱水反応器システムの加熱される部分(即ち、加熱領域)を指す。管状反応器130は、図11では管のコイルとして示されているが、管状反応器は任意の適切な形状であることができる。管状反応器の形状は、多くの場合、管状反応器の所望の長さ及び管状反応器を加熱するために用いられる方法に基づいて選択される。例えば、管状反応器は、直線状、U字形、又はコイル状であることができる。管状反応器の内部は空であるか、邪魔板、ボール、又は他の周知の混合手段を含み得る。
【0054】
図11に示すように、管状反応器130は、加熱媒質容器150内の加熱媒質140内に定置される。加熱媒質140は、例えば、金属塩の加水分解及び縮合温度を超える温度に加熱することができる油、砂、塩等である。好適な油としては、例えば、ピーナツ油、キャノーラ油等の植物油が挙げられる。一部の植物油は、油の酸化を防ぐ又は最低限に抑えるため、好ましくは、加熱されたとき窒素下で保持される。他の適切な油としては、Duratherm Extended Fluids(Lewiston,NY)から「DURATHERM S」の商標名で入手可能なものなどのポリジメチルシロキサンが挙げられる。適切な塩としては、例えば、硝酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、硝酸カリウム又はそれらの混合物が挙げられる。熱媒体容器150は、管状反応器130に用いられる熱媒体を保持し、その温度に耐えられる任意の適切な容器であってもよい。加熱媒質容器150は、任意の適切な手段を用いて加熱することができる。多くの実施形態では、加熱媒質容器150は、電気的に加熱されたコイルの内部に位置する。代替的に、例えば、誘導加熱器、マイクロ波加熱器、燃料燃焼加熱器、加熱テープ、及び蒸気コイルなどの他の種類の加熱器を加熱容器150、熱媒体140、又はその両方の適切な場所において用い得る。
【0055】
管状反応器130は、ジルコニア粒子を調製するために使用される温度及び圧力に耐えることができる任意の材料で作製され得る。好適には管状反応器130は、酸性環境における溶解に抵抗可能な材料により構築される。例えば、カルボン酸は、連続的熱水反応器システム内の原材料中に存在するか、反応副生物として生成され得る。いくつかの例示的な実施形態では、管状反応器はステンレス鋼、ニッケル、チタン、炭素を主成分とする鋼等により形成される。
【0056】
他の例示的な実施形態では、管状反応器の内部表面はフッ素化されたポリマー材料を含む。このフッ素化されたポリマー材料は、例えば、フッ素化されたポリオレフィンを含み得る。いくつかの実施形態では、前記ポリマー材料は、TEFLONなどのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であり、TEFLONはDuPont(Wilmington,DE)の商標名である。いくつかの管状反応器は、TEFLONなどのフッ素化されたポリマー性ホースを編組ステンレス鋼ハウジングなどの金属ハウジング内に有する。フッ素化されたポリマー性表面は、原材料及び/又はカルボン酸を含む反応生成物と共に使用される場合に特に有利である。これらのカルボン酸は、ステンレス鋼で構築されたものなどの、いくつかの周知の熱水反応器から金属を浸出させることができる。
【0057】
管状反応器130の第2の末端は、通常冷却装置160に連結している。任意の好適な冷却装置160を用い得る。いくつかの実施形態では、冷却装置160は冷水などの冷媒により満たされた外部ジャケットを有する、管又はパイプの区域を含む熱交換器である。別の実施形態では、冷却装置160は、冷却水を収容する容器内に定置された管又はパイプのコイル状部分を含む。これらの実施形態のいずれかにおいて、管状反応器の排液は、管の区域に通され、管状反応器の温度から、100℃を超えない温度、80℃を超えない温度、60℃を超えない温度、又は40℃を超えない温度まで冷却される。ドライアイス又は冷蔵コイルを収容する他の冷却装置を用いることもできる。冷却後、反応器の排液は生成物回収容器180に排出することができる。好適には、反応器の排液は生成物回収容器180に放出される前に、その凝固点より低い温度に冷却されることはない。
【0058】
管状反応器内部の圧力は少なくとも部分的にバックプレッシャーバルブ170により制御されてよく、バックプレッシャーバルブ170は一般に冷却装置160及び試料回収容器180の間に配置される。バックプレッシャーバルブ170は、連続的熱水反応器システム100の出口の圧力を制御し、管状反応器130内部の圧力の制御を助ける。多くの場合、背圧は、少なくとも100ポンド/平方インチ(0.7MPa)、少なくとも200ポンド/平方インチ(1.4MPa)、少なくとも300ポンド/平方インチ(2.1MPa)、少なくとも400ポンド/平方インチ(2.8MPa)、少なくとも500ポンド/平方インチ(3.5MPa)、少なくとも600ポンド/平方インチ(4.2MPa)、少なくとも700ポンド/平方インチ(4.9MPa)である。背圧は管状反応器内部での沸騰を防止するほど充分高くあるべきである。
【0059】
管状反応器130の寸法は変更でき、原材料の流速とともに、管状反応器内部に反応物に好適な滞留時間を与えるように選定され得る。滞留時間及び温度が原材料中のジルコニウムをジルコニア系粒子に変換させるのに十分であるという条件で、任意の好適な長さの管状反応器が使用され得る。管状反応器は、少なくとも0.5メートル、少なくとも1メートル、少なくとも2メートル、少なくとも5メートル、少なくとも10メートル、少なくとも15メートル、少なくとも20メートル、少なくとも30メートル、少なくとも40メートル、又は少なくとも50メートルの長さを有することが多い。いくつかの実施形態では管状反応器の長さは、500メートル未満、400メートル未満、300メートル未満、200メートル未満、100メートル未満、80メートル未満、60メートル未満、40メートル未満、又は20メートル未満である。
【0060】
比較的小さな内径を有する管状反応器が通常は好ましい。これらの反応器により達成される原材料の早い加熱速度のために、多くの場合、例えば、約3センチメートル以下の内径を有する管状反応器が用いられる。また、内径の小さい反応器では、内径の大きいものと比較して管状反応器の全域での温度勾配はより小さい。管状反応器の内径が大きいほど、この反応器はバッチ式反応器に類似する。しかしながら、管状反応器の内径が小さすぎると、反応器の壁に堆積する材料に起因して稼働中に反応器が詰まる、又は部分的に詰まる可能性が増加する。管状反応器の内径は、少なくとも0.1センチメートル、少なくとも0.15センチメートル、少なくとも0.2センチメートル、少なくとも0.3センチメートル、少なくとも0.4センチメートル、少なくとも0.5センチメートル、又は少なくとも0.6センチメートルであることが多い。いくつかの実施形態では、管状反応器の直径は、3センチメートル以下、2.5センチメートル以下、2センチメートル以下、1.5センチメートル以下、又は1.0センチメートル以下である。一部の管状反応器は、0.1〜0.3センチメートルの範囲、0.2〜2.5センチメートルの範囲、0.3〜2センチメートルの範囲、0.3〜1.5センチメートルの範囲、又は0.3〜1センチメートルの範囲の内径を有する。
【0061】
連続的熱水反応器において、温度及び滞留時間は、管状反応器の寸法とともに、単回熱水処理を用いて、原材料中のジルコニウムの少なくとも90モルパーセントをジルコニア系粒子に変換させるように選定される。すなわち、原材料中の溶解ジルコニウムの少なくとも90モルパーセントは、連続的熱水反応器システムへの単回通過によってジルコニア系粒子に変換される。
【0062】
あるいは、複数工程の熱水プロセスが使用され得る。例えば、原材料は、ジルコニウム含有中間体及びカルボン酸等の副生成物を形成するために、第1の熱水処理に供され得る。第2の原材料は、ジルコニウム含有中間体由来の第1の熱水処理の副生成物のうちの少なくとも一部を除去することによって形成され得る。次に、第2の原材料は、ジルコニア系粒子を含有するゾルを形成するために、第2の熱水処理に供され得る。このプロセスは、米国特許第7,241,437号(Davidsonら)に更に記載されている。
【0063】
2工程の熱水プロセスが使用される場合、ジルコニウム含有中間体の変換割合は、典型的には、40〜75モルパーセントである。第1の熱水処理において使用される条件は、この範囲内の変換を提供するために調整され得る。第1の熱水処理の副生成物のうちの少なくとも一部を除去するために、任意の好適な方法が使用され得る。例えば、酢酸等のカルボン酸は、蒸発、透析、イオン交換、沈殿、濾過等の様々な方法によって除去され得る。
【0064】
連続的熱水反応器に言及する場合の用語「滞留時間」は、原材料が連続的熱水反応器システムの加熱された部分内にある平均的な時間の長さを意味する。図11に図示された反応器では、滞留時間は原材料が管状反応器130内部にある平均時間であり、管状反応器の体積を管状反応器を通過する原材料の流速で割ったものに等しい。管状反応器内の滞留時間は管状反応器の直径の長さを変更すること、及び原材料の流速を変更することによっても変化させ得る。多くの実施形態において、滞留時間は少なくとも1分間、少なくとも2分間、少なくとも4分間、少なくとも6分間、少なくとも8分間、又は少なくとも10分間である。滞留時間は、通常は240分間以下、180分間以下、120分間以下、90分間以下、60分間以下、45分間以下、又は30分間以下である。多くの実施例において、滞留時間は、1〜240分間の範囲、1〜180分間の範囲、1〜120分間の範囲、1〜90分間の範囲、1〜60分間の範囲、10〜90分間の範囲、10〜60分間の範囲、20〜60分間の範囲、又は30〜60分間の範囲である。
【0065】
滞留時間が溶解されたジルコニウムをジルコニア系粒子に変換させるのに十分長いという条件で、管状反応器を通る原材料の任意の好適な流速が使用され得る。すなわち、流速は、多くの場合、原材料中のジルコニウムをジルコニア系粒子に変換させるのに必要な滞留時間に基づいて選定される。効率を増大させ、及び管状反応器の壁への材料の堆積を最小化するためには、より高い流速が望ましい。反応器の長さが増加したとき、又は、反応器の長さ及び直径が両方増加したとき、より高い流速を用いることができることが多い。管状反応器を通る流れは層流又は乱流のいずれかであってよい。
【0066】
いくつかの例示の連続的熱水反応器において、反応器の温度は、170℃〜275℃の範囲、170℃〜250℃の範囲、170℃〜225℃の範囲、180℃〜225℃の範囲、190℃〜225℃の範囲、200℃〜225℃の範囲、又は200℃〜220℃の範囲である。温度が約275℃を超える場合、圧力は、いくつかの熱水反応器システムにとって許容できないほどに高くなり得る。しかしながら、温度が約170℃未満である場合、原材料中のジルコニウムのジルコニア系粒子への変換は、典型的な滞留時間を用いて、90重量パーセント未満になり得る。
【0067】
熱水処理の排液(すなわち、熱水処理の生成物)は、ジルコニア系ゾルである。本明細書で使用される「ゾル」という用語は、水性系媒体中のジルコニア系粒子の分散物又は懸濁物を指す。ジルコニア系ゾルは、100ナノメートルを超えない平均粒子寸法を有するジルコニア系粒子を含有する。ジルコニア系粒子は、少なくとも92.5モルパーセントの酸化ジルコニウム、少なくとも1.5モルパーセントの酸化イットリウム、及び少なくとも0.5モルパーセントの酸化ランタンを含有する。多くの実施形態において、ジルコニア系粒子は、92.5〜98.0モルパーセントの酸化ジルコニウム、1.5〜2.5モルパーセントの酸化イットリウム、及び0.5〜5.0モルパーセントの酸化ランタンを含有する。ジルコニア系粒子の平均粒子寸法は、100ナノメートルを超えない。
【0068】
焼結体を調製するプロセスにおいて、ジルコニア系成形体は、ジルコニア系ゾルから形成される。本明細書で使用される「成形体」という用語は、液相のうちの少なくともいくつかの除去によって、ジルコニア系ゾルから調製される物品を指す。すなわち、ジルコニア系ゾルが濃縮されて、成形体を形成する。成形体は、典型的には、少なくとも25体積パーセントの無機酸化物を有する。無機酸化物に加えて、成形体は、液相、ボイド、原材料中に存在した未反応の塩、熱水変換反応の副生成物等を含み得る。任意の好適な濃縮方法が、成形体を形成するために使用され得る。成形体を形成するプロセスにおいて、ジルコニア系ゾルが乾燥工程に供されるが、成形体内のジルコニア系粒子は、典型的には焼結されない。成形体を形成するために使用される任意の乾燥温度は、典型的には、400℃未満、300℃未満、200℃未満、又は100℃未満である。
【0069】
成形体は、典型的には、少なくとも25体積パーセント、少なくとも30体積パーセント、少なくとも35体積パーセント、少なくとも40体積パーセント、又は少なくとも45体積パーセントの無機酸化物を有する。無機酸化物の体積パーセントは、最大50体積パーセント、又はそれよりも更に高い体積パーセントであり得る。例えば、成形体は、25〜50体積パーセントの範囲、25〜45体積パーセントの範囲、25〜40体積パーセントの固体、又は25〜35体積パーセントの無機酸化物であり得る。成形体を形成するために使用される濃縮方法は、典型的には、濃縮中に毛管力を通してジルコニア系粒子をともに引き出す結果になる。個々のジルコニア系粒子は、典型的には、ファンデルワールス力によって、又は有機結合剤等の有機材料によってまとめられる。
【0070】
成形体を形成するための1つの例示の濃縮方法において、ジルコニア系ゾルは、浸透鋳造に供され得る。ジルコニア系ゾルの試料は、閉鎖している膜袋内に位置付けられ、次に、ポリ(エチレングリコール)等のポリ(酸化アルキレン)の溶液浴槽内に設置され得る。水性媒体は、膜袋内のジルコニア系ゾルから拡散する。すなわち、水性媒体が、膜袋を通って浴槽の中にジルコニア系ゾルから拡散し、膜袋内の水又は水溶性成分の濃度が、浴槽内の濃度と均一になる。浴槽は、膜袋内の水性媒体の濃度を更に低下させるために、定期的に取り替えられ得る。水、カルボン酸及び/又はそのアニオンの拡散を許容するが、膜袋からのジルコニア系粒子の拡散を許容せず、かつ膜袋の中への浴槽(例えば、ポリ(酸化アルキレン)溶液)の拡散を許容しない膜袋が典型的に選択される。水性媒体のうちの少なくとも一部の除去の際に、ジルコニア系ゾルは、ゲルになる傾向がある。次に、このゲルは、成形体を形成するために、40℃〜150℃の範囲、40℃〜120℃の範囲、40℃〜100℃の範囲、又は40℃〜80℃の範囲の温度に設定されるオーブン等のオーブン内で乾燥され得る。成形体は、少なくとも25体積パーセント、少なくとも30体積パーセント、又は少なくとも35体積パーセントの無機酸化物を有する。
【0071】
別の例示の方法において、ジルコニア系ゾルは、濃縮するために、蒸留又は蒸留及び乾燥の両方に供され得る。例えば、ジルコニア系ゾルは、蒸留法を用いて、約10〜15体積パーセントの無機酸化物に濃縮され、次に、結果として生じる成形体の総体積に基づいて、少なくとも25体積パーセントの無機酸化物に更に濃縮され得る。
【0072】
カルボン酸及び/又はカルボン酸アニオンは任意で、濃縮前にジルコニア系ゾルから除去され得る。例えば、溶解カルボン酸及び/又はそのカルボン酸アニオンの少なくとも一部を除去するために、透析又は膜分離法が使用され得る。透析について、ジルコニア系ゾルの試料は、閉鎖している膜袋内に位置付けられ、その後、水浴内に設置される。カルボン酸及び/又はカルボン酸アニオンは、試料外の膜袋内に拡散される。すなわち、これらの種は、排液から出て、膜袋を通り、水浴内に拡散して、膜袋内の濃度と水浴内の濃度を均一にし得る。水浴内の水は通常は袋内の種の濃度を低下させるために数回交換される。カルボン酸及び/又はそのカルボン酸アニオンの拡散を許容するが、膜袋から外へのジルコニア系粒子の拡散を許容しない膜袋が典型的に選択される。
【0073】
膜分離法では、試料を濾過するために透過性膜が用いられる。フィルターの細孔の寸法が適切に選定される場合には、ジルコニア粒子はフィルター上に保持され得る。溶解カルボン酸及び/又はそのカルボン酸アニオンは、フィルターを通過する。フィルターを通過する任意の液体は、真水に交換される。非連続的膜分離法プロセスでは、試料は、多くの場合、所定の体積に希釈され、その後限外濾過により元の体積まで濃縮される。希釈及び濃縮工程は、カルボン酸及び/又はそのカルボン酸アニオンが除去されるか、あるいは許容される濃度レベルまで低下するまで、1回以上繰り返される。多くの場合、定体積膜分離法プロセスと称される連続的膜分離法プロセスでは液体が濾過を通じて除去されるのと同じ速度で真水が加えられる。溶解されたカルボン酸及び/又はそのアニオンは除去される液体中に存在する。
【0074】
透析又は限外濾過のいずれかを用いて、水性媒体中のカルボン酸及び溶解カルボン酸アニオンを除去することができる。しかしながら、そのような処理後でさえも、いくらかの残留カルボン酸は、ジルコニア系粒子の表面上に吸着し得る。
【0075】
成形体内のジルコニア系粒子は、焼結体を形成するために焼結される。成形体は、典型的には、制御された速度で所望の焼結温度になるまで加熱され、その後、焼結が起こるのに十分な期間、焼結温度で保持される。例えば、温度は、1℃/分〜200℃/分の速度、5℃/分〜100℃/分の速度、10℃/分〜100℃/分の速度、又は10℃/分〜50℃/分の速度で上昇し得る。焼結温度は、少なくとも1分間、少なくとも5分間、少なくとも10分間、少なくとも30分間、少なくとも60分間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、又は少なくとも4時間等の任意の好適な期間、保持され得る。次に、焼結体は、室温に冷却される。冷却速度は、多くの場合、制御される。
【0076】
焼結体を形成するために、任意の所望の焼結温度が選定され得る。しかしながら、焼結温度が低すぎる場合、焼結は完了しない場合もあり、残留孔が残存し得る。これらの残留孔は、焼結体を弱体化させる場合もあり、半透明性にも悪影響を与え得る。しかしながら、焼結温度が高すぎる場合、グレイン寸法が増加する傾向がある。増加したグレイン寸法はまた、半透明性に悪影響を与え得る。多くの実施形態において、焼結温度は、1000℃〜1250℃の範囲であり得る。焼結プロセスは、典型的には、空気中で行われる。
【0077】
焼結体の最終用途に応じて、成形体は、焼結する前又は部分的に焼結する前に、任意で、所望の顆粒寸法に粉砕又は分割され得る。
【0078】
部分的焼結体が提供される。部分的焼結体は、ジルコニア系粒子を部分的に焼結することによって形成される生成物を含む。ジルコニア系粒子は、結晶性であり、かつ100ナノメートルを超えない平均粒子寸法を有する。ジルコニア系粒子は、ジルコニア系粒子中の無機酸化物の全モルに基づいて、少なくとも92.5モルパーセントの酸化ジルコニウム、少なくとも1.5モルパーセントの酸化イットリウム、及び少なくとも0.5モルパーセントの酸化ランタンを含有する。部分的焼結体は、部分的焼結体の総体積に基づいて、25〜75体積パーセントの無機酸化物及び25〜75体積パーセントのボイドを含む。
【0079】
いくつかの用途において、部分的焼結体を形成することが望ましい場合もある。本明細書で使用される「部分的焼結体」という用語は、成形体と焼結体との中間にある材料を指す。部分的焼結体は、多くの場合、ジルコニア系成形体から形成される。部分的焼結体は、典型的には、75体積パーセント以下の無機酸化物及び少なくとも25体積パーセントのボイドを含有する。部分的焼結体は、成形体よりも高い機械的完全性を有し得る。例えば、いくつかの成形体は、処理されるときに粉々に砕ける傾向があり、別の形状に機械加工することができない。しかしながら、部分的焼結体は、機械加工され得、かつ典型的には、処理されるときに粉々に砕けない。より低い密度を有するため、部分的焼結体は、焼結体よりも容易に所望の形状に機械加工され得る。すなわち、部分的焼結体は、完全に焼結する前に、所望の形状に成形され得る。
【0080】
部分的焼結体は、通常、部分的焼結体の総体積に基づいて、25〜75体積パーセントの無機酸化物を含む。例えば、部分的焼結体は、少なくとも25体積パーセント、少なくとも30体積パーセント、少なくとも35体積パーセント、少なくとも40体積パーセント、又は少なくとも45体積パーセントの無機酸化物を有し得る。部分的焼結体は、最大75体積パーセント、最大70体積パーセント、最大65体積パーセント、又は最大60体積パーセントの無機酸化物を有し得る。いくつかの実施形態では、部分的焼結体は、30〜75体積パーセント、35〜75体積パーセント、40〜75体積パーセント、30〜70体積パーセント、30〜60体積パーセント、40〜70体積パーセント、又は40〜60体積パーセントの無機酸化物を含み得る。無機酸化物は、少なくとも92.5モルパーセントの酸化ジルコニウム、少なくとも1.5モルパーセントの酸化イットリウム、及び少なくとも0.5モルパーセントの酸化ランタンを含有する。
【0081】
無機酸化物に加えて、部分的焼結体は、典型的には、ボイドを含む。例えば、部分的焼結体は、部分的焼結体の総体積に基づいて、25〜75体積パーセントのボイドを含み得る。多くの場合、無機固体に起因しない部分的焼結体の体積のすべて又は大部分は、ボイドに起因する。通常、ジルコニア系ゾル中に存在していた液相のすべて又はほぼすべて(例えば、少なくとも90パーセント以上、少なくとも95パーセント以上、少なくとも98パーセント以上、又は少なくとも99パーセント以上)は、部分的焼結体の形成中に除去された。同様に、熱水処理の任意のカルボン酸副生成物のすべて又はほぼすべては、部分的焼結体の形成中に除去された。
【0082】
いくつかの実施形態において、部分的焼結体は、25〜75体積パーセントの無機酸化物及び25〜75体積パーセントのボイド、30〜75体積パーセントの無機酸化物(inorganic)及び25〜70体積パーセントのボイド、40〜75体積パーセントの無機酸化物及び25〜60体積パーセントのボイド、30〜70体積パーセントの無機酸化物及び30〜70体積パーセントのボイド、30〜60体積パーセントの無機酸化物及び40〜70体積パーセントのボイド、又は40〜60体積パーセントの無機酸化物及び40〜60体積パーセントのボイドを含み得る。
【0083】
部分的焼結体中の無機酸化物は、成形体を形成するために使用されるジルコニア系粒子に由来する。ジルコニア系粒子及び部分的焼結体中の無機酸化物は、少なくとも92.5モルパーセントの酸化ジルコニウム、少なくとも1.5モルパーセントの酸化イットリウム、及び少なくとも0.5モルパーセントの酸化ランタンを含有する。多くの実施形態において、ジルコニア系粒子及び部分的焼結体中の無機酸化物は、92.5〜98.0モルパーセントの酸化ジルコニウム、1.5〜2.5モルパーセントの酸化イットリウム、及び0.5〜5.0モルパーセントの酸化ランタンを含有する。
【0084】
部分的焼結体は、部分的焼結体の総体積に基づいて、25〜75体積パーセントの無機酸化物及び25〜75体積パーセントのボイドを得るために、焼結時間及び温度の組み合わせを用いて、成形体から調製され得る。部分的焼結体は、典型的には、少なくとも400℃に等しい温度に曝露されている。例えば、温度は、400℃〜1100℃の範囲であり得る。時間及び温度の組み合わせは、ジルコニア系粒子をともに部分的に焼結するよう選択される。焼結の程度は、所望の機械的完全性及び密度を部分的焼結体に提供するのに十分であるよう選択される。焼結体の形成と同様に、温度は、制御された速度で所望の温度まで上昇し得、制御された速度で所望の温度まで低下し得る。
【0085】
部分的焼結体は、焼結体を形成するために更に焼結され得る。焼結体は、頑丈なセラミック材料が所望される多くの用途のために使用され得る。例えば、焼結体は、種々の歯科用途において使用され得る。
【0086】
例えば、焼結体、焼結体を作製する方法、又は部分的焼結体を含む、種々の項目が提供される。
【0087】
第1の項目、焼結体が提供される。焼結体は、ジルコニア系セラミック材料中の無機酸化物の全モルに基づいて、92.5〜98.0モルパーセントの酸化ジルコニウム、1.5〜2.5モルパーセントの酸化イットリウム、及び0.5〜5.0モルパーセントの酸化ランタンを含有する、ジルコニア系セラミック材料を含有する。ジルコニア系セラミック材料は、200ナノメートル以下の平均グレイン寸法を有する。
【0088】
第1の項目の変形であり得る第2の項目が提供される。第2の項目において、焼結体は、理論密度の少なくとも99パーセントの密度を有する。
【0089】
第1の項目の変形であり得る第3の項目が提供される。第3の項目において、焼結体は、理論密度の少なくとも99.5パーセントの密度を有する。
【0090】
第1の項目の変形であり得る第4の項目が提供される。第4の項目において、焼結体は、理論密度の少なくとも99.9パーセントの密度を有する。
【0091】
第1〜第4の項目の変形であり得る第5の項目が提供される。第5の項目において、平均グレイン寸法は、100ナノメートル以下である。
【0092】
第1〜第5の項目の変形であり得る第6の項目が提供される。第6の項目において、ジルコニア系セラミック材料の少なくとも70パーセントが、立方/正方結晶構造を有する。
【0093】
第1〜第5の項目の変形であり得る第7の項目が提供される。第7の項目において、ジルコニア系セラミック材料の少なくとも80パーセントが、立方/正方結晶構造を有する。
【0094】
第1〜第7の項目の変形であり得る第8の項目が提供される。第8の項目において、焼結体は、100ナノメートルを超えない平均孔寸法を有する。
【0095】
第1〜第7の項目の変形であり得る第9の項目が提供される。第9の項目において、焼結体は、50ナノメートルを超えない平均孔寸法を有する。
【0096】
第1〜第9の項目の変形であり得る第10の項目が提供される。第10の項目において、ジルコニア系セラミック材料は、94.7〜97.1モルパーセントの酸化ジルコニウム、1.9〜2.3モルパーセントの酸化イットリウム、及び1.0〜3.0モルパーセントの酸化ランタンを含有する。
【0097】
第11の項目、焼結体を作製する方法が提供される。本方法は、結晶性であり、かつ100ナノメートルを超えない平均粒子寸法を有するジルコニア系粒子を含有するジルコニア系ゾルを提供する工程を含む。ジルコニア系粒子は、ジルコニア系粒子中の無機酸化物の全モルに基づいて、少なくとも92.5モルパーセントの酸化ジルコニウム、少なくとも1.5モルパーセントの酸化イットリウム、及び少なくとも0.5モルパーセントの酸化ランタンを含有する。本方法は、成形体が、成形体の総体積に基づいて、少なくとも25体積パーセントの無機酸化物を含有するように、ジルコニア系ゾルからジルコニア系成形体を形成する工程を更に含む。本方法は、ジルコニア系粒子を焼結し、かつジルコニア系セラミック材料を形成するために、ジルコニア系成形体を加熱する工程も更に含む。ジルコニア系セラミック材料は、200ナノメートルを超えない平均グレイン寸法を有する。
【0098】
第11の項目の変形であり得る第12の項目が提供される。第12の項目において、ジルコニア系成形体を形成する工程は、浸透鋳造工程を含む。
【0099】
第11又は第12の項目の変形であり得る第13の項目が提供される。第13の項目において、本方法は、部分的焼結体が、25〜75体積パーセントの無機酸化物及び25〜75体積パーセントのボイドを含むように、成形体から部分的焼結体を調製する工程を更に含む。更に、焼結する工程は、75体積パーセントを超える無機酸化物及び25体積パーセント未満のボイドを含む焼結体を形成するために、部分的焼結体を加熱する工程を含む。
【0100】
第14の項目、部分的焼結体が提供される。部分的焼結体は、ジルコニア系粒子を部分的に焼結することによって形成される生成物を含む。ジルコニア系粒子は、結晶性であり、かつ100ナノメートルを超えない平均粒子寸法を有する。ジルコニア系粒子は、ジルコニア系粒子中の無機酸化物の全モルに基づいて、少なくとも92.5モルパーセントの酸化ジルコニウム、少なくとも1.5モルパーセントの酸化イットリウム、及び少なくとも0.5モルパーセントの酸化ランタンを含有する。部分的焼結体は、部分的焼結体の総体積に基づいて、25〜75体積パーセントの無機酸化物及び25〜75体積パーセントのボイドを含む。
【0101】
第14の項目の変形であり得る第15の項目が提供される。第15の項目において、部分的焼結体は、0〜5体積パーセント未満の有機材料、水、又はそれらの組み合わせを含有する。
【0102】
第14又は第15の項目の変形であり得る第16の項目が提供される。第16の項目において、部分的焼結体は、40〜70体積パーセントの無機酸化物及び30〜60体積パーセントのボイドを含む。
【実施例】
【0103】
これらの実施例は、例示のためだけのものであり、添付の特許請求の範囲を限定することを意味しない。実施例におけるすべての部、百分率、及び比率は、別途言及されない限り、重量によるものである。使用される溶媒及び他の試薬は、別途言及されない限り、Sigma−Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から得ることができる。
【0104】
【表1】

【0105】
試験方法
電界放射型走査電子顕微鏡法(FESEM)
焼結顆粒を、走査電子顕微鏡スタブに取り付けられた導電性テープ上に点在させることによって、試料を調製した。粒子を導電性にするために、Au−Pdの薄層を析出させた。使用した顕微鏡は、Hitachi(Maidenhead,UK)から入手可能なHitachi S−4700電界放射型走査電子顕微鏡であった。2.0キロボルトで動作しながら、70,000倍率の画像(すなわち、電子顕微鏡写真)を得た。
【0106】
線切片分析
70,000倍率のFESEM顕微鏡写真を、グレイン寸法測定に使用した。焼結体の異なる領域を撮った3つ又は4つの顕微鏡写真を、それぞれの試料に使用した。それぞれの顕微鏡写真の高さにわたってほぼ等しい間隔で離間した10本の横線を描いた。それぞれの線上で観察されたグレイン境界切片を計上し、切片間の平均距離を計算した。それぞれの線の平均距離に1.56を乗じてグレイン寸法を決定し、この値を、それぞれの試料のすべての顕微鏡写真におけるすべての線にわたって平均化した。
【0107】
集束イオンビームミリング(FIB)
焼結顆粒(すなわち、焼結体)を、走査電子顕微鏡スタブに取り付けられた導電性テープ上に装着することによって、試料を調製した。個々の顆粒中にトレンチを作製するために、集束イオンビームミリングを使用した。トレンチは、長さ約25マイクロメートル×深さ5マイクロメートルであった。イオンミルは、FEI Company(Hillsboro,OR)からQuanta 3D FEBの商標表記で市販されている。
【0108】
試料を導電性にするために、Au−Pdの薄層を析出させた。それぞれの試料の断面を、それぞれのトレンチにわたってほとんど又は全く重ならずに提供された5つの画像で精査した。使用した顕微鏡は、Hitachi(Maidenhead,UK)から入手可能なHitachi S−4700電界放射型走査電子顕微鏡であった。2.0キロボルトで動作しながら、20,000倍率の画像を得た。
【0109】
X線回折
焼結体の試料を、任意の更なる変化なしで試験した。Bruker(Madison,WI)のBruker D8 Advance回折計を用いて、銅Kα放射線及び散乱放射線のVantec検出器レジストリで反射配置データを調査走査の形態で収集した。回折装置には、可変入射ビームスリット及び固定回折ビームスリットが装着されていた。0.015度の刻み幅及び2秒のドウェル時間を用いて、結合連続モードで、10度から80度(2θ)の間で調査走査を行った。40キロボルト及び40ミリアンペア設定のX線発生器を採用した。
【0110】
観察された回折ピークは、国際回折データセンター(ICDD)粉末回折データベース(セット1〜47、ICDD,Newton Square,PA)に包含される参照回折パターンとの比較によって同定され、ジルコニアの立方(C)相、正方(T)相、又は単斜(M)相に起因した。(111)ピークを立方相に使用し、(101)ピークを正方相に使用し、(−111)及び(111)ピークを単斜相に使用した。小さい結晶サイズの粒子がゾル中で調製されたため、立方相の(111)ピーク及び正方相の(101)ピークを分離することができなかった。相をC(111)/T(101)ピークとしてともに報告する。それぞれのジルコニア相の量を相対基準で評価し、最も強い回折ピークを有するジルコニアの形態には、100の相対強度値が割り当てられた。残りの結晶性ジルコニア相の最強の線を最も強い線に対して調整し、1〜100の値を与えた。
【0111】
鋼玉石により観察された回折最大のピーク幅は、プロファイル適合により測定された。平均鋼玉石ピーク幅と鋼玉石ピーク位置(2θ)との間の関係を、多項式をこれらのデータに当てはめることによって決定し、鋼玉石試験範囲内の任意のピーク位置で計器幅を評価するために使用される連続関数を得た。ジルコニアに起因して観察された回折極大値のピーク幅は、観察された回折ピークのプロファイル適合により測定された。
【0112】
α1及びKα2波長構成成分を有するピアソンVIIピーク形状モデルを説明し、すべてのケースに直線バックグラウンドモデルが使用された。幅は、度の単位を有するピーク半値全幅(FWHM)として求められた。プロファイルあてはめは、JADE回折ソフトウェア一式の機能を使用して達成した。
【0113】
試料のピークは、鋼玉石機器較正からの機器幅値の補間により機器の広がりに対して補正され、ラジアンの単位に変換されたピーク幅を補正した。シェラーの式が、一次結晶寸法を計算するために使用された。
【0114】
晶子サイズ(D)=Kλ/β(cosθ)
【0115】
シェラーの式中、Kは、波形率(ここでは0.9)であり、λは、波長(1.540598Å)であり、βは、計器広がりに関する補正後の計算されたピーク幅(ラジアン単位)であり、θは、ピーク位置(散乱角)の半値に等しい。βは、[計算されたピークFWHM−計器幅](ラジアンに変換)に等しく、式中、FWHMは、半値全幅である。
【0116】
立方/正方相(C/T)及び単斜相(M)の加重平均を、以下の等式を用いて計算した。
【0117】
重量平均=[(%C/T)(C/T寸法)+(%M)(M寸法)]/100
【0118】
この式において、%C/TはZrO粒子の立方及び正方晶子含有率が寄与する結晶化度の百分率に等しく;C/T寸法は立方及び正方晶子の寸法に等しく、%MはZrO粒子の単斜晶子が寄与する結晶化度の百分率に等しく、及びM寸法は単斜晶子の寸法に等しい。
【0119】
ホットステージX線回折手順
白金ストリップ炉及びAnton Parr(Graz,Austria)HTK温度調節器を装備したPanalytical(Westborough,Massachusetts)垂直ゴニオメータを用いて、ホットステージ試験を行った。回折計は、銅Kα放射線を使用し、可変入射スリット、固定された回折ビームスリット、及び黒鉛回折ビームモノクロメータに取り付けられ、かつ散乱放射線の比例検出器レジストリを使用した。
【0120】
試料の一部を、細かい粉末(100メッシュよりも小さい)として白金ストリップ炉に塗布した。試料を、1分間あたり150℃の加熱速度で、30℃からそれぞれのターゲット温度(900℃、1000℃、1100℃、又は1200℃)に加熱し、ターゲット温度で10分間保持し、その後、1分間あたり150℃の冷却速度で30℃に冷却した。
【0121】
0.04度の刻み幅及び10秒のドウェル時間を用いて、すべての反射配置走査を、10度から40度(2θ)の間で30℃で行った。40キロボルト及び35ミリアンペア設定のX線発生器を使用した。
【0122】
光子相関分光法(PCS)
633ナノメートルの波長を有する赤色レーザーを装備した、Zeta Sizer−nanoシリーズ、モデルZEN3600計器を用いて、粒子寸法測定を行った。この装置はMalvern Instruments Inc.(Westborough,Massachusetts)から市販品として入手可能である。1平方センチメートルのポリスチレンキュベット内で測定を実行した。分析された約1グラムの脱イオン水及び数滴(約0.1グラム)のゾル試料をキュベット内に添加することによって、試料を調製した。それぞれの試料キュベットの含量をきれいなピペットに取り込み、混合するために数回放出した。それぞれの試料キュベットを装置内に設置し、25℃で平衡化した。
【0123】
装置のパラメーター設定は以下のとおりである:分散性屈折率1.330、分散性粘度1.0019mPa−秒、材料屈折率2.10、及び材料吸収値0.10ユニット。その後自動寸法測定操作が実行される。粒子寸法の最良の測定を得るために、装置は自動的にレーザー光の位置及び減衰器の設定を調整する。
【0124】
ZEN3600装置は、レーザーで試料を照射し、粒子から散乱された光の強度変動を173度の角度で解析した。光子相関分光法(PCS)の方法が装置により粒子寸法算出のために使用された。PCSは、液体中の粒子のブラウン運動を測定するために、変動する光の強度を用いた。次に、粒子寸法は、測定された速度で移動する球体の直径になるよう計算される。
【0125】
粒子によって散乱される光の強度は、粒子直径の6乗に比例する。Z平均寸法又はキュムラント平均は、強度分布から計算される平均であり、計算は、粒子が単峰性、単分散性、及び球状であるという仮定に基づく。変動する光強度から計算される関連する関数は、強度分布及びその平均である。強度分布の平均は粒子が球状であるという仮定に基づき計算される。Z平均寸法及び強度分布平均の両方とも、より小さい粒子に対するよりも、より大きな粒子に対して、より敏感である。
【0126】
体積分布は、所与の寸法範囲内の粒子に相当する粒子の総体積の割合をもたらす。体積平均寸法は、体積分布の平均に相当する粒子の寸法である。粒子の体積直径の3乗に比例するため、この分布はより大きな粒子に対しては、Z平均寸法よりも感度が低い。したがって、体積平均は、典型的には、Z平均寸法よりも小さい値である。
【0127】
実施例1〜8及び比較実施例1〜2
実施例1〜8及び比較実施例1〜2を、以下のように調製した。酢酸ジルコニウム、酢酸イットリウム、酢酸ランタン、及び脱イオン(DI)水を撹拌しながら合わせることによって、前駆体溶液を調製した(以下の表2を参照のこと)。結果として生じる溶液(約12グラム)を、テフロンカップを有する汎用酸分解容器(Parr Instrument Company(Moline,IL)から入手可能なParrモデル番号4749)に設置した。それぞれの酸分解容器を、225℃の温度で4時間、強制換気オーブン内に設置した。ある場合には、同一のゾルのいくつかの12グラムバッチを作製し、その後、試料を形成するために合わせた。安定した結晶性ゾルを得た。本明細書で使用される、ゾルに関して「安定した」という用語は、無機酸化物の10重量パーセント未満が1週間後に安定したことを意味する。
【0128】
実施例5及び実施例6を除くそれぞれのゾルを、調製されたままの状態で使用した。実施例5を20時間透析し(Spectrum Laboratories,Inc.(Rancho Dominguez California)から入手可能なSpectra/Por透析膜MWCO 12−14,000)、その後、蒸留を介して約39重量パーセントに濃縮した。実施例6を、蒸留を介して44.5重量パーセントに濃縮し、1ミクロンのガラス極細繊維膜フィルター(Pall Corporation(Port Washington,New York)から入手可能なAcrodisc 25ミリメートルのシリンジフィルター)を用いて濾過した。
【0129】
表2に示されるモルパーセントは、原材料中に含まれるジルコニウム、ランタン、及びイットリウム塩の濃度に基づいて計算される。典型的には、約65〜66重量パーセントの酸化ランタンが、透析又は膜分離精製後にゾル中に残る。結果的に、実施例5及び実施例6における実際の酸化ランタン濃度は、表2に示される値よりも低い。上述のゾル中の粒子の特性が表3に示される。
【0130】
【表2−1】

【0131】
【表2−2】

【0132】
【表3】

【0133】
比較実施例3及び4、並びに実施例9〜12
2.1〜2.2モルパーセントのY及び0〜3.0モルパーセントのLaを有する粒子を有するジルコニア系ゾルを、比較実施例1及び2、並びに実施例1〜4で説明されるように調製した。
【0134】
それぞれのゾルを、流動する乾燥窒素下にて室温で乾燥させ、その後、細かい粉末(100メッシュ以下)に破砕した。表4に要約されるような連続して高くなる温度に加熱した後に、主な立方/正方相の晶子サイズを決定するために、ホットステージX線回折を使用した。
【0135】
【表4】

【0136】
グレインの成長を制限するLa添加の影響は、特に1000℃を超える温度で明らかであった。1.0モルパーセントを超えるLaの量の増加は、グレイン寸法にわずかな影響しか及ぼさなかった。
【0137】
比較実施例5
3M ESPE(Saint Paul,MN)から「LAVA」(LAVAジルコニアブロック60mm)の商標表記で市販されている部分的に焼結されたジルコニア系材料を、3ユニットLAVAフレーム(3M ESPEから入手)から除去した。潤滑剤として脱イオン水を用いて、円筒形ブロックを、低速ダイヤモンドソーで厚さ1ミリメートルのウエハーにダイスカットした。ウエハーを60℃で乾燥させ、その後、10℃/分の速度で1500℃に加熱し、1500℃で2時間保持し、10℃/分で20℃に冷却することによって焼結した。
【0138】
焼結ウエハーのうちの1つを破砕し、−50、+100メッシュ(300〜150マイクロメートル)にスクリーニングした。顆粒を、入射光を用いて50倍率で表示した。これは、比較標準(図2b)を提供し、ランタン及びイットリウムをドープした粒子を含有したジルコニア系ゾルから調製された焼結顆粒の相対半透明性を評価するために使用された。
【0139】
比較実施例6
3M ESPE(Saint Paul,MN)から「LAVA」(LAVAジルコニアブロック60mm)の商標表記で市販されている部分的に焼結されたジルコニア系材料を、3ユニットLAVAフレーム(3M ESPEから入手)から除去した。潤滑剤として脱イオン水を用いて、円筒形ブロックを、低速ダイヤモンドソーで厚さ1ミリメートルのウエハーにダイスカットした。ウエハーを60℃で乾燥させ、その後、2℃/分の速度で600℃に加熱し、600℃で30分間保持し、7.5℃/分の速度で1500℃に加熱し、1500℃で2時間保持し、次いで、10℃/分で20℃に冷却することによって焼結した。
【0140】
ウエハーのうちの1つの断面を、集束イオンビームミリングによって得て、体積パーセントの気孔率を決定するために使用した。体積パーセントの気孔率を、電子顕微鏡写真中の焼結体の総面積に対する焼結体の孔面積の比率から計算した。代表的な画像を図1に示す。平均気孔率は、0.33体積パーセントであった。これは、理論密度の99.7パーセントに相当する。
【0141】
(実施例13)
2.2モルパーセントのY及び3.0モルパーセントのLaを含有するジルコニア系ゾルを、実施例5で説明されるように調製した。ゾルを浸透によって濃縮した。より具体的には、ゾルを、膜(Spectrum Laboratories Inc.(Rancho Dominguez,CA)のSpectra/Por1、製品番号132655、MWCO 6000−8000)内に設置した。移動可能な捩り結び密閉を用いて液体ゾルの真上の蓋を密閉する一方、膜管を下部で結んだ。装填した膜を、20,000グラム/モルの重量平均分子量を有するポリエチレングリコール水溶液内に設置した。この溶液は、1リットルあたり600グラムのポリエチレングリコールを含有し、pHは3.0であった。ゾルからの水は、膜を通ってポリエチレングリコール水溶液中に拡散し、ゾルが乾燥して硬質ゲルになった。最初の数時間の間、上部の捩り結びを約30分に1回移動させ、膜を通る水の損失を補った。これは、膜の過度のへこみを阻止し、かつ膜容器の円筒状の形状を維持する助けとなる。ゾルが半硬質ゲルを形成した時点で、一晩静置させた。強化したゲルを透析袋から除去し、空気中で60℃で乾燥させた。ゲルは、乾燥中に数ミリメートルの寸法の小塊に分裂した。
【0142】
乾燥ゲルの一部を破砕し、−35、+60メッシュ(500〜250マイクロメートル)の寸法にスクリーニングした。次に、この材料を、2℃/分の速度で600℃に加熱し、600℃で30分間保持し、7℃/分の速度で1200℃に加熱し、1200℃で1時間保持し、その後、10℃/分で20℃に冷却することによって、空気中で焼結した。
【0143】
図2aは、この実施例のLaをドープした材料を示す。図2bは、破砕されてほぼ同一の寸法にスクリーニングされた比較実施例5を示す。両方の材料を、入射光を用いて50倍率で表示した。
【0144】
図3は、実施例13のドープした顆粒のうちの1つの破面のFESEM顕微鏡写真を示す。材料は、完全に緻密であるように見える。顕微鏡写真の線切片分析によって決定されたグレイン寸法は、99ナノメートルであった。
【0145】
Laをドープした顆粒の断面を、集束イオンビームミリングによって得て、体積パーセントの気孔率を決定するために使用した。本質的にゼロパーセントの孔体積を示す区域のいずれにおいても、孔は観察されなかった。代表的な画像を図4に示す。顕微鏡写真の上部の薄灰色帯域は、ウエハーの上面である。この下のより濃い灰色は、垂直にミリングされた区域に相当する。
【0146】
(実施例14a〜b)
実施例13の焼結顆粒のうちのいくつかを、1300℃(実施例14a)及び1400℃(実施例14b)に再加熱した。焼結顆粒を、10℃/分の速度で、実施例14aにおいて1300℃(又は実施例14bにおいて1400℃)に加熱し、1時間その温度で保持し、その後、10℃/分の速度で20℃に冷却した。
【0147】
それぞれの試料のグレイン寸法を、表面のFESEM顕微鏡写真の線切片分析によって決定した。1300℃及び1400℃に加熱した後の試料のグレイン寸法は、それぞれ、116ナノメートル及び183ナノメートルであった。実施例13の顆粒がすでに完全に緻密であるため、半透明性におけるいずれの変化も、グレイン寸法に起因した。図5a、図5b、及び図5cに見られるように、100ナノメートルを超えるグレイン寸法の小さい増加でさえ、半透明性を低下させ得る。図5aは、実施例13である。図5bは、1300℃で再加熱した実施例14aである。図5cは、1400℃で再加熱した実施例14bである。
【0148】
(実施例15a〜15e)
2.2モルパーセントのY及び1.0モルパーセントのLaを含有するジルコニア系ゾルを、実施例6で説明されるように調製した。ゾルを浸透によって固体に濃縮した。これを、膜(Spectra/Por1、製品番号132655、MWCO 6000−8000、Spectrum Laboratories Inc.(Rancho Dominguez,CA))内に包含した。膜管を下部で結んだ。管の上部を、ゾル用のリザーバの機能を果たす小さい漏斗の下部に取り付けた。漏斗及び膜をゾルで装填し、その後、20,000グラム/モルの重量平均分子量を有するポリエチレングリコール水溶液中に設置した。この溶液は、1リットルあたり600グラムのポリエチレングリコールを含有し、pHは3.0であった。膜がポリエチレングリコール溶液中に完全に浸るまで、漏斗−膜アセンブリを挿入した。ゾルからの水は、ポリエチレングリコール溶液中に拡散し、固体円柱のゲルが得られるまで、更なるゾルがリザーバから膜に入った。膜が半硬質ゲルで充填された時点で、これをポリエチレングリコール溶液から除去した。乾燥ゲルの大きな断片を作製するために、半密閉式容器内でのゲルの低速乾燥を使用した。強化したゲルを透析袋から除去し、キャップに直径3mmの穴を有する45mLのプラスチック瓶内に設置した。取扱中にゲル保護するために、1枚の丸めたティッシュペーパーをゲルの上下に設置した。容器を、50℃のオーブン内に設置した。7日後、ゲルは、いくつかの大きなひびを形成した。この時点で、瓶のキャップを除去し、2日間乾燥し続けた。ゲルは、数ミリメートルの寸法の塊に分裂した。
【0149】
乾燥ゲルの一部を破砕し、−35、+60メッシュ(500〜250マイクロメートル)にスクリーニングした。次に、空気中で加熱することによって、ゲル顆粒を異なる温度で焼結した。
【0150】
試料を、2℃/分の速度で600℃に加熱し、600℃で30分間保持し、7℃/分の速度で、Tが1000℃(実施例15a)、1050℃(実施例15b)、1100℃(実施例15c)、1150℃(実施例15d)、又は1200℃(実施例15e)である温度Tに加熱し、温度Tで1時間保持し、その後、10℃/分の速度で20℃に冷却することによって焼結した。
【0151】
目視比較のために、入射光で焼結顆粒の顕微鏡写真を得た。顆粒をFESEMによっても試験し、平均グレイン寸法を決定した。1000℃で焼結された材料は、外見上かなり透明であったが、FESEMは、材料が多くの小さい孔を含有したことを示した。平均グレイン寸法は49nmであり、孔はその寸法の半分未満であった。明らかに、孔は十分に小さく、わずかしか光を散乱しないように均一に分散する。焼結温度が1050℃及び1100℃に上昇するにつれて、材料は、外見上濁ったように見え、孔寸法又は平均グレイン寸法(それぞれ、50ナノメートル及び64ナノメートル)のいずれかにおいてわずかしか変化しない。孔が排除されるにつれて、一部の領域がより迅速に明瞭になり(cleared)、かつ異なる密度を有するその領域の有効屈折率の差異は、散乱をもたらし得る。1150℃及び1200℃で焼結された材料は、より大きい平均グレイン寸法(それぞれ、80ナノメートル及び102ナノメートル)を有するが、わずかな孔しか残らず、観察される透明度は高まる。ミクロ構造における変化を図6〜10に示す。より具体的には、図6aは、入射光を用いて50倍に拡大された顆粒を示し、図6bは、1000℃で焼結された実施例15aについて70,000倍に拡大された破面のFESEMを示す。図7aは、入射光を用いて50倍に拡大された顆粒を示し、図7bは、1050℃で焼結された実施例15bについて70,000倍に拡大された破面のFESEMを示す。図8aは、入射光を用いて50倍に拡大された顆粒を示し、図8bは、1100℃で焼結された実施例15cについて70,000倍に拡大された破面のFESEMを示す。図9aは、入射光を用いて50倍に拡大された顆粒を示し、図9bは、1150℃で焼結された実施例15dについて70,000倍に拡大された破面のFESEMを示す。図10aは、入射光を用いて50倍に拡大された顆粒を示し、図10bは、1200℃で焼結された実施例15eについて70,000倍に拡大された破面のFESEMを示す。
【0152】
比較実施例7
3M ESPE(Saint Paul,MN)から「LAVA」(LAVAジルコニアブロック60mm)の商標表記で市販されている部分的に焼結されたジルコニア系材料を、3ユニットLAVAフレーム(3M ESPEから入手)から除去した。潤滑剤として脱イオン水を用いて、円筒形ブロックを、低速ダイヤモンドソーで厚さ2mmのウエハーにダイスカットした。ウエハーを60℃で乾燥させ、次に、焼結した。ウエハーを、7.5℃/分の速度で1500℃に加熱し、1500℃で2時間保持し、その後、10℃/分で20℃に冷却することによって焼結した。
【0153】
1つのウエハーを破砕し、−100、+200メッシュ(150〜75マイクロメートル)にスクリーニングした。平均グレイン寸法を、破面の線切片分析によって決定した。破砕前後の単斜相の割合を、X線回折によって推定した。これを、破砕中に発生した転換の程度の尺度として使用した。データを以下の表5に示す。
【0154】
(実施例16)
実施例13の乾燥したままのゲルの断片、及び実施例13の−35、+60(500〜250マイクロメートル)寸法のゲル顆粒(2.3モルパーセントのY及び3.0モルパーセントのLaを有するジルコニア)の一部を、空気中で加熱することによって焼結した。より具体的には、材料を、2℃/分の速度で600℃に加熱し、600℃で30分間保持し、7℃/分の速度で1200℃に加熱し、1200℃で1時間保持し、その後、10℃/分の速度で20℃に冷却することによって焼結した。
【0155】
焼結前に予め寸法決定されたゲルを用いて、焼結されたままの材料中の単斜相の量を決定した。予め寸法決定されなかった断片を、焼結し、−100、+200メッシュ(150〜75マイクロメートル)にスクリーニングした後に破砕した。
【0156】
X線回折を用いて、焼結されたままの材料中の単斜相の量と、焼結後に破砕した材料の量とを比較した。差異を、破砕中に発生した転換の程度の尺度として使用した。データを以下の表4に示す。
【0157】
(実施例17〜18)
1.0モルパーセントのLa及び1.9モルパーセントのY(実施例17)、又は1.0モルパーセントのLa及び1.7モルパーセントのY(実施例18)を含有するジルコニア系ゾルを、実施例7及び実施例8で説明されるように調製した。
【0158】
ゾルを浸透によって固体に濃縮した。ゾルを、膜(Spectra/Por1、製品番号132655、MWCO 6000−8000、Spectrum Laboratories Inc.(Rancho Dominguez,CA))内に包含した。膜管を下部で結んだ。管の上部を、ゾル用のリザーバの機能を果たす小さい漏斗の下部に取り付けた。漏斗及び膜をゾルで装填し、その後、20,000グラム/モルの重量平均分子量を有するポリエチレングリコール水溶液中に設置した。この溶液は、1リットルあたり300グラムのポリエチレングリコールを含有し、pHは3.0であった。膜がポリエチレングリコール溶液中に完全に浸るまで、漏斗−膜アセンブリを挿入した。ゾルからの水がポリマー溶液中に拡散するにつれて、固体円柱のゲルが得られるまで更なるゾルがリザーバから膜に入った。膜が半硬質ゲルで充填された時点で、これをポリエチレングリコール溶液から除去した。ゲルを50℃のオーブン内で乾燥させた。乾燥中、ゲルにひびが入り、数mmの寸法の断片に分裂した。
【0159】
乾燥ゲルの一部を破砕し、−35、+60メッシュ(500〜250マイクロメートル)の寸法にスクリーニングした。乾燥させたままのゲルの断片、及び−35、+60メッシュ(500〜250マイクロメートル)寸法のゲルの一部を、空気中で2℃/分の速度で1200℃に加熱し、1200℃で1時間保持し、その後、10℃/分の速度で20℃に冷却することによって焼結した。
【0160】
焼結前に予め寸法決定されたゲルを用いて、焼結されたままの材料中の単斜相の量を決定した。予め寸法決定されなかった断片を、焼結し、−100、+200メッシュ(150〜75マイクロメートル)にスクリーニングした後に破砕した。
【0161】
X線回折を用いて、焼結されたままの材料中の単斜相の量と、焼結後に破砕した材料の量とを比較した。差異を、破砕中に発生した転換の程度の尺度として使用した。データを以下の表5に示す。
【0162】
【表5】

【0163】
含量の増加に伴って転換の量及びグレイン寸法の両方とも減少した。Yの最適なレベルは、用途に依存し得る。小さいグレインに依存するより高い半透明性が、より高いY含量を示唆する一方で、改善された強度は、Yのより低いレベルを必要とするであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルコニア系セラミック材料を含む焼結体であって、
前記ジルコニア系セラミック材料中の無機酸化物の全モルに基づいて、92.5〜98.0モルパーセントの範囲の量の酸化ジルコニウムと、
前記ジルコニア系セラミック材料中の無機酸化物の全モルに基づいて、1.5〜2.5モルパーセントの範囲の量の酸化イットリウムと、
前記ジルコニア系セラミック材料中の無機酸化物の全モルに基づいて、0.5〜5.0モルパーセントの範囲の量の酸化ランタンと、
を含み、前記ジルコニア系セラミック材料が、200ナノメートル以下の平均グレイン寸法を有する、焼結体。
【請求項2】
前記焼結体が、理論密度の少なくとも99パーセントの密度を有する、請求項1に記載の焼結体。
【請求項3】
前記焼結体が、理論密度の少なくとも99.5パーセントの密度を有する、請求項1に記載の焼結体。
【請求項4】
前記焼結体が、理論密度の少なくとも99.9パーセントの密度を有する、請求項1に記載の焼結体。
【請求項5】
前記平均グレイン寸法が、100ナノメートル以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の焼結体。
【請求項6】
前記ジルコニア系セラミック材料の少なくとも70パーセントが、立方/正方結晶構造を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の焼結体。
【請求項7】
前記ジルコニア系セラミック材料の少なくとも80パーセントが、立方/正方結晶構造を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の焼結体。
【請求項8】
前記焼結体が、100ナノメートルを超えない平均孔寸法を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の焼結体。
【請求項9】
前記焼結体が、50ナノメートルを超えない平均孔寸法を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の焼結体。
【請求項10】
前記ジルコニア系セラミック材料が、94.7〜97.1モルパーセントの酸化ジルコニウムと、1.9〜2.3モルパーセントの酸化イットリウムと、1.0〜3.0モルパーセントの酸化ランタンと、を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の焼結体。
【請求項11】
ジルコニア系セラミック材料を含む焼結体を作製する方法であって、
結晶性であり、かつ100ナノメートルを超えない平均粒子寸法を有するジルコニア系粒子を含むジルコニア系ゾルを提供する工程であって、前記ジルコニア系粒子が、
a)前記ジルコニア系粒子中の無機酸化物の全モルに基づいて、少なくとも92.5モルパーセントの酸化ジルコニウムと、
b)前記ジルコニア系粒子中の無機酸化物の全モルに基づいて、少なくとも1.5モルパーセントの酸化イットリウムと、
c)前記ジルコニア系粒子中の無機酸化物の全モルに基づいて、少なくとも0.5モルパーセントの酸化ランタンと、を含む、工程と、
前記ジルコニア系ゾルからジルコニア系成形体を形成する工程であって、
前記成形体が、前記成形体の総体積に基づいて、少なくとも25体積パーセントの無機酸化物を含む、工程と、
前記ジルコニア系粒子を焼結し、前記ジルコニア系セラミック材料を形成するために、前記ジルコニア系成形体を加熱する工程と、を含み、前記ジルコニア系セラミック材料が、200ナノメートルを超えない平均グレイン寸法を有する、方法。
【請求項12】
前記ジルコニア系成形体を形成する工程が、浸透鋳造工程を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記成形体から部分的焼結体を調製する工程であって、前記部分的焼結体が、25〜75体積パーセントの無機酸化物と、25〜75体積パーセントのボイドと、を含む、工程と、
75体積パーセントを超える無機酸化物と、25体積パーセント未満のボイドと、を含む前記焼結体を形成するために、前記部分的焼結体を加熱する工程を含む、焼結する工程と、を更に含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記ジルコニア系ゾルが、100ナノメートルを超えない平均粒子寸法を有するジルコニア系粒子を含む、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ジルコニア系粒子の少なくとも70パーセントが、立方/正方結晶構造を有する、請求項11〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
部分的焼結体であって、結晶性であり、100ナノメートルを超えない平均一次粒子寸法を有し、かつ
a)前記ジルコニア系粒子中の無機酸化物の全モルに基づいて、少なくとも92.5モルパーセントの酸化ジルコニウムと、
b)前記ジルコニア系粒子中の無機酸化物の全モルに基づいて、少なくとも0.5モルパーセントの酸化ランタンと、
c)前記ジルコニア系粒子中の無機酸化物の全モルに基づいて、少なくとも1.5モルパーセントの酸化イットリウムと、
を含む、ジルコニア系粒子を部分的に焼結することによって形成される生成物を含み、前記部分的焼結体が、前記部分的焼結体の総体積に基づいて、25〜75体積パーセントの無機酸化物と、25〜75体積パーセントのボイドと、を含む、部分的焼結体。
【請求項17】
前記部分的焼結体が、0〜5体積パーセント未満の有機材料、水、又はそれらの組み合わせを含む、請求項16に記載の部分的焼結体。
【請求項18】
前記部分的焼結体が、40〜70体積パーセントの無機酸化物と、30〜60体積パーセントのボイドと、を含む、請求項16又は17に記載の部分的焼結体。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10a】
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【図10b】
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【図11】
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【公表番号】特表2013−515671(P2013−515671A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547137(P2012−547137)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/061489
【国際公開番号】WO2011/082022
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】