説明

イメージデータクラスタリングを使用した画素評価によるコンパートメント分離

本発明は、バイオマーカーの発現が検出され定量化される領域又はコンパートメントを判別する方法の改良に関する。特に、本発明は、オペレーターの介入又は決定過程を最小限にして客観的に、マーカーで標識されたコンパートメントを画定するための自動化された方法に関する。当該方法は、特にプロテイン発現を定量化分析する組織学組織切片において組織、細胞又は細胞内コンパートメントの正確な画定を提供する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2007年5月14日出願のアメリカ仮出願60/917,853の利益を享受する。
【背景技術】
【0002】
組織切片や組織マイクロアレイにおけるバイオマーカーの発現を自動的に定量分析する際には、組織切片の不均質、染色の細胞内(sub-cellular)局在、及びバックグランドシグナルの存在といったいくつかの課題がある。例えば、分析を受ける腫瘍や組織切片のタイプに依存して、対象領域がほぼサンプル全体であったり、わずかな比率だけであったりし得る。一例として、実質的に線維形成反応を有する膵癌や乳房の小葉癌は、全領域の大部分に間質組織の存在を示し得る。分析の目的が、上皮細胞のマーカー発現を判断することである場合、その領域だけを評価するプロトコルが使用されるべきである。当該プロトコルは、対象領域を選択することができるだけではなく、正規化も行えるものであるべきで、それにより、所定の領域から読み取られた発現レベルを他の領域と比較することが可能になる。細胞内局在判断にも同様の課題が存在する。組織マイクロアレイを含め、組織切片を迅速に分析し、組織中の細胞内コンパートメント及びその他の細胞含有サンプルにおいて判別されたバイオマーカーの同定及び局在判断を可能にする、自動化システム及び方法が必要である。
【0003】
いくつかの方法(共焦点及びコンボリューション/デコンボリューション顕微鏡法を含む)が、単一の高倍率視野内で細胞(又は細胞内)レベルでプロテインの発現を計測するために使用されてきた。しかしながらこれらの方法は、多数の連続イメージで実施される、コンピュータを使用した集約的で困難な技術である。その結果、免疫組織学の分析で現在標準となっているのは、スケールに従った従来の病理医ベースの分析及び類別である。
【0004】
組織切片の組織学的分析のための自動化システムは、1)染色組織の視野イメージを観察し、光学分析条件のパラメータを調節するオペレータ、2)全データセットを同様に処理する一様のセッティングではあるが、初期パラメータ、すなわちしきい値のセッティングはオペレータが依然として判断を下す必要のあるセッティング、のいずれかを要する方法を含むことが多い。これら両方法は、十分に客観的である単一で一貫した方法でデータが処理されないという不具合を少なくとも有する。それら判断によってシステムの出力が左右され、データ品質に影響を与え得る。また、これらの方法は、実験ごと、あるいは標本ごとに分析方法が調節可能であり、画一の方法が使用されないといった、システムの複雑性を増長するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、概略的には、プロテインの発現を検出及び計量し、マーカーで識別された生体コンパートメントを同定する方法に関する。本発明の目的は、組織及び細胞含有サンプルにおいてバイオマーカー発現が局在判断され定量化されるコンパートメントを識別する方法であって、ユーザーの介入が最小限で済み、細胞内コンパートメントの解像度を含めて最適なコンパートメントを規定する方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る方法は、対象の生体サンプルに存在している、第1マーカーで標識された第1生体コンパートメントと第2マーカーで標識された第2生体コンパートメントとを判別する方法であって、
前記第1生体コンパートメントに特異な第1造影剤を使用して提供される第1高解像度イメージと、前記第2生体コンパートメントに特異な第2造影剤を使用して提供される第2高解像度イメージと、を利用し、
前記第1生体コンパートメントの前記第1高解像度イメージにおける各画素位置の明るさ(intensity)を、前記第2生体コンパートメントの前記第2高解像度イメージにおいて対応する各画素位置の明るさと比較し、画素の明るさの違いによって、前記第1生体コンパートメントと前記第2生体コンパートメントとを判別する。
上記方法は、例えばコンピュータにより、自動化することができる。また、上記方法において、前記二つの高解像度イメージの画素は、前記第1造影剤の明るさと前記第2造影剤の明るさとを軸にしてプロットすることができる。
また、上記方法は、i)高い前記第1造影剤の明るさ及び低い前記第2造影剤の明るさによって特徴付けたクラスターの画素を前記第1生体コンパートメントに割り当て、ii)高い前記第2造影剤の明るさ及び低い前記第1造影剤の明るさによって特徴付けたクラスターの画素を前記第2生体コンパートメントに割り当て、そして、iii)低い前記第1造影剤の明るさ及び低い前記第2造影剤の明るさによって特徴付けたクラスターの画素を背景に割り当てると共にさらなる分析から当該画素を除くようにすることができる。その割り当てステップではいずれも、クラスタ化アルゴリズム、例えばk-meansクラスタリング法を、各画素のクラスタメンバーシップを決定するために使用することができる。また、この方法では、前記第1造影剤の明るさ及び前記第2造影剤の明るさをもつ残りの画素を、確率に基づいて、前記第1生体コンパートメント又は前記第2生体コンパートメントに割り当てることができる。あるいは、前記第1造影剤の明るさ及び前記第2造影剤の明るさをもつ残りの画素は、前記第1生体コンパートメント及び前記第2生体コンパートメントのいずれにも割り当てないものとすることができる。
上記方法において、前記生体コンパートメントは、細胞型、細胞内コンパートメント、組織コンパートメント、及び局在化細胞又は組織コンパートメントからなるグループから選択することができる。また、上記方法において、前記生体コンパートメントは、細胞核、細胞質、核膜、細胞膜、ミトコンドリア、小胞体、ペルオキシソーム、及びリソソームからなるグループから選択された細胞内コンパートメントとすることができる。また、上記方法において、前記生体コンパートメントは、上皮、ストローマ、中皮からなるグループから選択された組織コンパートメントとすることができる。一つの態様として、前記サンプルは、組織サンプル、細胞プレパラート、又は細胞内画分である。
上記方法では、前記第1造影剤及び前記第2造影剤の少なくとも一方の画素の明るさにより画定されるマスクを規定し、該マスク内の画素に対してのみコンパートメントの割り当てを決定することができる。また、上記方法では、前記第1マーカーで標識された第1生体コンパートメントのラベルに特異な前記第1造影剤、前記第2マーカーで標識された第2生体コンパートメントのラベルに特異な前記第2造影剤、で前記サンプルを培養することができる。
【0007】
本発明の他の態様に係る方法は、生体サンプル中に存在している、第1マーカーで標識された第1生体コンパートメントと第2マーカーで標識された第2生体コンパートメントとの判別を、コンピュータにより実行する方法であって、
a) 前記第1生体コンパートメントのラベルに特異な第1造影剤及び前記第2生体コンパートメントのラベルに特異な第2造影剤で前記サンプルを培養し、
b) 前記第1造影剤でラベルされたサンプルの第1高解像度イメージと前記第2造影剤でラベルされたサンプルの第2高解像度イメージとを取得し、
c) 前記第1高解像度イメージ及び前記第2高解像度イメージにおける各画素位置に対応する前記第1造影剤及び前記第2造影剤の明るさを計測し、
d) 各画素において、画素ごとの前記第1及び第2造影剤の明るさに基づく画素のクラスター分析を実行して、クラスターを計算し、
e) 高い前記第1造影剤の画素明るさ及び低い前記第2造影剤の画素明るさによって特徴付けたクラスターの画素を前記第1生体コンパートメントに割り当て、
f) 高い前記第2造影剤の画素明るさ及び低い前記第1造影剤の画素明るさによって特徴付けたクラスターの画素を前記第2生体コンパートメントに割り当て、
g) 低い前記第1造影剤の画素明るさ及び低い前記第2造影剤の画素明るさによって特徴付けたクラスターの画素を背景に割り当てると共に、さらなる分析から当該画素を除く、
ことを含み、これによって、第1のマーカーで標識された細胞内コンパートメントと第2のマーカーで標識された細胞内コンパートメントとを判別する。
【0008】
本発明の他の態様に係る方法は、生体サンプル中に存在している、第1マーカーで標識された第1生体コンパートメント及び第2マーカーで標識された第2生体コンパートメントにおける特定のバイオマーカーの局在判断及び定量化を、コンピュータにより実行する方法であって、
a) 前記第1生体コンパートメントのラベルに特異な第1造影剤、前記第2生体コンパートメントのラベルに特異な第2造影剤、及び前記バイオマーカーのラベルに特異な第3造影剤で前記サンプルを培養し、
b) 前記第1造影剤でラベルされたサンプルの第1高解像度イメージ、前記第2造影剤でラベルされたサンプルの第2高解像度イメージ、及び前記第3造影剤でラベルされた第3高解像度イメージを取得し、
c) 前記第1及び第2高解像度イメージの各画素位置における前記第1及び第2造影剤の画素明るさを計測し、
d) 前記第1生体コンパートメント又は前記第2生体コンパートメントに対して画素を割り当てる画素のクラスター分析を実行し、
e) 前記第3造影剤を示す明るさ値をもつ画素位置を認識するために、前記第1及び第2生体コンパートメントに割り当てた画素位置を、前記第3高解像度イメージにおいて分析し、前記第1及び第2生体コンパートメントのそれぞれに割り当てた画素位置で前記第3造影剤の総明るさ値を決定する、
ことを含み、これによって、前記第1生体コンパートメントと前記第2生体コンパートメントとにおける前記バイオマーカーの局在判断及び定量化を行う。
上記方法において、前記高解像度イメージは、正立又は倒立光学顕微鏡を使用して得ることができる。
また、上記方法において、クラスター分析は、各画素位置における前記第1及び第2造影剤の画素明るさによる反復k-meansクラスタリング法を使用して実行し、ユークリッド距離又は対数尤度距離を使用して三つの重心を計算することができる。この方法では、i)前記第1生体コンパートメント及び前記第2生体コンパートメントに対する画素位置の前記第1造影剤の明るさ及び前記第2造影剤の明るさを軸にして、画素位置及び前記計算した重心をプロットし、ii)前記重心を接続して三角形を画定し、iii)前記三角形領域の外にある明るさを有する画素位置を、(1)画素明るさが前記第1造影剤を示す場合には前記第1生体コンパートメントに割り当て、(2)画素明るさが前記第2造影剤を示す場合には前記第2生体コンパートメントに割り当て、(3)画素明るさが背景を示す場合にはいずれの前記生体コンパートメントにも割り当てず、iv)前記三角形領域内の画素位置を、画素が前記第1又は第2生体コンパートメントに由来する確率に応じた値に基づいて、前記第1生体コンパートメント又は前記第2生体コンパートメントに割り当てる、ことを含むことができる。
前記バイオマーカーは、プロテイン、ペプチド、核酸、脂質、及び糖質からなるグループから選択することができる。また、前記第1、第2、及び第3造影剤は、それぞれフルオロフォアを含んだものとすることができる。前記第1又は第2生体コンパートメント内に存在する前記バイオマーカーの定量化は、前記生体コンパートメント内画素位置の前記第3造影剤の明るさ値を加算し、その加算値を、前記生体コンパートメントの画素数で除算することを含む。前記第1又は第2生体コンパートメントに割り当てられない画素位置は、第3コンパートメントに割り当てることができる。前記サンプルは、約5ミクロンの厚さの組織サンプルであり得る。前記第1生体コンパートメントは細胞膜、前記第2生体コンパートメントは細胞核であり得る。前記生体サンプルは、固定組織切片であり得る。前記第1又は第2造影剤は、サイトケラチン、βカテニン、αカテニン、及びビメンチンからなるグループから選択されるマーカーと反応し得る。少なくとも前記第1、第2、又は第3造影剤の一つは、4',6-diamidino-2-phenylindole(DAPI)、Cy3、Cy-5-tyramide、及びAlexa fluor染料からなるグループから選ばれるフルオロフォアを含み得る。前記バイオマーカーは、Her-2/neu、エストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプター、上皮増殖因子レセプター、ホスファターゼ・テンシン・ホモログ(PTEN)、及び除去修復交差相補群1(ERCC1)からなるグループから選択することができる。上記方法においては、第1、第2、及び第3高解像度イメージにマスクを適用して、該マスク内の画素だけを分析することができる。
【0009】
本発明の他の態様に係るコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、プロセッサで実するために記憶されたコンピュータ可読指令を含む記録媒体であって、前記指令は、定量的免疫測定に使用される試薬の最適希釈を決定するために、次のステップを含む方法を実行させる。
それぞれ異なる希釈値を有し、個別の免疫測定染色強度値を備えた複数の希釈セットを受け取り、
前記希釈セットのそれぞれに対して、前記複数の免疫測定染色強度値のそれぞれに関連するダイナミックレンジ測定基準を決定し、
数値的に最も広いダイナミックレンジ測定基準を有する前記希釈セットを特定し、該特定希釈セットの希釈値を、前記定量的免疫測定に使用される試薬の最適希釈レベルの代表とする。
【0010】
本発明の他の態様に係るプログラムは、定量的免疫測定に使用される試薬の最適希釈を決定するためにコンピュータに実行させる次のステップを含む。
それぞれ異なる希釈値を有し、個別の免疫測定染色強度値を備えた多数の希釈セットを受け取り、
前記希釈セットのそれぞれに対して、前記複数の免疫測定染色強度値のそれぞれに関連するダイナミックレンジ測定基準を決定し、
数値的に最も広いダイナミックレンジ測定基準を有する前記希釈セットを特定し、該特定希釈セットの希釈値を、前記定量的免疫測定に使用される試薬の最適希釈レベルの代表とする。
【0011】
本発明の他の態様に係る方法は、組織サンプルに含まれている個々の対象細胞に存在する、第1マーカーで標識された第1細胞内コンパートメントと第2マーカーで標識された第2細胞内コンパートメントとの判別を、コンピュータにより実行する方法であって、
a) 前記第1細胞内コンパートメントのラベルに特異な第1染料、前記第2細胞内コンパートメントのラベルに特異な第2染料で、前記組織サンプルを培養し、
b) i)前記第1細胞内コンパートメントの第1イメージとii)前記第2細胞内コンパートメントの第2イメージとを得るために、前記組織サンプルにおける前記第1及び第2染料のそれぞれの高解像度イメージを、顕微鏡を使用して取得し、
c) 前記第1及び第2イメージの各画素位置における前記第1及び第2染料の明るさを測定し、
d) 前記第1染料の明るさと前記第2染料の明るさとを軸として画素をプロットし、
e) 各画素位置における前記第1及び第2染料の明るさによる反復k-meansクラスタリング法を実行して、三つのクラスターを計算し、
f) 高い前記第1染料の明るさ及び低い前記第2染料の明るさによって特徴付けられる前記クラスターの画素を前記第1細胞内コンパートメントに割り当て、
g) 高い前記第2染料の明るさ及び低い前記第1染料の明るさによって特徴付けられる前記クラスターの画素を前記第2細胞内コンパートメントに割り当て、
h) 低い前記第1染料の明るさ及び低い前記第2染料の明るさによって特徴付けられる前記クラスターの画素を背景に割り当て、さらなる分析から当該画素を除き、
i) 前記第1染料の明るさ且つ前記第2染料の明るさをもつ画素を確率に基づいて前記第1細胞内コンパートメント又は前記第2細胞内コンパートメントに割り当てる、
ことを含み、これによって、前記第1マーカーで標識された第1細胞内コンパートメントと前記第2マーカーで標識された第2細胞内コンパートメントとを判別する。
【0012】
本発明の他の態様に係る方法は、組織サンプルに含まれている個々の対象細胞に存在する、第1マーカーで標識された第1細胞内コンパートメントと第2マーカーで標識された第2細胞内コンパートメントとの判別を、コンピュータにより実行する方法であって、
a) 前記第1細胞内コンパートメントのラベルに特異な第1染料、前記第2細胞内コンパートメントのラベルに特異な第2染料で、前記組織サンプルを培養し、
b) i)前記第1細胞内コンパートメントの第1イメージとii)前記第2細胞内コンパートメントの第2イメージとを得るために、前記組織サンプルにおける前記第1及び第2染料のそれぞれの高解像度イメージを、顕微鏡を使用して取得し、
c) 前記第1及び第2イメージの各画素位置における前記第1及び第2染料の明るさを測定し、
d) 前記第1染料の明るさと前記第2染料の明るさとを軸として画素をプロットし、
e) 各画素位置における前記第1及び第2染料の明るさによる反復k-meansクラスタリング法を実行して、三つのクラスターを計算し、
f) 高い前記第1染料の明るさ及び低い前記第2染料の明るさによって特徴付けられる前記クラスターの画素を前記第1細胞内コンパートメントに割り当て、
g) 高い前記第2染料の明るさ及び低い前記第1染料の明るさによって特徴付けられる前記クラスターの画素を前記第2細胞内コンパートメントに割り当て、
h) 前記第1染料の明るさ及び低い前記第2染料の明るさによって特徴付けられる前記クラスターの画素を背景に低い割り当て、さらなる分析から当該画素を除き、
i) 前記第1染料の明るさ且つ前記第2染料の明るさをもつ画素を前記第1細胞内コンパートメント又は前記第2細胞内コンパートメントのいずれにも割り当てない、
ことを含み、これによって、前記第1マーカーで標識された第1細胞内コンパートメントと前記第2マーカーで標識された第2細胞内コンパートメントとを判別する。
【0013】
本発明の他の態様に係る方法は、組織サンプルに含まれている個々の対象細胞に存在する、第1マーカーで標識された第1細胞内コンパートメントと第2マーカーで標識された第2細胞内コンパートメントとにおける特定のバイオマーカーの局在判断及び定量化を、コンピュータにより実行する方法であって、
a) 前記第1細胞内コンパートメントのラベルに特異な第1染料、前記第2細胞内コンパートメントのラベルに特異な第2染料、及び前記バイオマーカーのラベルに特異な第3染料で、前記組織サンプルを培養し、
b) i)前記第1細胞内コンパートメントの第1イメージ、ii)前記第2細胞内コンパートメントの第2イメージ、iii)前記バイオマーカーの第3イメージを得るために、前記組織サンプルにおける前記第1、第2、及び第3染料のそれぞれの高解像度イメージを、正立又は倒立光学顕微鏡を使用して取得し、
c) 前記第1及び第2イメージの各画素位置における前記第1及び第2染料の明るさを測定し、
d) 各画素位置における前記第1及び第2染料の明るさによる反復k-meansクラスタリング法を実行して、前記第1細胞内コンパートメント又は前記第2細胞内コンパートメントに画素を割り当て、
e) 前記第3染料を示す明るさ値を有する画素位置を判別するために、前記第1細胞内コンパートメント、前記第2細胞内コンパートメント、又は前記細胞内コンパートメントの両方に割り当てられた画素位置を、前記第3イメージにおいて分析し、前記第1及び第2細胞内コンパートメントのぞれぞれに割り当てられた画素位置で前記第3染料の総明るさ値を測定する、
ことを含み、これによって、前記第1細胞内コンパートメントと前記第2細胞内コンパートメントとにおける前記バイオマーカーの局在判断及び定量化を行う。
【0014】
本発明の他の態様に係る方法は、組織サンプルに含まれている個々の対象細胞に存在する、第1マーカーで標識された第1細胞内コンパートメントと第2マーカーで標識された第2細胞内コンパートメントとにおける特定のバイオマーカーの局在判断及び定量化を、コンピュータにより実行する方法であって、
a) 前記第1細胞内コンパートメントのラベルに特異な第1染料、前記第2細胞内コンパートメントのラベルに特異な第2染料、及び前記バイオマーカーのラベルに特異な第3染料で、前記組織サンプルを培養し、
b) i)前記第1細胞内コンパートメントの第1イメージ、ii)前記第2細胞内コンパートメントの第2イメージ、iii)前記バイオマーカーの第3イメージを得るために、前記組織サンプルにおける前記第1、第2、及び第3染料のそれぞれの高解像度イメージを、正立又は倒立光学顕微鏡を使用して取得し、
c) 前記第1及び第2イメージの各画素位置における前記第1及び第2染料の明るさを測定し、
d) 各画素位置における前記第1及び第2染料の明るさによる反復k-meansクラスタリング法を実行し、ユークリッド距離又は対数尤度距離を使用して三つの重心を計算し、
e) 前記第1細胞内コンパートメント及び前記第2細胞内コンパートメントに対する画素位置の前記第1染料の明るさ及び前記第2染料の明るさを軸にして、画素位置及び前記計算した重心をプロットし、
f) 前記重心を接続して三角形を画定し、
g) 前記三角形領域の外にある明るさを有する画素位置を、(1)画素明るさが前記第1染料を示す場合には前記第1細胞内コンパートメントに割り当て、(2)画素明るさが前記第2染料を示す場合には前記第2細胞内コンパートメントに割り当て、(3)画素明るさが背景を示す場合にはいずれの前記細胞内コンパートメントにも割り当てず、
h) 前記三角形領域内の画素位置を、画素が前記第1又は第2細胞内コンパートメントに由来する確率に応じた値に基づいて、前記第1細胞内コンパートメント又は前記第2細胞内コンパートメントに割り当て、
i) 前記第3染料を示す明るさ値を有する画素位置を判別するために、前記第1細胞内コンパートメント、前記第2細胞内コンパートメントに割り当てられた画素位置を、前記第3イメージにおいて分析し、前記第1及び第2細胞内コンパートメントのぞれぞれに割り当てられた画素位置で前記第3染料の総明るさ値を測定する、
ことを含み、これによって、前記第1細胞内コンパートメントと前記第2細胞内コンパートメントとにおける前記バイオマーカーの局在判断及び定量化を行う。
【0015】
その他の本発明の特徴、目的、利点は、以下に説明する図面、詳細な説明、及び特許請求の範囲において明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】データ中の三つの重心を決定するために使用されるクラスタリングの図。
【0017】
【図2】DAPI(nuclei)、Anti-Cytokeratin(Cy3)、及びAnti-Integrin Alpha-V(Cy5)で染色した株化細胞の図。
【0018】
【図3】DAPI(norm)対Cy3(norm)を示した散布図。
【0019】
【図4】対数尤度距離(Auto)を使用したクラスタリングを示すデータの図。
【0020】
【図5】DAPI比率:対数尤度距離(Force 3)のクラスタリングを示すデータの図。両者は同様のクラスタリングで提供され、トップクラスターをCy3優勢のポジティブ画素として且つボトムクラスターをDAPI優勢のポジティブ画素として、Cy3比率を使用する。
【0021】
【図6】「シグナリングクラスター」Cy3比率(正規化値に基づく)対数尤度(標準化)−Force 3を示す図。
【0022】
【図7】細胞型Her 2 Spot 17の染色を示す図。
【0023】
【図8】細胞型p 53 Spot 2の染色を示す図。
【0024】
【図9】図9A〜図9Cは、クラスタリング分析を示すプロットの図。 図9Aは、具体的な画素割り当て:背景(ポイントAとCの間のボックス)、100%細胞質/Cy3(左の境界とCの間のボックス;Y軸;0%細胞核/DAPI)、0−100%細胞質/Cy3(三角形ABC;0%細胞核/DAPI)、0−100%細胞核/DAPI(三角形ABD;0%細胞質/Cy3)、100%細胞核/DAPI(ボトムボックス;X軸;0%細胞質/Cy3)を示すC−AQUA法のモデル記述。 図9Bは、表示した重心(B,背景;C,細胞質;N,細胞核)に関し互いにグラフ化したCy3(Y)とDAPI(X)の画素明るさを示す2×2散布図。このイメージは、両コンパートメント重心が、背景重心から標準偏差1以上であることの検証をパスしている。 図9Cは、画素明るさ及び重心を表示した、異なる組織スポットの2×2散布図。このイメージは、細胞質重心(C)と背景重心(B)との間の不十分な距離(<標準偏差1)のために検証をパスしていない。
【0025】
【図10】図10A及び図10Bは、AQUA(登録商標、以下同)とC−AQUAの分析を比較して示したプロットの図。 図10Aは、2人の熟練オペレーターが従来のAQUA分析アルゴリズムを使用して発生したAQUAスコア間の、表示したPearson RとSpearman's Rhoの値を用いた回帰分析。 図10Bは、2人の熟練オペレーターが、図10Aと同じデータセットでC−AQUAアルゴリズムを使用して発生したAQUAスコア間の、表示したPearson RとSpearman's Rhoの値を用いた回帰分析。
【0026】
【図11】図11A及び図11Bは、AQUAとC−AQUAの分析を比較して示したプロットの図。 図11Aは、表示したPearson RとSpearman's Rhoの値を用いた、AQUA分析(Y軸)とC−AQUA分析(X軸)との間の細胞核コンパートメントサイズに対する線形回帰分析。 図11Bは、表示したPearson RとSpearman's Rhoの値を用いた、AQUA分析(Y軸)とC−AQUA分析(X軸)との間の細胞質コンパートメントサイズに対する線形回帰分析。
【0027】
【図12】図12A〜図12Cは、AQUAとC−AQUAの分析を比較して示したプロットの図。 図12Aは、表示したPearson RとSpearman's Rhoの値を用いた、AQUA分析(Y軸)とC−AQUA分析(X軸)との間のER AQUAスコアに対する線形回帰分析。 図12Bは、表示したPearson RとSpearman's Rhoの値を用いた、AQUA分析(Y軸)とC−AQUA分析(X軸)との間のPR AQUAスコアに対する線形回帰分析。 図12Cは、表示したPearson RとSpearman's Rhoの値を用いた、AQUA分析(Y軸)とC−AQUA分析(X軸)との間のHer2 AQUAスコアに対する線形回帰分析。
【0028】
【図13】図13A〜図13Cは、AQUAとC−AQUAの分析を比較して示したプロットの図。AQUA分析(左側)及びC−AQUA分析(右側)の図13A)ER、図13B)PR、及び図13C)Her2の発現に対する残存転帰の比較で、教師なし対数尤度距離クラスタリングにより決定されるカットポイントの割り当てに基づいた同様の残存転帰を示す[図13A)従来のAQUA:80.9%(ER High)から69.5%(ER Low)までの全残存(log-rank p=0.018)中の11.4%減少;C−AQUA:81.6%(ER High)から67.8%(ER Low)までの全残存(log-rank p=0.005)中の13.8%減少;図13B)従来のAQUA:84.2%(PR High)から71.8%(PR Low)までの全残存(log-rank p=0.021)中の12.4%減少;C−AQUA:83.3%(PR High)から68.8%(PR Low)までの全残存(log-rank p=0.001)中の14.5%減少;図13C)従来のAQUA:77.1%(Her2 Low)から73.8%(Her2 Mid)及び58.6%(Her High)までの全残存(log-rank p=0.022)中の18.5%総減少;C−AQUA:77.8%(Her2 Low)から73.8%(Her2 Mid)及び53.6%(Her High)までの全残存(log-rank p=0.002)中の24.2%総減少]。
【0029】
【図14】図14A及び図14Bは、AQUA及びC−AQUA分析により決定されたPTEN発現AQUAスコアの比較(線形回帰)を示す。 図14Aは、表示したPearson's Rを用いたAQUA分析(Y軸)及びC−AQUA分析(X軸)により決定した細胞核PTEN発現に対する線形回帰分析。 図14Bは、表示したPearson's R値を用いたAQUA分析(Y軸)及びC−AQUA分析(X軸)により決定した細胞質PTEN発現に対する線形回帰分析。
【0030】
【図15】PTEN細胞質発現AQUAスコア。
【0031】
【図16】両方法に由来するPTEN AQUAスコアの患者予後に対する相関をKaplan-Meier曲線において示した図。PTEN AQUAスコアは、患者生存に深く関連付けられた。高PTEN発現に比べて、PTEN発現が低いと転帰が悪くなる傾向にあった。
【0032】
【図17】図17A及び図17Bは、AQUA及びC−AQUA分析により決定されたERCC1発現AQUAスコアの比較(線形回帰)を示す。 図17Aは、表示したPearson's Rを用いたAQUA分析(Y軸)及びC−AQUA分析(X軸)により決定した細胞核ERCC1発現に対する線形回帰分析。 図14Bは、表示したPearson's R値を用いたAQUA分析(Y軸)及びC−AQUA分析(X軸)により決定した細胞質ERCC1発現に対する線形回帰分析。
【0033】
【図18】ERCC1細胞質発現AQUAスコア。
【0034】
【図19】両方法に由来するERCC1 AQUAスコアの患者予後に対する相関をKaplan-Meier曲線において示した図。ERCC1 AQUAスコアは、患者生存に深く関連付けられた。高ERCC1発現に比べて、ERCC1発現が低いと転帰が悪くなる傾向にあった。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明を十分に理解できるよう様々なレベルで詳細に、本発明の態様、様式、形態、変形、及び特徴をいくつか以下に説明する。
【0036】
特に定義しない限り、ここで使用する技術的及び科学的用語のすべては、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が一般的に理解しているのと同様の意味をもつ。本明細書及び特許請求の範囲において使用されている単数形の「a」「an」「the」は、明確な指示のない限り、複数の対象も含む。例えば、「a cell」の場合、2以上の細胞の集合も含む、等である。一般的に、ここで使用している命名法や、以下に記載する細胞生物学における検査法、免疫組織化学的検査、及び造影(例えば細胞及び組織)は、当分野において良く知られ、共通に使用されている。標準技術又はその応用が免疫組織化学分析に対して使用される。ここで引用するすべての参照文献は、その全内容がここに引用される。
【0037】
組織マイクロアレイ技術は、高いスループットで組織サンプルを分析する機会を提供する(Konen, J. et al., Nat. Med. 4: 844-7 (1998); Kallioniemi, O.P. et al., Hum. Mol. Genet. 10: 657-62 (2001); Rimm, D.L. et al., Cancer J. 7: 24-31 (2001))。例えば、組織マイクロアレイを使用して大規模研究を迅速に実施する能力は、薬物標的/予後マーカー(例えばエストロゲンレセプター(ER)及びHER2/neu)及び治療候補を同定し検証するための重要情報を提供し得る。
【0038】
ほとんどのバイオマーカーがパラメーター分布(通常、釣鐘型)を示し、したがって、連続スケール(例えば0から1000)によって良好に分析される。残念ながら、主として人間の目は染色強度の微妙な違いを確実に見分けることができないので、人的観測は名目的(例えば1+、2+、3+)になる傾向がある。名目的な人的観測を連続スケールに転換するために、いくつかの方法が開発されてきた。その中で有力なのが、陽染性細胞の割合(0から100)と染色強度(例えば0から3)とを乗算し、理論的な連続スケール(0から300)をつくる、H-scoreである。しかしながら、スコアをまるめる(例えば、3+で47%のスコア141に対する3+で50%のスコア150)傾向にあることに加え、特にスケールの高低の端の値で染色強度の微妙な差を検出できないため、H-scoreの有効性には限界がある。
【0039】
本発明の一形態において、画定された細胞コンポーネントにおいて特定のターゲットを定量化し局在化する改善された方法が提案される。発明者は、十分に客観的である利点を有し、オペレーターの介入や意思決定を最小限にすることの可能な方法を見出した。当該方法は、取得された各細胞内コンパートメントの明るさデータにクラスタリングを実行する。このクラスタリングは、背景の除去、特異画素の所定のコンパートメントへの割り当て、及びオーバーラップしている信号がある場合の各コンパートメントへの画素の確率的な割り当て、を可能にする。各コンパートメントに画素が割り当てられると(又はノイズの場合に廃棄されると)、関連するターゲット信号が、例えば合計やスコア計算等で測定され得る。
【0040】
本発明は、特異コンパートメントに対する客観的な画素割り当ての方法を提案する。その割り当ては、普遍的基準を設定するのではなく、画像対画像ベースで優先的に決定される。さらに、画素割り当て(例えば、脂肪質に対するCy3/サイトケラチン画素)は、他のコンパートメントイメージの画素の状態を考察するという点では、他のコンパートメントイメージの関数でもある。一つの実施形態において、第1イメージは、第1コンパートメントを特異にラベルする第1染料であり(例えば、細胞質コンパートメントを表すCy3/サイトケラチンイメージ)、第2イメージは、第2コンパートメントを特異にラベルする第2染料である(例えば、細胞核コンパートメントを表すDAPIイメージ)。そして、画素割り当ては以下の四つの基準に基づく。
1)第1及び第2イメージ(例えばDAPI及びCy3)の両方において明るさが低い:背景:除去
2)第1染料(Cy3)の明るさに対して第2染料(例えばDAPI)の明るさの方が強い:第2コンパートメント(例えば細胞核)
3)第2染料(例えばDAPI)の明るさに対して第1染料(Cy3)の明るさの方が強い:第1コンパートメント(例えば細胞質)
4)第2染料及び第1染料(例えばDAPI及びCy3)の両方とも明るさが高い:判定保留:除去
【0041】
クラスタリングは数学的アルゴリズムの関数であり、例えばユークリッド又は対数尤度距離により決定されるような、各データポイント間の相対的距離によってデータセットの重心が規定される。必ずしもセオリーに束縛されるとは限らないが、少なくとも二つのイメージ(例えばDAPI及びCy3)から画素明るさをクラスタリングすることで、少なくとも上記基準により、画素を判別する重心が得られると考えられる。クラスタリングは客観的であり、個々のイメージに対してそれぞれ実施できるので、オペレーターの介入とは無関係に、コンパートメントに対する信頼性の高い画素の割り当てが可能になることが見出された。
【0042】
別の実施形態において、第1及び第2染料の両方を示す信号を含んだ画素が、次の方法によってコンパートメントに割り当てられる。取得されたイメージにおける画素のそれぞれは、コンパートメントマーカーAからの明るさ寄与、コンパートメントマーカーBからの明るさ寄与、及び対象のターゲット又はバイオマーカーからの明るさ寄与、の三つの特性を有する。これらの明るさは、実験配置ごとのそれぞれの蛍光チャンネルにおいて測定される。実験のバイアスを避けるために、ターゲットの明るさは、当該方法において操作されない。したがって、二つのコンパートメントの特性に関するデータが、図1に概略的に示した二次元プロットにおいて説明可能である。データの典型的な広がりは、点線の直角三角形によって表示されている。
【0043】
軸のいずれかに向かう強いバイアスをもった画素は、そのコンパートメントに割り当て可能である(例えば、領域A及びBの画素は無条件にコンパートメントA及びBにそれぞれ割り当てることができる)。原点に近い画素は両チャンネルで低い明るさを示し、背景として廃棄可能であり、領域Dにある両者の明るさが同じように高い異常画素も同様である。続いて、A/Bで表示された領域内の残りの画素は、確率に基づいて各コンパートメントに割り当て可能である。この割り当ては、当該画素のターゲット信号を、確率的特徴付けに基づいて、両コンパートメントに分散させる。
【0044】
上記領域を画定するために、例えば、それぞれのイメージに対し、データにおける三つの重心(C1,C2,C3で示す)を決定するためにクラスタリングが使用される。この方法は全自動であり、遂行にあたってオペレーターの判断を要しない。分析は、三つの重心につきユークリッド距離を使用したk-meansクラスタリング法を適用することにより実施される。これらのポイントが決定されれば、図1に示した領域が、当該ポイントを使用して生成される。そして、データは、次のようにして分析される。(i)背景及び異常画素がさらなる計算から除去される。原点までの距離が背景重心(C2)の原点までの距離の2倍を下回る画素は、背景として規定する。最も外側の重心で画定される線又は面(例えば図1のC1,C3、領域D)により規定される値を超える明るさの画素は、異常として識別する。(ii)領域A,Bの画素は、該当する二つのコンパートメントだけに割り当てる。(iii)次に、三角形の領域A/B内の画素に対しては、複数のコンパートメントに原則的に分散させる確率値を割り当てる。この確率値は、二つの領域A,Bからの距離に基づいて計算することができる。あるいは、確率値は、重心として得られた三つの頂点からの各画素の距離を分析することにより、背景領域からの寄与をもつ各画素の確率も与える形状関数を利用して、計算することができる。(iv)割り当ての済んだ全画素を用い、各コンパートメントについて、関連するターゲットスコアを合計することができる。スコアは、標準的手法(数式1)を使用して計算される。式中、“Int”は画素の明るさ、“P”は、特定のコンパートメントに割り当てられる画素の確率である(0から1まで)。
【数1】

【0045】
一般的な方法
概して、ここに記載しているのは、組織及び組織マイクロアレイを含め、細胞含有サンプルの迅速、自動的な分析のために使用され得る技術の集合である。これら技術は、互いに関連して設けられ、連係したプロセスとして記載されているが、それぞれの技術は、広く応用可能で、個々に独立して又は以下に示された他の技術と結びつけて使用され得る。
【0046】
好適な実施形態において、本発明の方法は、AQUA分析と共に優先的に使用することが可能で、AQUA分析の特徴は、米国特許第7,219,016号に記載されている。
【0047】
代表的なAQUAの実験セットアップにおいて、組織サンプルは、例えば対象の細胞内コンパートメント及び研究対象の特異ターゲットを標識するマーカーで染色される。PLACE(pixel-based local assignment for compartmentalization of expression)が、発現区分の目的でイメージ画素を効果的に区分するために機能するキーアルゴリズムである。このアルゴリズムで重要なステップが、信号特異画素から背景又は非特異画素を線引きするために使用される、明るさのしきい値のセッティングである。これにより「マスク」されたイメージは、次に、しきい値を上回る画素を特異細胞内コンパートメントに割り当てるといった相互排他的な方式で組み合わせられる。画素が各コンパートメントに割り当てられた後には、ターゲットバイオマーカーに関する信号が、所定のコンパートメントに割り当てられた全画素にわたって平均化され、これが、サンプルに対するAQUAスコアである。
【0048】
例えば、上皮腫瘍検体において、腫瘍部位とこれに付随する細胞内コンパートメントとを区別するために二つの染料を使用可能である:DAPI(4'-6-Diamidino-2-phenylindole;nuclear/dsDNA特異染色マーカー)及びサイトケラチン(蛍光読み出し用標識の上皮特異バイオマーカー)。これらのイメージは、個々にしきい値に基づいて非特異信号が除去された後、上皮特異だけではなく、細胞質及び細胞核特異画素も現すイメージを生成するために、組み合わせられる。続いて、第3の蛍光チャンネルにおいて読み出されるべくラベルされた特異ターゲットからの画素の明るさが、この「PLACEd」イメージ内で定量化され得る。
【0049】
好適には、臨床オペレーション用に、イメージ区分の全自動化によってユーザーによるしきい値判断ステップを除くなど、AQUA分析スコアリングアルゴリズムを強化することが好ましい。これにより、いくつかのポイントでシステムが改善される。第一に、最適なしきい値設定の決定にかかるオペレーターの時間に関してシステムの効率が大幅に向上する。第二に、しきい値設定の主観的性質により、熟練したオペレータでも見られるオペレータ間のバラツキが排除され得る。第三に、臨床及び研究のどちらか又は両方の実験効率及び質を制御する目的で、画一的なしきい値設定の方法が、TMAコホートを横断して又は組織切片全体で取得される全チャンネル特異イメージに、適用されるべきである。自動化PLACEのような方法の発展により、イメージ区分がイメージごとのベースで最適化可能となるであろう。最後に、ここに記載の方法がコンパートメントイメージの同時分析を伴い、全コンパートメントマーカーに対する画素データに関してしきい値がセットされる。
【0050】
本発明は、特に制限されるものではないが、組織バイオプシー及び細胞含有流体サンプル、例えば、血液、尿、髄液、唾液、リンパ液、胸水、腹水、心膜液を含む、各種のイメージ化可能な細胞含有サンプルにおけるバイオマーカーを局在判断し定量化するために使用可能であり、また、組織マイクロアレイの分析に使用可能である。
【0051】
例えば、正立又は倒立光学顕微鏡、走査共焦点顕微鏡、カメラ、走査又はトンネル電子顕微鏡、走査プローブ顕微鏡、赤外線撮像素子など、各種の光学的又は非光学的イメージングデバイスが使用され得る。
【0052】
上記形態において、コンピュータは、システムの他の構成要素を制御するため及びイメージを分析するために、ハードウエア、ソフトウエア、又は両者の複合を含み得る。上述の分析は、標準的なプログラミング技術を使用したコンピュータプログラムにおいて実行される。当該プログラムは、それぞれがプロセッサ、データストレージシステム(メモリやストレージ要素を含む)、少なくとも一つの入力デバイス、ディスプレイやプリンタといった少なくとも一つの出力デバイスを備えたプログラマブルコンピュータで実行されるように設計される。プログラムコードは、入力データ(例えば、互いに縫い合わせたイメージ又はイメージスタック)に適用され、ここに記載された機能を実行し、1以上の出力デバイスに適用される情報(例えば信号の局在化)を生成する。各コンピュータプログラムは、high level prosedural programming language又はobject oriented programming language、あるいは、assembly又はmachine languageにおいて実施可能である。これら各コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体(例えばCD ROMや磁気ディスク)に記憶可能で、コンピュータに読み込まれることで、ここに記載される分析をコンピュータのプロセッサに実行させる。
【0053】
以下、ここに記載の方法に従った組織マイクロアレイの準備及び分析の実施形態に関する詳細な説明が提供されるが、同様のステップが、各種の細胞含有サンプルに関し実施され得る。組織マイクロアレイは、典型的にはパラフィンの薄いブロックに規定の間隔で行と列に整列させて埋め込まれる、組織コアから準備された組織スポットの多数のサンプルを含む。組織スポット(組織コアの薄い切片)は、典型的には5ミクロン程度の薄さと0.6ミリ程度の直径を有するほぼディスク状であり得る。典型的に、各組織スポットの中心間は、パラフィンブロックにおいて数十分の1ミリ程度の間隔である。組織スポットの切片は、顕微鏡スライド上に載置され得る。組織マイクロアレイに含まれる組織スポットの数は適宜で、代表的には、数百から数千のオーダーである。
【0054】
光学顕微鏡ステーションが、適切な組織イメージを得るために使用可能である。顕微鏡ステーションは、組織を画像化するための光学顕微鏡と、該イメージを分析するためのコンピュータを含む。光学顕微鏡は、マウント、光源のハウジング、サンプルステージ、対物レンズ、CCDカメラを含む。フレーム取り込みソフトウエアがCCDカメラを通したイメージの取得に使用される。
【0055】
光学顕微鏡は、標準又は蛍光顕微鏡検査のための適切な照明スペクトルを提供する光フィルタも含む。例えば、蛍光顕微鏡検査のためのフィルタは、一連の干渉フィルタを収容したフィルタホイール及びハウジングにおいて提供され得る。ホイールとしたフィルタは、適切な照明スペクトル選択を可能にする。ホイールのフィルタは、蛍光顕微鏡検査におけるスペクトル特徴の分離のために、透過光を修正(ろ波)する。サンプルステージは、組織サンプル又は組織マイクロアレイの入った顕微鏡スライドを支持し、適切な位置に合わせる。サンプルステージは、x,y,z方向(軸が表示される)にリニアに動かすことができる。サンプルステージは、モータによる自動化も可能である。コンピュータによるモータのサーボ制御で、サンプルステージの移動が制御される。
【0056】
組織マイクロアレイは、次のようにして画像化することができる。ユーザーがサンプルステージにマクロアレイを載置する。ユーザーは、サンプルステージを調節し、最初の(例えば左上角の)組織スポットを視野の中心に据えて、CCDカメラの焦点を合わせる。対物レンズは適切な倍率に調節され、例えば、0.6ミリの組織スポットは10×の倍率で見ることができる。組織スポットは、染色組織や組織自己蛍光の可視光散乱又は蛍光タグに由来する信号を含む種々の手段を通して評価されるように、通常、周囲のパラフィンよりも高い光強度の領域に対応する。コンピュータは、コンピュータソフトウエア(Softworx 2.5, Applied Precision, Issaquah, WA)及びイメージングプラットフォーム(例えばDeltavision)を使用して低解像度イメージ(例えば、16ビット解像度の64画素×64画素)を取得可能である。コンピュータは、視野とほぼ同程度、自動的にサンプルステージを移動させ、継いで、第2の低解像度イメージを取得する。このプロセスは、コンピュータが組織サンプル又はマイクロアレイのイメージを取得し終わるまでリピートされる。市販のソフトウエアを使用し、次にコンピュータは、連続イメージをパッチワークのように互いに縫い合わせるようにして、組織マイクロアレイ全体の合成イメージを生成する。
【0057】
本発明に従って検出され得るバイオマーカーは、特に制限されないが、各種の核酸、プロテイン、ペプチド、脂質、糖質、又はその他の細胞のコンポーネントを含む。ある種のマーカーは特定の細胞に特徴的であり、別のマーカーは、特定の疾患や条件と関係があるとされている。既知の予後マーカーの例には、例えば、ガラクトシルトランスフェラーゼII、神経特異性エノラーゼ、ATPアーゼ−2、酸ホスファターゼなどのマーカー酵素がある。ホルモン又はホルモンレセプターマーカーには、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)、副腎皮質刺激ホルモン、癌胎児抗原(CEA)、前立腺特異性抗原(PSA)、エストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプター、アンドロゲンレセプター、gClq-R/p33補体レセプター、IL−2レセプター、p75ニューロトロフィンレセプター、PTHレセプター、甲状腺ホルモンレセプター、インスリンレセプターが含まれる。
【0058】
リンパ系マーカーとしては、α1−アンチキモトリプシン、α1−アンチトリプシン、B細胞マーカー、bcl−2、bcl−6、Bリンパ球抗原36kD、BM1(骨髄マーカー)、BM2(骨髄マーカー)、ガレクチン3、グランザイムB、HLAクラスI抗原、HLAクラスII(DP)抗原、HLAクラスII(DQ)抗原、HLAクラスII(DR)抗原、ヒト好中球デフェンシン、イムノグロブリンA、イムノグロブリンD、イムノグロブリンG、イムノグロブリンM、K鎖、L鎖、λ鎖、リンパ球/組織球抗原、マクロファージマーカー、ムラミダーゼ(リゾチーム)、p80未分化リンパ腫キナーゼ、プラスマ細胞マーカー、分泌性白血球プロテアーゼインヒビター、T細胞抗原レセプター(JOVI1)、T細胞抗原レセプター(JOVI3)、ターミナルデオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ、Unclustered B cell マーカーが含まれる。
【0059】
腫瘍マーカーとしては、αフェトプロテイン、アポリポプロテインD、BAG−1(RAP46プロテイン)、CA19−9(シアリルルイスA)、CA50(カルシノーマ随伴ムチン抗原)、CA125(卵巣癌抗原)、CA242(腫瘍随伴ムチン抗原)、クロモグラニンA、クラスタリン(アポリポプロテインJ)、上皮膜抗原、上皮関連抗原、上皮特異抗原、上皮成長因子レセプター、エストロゲンレセプター、全嚢胞性疾患液プロテイン15、肝細胞特異抗原、HER2、ヘレグリン、ヒトの胃ムチン、ヒトの乳脂肪球、MAGE−1、マトリックスメタロプロテアーゼ、Melan−A、メラノーママーカー(HMB45)、Mesothelin、メタロチオネイン、小眼球症関連転写因子(MITF)、Muc−1コアグリコプロテイン、Muc−1グリコプロテイン、Muc−2グリコプロテイン、Muc−5ACグリコプロテイン、Muc−6グリコプロテイン、ミエロペルオキシダーゼ、Myf−3(横紋筋肉腫マーカー)、Myf−4(横紋筋肉腫マーカー)、MyoD1(横紋筋肉腫マーカー)、ミオグロビン、nm23プロテイン、胎盤アルカリホスファターゼ、プレアルブミン、プロゲステロンレセプター、前立腺特異抗原、前立腺性酸性ホスファターゼ、前立腺性インヒビンペプチド、PTEN、腎細胞癌マーカー、小腸粘液抗原、テトラネクチン、甲状腺転写因子−1、マトリックスメタロプロテアーゼ1組織インヒビター、マトリックスメタロプロテアーゼ2組織インヒビター、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連プロテイン−1、ビリン、フォンウィルブランド因子、CD34、CD34ClassII、CD54Ab−1、CD63、CD69、Chk1、Chk2、クラスピンC−met、COX6C、CREB、サイクリンD1、サイトケラチン、サイトケラチン8、DAPI、デスミン、DHP(1-6 Dipheynyl-1,3,5-Hexatriene)、E−カドヘリン、EEA1、EGFR、EGFRvIII、EMA(上皮膜抗原)、ER、ERB3、ERCC1、ERK、E−セレクチン、FAK、フィブロネクチン、FOXP3、γ−H2AX、GB3、GFAP、Giantin、GM130、Golgin97、GRB2、GRP78BiP、GSK3β、HER−2、ヒストン3、ヒストン3_K14−Ace[Anti-acetyl-Histone H3 (Lys 14)]、ヒストン3_K18−Ace[Histone H3-Acetyl (Lys 18)]、ヒストン3_K27−TriMe[Histone H3 (trimethyl K27)]、ヒストン3_K4−diMe[Anti-dimethyl-Histone H3 ( Lys 4)]、ヒストン3_K9−Ace[Acetyl-Histone H3 (Lys 9)]、ヒストン3_K9−triMe[Histone 3-tri methyl (Lys 9)]、ヒストン3_S10−Phos[Anti-Phospho Histone H3 (Ser 10), 有糸分裂マーカー]、ヒストン4, ヒストンH2A.X_S139−Phos[Phospho Histone H2A.X (Ser139) antibody]、ヒストンH2B、ヒストンH3_ジメチルK4、ヒストンH4_トリメチルK20−Chip grad、HSP70、ウロキナーゼ、VEGF R1、ICAM−1、IGF−1、IGF−1R、IGF−1レセプターβ、IGF−II、IGF−IIR、IKB−αIKKE、IL6、IL8、インテグリンαVB3、インテグリンαVβ6、インテグリンαV/CD51、インテグリンB5、インテグリンB6、インテグリンB8、インテグリンβ1(CD29)、インテグリンβ3、インテグリンβ5インテグリンB6、IRS−1、Jagged1、Anti-protein kinaseCβ2、LAMP−1、L鎖Ab−4(カクテル)、λ鎖、K鎖、M6P、Mach2、MAPKAPK−2、MEK1、MEK1/2(Ps222)、MEK2、MEK1/2(47E6)、MEK1/2Blocking Peptide、MET/HGFR、MGMT、ミトコンドリア抗原、Mitotracker Green FM、MMP−2、MMP9、E−カドヘリン、mTOR、ATPase、N−カドヘリン、ネフリン、NFKB、NFKBp105/p50、NF−KB P65、ノッチ1、ノッチ2、ノッチ3、OxPhos Complex IV、p130Cas、p38MAPK、p44/42MAPK antibody、P504S、P53、P70、P70S6K、Panカドヘリン、パキシリン、P−カドヘリン、PDI、pEGFR、ホスフォAKT、ホスフォCREB、ホスフォEGFレセプター、ホスフォGSK3β、ホスフォH3、ホスフォHSP−70、ホスフォMAPKAPK−2、ホスフォMEK1/2、ホスフォp38MAPキナーゼ、ホスフォp44/42MAPK、ホスフォp53、ホスフォPKC、ホスフォS6リボゾームプロテイン、ホスフォSrc、ホスフォ−Akt、ホスフォ−Bad、ホスフォ−IKB−a、ホスフォ−mTOR、Phospho-NF-kappaB p65、ホスフォ−p38、ホスフォ−p44/42MAPK、ホスフォ−p70S6キナーゼ、ホスフォ−Rb、ホスフォ−Smad2、PIM1、PIM2、PKCβ、ポドカリキシン、PR、PTEN、R1、Rb4H1、R−カドヘリン、リボヌクレオチドリダクターゼ、RRM1、RRM1l、SLC7A5、NDRG、HTF9C、HTF9C、CEACAM、p33、S6リボゾームプロテイン、Src、サバイビン、Synaptopodin、シンデカン4、タリン、テンシン、チミジル酸シンターゼ、ツベリン、VCAM−1、VEGF、ビメンチン、アグルチニン、YES、ZAP−70、ZEBが含まれる。
【0060】
細胞周期関連マーカーとしては、アポトーシスプロテアーゼ活性化因子−1、bcl−w、bcl−x、ブロモデオキシウリジン、CAK(cdk−活性化キナーゼ)、細胞アポトーシス感受性プロテイン(CAS)、カスペース2,カスペース8、CPP32(カスペース−3)、CPP32(カスペース−3)、サイクリン依存性キナーゼ、サイクリンA、サイクリンB1、サイクリンD1、サイクリンD2、サイクリンD3、サイクリンE、サイクリンG、DNA断片化因子(N-terminus)、Fas (CD95)、 Fas結合デスドメインプロテイン、Fasリガンド、Fen−1、IPO−38、Mcl−1、ミニ染色体維持プロテイン、 ミスマッチ修復プロテイン(MSH2)、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ、増殖性細胞核抗原、p16プロテイン、p27プロテイン、p34cdc2、p57プロテイン(Kip2)、p105プロテイン、Stat1α、トポイソメラーゼI、トポイソメラーゼIIα、トポイソメラーゼIIIα、トポイソメラーゼIIβが含まれる。
【0061】
神経組織及び腫瘍マーカーとしては、αBクリスタリン、α−internexin、αシヌクレイン、アミロイド前駆体プロテイン、βアミロイド、カルビンジン、コリンアセチルトランスフェラーゼ、興奮性アミノ酸トランスポーター1、GAP43、グリア線維酸性プロテイン、グルタミン酸レセプター2、ミエリン塩基性プロテイン、神経成長因子レセプター (gp75)、神経芽細胞腫マーカー、神経フィラメント68kD、神経フィラメント160kD、神経フィラメント200kD、 神経特異性エノラーゼ、ニコチン性アセチルコリンレセプターα4、ニコチン性アセチルコリンレセプターβ2、ペリフェリン、プロテイン遺伝子プロダクト9、S−100プロテイン、セロトニン、SNAP−25、シナプシンI、シナプトフィジン、tau、トリプトファンヒドロキシラーゼ、チロシンヒドロキシラーゼ、ユビキチン が含まれる。
【0062】
CD分類マーカーとしては、CD1a、CD1b、CD1c、CD1d、CD1e、CD2、CD3δ、CD3ε、CD3γ、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8α、CD8β、CD9、CD10、CD11a、CD11b、CD11c、CDw12、CD13、CD14、CD15、CD15s、CD16a、CD16b、CDw17、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD25、CD26、CD27、CD28、CD29、CD30、CD31、CD32、CD33、CD34、CD35、CD36、CD37、CD38、CD39、CD40、CD41、CD42a、CD42b、CD42c、CD42d、CD43、CD44、CD44R、CD45、CD46、CD47、CD48、CD49a、CD49b、CD49c、CD49d、CD49e、CD49f、CD50、CD51、CD52、CD53、CD54、CD55、CD56、CD57、CD58、CD59、CDw60、CD61、CD62E、CD62L、CD62P、CD63、CD64、CD65、CD65s、CD66a、CD66b、CD66c、CD66d、CD66e、CD66f、CD68、CD69、CD70、CD71、CD72、CD73、CD74、CDw75、CDw76、CD77、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD82、CD83、CD84、CD85、CD86、CD87、CD88、CD89、CD90、CD91、CDw92、CDw93、CD94、CD95、CD96、CD97、CD98、CD99、CD100、CD101、CD102、CD103、CD104、CD105、CD106、CD107a、CD107b、CDw108、CD109、CD114、CD115、CD116、CD117、CDw119、CD120a、CD120b、CD121a、CDw121b、CD122、CD123、CD124、CDw125、CD126、CD127、CDw128a、CDw128b、CD130、CDw131、CD132、CD134、CD135、CDw136、CDw137、CD138、CD139、CD140a、CD140b、CD141、CD142、CD143、CD144、CDw145、CD146、CD147、CD148、CDw149、CDw150、CD151、CD152、CD153、CD154、CD155、CD156、CD157、CD158a、CD158b、CD161、CD162、CD163、CD164、CD165、CD166、TCR−ζが含まれる。
【0063】
その他の細胞マーカーとしては、セントロメアプロテイン−F(CENP−F)、giantin、インボルクリン、ラミンA&C[XB10]、LAP−70、ムチン、核膜孔複合体、p180 lamellar body protein、ran、r、 カテプシンD,Ps2プロテイン、Her2−neu、P53、S100、上皮マーカー抗原(EMA)、TdT、MB2、MB3、PCNA、Ki67が含まれる。
【0064】
細胞含有サンプルは、特異バイオマーカーや各種タイプの細胞又は細胞内コンパートメントに直接反応する染料(dye又はstain)、組織化学物、あるいは免疫組織化学物を利用して染色され得る。すべての染料が適合するわけではない。したがって、使用する染料のタイプ及びその適用の手順をよく考慮しなければならないが、当業者であれば容易に決定することができる。組織化学物は、透過型顕微鏡検査により検出し得る発色団又は蛍光顕微鏡検査により検出し得るフルオロフォアとすることができる。一般的に、細胞含有サンプルは、ターゲットの化学グループに直接反応するか又は結合する少なくとも一つの組織化学物を含んだ溶液で、培養され得る。組織化学物の中には、染色を可能にする媒染剤や金属と共培養されるものもある。細胞含有サンプルは、対象のコンポーネントを染色する少なくとも一つの組織化学物及び対比染色として働いて対象のコンポーネントの外側領域に結合するその他の組織化学物の混合物で培養され得る。別の方法として、複数のプローブの混合物を染色に使用して、特異プローブの位置を判定する方法が提供され得る。
【0065】
次に示すのは、限定するものではないが、細胞、細胞内コンパートメント、又は細胞コンポーネントをターゲットとした組織学的造影剤(染色又は対比染色)として使用され得る発色団の例を示すリストである。
エオシン(アルカリ細胞コンポーネント、細胞質)、ヘマトキシリン(核酸)、オレンジG(赤血球、膵臓、下垂体細胞)、ライトグリーンSF(コラーゲン)、ロマノフスキーギムザ(全細胞形態)、メイグリュンワルド(血液細胞)、Blue Counterstain (Trevigen)、Ethyl Green(CAS)(アミロイド)、Feulgen-Naphthol Yellow S(DNA)、ギムザ(各種細胞コンパートメントを特異的に染色)、Methyl Green(アミロイド)、ピロニン (核酸)、ナフトールイエローS(赤血球)、ニュートラルレッド(核)、パパニコロウ染料(典型的には、ヘマトキシリン、エオシンY、オレンジG、ビスマルクブラウン混合物(全細胞形態)の混合物を含む)、Red Counterstain B(Trevigen)、Red Counterstain C(Trevigen)、シリウスレッド(アミロイド)、Feulgen reagent (パラローズアニリン)(DNA)、Gallocyanin chrom-alum(DNA)、Gallocyanin chrom-alum and Naphthol Yellow S(DNA)、メチルグリーンピロニンY(DNA)、Thionin-Feulgen reagent(DNA)、アクリジンオレンジ(DNA)、メチレンブルー(RNA及びDNA)、トルイジンブルー(RNA及びDNA)、アルシアンブルー(糖質)、ルテニウムレッド(糖質)、スダンブラック(脂質)、スダンIV(脂質)、オイルレッドO(脂質)、ワンギーソントリクローム染料(酸性フクシン及びピクリン酸混合物)(筋肉細胞)、マッソントリクローム染料(ヘマトキシリン、酸性フクシン、ライトグリーン混合物)(コラーゲン、細胞質、核小体の特異染色)、アルデヒドフクシン(エラスチン繊維)、ワイゲルト染料(細網及びコラーゲン繊維識別)。
以上のような染料、その詳細、及び一般的用途の総合リストは、R. D. Lillie, “Conn's Biological Stains”, 8th ed., Williams and Wilkins Company, Baltimore, Md. (1969)にある。上記の適切な媒染剤及び組成物は、当業者に周知である。
【0066】
次に示すのは、限定するものではないが、蛍光組織染料とその適用可能なターゲット細胞、細胞内コンパートメント、細胞コンポーネントのリストである。
4',6-diamidino-2-phenylindole(DAPI)(核酸)、エオシン(アルカリ細胞コンポーネント、細胞質)、Hoechst 33258及びHoechst 33342(2ビスベンズイミド)(核酸)、Propidium Iodide(核酸)、Spectrum Orange(核酸)、Spectrum Green(核酸)、キナクリン(核酸)、Fluorescein-phalloidin(アクチン繊維)、クロモマイシンA3(核酸)、Acriflavine-Feulgen reaction (核酸)、Auramine O-Feulgen reaction(核酸)、エチジウムブロマイド(核酸)。
ニッスル染料(神経細胞)、POPO,BOBO,YOYO,TOTOなどの高親和性DNAフルオロフォア、ヒストン,ACMA,キナクリン,アクリジンオレンジのようなDNA結合プロテインに融合した緑色蛍光プロテイン。
【0067】
市販されている多種の蛍光専用オルガネラ特異プローブとして、ミトコンドリア特異プローブ(MitoFluor及びMitoTracker染料)、小胞体(ER)及びゴルジプローブ(ER-Tracker及び各種セラミド抱合体)、リソソームプローブ(LysoTracker染料)が含まれる。これらプローブは、多くの蛍光専用ではない組織化学物と同様に、“Handbook of Fluorescent Probes and Research Products 8.sup.th Ed. (2001)”に広く記載されていて購入可能であり、また、“Molecular Probes, Eugene, OR”から購入可能である。
【0068】
各細胞含有サンプルは、対象の細胞コンポーネントであるエンザイムのための適切な基質及びエンザイム活性部位で着色沈殿物を生成する適切な試薬で共培養され得る。このようなエンザイム組織化学染料は、特定のターゲットエンザイムに特異である。エンザイム組織化学染料による染色は、細胞内コンポーネント又は特定タイプの細胞を標識するために使用することができる。あるいは、エンザイム組織化学染料は、細胞におけるエンザイム活性量の定量化判断に使用可能である。多種のエンザイム基質及び検査試験法が当分野で知られている。
【0069】
酸性ホスファターゼが各種方法を通して検出され得る。酸性ホスファターゼ用のGomori methodにおいて、細胞標本がグリセロリン酸及び硝酸鉛(lead nitrate)で培養される。エンザイムはリン酸を遊離させ、リン酸が鉛と結合してリン酸鉛、無色沈殿物が生成される。次に組織は、リン酸鉛と反応する硫化アンモニウム溶液に浸漬され、硫化鉛、黒色沈殿物が生成される。別の方法では、細胞は、Pararosanilin-HCl、亜硝酸ナトリウム、Naphthol AS-B1 phosphate(基質)、及びベロナールアセテートバッファーを含んだ溶液で培養され得る。この方法は、酸性ホスファターゼ活性領域で赤色沈殿物を生じさせる。その酸性ホスファターゼの特徴的内容物に起因して、当該試験法を通して、リソソームが他の細胞質顆粒及びオルガネラから区別される。
【0070】
デヒドロゲナーゼ及びテトラゾール種に適切な基質で細胞を培養することにより、デヒドロゲナーゼが局在化され得る。エンザイムは基質からテトラゾールへ水素イオンをトランスファーし、テトラゾールをホルマザン、濃色沈殿物へ還元する。例えば、NADHデヒドロゲナーゼは呼吸鎖のcomplex Iのコンポーネントであり、主にミトコンドリアに局在する。
【0071】
確立された染色法が知られている他のエンザイム及びその一次細胞位置又は活性として、限定するものではないが、ATPアーゼ(筋肉繊維)、コハク酸デヒドロゲナーゼ(ミトコンドリア)、シトクロムcオキシダーゼ(ミトコンドリア)、ホスホリラーゼ(ミトコンドリア)、ホスホフルクトキナーゼ(ミトコンドリア)、アセチルコリンエステラーゼ(神経細胞)、ラクターゼ(小腸)、ロイシンアミノペプチダーゼ(肝細胞)、Myodenylate deaminases(筋肉細胞)、NADHジアホラーゼ(赤血球)、スクラーゼ(小腸)が含まれる。
【0072】
免疫組織化学は、高感度及び特異な組織化学技術の一つである。各組織スポットは、特異的結合プローブを含むラベルされた結合成分と結合され得る。各種ラベルは、フルオロフォア、又は光を吸収するかあるいは蛍光を発する生成物を生成するエンザイムのように使用可能である。単一の結合イベントとの関連で強い信号を提供する多種のラベルが知られている。染色時に使用される複数のプローブが、1以上の識別可能な蛍光ラベルでラベルされ得る。その色差は、特異プローブの位置を識別する方法を提供する。抗体のようなフルオロフォア及びプロテインの抱合体を容易する方法は、広く文献に記載されており、ここに例示する必要はない。
【0073】
市販の抗体は少なくとも120,000ほどあるが、細胞コンポーネントと特異的に結合することが知られており、調査及び限定的に言えば各種疾病の診断のために利用される免疫組織化学染料のコンポーネントとして現在使用されている、体表的な一次抗体としては、例えば、抗エストロゲンレセプター抗体(乳癌)、抗プロゲステロンレセプター抗体(乳癌)、anti-p53抗体(多発性癌)、anti-Her-2/neu抗体(多発性癌)、anti-EGFR抗体(上皮増殖因子、多発性癌)、anti-cathepsin D抗体(乳房等の癌)、anti-Bcl-2抗体(アポトーシス細胞)、anti-E-cadherin抗体、anti-CA125抗体(卵巣等の癌)、anti-CA15-3抗体(乳癌)、anti-CA19-9抗体(大腸癌)、anti-c-erbB-2抗体、anti-P-glycoprotein抗体(MDR、多剤耐性)、anti-CEA抗体(癌胎児抗原)、anti-retinoblastoma protein (Rb)抗体、anti-ras oneoprotein (p21)抗体、anti-Lewis X(別名CD15)抗体、anti-Ki-67抗体(細胞増殖)、anti-PCNA(多発性癌)抗体、anti-CD3抗体(T細胞)、anti-CD4抗体(ヘルパーT細胞)、anti-CD5抗体(T細胞)、anti-CD7抗体(胸腺細胞、未熟T細胞、NKキラー細胞)、anti-CD8抗体(サプレッサーT細胞)、anti-CD9/p24抗体(ALL)、anti-CD10(別名CALLA)抗体(common acute lymphoblastic leukemia)、anti-CD11c 抗体(モノサイト、顆粒球、AML)、anti-CD13抗体(骨髄単球性細胞、AML)、anti-CD14抗体(成熟モノサイト、顆粒球)、anti-CD15抗体(ホジキン病)、anti-CD19抗体(B細胞)、anti-CD20抗体(B細胞)、anti-CD22抗体(B細胞)、anti-CD23抗体(活性化B細胞、CLL)、anti-CD30抗体(活性化T及びB細胞、ホジキン病)、anti-CD31抗体(血管新生マーカー)、anti-CD33抗体(ミエロイド細胞、AML)、anti-CD34抗体(内皮幹細胞、間質腫瘍)、anti-CD35抗体(樹状細胞)、anti-CD38抗体(プラスマ細胞、活性化T,B、ミエロイド細胞)、anti-CD41抗体(血小板、巨核球)、anti-LCA/CD45抗体(白血球共通抗原)、anti-CD45RO抗体(ヘルパー、インデューサーT細胞)、anti-CD45RA抗体(B細胞)、anti-CD39, CD100抗体、anti-CD95/Fas抗体(アポトーシス)、anti-CD99抗体(ユーイング肉腫マーカー、MIC2遺伝子産物)、anti-CD106抗体(VCAM−1;活性化内皮細胞)、anti-ubiquitin抗原(アルツハイマー病)、anti-CD71(トランスフェリンレセプター)抗体、anti-c-myc(オンコプロテイン及びハプテン)抗体、anti-cytokeratins(トランスフェリンレセプター)抗体、anti-vimentins(内皮細胞)抗体(B及びT細胞)、anti-HPV protein(ヒトパピローマウイルス)抗体、anti-kappa light chains抗体(B細胞)、anti-lambda light chains抗体(B細胞)、anti-melanosomes (HMB45)抗体(メラノーマ)、anti-prostate specific antigen (PSA) 抗体(前立腺癌)、anti-S-100抗体(メラノーマ、唾液、グリア細胞)、anti-tau antigen抗体(アルツハイマー病)、anti-fibrin抗体(上皮細胞)、anti-keratins抗体、anti-cytokeratin抗体(腫瘍)、anti-alpha-catenin(細胞膜)、anti-Tn-antigen抗体(大腸癌、腺癌、膵癌)、anti-1,8-ANS (1-Anilino Naphthalene-8-Sulphonic Acid)抗体、anti-C4抗体、anti-2C4 CASP Grade抗体、anti-2C4 CASP α抗体、anti-HER-2抗体、anti-Alpha B Crystallin抗体、anti-Alpha Galactosidase A抗体、anti-alpha-Catenin抗体、anti-human VEGF R1 (Flt-1)抗体、anti-integrin B5抗体、anti-integrin beta 6抗体、anti-phospho-SRC抗体、anti-Bak抗体、anti-BCL-2抗体、anti-BCL-6抗体、anti-Beta Catanin抗体、anti-Beta Catenin抗体、anti-Integrin alpha V beta 3抗体、anti-c ErbB-2 Ab-12抗体、anti-Calnexin 抗体、anti-Calreticulin抗体、anti-Calreticulin抗体、anti-CAM5.2 (Anti-Cytokeratin Low mol. Wt.)抗体、anti-Cardiotin (R2G)抗体、anti-Cathepsin D抗体、αガラクトシダーゼに対するChicken polyclonal抗体、anti-c-Met抗体、anti-CREB抗体、anti-COX6C 抗体、anti-Cyclin D1 Ab-4 抗体、anti-Cytokeratin抗体、anti-Desmin抗体、anti-DHP (1-6 Dipheynyl-1,3,5-Hexatriene)抗体、DSB-X Biotin Goat Anti Chicken抗体、anti-E-Cadherin抗体、anti-EEA1抗体、anti-EGFR抗体、anti-EMA (Epithelial Membrane Antigen)抗体、anti-ER(エストロゲンレセプター)抗体、anti-ERB3抗体、anti-ERCC1 ERK (Pan ERK)抗体、anti-E-Selectin抗体、anti-FAK抗体、anti-Fibronectin抗体、FITC-Goat Anti Mouse IgM抗体、anti-FOXP3抗体、anti-GB3抗体、anti-GFAP (Glial Fibrillary Acidic Protein)抗体、anti-Giantin抗体、anti-GM130抗体、anti-Goat a h Met抗体、anti-Golgin 97抗体、anti-GRB2抗体、anti-GRP78BiP抗体、anti-GSK-3Beta抗体、anti-Hepatocyte抗体、anti-HER-2抗体、anti-HER-3抗体、anti-Histone 3抗体、anti-Histone 4抗体、anti-Histone H2A X抗体、anti-Histone H2B抗体、anti-HSP70抗体、anti-ICAM-1抗体、anti-IGF-1抗体、anti-IGF-1 Receptor抗体、anti- IGF-1 Receptor Beta抗体、anti-IGF-II抗体、anti-IKB-Alpha抗体、anti-IL6抗体、anti-IL8抗体、anti-Integrin beta 3抗体、anti-Integrin beta 5抗体、anti-Integrin b8抗体、anti-Jagged 1抗体、anti-protein kinase C Beta2抗体、anti-LAMP-1 抗体、anti-M6P (Mannose 6-Phosphate Receptor)抗体、anti-MAPKAPK-2抗体、anti-MEK 1抗体、anti-MEK 2抗体、anti-Mitochondrial Antigen抗体、anti-Mitochondrial Marker抗体、anti-Mitotracker Green FM抗体、anti-MMP-2 抗体、anti-MMP9抗体、anti-Na+/K ATPase抗体、anti-Na+/K ATPase Alpha 1抗体、anti-Na+/K ATPase Alpha 3抗体、anti-N-Cadherin抗体、anti-Nephrin抗体、anti-NF-KB p50抗体、anti-NF-KB P65抗体、anti-Notch 1抗体、anti-OxPhos Complex IV - Alexa488 Conjugate抗体、anti-p130Cas抗体、anti-P38 MAPK抗体、anti-p44/42 MAPK抗体、anti-P504S Clone 13H4抗体、anti-P53抗体、anti-P70 S6K抗体、anti-P70 phospho kinase blocking peptide抗体、anti-Pan Cadherin抗体、anti-Paxillin抗体、anti-P-Cadherin抗体、anti-PDI抗体、anti-Phospho AKT抗体、anti-Phospho CREB抗体、anti-Phospho GSK-3-beta抗体、anti-Phospho GSK-3 Beta抗体、anti-Phospho H3抗体、anti-Phospho MAPKAPK-2抗体、anti-Phospho MEK抗体、anti-Phospho p44/42 MAPK抗体、anti-Phospho p53抗体、anti-Phospho-NF-KB p65抗体、anti-Phospho-p70 S6 Kinase抗体、anti-Phospho PKC (Pan)抗体、anti-Phospho S6 Ribosomal Protein抗体、anti-Phospho Src抗体、anti-Phospho-Bad抗体、anti-Phospho-HSP27抗体、anti-Phospho-IKB-a抗体、anti-Phospho-p44/42 MAPK抗体、anti-Phospho-p70 S6 Kinase抗体、anti-Phospho-Rb (Ser807/811)(網膜芽細胞腫)抗体、anti-Phsopho HSP-7抗体、anti-Phsopho-p38抗体、anti-Pim-1抗体、anti-Pim-2抗体、anti-PKC β抗体、anti-PKC β11抗体、anti-Podocalyxin抗体、anti-PR抗体、anti-PTEN抗体、anti-R1抗体、anti-Rb 4H1(網膜芽細胞腫)抗体、anti-R-Cadherin抗体、anti-RRM1抗体、anti-S6 Ribosomal Protein抗体、anti-S-100抗体、anti-Synaptopodin抗体、anti-Synaptopodin抗体、anti-Syndecan 4抗体、anti-Talin抗体、anti-Tensin抗体、anti-Tuberlin抗体、anti-Urokinase抗体、anti-VCAM-1抗体、anti-VEGF抗体、anti-Vimentin抗体、anti-ZAP-70抗体、anti-ZEBが含まれる。
【0074】
一次抗体に結合し得るフルオロフォアとして、限定するものではないが、フルオレセイン、ローダミン、Texas Red、Cy2、Cy3、Cy5、VECTOR Red、ELF.TM.(Enzyme-Labeled Fluorescence)、Cy0、Cy0.5、Cy1、Cy1.5、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy7、Fluor X、カルセイン、カルセインAM、CRYPTOFLUOR.TM.'S、Orange (42 kDa)、Tangerine (35 kDa)、Gold (31 kDa)、Red (42 kDa)、Crimson (40 kDa)、BHMP、BHDMAP、Br-Oregon、ルシファーイエロー、Alexa dye family、N-[6-(7-nitrobenz-2-oxa-1, 3-diazol-4-yl)amino]caproyl](NBD)、BODIPY.TM.、boron dipyrromethene difluoride、オレゴングリーン、MITOTRACKER.TM. Red、DiOC.sub.7 (3)、DiIC.sub.18、フィコエリトリン、Phycobiliproteins BPE (240 kDa) RPE (240 kDa) CPC (264 kDa) APC (104 kDa)、Spectrum Blue、Spectrum Aqua、Spectrum Green、Spectrum Gold、Spectrum Orange、Spectrum Red、NADH、NADPH、FAD、Infra-Red (IR) Dyes、Cyclic GDP-Ribose (cGDPR)、カルコフロールホワイト、リサミン、ウンベリフェロン、チロシン及びトリプトファンが含まれる。他の多種の蛍光プローブが、Handbook of Fluorescent Probes and Research Products 8.sup.th Ed. (2001)に広く記載されていて購入可能であり、また、Molecular Probes, Eugene, ORや他の多くのメーカーから購入可能である。
【0075】
抗体及び抗体の抗体のように、特異な結合メンバーの組み合わせを使用することによって、さらなる信号増幅が可能である。抗体の抗体は、ターゲットの抗体プローブの保存領域に結合し、特に、抗体は、異なる種属からのものである。あるいは、ビオチン−ストレプトアビジンのように、特異に結合するリガンド−レセプターのペアが使用可能である。そのペアの一方のメンバーに一次抗体が結合し、他方のメンバーは検出可能なプローブでラベルされる。したがって、第1の結合メンバーが細胞コンポーネントに結合して二次結合を提供するように働き、第2の結合メンバーは、ラベルを提供可能な第3の結合メンバーの三次結合をさらに提供するラベルを含むか又は含まないものとすることができる。
【0076】
二次抗体、アビジン、ストレプトアビジン、又はビオチンは、実質的な不溶性呈色反応産物、蛍光染料、発光染料、又は非蛍光染料を有する基質の比色反応を誘導するエンザイムであり得る検出可能部分でそれぞれ個別にラベルされる。これら各オプションに関する例を以下に示す。
【0077】
原則として、(i)一次抗体と結合又は間接的に(例えば結合したアビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、二次抗体を介し)結合可能で、(ii)可溶性基質を使用して不溶性産物(沈殿物)を生成するエンザイムが使用され得る。
【0078】
利用されるエンザイムは、例えば、アルカリホスファターゼ、西洋わさびペルオキシダーゼ、βガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼであり得る。また、基質は、それぞれ、アルカリホスファターゼ、西洋わさびペルオキシダーゼ、βガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ基質であり得る。
【0079】
アルカリホスファターゼ(AP)基質としては、限定するものではないが、AP-Blue基質(青色沈殿物、Zymed catalog p. 61)、AP-Orange基質(オレンジ色、沈殿物、Zymed)、AP-Red基質(赤色、赤色沈殿物、Zymed)、5-bromo, 4-chloro, 3-indolyphosphate(BCIP基質、青緑色沈殿物)、5-bromo, 4-chloro, 3-indolyl phosphate/nitroblue tetrazolium/iodonitrotetrazolium(BCIP/INT基質、黄褐色沈殿物、Biomeda)、5-bromo, 4-chloro, 3-indolyphosphate/nitroblue tetrazolium(BCIP/NBT基質、青色/紫色)、5-bromo, 4-chloro, 3-indolyl phosphate/nitroblue tetrazolium/iodonitrotetrazolium(BCIP/NBT/INT基質、茶色沈殿物、DAKO)、Fast Red(赤色)、Magenta-phos(赤紫色)、Naphthol AS-BI-phosphate (NABP)/Fast Red TR(赤色)、Naphthol AS-BI-phosphate (NABP)/New Fuchsin(赤色)、Naphthol AS-MX-phosphate (NAMP)/New Fuchsin(赤色)、New Fuchsin AP基質(赤色)、p-Nitrophenyl phosphate(PNPP、黄色、水溶性)、VECTORTM Black(黒色)、VECTOR.TM. Blue(青色)、VECTOR.TM. Red(赤色)、Vega Red(蘇芳色色)が含まれる。
【0080】
西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP、時折略されてPO)基質としては、限定するものではないが、2,2' Azino-di-3-ethylbenz-thiazoline sulfonate(ABTS、緑色、水溶性)、aminoethyl carbazole, 3-amino, 9-ethylcarbazole AEC(3A9EC、赤色)、Alpha-naphthol pyronin(赤色)、4-chloro-1-naphthol(4C1N、青色、濃藍色)、3,3'-diaminobenzidine tetrahydrochloride(DAB、茶色)、ortho-dianisidine(緑色)、o-phenylene diamine(OPD、茶色、水溶性)、TACS Blue(青色)、TACS Red(赤色)、3,3',5,5'Tetramethylbenzidine(TMB、緑色又は緑色/青色)、TRUE BLUE.TM.(青色)、VECTOR.TM. VIP(紫色)、VECTOR.TM. SG(くすんだ青灰色)、Zymed Blue HRP基質(鮮やかな青色)が含まれる。
【0081】
グルコースオキシダーゼ(GO)基質としては、限定するものではないが、nitroblue tetrazolium(NBT、紫色沈殿物)、tetranitroblue tetrazolium(TNBT、黒色沈殿物)、2-(4-iodophenyl)-5-(4-nitorphenyl)- -3-phenyltetrazolium chloride(INT、赤色又はオレンジ色沈殿物)、Tetrazolium blue(青色)、Nitrotetrazolium violet(スミレ色)、3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyltetrazolium bromide(MTT、紫色)が含まれる。全テトラゾリウム基質には、補助基質としてグルコースが必要である。グルコースが酸化し、テトラゾリウム塩が還元して、着色沈殿物を生じる不溶性のホルマザンを生成する。
【0082】
βガラクトシダーゼ基質としては、限定するものではないが、5-bromo-4-chloro-3-indoyl beta-D-galactopyranoside(X−gal、青色沈殿物)が含まれる。記載した各基質と関連する沈殿物は、特有の検出可能な分光的特徴(コンポーネント)を有する。
【0083】
エンザイムはまた、限定するものではないが、ルシフェラーゼ及びエクオリンなどの基質の発光反応に対して触媒作用を及ぼすことが可能である。基質は、発光可能又は第2の基質の第2の反応を誘導可能な実質的不溶性反応産物を有し、また第2の基質は、限定するものではないが、発光産物を有する、ルシフェリン及びATP、又は、セレンテラジン及びCa.2である。
【0084】
さらなる例が次にあげる文献に提示されている。
J. M Elias (1990) Immunohistopathology: A practical approach to diagnosis. ASCP Press (American Society of Clinical Pathologists), Chicago;
J. F. McGinty, F. E. Bloom (1983) Double immunostaining reveals distinctions among opioidpeptidergic neurons in the medial basal hypothalamus. Brain Res. 278: 145-153;
T. Jowett (1997) Tissue In situ Hybridization: Methods in Animal Development. John Wiley & Sons, Inc., New York;
J Histochem Cytochem 1997 December 45(12):1629-1641.
【0085】
細胞標本に対しては、インサイツハイブリダイゼーション(ISH)を実施することができる。一般的に、核酸配列プローブが合成され、蛍光プローブ又はリガンド(検出可能部分でラベルされた、ビオチン/アビジンのようなレセプターペア)の一つのメンバーのいずれかでラベルされる。プローブ及び部分の例は、前述の通りである。配列プローブは、ターゲットの細胞内ヌクレオチド配列に対する補完である。ターゲットのヌクレオチド配列を含む各細胞又は細胞コンパートメントは、ラベルしたプローブを結合し得る。分析で使用されるプローブは、DNA又はRNAオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドのいずれかとすることができ、自然発生ヌクレオチドだけではなく、dioxygenin dCTP、biotin dcTP、7-azaguanosine、アジドチミジン 、イノシン、又はウリジンなど、その類似体も含み得る。その他の利用可能なプローブとしては、ペプチドプローブ及びその類似体、分岐遺伝子DNA、ペプチド模倣薬、ペプチド核酸、抗体が含まれる。プローブは、対象のターゲット核酸配列に対して十分な相補性を有し、安定で特異な結合がターゲットの核酸配列とプローブとの間に生じる。安定したハイブリダイゼーションに要求される相同性は、ハイブリダイゼーションの厳密性により変わる。ISH、ハイブリダイゼーション、プローブ選択に関する従来の方法論については、Leitch, et al. In Situ Hybridization: a practical guide, Oxford BIOS Scientific Publishers, Microscopy Handbooks v. 27 (1994)及びSambrook, J., Fritsch, E. F., Maniatis, T., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press (1989)に記載されている。
【0086】
本発明について、以下に実施例を示してさらに説明する。ただし、当該実施例は限定的に解釈されるべきではない。参照文献の内容はここに引用される。
【実施例1】
【0087】
方法論使用の市販ツール
まず、イメージデータにクラスタリングアルゴリズムを実行する実施可能性に焦点をあてると、SPSS(SPSS, Inc., Chicago, IL)統計ソフトウエアパッケージを、選択高解像度イメージ(例えば2048×2048pixels)から各画素(DAPI,Cy3,Cy5)に対する画素明るさを表現したデータファイルを使った実験に、適用した。図2は、最初の分析で使用され、DAPI(核)、抗サイトケラチン(Cy3)、抗インテグリンαV(Cy5)で染色したコントロール株化細胞を描写したイメージを示す。これらイメージに対し、64画素ごとにデータファイルへ出力した。図3は、DAPI及びCy3について正規化した画素明るさの分布プロットを示す(最大画素明るさで分割した0−1スケールに正規化)。正規化した画素値をクラスタリングした結果[2ステップクラスターアルゴリズムを使用、対数尤度距離、クラスターリミット=15]、2つのクラスターが得られた(表1)。
[表1]
クラスター分布
N % of Combined % of Total
クラスター1 58719 89.6 89.6
クラスター2 6816 10.4 10.4
結合 65535 100.0 100.0
合計 65535 100.0
【0088】
クラスター1は、最低値クラスターであり、Cy3及びDAPIの両方に対し〜90%の画素を含んでいた。クラスター割り当ての可視化(図4)は、クラスター1が、両イメージにおいて値をもつ画素を表すクラスター2に比べてDAPI及び及びCy3の両方において低い値を表す画素であることを明らかにする。したがってクラスター1は、上述の基準1に該当する画素を識別する。これらは、Cy3でもDAPIでも値をもたない背景画素である。したがって、当該クラスターは分析から排除することができる。
【0089】
続く三つの基準を区別するために、「Cy3パーセンテージ」が、“[Cy3画素明るさ(正規化)]/[(Cy3画素明るさ(正規化)+DAPI画素明るさ(正規化)]”で算出/判別される。
【0090】
これは、Cy3とDAPIとの間の相対的画素明るさに対する測定をもたらす。分子としてDAPIを使用して実行することも可能で、これによって同様の結果がもたらされる(図5)。この方法のクラスタリングは次の事項を示す。
Cy3の明るさに対し高いDAPIの明るさ:低いCy3パーセンテージクラスター
DAPIの明るさに対し高いCY3の明るさ:高いCy3パーセンテージクラスター
高いDAPI及びCy3の明るさ:中間のCy3パーセンテージクラスター
【0091】
このクラスタリング[2ステップクラスターアルゴリズムを使用、対数尤度距離、クラスターリミット=3]を実行し、軸関係に基づいて、上記3基準を表す3クラスタが測定された(表2及び図6)。
[表2]
クラスター分布
N % of Combined % of Total
クラスター1 1689 25.1 25.1
クラスター2 1645 24.5 24.5
クラスター3 3388 50.4 50.4
結合 6722 100.0 100.0
合計 6722 100.0
【0092】
“DAPIクラスター”(クラスター1)及び“Cy3クラスター”(クラスター3)を別々に処理してターゲットAQUAスコアを計算[各クラスターのCy5画素明るさを合算、クラスターの総画素数で除算、定数100,000を乗算]することにより、表3に示すように、Cy3発現がDAPI発現よりも多く測定されたターゲットの予期生態(膜/細胞質に主に結合するインテグリン)に該当するAQUAスコアを算出した。コンセプトの追加確認として、DAPI画素対Cy3画素における高DAPI信号(表4)及びCy3画素対DAPI画素における高Cy3信号(表5)を、これらの方法により測定した。同様の結果が、対数尤度距離に代えてユークリッド距離アルゴリズムを使用した場合に測定された(表6−表8)。
[表3]AQUAスコアの結果、対数尤度クラスタリング
【表3】

**各クラスター(DAPIクラスター(ボトムクラスター)、Cy3クラスター(トップクラスター))におけるCy5パワーを合算、総画素数で除算×100000。
[表4]AQUAスコアの結果、対数尤度クラスタリング
【表4】

**各クラスター(DAPIクラスター(ボトムクラスター)、Cy3クラスター(トップクラスター))におけるDAPIパワーを合算、総画素数で除算×100000。
[表5]AQUAスコアの結果、対数尤度クラスタリング
【表5】

**各クラスター(DAPIクラスター(ボトムクラスター)、Cy3クラスター(トップクラスター))におけるCy3パワーを合算、総画素数で除算×100000。
[表6]AQUAスコアの結果、ユークリッド距離クラスタリング
【表6】

**各クラスター(DAPIクラスター(ボトムクラスター)、Cy3クラスター(トップクラスター))におけるCy5パワーを合算、総画素数で除算×100000。
[表7]AQUAスコアの結果、ユークリッド距離クラスタリング
【表7】

**各クラスター(DAPIクラスター(ボトムクラスター)、Cy3クラスター(トップクラスター))におけるDAPIパワーを合算、総画素数で除算×100000。
[表8]AQUAスコアの結果、ユークリッド距離クラスタリング
【表8】

**各クラスター(DAPIクラスター(ボトムクラスター)、Cy3クラスター(トップクラスター))におけるCy3パワーを合算、総画素数で除算×100000。
【実施例2】
【0093】
画素イメージごとのデータを、図7に示すイメージに関して測定及び分析した(Her2染色乳癌上皮)。上述のような最初のクラスタリングを通して背景画素を排除し(表9)、続いてCy3パーセンテージ測定のクラスタリングを実行した(表10)。
[表9]クラスター分布
【表9】

[表10]クラスター分布
【表10】

【0094】
AQUAスコアの結果は、DAPIに対するCy3におけるHer2発現増加、Cy3に対するDAPIにおけるDAPI増加、DAPIに対するCy3におけるCy3増加という期待値に該当する(表11−表13)。さらに、Her2に関するCy3/DAPI比率という現行のAQUA法のパフォーマンスを上回るクラスタリング法が観察された(図7参照)。Her2は、主要な細胞質/膜プロテインである。
[表11]Cy5AQUAスコアの結果
【表11】

**各クラスター(DAPIクラスター(ボトムクラスター)、Cy3クラスター(トップクラスター))におけるCy5パワーを合算、総画素数で除算×100000。
[表12]DAPIAQUAスコアの結果
【表12】

**各クラスター(DAPIクラスター(ボトムクラスター)、Cy3クラスター(トップクラスター))におけるDAPIパワーを合算、総画素数で除算×100000。
[表13]Cy3AQUAスコアの結果
【表13】

**各クラスター(DAPIクラスター(ボトムクラスター)、Cy3クラスター(トップクラスター))におけるCy3パワーを合算、総画素数で除算×100000。
【実施例3】
【0095】
画素イメージごとのデータを、図8に示すイメージに関して測定及び分析した(p53染色子宮頸癌上皮)。上述のような最初のクラスタリングを通して背景画素を排除し、続いてCy3パーセンテージ測定のクラスタリングを実行した(表14)。
[表14]クラスター分布
【表14】

【0096】
最初のクラスタリングを通した結果、3クラスターが得られた。しかし、背景クラスター(クラスター1)は、二つのクラスターが「強制」された場合に得られる背景クラスターと同等である(表15)。
[表15]クラスター分布
【表15】

【0097】
AQUAスコアの結果は、Cy3に対するDAPIにおけるp53発現増加、Cy3に対するDAPIにおけるDAPI増加、DAPIに対するCy3におけるCy3増加という期待値に該当する(表16−表18)。
[表16]Cy5AQUAスコアの結果
【表16】

**各クラスター(DAPIクラスター(ボトムクラスター)、Cy3クラスター(トップクラスター))におけるCy5パワーを合算、総画素数で除算×100000。
[表17]Cy3AQUAスコアの結果
【表17】

**各クラスター(DAPIクラスター(ボトムクラスター)、Cy3クラスター(トップクラスター))におけるDAPIパワーを合算、総画素数で除算×100000。
[表18]DAPIAQUAスコアの結果
【表18】

**各クラスター(DAPIクラスター(ボトムクラスター)、Cy3クラスター(トップクラスター))におけるCy3パワーを合算、総画素数で除算×100000。
【0098】
ターゲットイメージ内の背景画素もまた問題点であり得る。この問題を処理するために、クラスタリング[2クラスタアルゴリズムを使用、対数尤度距離、クラスターリミット=15]をCy5画素値で実行し、背景を排除する(表19)。
[表19]クラスター分布
【表19】

【0099】
背景としてボトムクラスターを落とすことで、表20及び表21(2列と3列の比較)に示すように、面積比測定(Her2に関する細胞質:核、p53に関する核:細胞質)が向上する。
[表20]p53:コンパートメント:Cy5AQUAスコアの結果
【表20】

**各クラスター(DAPIクラスター(ボトムクラスター)、Cy3クラスター(トップクラスター))におけるCy5パワーを合算、総画素数で除算×100000。
[表21]Her2:Cy5AQUAスコアの結果
【表21】

**各クラスター(DAPIクラスター(ボトムクラスター)、Cy3クラスター(トップクラスター))におけるCy5パワーを合算、総画素数で除算×100000。
【実施例4】
【0100】
組織マイクロアレイの構成並びにエストロゲンレセプター(ER)及びHER2/neuと細胞核関連βカテニンの分析とに対する免疫組織化学染色法
組織マイクロアレイの設計:リンパ節陽性湿潤乳癌の345ケースからのパラフィン包埋ホルマリン固定標本が同定された。インサイツの病変及び正常上皮とは区別して湿潤癌の領域を認定し、0.6cm穿孔の三つの「バイオプシー」コアを異なる領域から採取した。各コアを別々のレシピエントブロックに配置し、5ミクロンの薄い切片を切り出して既述のように処理した(Konenen, J. et al., Nat. Med., 4:844-7, 1987)。同様に、既述のようにして、大腸癌の310ケースを得て配置した(Chung, G. et al., Clin. Cancer Res. (In Press))。
免疫組織化学物:プリカットパラフィンコート組織マイクロアレイスライドを脱パラフィンし、圧力鍋にて抗原回復処理した(Katoh, A. K. et al., Biotech. Histochem., F2:291-8, 1997)。スライドは、三つのターゲット抗原のうちの一つに対する抗体で染色した:monoclonal anti-E.R. (mouse, Dako Corporation, Carpinteria, CA)、polyclonal anti-HER2/neu (rabbit, Dako Corp.)、monoclonal (mouse clone 14, BD Transduction Labs, San Diego, CA) anti-beta-catenin、又はpolyclonal rabbit anti-betacatenin。一次体を4℃で一晩培養した。次に、デキストランポリマーバックボーンにデコレートした西洋わさびペルオキシダーゼと結合した、対応するヤギの抗マウス又は抗ラビット二次抗体を、1時間適用した(Envision, DAKO Corp.)。ターゲットの抗原は、可視分析用の可視光色原体(Diaminobenzidine, DAKO)又は蛍光色原体(Cy-5-tyramide, NEN Life Science Products, Boston, MA)のいずれかで可視化した。自動分析用スライドは、細胞膜の可視化と共に腫瘍細胞とストローマを区別するために、核の可視化用のDAPI及びポリクローナルラビット抗サイトケラチン(Zymed, So. San Francisco, CA)又はラビット抗αカテニンで対比染色した。多くの場合で、抗サイトケラチンにより染色された組織スポットのイメージが急激に減少したため、腫瘍細胞におけるサイトケラチンの膜癒着に起因した細胞膜に対する好ましいマーカーが提供された。これら抗体は、Cy3−又はAlexa 488−結合ヤギ抗マウス又は抗ラビット二次抗体(Amersham, Piscataway, NJ and Molecular Probes, Eugene, OR)のいずれかを使用して可視化された。可視検査用に設定されたスライドは、水酸化アンモニウム酸化ヘマトキシリンで対比染色した。E.R.、HER2/neu、及びβカテニンのレベルに関するマイクロアレイのマニュアル検査については既述されている(Snead, D. R. et al., Histopathology, 23:233-8, 1993)。
【実施例5】
【0101】
クラスタリングAQUA分析
自動化した定量分析プラットフォーム(AQUAプラットフォーム)は、PLACE(Pixel-based Locale Assignment for Compartmentalization of Expression)アルゴリズムを利用し、特異細胞及び細胞内コンパートメントにおけるプロテイン発現を客観的且つ再現性高く定量化するために使用される、自動蛍光ベースイメージ分析プラットフォームである。PLACEには本来、特異画素の明るさしきい値をマニュアル設定して多種のコンパートメントイメージ内の信号特異画素から背景を区別しなければならないユーザー判断ステップがある。オペレーターの時間を減少させ、オペーレータごとの変動を除き、そして各イメージについて客観的で最適な画素分離を実現するために、イメージごとのベースでコンパートメント特異画素(例えばDAPIv、Cy3)の識別と共に背景信号の識別を客観的且つ自動的に実行可能な、二分法で教師なしの画素ベースクラスタリングアルゴリズム(K-meansクラスタリングベース演算)が、ここに記載される。この新しいアルゴリズムは、熟練オペレーターによるマニュアルしきい値設定を使用した従来のAQUA分析で高い相関度(それぞれR=0.992,0.987,0.990)をもつ乳癌患者の大規模コホート(n=682)にてコンパートメント特異エストロゲンレセプター(ER)、プロゲステロンレセプター(PR)、Her2発現を定量化することによりテストされた。発現スコアは、比較のデータクラスタリングにより示される等価定量関係を維持したクラスタリングAQUA(c−AQUA)により得られ、生存転帰に結びつけられた。いずれのシステムも本発明の方法に適用できるが、この新しいクラスタリングアルゴリズムは、現在のAQUAプラットフォームの効率及び客観性を高める。
【0102】
方法
コホート:組織マイクロアレイ(TMA)フォーマット内の大規模乳癌コホートが、これらの実験においてC−AQUAアルゴリズムをテストするために使用された。Yale Tissue Microarray Facility (YTMA49)からの当該コホートは、既に詳述されている(Dolled-Filhart, M. et al., Clin. Cancer Res., 12:6459-68, 2006)。簡単に述べると、浸潤腺管癌の乳癌コホート(n=652)がエール大学病理学部より1961年から1983年にかけて逐次収集された。アレイには、正常組織及びコントロール株化細胞の選抜もある。追跡期間の平均は、診断時平均年齢58.1歳で12.8年である。このコホートは、リンパ節陽性及びリンパ節陰性の標本をおよそ半々に含む。
【0103】
免疫蛍光染色法:YTMA49は、関節免疫蛍光プロトコル1を利用して染色した。簡潔に言えば、プリカットパラフィンコート組織マイクロアレイスライドは、脱パラフィンし、10mM Tris(pH9.0)の加熱処理エピトープ回復により抗原回復処理した。Auto-Stainer(LabVision, Fremont, CA)を使用し、スライドは、Background Sniper(BioCare Medical, Concord, CA)でプレインキュベートした。次にスライドは、ER(Dako (Carpinteria, California), clone 1D5, 1:200 dilution)、PR(Dako (Carpinteria, CA), mouse monoclonal clone PgR636, 1:1000 dilution)、又はHer2(Dako (Carpinteria, CA), rabbit polyclonal, 1:8000 dilution)に対する一次抗体及びDaVinci Green(BioCare Medical, Concord, CA)で希釈したpan-cytokeratin(rabbit polyclonal, 1:200 dilution, DAKO, Carpinteria, CA)で、RTにおいて1時間培養した。スライドは、1X TBS含有0.05% Tween-20で3×5分洗浄した。対応する二次抗体は、DaVinci Greenで希釈し、室温で30分培養した。これらは、anti-cytokeratin(Alexa 555-conjugated goat anti-rabbit; 1:100, Molecular Probes, Eugene, OR)のためのフルオロフォアに直接結合する抗体と、ER、PR、及びHer2(Dako (Carpinteria, CA), anti-mouse or -rabbit Envision(Dako, Carpinteria, CA))に対する西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)に結合する抗体の両方又は一方を含む。スライドは、再びTBS含有0.05% Tween-20で3×5分洗浄した。スライドは、蛍光色原体(Cy-5-tyramide, NEN Life Science Products, Boston, MA)で培養した。蛍光色原体は、DAB同様、HRPにより活性化され、HRP結合二次抗体に直接隣接する、Cy−5染料と共有結合的に結合した沈殿物をたくさん生じる。Cy−5(赤色)は、その発光ピークが組織自己蛍光の緑−オレンジスペクトルの十分外にあることから使用された。自動分析のためにスライドは、anti-fade DAPI-containing mounting medium(ProLong Gold, Molecular Probes, Eugene, OR)でカバースリップされる。
【0104】
イメージ取得:HistoRx PM-2000(商標)により自動イメージキャプチャを実行した。HistoRx PM-2000は既に詳述されている(Camp, R. et al., Nat. Med., 8:1323-1327, 2002; Giltnane, J. & Rimm, D., Nat. Clin. Pract. Oncol., 1:104-11, 2004; Cregger, M. et al., Arch. Pathol. Lab. Med., 130:1026-30, 2006)。Cy3、DAPIで可視化されたサイトケラチン染色状態及びCy5によるターゲット染色状態の高解像度の8ビット(取得イメージの画素あたり256階調値が得られる)デジタルイメージが、アレイ上の各組織スポットに対しキャプチャされセーブされた。画素はパワーの関数(パワー(P)=(画素明るさ/256)/露光時間)としてイメージファイルに書き込まれた。焦点内外のイメージが、従来のAQUAスクリプト及び検証プログラムで後に使用するために、各チャンネルにつき取得された。
【0105】
従来のAQUA分析:AQUA分析が実行された。概説すると、周囲のストローマ及び白血球の両方又は一方から腫瘍を区別するマーカー(サイトケラチン)のイメージをマニュアルでしきい値化することにより、腫瘍特異マスクが生成される。これは、2値化マスク(各画素が“ON”又は“OFF”のいずれか)の生成である。しきい値のレベルが検証され、必要に応じて小サンプルイメージのスポットチェックで調節される。継いで、残りのイメージに対し、単一の決定しきい値を使用して自動的にマスクが適用される。後続のイメージ操作全般で、マスクエリアからのイメージ情報だけが取り込まれる。次に、コンパートメント特異タグ及びターゲットマーカーの二つのイメージ(一方が焦点内、他方が焦点外、サンプル中6μm深度)が撮られる。RESA(Rapid Exponential Subtraction Algorithm)と呼ばれるアルゴリズムを使用した二つのイメージの画素ごとの分析(pixel-by-pixel)に基づいて、焦点外イメージのパーセンテージが焦点内イメージから減算される。RESAアルゴリズムは、高い明るさの染色領域と隣接した低い明るさの染色領域との境界を向上させ、背景と隣接コンポーネントに対する画素の割り当てを容易にする。最後に、PLACEアルゴリズムが、イメージ内各画素を特異細胞内コンパートメントに割り当てる。ユーザー判断信頼度(本例では100%)でコンパートメントに正確に割り当てることのできない画素は、排除される。例えば、細胞核及び細胞質画素の明るさが非常に近くて正確な割り当てのできない画素は、無効にされる(通常、全画素の8%を下回る)。各画素が細胞内コンパートメントに割り当てられると(又は上記のように除外されると)、各位置の信号が合算される。これらのデータがセーブされ、全信号中のパーセンテージ又はコンパートメント領域あたりの平均信号明るさのいずれかとして後に表示され得る。イメージは、次の事項に従って検証された。1)腫瘍領域の2%越えをカバーしている、2)DAPI及び/又はCy3の総明るさのボトム10%におけるイメージは排除、3)DAPIのAQUAスコア比(細胞質で検出された核/DAPIにおいて測定されるDAPI)が>1.5。
【0106】
クラスタリングAQUAアルゴリズム(C−AQUA):腫瘍マスクが、非組織又は非腫瘍領域を除外し、分析対象の腫瘍組織だけを考察するため、イメージに適用された(上述した従来の試験におけるように、ただし、不変のパラメーターセットを全試験に用いた)。これは、多数の非貢献画素を排除する方法の感度及び計算効率も向上させる(例えば、0.6mm組織スポットの高解像度イメージにおいて、20×対物倍率で、50%を下回る画素が組織を表示し得る)。腫瘍マスクの生成は、上述のようにして、そして複数の異なるサンプルの試験によって決定された値を使用して達成される。
【0107】
クラスタリングによるイメージ分割は、ユークリッド距離に基づくk-meansクラスタリングを使用して達成された(Jain, A. et al., ACM Computing Surveys, 31:264-323, 1999)。まず、全画素には、コンパートメントイメージのパワー(画像収集参照)に基づく特徴が割り当てられ、座標(PDAPI,Ocy3)として表示することができる。その結果、画素を、コンパートメント明るさの二次元分布プロットで表示することができた(図9A−C)。イメージ分割実行に使用したモデルは、画素を二つのクラスに分類することを確立する。1)試験された全コンパートメントにおいて低信号の画素(すなわち背景)、2)一つのコンパートメントマーカーが他よりも高い染色状態を示す特性の画素(例えば、DAPIよりCy3の明るさが高い)。ここで提供されたデータに関し、二つの細胞内コンパートメントのために、三つのデータ重心を識別する必要があった。解に収束し、間違った割り当てを生じさせ得る重心の「スワッピング」を防ぐためにk-meansアルゴリズムが取り得る時間に影響することから、初期値の位置の選択が重要である。ここに記載したモデルに関し、背景クラスターは原点に初期化し、一方、サイトケラチン及び細胞核の重心は、その各最大値及びゼロ(例えば、DAPIマーカーに関し、初期値は(PDAPI(max), 0))に初期化する。次に画素は、ユークリッド距離に基づいて各クラスターに割り当てられる。続いてクラスター重心値が計算され、クラスター画素メンバーシップが最評価される。当該方法は反復実行され、収斂後(メンバーシップ変更が無くなる)又は30回反復後に終了する。
【0108】
クラスター重心が画定されると、エラーチェックが立ち上がって、間違った結果を生じている可能性のある条件を検索する。第1の条件は、コンパートメントのいずれにも十分な信号がない場合であり、これは、背景ノイズに起因したコンパートメントの分割という結果を生じ得る。これが検出された場合、各コンパートメント重心を背景クラスター重心と比較する方法が実行される。コンパートメント重心が、背景クラスターに対する前景メンバーシップの一水準内にある場合、データポイントは、フラグされて分析から除外される。第2のエラーチェックは、アルゴリズムが実行可能信号を生じている領域の量も検出するという事実に由来する。この領域が良好なサンプルサイズに対して小さくなりすぎると、該当スポットはフラグされ、少数派ということで分析から省かれる。イメージ取得用に2048×2048CCDチップを備えた本例のシステムに関し、感知される画素数は、210,000画素(5%)よりも多くなくてはならない。図9Bは、すべての品質コントロール仕様をパスしたイメージを示し、一方、図9Cは、Cy3チャンネルにおけるクラスター距離欠陥に起因して失敗したイメージを示す。
【0109】
図9B及び図9Cに示す分布プロットの例から、背景より高い明るさを有するけれども、各チャンネルに同等の明るさの関与を有する画素が、広く存在すると見ることができる。したがって、収斂が達成された後、いずれかのクラスターのメンバーであるとする画素の確度をさらに決定するために幾何学法が使用される。各画素は、そのクラスター内位置及び他のクラスターに対する近さに基づいて特徴付けられる。Cy3及びDAPI画素の両値がBを下回れば、両コンパートメントでゼロ確度であり、画素値は両コンパートメントでゼロに設定される(図9A)。これは、イメージ内の背景を表している。Cy3がBよりも大きく且つDAPIがBよりも小さければ、細胞質の確率が100%であり且つ細胞核の確率が0%である(図9A)。逆に、DAPIがBよりも大きく且つCy3がBよりも小さければ、細胞核の確率が100%且つ細胞質の確率が0%である(図9A)。最終的にいずれのコンパートメントにも割り当てられない分布プロットの中央領域における値に関しては、確率関数領域が三角形ABC及びABDにより画定される。これら領域において、画素は、Cy3(三角形ABC)又はDAPI(三角形ABD)のいずれかに排他的に割り当てられる。しかしながら、演算全体に対するそれらの関与は、それらの三角形内位置によって修正される。三角形ABC内の画素は、頂点に対する近さに基づいて確率を割り当てられる。三角形領域内の画素の確率は、0から1(確率100%)の範囲の明確且つ連続した関数を介して計算される。画素がCに近づくにつれて値は100%に近づき、画素が頂点A又はB(又はAとBをつなぐ線分)に近づくにつれて、値は0に近づく。三角形ABC内の画素も同じ論理で続き、画素が頂点Dに近づくにつれて値が100%に近づく。
【0110】
結果
コンパートメント割り当てに関するPLACEアルゴリズムの比較:AQUA分析及びC−AQUA分析を、取得及び検証イメージの同じセットで実行した(総候補652のうちのn=388)。結果は同様であったが、セットアップ及びイメージ生成のしきい値レベルの決定をオペレーターが要求された一方、C−AQUAで生成された結合イメージは、教師なし形態において自動的に生成された。
【0111】
2人のオペレーターが、同じデータセットによる従来のAQUA及びC−AQUA試験をセットアップした。従来のAQUA試験に関するセットアップには平均20分かかった一方、C−AQUAに対する平均セットアップタイムは2分以下で、主観的なオペーレーターの介入は要求されなかった。二つの方法に対する2人のオペーレーターの間の回帰分析を図10に示す。高い相関(図10A:Pearson's R=0.992,p<0.001;Spearman's R=0.989,p<0.001)にも関わらず、AQUA分析によるAQUAスコアの結果はオペレーター間で違いがあったが、C−AQUAで生成されたAQUAスコアは同じであった(図10B:Pearson's R=1.000,p=0;Spearman's R=1.000,p=0)。
【0112】
線形回帰分析が、全イメージに対する全体的比較を試験するために実行された。細胞核コンパートメントサイズの比較は、従来のAQUA分析とC−AQUA分析とで有意な相関関係を示した(図10A:Pearson's R=0.779(p<0.001);Spearman's R=0.793(p<0.001))。細胞質コンパートメントサイズでも有意な相関関係を示した(図10B:Pearson's R=0.923;Spearman's R=0.914(p<0.001))。これらデータは、細胞コンパートメントを確定するC−AQUAの能力が従来のAQUA/PLACEアルゴリズムと同等であることを証明するだけではなく、C−AQUAのコンパートメント化がまったく同等というわけではないことを証明している。これは、従来のAQUA分析/PLACEアルゴリズムでは全イメージを通して一様にしきい値が適用されていたのに対し、コンパートメント化がイメージごとに最適化されるためである。
【0113】
発現スコア計算に関するPLACEアルゴリズムの比較:C−AQUAが同等のAQUAスコアを生成することを確認するため、従来のAQUA分析及びC−AQUA分析を、乳癌の三つの共通バイオマーカー(エストロゲンレセプター(ER)、プロゲステロンレセプター(PR)、Her2)に対し実行した。試験は、TMAフォーマットにおける乳癌患者サンプルの大規模乳癌コホート(n=607)で実施した。細胞コンパートメントに関する従来のAQUA分析及びC−AQUA分析の両方のAQUAスコアは、値及び順位分析の両者において有意な相関結果を提示した[図11A(ER、核): Pearson's R=0.992(p<0.001),Spearman's R=0.993(p<0.001);図11B(PR,核):Pearson's R=0.987(p<0.001),Spearman's R=0.962(p<0.001);図11C(Her2,細胞質/膜):Pearson's R=0.990(p<0.001),Spearman's R=0.976(p<0.001)]。
【0114】
生存転帰に関するPLACEアルゴリズムの比較:従来のAQUA分析及びC−AQUAを通して得られたAQUAスコアの間には非常に有意な相関関係が得られたが、転帰(例えば生存)に関して比較可能な切点を得られるような同等のデータ関係が維持されていることを証明することが重要である。この教師なし対数尤度距離クラスタリングの試験を、AQUAスコアの各セットに対し実施した。ERに関し、95%の包括一致を有する従来のAQUA及びC−AQUAスコアの両方に関しで二つのクラスターが識別された。乳癌におけるER発現は、良好な生存率の予兆である。従来のAQUA分析及びC−AQUA分析の両方に関し得られたAQUAスコアクラスターが、高いER発現が5年の疾病特異生存率の増加をはっきり予測させるという同等の生存回帰結果を提示すると、Kaplan-Meier生存分析が明らかにした [図12A;従来のAQUA分析:生存率全体(log-rank p=0.018)において80.9%(ER High)から69.5%(ER Low)へ11.4%減少;C−AQUA:生存率全体(log-rank p=0.005)において81.6%(ER High)から67.8%(ER Low)へ13.8%減少]。
【0115】
PRに関し、98%の包括的一致を有する従来のAQUA分析及びC−AQUAスコアの両方に関して二つのクラスターが識別された。乳癌におけるPR発現もまた、良好な生存率の予兆である。従来のAQUA分析及びC−AQUA分析の両方に関し得られたAQUAスコアクラスターが、高いPR発現が5年の疾病特異生存率の増加をはっきり予測させるという同等の生存回帰結果を提示すると、Kaplan-Meier生存分析が明らかにした[図12B;従来のAQUA:生存率全体(log-rank p=0.021)において84.2%(PR High)から71.8%(PR Low)へ12.4%減少;C−AQUA:生存率全体(log-rank p=0.001)において83.3%(PR High)から68.8%(PR Low)へ14.5%減少]。
【0116】
Her2に関し、94%の包括的一致を有する従来のAQUA分析及びC−AQUAスコアの両方に関して三つのクラスターが識別された。乳癌におけるHer2発現は、生存率低下の予兆である。従来のAQUA分析及びC−AQUA分析の両方に関し得られたAQUAスコアクラスターが、高いHer2発現が5年の疾病特異生存率の低下をはっきり予測させるという同等の生存回帰結果を提示すると、Kaplan-Meier生存分析が明らかにした[図12C;従来のAQUA:生存率全体(log-rank p=0.022)において77.1%(Her2 Low)から73.8%(Her2 Mid)を経て58.6%(Her2 High)までトータルで18.5% 減少;C−AQUA:生存率全体(log-rank p=0.002)において77.8%(Her2 Low)から73.8%(Her2 Mid)を経て53.6%(Her2 High)までトータルで24.2%減少]。
【0117】
検討
進歩したイメージ分析を使うことが、病理学研修室におけるサンプル分析を容易にするため迅速に採用されつつある。自動化、定量化及びさらなる客観性を結びつけた分析方法が、改良されたより多量の情報を入手する機会を病理学者に与えている。AQUAシステムは、今やバイオマーカーの評価及び検出のための検査システムであるロバスト(強靱)で定量的な免疫組織化学(IHC)プラットフォームである(Berger, A. et al., Cancer Res., 64:8767-8772, 2004; Camp, R. et al., Cancer Res., 63:1445-1448, 2003; Dolled-Filhart, M. et al., Clin.Cancer Res., 9:594-600, 2003; McCabe, A. et al., J. Natl. Cancer Inst., 97:1808-15, 2005)。従来のIHCとは違って、AQUAシステムは客観的であり、主観的、カテゴリカルなデータではなく、連続スケール上で正確な定量的インサイツプロテイン発現データを生成する。AQUAシステムは、多様なマーカーを使用した多重化蛍光パワーを活用して、細胞及び細胞内コンパートメントを分子的に区別し、特異細胞タイプ内の対象バイオマーカー及び細胞内コンパートメントの同時定量化を実行可能にする。
【0118】
クラスタリングは数学的手法であり、これにより、ここではイメージ内画素に関する蛍光強度測定であるが、各測定に固有の各種特性の関連性に基づいてデータが区分される(Miller, D. et al., Front. Biosci., 13:677-90, 2008)。クラスタリングは、背景及び信号あるいは異なる信号レベルに特異的に重心を帰属させ、画素の明るさを使用した多様な単一視野のイメージに適用可能である。個々の蛍光イメージ(例えばDAPI又はCy3)に対するこの種のクラスタリングアルゴリズムの適用により、ユーザー決定しきい値が成功するのと同じように、個々の細胞コンパートメントに関する特異信号からの自動的背景区分が可能となる。
【0119】
上述のクラスターを生じさせる特異性分割アルゴリズムがここに記載され、オペレーターごとの変動を取り除き、イメージごとのベースによる発現のコンパートメント化を最適化する、自動化PLACE式アルゴリズムが可能となる。
【0120】
特異細胞及び細胞内コンパートメントにおいてプロテイン発現を定量化できるようなイメージ分割は、それらの発現レベルがマニュアルで判別され、発現が目により全面的にスコアされるような他のマニュアル定量化法を超える利点を有する。また、イメージ増幅(RESA)で容易になり、各コンパートメントイメージにおける特異信号から非特異信号及び背景を分離するために特異画素の明るさしきい値を決定するオペレーターのインプット、を要求するPLACEを超える利点も有する。
【0121】
デジタルの病理学分析を実行するその他のプラットフォームもあるが、定量的AQUAシステムの方が有利である。しかしながら、背景に対する特異信号だけではなくて個々のイメージから2以上の個別信号も分離するイメージ分割を行うAQUA分析におけるエンドポイントは、特有の挑戦課題を呈した。それは、2以上のイメージからの画素明るさが並列にクラスタリング可能で、これにより、対象となっている全イメージから共通の背景信号を排除するだけでなく、高信頼度で、多重イメージから特異信号を区別し、ターゲットの特異画素に関する発現の正確なコンパートメント化を可能にすることであると、仮定された。したがって、イメージ分割及び発現コンパートメント化に対するPLACEアルゴリズムの能力の有益な特徴は維持され、ただし、コンパートメント化及びAQUAスコア生成に関する自動化した方法によってさらに向上する。
【0122】
C−AQUA法によるコンパートメント化にはいくつかのキーとなる利点がある。第一に、オペレーターのインプットタイムが大幅に減少する。C−AQUAでは、しきい値を最適化する必要が除かれるので、セットアップタイムは1−2分へ減少する。第二に、オペレーターには、マニュアルの視覚法で正確な分析を行う能力が常に要求されるわけではない。熟練オペレーターは概しておおよそ同等のしきい値を決定するが、しきい値設定における変動は、AQUAスコアの相異を誘発する可能性のあるコンパートメント化の差異につながる(図10、比較を図13に示す)。特にチャンネル設定において正確性及び精度が最も重要であるならば、既存のロバストで再現性あるシステムの完全自動化レベルに対する増進とこのように変動しやすい全スコアの排除は、最重要である。第三に、ユーザー決定しきい値は、分析されているセット内の全イメージを通して等しく適用されなければならないが、一方でC−AQUAは、イメージごとをベースとしてコンパートメント化を最適化する機会をもつ余裕がある。
【0123】
C−AQUAを2以上のイメージに適用して、3以上の分子的に画定したコンパートメントの自動化された最適なコンパートメント化を可能にすることができる。例えば、細胞核(DAPI)、細胞質(サイトケラチン)、及び膜(カドヘリン全般(pan-cadherin))に関する画素割り当てが、同じレベルの精度及び効率で達成可能である。
【実施例6】
【0124】
PTEN発現のクラスタリングAQUA分析
S100が非細胞核コンパートメントマーカーとして使用されたことを除いて、上述の一般的な細胞核及び非細胞核コンパートメントと共にPTEN(Clone 138G6 mouse monoclonal, CST #9559)の検出のために、グリオブラストーマ(GBM)TMA(2×冗長性で110GBM患者サンプル;中間追跡時間:13.2月)を染色した。上述のように取得されたイメージは、従来のAQUA分析及びクラスタリングAQUA分析を使用して分析された。
【0125】
AQUA及びC−AQUA分析間のPTENAQUAスコア比較(線形回帰)が図14に示されている。図14Aは、表示したPearson's RでAQUA分析(Y軸)及びC−AQUA分析(X軸)により測定された細胞核PTEN発現に関する線形回帰分析。図14Bは、表示したPearson's R値でAQUA分析(Y軸)及びC−AQUA分析(X軸)により測定された細胞質PTEN発現に関する線形回帰分析。
【0126】
PTEN細胞質発現AQUAスコアは、さらに図15に記載されている。患者予後に対する両方法に由来したPTENAQUAスコアの相関は、Kaplan Meier曲線で図16に示す。PTENAQUAスコアは、患者予後に有意な相関関係を示した。高いPTEN発現に比べて、低いPTEN発現が不良転帰に結びついた。
【実施例7】
【0127】
ERCC1発現のクラスタリングAQUA分析
肺癌TMA[TMA詳細挿入]を、上述のように細胞核及び非細胞核コンパートメントと共にERCC1の検出のために染色した。上述のようにして取得されたイメージは、従来のAQUA分析及びクラスタリングAQUA分析を使用して分析された。
【0128】
AQUA及びC−AQUA分析間のERCC1AQUAスコア比較(線形回帰)が図17に示されている。図17Aは、表示したPearson's RでAQUA分析(Y軸)及びC−AQUA分析(X軸)により測定された細胞核ERCC1発現に関する線形回帰分析。図17Bは、表示したPearson's R値でAQUA分析(Y軸)及びC−AQUA分析(X軸)により測定された細胞質ERCC1発現に関する線形回帰分析。
【0129】
ERCC1細胞質発現AQUAスコアは、さらに図18に記載されている。患者予後に対する両方法に由来したERCC1AQUAスコアの相関は、Kaplan Meier曲線で図19に示す。ERCC1AQUAスコアは、患者予後に有意な相関関係を示した。高いERCC1発現に比べて、低いERCC1発現が不良転帰に結びついた。
【0130】
均等
本発明は、発明の個々の態様をそれぞれ示すことを目的とした本願中に記載の実施形態の事柄に限定されない。本発明の修正と変形が技術的思想と範囲を外れることなく多様になし得ることは、当分野で通常の知識をもつ者には自明である。ここに列挙した以外に、発明の範囲内にある機能的に均等な方法及び装置は、以上の記載から当業者に自明である。このような修正及び変形は特許請求の範囲に入ると意図されている。本発明は、特許請求の範囲によって権利が与えられる均等な全範囲と共に、特許請求の範囲の記載によってのみ特定されるべきである。本発明は、特定の方法、試薬、化合物組成、又は生物学システムに限定されず、様々であり得るのは当然理解される。また、ここに記載された用語は、実施形態を記述する目的のためだけに使用されており、限定を目的としたものでないことは当然である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の生体サンプルに存在している、第1マーカーで標識された第1生体コンパートメントと第2マーカーで標識された第2生体コンパートメントとを判別する方法であって、
前記第1生体コンパートメントに特異な第1造影剤を使用して提供される第1高解像度イメージと、前記第2生体コンパートメントに特異な第2造影剤を使用して提供される第2高解像度イメージと、を利用し、
前記第1生体コンパートメントの前記第1高解像度イメージにおける各画素位置の明るさを、前記第2生体コンパートメントの前記第2高解像度イメージにおいて対応する各画素位置の明るさと比較し、画素の明るさの違いによって、前記第1生体コンパートメントと前記第2生体コンパートメントとを判別する、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、自動化された方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法であって、コンピュータにより実行される方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法であって、
前記二つの高解像度イメージの画素は、前記第1造影剤の明るさと前記第2造影剤の明るさとを軸にしてプロットされる、方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法であって、
i) 高い前記第1造影剤の明るさ及び低い前記第2造影剤の明るさによって特徴付けたクラスターの画素を前記第1生体コンパートメントに割り当て、
ii) 高い前記第2造影剤の明るさ及び低い前記第1造影剤の明るさによって特徴付けたクラスターの画素を前記第2生体コンパートメントに割り当て、
iii) 低い前記第1造影剤の明るさ及び低い前記第2造影剤の明るさによって特徴付けたクラスターの画素を背景に割り当てると共にさらなる分析から当該画素を除く、
ことを含む方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法であって、
前記割り当てステップがいずれも、クラスタ化アルゴリズムを使用して実行される、方法。
【請求項7】
請求項6記載の方法であって、
前記割り当てステップがいずれも、各画素のクラスタメンバーシップを決定するためにk-meansクラスタリング法を使用して実行される、方法。
【請求項8】
請求項5記載の方法であって、
前記第1造影剤の明るさ及び前記第2造影剤の明るさをもつ残りの画素を、確率に基づいて、前記第1生体コンパートメント又は前記第2生体コンパートメントに割り当てる、方法。
【請求項9】
請求項5記載の方法であって、
前記第1造影剤の明るさ及び前記第2造影剤の明るさをもつ残りの画素は、前記第1生体コンパートメント及び前記第2生体コンパートメントのいずれにも割り当てない、方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法であって、
前記生体コンパートメントは、細胞型、細胞内コンパートメント、組織コンパートメント、及び局在化細胞又は組織コンパートメントからなるグループから選択する、方法。
【請求項11】
請求項10記載の方法であって、
前記生体コンパートメントは、細胞核、細胞質、核膜、細胞膜、ミトコンドリア、小胞体、ペルオキシソーム、及びリソソームからなるグループから選択された細胞内コンパートメントとする、方法。
【請求項12】
請求項10記載の方法であって、
前記生体コンパートメントは、上皮、ストローマ、及び中皮からなるグループから選択された組織コンパートメントとする、方法。
【請求項13】
請求項1記載の方法であって、
前記サンプルは、組織サンプル、細胞プレパラート、又は細胞内画分である、方法。
【請求項14】
請求項1記載の方法であって、
前記第1造影剤及び前記第2造影剤の少なくとも一方の画素の明るさにより画定されるマスクを決定し、該マスク内の画素に対してのみコンパートメントの割り当てを決定する、方法。
【請求項15】
請求項1記載の方法であって、
前記第1マーカーで標識された第1生体コンパートメントのラベルに特異な前記第1造影剤、前記第2マーカーで標識された第2生体コンパートメントのラベルに特異な前記第2造影剤、で前記サンプルを培養する、方法。
【請求項16】
生体サンプル中に存在している、第1マーカーで標識された第1生体コンパートメントと第2マーカーで標識された第2生体コンパートメントとの判別を、コンピュータにより実行する方法であって、
a) 前記第1生体コンパートメントのラベルに特異な第1造影剤及び前記第2生体コンパートメントのラベルに特異な第2造影剤で前記サンプルを培養し、
b) 前記第1造影剤でラベルされたサンプルの第1高解像度イメージと前記第2造影剤でラベルされたサンプルの第2高解像度イメージとを取得し、
c) 前記第1高解像度イメージと前記第2高解像度イメージとにおける各画素位置に対応する前記第1造影剤及び前記第2造影剤の明るさを計測し、
d) 各画素において、画素ごとの前記第1及び第2造影剤の明るさに基づく画素のクラスター分析を実行して、クラスターを計算し、
e) 高い前記第1造影剤の画素明るさ及び低い前記第2造影剤の画素明るさによって特徴付けたクラスターの画素を前記第1生体コンパートメントに割り当て、
f) 高い前記第2造影剤の画素明るさ及び低い前記第1造影剤の画素明るさによって特徴付けたクラスターの画素を前記第2生体コンパートメントに割り当て、
g) 低い前記第1造影剤の画素明るさ及び低い前記第2造影剤の画素明るさによって特徴付けたクラスターの画素を背景に割り当てると共に、さらなる分析から当該画素を除く、
ことを含み、これによって、第1のマーカーで標識された細胞内コンパートメントと第2のマーカーで標識された細胞内コンパートメントとを判別する、方法。
【請求項17】
生体サンプル中に存在している、第1マーカーで標識された第1生体コンパートメント及び第2マーカーで標識された第2生体コンパートメントにおける特定のバイオマーカーの局在判断及び定量化を、コンピュータにより実行する方法であって、
a) 前記第1生体コンパートメントのラベルに特異な第1造影剤、前記第2生体コンパートメントのラベルに特異な第2造影剤、及び前記バイオマーカーのラベルに特異な第3造影剤で前記サンプルを培養し、
b) 前記第1造影剤でラベルされたサンプルの第1高解像度イメージ、前記第2造影剤でラベルされたサンプルの第2高解像度イメージ、及び前記第3造影剤でラベルされた第3高解像度イメージを取得し、
c) 前記第1及び第2高解像度イメージの各画素位置における前記第1及び第2造影剤の画素明るさを計測し、
d) 前記第1生体コンパートメント又は前記第2生体コンパートメントに対して画素を割り当てる画素のクラスター分析を実行し、
e) 前記第3造影剤を示す明るさ値をもつ画素位置を認識するために、前記第1及び第2生体コンパートメントに割り当てた画素位置を、前記第3高解像度イメージにおいて分析し、前記第1及び第2生体コンパートメントのそれぞれに割り当てた画素位置で前記第3高解像度イメージの総明るさ値を決定する、
ことを含み、これによって、前記第1生体コンパートメントと前記第2生体コンパートメントとにおける前記バイオマーカーの局在判断及び定量化を行う、方法。
【請求項18】
請求項17記載の方法であって、
前記高解像度イメージは、正立又は倒立光学顕微鏡を使用して得る、方法。
【請求項19】
請求項17記載の方法であって、
前記クラスター分析は、各画素位置における前記第1及び第2造影剤の画素明るさによる反復k-meansクラスタリング法を使用して実行し、ユークリッド距離又は対数尤度距離を使用して三つの重心を計算する、方法。
【請求項20】
請求項19記載の方法であって、
i) 前記第1生体コンパートメント及び前記第2生体コンパートメントに対する画素位置の前記第1造影剤の明るさ及び前記第2造影剤の明るさを軸にして、画素位置及び前記計算した重心をプロットし、
ii) 前記重心を接続して三角形を画定し、
iii) 前記三角形領域の外にある明るさを有する画素位置を、(1)画素明るさが前記第1造影剤を示す場合には前記第1生体コンパートメントに割り当て、(2)画素明るさが前記第2造影剤を示す場合には前記第2生体コンパートメントに割り当て、(3)画素明るさが背景を示す場合にはいずれの前記生体コンパートメントにも割り当てず、
iv) 前記三角形領域内の画素位置を、画素が前記第1又は第2生体コンパートメントに由来する確率に応じた値に基づいて、前記第1生体コンパートメント又は前記第2生体コンパートメントに割り当てる、
ことを含む、方法。
【請求項21】
請求項17記載の方法であって、
前記バイオマーカーは、プロテイン、ペプチド、核酸、脂質、及び糖質からなるグループから選択する、方法。
【請求項22】
請求項17記載の方法であって、
前記第1、第2、及び第3造影剤は、フルオロフォアを含む、方法。
【請求項23】
請求項17記載の方法であって、
前記第1又は第2生体コンパートメント内に存在する前記バイオマーカーの定量化は、前記生体コンパートメント内画素位置の前記第3造影剤の明るさ値を加算し、その加算値を、前記生体コンパートメントの画素数で除算することを含む、方法。
【請求項24】
請求項17記載の方法であって、
前記第1又は第2生体コンパートメントに割り当てられない画素位置は、第3コンパートメントに割り当てる、方法。
【請求項25】
請求項17記載の方法であって、
前記サンプルは、約5ミクロンの厚さの組織サンプルである、方法。
【請求項26】
請求項17記載の方法であって、
前記第1生体コンパートメントは細胞膜、前記第2生体コンパートメントは細胞核である、方法。
【請求項27】
請求項17記載の方法であって、
前記生体サンプルは、固定組織切片である、方法。
【請求項28】
請求項17記載の方法であって、
前記第1又は第2造影剤は、サイトケラチン、βカテニン、αカテニン、及びビメンチンからなるグループから選択されるマーカーと反応する、方法。
【請求項29】
請求項17記載の方法であって、
少なくとも前記第1、第2、又は第3造影剤の一つは、4',6-diamidino-2-phenylindole(DAPI)、Cy3、Cy-5-tyramide、及びAlexa fluor染料からなるグループから選ばれるフルオロフォアを含む、方法。
【請求項30】
請求項17記載の方法であって、
前記バイオマーカーは、Her-2/neu、エストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプター、上皮増殖因子レセプター、ホスファターゼ・テンシン・ホモログ(PTEN)、及び除去修復交差相補群1(ERCC1)からなるグループから選択される、方法。
【請求項31】
請求項17記載の方法であって、
前記第1、第2、及び第3高解像度イメージにマスクを適用して、該マスク内の画素だけを分析する、方法。
【請求項32】
プロセッサで実するために記憶されたコンピュータ可読指令を含む記録媒体であって、
前記指令は、定量的免疫測定に使用される試薬の最適希釈を決定するために、
それぞれ異なる希釈値を有し、個別の免疫測定染色強度値を備えた複数の希釈セットを受け取り、
前記希釈セットのそれぞれに対して、前記複数の免疫測定染色強度値のそれぞれに関連するダイナミックレンジ測定基準を決定し、
数値的に最も広いダイナミックレンジ測定基準を有する前記希釈セットを特定し、該特定希釈セットの希釈値を、前記定量的免疫測定に使用される試薬の最適希釈レベルの代表とする、
ステップを含む方法を実行させる、記録媒体。
【請求項33】
それぞれ異なる希釈値を有し、個別の免疫測定染色強度値を備えた複数の希釈セットを受け取り、
前記希釈セットのそれぞれに対して、前記複数の免疫測定染色強度値のそれぞれに関連するダイナミックレンジ測定基準を決定し、
数値的に最も広いダイナミックレンジ測定基準を有する前記希釈セットを特定し、該特定希釈セットの希釈値を、前記定量的免疫測定に使用される試薬の最適希釈レベルの代表とする、
ステップを、定量的免疫測定に使用される試薬の最適希釈を決定するためにコンピュータに実行させる、プログラム。
【請求項34】
組織サンプルに含まれている個々の対象細胞に存在する、第1マーカーで標識された第1細胞内コンパートメントと第2マーカーで標識された第2細胞内コンパートメントとの判別を、コンピュータにより実行する方法であって、
a) 前記第1細胞内コンパートメントのラベルに特異な第1染料、前記第2細胞内コンパートメントのラベルに特異な第2染料で、前記組織サンプルを培養し、
b) i)前記第1細胞内コンパートメントの第1イメージとii)前記第2細胞内コンパートメントの第2イメージとを得るために、前記組織サンプルにおける前記第1及び第2染料のそれぞれの高解像度イメージを、顕微鏡を使用して取得し、
c) 前記第1及び第2イメージの各画素位置における前記第1及び第2染料の明るさを測定し、
d) 前記第1染料の明るさと前記第2染料の明るさとを軸として画素をプロットし、
e) 各画素位置における前記第1及び第2染料の明るさによる反復k-meansクラスタリング法を実行して、三つのクラスターを計算し、
f) 高い前記第1染料の明るさ及び低い前記第2染料の明るさによって特徴付けられる前記クラスターの画素を前記第1細胞内コンパートメントに割り当て、
g) 高い前記第2染料の明るさ及び低い前記第1染料の明るさによって特徴付けられる前記クラスターの画素を前記第2細胞内コンパートメントに割り当て、
h) 低い前記第1染料の明るさ及び低い前記第2染料の明るさによって特徴付けられる前記クラスターの画素を背景に割り当て、さらなる分析から当該画素を除き、
i) 前記第1染料の明るさ且つ前記第2染料の明るさをもつ画素を確率に基づいて前記第1細胞内コンパートメント又は前記第2細胞内コンパートメントに割り当てる、
ことを含み、これによって、前記第1マーカーで標識された第1細胞内コンパートメントと前記第2マーカーで標識された第2細胞内コンパートメントとを判別する、方法。
【請求項35】
組織サンプルに含まれている個々の対象細胞に存在する、第1マーカーで標識された第1細胞内コンパートメントと第2マーカーで標識された第2細胞内コンパートメントとの判別を、コンピュータにより実行する方法であって、
a) 前記第1細胞内コンパートメントのラベルに特異な第1染料、前記第2細胞内コンパートメントのラベルに特異な第2染料で、前記組織サンプルを培養し、
b) i)前記第1細胞内コンパートメントの第1イメージとii)前記第2細胞内コンパートメントの第2イメージとを得るために、前記組織サンプルにおける前記第1及び第2染料のそれぞれの高解像度イメージを、顕微鏡を使用して取得し、
c) 前記第1及び第2イメージの各画素位置における前記第1及び第2染料の明るさを測定し、
d) 前記第1染料の明るさと前記第2染料の明るさとを軸として画素をプロットし、
e) 各画素位置における前記第1及び第2染料の明るさによる反復k-meansクラスタリング法を実行して、三つのクラスターを計算し、
f) 高い前記第1染料の明るさ及び低い前記第2染料の明るさによって特徴付けられる前記クラスターの画素を前記第1細胞内コンパートメントに割り当て、
g) 高い前記第2染料の明るさ及び低い前記第1染料の明るさによって特徴付けられる前記クラスターの画素を前記第2細胞内コンパートメントに割り当て、
h) 低い前記第1染料の明るさ及び低い前記第2染料の明るさによって特徴付けられる前記クラスターの画素を背景に割り当て、さらなる分析から当該画素を除き、
i) 前記第1染料の明るさ且つ前記第2染料の明るさをもつ画素を前記第1細胞内コンパートメント又は前記第2細胞内コンパートメントのいずれにも割り当てない、
ことを含み、これによって、前記第1マーカーで標識された第1細胞内コンパートメントと前記第2マーカーで標識された第2細胞内コンパートメントとを判別する、方法。
【請求項36】
組織サンプルに含まれている個々の対象細胞に存在する、第1マーカーで標識された第1細胞内コンパートメントと第2マーカーで標識された第2細胞内コンパートメントとにおける特定のバイオマーカーの局在判断及び定量化を、コンピュータにより実行する方法であって、
a) 前記第1細胞内コンパートメントのラベルに特異な第1染料、前記第2細胞内コンパートメントのラベルに特異な第2染料、及び前記バイオマーカーのラベルに特異な第3染料で、前記組織サンプルを培養し、
b) i)前記第1細胞内コンパートメントの第1イメージ、ii)前記第2細胞内コンパートメントの第2イメージ、iii)前記バイオマーカーの第3イメージを得るために、前記組織サンプルにおける前記第1、第2、及び第3染料のそれぞれの高解像度イメージを、正立又は倒立光学顕微鏡を使用して取得し、
c) 前記第1及び第2イメージの各画素位置における前記第1及び第2染料の明るさを測定し、
d) 各画素位置における前記第1及び第2染料の明るさによる反復k-meansクラスタリング法を実行して、前記第1細胞内コンパートメント又は前記第2細胞内コンパートメントに画素を割り当て、
e) 前記第3染料を示す明るさ値を有する画素位置を判別するために、前記第1細胞内コンパートメント、前記第2細胞内コンパートメント、又は前記細胞内コンパートメントの両方に割り当てられた画素位置を、前記第3イメージにおいて分析し、前記第1及び第2細胞内コンパートメントのぞれぞれに割り当てられた画素位置で前記第3染料の総明るさ値を測定する、
ことを含み、これによって、前記第1細胞内コンパートメントと前記第2細胞内コンパートメントとにおける前記バイオマーカーの局在判断及び定量化を行う、方法。
【請求項37】
組織サンプルに含まれている個々の対象細胞に存在する、第1マーカーで標識された第1細胞内コンパートメントと第2マーカーで標識された第2細胞内コンパートメントとにおける特定のバイオマーカーの局在判断及び定量化を、コンピュータにより実行する方法であって、
a) 前記第1細胞内コンパートメントのラベルに特異な第1染料、前記第2細胞内コンパートメントのラベルに特異な第2染料、及び前記バイオマーカーのラベルに特異な第3染料で、前記組織サンプルを培養し、
b) i)前記第1細胞内コンパートメントの第1イメージ、ii)前記第2細胞内コンパートメントの第2イメージ、iii)前記バイオマーカーの第3イメージを得るために、前記組織サンプルにおける前記第1、第2、及び第3染料のそれぞれの高解像度イメージを、正立又は倒立光学顕微鏡を使用して取得し、
c) 前記第1及び第2イメージの各画素位置における前記第1及び第2染料の明るさを測定し、
d) 各画素位置における前記第1及び第2染料の明るさによる反復k-meansクラスタリング法を実行し、ユークリッド距離又は対数尤度距離を使用して三つの重心を計算し、
e) 前記第1細胞内コンパートメント及び前記第2細胞内コンパートメントに対する画素位置の前記第1染料の明るさ及び前記第2染料の明るさを軸にして、画素位置及び前記計算した重心をプロットし、
f) 前記重心を接続して三角形を画定し、
g) 前記三角形領域の外にある明るさを有する画素位置を、(1)画素明るさが前記第1染料を示す場合には前記第1細胞内コンパートメントに割り当て、(2)画素明るさが前記第2染料を示す場合には前記第2細胞内コンパートメントに割り当て、(3)画素明るさが背景を示す場合にはいずれの前記細胞内コンパートメントにも割り当てず、
h) 前記三角形領域内の画素位置を、画素が前記第1又は第2細胞内コンパートメントに由来する確率に応じた値に基づいて、前記第1細胞内コンパートメント又は前記第2細胞内コンパートメントに割り当て、
i) 前記第3染料を示す明るさ値を有する画素位置を判別するために、前記第1細胞内コンパートメント、前記第2細胞内コンパートメントに割り当てられた画素位置を、前記第3イメージにおいて分析し、前記第1及び第2細胞内コンパートメントのぞれぞれに割り当てられた画素位置で前記第3染料の総明るさ値を測定する、
ことを含み、これによって、前記第1細胞内コンパートメントと前記第2細胞内コンパートメントとにおける前記バイオマーカーの局在判断及び定量化を行う、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2010−527448(P2010−527448A)
【公表日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508400(P2010−508400)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/006116
【国際公開番号】WO2008/143849
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(509316408)ヒストロックス,インコーポレイテッド. (3)
【氏名又は名称原語表記】HISTORX,INC.
【Fターム(参考)】