説明

イミダゾール誘導体、および、イミダゾール誘導体の、有機半導体マトリクス材をドープするためのドーパントとしての使用

本発明は、イミダゾール誘導体に関し、さらにこれらのイミダゾール誘導体の、有機半導体マトリクス材をドープするためのドーパントとして、有機半導体材料として、および、電子部品または光電子部品としての使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、イミダゾール誘導体に関し、さらに、これらのイミダゾール誘導体の、有機半導体マトリクス材をドープするためのドーパントとして、電荷注入層として、マトリクス材料自体として、電極材料として、あるいは、電子部品または光電子部品内の格納材料としての使用に関する。
【0002】
ドーピングによって、電気特性を変化させること、より詳細には有機半導体の導電率を変化させることが知られている。これは、シリコン半導体といった無機半導体にも当てはまる。ここで、マトリクス材内に電荷キャリアを生成することによって、極めて低い初期の導電率の増大が実現されるし、用いられるドーパントの種類によるが、半導体のフェルミ準位を変化させることも実現される。ドーピングによって、電荷輸送層の導電率が増大し、このため抵抗損が低減する。また、ドーピングによって、複数のコンタクトと有機質層との間の電荷キャリアの遷移はより良好になる。これは、逆の極性を有する2つの電気コンタクトの間に前記有機質層が位置している場合に有効である。例えば、電子受容体としてのルイス酸(例えばFeCl;SbCl)といった無機ドーパントは、拡散係数が高いため、通常、有機マトリクス材では有効でない。なぜなら、無機ドーパントが、電子部品の機能および安定度を損なうからである(D. Oeter, Ch. Ziegler, W. Goepel Synthetic Metals 1993, 61, 147-50; Y. Yamamoto, S. Kanda, S. Kusabayashi, T. Nogaito, K. Ito, H. Mikawa, Bull. Chem. Soc. Jap. 1965, 38, 2015-17; J. Kido et al. Jpn J. Appl. Phys. 2002, 41, 358-60)。さらに、無機ドーパントは、非常に高い蒸気圧を有しているので、公知の有機電子部品用の処理設備における工業的利用は、問題が多い。また、これらの化合物の還元電位は、技術的に非常に興味深いマトリクス材をドープするには低すぎる場合が多い。さらに、これらのドーパントは極めて攻撃的な化学反応を示すので、技術的使用が困難である。
【0003】
本発明の目的は、従来技術の欠点を克服することにある。より詳細に言うと、特に電子部品または光電子部品において用いる場合に、改善された有機半導体マトリクス材、電荷注入層、電極材料、マトリクス材自体または格納材料をもたらす、イミダゾール誘導体を提供することにある。用いられるイミダゾール誘導体は、マトリクス材に悪影響を与えない程度に十分に高い還元電位を有し、マトリクス材における電荷キャリアの数を効果的に増大させ、電子部品の処理における使用という意味での使用が比較的簡素である必要がある。
【0004】
本発明の他の目的は、開示する化合物を用いることが可能な、有機半導体材料と電子部品または光電子部品とを提供することにある。
【0005】
最初の目的は、請求項1に記載のイミダゾール誘導体によって実現される。他の目的は、請求項3に記載のイミダゾール誘導体、請求項6に記載の有機半導体材料、並びに、請求項8に記載の電子部品および光電子部品を使用することによって実現される。好ましい実施形態は、各従属請求項に開示する。
【0006】
予期しなかったが、開示するイミダゾール誘導体を本発明に従って用いると、従来公知のドナー化合物よりも、極めて強力なおよび/または安定したp型ドーパントが形成されることが分かった。
【0007】
より詳細に言うと、使用時の本発明に係る電荷輸送層の導電率は極めて高くなり、および/または、電子部品としての用途では、複数のコンタクトと有機質層との間の電荷キャリアの遷移が大幅に向上する。ここに記載したことだけでなく、イミダゾール誘導体を本発明に従って使用すると、特に、少なくとも1つの電子が周囲のマトリクス材からドーパントにまで移動するため、ドープされた層内にCT錯体が形成されることが推定される。これによって、マトリクス材の陽イオンが形成される。この陽イオンは、マトリクス材上を移動可能である。このようにして、マトリクス材は、ドープされていないマトリクス材の導電率よりも高い導電率を得る。ドープされていないマトリクス材の導電率は、概して10−8S/cm未満、特に10−10S/cm未満であることが多い。マトリクス材が、十分に高い純度を有していることを確保する必要がある。このような高い純度は、従来の、例えばグラディエント昇華法といった方法で実現可能である。ドーピングによって、このようなマトリクス材の導電率を、10−8S/cmよりも高く、且つ、多くの場合10−5S/cm未満まで増大させることが可能である。これは特に、酸化電位が、Fc/Fcに対して−0.5Vよりも高い、好ましくはFc/Fcに対して0Vよりも高い、より好ましくはFc/Fcに対して+0.2Vよりも高いマトリクス材に当てはまる。Fc/Fcという表現は、酸化還元対であるフェロセン/フェロセニウムに関する。この酸化還元対は、電気化学ポテンシャルを例えばサイクロボルタンメトリック法において測定する際の基準として用いられる。
【0008】
本発明によれば、記載するイミダゾール誘導体を、電子部品内の注入層として、好ましくは電極とドープされることも可能な半導体層との間における注入層として用いてもよいし、好ましくは電子部品内のエミッタと輸送層との間における遮断層として用いてもよいことも見出された。本発明において記載するドーパントは、空気に対するドーパントの反応性に関して、極めて高い安定性を示す。
【0009】
ドーパントとして用いられるイミダゾール誘導体は、記載するキノイド型に加えて、イミダゾール誘導体の最も安定した構造において、顕著なビラジカルまたは両性イオンの性質であってよい(A. Kikuchi, H. Ito, J. Abe, J. Phys. Chem. B 2005, 109, 19448-19453; A. Kikuchi, F. Iwahori, J. Abe, J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 6526-6527; T. Suzuki, et al., Tetrahedron Lett. 2003, 44, 7881-7884; K. Okada et al., Chem. Lett. 1998, 891-892; M. Kozaki, A. Isoyama, K. Okada, Tetrahedron Lett. 2006, 47, 5375-5378; S. Yoshiko et al., Nippon Kagaku Kaishi, 1972, 1, 100-3)。ここに記載するイミダゾール誘導体の誘導体は、既に、蛍光色素において(R. Beckert et al., DE 10261662)、光線力学療法における光線感作物質として(B. Bilbao et al., WO 2003104237)、および、有機電子部品用の材料に化学真空蒸着法を行う際の前駆体の形において(D. Bruce, WO 2000053613)、ならびに、電子写真用途における光導電膜用の材料として(F. Katsunori, JP 63172274)用いられている。
【0010】
記載する電子受容性のイミダゾール誘導体を、正孔注入層として用いてもよい。つまり、例えばアノード/アクセプタ/正孔輸送体の層構造を形成可能である。ここで、正孔輸送体は、純粋な層であってもよいし、または混合層であってもよい。より詳細に言うと、正孔輸送体は、アクセプタによってドープされていてもよい。アノードは、例えばITOであってよい。アクセプタ層は、例えば0.5〜100nmの厚さであってよい。
【0011】
〔非対称のキノイド構造のイミダゾール誘導体の調製〕
以下に示す化学反応式に従って構造(4)のイミダゾール誘導体を調製するには、例えば、化合物1をジチオアセタールで縮合し、3型の2−ヒドロイミダゾイルイリデン(hydroimidazoylilidene)を生成することが可能である(Il Farmaco 56 (2001), 277-283を参照)。この反応は、エタノールにおいて還流させながら行う。化合物2は市販されている。
【0012】
【化1】

【0013】
その後、(CN)C基の電子不足性のため、化合物3を脱プロトン化して、酸化剤の存在下で4型のp型ドーパント(強力なアクセプタ)に変換する。
【0014】
【化2】

【0015】
〔対称なキノイド構造のビスイミダゾール誘導体の調製〕
記載するイミダゾール誘導体は、公知の方法に従って合成することが可能である。調製は、ベンゾイドビスイミダゾールを用意することから始まる。このベンゾイドビスイミダゾールを、次の一般的な図式に従って、そのアニオンに変換し、適した酸化剤によってキノイド構造のビスイミダゾールに変換する。
【0016】
【化3】

【0017】
ここで、酸化は、事前に脱プロトン化を行わずに、ベンゾイドビスイミダゾールの形から直接行ってもよいし、または、N原子が置換された前駆体の状態(R=任意の枝分かれした、もしくは枝分かれしていないアルキル残基、または置換されたアルキル残基)から直接行ってもよい。最初に必要な材料である、アリールで架橋されたベンゾイドビスイミダゾール(X=アリールまたはヘテロアリール)の調製例は、次の文献に詳細に記載されており、例えば、ジケトンをアリールカルボジアルデヒドまたはヘテロアリールカルボジアルデヒドによって縮合することに基づいている(M. Weiss, J. Am. Chem. Soc. 1952, 74, 5193-5195; U. Mayer, H. Baumgaertel, H. Zimmermann, Tetrahedron Lett. 1966, 42, 5221-5223; P. Schneiders, J. Heinze, H. Baumgaertel, Chem. Ber. 1973, 106, 2415-2417; M. Kozaki, A. Isoyama, K. Akita, K. Okada, Org. Lett. 2005, 7, 115-118; L.-N. Ji, X.-Y. Li et al., J. Chem Soc., Dalton Trans. 2001, 1920-1926; F. C. Krebs et al., Tetrahedron Lett. 2001, 42, 6753-6757)。この方法では、アリールで架橋されたベンゾイドビスイミダゾールの非対称な誘導体も実現可能である(M. Kimura et al., ITE Letters on Batteries, New Technologies and Medicine 2002, 3, 30-34)。ビスイミダゾールを調製する他の方法は、ジアミンをカルボジアルデヒドによって縮合し、その後、形成されたジイミンの酸化的環化を行うことである(R. Leyden et al., J. Org.Chem. 1983, 48, 727-731; P. Gogoi, D. Konwar, Tetrahedron Lett. 2006, 47, 79-82)。ビスイミダゾールの調製は、次の方法によっても可能である。ジアミンをシュウ酸誘導体または適したジカルボン酸によって縮合すること(E. S. Lane, J. Chem Soc. 1953, 2238-2240; H. Suschitzky, J. ヘテロcyclic Chem. 1999, 36, 1001-1012; J. Hill, J. Org. Chem. 1963, 28, 1931-2; P. C. Vyas, C. Oza, A. K. Goyal, Chem. Industry 1980, 287-288)、または、ジケトンをグリオキサールによって縮合すること(F. Japp, E. Cleminshaw, J. Chem. Soc. Trans. 1887, 51, 552-557)、または、フェニレンジアミンをヘキサクロロアセトンによって変換すること(M. C. Rezende, E. L. Dall’Oglio, C. Zucco, Syn. Comm. 2001, 31, 607-613; M. Rezende, E. Dall’Oglio C. Zucco, Tetrahedron Lett. 1996, 37, 5265-5268; )。ビスイミダゾールの合成は、次の方法によっても可能である。イミダゾールもしくはベンズイミダゾールまたはそれらのN−アルキル化された誘導体を触媒的に二量化すること(T. Sekine et al., Chem. Pharm. Bull. 1989, 37, 1987-1989)、または、金属化される2つのイミダゾールまたはベンズイミダゾールを有機金属結合(一般的には銅を仲介した有機金属結合)を行うこと(S. B. Park, H. Alper, Organic Lett. 2003, 5, 3209-3212; F. Bonati, A. Burini, B. R. Pietroni, J. Organomet. Chem. 1989, 375, 147-160)、または、イミダゾールと2−ジアゾイミダゾールとの間に環結合を形成すること(P. G. Rasmussen et al., J. Am. Chem. Soc. 1982, 104, 6155-6156)。
【0018】
一般的に用いられる二酸化マンガンまたは鉛(IV)のアセテートといった酸化剤によって、ベンゾイドビスイミダゾールを直接酸化して、実際のドーパント、キノイド構造のビスイミダゾールを形成することが知られている(U. Mayer, H. Baumgaertel, H. Zimmermann, Tetrahedron Lett. 1966, 42, 5221-5223; H. Suschitzky, J. Heterocyclic Chem. 1999, 36, 1001-1012; J. Hill, J. Org. Chem. 1963, 28, 1931-1932)。ベンゾイドビスイミダゾールを直接酸化することは、例えばアルカリ水溶液中のフェリシアン化カリウムといった酸化剤によって、ベンゾイドの前駆体の有機溶液の2相混合物中のベンゾイドビスイミダゾールから直接行ってもよいし(M. Kozaki, A. Isoyama, K. Akita, K. Okada, Org. Lett. 2005, 7, 115-118; K. Okada et al., Chem. Lett. 1998, 891-892; Cherkashin M. I. et al. Izv. Akad. Nauk SSSR, Seriya Khim. 1982, 2, 376-377)、または、ベンゾイドビスイミダゾールの銀塩またはナトリウム塩を有機溶剤中の臭素で酸化すること(U. Mayer, H. Baumgaertel, H. Zimmermann, Angew. Chem. 1966, 78, 303; S. Dedik et al. Khimiya Get. Soed. 1989, 10, 1421)によって行ってもよい。
【0019】
ドーパントとして用いられるキノイド構造のビスイミダゾールはまた、適した前駆体を、例えば紫外線の照射において光化学的に励起させることによって生成可能である(Y. Sakaino, J. Org. Chem. 1979, 44, 1241-1244)。これらの前駆体は、概して、キノイド構造のビスイミダゾールのアルコキシ付加物である。これらのアルコキシ付加物は、ベンゾイドビスイミダゾールの塩基触媒的酸化において、キノイド構造のビスイミダゾールにアルコールを添加することによって形成可能である。
【0020】
【化4】

【0021】
〔対称なキノイド構造のビスイミダゾールの合成の実施例〕
(実施例1)
【0022】
【化5】

【0023】
テトラ臭化物イミダゾールBの生成を、公知の方法(K. Lehmstaedt, H. Rolker, Ber. Dt. Chem. Ges. B 1943, 879-891)を変更して、市販のビスイミダゾールAを臭素化することによって行った。:520mg(3.88mmol)のビスイミダゾールおよび2.13g(15.7mmol)の酢酸ナトリウム三水化物を、10mlの氷酢酸中に配置し、2.48g(15.5mmol)の臭素の溶液を10mLの氷酢酸中に滴加する。この添加が終了した後、100°Cに2時間加熱する。この調製液を、蒸発乾固させて、希塩酸で煮沸し、熱いうちに抽出し、希塩酸および水ですすいで乾燥させる。Bの収量は1.11g(64%d.Th)であった。この生成物をHPLCによって分析した結果、純度は90%であり、DI−MS(EI)m/z=450であり、アイソトープのパターンは4つの臭素の置換に相当した。
【0024】
キノイド構造のドーパントCの生成を、公知の方法(S. Dedik et al. Khimiya Get. Soed. 1989, 10, 1421)を変更して、565mg(1.26mmol)のテトラ臭化物ジイミダゾールBを、硝酸銀(428mg(2.52mmol))の無水EtOH(40ml)と一緒に、還流させながら1時間加熱し、形成された生成物を抽出することによって行った。この生成物を、20mLの無水ジクロロメタン中に懸濁させ、0°Cに冷却し、中の12.8mLの0.1Mの臭素のジクロロメタンと混合した。この調製液を、冷却させながら15分間攪拌し、さらに室温で30分間攪拌し、塩から抽出し、ジクロロメタンですすぎ、組み合わせた濾液を蒸発させた。原料収量418mg(74%d.Th.)。DI−MS(EI):m/z=448。この原料を、ドーパントとしての試験前に、160〜170°Cおよび最大10−4mbarにおいてグラディエント昇華させた。サイクロボルタンメトリック分析では、昇華させた生成物は、Fc/Fcに対して、−0.24Vの第1の還元電位を示した。
【0025】
(実施例2)
【0026】
【化6】

【0027】
20g(95mmol)ベンジルDを、150mlのエタノールに添加して、沸点まで加熱した。この溶液を還流させながら10分間加熱した後、氷浴において12°Cまで冷却した。得られた懸濁水に、ヒドロキシルアミン塩酸塩(6.6g(95mmol))の蒸留水(15ml)の溶液と水酸化ナトリウム(10g(250mmol))の蒸留水(15ml)の溶液とを、交互に滴加した。ここで、内部温度は15°Cよりも低い温度に保持された。約1.5時間後に添加は完了した。反応混合物を朝まで放置した。その後、蒸留水で希釈して、全容積を600mlにし、転換されていないベンジルをフィルタによって濾過した。この濾液を半濃塩酸で酸性化した後、濁った溶液を短時間放置した。得られた結晶を濾過し、水で洗浄し、50°Cの温度において真空乾燥させた。トルエンを用いて再結晶させた後、15.4gの無色の結晶Eを得た。収量:72%。
融点:139°C−H−NMR(250MHz,DMSO−d):12.47(1H,s,OH);7.93−7.40(10H,m,フェニル−H)−13C−NMR(250MHz,DMSO−d):192.5(C=O);154.6(C=NOH);137.4;135.1;134.8;133.4;132.0;130.7;130.5;129.8;129.7;129.5;128.7;128.4.
8.2g(36.4mmol)のベンジルモノオキシムEを、室温でエタノール(60ml)中に溶解した。塩化スズ(II)(42g)の濃塩酸(80ml)を添加した。この混濁液を1時間静置し、その後濾過した。この濾液を、冷蔵庫において5°Cで朝まで保持した。得られた結晶を濾過し、1リットルの冷却エタノールで洗浄し、真空乾燥させた。9.4gの無色の結晶を得た。これらの結晶を、溶解に必要な最低限の水(約350ml)中に溶解し、水酸化ナトリウムの溶液でpH12にした。得られたわずかに黄色い固形物を、G4フリットを用いて濾過し、固形物が溶解しなくなるまで、ジエチルエーテルで4回洗浄し、その後ジオキサンで2回洗浄した。この基本の水溶液を、各200mlのジエチルエーテルで2回抽出した。全てのエーテル相を組み合わせた後、これらを200mlの水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。この溶液から、乾燥塩化水素を用いてデシルアミンを析出させた。得られた無色の固形物Fを濾過し、50°Cにおいて真空乾燥させた。3.58gを得た。収量:40%。
HNMR(250MHz,DMSO−d):9.08(3H,s,NH3+);8.05(2H,dd,フェニル−H);7.64−7.34(8H,m,フェニル−H);6.37(1H,s,CH)−13C−NMR(250MHz,DMSO−d):193.8(C=O);134.8;133.6;133.1;130.0;129.8;129.7;129.5;129.4;129.4;129.3;58.4(CHNH3+).
アルゴン雰囲気下において、1.5g(6,1mmol)のデシルアミン塩酸塩Fと0.26mol(3.0mmol)の塩化オキサリルとを20mlの乾燥トルエン中に供給し、50°Cに加熱した。2時間以内に4mlのピリジンを滴加し、その後、これを還流させながら2時間加熱した。この溶媒を、ロータリーエバボレーターを用いて除去し、得られた茶色の固形物を水で数回洗浄した。この原料を、デシケータにおいて五酸化リンを用いて乾燥させた後、この溶液をエタノールで加熱した。熱濾過し、40°Cで真空乾燥させた後、1.1gの黄褐色の固形物Gを得た。収量:77%。
【0028】
450mg(0.95mmol)のN,N−ビス−(フェニルフェニルアシル)−オキサミドGと12gの乾燥アンモニウムアセテートとを90mlの氷酢酸に添加し、加熱した(140°Cの浴温度)。その後すぐに澄んだ溶液を得た。この溶液を、さらに4時間、還流させながら加熱した。この反応混合物を冷却した後、氷冷しながら半濃縮したアンモニアによって中和した。得られた結晶を濾過し、エタノールから再結晶させた。390mgの無色の固形物Hを得た。収量:94%。
融点:332°C−H−NMR(250MHz,CDCl3):7.42−7.26(m,フェニル−H)−13C−NMR(250MHz,CDCl):137.1;133.5;131.0;128.4−127.8.
[Fe(CN)](150mg(0.45mmol))の1N KOH水溶液(4ml)を、H(85mg(0.2mmol))のCHCl(4mlの)の溶液に添加し、この2相混合物を、数時間激しく攪拌した。CHCl相は既に数秒後に赤色になっていた、水相はゆっくりと明るい色になった。反応が完了した後、CHCl層を分離し、硫酸ナトリウムの上で乾燥させ、濃縮した。得られた濃紅色の結晶質の固形物Jを、好適な混合物、例えばCHClとヘキサンとの混合物において懸濁させ、懸濁させながら濾過した。
【0029】
〔ドーピングの実施〕
特に、例えばZn(ZnPc)、Cu(CuPc)、Ni(NiPc)、または他の金属のフタロシアニン錯体を、p型ドープ可能なマトリクス材として使用してもよく、この場合、フタロシアンの配位子を置換してもよい。ナフトシアニンおよびポルフィリンの他の金属錯体を用いてもよい。マトリクス材として、アリール化されたまたはヘテロアリール化されたアミン、および/あるいは、置換または非置換のベンジジン誘導体、例えばTPD、α−NPD、TDATA、より詳細に言うと、例えばスピロTTBといったスピロ結合されたアリールアミンを用いてもよい。より詳細には、α−NPDとスピロTTBとを、マトリクス材として用いてもよい。
【0030】
【化7】

【0031】
多環芳香族炭化水素に加えて、特にイミダゾール誘導体、チオフェン、チアゾール誘導体、ヘテロトリフェニレンといった複素環式芳香族化合物等をマトリクス材として用いてよく、場合によっては、二量体、オリゴマー、または重合体の複素環式芳香族化合物を用いてもよい。複素環式芳香族化合物は、好ましくは置換されており、より詳細にはアリールで置換されており、例えばフェニルで置換されているか、またはナフチルで置換されている。これらは、スピロ化合物であってもよい。
【0032】
当然ながら、本発明の範囲において、上述のマトリクス材を互いに混合してもよいし、他の材料と混合してもよい。他の好適な半導性の有機材料を用いてもよい。
【0033】
<ドーピング濃度>
ドーパントが、マトリクス分子に対して、または、ポリマーマトリクス分子のモノマー単位に対して、≦1:1のドーピング濃度において、好ましくは1:2以下のドーピング濃度において、特に好ましくは1:5以下、または1:10以下のドーピング濃度において存在していることが好ましい。ドーピング濃度は、1:1〜1:100,000の範囲内、より詳細には1:5〜10,000、または1:10〜1:1000の範囲内にあってよく、例えば1:10〜1:100、または1:25〜1:50の範囲内にあってよいが、これらに限定されることはない。
【0034】
<ドーピングの実施>
関連するマトリクス材を本発明に従って用いられる化合物でドープすることは、以下の方法のうちのいずれか1つ、または以下の方法の組合せによって行うことが可能である。
−マトリクス材用の1つのソースとドーパント用の1つのソースとを、真空において混合蒸着させる方法。
−マトリクス材とp型ドーパントとを基板上に次々に堆積させ、その後、特に熱処理によって、ドーパントを内向拡散させる方法。
−p型ドーパントの溶液によってマトリクス層をドープし、その後、この溶媒を特に熱処理によって蒸発させる方法。
−表面に成長させたドーパントの層によって、マトリクス材層の表面をドープする方法。
−マトリクス分子とドーパントとの溶液を作製し、次に、溶媒の蒸発またはスピンコーティングといった従来の方法を用いて、この溶液の層を作製する方法。
【0035】
当然ながら、ドープを行うための他の好適な方法を用いてもよい。こうして、多種多様に使用可能なp型ドープされた有機半導体層を作製可能である。
【0036】
<半導体層>
本発明に従って用いられる電子不足性のキノイド構造のビスイミダゾールによって、半導体層を作製可能である。この半導体層は、例えば、導電性経路およびコンタクト等の直線状の傾向のものであってよい。ここでは、p型ドーパントとしてキノイド構造のビスイミダゾールを、マトリクス材としての役割を果たす他の化合物と共に用いることが可能である。この場合、ドーピング比は1:1以下であってよい。しかしながら、用いられるドーパントは、他の化合物/成分よりも高い比率で存在していてよく、従って、ドーパント:化合物の比率は、>1:1の比率、例えば≧2:1、≧5:1、≧10:1、または、≧20:1、あるいは、それよりも高い比率であってよい。他の各成分は、ドープされた層を生成する場合にマトリクス材として用いられ得るような成分であってよいが、これに限定されることはない。場合によっては、用いられるドーパントは、ほぼ純粋な形、例えば純粋な層として存在していてよい。
【0037】
より詳細には、ドーパントを含む領域、または、ドーパントを十分にまたは完全に含む領域は、有機半導体材料および/または無機半導体材料と電気的に接触可能であり、例えばこの種の基板上に配置されていてよい。
【0038】
本発明によれば、上記電子不足性のキノイド構造のビスイミダゾールを、例えば≦1:1または≦1:2の比率において、p型ドーパントとして用いることが好ましい。例えば、ZnPc、スピロTTB、またはα−NPDをマトリクスとして用いる場合に、本発明の電子不足性の化合物をp型ドーパントとして用いることによって、室温において10−5S/cm以上の導電率を有する半導体層を実現することができる。フタロシアニン亜鉛(ZnPc)をマトリクスとして用いた場合、実施形態において、10−5S/cm以上の導電率を実現した。他方、ドープされていないフタロシアニン亜鉛の導電率は、最大10−10S/cmである。
【0039】
ドーパントを有する層または構造がそれぞれ、このような1つまたは複数の異なる電子不足性のキノイド構造のビスイミダゾールを含有することは自明である。
【0040】
<電子部品>
記載するp型ドープされた有機半導体材料を製造するための化合物を用いれば、多数の電子部品またはこれらの電子部品を備えるデバイスを、p型ドープされた有機半導体層を用いて製造することができる。なお、p型ドープされた有機半導体材料は、特に層または導電性経路の形態で配置することができるものである。本発明の範囲では、「電子部品」という用語には光電子部品も含まれる。記載する化合物を用いて、この部品の電子的に機能する領域の電子特性(例えば導電率または発光特性等)を有利に変更することが可能である。従って、ドープされた層の導電率を向上させることが可能であり、および/または、コンタクトの電荷キャリアをドープされた層の中に注入することをより良好に行うことが可能である。
【0041】
本発明は、より詳細には、イミダゾール誘導体を用いて製造され得る、有機発光ダイオード(OLED)、有機太陽電池、電界効果トランジスタ、有機ダイオード(、特に10−10、好ましくは10−10または10−10といった高い整流比を有する有機ダイオード)、および有機電界効果トランジスタを含む。
【0042】
電子部品では、p型ドープされた層が、有機マトリクス材の基盤上に、例えば次の層構造において存在してもよい。この場合、母材または個々の層のマトリクス材はそれぞれ、有機質であることが好ましい。
p−i−n:p型ドープされた半導体−真性半導体層−n型ドープされた半導体
n−i−p:n型ドープされた半導体−真性半導体層−p型ドープされた半導体
ここで、コンタクト材は、正孔注入型であり、p側に、例えばITOまたはAuの、層またはコンタクトが設けられていてもよい。あるいは、コンタクト材は、電子注入型であり、n側に、ITO、AlまたはAuの、層またはコンタクトが設けられていてもよい。
【0043】
上述の構造では、場合によってはi層を省略してもよい。この場合、pn接合またはnp接合を有する層のシーケンスが得られる。
【0044】
しかし、記載する化合物の使用は、上述の実施形態に限定されるものではない。より詳細に言うと、層構造は、適したさらなる層を導入することによって、補完/変更可能である。このような層のシーケンスが特にp−i−n構造であるOLED、または、層のシーケンスがこの逆の構造であるOLEDを、記載する化合物を用いて形成可能である。
【0045】
記載するp型ドーパントを用いて、特に、金属−真性半導体−p型ドープされた半導体(m−i−n)型、または、p−i−n型の有機ダイオードを、例えばフタロシアニン亜鉛に基づいて生成可能である。これらのダイオードは、10以上の整流比(遮断方向における電流の流れに対する、電流が流れる方向における電流の流れに関連する、部品の整流比)を示す。さらに、本発明に係るドーパントを用いて、pn接合を有する電子部品を生成することが可能である。ここで、p型およびn型ドープされた側には、いずれも同一の半導体材料が用いられ(ホモpn接合)、p型ドープされた半導体材料には、記載するイミダゾール誘導体が用いられる。
【0046】
本発明によれば、イミダゾール誘導体が他の成分よりも多いならば、イミダゾール誘導体を、層、導電性経路、または点コンタクト等において、例えば純粋な形態またはほぼ純粋な形態の注入層として用いてもよい。
【0047】
ここで、以下の実施例を参照しながら、本発明のさらなる対象および利点を詳細に説明する。この実施例は、単に説明のためであって、本発明の範囲を限定するものではないと見なされたい。
【0048】
〔キノイド構造のビスイミダゾールを用いたドーピングの実施形態〕
高真空におけるグラディエント昇華法を少なくとも1回行うことによって精製した電子不足性のキノイド構造のビスイミダゾールを、ドーパントとして用意する。
【0049】
本ドーパントを、マトリクス材と同時に蒸着させる。本実施例によれば、マトリクス材は、フタロシアニン亜鉛またはスピロTTBである。p型ドーパントおよびマトリクス材を真空蒸着装置において蒸発させて、基板上に堆積させた層の、p型ドーパント対マトリクス材のモルドーピング比が、1:10になるようにすることが可能である。
【0050】
p型ドーパントでドープした有機半導体材料の層を、ガラス基板上に配置されたITO層(インジウムスズ酸化物)に堆積させる。p型ドープされた有機半導体層を堆積させた後、例えば適した金属を真空蒸着させることによって、金属カソードを堆積させ、有機発光ダイオードを生成する。当然ながら、有機発光ダイオードは、いわゆる反転層構造を有していてよく、この場合、層のシーケンスは、ガラス基板−金属カソード−p型ドープされた有機質層−透明な導電性カバー層(例えばITO)である。用途によっては、当然ながら、他の層を、上述の個々の層の間に設けてもよい。
【0051】
(実施例1)
ZnPcとスピロTTBとをドープするために、キノイド構造のビスイミダゾール誘導体Cをマトリクス材として用いた。ドーパント:マトリクス材のドーピング比が1:10であるドープされた層を、マトリクスおよびドーパントを混合蒸着することによって生成した。測定された導電率は、ZnPcでは7.9x10−5S/cmであり、スピロTTBでは4.6x10−7S/cmであった。
【0052】
(実施例2)
ZnPcをドーピングするために、キノイド構造のビスイミダゾール誘導体Cをマトリクス材として用いた。ドーパント:マトリクス材のドーピング比が1:10であるドープされた層を、マトリクスとドーパントとを混合蒸着することによって生成した。測定された導電率は、ZnPcでは1.0x10−6S/cmであった。
【0053】
上述の明細書および特許請求の範囲において開示する本発明の特徴は、単独でも任意の組合せにおいても、本発明をその様々な実施形態において実施するために不可欠である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式を有するイミダゾール誘導体であって、
【化1】

Xは、置換および非置換の共役二重結合系、置換および非置換の、キノイド構造の芳香族環系およびキノイド構造でアネレートされた芳香族環系(quinoid anellated aromatic ring systems)、ならびに、置換および非置換の、キノイド構造の複素環式芳香族環系およびキノイド構造でアネレートされた複素環式芳香族環系(quinoid anellated heteroaromatic ring systems)からなる群から選択され、
Yは、2−インダンジオン誘導体、C(CN)、NCN、O、2−シクロペンタジエン誘導体、2−シクロペンテンジエン誘導体、C(CF、C(CN)アリール、C(CN)オリゴアリール、C(CN)ヘテロアリール、C(CF)アリール、C(CF)オリゴアリール、C(CF)ヘテロアリール、N−アリール、N−ヘテロアリール、N−オリゴアリール、アクセプタで置換されたアリール、および、アクセプタで置換され、環原子を6つよりも多く有するヘテロアリールからなる群から選択され、
〜Rは、水素、置換および非置換のアリール、置換および非置換のヘテロアリール、C−Cの単結合および二重結合を交互に有する、置換および非置換の共役炭化水素鎖、ハロゲン、シアン基、擬ハロゲン、ニトロ基、ハロゲン化したおよびペルハロゲン化したアルキル、カルボン酸およびその誘導体、ならびにスルホン酸およびその誘導体から成る群から、独立して選択され、
〜Rのうちの少なくとも1つは水素でなく、または、隣接する2つのR〜Rは、イミダゾール環にアネレートされた芳香族環系の元素である、イミダゾール誘導体。
【請求項2】
〜Rは、ハロゲン、CN、NO、ペルハロゲン化したまたは部分的にハロゲン化したアルキル、ならびに、部分的にハロゲン化した、およびペルハロゲン化した、ならびに/あるいは、シアン化された芳香族化合物および複素環式芳香族化合物から成る群から選択される、請求項1に記載のイミダゾール誘導体。
【請求項3】
下記の一般式に示されるイミダゾール誘導体の、有機半導体マトリクス材をドープするためのドーパントとして、電荷注入層として、マトリクス材自体として、電極材として、あるいは、電子部品または光電子部品内の格納材料としての使用であって、
【化2】

Xは、置換および非置換の共役二重結合系、置換および非置換のキノイド構造の芳香族環系およびキノイド構造でアネレートされた芳香族環系(quinoid anellated aromatic ring systems)、ならびに、置換および非置換のキノイド構造の複素環式芳香族環系およびキノイド構造でアネレートされた複素環式芳香族環系(quinoid anellated heteroaromatic ring systems)からなる群から選択され、
Yは、2−インダンジオン誘導体、C(CN)、NCN、O、2−シクロペンタジエン誘導体、2−シクロペンテンジエン誘導体、C(CF、C(CN)アリール、C(CN)オリゴアリール、C(CN)ヘテロアリール、C(CF)アリール、C(CF)オリゴアリール、C(CF)ヘテロアリール、N−アリール、N−ヘテロアリール、N−オリゴアリール、アクセプタで置換されたアリール、および、アクセプタで置換されたヘテロアリールから成る群から選択され、
〜Rは、水素、置換および非置換のアリール、置換および非置換のヘテロアリール、C−Cの単結合および二重結合を交互に有する置換および非置換の共役炭化水素鎖、ハロゲン、シアン基、擬ハロゲン、ニトロ基、ハロゲン化したおよびペルハロゲン化したアルキル、カルボン酸およびその誘導体、ならびにスルホン酸およびその誘導体から成る群から、独立して選択され、
〜Rのうちの少なくとも1つは水素でなく、または、隣接する2つのR〜Rは、イミダゾール環にアネレートされた芳香族環系の元素である、使用。
【請求項4】
Xは、置換および非置換のキノイド構造のアリール、置換および非置換のキノイド構造のヘテロアリール、ならびにC−Cの単結合および二重結合を交互に有する、置換および非置換の共役炭化水素鎖から成る群から選択されることを特徴とする、請求項3に記載のイミダゾール誘導体の使用。
【請求項5】
上記イミダゾール環にアネレートされた芳香族環系は、置換されていることを特徴とする、請求項3または4に記載のイミダゾール誘導体の使用。
【請求項6】
少なくとも1つの有機マトリクス化合物および1つのドーパントを備え、請求項3〜5の何れか1項に記載の化合物をドーパントとして用いることを特徴とする、有機半導体材料。
【請求項7】
ドーパント対マトリクス分子のモルドーピング比、または、ドーパント対ポリマーマトリクス分子のモノマー単位のドーピング比が、20:1〜1:100,000、好ましくは10:1〜1:1000、特に好ましくは1:1〜1:100であることを特徴とする、請求項6に記載の有機半導体材料。
【請求項8】
電子的に機能する領域を備え、該電子的に機能する領域には、請求項3〜5に記載の化合物の少なくとも1つが用いられていることを特徴とする、電子部品または光電子部品。
【請求項9】
上記電子的に機能する領域は、有機半導体マトリクス材を有し、
該有機半導体マトリクス材は、請求項3〜5に記載の化合物の少なくとも1つを用いて、該半導体マトリクス材の電子特性を変更されるように、少なくとも1つのドーパントでドープされることを特徴とする、請求項8に記載の電子部品または光電子部品。
【請求項10】
有機発光ダイオード、光電池、有機太陽電池、有機ダイオード、または有機電界効果トランジスタの形態である、請求項8または9に記載の電子部品または光電子部品。

【公表番号】特表2010−530845(P2010−530845A)
【公表日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506863(P2010−506863)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【国際出願番号】PCT/EP2008/003792
【国際公開番号】WO2008/138580
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(503180100)ノヴァレッド・アクチエンゲゼルシャフト (47)
【Fターム(参考)】