説明

イミド樹脂の製造方法及び反応押出方法。

【課題】 押出機内の脈動を軽減するイミド樹脂の製造方法及び押出反応方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明のイミド樹脂の製造方法は、1台の二軸押出機内で連続的にイミド化反応とエステル化反応を実施するイミド樹脂の製造方法であって、該押出機が、二箇所以上の反応部を有することを特徴とする。
ふたつ以上に分割した反応部を介し、段階的に反応を進めていくことで、押出機内の生成量の割合を減らし押出機内の脈動を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二軸押出機を用いたイミド樹脂の製造方法及び反応押出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イミド樹脂を製造する際に、連続的に反応を行う方法として、押出装置で樹脂を溶融し反応剤と反応させてから押し出す反応押出方法がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、メタクリル酸のアルキルエステルのポリマーにイミド化剤の一部を添加し、この予め添加したイミド化剤で一部分を反応させ、部分的反応の後に残りのイミド剤を添加し少しずつ反応を進めていく方法が記載されている。
【特許文献1】特開平4−331209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の特許文献1の方法では、イミド化の反応のみを段階的に進める方法が開示されているが、本方法では、反応の際に、例えば、水、メタノール、ジメチルアミン、トリメチルアミンの不所望な生成ガスによって押出機内に脈動が生じる。
【0005】
また、イミド化に於いて反応副生成物のメタクリル酸無水物やメタクリル酸が、成形時に発泡を生じる。
【0006】
本発明は、このような従来の技術が有する課題に鑑みてなされたものであり、安定した熱可塑性樹脂の反応押出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を鑑み鋭意検討した結果、以下の発明を為すに到った。すなわち、本発明は
(I)1台の多軸押出機内で連続的にイミド化反応とエステル化反応を実施するイミド樹脂の製造方法であって、該押出機が、三箇所以上の反応部を有することを特徴とするイミド樹脂の製造方法に関する。
(II)イミド樹脂が下記一般式(1)で表される単位と、下記一般式(2)で表される単位及び/又は下記一般式(3)で表される単位とを有するイミド樹脂である事を特徴とする、(I)に記載のイミド樹脂の製造方法に関する。
【0008】
【化1】

【0009】
(但し、R及びRは、それぞれ独立に、水素又は炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は炭素数5〜15の芳香環を含む置換基を示す。)
【0010】
【化2】

【0011】
(但し、R及びRは、それぞれ独立に、水素又は炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は炭素数5〜15の芳香環を含む置換基を示す。)
【0012】
【化3】

【0013】
(但し、Rは、水素又は炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、炭素数6〜10のアリール基を示す。)
(III)1台の多軸押出機内で連続的にイミド化反応とエステル化反応を実施するイミド樹脂の反応押出方法であって、該押出機が、三箇所以上の反応部を有することを特徴とするイミド樹脂の反応押出方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のイミド樹脂の製造方法または押出方法を用いれば副生成物の量を減少させることができる。
【0015】
具体的には、2箇所以上の反応部でイミド化反応を分割して反応を進めることで1箇所の反応部で生成される、例えば、水、メタノール、未反応のアミン、更にはジメチルアミン、トリメチルアミンの不所望な生成ガスが減少し押出機内の脈動、ひいては、安定した押出を行う上での悪影響を避けられる。
【0016】
また、1台の押出機でエステル化を実施し、イミド化の反応副生成物のメタクリル酸無水物やメタクリル酸をエステル化することで成形時の発泡を抑えられる。また、イミド化反応に合わせてエステル化もエステル化は1箇所でも良いが、2箇所以上の反応部で実施するとエステル化で発生するメタノールや炭酸ガスの不所望な生成ガスによる押出機内の脈動をおさえ、安定した押出を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、1台の多軸押出機内で連続的にイミド化反応とエステル化反応を実施するイミド樹脂の製造方法であって、該押出機が、三箇所以上の反応部を有することを特徴とするイミド樹脂の製造方法及び押出方法に関する。
【0018】
本発明は各種反応押出に適用することが可能であるが、特に反応において不所望な生成物によって押出機内の脈動、ひいては、安定した押出を行う上で悪影響を及ぼす押出反応に有効であり、イミド化反応を行う際に特に有効に適用できる。さらには、ポリメタクリル酸メチル重合体あるいは、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体をイミド化剤で処理する反応に有効に適用できる。
【0019】
本発明のイミド樹脂は以下の方法により好適に製造する事が出来る。先ず一般式(2)で示される繰り返し単位と、一般式(3)で示される繰り返し単位からなるメタクリル酸メチル−スチレン共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体、又は一般式(2)で示される繰り返し単位からなるメタクリル酸メチル重合体等の(メタ)アクリル酸エステル重合体等を原料樹脂とし、これにアンモニア又は置換アミン等のイミド化剤を反応させた樹脂(以下、イミド樹脂中間体1と呼ぶ事がある)を得る事が出来る。
【0020】
一般式(2)で表されるものは、一般的には(メタ)アクリル酸エステル単位と呼ばれる事が多い(ここで、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルを示す。以下、一般式(2)を(メタ)アクリル酸エステル単位と省略して示す事がある。)。
【0021】
【化4】

【0022】
(但し、R及びRは、それぞれ独立に、水素又は炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基を示す。)
一般式(3)で表されるものは、一般的には芳香族ビニル単位と呼ばれる事が多い(以下、一般式(3)を芳香族ビニル単位と省略して示す事がある。)
【0023】
【化5】

【0024】
(但し、Rは、水素又は炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、炭素数6〜10のアリール基を示す。)
このイミド樹脂中間体1は、エステル化剤と反応させることで、樹脂中に残存するメタクリル酸の割合を制御する(以下、イミド樹脂中間体2と呼ぶ事がある)事が出来る。
(イミド化剤)
本発明のイミド化剤は一般式(1)で表されるグルタルイミド単位を生成出来るものであれば特に制限はないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、i−プロピルアミン、n−ブチルアミン、i−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン等の脂肪族炭化水素基含有アミン、アニリン、ベンジルアミン、トルイジン、トリクロロアニリン等の芳香族炭化水素基含有アミン、シクロヘキシルアミン等の脂環式炭化水素基含有アミンが挙げられる。又、尿素、1,3−ジメチル尿素、1,3−ジエチル尿素、1,3−ジプロピル尿素の如き、加熱によりこれらのアミンを発生する尿素系化合物を用いる事も出来る。これらのイミド化剤の内、コスト、物性の面からメチルアミン、アンモニア、シクロヘキシルアミンが好ましく、中でも、メチルアミンが特に好ましい。
(エステル化剤)
エステル化剤としては、例えば、ジメチルカーボネート、2,2−ジメトキシプロパン、ジメチルスルホキシド、トリエチルオルトホルメート、トリメチルオルトアセテート、トリメチルオルトホルメート、ジフェニルカーボネート、ジメチルサルフェート、メチルトルエンスルホネート、メチルトリフルオロメチルスルホネート、メチルアセテート、メタノール、エタノール、メチルイソシアネート、p−クロロフェニルイソシアネート、ジメチルカルボジイミド、ジメチル−t−ブチルシリルクロライド、イソプロペニルアセテート、ジメチルウレア、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、ジメチルジエトキシシラン、テトラ−N−ブトキシシラン、ジメチル(トリメチルシラン)フォスファイト、トリメチルフォスファイト、トリメチルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、ジアゾメタン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル等が挙げられる。中でもジメチルカーボネートが好ましい。
(反応温度)
本発明のイミド樹脂中間体1及びイミド樹脂中間体2を得るには、イミド化或いはエステル化を進行させ、且つ、過剰な熱履歴による樹脂の分解、着色等を抑制する為に、反応温度は150〜400℃の範囲で行う。180〜320℃が好ましく、更には200〜280℃が好ましい。
(添加剤)
本発明のイミド樹脂には、必要に応じて、他の熱可塑性樹脂を添加する事が出来る。成形加工の際には、一般に用いられる酸化防止剤、熱安定剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤、収縮防止剤等を本発明の目的が損なわれない範囲で添加しても良い。
(押出機)
本発明に於ける押出機としては、同方向噛合型二軸押出機、同方向非噛合型二軸押出機、異方向噛合型二軸押出機、異方向非噛合型二軸押出機、多軸押出機等各種押出機が適用出来る。その中でも、混錬/分散能力、生産性が高い事から同方向噛合型二軸押出機が更に好ましい。
【0025】
本発明は、1台の押出機でイミド化とエステル化を処理し、押出機のエレメント構成により設けた三箇所以上の反応部で反応を分割して進めることを特徴とする。反応部の数はイミド化で2箇所以上、エステル化で1箇所以上、合わせて計3箇所以上であれば特に制限されないが、押出の脈動を抑えるという観点において、反応率と生成ガスの関係、また、生成ガスと押出機の脈動の関係を実験的に求め、許容可能な脈動における反応率を導き出し、最終目標の反応率に至るまで何回反応を繰り返さなければならないかで反応箇所の数を決めればよい。
【0026】
反応部を分割する方法として、スクリューセグメントの反応部の前後に押出機内を開放するベント口を設けることで分割できる。分割された反応部はそれぞれの長さに特に制限はないが、均等に分割するのが好ましい。例えば、図1に示す本発明の反応押出法を行う為の装置構成の場合、樹脂フィード部分、溶融部分、ガスバック防止部分、イミド化剤添加部分、反応部、昇圧部、ベント口、ガスバック防止部分、イミド化剤添加部分、反応部、昇圧部、ベント口、ガスバック防止部分、エステル化剤添加部分、反応部、昇圧部、ベント口の3つの反応部に分割されている。
(反応部)
押出機の反応部における反応の組み合わせとしては、特に制限されず、イミド化反応を最初の反応部で実施し、最後の反応部でエステル化反応を実施すれば、その他の反応部ではイミド化反応またはエステル化反応を任意に実施してやればよい。例えば、図1に示すように、イミド化反応、イミド化反応、エステル化反応や、図2に示すような、イミド化反応、エステル化反応、イミド化反応、エステル化反応や、図1のパターンを繰り返した組み合わせや、図2のパターンを繰り返した組み合わせ方法などが採用できる。
【0027】
また、各反応部の後には、不所望な生成物を排出するベント口を設置するのが好ましい。不所望な生成物を排除しなければ蓄積が進み、一括で添加した場合と類似し押出機内の脈動、ひいては、安定した押出への悪影響を避ける効果が得られ難くなる。
(反応率)
次に反応率について説明する。反応率とは、全カルボニル基中のイミドカルボニル基の占める割合をいう。イミド化反応前ではイミドカルボニル基は存在しないため反応率はゼロとなる。
【0028】
イミド化樹脂の目標物性によって狙う反応率は異なるが、耐熱性は反応率に比例して向上する関係が見出されている。
【0029】
狙う反応率が、例えば60%とした場合、また、実験的に見出された許容可能な脈動における反応率が20%である場合、反応を3箇所設ければ脈動を抑えながら狙った反応率を得ることが出来る。
【0030】
各反応部における反応率は、均等分割で行えばよく、特に規定されるものではない。各反応部の反応率は低いほど不所望な生成物の割合も減り、押出機内の脈動、ひいては、安定した押出への悪影響を避ける効果が高くなる反面、狙いの反応率を得るためには反応部の数は多くなる。
【0031】
以下に、得られる樹脂の好適な組成について詳しく説明する。
(イミド樹脂)
一般式(2)で示される繰り返し単位と、一般式(3)で示される繰り返し単位からなるメタクリル酸メチル−スチレン共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体、又は一般式(2)で示される繰り返し単位からなるメタクリル酸メチル重合体等の(メタ)アクリル酸エステル重合体等をイミド化反応する際に有効に適用出来る。以下に、特に好適な樹脂組成に関して詳しく説明する。
【0032】
特に、本発明を有効に適応して合成する事の出来る樹脂としては、例えば、下記一般式(1)で表される単位と、下記一般式(2)で表される単位及び/又は下記一般式(3)で表される単位とを有するイミド樹脂が挙げられる。
【0033】
【化6】

【0034】
(但し、R及びRは、それぞれ独立に、水素又は炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は炭素数5〜15の芳香環を含む置換基を示す。)
【0035】
【化7】

【0036】
(但し、R及びRは、それぞれ独立に、水素又は炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は炭素数5〜15の芳香環を含む置換基を示す。)
【0037】
【化8】

【0038】
(但し、Rは、水素又は炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、炭素数6〜10のアリール基を示す。)
本発明のイミド樹脂を構成する、第一の構成単位は、前記一般式(1)で表されるものであり、一般的にグルタルイミド単位と呼ばれる事が多い(以下、一般式(1)をグルタルイミド単位と省略して示す事がある。)。
【0039】
好ましいグルタルイミド単位としては、R、Rが水素又はメチル基であり、Rが水素、メチル基、ブチル基、又はシクロヘキシル基である。Rがメチル基であり、Rが水素であり、Rがメチル基である場合が、特に好ましい。
【0040】
該グルタルイミド単位は、単一の種類でもよく、R、R、Rが異なる複数の種類を含んでいても構わない。
【0041】
尚、グルタルイミド単位は、以下に説明する第二の構成単位をイミド化する事により形成する事が可能である。又、無水マレイン酸等の酸無水物又はそれらと炭素数1〜20の直鎖又は分岐のアルコールとのハーフエステル;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸等のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸等もイミド化可能であり、グルタルイミド単位の形成に用いる事が出来る。
本発明のイミド樹脂を構成する、第二の構成単位は、前記一般式(2)で表されるものであり、一般的には(メタ)アクリル酸エステル単位と呼ばれる事が多い。イミド化率によっては、前記式(2)で含まれる単位が0であってもかまわない。
【0042】
本発明のイミド樹脂を製造する際に、先ず(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体、または(メタ)アクリル酸エステル重合体を重合し、これを後イミド化して形成する場合、具体的に(メタ)アクリル酸エステル単位を残基として与える原料としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中で、メタクリル酸メチルが特に好ましい。
【0043】
これら第二の構成単位は、単一の種類でもよく、R、R、Rが異なる複数の種類を含んでいても構わない。同様に、前記(メタ)アクリル酸エステル単位を残基として与える原料も複数の種類を混合して用いても構わない。
本発明のイミド樹脂に必要に応じて含有させる第三の構成単位は、前記一般式(3)で表されるものであり、一般的には芳香族ビニル単位と呼ばれる事が多い。
【0044】
好ましい芳香族ビニル構成単位としては、スチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。これらの中でスチレンが特に好ましい。
【0045】
これら第三の構成単位は、単一の種類でもよく、R、Rが異なる複数の種類を含んでいても構わない。
【0046】
本発明のイミド樹脂中の、一般式(1)で表されるグルタルイミド単位の含有量は、例えばRの構造にも依存するが、イミド樹脂の20重量%以上が好ましい。グルタルイミド単位の、好ましい含有量は、20重量%から95重量%であり、より好ましくは40〜90重量%、更に好ましくは、50〜80重量%である。グルタルイミド単位の割合がこの範囲より小さい場合、得られるイミド樹脂の耐熱性が不足したり、透明性が損なわれる事がある。また、この範囲を超えると不必要に耐熱性、溶融粘度が上がり、成形加工性が悪くなる他、得られるフィルムの機械的強度は極端に脆くなり、又、透明性が損なわれる事がある。
【0047】
本発明のイミド樹脂の、一般式(3)で表される芳香族ビニル単位の含有量は、0%でもかまわないが、イミド樹脂の総繰り返し単位を基準として、1重量%以上が好ましい。芳香族ビニル単位の、好ましい含有量は、1重量%から40重量%であり、より好ましくは1〜30重量%、更に好ましくは、1〜25重量%である。芳香族ビニル単位がこの範囲より大きい場合、得られるイミド樹脂の耐熱性が不足する。この範囲より小さい場合、得られるフィルムの機械的強度が低下することがある。
【0048】
一般式(1)、(2)、(3)の割合を調整することで、各種要求される物性に調整する事が可能である。例えば、本発明のイミド樹脂を、先ずメチルメタクリレート−スチレン共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体を重合した後に後イミド化して形成する場合、例えば(メタ)アクリル酸エステルと芳香族ビニルの重合割合を調整することで一般式(3)の割合を決め(一般式(3)の割合を0とする事も可)、更に後イミド化時の一級アミンの添加割合を調整する事で、更に一般式(1)、(2)の割合を調整する事ができる。
【0049】
本発明のイミド樹脂には、必要に応じ、更に、第四の構成単位が共重合されていてもかまわない。第四の構成単位は原料である一般式(2)または(3)で表される化合物に共重合されていれば良い。第四の構成単位として、アクリロニトリルやメタクリロニトリル等のニトリル系単量体、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体を共重合してなる構成単位を用いる事ができる。これらは原料である前記式(2)や(3)で表される熱可塑性樹脂中に、直接共重合してあっても良く、グラフト共重合してあっても構わない。
(イミド化の反応率の算出)
生成物のペレット1gをジクロロメタン5ccに溶解し、SensIR Tecnologies社製TravelIRを用いて、室温にてIRスペクトルを測定した。得られたスペクトルより、1720cm−1のエステルカルボニル基に帰属される吸収強度(Absester)と、1660cm−1のイミドカルボニル基に帰属される吸収強度(Absimide)の比からイミド化率を求めた。ここで、イミド化率とは全カルボニル基中のイミドカルボニル基の占める割合をいう。
(メタクリル酸量の算出)
ジクロロメタン37.5mlに生成物のペレット0.3gを溶解させ、メタノール37.5mlを添加した。この溶液に1wt%フェノールフタレインエタノール溶液を2滴添加し、0.1N水酸化ナトリウム水溶液5mlを添加して1時間攪拌した。この溶液に0.1N塩酸を滴下して溶液の赤紫色が消失するまでの0.1N塩酸の滴下量(Aml)を測定した。
【0050】
次に、ジクロロメタン37.5mlとメタノール37.5mlの混合液に1wt%フェノールフタレインエタノール溶液を2滴添加した。これに0.1N水酸化ナトリウム水溶液5mlを添加して1時間攪拌した。この溶液に0.1N塩酸を滴下して溶液の赤紫色が消失するまでの0.1N塩酸の滴下量(Bml)を測定した。
【0051】
樹脂中に残存するメタクリル酸の割合をCmmol/gとし、次式で求めた。
【0052】
C=0.1×((5−A−B)/0.3)
(用途)
本発明のイミド樹脂から得られる成形品は、例えば、カメラやVTR、プロジェクター用の撮影レンズやファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズ等の映像分野、CDプレイヤーやDVDプレイヤー、MDプレイヤーなどの光ディスク用ピックアップレンズ等のレンズ分野、CDプレイヤーやDVDプレイヤー、MDプレイヤー等の光ディスク用の光記録分野、液晶用導光板、偏光子保護フィルムや位相差フィルム等の液晶ディスプレイ用フィルム、表面保護フィルム等の情報機器分野、光ファイバ、光スイッチ、光コネクター等の光通信分野、自動車ヘッドライトやテールランプレンズ、インナーレンズ、計器カバー、サンルーフ等の車両分野、眼鏡やコンタクトレンズ、内視境用レンズ、滅菌処理の必要な医療用品等の医療機器分野、道路透光板、ペアガラス用レンズ、採光窓やカーポート、照明用レンズや照明カバー、建材用サイジング等の建築・建材分野、電子レンジ調理容器(食器)、家電製品のハウジング、玩具、サングラス、文房具、等に使用可能である。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
(装置)
押出機には、40mm同方向噛み合い型二軸押出機(テクノベル製)を用い、押出機の長さと直径の比L/Dが90、樹脂フィーダーには、コイルスクリュー式の定重量フィーダー(クボタ製)を用いた。また、イミド化剤の添加ポンプには、高圧ガス対応液添ポンプ(昭和炭酸製)を用いた。
【0054】
(原料樹脂、イミド化剤、エステル化剤)
樹脂は、MS−800(新日鉄化学製)を用いた。イミド化剤には、モノメチルアミン(三菱ガス化学製)を用いた。エステル化剤には、ジメチルカーボネイト(宇部興産製)と触媒としてトリエチルアミン(三菱ガス化学製)を用いた。
【0055】
(押出)
図1に示すように反応部を3分割にし、1段目の反応部でイミド化、2段目の反応部でイミド化、3段目の反応部でエステル化の反応を行った。
【0056】
1段目でモノメチルアミンをMS−800、100部に対し10部、2段目でモノメチルアミンをMS−800、100部に対し10部添加し、反応を部分的に行った。1段目と2段目で生成されたメタクリル酸量からジメチルカーボネートをMS−800、100部に対し5部添加した。
【0057】
スクリュー回転数は150rpmとし、樹脂の供給量は20kg/hrとした。1段目の反応率は測定の結果20%であった。また、2段目では更に反応率が上がり40%に達していた。また、3段目でのメタクリル酸量は0.02mmol/gであった。
【0058】
反応部の脈動を押出機に付属した圧力計でモニタリングしたが、圧力幅は5.0〜5.5MPaの振れ幅で安定しており、脈動は見られなかった。また、得られた樹脂を280℃で成形したが、成形品には発泡は見られなかった。
【0059】
(実施例2)
(装置)
押出機には、40mm同方向噛み合い型二軸押出機(テクノベル製)を用い、押出機の長さと直径の比L/Dが90、樹脂フィーダーには、コイルスクリュー式の定重量フィーダー(クボタ製)を用いた。また、イミド化剤の添加ポンプには、高圧ガス対応液添ポンプ(昭和炭酸製)を用いた。
【0060】
(原料樹脂、イミド化剤、エステル化剤)
樹脂は、MS−800(新日鉄化学製)を用いた。イミド化剤には、モノメチルアミン(三菱ガス化学製)を用いた。エステル化剤には、ジメチルカーボネイト(宇部興産製)を用いた。
【0061】
(押出)
図2に示すように反応部を4分割にし、1段目の反応部でイミド化、2段目の反応部でエステル化、3段目の反応部でイミド化、4段目の反応部でエステル化の反応を行った。モノメチルアミンの添加部数はMS−800、100部に対し、各々10部とした。また、ジメチルカーボネートの添加部数はMS−800、100部に対し、各々2.5部とした。スクリュー回転数は150rpmとし、樹脂の供給量は20kg/hrとした。
1段目の反応率は測定の結果20%であった。また、2段目でのメタクリル酸量は0.02mmol/gであった。また、3段目の反応率が40%に達していた。また、4段目でのメタクリル酸量は0.02mmol/gであった。
【0062】
反応部の脈動を押出機に付属した圧力計でモニタリングしたが、各部の圧力幅は5.0〜5.2MPaの振れ幅で安定しており、脈動は見られなかった。また、得られた樹脂を280℃で成形したが、成形品には発泡は見られなかった。
【0063】
(実施例3)
(装置)
押出機には、40mm同方向噛み合い型二軸押出機(テクノベル製)を用い、押出機の長さと直径の比L/Dが90、樹脂フィーダーには、コイルスクリュー式の定重量フィーダー(クボタ製)を用いた。また、イミド化剤の添加ポンプには、高圧ガス対応液添ポンプ(昭和炭酸製)を用いた。
【0064】
(原料樹脂、イミド化剤、エステル化剤)
樹脂は、MS−800(新日鉄化学製)を用いた。イミド化剤には、モノメチルアミン(三菱ガス化学製)を用いた。エステル化剤には、ジメチルカーボネート(宇部興産製)を用いた。
【0065】
(押出)
反応部を5分割にし、1段目の反応部でイミド化、2段目の反応部でイミド化、3段目の反応部でエステル化、4段目の反応部でイミド化、5段目の反応部でエステル化の反応を行った。モノメチルアミンの添加部数はMS−800、100部に対し、各々10部とした。また、ジメチルカーボネートの添加部数はMS−800、100部に対し、各々3部とした。スクリュー回転数は150rpmとし、樹脂の供給量は20kg/hrとした。
1段目の反応率は測定の結果20%であった。また、2段目の反応率は更に向上し40%であった。3段目でのメタクリル酸量は0.05mmol/gであった。また、3段目の反応率が60%に達していた。また、5段目でのメタクリル酸量は0.02mmol/gであった。
【0066】
反応部の脈動を押出機に付属した圧力計でモニタリングしたが、各部の圧力幅は6.0〜6.5MPaの振れ幅で安定しており、脈動は見られなかった。また、得られた樹脂を280℃で成形したが、成形品には発泡は見られなかった。
【0067】
(比較例1)
(装置)
押出機には、40mm同方向噛み合い型二軸押出機(テクノベル製)を用い、押出機の長さと直径の比L/Dが90、樹脂フィーダーには、コイルスクリュー式の定重量フィーダー(クボタ製)を用いた。また、イミド化剤の添加ポンプには、高圧ガス対応液添ポンプ(昭和炭酸製)を用いた。
【0068】
(原料樹脂、イミド化剤、エステル化剤)
樹脂は、MS−800(新日鉄化学製)を用いた。イミド化剤には、モノメチルアミン(三菱ガス化学製)を用いた。エステル化剤には、ジメチルカーボネート(宇部興産製)と触媒としてトリエチルアミン(三菱ガス化学製)を用いた。
【0069】
(押出)
反応部は分割せずに1段の反応部でイミド化反応を行い、また、エステル化は行わなかった。モノメチルアミンの添加部数はMS−800、100部に対し、20部を一括して添加した。スクリュー回転数は150rpmとし、樹脂の供給量は20kg/hrとした。
【0070】
反応率は測定の結果40%であった。また、メタクリル酸量は0.30mmol/gであった。
【0071】
反応部の脈動を押出機に付属した圧力計でモニタリングしたが、不所望な生成ガスにより0.2〜10MPaの激しい圧力変動が見られ、ダイスからの吐出樹脂にも脈動が生じた。更に、ベント部からは周期的なガス噴出が見られた。
【0072】
また、得られた樹脂を280℃で成形したが、成形品には多数の発泡が見られた。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】押出機の構成例1
【図2】押出機の構成例2
【符号の説明】
【0074】
1 押出機
2 樹脂供給口
3 イミド化剤添加口
4 ベント口
5 エステル化剤添加口
6 樹脂フィード部
7 樹脂溶融部
8 樹脂シール部
9 反応部
10 脱揮部
11 吐出フィード部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1台の多軸押出機内で連続的にイミド化反応とエステル化反応を実施するイミド樹脂の製造方法であって、該押出機が、三箇所以上の反応部を有することを特徴とするイミド樹脂の製造方法。
【請求項2】
イミド樹脂が下記一般式(1)で表される単位と、下記一般式(2)で表される単位及び/又は下記一般式(3)で表される単位とを有するイミド樹脂である事を特徴とする、請求項1に記載のイミド樹脂の製造方法。
【化1】

(但し、R及びRは、それぞれ独立に、水素又は炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は炭素数5〜15の芳香環を含む置換基を示す。)
【化2】

(但し、R及びRは、それぞれ独立に、水素又は炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は炭素数5〜15の芳香環を含む置換基を示す。)
【化3】

(但し、Rは、水素又は炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、炭素数6〜10のアリール基を示す。)
【請求項3】
1台の多軸押出機内で連続的にイミド化反応とエステル化反応を実施するイミド樹脂の反応押出方法であって、該押出機が、三箇所以上の反応部を有することを特徴とするイミド樹脂の反応押出方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−274038(P2008−274038A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−116686(P2007−116686)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】