説明

イヌインターロイキン12による抗腫瘍効果評価方法。

【課題】 犬腫瘍の治療薬に有効であると考えられるイヌIL12の投与による抗腫瘍効果を腫瘍塊の増減以外の方法、すなわち分子生物学的な方法で評価する方法を提供することが課題である。
【解決手段】イヌインターロイキン12を投与された腫瘍罹患犬から採血し、その中から白血球を分離し、さらにサイトカイン遺伝子を抽出してイヌインターフェロン−γ遺伝子やイヌインターロイキン10遺伝子の発現変動を検討することにより、抗腫瘍効果を評価する。具体的にはイヌインターフェロン−γの発現が見られるときは抗腫瘍効果が高く、逆にイヌインターロイキン10の発現が見られるときは抗腫瘍効果が低いと判断して抗腫瘍効果を判断する。
【選択図なし】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、犬抗腫瘍効果を評価する方法およびその評価キットに関する。さらに詳しくはイヌインターロイキン12を投与された犬から採取した犬血液中の白血球のサイトカイン遺伝子の発現変動を測定することによりその抗腫瘍効果を評価する方法および評価キットに関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン(IL)12は、LAK細胞、NK細胞やT細胞を直接刺激して、それらの細胞からのサイトカイン放出を促し、またNK細胞やCTLの細胞傷害活性を増強する。また、T細胞を刺激・誘導し細胞性免疫を増強する。
【0003】
遺伝子操作技術の進歩によりヒトのIL12のみならず、ウシ、ウマ、ネコ、イヌなどの動物のIL12についてもその遺伝子が次々にクローニングされ、その結果、ウイルス病や腫瘍などの治療薬としての用途開発研究が行われているものもある(非特許文献1,2,3,4)。イヌIL12は、犬の腫瘍に対して効果が期待されるものの、その抗腫瘍効果を評価する手段として、腫瘍塊の大きさの変動はもちろんであるが、明確な指標については報告がなく、抗腫瘍効果の有無の評価方法の確立が必要である。
【非特許文献1】ボルフ(Wolf)ら:ジャーナル オブ イムノロジー(J.Immunol).146,3074−3081(1991).
【非特許文献2】シェンハウト(Shoenhaut)ら:ジャーナル オブ イムノロジー(J.Immunol).148,3433−3440(1992).
【非特許文献3】ナスタラ(Nastala)ら:ジャーナル オブ イムノロジー(J.Immunol).153,1697−1706(1994).
【非特許文献4】ガブラー(Gubler)ら:ジーン(Gene) 25,236−269(1983).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
犬には、乳腺腫瘍など多数の腫瘍が知られている。外科手術による腫瘍病変部位の除去が第一選択となってはいるものの、飼い主の中には必ずしも手術を望まず、また医薬品による延命を望む場合が多い。こういった要望に対しては、ヒト用抗癌剤を使用する場合が多いが、副作用の面から使用頻度は低い。こういった現状に対して、犬用の抗腫瘍薬が希求される。そこで、これらの治療薬として、イヌIL12の投与が有効であると考えられる。しかし、腫瘍の種類によっては非奏功性の場合があり、その場合はいくら投薬しても効果は期待できないため、抗腫瘍効果を投与初期、投与中に評価する方法として、腫瘍塊の増減以外により分子生物学的アプローチを用いた評価法により明確にすることができれば、投薬初期に予め効果が期待できるか判定が可能になり、犬への投薬による負担軽減が期待できる。また抗腫瘍効果の確実性が向上することにより、イヌインターロイキン12の動物用医薬品としての開発の途が開かれるととともに抗腫瘍効果評価キットの開発が期待される。従って本発明は、犬用の抗腫瘍薬として有望なイヌインターロイキン12による抗腫瘍効果を評価する方法の確立および評価キットの開発を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者はかかる状況に鑑み、イヌインターロイキン12を腫瘍罹患犬に投与し、採血後、白血球を分離し、さらに遺伝子を抽出しサイトカインであるイヌインターフェロン−γやイヌインターロイキン10の発現変動を検討することにより、抗腫瘍効果とそれら遺伝子の発現との間に相関がり、イヌインターフェロン−γの発現上昇およびイヌインターロイキン10の発現減少の場合は、イヌインターロイキン12の抗腫瘍効果は高く、逆にイヌインターフェロン−γの発現減少およびイヌインターロイキン10の発現上昇の場合はイヌインターロイキン12の抗腫瘍効果は低い可能性があることを見出した。また、投薬後数週のこれら遺伝子の発現パターンを検討することにより、イヌインターロイキン12の腫瘍に対する奏功・非奏功の判定が可能になり、かくして本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち本発明は、下記の構成を有する。
【0007】
(1)犬血液中白血球のサイトカイン遺伝子の発現変動を測定することを特徴とする、イヌインターロイキン12による犬抗腫瘍効果を評価する方法。
【0008】
(2)サイトカインが、イヌインターフェロンγおよび/またはイヌインターロイキン10であり、イヌインターフェロンγ遺伝子の発現が見られる時イヌインターロイキン12による抗腫瘍効果があると判断し、イヌインタロイキン10遺伝子の発現が見られる時イヌインターロイキン12による抗腫瘍効果がないと判断することを特徴とする上記(1)記載のイヌインターロイキン12による犬抗腫瘍効果を評価する方法。
【0009】
(3)イヌインターロイキン12を投与した犬から採取した犬白血球のサイトカイン遺伝子の発現変動を測定し、イヌインターロイキン12による犬抗腫瘍効果を評価する評価用キット。
【0010】
(4)サイトカインがイヌインターフェロンγおよびイヌインターロイキン10であることを特徴とする上記3記載のイヌインターロイキン12による犬抗腫瘍効果を評価する評価キット。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、イヌIL12を投与した犬血液中の白血球から遺伝子を抽出し、サイトカインであるイヌインターフェロン−γやイヌインターロイキン10の発現変動を検討することにより、イヌIL12の抗腫瘍効果を評価することができる。また、投与初期にこれら遺伝子の発現を評価することにより、効果的な治療の提供が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に関し詳細に説明する。
【0013】
1.サイトカインについて
サイトカインは免疫反応や感染時の応答、造血、ウイルス感染や腫瘍細胞の障害に重要な役割を果たしている細胞間シグナル伝達物質である。サイトカインは造血幹細胞からの構成的造血だけでなく、炎症時等の誘導的造血にも関与している。それらは、活性化T細胞やマクロファージ、B細胞、肥満細胞、血管内皮細胞などあらゆる細胞から産生されている。蛋白質または糖蛋白質で、免疫系サイトカインには、インターロイキン類、インターフェロンなどが挙げられる。この中でインターロイキンとは、リンパ球間でシグナルを伝えあうサイトカインに付けられた名称である。
【0014】
2.Th1およびTh2について
白血球の1種であるリンパ球には、様々な種類がありその中でもヘルパーT細胞は抗原提示細胞上の抗原を認識し、活性化され、様々なヘルパーファクターを産生する。これらのヘルパーファクターにより、エフェクターT細胞やB細胞が刺激を受け、分化・成熟をする。モスマン(Mosmann)とコフマン(Coffman)により、ヘルパーT細胞はIL2を分泌するがIL4を分泌しないもの、逆にIL2を分泌しないがIL4を分泌するものに分類し、前者はTh1,後者はTh2と呼ばれる。すなわち、1種類のヘルパーT細胞がエフェクターT細胞およびB細胞の両方を活性化しているわけではなく、主にTh1がエフェクターT細胞を、Th2がB細胞に作用するサイトカインを分泌する。Th1由来のサイトカインとしては、前述のIL2、IFN-γ、TNF-α、IL3などであり、Th2由来のサイトカインとしてはIL4,IL5,IL6,IL10などが挙げられる。
【0015】
3.イヌインターロイキン(IL)12について
イヌIL12は、ヒトIL12同様分子量約40kDタンパク質(以下P40と略記する)と約35kDタンパク質(以下P35と略記する)とのヘテロダイマーよりなり、ナチュラルキラー細胞および1型ヘルパーT細胞を活性化するなどの生理活性作用を有するサイトカインである。
【0016】
4.インターフェロン(IFN)−γについて
IFN-γは、ConAやPHA等のマイトジェンやIL12によりT細胞あるいはNK細胞から産生誘導されることが知られている。その生物活性は、抗ウイルスタンパク質合成誘導による抗ウイルス作用以外に、NK細胞に作用しキラー活性を増強したり、マクロファージのIL-1やTNFの産生を増強し、貪食作用を増強する。さらに、好中球の活性化に関与し、遅延型過敏症反応を抑制する。また、B細胞の抗体産生には一般に抑制的に作用することが知られている。T細胞に対しては、キラーT細胞の誘導を促進し、IL2やIL2レセプターの発現増強を行うことが知られているサイトカインである。また、モスマン(Mosmann)らの提唱したTh1/Th2仮説では、Th1はTh2の増殖・活性を抑制すると考えられ、Th1から産生されるIFN-γは、Th2の増殖を抑制し、Th2の産生するサイトカインの作用を抑制する。
【0017】
5.インターロイキン(IL)10について
IL10は、ヘルパーT細胞のTh0とTh2サブセットにより産生され
また単核球やマクロファージも産生することが知られている。生物活性は、アクセサリー細胞依存性のTh1からのほとんどのサイトカイン産生およびTh1細胞株の増殖を抑制するものの、Th2からのサイトカイン産生は抑制しない。例えば、IL10によりTh1からのIFN-γ産生抑制は約90%であると言われている。また、種々の検討からTh1細胞のサイトカイン産生を刺激するマクロファージの作用を抑制するが、B細胞の作用には影響を及ぼさないことが知られている。すなわち、IL10は抗原提示細胞の存在下でのみその阻害作用を現すため、直接抗原提示細胞に作用していることが示唆されるサイトカインである。
【0018】
6.イヌインターロイキン12の製法
イヌIL12蛋白質の2つのサブユニットをそれぞれコードするDNAを組込んだプラスミドは例えば次のようにして製造することができる。すなわち、イヌの細胞からポリ(A)RNAを抽出した後、cDNAを合成し、ウシやヒトのIL12の2つのサブユニットをそれぞれコードする遺伝子配列を元にしたプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応(以下PCRと略す)を行うことによってイヌIL12活性を示す2つのサブユニットをそれぞれコードする2つの遺伝子をクローニングすることができる。また、合成したcDNA組換え体よりファージライブラリーを作製し、PCRによって得られた2つの遺伝子断片とプラークハイブリダイゼーションを行うことにより、イヌIL12P40cDNAとイヌIL12P35cDNAの全長をクローニングすることができる。
【0019】
イヌの臟器や細胞、例えばマイトージェンなどで刺激されたイヌ単核球やリンパ球などよりRNAを得る方法としては、通常の方法、例えば、ポリソームの分離、ショ糖密度勾配遠心や電気泳動を利用した方法などがあげられる。上記イヌ臟器やイヌ細胞よりRNAを抽出する方法としては、グアニジン・チオシアネート処理後CsCl密度勾配遠心を行うグアニジン・チオシアネート−塩化セシウム法(文献12)バナジウム複合体を用いてリボヌクレアーゼインヒビター存在下に界面活性剤で処理したのちフェノール抽出を行う方法(文献13),グアニジン・チオシアネート−ホット・フェノール法、グアニジン・チオシアネート−グアニジン塩酸法、グアニジン・チオシアネート−フェノール・クロロホルム法、グアニジン・チオシアネートで処理したのち塩化リチウムで処理してRNAを沈殿させる方法などの中から適当な方法を選んで行うことができる。イヌ臟器やマイトージェンなどで刺激されたイヌ単核球やリンパ球より通常の方法、例えば、塩化リチウム/尿素法、グアニジン・イソチオシアネート法、オリゴdTセルロースカラム法等によりmRNAを単離し、得られたmRNAから通常の方法、例えば、ガブラー(Gubler)らの方法(文献14),H.Okayamaらの方法(文献15)等によりcDNAを合成する。得られたmRNAからcDNAを合成するには、基本的にはトリ骨芽球ウイルス(AMV)などの逆転写酵素などを用いるほか1部プライマーを用いてDNAポリメラーゼなどを用いる方法を組み合わせてよいが、市販の合成あるいはクローニング用キットを用いるのが便利である。
【0020】
このcDNAを鋳型としてヒト、マウスおよびウシの塩基配列を基にしたプライマーを用いてPCRを行うことによってイヌIL12活性を示すP40サブユニットおよびP35サブユニットをコードする遺伝子をクローニングすることができる。また、合成したcDNAをλファージベクターに連結した後、インビトロでλファージのコート蛋白質などと混合することによりパッケージングし、その生成されたファージ粒子を大腸菌などの宿主に感染させる。この際、λファージの感染した大腸菌は溶菌し、1個1個のクローンがプラークとして回収される。このプラークをニトロセルロースなどのフィルターに移し、放射標識したPCRで得た遺伝子をプローブとしたハイブリダイゼーションにより、イヌIL12P40cDNAおよびイヌIL12P35cDNAの全長をクローニングすることができる。
【0021】
宿主としては原核生物又は真核生物を用いることができる。原核生物としては細菌、特に大腸菌(Escherichia coli),バチルス属(Bacillus)細菌、例えばバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)等を用いることができる。真核生物としては酵母、例えばサッカロミセス(Saccharomyces)属酵母、例えばサッカロミセス・セレビシエー(Saccharomyces serevisiae)等の真核性微生物、昆虫細胞、例えば、ヨトウガ細胞(Spodoptera frugiperda)、キャベツルーパー細胞(Trichoplusiani)、カイコ細胞(Bombyx mori)、動物細胞、例えばヒト細胞、サル細胞、マウス細胞等を使用することができる。本発明においてはさらに、生物体それ自体、例えば昆虫、例えばカイコ、キャベツルーパー等を用いることもできる。
【0022】
発現ベクターとしては、プラスミド、ファージ、ファージミド、ウイルス(バキュロ(昆虫)、ワクチニア(動物細胞))等が使用できる。発現ベクター中のプロモーターは宿主細菌に依存して選択され、例えば細菌用プロモーターとしてはlacプロモーター、trpプロモーター等が使用され、酵母用プロモーターとしては、例えばadh1プロモーター、pqkプロモーター等が使用される。また、昆虫用プロモーターとしてはバキュロウイルスポリヘドリンプロモーター、p10プロモーター等、動物細胞としてはSimian Virus40のearlyまたはlateプロモーター等があげられるが、これらに限定されない。 発現ベクターによる宿主の形質転換は、当業界においてよく知られている常法により行うことができ、これらの方法は例えば、カレント プロトコール イン モレキュラー バイオロジー(Current Protocols in Molecular Biology),ジョン ウイリー アンド サンズ(John Wiley & Sons)社、に記載されている。形質転換体の培養も常法に従って行うことができる。
【0023】
産生されたイヌIL12は,非還元下、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により決定すると、見かけの分子量が約70〜80kDである。
【0024】
SDS−PAGEでは、70〜80kDのバンドが、還元条件下では分子量約40kDと約35kDの2つのサブユニットを生じる。
【0025】
7.イヌインターロイキン12の精製法
イヌIL12は、以下の実施例2で示すように、in vitroで、イヌ白血球からのインターフェロンγ(以下IFNγと略記する)の誘導能およびフィトヘムアグルチニン(以下PHAと略記する)で刺激されたイヌリンパ球の増殖促進効果により主に特性化される。その他、NK細胞や細胞障害性T細胞を活性化してそれらの標的細胞、例えば腫瘍由来のセルラインまたはウイルス感染した線維芽細胞を融解する活性を有する。
【0026】
本発明においてイヌインターロイキン12の精製には、カラムクロマトグラフィーによる方法を選択することが望ましい。カラムクロマトグラフィーでは、全ての工程で水溶液で展開可能であるため、インターロイキン12のような固有の生物活性を有するタンパク質の精製に使用できる。カラムクロマトグラフィーで使用されるカラム担体として、イオン交換担体、色素担体などが挙げられる。
【0027】
まず、上記イオン交換担体としては、アガロース、セルロース、合成ポリマーゲルなどに、例えばジエチルアミノエチル(Diethylaminoethyl)、クオテナリアミノエチル(Quaternary aminoethyl)、クオテナリアンモニウム(Quaternary ammonium)、カルボキシメチル(Carboxymethyl)、スルホプロピル(Sulphopropyl)、メチルスルホネ−ト(Methyl sulphonate)などの官能基を導入したものが挙げられる。好ましくはスルホプロピルが導入された、SP セファロースハイパフォーマンス(アマシャム社製)やSP セファロースファーストフロー(アマシャム社製)など(以下、SPセファロース担体と略記する)が用いられる。SPセファロース担体からの溶出は、溶出剤のpH値、イオン強度などによって決定される。P40とP35の組合せから成るタンパク質はそれぞれ異なった電荷を有しており、それぞれの電荷の差により、本担体を用いて、それぞれを分画することができる。例えば、昆虫細胞中で生産させたイヌIL12およびイヌP40ホモダイマーの場合、pH値7以下で、それぞれを分画することができる。
【0028】
さらに、色素担体としては、ブルー色素を結合させた担体(以下、ブルー担体と略記する)が好ましく用いられる。ブルー担体としては次のものが使用される。ブルー色素は一般名をCIリアクティブブルー2といい、例えばCIBA−GEIGY社からジバクロンブルーF3GA、またはジバクロンブルー3GAという商品名で市販されている青色色素などが挙げられる。実際のクロマトグラフィーに使用する担体としては、ブルーセファロースCL−6B(アマシャム社製)、ブルーセファロース6ファーストフロー(アマシャム社製)、ブルーセファロース6ハイパフォーマンス(アマシャム社製)、マトレックスゲルブルーA(アミコン社製)、アフィゲルブルー(バイオラット社製)などの商品名で市販されているブルーアガロースゲル、またはブルートリスアクリルーM(LKB社製)ブルーセルロファイン(チッソ社製)などの商品名で市販されているブルーセファロースゲルなどが適当であり、容易に入手することができる。ブルー担体からの溶出は、溶出剤のpH値、イオン強度、疎水度などによって決定される。例えば、イヌIL12およびイヌP40ホモダイマーの場合、中性付近のpHで、それぞれを分離溶出して、高純度で精製することができる。
【0029】
上記したカラム担体を用いた精製操作はそれぞれ単独で行ってもイヌIL12およびイヌP40ホモダイマーの高純度化が可能であるが、好ましくはそれぞれを組合わせて行った方がより効果が高い。例えば、カイコ生体中で生産したイヌIL12およびイヌP40ホモダイマーを含む溶液中には、非常に多くのカイコ由来の夾雑物と複数のイヌP40とイヌP35の組合わせが含まれるので、上記2つのカラム担体を組合わせることが好ましい。昆虫細胞中およびカイコ生体中で生産させたイヌIL12およびイヌP40ホモダイマーの製造においては、初段精製にスルホプロピル担体を、2段目精製にブルー担体を用いることが好ましい。
【0030】
なお、各カラム担体を用いた精製操作における、溶出剤の組成、液量などは特に限定されるものではなく、最適な分離条件は存在する夾雑タンパク質、イヌIL12およびイヌP40ホモダイマーの量、およびカラムの寸法などに応じて適宜決定される。
【0031】
また、IL12およびP40ホモダイマーをそれぞれ同時に大量に製造するために、P40をコードする遺伝子をより発現性が高いプロモーター下に接続し、P35をコードする遺伝子をそれより発現性が低いプロモーター下に接続し、これらを同時に含む組換え体を作製し、それぞれの遺伝子を発現させることで、IL12とP40ホモダイマーを、同時に生産することができる。例えば、バキュロウイルス発現系において、ポリヘドリンプロモーターとP10プロモーターの両方を含むベクターのポリヘドリンプロモーター下にイヌP40をコードする遺伝子を、P10プロモーター下にイヌP35をコードする遺伝子をそれぞれ連結し、組換えウイルスを作製して、昆虫細胞で発現させることによって、イヌIL12およびイヌP40ホモダイマーの両方を同時に大量に製造することができる。
【0032】
8.イヌインターロイキン12の製剤化法
インターロイキン12の製剤化は、イヌIL12及び種々の安定化剤を添加しても良い。有用タンパク質の安定化方法として知られているのは、他のタンパク質、例えばゼラチン、血清、アルブミン、コラーゲンなどと混合する方法(文献2〜5)、糖類、特に単糖類、二糖類およびデキストランやヒドロキシエチルデンプンのような多糖類と混合する方法(文献6〜9)、あるいはサイクロデキストリンや多糖類アルコールを安定化剤とする方法がある(文献10,11)。本発明の製造法で製造されるイヌIL12以外に安定化剤を添加することで、さらに長期間の安定化効果が期待できる。添加される安定化剤としては特に限定はない。本薬に添加される成分は、主として、本薬が投与される方式に依存して決定される。本薬が固体として用いられる場合は、例えばラクトース等の充填剤、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン等の結合剤、着色剤、コーティング剤等を用いることができ、このような剤は経口投与に好適である。また、担体または賦活剤として例えば、白色ワセリン、セルロース誘導体、界面活性剤、ポリエチレングリコール、シリコーン、オリーブ油等を加えてクリーム、乳液、ローション等の形態として外用薬として患部に塗布して用いることもできる。また、本薬が液体として投与される場合は、通常行われている生理学的に許容される溶媒、および乳化剤、安定剤を含むことができる。溶媒としては水、PBS、等張性生理食塩水等が挙げられ、乳化剤としては、ポリオキシエチレン系界面活性剤、脂肪酸系界面活性剤、シリコーン等が例示でき、安定剤としては、イヌ血清アルブミン、ゼラチン等のポリオール、またはソルビトール、トレハロースなどの糖類等が挙げられる。本発明の治療薬および予防薬の投与方法に特に限定はないが、注射投与することにより最も治療効果が期待できる。注射投与方法としては静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、腹腔内投与、胸腔内投与いずれの方法にも限定されない。
【0033】
9.対象疾患となる犬腫瘍について
犬の腫瘍としては、乳腺腫瘍、好酸球性肉芽腫、類表皮腫、皮膚腫瘍、脂肪腫、耳血腫、肺水腫、皮膚有茎軟腫または肛門腫瘍が挙げられる。
【0034】
10.犬へのイヌIL12の投与方法について
投与量は、個体の大きさ、投与方法、疾病の種類、症状などに依存して決定されるであろうが、治療効果および予防効果を示すのに十分な量を投与すればよく、例えば、1用量、1日当たり、0.1pgから100μg/kgのイヌIL12の投与で十分な効果が得られる。
【0035】
また、養子免疫療法では1ー100mlのイヌの血液から分離したリンパ球に対し、0.001pgから1μgのイヌIL12で12時間から6日間刺激した後に再び体内に戻すことによって十分な効果が得られる。
【0036】
11.犬血液からの白血球の調製
犬血液中からの白血球調製は、まず血液凝固を防止するために採血直後に抗凝固剤を添加する。抗凝固剤としては、ヘパリン、エチレンジアミンテトラアセテートが使用される。得られた血液から細胞群を調製するには、主に比重遠心法が用いられる。すなわち、赤血球や顆粒球の比重よりも小さく、リンパ球や単球よりも大きい溶液に血液を重層し、遠心操作により細胞群を分画する方法である。分離液としてはフィコール−イソパック液が使用される。遠心操作後には、希釈血漿分画と分離液の間に目的となる白血球であるリンパ球と単球の分画が見られるので、この分画を分取する。さらにリンパ球のみを分離するためには、主にペトリ皿付着法が用いられる。その後得られたリンパ球分画は、ナイロンウールカラムを使用することによりT細胞のみを分離・濃縮することができる。本方法は、細胞群に激しい操作を加えることなく、雑多な細胞集団より比較的純粋なT細胞群が回収できる利点がある。
【0037】
12.白血球からの遺伝子調製
白血球からの遺伝子の調製は例えば次のようにして実施することができる。上記11で調製したT細胞群からポリ(A)RNAを抽出した後、cDNAを合成し、それぞれのサブユニットをコードする遺伝子配列を元にしたプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応(以下PCRと略す)を行うことによって可能である。イヌT細胞などによりRNAを得る方法としては、通常の方法、例えば、ポリソームの分離、ショ糖密度勾配遠心や電気泳動を利用した方法などがあげられる。上記イヌ細胞よりRNAを抽出する方法としては、グアニジ・チオシアネート処理後CsCl密度勾配遠心を行うグアニジン・チオシアネート−塩化セシウム法(文献13)バナジウム複合体を用いてリボヌクレアーゼインヒビター存在下に界面活性剤で処理したのちフェノール抽出を行う方法、グアニジン・チオシアネート−ホット・フェノール法、グアニジン・チオシアネート−グアニジン塩酸法、グアニジン・チオシアネート−フェノール・クロロホルム法、グアニジン・チオシアネートで処理したのち塩化リチウムで処理してRNAを沈殿させる方法などの中から適当な方法を選んで行うことができる。さらに、通常の方法、例えば塩化リチウム/尿素法、グアニジン・イソチオシアネート法、オリゴdTセルロース法などによりmRNAを単離し、得られたmRNAから通常の方法、例えば Gublerらの方法(文献14)、H.Okayamaらの方法(文献15)などによりcDNAを合成する。得られたmRNAからcDNAを合成するには基本的にはトリ骨芽球ウイルス(AMV)などの逆転写酵素などを用いるほか1部プライマーを用いてDNAポリメラーゼなどを用いる方法を組み合わせてよいが、市販の合成あるいはクローニング用キットを用いるのが便利である。このcDNAを鋳型としてインターフェロン−γやインターロイキン10をコードする遺伝子の塩基配列を基にしたプライマーを用いてPCRを行うことによってインターフェロン−γやインターロイキン10をコードするDNAを得ることができる。
【0038】
13.犬抗腫瘍効果評価方法
イヌインターロイキン12による犬抗腫瘍効果を評価する方法としては、犬血液中白血球のサイトカイン遺伝子の発現変動を測定する方法であり、サイトカインとしては、イヌインターフェロンγおよびイヌインターロイキン10である。判定は、イヌインターフェロンγの発現が見られる時イヌインターロイキン12による抗腫瘍効果があると判断し、イヌインターロイキン10の発現が見られる時イヌインターロイキン12による抗腫瘍効果がないと判断することにより行うことができる。
【0039】
イヌインターロイキン12を腫瘍罹患犬に投与し、採血後、白血球を分離し、さらに遺伝子を抽出しサイトカインであるイヌインターフェロン−γやイヌインターロイキン10の発現変動を、遺伝子のアガロースゲル電気泳動による検討・評価を行う。投与開始直後からイヌインターフェロン−γの発現および投与期間内での発現上昇および投与開始時のインターロイキン10の未発現または低発現および投与期間内での発現減少の場合は、イヌインターロイキン12の抗腫瘍効果は高く、その逆に投与開始時および投与期間内のイヌインターフェロン−γの発現減少およびイヌインターロイキン10の発現上昇の場合はイヌインターロイキン12の抗腫瘍効果は低いと評価する。また、犬の腫瘍で症例の多い乳腺腫瘍など表出しているものについては、腫瘍の大きさの経時変化を記録し、サイトカイン遺伝子の発現変動と合わせて評価することもできる。
【0040】
14.犬抗腫瘍効果を評価する評価キット
上記反応を含むイヌインターフェロン−γ遺伝子やイヌインターロイキン10遺伝子の発現変動を測定するために用いるキットは、それ自体既知の方法により調製可能である。これらのキットに供する試薬等は、上記方法により得られる被測定サンプルとしてのイヌインターフェロン−γ遺伝子やイヌインターロイキン10遺伝子の他、アガロースゲル電気泳動液、電気泳動装置、UV照射ゲル撮影装置が含まれる。また、任意の要素として分子量マーカー、DNA溶液に電荷を持たせるローディング緩衝液なども含まれる。
【実施例】
【0041】
以下、参考例、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【0042】
参考例1 イヌIL12P40、P35遺伝子のクローニング
(1)イヌcDNAの調製
イヌ肝臓、リポポリサッカライド(LPS)(50μg/ml)で48時間刺激したイヌ末梢血単核球およびニワトリニューカッスル病ウイルスで7時間処理した(10 pfu/ml)イヌ脾臓由来リンパ球よりアイソジェン(ニッポンジーン社製)を用いて総RNAを調製した。得られたRNAを1mM EDTAを含む10mM トリス塩酸緩衝液(pH7.5)(以下TEと略する。)に溶解し、70℃で5分間処理した後、1M LiClを含むTEを同量加えた。0.5M LiClを含むTEで平衡化したオリゴdTセルロースカラムにRNA溶液をアプライし、同緩衝液にて洗浄した。さらに0.3M LiClを含むTEにて洗浄後、0.01% ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む2mM エチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)(pH7.0)で吸着したポリ(A)RNAを溶出した。こうして得られたポリ(A)RNAを用いて一本鎖cDNAを合成した。すなわち、滅菌した0.5mlのミクロ遠心チューブに5μgのポリ(A)RNAと0.5μgのオリゴdTプライマー(12−18mer)を入れ、ジエチルピロカルボネート処理滅菌水を加えて12μlにし、70℃で10分間インキュベートしたのち氷中に1分間つけた。これに200mM トリス塩酸(pH8.4)、500mM KCl溶液を2μl、25mM MgCl を2μl、10mM dNTPを1μlおよび0.1M DTTを2μlそれぞれ加え、42℃で5分間インキュベートしたのち、200ユニットのギブコ(GibcoBRL)社製スーパースクリプトII RTを1μl加え、42℃でさらに50分間インキュベートしてcDNA合成反応を行った。さらに70℃で15分間インキュベートして反応を停止し、氷上に5分間置いた。この反応液に1μlのRNaseH(2units/ml)を加え、37℃で20分間インキュベートした。
【0043】
(2)イヌcDNAファージライブラリーの調製
上記(1)で得られたポリ(A)RNA1μgづつを用い、アマシャム社のタイムセーバーcDNA合成キットにて添付のマニュアルに従い、オリゴdTプライマーを用いて2本鎖cDNAを合成し、さらにEcoRI/NotIアダプターを連結した。これを用いて、アマシャム社のcDNAラピットクローニングモジュール−λgt10にて添付のマニュアルに従い、組換えλgt10ベクターを作製し、さらにアマシャム社のインビトロパッケージングモジュールにて添付のマニュアルに従い、組換え体ファージ作製した。
【0044】
(3)イヌIL12P40遺伝子のクローニング
ヒトIL12P40のN末端およびC末端の塩基配列(文献1)をもとに、配列番号3および4の2種類のプライマーをDNAシンセサイザーにて合成した。上記(1)のイヌ肝臓およびLPS刺激イヌ末梢血より得られたcDNAを別々の0.5mlのミクロ遠心チューブに2μlづつ取り、各プライマーを20pmol,20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)、1.5mM MgCl 、25mM KCl,100μg/ml ゼラチン、50μM各dNTP、4単位 TaqDNAポリメラーゼとなるように各試薬を加え、全量100μlとする。DNAの変性条件を94℃,1分、プライマーのアニーリング条件を55℃、2分、プライマーの伸長条件を72℃、3分の各条件でパーキンエルマーセータス(Perkin−Elmer Cetus)社のDNAサーマルサイクラーを用い、35サイクル反応させた。これを1%アガロースゲルにて電気泳動し、約990bpのDNA断片を常法(文献16)に従って調製した。
【0045】
このDNA断片をT−ベクター(Vector)(ノバジェン社)に宝酒造(株)のDNA ライゲーションキット Ver.2を用いて連結した。これを用いて常法に従い大腸菌を形質転換し、得られた形質転換体よりプラスミドDNAを常法により調製した。次にこのプラスミドにPCR断片が挿入されていることを前述と同じ条件のPCRによって確認し、ジェネシス(Genesis)2000 DNA分析システム(analysis system)(デュポン社製)を用いて、ダイデオキシ法(文献17)でイヌIL12活性を示すと思われる2つのサブユニットのうち一方のP40サブユニットDNAの塩基配列を決定した。この配列を配列番号1に示す。
【0046】
また、この配列を含む、990bpのDNA断片に宝酒造(株)のランダムプライマー DNA ラベリングキットを用いて32Pを標識し、プローブを作製した。上記(2)で得られたイヌ肝臓cDNAから作製した組換え体ファージライブラリーを大腸菌NM514上でプラークとして形成させ、アマシャム社のHybond−N+に常法に従って転写した。
【0047】
Hybond−N+は、5×SSPE(エチレンジアミン四酢酸塩−リン酸ナトリウム−食塩緩衝液)(0.9M NaCl、50mM NaHPO、5mM エチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)pH7.4)、5×デンハルト溶液(0.1%フィコール、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%ウシ血清アルブミン)、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、100μg/mlサケ精子DNA中、65℃で2時間インキュベートし、ついで同じ溶液中で上述のようにして作製した標識プローブ1×10cpm/mlとハイブリダイズした。65℃で1晩インキュベートした後、Hybond−N+を0.2×SSC(クエン酸ナトリウム−食塩緩衝液)(30mM NaCl、3mMクエン酸ナトリウム)、0.1%SDS中15分、3回洗浄し、富士写真フィルム(株)の富士イメージングプレートに12時間露出し、富士写真フィルム(株)のバイオイメージングアナライザーにて解析した。陽性のシグナルを有するプラークは常法に従い、再スクリーニングを行った。3回のスクリーニングの結果、陽性シグナルを有する1個の組換え体ファージを得た。この組換え体ファージより常法に従ってファージDNAを抽出し、制限酵素エコアールIで切断した後、1%アガロースゲル電気泳動にて得られた約1.5kbのDNA断片を常法に従い調製し、宝酒造(株)のDNA ライゲーションキット Ver.2を用いて、宝酒造(株)のpUC118BAP処理DNA(エコアールI/BAP)と連結した。これを用いてプラスミドDNAを常法により調製し、蛍光DNAシーケンサー(パーキンエルマー社製DNAシーケンサー373S)を用い、その添付プロトコールに従って、パーキンエルマー社のダイターミネーターサイクルシーケンシングキットを用いて、得られたDNA断片の塩基配列を決定した。このうち、イヌIL12P40をコードする配列を配列番号11に示す。
【0048】
(4)イヌIL12P35遺伝子のクローニング
ヒトIL12P35のN末端(文献1)およびウシIL12P35のC末端の塩基配列をもとに、配列番号5および6の2種類のプライマ−をDNAシンセサイザーにて合成した。上記(1)の鶏ニューカッスル病ウイルスで処理したイヌ脾臓由来リンパ球より得られたcDNAを鋳型として上記(3)と同様にして約670bpのDNA断片を得、T−Vectorに挿入し、イヌIL12活性を示すと思われる2つのサブユニットのうち一方のP35サブユニットDNAの塩基配列を決定した。この配列を配列番号2に示す。
【0049】
また、この配列を含む670bpのDNA断片を用いて標識プローブを作製した。上記(2)で得られた鶏ニューカッスル病ウイルスで処理したイヌ脾臓由来リンパ球より得られたcDNAから作製した組換え体ファージライブラリーを上記(3)と同様にして標識プローブとハイブリダイズし、スクリーニングを行った。その結果得られた陽性シグナルを有する1個の組換え体ファージよりDNAを抽出し、制限酵素ノットIで切断した後、1%アガロースゲル電気泳動にて得られた約1.2kbのDNA断片をpBluescriptII(ストラタジーン社製)のノット(Not)Iサイトに常法に従い連結した。これを用いてプラスミドDNAを調製し、蛍光DNAシーケンサーを用いて、得られたDNA断片の塩基配列を決定した。このうち、イヌIL12P35をコードする配列を配列番号12に示す。
【0050】
参考例2 イヌIL12の生産
(1)イヌIL12発現ベクターの調製
発現ベクターpCDL−SRα296(文献18)を制限酵素EcoRIで切断し、バクテリア由来アルカリホスファターゼで末端を脱リン酸化した。これを1%アガロースゲル電気泳動にて約3.6kbのDNA断片を常法に従い調製した。一方、CaIL12P40 DNA断片は配列番号7および8の2種類のEcoRI切断部位を付加したプライマーを作製し、参考例1(2)で調製したT−Vectorに挿入したイヌIL12活性を示すと思われる2つのサブユニットのうち一方のP40サブユニットDNAを鋳型として、DNAの変性条件を94℃、1分、プライマーのアニーリング条件を55℃、2分、プライマーの伸長条件を72℃,3分、サイクル数30でPCRを行い、エタノール沈殿後、制限酵素EcoRIで切断し、1%アガロースゲル電気泳動にて約990bpのDNA断片を調製した。また、配列番号13および14の2種類のEcoRI切断部位を付加したプライマーを作製し、参考例1(2)で調製したpUC118に挿入したイヌIL12P40DNAを鋳型として、PCRを行い、EcoRIで切断し、約990bpのDNA断片を調製した。得られたそれぞれのイヌIL12P40DNA断片をT4DNAリガーゼを用いて上述のようにして調製したpCDL−SRα296に連結した。これを用いて大腸菌を形質転換し、得られた形質転換体よりプラスミドDNAを調製し、イヌIL12P40を発現するFOCaIL12P40およびFOCaIL12P40FLを得た。
【0051】
また、pCDL−SRα296を制限酵素PstIで切断し脱リン酸化後、電気泳動にて約3.6kbのDNA断片を調製した。イヌIL12P35 DNA断片は配列番号9、10の2種類のプスト(Pst)I切断部位を付加したプライマーを作製し、参考例1(3)で調製したT−Vectorに挿入したイヌIL12活性を示すと思われる2つのサブユニットのうち一方のP35サブユニットDNAを鋳型として、94℃,1分、55℃,2分、72℃,3分、30サイクルでPCRを行い、エタノール沈殿後、制限酵素PstIで切断した。これを1%アガロースゲル電気泳動にて約670bpのDNA断片を調製した。また、配列番号15、16の2種類のPstI切断部位を付加したプライマーを作製し、参考例1(2)で調製したpUC118に挿入したイヌIL12P35DNAを鋳型として、PCRを行い、PstIで切断し、約670bpのDNA断片を調製した。得られたそれぞれのイヌIL12P35DNA断片をT4DNAリガーゼを用いて上述のように、PstIで切断し調製したpCDL−SRα296に連結、大腸菌形質転換、プラスミドDNA調製を行い、イヌIL12P35を発現するFOCaIL12P35およびFOCaIL12P35FLを得た。
【0052】
さらに、作製したこれら4つの発現プラスミド中のイヌIL12P40DNAおよびイヌIL12P35DNAの塩基配列を確認した。
【0053】
(2)サルCOS細胞でのイヌIL12の生産
上記(1)で得られたそれぞれ5μgのFOCaIL12P40および
FOCaIL12P35を50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)、400μg/mlのDEAEデキストラン(アマシャム社製)および100μMのクロロキン(シグマ社製)を含む4mlのERDF培地(極東製薬(株)社製)に加えておく。一方、直径10cmのディッシュを用いて10%ウシ胎児血清(ギブコ社製、以下FBSと略記する)で50%コンフルエントになるまで増殖させたCOS−1細胞(ATCC CRL−1650)をPBSで一回洗浄した後、上記で得た4mlのDNA混合液を加え、5%CO 、37℃の条件で培養した。4時間後、細胞をPBSで洗浄した後、20mlのERDF培地にて5%CO 、37℃の条件で4日間培養し、イヌIL12が生産された培養上清を得た。
【0054】
(3)イヌIL12産生組換えバキュロウイルスの作製
バキュロウイルストランスファーベクターpAcAB3(ファーミンジェン社製)のプロモーター下流の制限酵素XbaIおよびSmaI切断部位にそれぞれP40およびP35サブユニットcDNAを常法に従って連結し、組換えトランスファーベクターを得た。さらにファーミンジェン社のバキュロウイルストランスフェクションキットを用いてその添付マニュアルに従って、組換えバキュロウイルスを作製した。
【0055】
(4)昆虫細胞でのイヌIL12の生産
上記(3)で得られた組換えバキュロウイルスを、ファーミンジェン社のバキュロゴールドプロテインフリーインセクトメディウムで75cmのフラスコでコンフルエントまで平面培養したSf21細胞(Spondoptera Flugiperda由来、ファーミンジェン社より入手)に感染させ、4日間培養した後、イヌIL12が生産された培養上清を得た。
【0056】
参考例3 イヌIL12の抗腫瘍効果
参考例2(2)、(4)で生産されたイヌIL12の活性測定は以下のようにして行った。イヌリンパ球からのイヌIFNγ誘導活性検定のために、抗ウイルス活性およびイヌ細胞のクラスIIMHC発現増強活性を測定した。イヌ脾臓よりリンパ球を分離し、10%FBS−ERDFに10 cells/mlの細胞密度で懸濁し、このうち2.5mlとゼンザイム(Genzyme)社のヒトIL2を250U、6cmディッシュに添加した。これに上記(2)で得られた培養上清2.5mlとヒトIL2(ゼンザイム社製)250Uを加え、5%CO 、37℃の条件で2日間培養し、ウイルスとして水泡性口内炎ウイルス(Vesicular Stomatitis Virus),感受性細胞としてMDCK(ATCC CCL−34)を用い、文献19のCPE法に従ってこの培養液の抗ウイルス活性を測定した。その結果、2x10 希釈単位/ml以上の抗ウイルス活性が確認された。また、上記(4)で得られた培養上清の抗ウイルス活性を同様にして測定した結果、10希釈単位/ml以上の抗ウイルス活性が検出された。一方、10μgのpCDL−SRα296を上記(2)と同様にCOS−1細胞に導入したコントロールの細胞培養液およびSf21細胞を3日間培養した培養液では抗ウイルス活性は全く認められなかった。
【0057】
また、クラスIIMHCを発現したイヌ乳腺腫瘍組織由来細胞株FCBR1を用いて、上記の各培養液中のクラスIIMHCの発現増強活性を測定した。6cmディッシュに、10個のFCBR1を接着させ、これに上記の各培養液5mlを添加し、5%CO、37℃の各条件で1晩培養した。培養後、トリプシンにて細胞を剥離し、1.5mlのミクロ遠心チューブにて遠心した。これに、ストラタジーン社のラット抗イヌクラスIIMHCモノクローナル抗体を10μl添加し、さらに50μlの10%FBS−ERDFで懸濁し、氷上で1時間静置した。リン酸塩緩衝液(PBS)で洗浄した後、5μlのFITC標識ラビット抗ラットモノクローナル抗体(セロテック社製)および50μlの10%FBS−ERDFで懸濁し、氷上で1時間静置した。PBSで洗浄後、ベクトンディッキンソン(株)のFACScanにて解析した。その結果、COS1およびSf21で産生させたイヌIL12は、FCBR1上のクラスIIMHCの発現量をそれぞれ約20%、60%上昇させた。これらのことから、イヌIL12はイヌリンパ球に作用して、イヌIFNγを誘導する活性を有することが判明した。
【0058】
また、芽球化したイヌリンパ球の増殖促進活性を測定した。イヌ末梢血よりリンパ球を分離し、10%FBS−ERDFに10 cells/mlの細胞密度で懸濁し、このうち5mlを6cmディッシュに添加した。これにPHAを5μg/mlの濃度で添加し、5%CO 、37℃の条件で3日間培養してリンパ球を芽球化させた。この芽球化リンパ球を10%FBS−ERDFに10 cells/mlの細胞密度で懸濁し、96穴マイクロプレート1穴あたり、50μlを添加した。これに上記(2)で得られた培養上清を1穴あたり50μl加えた。また、コントロールとして10%FBS−ERDFのみを1穴あたり50μl加えた。これらをさらに5%CO 、37℃の条件で3日間培養後、文献14のMTTアッセイ法により、イヌIL12の芽球化リンパ球の増殖促進活性を測定した。すなわち、5mg/mlのMTT(シグマ社製)溶液を1穴あたり10μlづつ添加し、さらに6時間培養した。150μlの0.01N塩酸イソプロパノール溶液を加えた後、超音波にて細胞を破砕し、マイクロプレートリーダー(バイオラット社製Model13550)にて波長595nmの吸光度を測定した。その結果、コントロールの吸光度が平均0.69であったのに対し、COS−1で産生したイヌIL12は平均1.52であり、約2倍以上の芽球化リンパ球の増殖促進活性が認められた。
【0059】
さらに、イヌIL12のイヌ腫瘍に対する抗腫瘍作用を検討した。イヌ末梢血よりリンパ球を分離し、10%FBS−ERDFで5x10cells/mlの細胞密度に懸濁し、このうち5mlを6cmディッシュに添加した。これにベーリンガーマンハイム社(株)のリコンビナントヒトIL2を500U添加し、5%CO、37℃の条件で3日間培養した。一方、イヌ腫瘍細胞FCBR1およびA72(ATCC CRL−1542)を10%FBS−ERDFでそれぞれ10cells/mlの細胞密度に懸濁し、96穴プレート1穴あたり50μlづつ添加し、プレートに接着させた。これにヒトIL2で刺激したイヌリンパ球50μlを加え、さらにイヌIL12を発現している上記(2)で得られた培養上清100μlもしくはコントロールとして10%FBS−ERDF100μlを添加し、5%CO、37℃の条件で2日間培養した。培養後、上清を完全に取り除き、MTTアッセイを行った。%細胞障害性を次の式にて算出した。
%細胞障害性=(1−OD2/OD1)x100
【0060】
ここで、OD1=培地のみで培養したイヌ腫瘍細胞の波長595nmの吸光度OD2=イヌリンパ球と共に培養したイヌ腫瘍細胞の波長595nmの吸光度を表す。
【0061】
その結果、FCBR1ではコントロールが34%であったのに対し、COS−1で生産したイヌIL12は約75%の細胞障害性を示した。また、A72ではコントロールが22%であったのに対し、イヌIL12は約83%の細胞障害性を示した。イヌIL12はイヌリンパ球を活性化して、イヌ腫瘍細胞に対して抗腫瘍作用を発揮することが判明した。
【0062】
参考例4 イヌIL12の精製
参考例2(4)で得られた細胞培養上清を用いてスルホプロピル担体によるイヌIL12およびイヌP40ホモダイマーの分画を検討した。精製はpH:7で行った。培養上清を、スルホプロピル担体を充填したカラムにアプライした後、十分量の20mMリン酸緩衝液(pH:7)でカラムを洗浄した。溶出はNaClの濃度を1Mまで5mM刻みで行った。その結果、イヌIL12は、350〜550mMで、イヌP40ホモダイマーは、600〜750mMの各NaCl濃度の溶出画分で検出された(ウエスタンブロッティング)。なおその他の溶出画分およびアルカリ洗浄画分にはイヌIL12およびイヌP40ホモダイマーは検出されなかった。
【0063】
イヌIL12およびイヌP40ホモダイマーが溶出された各画分をさらにブルーセファロース担体を充填したカラムにそれぞれアプライし、十分量の20mMリン酸緩衝液(pH:7)でカラムを洗浄後、NaClの濃度を500mMから2Mまで5mM刻みで溶出を行った。その結果、イヌIL12は1.1〜1.2Mで、イヌP40ホモダイマーは、1.5〜2Mの各NaCl濃度の溶出画分で検出された(ウエスタンブロッティング)。SDS−PAGE解析によると、イヌIL12が溶出されたブルーセファロース担体での各画分中のイヌIL12の純度は98%以上であった。
【0064】
参考例5 精製イヌIL12の検出および生物活性
参考例4で得られた精製イヌIL12のin vitroでの検出および活性測定は以下のようにして行った。まず検出は、参考例2(4)で得られた昆虫細胞の培養上清中のイヌIL12をウエスタンブロッティング法によって検出した。培養上清をアトー(株)のパジェル中、SDS−PAGEに供した。その後、アトー(株)のクリアブロットメンブランに常法に従ってブロッティング後、メンブランを、上記(1)で得られた抗イヌP40ポリクローナル抗体を含むウサギ血清を含むブロックエース(大日本製薬(株)製)溶液に6時間反応させ、0.02%Tween20を含むPBSにて3回洗浄し、さらにペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ウサギIgG(バイオラット(株)製)を含むブロックエース溶液に6時間反応させ、同様に洗浄した後、コニカ(株)のコニカイムノステインHRP1000にて発色を行った。その結果、約75kDのバンドが検出された。さらに、抗イヌP35ポリクローナル抗体を含むウサギ血清を用いて、同様にして、参考例2で得られた昆虫細胞の培養上清を解析した結果、約75kDのバンドのみが検出された。このことから、約75kDのバンドは、イヌP40とP35のヘテロダイマーから成るイヌIL12であることが判明した。精製イヌIL12のイヌリンパ球からのイヌIFNγ誘導活性検定のために、抗ウイルス活性を測定した。イヌ末梢血からリンパ球を分離し、96穴マイクロプレート中、10%FBS−ERDFに10 cells/mlの細胞密度で1穴あたり100μl添加し、各穴にゼンザイム(Genzyme)社のリコンビナントヒトIL2を250μg加え、これに精製イヌIL12(1〜10pg/ml)を加え、5%CO 、37℃の条件で72時間培養した。培養後の各培養上清100μl中の抗ウイルス活性を測定した。ウイルスとしてVesicular Stomatitis Virus,感受性細胞としてFCBR1を用い、文献16のCPE法に従ってこの培養液の抗ウイルス活性を測定した。その結果、精製イヌIL12(1〜10pg/ml)単独添加した培養上清で、2x10〜10 単位/mlの抗ウイルス活性が確認された。
【0065】
参考例6 イヌIL12製剤の製造
参考例4で得られた精製イヌIL12の各溶液(0.01重量%のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60を含む)を透析によって脱塩した溶液に、注射用生理食塩水、注射用低分子ゼラチン(新田ゼラチン(株)製)、ソルビトールを加えて、ゼラチンの終濃度0.5%、ソルビトールの終濃度30%に調製した。さらに、ポジダイン(ポール(株)製)で処理してパイロジェンを除去した後、250℃で2時間乾熱滅菌したガラスバイアルに1mlづつ分注した。その後、無菌的に凍結乾燥することによって、1バイアル中に1pgから5μgのイヌIL12を含むイヌIL12製剤を得た。この製剤は、室温条件下で安定であり、また、蒸留水または生理食塩水によって良好に溶解した。
【0066】
参考例7 イヌIL12製剤の抗腫瘍効果検討
参考例6のイヌIL12製剤の活性測定は、参考例3の場合と同様の方法で以下のようにして行った。イヌリンパ球からのイヌIFNγ誘導活性検定のために、抗ウイルス活性およびイヌ細胞のクラスIIMHC発現増強活性を測定した。イヌ脾臓よりリンパ球を分離し、10%FBS−ERDFに10 cells/mlの細胞密度で懸濁し、このうち2.5mlとゼンザイム(Genzyme)社のヒトIL2を250U、6cmディッシュに添加した。これに参考例6で得られた製剤1mlとヒトIL2(ゼンザイム社製)250Uを加え、5%CO 、37℃の条件で2日間培養し、ウイルスとしてVesicular Stomatitis Virus,感受性細胞としてMDCK(ATCC CCL−34)を用い、文献19のCPE法に従ってこの培養液の抗ウイルス活性を測定した。その結果、2x10 希釈単位/ml以上の抗ウイルス活性が確認された。また、抗ウイルス活性を同様にして測定した結果、10希釈単位/ml以上の抗ウイルス活性が検出された。一方、イヌIL12を含まない製剤(コントロール)では抗ウイルス活性は全く認められなかった。
【0067】
実施例1 イヌIL12の腫瘍罹患犬への投与
(1)イヌIL12の投与方法
腫瘍罹患犬としては、乳腺腫瘍を始めとして、線維肉腫、皮膚リンパ腫、メラノーマなど19症例に投与した。イヌIL12の投与に先だって一般血液学的検査のため採血及び体重、体温等の測定も行った。次に表1に示す計画に従ってイヌIL12を投与する。すなわち、第1週は静注により0.1μg/kgを週2回、第2〜4週は静注及び局注により4μg/kgを週2回投与した。第5週目は休薬とし、さらに第6〜8週は静注及び局注により4μg/kgを週2回投与した。局注の場合は複数の腫瘍が存在しても、一つの腫瘍にのみ投与し、期間を通じて同じ腫瘍にのみ投与した。また、局注は、腫瘍実質およびその周辺に投与した。また、他の薬剤は基本的には併用しなかった。ただし、抗腫瘍効果と無関係な薬剤の投与は限定しなかった。
【0068】
【表1】

【0069】
(2)観察検査の項目、時期および結果
イヌIL12投与日での臨床症状の観察検査は、表2に示す通りである。また、週一回イヌIL12投与に先立って実施した。すなわち、観察検査項目は臨床症状(脱水状態、呼吸様式、元気、食欲、飲水欲、下痢、嘔吐)、体温、体重、血液学的検査(血球系(白血球数、ヘマトクリット、血小板数、血液像)、電解質(Na,K,Cl)、生化学的検査(BUN,Crea.,GOT,GPT,CPK,Glucose,TP,Alb,Glob,ALP)、とした。全ての項目について検査を実施したが、重篤な症状はなく、検査値に異常は見られなかった。
【0070】
【表2】

【0071】
(3)イヌ血液からイヌ白血球の調製
採血により得られたイヌ全血を、予めHistopaq-1077を入れた遠心管に混合しないように重層する。400gで30分遠心し、白血球画分をパスツールピペットを用いて得た。次にERDF-10%FBS培地を添加して再度遠心し、沈殿画分を再びERDF-10%FBS培地を加え、10cmシャーレに入れ、37℃、CO2インキュベーター内にて培養を行った。1時間後、シャーレの培養上清を回収し、遠心操作後、沈殿画分をERDF-10%FBS培地により懸濁し、イヌ白血球とした。調製した白血球1×107cellsを10mLシリンジ(テルモ社製)に詰めたナイロンウール中に処し、37度下15分静置した。次に、リン酸塩バッファー(PBS)で押し出し、T細胞画分を調製した。T細胞画分をmRNAマイクロプレップクイックプーリフィケーションキット(アマシャム社)によりmRNAを調製した。cDNA合成は、Rever Tra -ACE-(TOYOBO社製)を用いて、Oligo dTプライマーにより合成した。PCRは、premix taq(宝酒造(株)社製)を用いて行った。PCRの条件は、熱変性:94℃、1分、アニーリング:56℃、30秒、伸長反応:72℃、1分で、30 cycleで行った。プライマー配列は、β−actinが配列番号17、18、IFN-γが配列番号19、20 、IL10が配列番号21、22である。
【0072】
得られたPCR産物は1%アガロースゲルにより電気泳動を行った。また、電気泳動したサンプルをジーンクリーン(geneclean)IIkit(フナコシ社製)を用いてゲルから抽出し、T-vector(Novagen社)にDNA Ligation kit Ver.2を用いて連結した。これを用いて常法に従って大腸菌を形質転換し、得られた形質転換体よりプラスミドDNAを常法により調製した。次にこのプラスミドにPCR断片が挿入されていることを前述と同条件のPCRにより確認し、ABI PRISM 377XL(アプライドバイオシステムズ)(Applied Biosystems)により、ビッグダイ ターミネーター サイクル シーケンス(BigDye Terminator Cycle Sequencing)法で各サイトカインのDNAの塩基配列を確認したところ、イヌIFN-γまたはイヌIL10であることが確認できた。
【0073】
実施例2 犬血液中のサイトカイン発現と腫瘍退縮効果の相関性検討
実施例1でイヌIL12を投与した19症例の内、8症例で腫瘍の退縮が見られた。全症例の犬血液中のIFN-γおよびIL10遺伝子解析を実施したところ、表3に示すように有効8症例全ての症例でIFN-γの発現増大、IL10の発現減少を確認することができた。なお、各遺伝子の発現量について、発現を検討した期間8週において、発現が見られる期間が8〜6週に渡って見られる場合は+++、5〜3週に渡って見られる場合は+
+、2〜1週の場合は+、全く検出できない場合を−とした。
【0074】
【表3】

【0075】
参考文献:
・ ボルフ(Wolf)ら:ジャーナル オブ イムノロジー(J.Immunol).146,3074−3081(1991).
・ 特開平2−2647285号公報
・ 特開平2−49734号公報
・ 特開昭54−80406号公報
・ 特開昭56ー68607号公報
・ 特開昭59−181223号公報
・ 特公平6−51641号公報
・ 特開昭61−44826号公報
・ 特開昭60−155136号公報
・ 特開昭58−92691号公報
・ 特公平3−500882号公報
12.チルイン(Chirgwin)ら:バイオケミストリー(Biochemistry) 18,5294(1979).
13.バーガー(Berger)ら:バイオケミストリー(Biochemistry) 18,5143(1979).
14.ガブラー(Gubler)ら:ジーン(Gene) 25,236−269(1983).
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20.シード(Seed)ら:プロセジャー ナショナル オブ
アカデミック サイエンス(Proc.Natl.Acad.Sci.USA )84,3365−3369(1986).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
犬血液中白血球のサイトカイン遺伝子の発現変動を測定することを特徴とする、イヌインターロイキン12による犬抗腫瘍効果評価方法。
【請求項2】
サイトカインが、イヌインターフェロンγおよび/またはイヌインターロイキン10であり、イヌインターフェロンγ遺伝子の発現が見られる時イヌインターロイキン12による抗腫瘍効果があると判断し、イヌインタロイキン10遺伝子の発現が見られる時イヌインターロイキン12による抗腫瘍効果がないと判断することを特徴とする請求項1記載のイヌインターロイキン12による犬抗腫瘍効果評価方法。
【請求項3】
イヌインターロイキン12を投与された犬から採取した犬白血球のサイトカイン遺伝子の発現変動を測定し、イヌインターロイキン12による犬抗腫瘍効果を評価する評価用キット。
【請求項4】
サイトカインがイヌインターフェロンγおよびイヌインターロイキン10であることを特徴とする請求項3記載のイヌインターロイキン12による犬抗腫瘍効果を評価する評価キット。

【公開番号】特開2007−202431(P2007−202431A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−22728(P2006−22728)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】