説明

イミダゾール−イソシアヌル酸付加物

【課題】エポキシ樹脂の硬化剤または硬化促進剤として有用なイミダゾール−イソシアヌル酸付加物を提供。
【解決手段】イミダゾール化合物として、2−フェニル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルイミダゾールまたは2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾールと、イソシアヌル酸とを反応させることにより、化学式(I)で示されるイミダゾール−イソシアヌル酸付加物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なイミダゾール−イソシアヌル酸付加物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
機械的強度や電気的絶縁特性に優れ、また接着性、耐水性、耐熱性等が良好であるところから、構造用複合材料、土木建築用材料を始めとして、電気・電子材料分野における絶縁被覆材や接着剤、LSIや発光ダイオード用の封止剤、プリント配線基盤用のインク、塗料、積層板等の原料として種々のタイプのエポキシ樹脂が広く使用されている。
【0003】
そして、このようなエポキシ樹脂の硬化剤または硬化促進剤として、脂肪族ポリアミン類、脂肪族ポリアミン類とダイマー酸類との縮重合物であるポリアミドアミン類、芳香族アミン類、酸無水物類、イソシアネ−ト類、ブロックイソシアネート類、二塩基酸ジヒドラジド類、酸末端ポリエステル類、メルカプト末端ポリスルフィド類、イミダゾール類、3フッ化硼素アミンコンプレックス類、ジシアンジアミド、レゾールフェノール樹脂類、アミノ樹脂類等が目的に応じて適宜使い分けされている。
【0004】
更に、前記イミダゾール類においても、種類の異なる数多くのイミダゾール化合物が使用されている他、イミダゾール化合物の特性を改質するために、イミダゾール化合物と酢酸、乳酸、サリチル酸、安息香酸、アジピン酸、フタル酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、トリメリット酸等との塩(例えば特許文献1)とすることや、リン酸との塩(特許文献2)、あるいはイミダゾール化合物とイソシアヌル酸との付加物(特許文献3)とすること等、種々の改質方法が検討されている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−87364号公報
【特許文献2】特開2002−145991号公報
【特許文献3】特開昭53−116391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エポキシ樹脂の硬化剤または硬化促進剤として有用なイミダゾール−イソシアヌル酸付加物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、イミダゾール化合物として、2−フェニル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルイミダゾールまたは2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾールと、イソシアヌル酸とを反応させることにより、新規なイミダゾール−イソシアヌル酸付加物が得られることを見出し、本発明を完遂するに至ったものである。
即ち、本願発明は、化学式(I)または化学式(II)で示されるイミダゾール−イソシアヌル酸付加物である。
【0008】
【化1】

【0009】
【化2】

【発明の効果】
【0010】
エポキシ樹脂の硬化剤または硬化促進剤としての利用が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のイミダゾール−イソシアヌル酸付加物は、2−フェニル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルイミダゾール(以下、2P4MHZと略記する)または2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール(以下、TBZと略記する)と、イソシアヌル酸(以下、ICAと略記する)とを溶媒中で反応させることにより合成することができる。
【0012】
2P4MHZまたはTBZとICAは、化学量論的に反応する。即ち、2P4MHZまたはTBZとICAの使用量をモル比で1:1にすればよい。
また、反応温度は任意で構わないが、溶媒に対する原料の溶解量を高めて溶媒の使用量を少なくするため、あるいは溶媒に対する原料の溶解速度を速くするなど、イミダゾール−イソシアヌル酸付加物の合成プロセスの合理化を図るためには、差し支えの無い範囲で反応温度を高くすることが好ましい。
【0013】
具体的な合成方法としては、例えば、2P4MHZおよびICAを水に懸濁させたスラリーを調製し、該スラリーを撹拌しながら所定時間加熱し、その後、同スラリー(反応液)を冷却して、析出物(反応生成物)を濾別単離する。反応生成物は、常法に従って、洗浄および乾燥加熱すればよい。
【0014】
前記の反応に使用される溶媒には特に制限はないが、熱時においてICAを溶解させることができるものであればよい。本願発明の実施においては、安価であり且つ廃液処理の容易な水やイソプロピルアルコールが好ましく使用できる。
なお、反応生成物の純度を良好なものとするためには、溶媒の使用量を原料であるイミダゾール化合物とICAの総量に対して、5〜10倍量(重量比)より多くすることが好ましい。
【実施例】
【0015】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例に使用した原料は次のとおりである。
・2P4MHZ:四国化成工業社製「キュアゾール 2P4MHZ」
・TBZ:四国化成工業社製「キュアゾール TBZ」
・ICA:四国化成工業社製「イソシアヌル酸粉末品」
【0016】
〔実施例1〕
2P4MHZを37.6g(0.2モル)と、ICAを25.8g(0.2モル)と、水380gをフラスコに投入し、攪拌しながら12時間加熱還流した。なお、反応液は加熱前後においてスラリー状を呈しており、2P4MHZおよびICAは加熱時に徐々に溶解しながら直ちに反応して、難溶性の生成物が析出していると推測される。次いで、反応液を室温まで冷却後、吸引濾過を行なって単離した固形分を80℃で12時間乾燥させ、白色粉末状の結晶を53.9g(収率85%)得た。
【0017】
得られた結晶の融点は242−247℃であり、原料の融点(2P4MHZ:191−195℃、ICA:融点なし)とは異なる値を示した。
また同結晶の赤外線吸収スペクトルは、図1に示したとおりであり、前記の化学式(I)で示される物質(2P4MHZ・ICA付加物)であるものと同定した。
【0018】
〔実施例2〕
TBZを39.5g(0.25モル)と、ICAを32.4g(0.25モル)と、イソプロピルアルコール600gをフラスコに投入し、攪拌しながら加熱を行なった。反応液中の原料は90℃で完溶し、その状態で10分間保持した後室温まで冷却し、反応生成物を析出させた。次いで、反応液を吸引濾過して単離した固形分を80℃で12時間乾燥させ、白色粉末状の結晶を58.4g(収率81%)得た。
【0019】
得られた結晶の融点は存在しなかったが、175℃での分解を確認した。
また同結晶の赤外線吸収スペクトルは、図2に示したとおりであり、前記の化学式(II)で示される物質(TPZ・ICA付加物)であるものと同定した。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の2P4MHZ・ICA付加物の赤外線吸収スペクトル
【図2】本発明のTPZ・ICA付加物の赤外線吸収スペクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化1の化学式(I)または化2の化学式(II)で示されるイミダゾール−イソシアヌル酸付加物。
【化1】

【化2】


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−30922(P2010−30922A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193041(P2008−193041)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000180302)四国化成工業株式会社 (167)
【Fターム(参考)】