説明

イモビライザー装置

【課題】ECUの交換による車両の盗難を効果的に防止することができるイモビライザー装置を提供すること。
【解決手段】イモビライザー装置30は、車両用ECU40と、車両用ECU40の近傍に設置された磁石60とを備える。車両用ECU40は、磁石60が形成する磁気分布を検出する磁気検出部44と、磁気検出部44の検出結果を、車両が所定の状態にあるときに記憶する磁気記憶部46と、磁気検出部44の検出結果と磁気記憶部46に記憶された検出結果とを比較し、一致する場合に車両駆動装置2の始動を許可し、一致しない場合に車両駆動装置2の始動を禁止又は制限する制御部48とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イモビライザー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、登録済み携帯機との無線交信によるIDコードの照合結果に応じてエンジンの始動を許可するイモビライザー装置が知られている。イモビライザー装置は電子制御ユニット(ECU)を中心に構成され、ECUがIDコードの照合やエンジンの制御を行う。IDコードの組合せは無数にあるため、車両の盗難を防止することができる。
【0003】
また、ECUの交換による車両の盗難を防止する観点から、ECUが有する機能を複数のECUに分散させ、複数のECUによって相互認証処理を行う技術が知られている。
【0004】
更に、複数のECUの全交換による車両の盗難を防止する観点から、ECUを車載ネットワーク(CAN)へ接続するネットワーク側コネクタ(プラグ)によって複数のECUの認証処理を行う技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−224858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の技術は、ネットワーク側コネクタによって複数のECUの認証処理を行うため、コネクタ内にECUが組み込まれている。従って、コネクタ内のECUが交換されてしまうと、車両の盗難を防止することが困難になる。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ECUの交換による車両の盗難を効果的に防止することができるイモビライザー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、車両用ECUと、前記車両用ECUの近傍に設置された磁石とを備えるイモビライザー装置であって、
前記車両用ECUは、
前記磁石が形成する磁気分布を検出する磁気検出部と、
前記磁気検出部の検出結果を、車両が所定の状態にあるときに記憶する磁気記憶部と、
前記磁気検出部の検出結果と前記磁気記憶部に記憶された検出結果とを比較し、一致する場合に前記車両駆動装置の始動を許可し、一致しない場合に前記車両駆動装置の始動を禁止又は制限する制御部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ECUの交換による車両の盗難を効果的に防止することができるイモビライザー装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。尚、本実施例のイモビライザーECUが本発明の車両用ECUに相当する。
【0010】
図1は、本発明の一実施例のイモビライザーシステム及びその周辺装置を示す機能ブロック図である。イモビライザーシステム10は、登録済み携帯機20と、イモビライザー装置30とを含み構成され、登録済み携帯機20とイモビライザー装置30との無線通信によるIDコードの照合結果等に応じて車両駆動装置2の始動を許可する。
【0011】
携帯機20は、車載機30と無線通信するものであって、通常、1つのイモビライザーシステム10に対して複数の携帯機20が登録されている。
【0012】
携帯機20は、イグニッションキーの形態であってもよいし、スマートキーの形態であってもよい。イグニッションキーは、キーシリンダー内に挿し込まれたとき、車載機30との間で無線通信を行う。一方、スマートキーは、これを所持したユーザが乗車したとき、車載機30との間で無線通信を行う。
【0013】
携帯機20は、車載機30から送信される電波をエネルギー源として動作してもよいし、内蔵電池から供給される電力をエネルギー源として動作してもよい。前者の場合、例えばパッシブタイプのRFID(Radio Frequency IDentification)が用いられる。
【0014】
携帯機20は、送受信アンテナ22と、記憶部24とを備える。記憶部24には、携帯機20のIDコードが格納されており、必要に応じて読み出され、送受信アンテナ22から車載機30に対して送信される。
【0015】
イモビライザー装置30は、登録済み携帯機20との無線通信によるコード照合の結果に応じて登録済み携帯機20を認証する。イモビライザー装置30は、電子制御ユニット(以下、「イモビライザーECU」と称する)40を中心に構成されている。
【0016】
イモビライザーECU40は、図示しないバスを介して互いに接続されたCPU、ROM、及びRAM等からなるマイクロコンピュータとして構成されている。ROMには、CPUが実行するプログラムやデータが格納されている。
【0017】
イモビライザーECU40には、送受信アンテナ50が接続されている。送受信アンテナ50は、携帯機20と無線交信するものであり、例えばRFIDリーダが用いられる。この送受信アンテナ50は、例えばキーシリンダーの近傍、或いは運転席と助手席との間のコンソール部に設けられている。
【0018】
イモビライザーECU40のROMには、携帯機20にIDコードを送信させるためのリクエストコードが格納されており、必要に応じて読み出され、送受信アンテナ50から携帯機20に対して送信される。
【0019】
次に、携帯機20とイモビライザー装置30との無線通信について説明する。イモビライザー装置30のアンテナ50からは、リクエストコードがリクエスト信号として送信される。携帯機20は、このリクエスト信号を受信すると、送受信アンテナ22を介して、携帯機20のIDコードをID信号として送信する。イモビライザー装置30のアンテナ50で受信されたID信号は、イモビライザーECU40に供給される。イモビライザーECU40は、このID信号を受信すると、RAM等の記録媒体に格納された登録済み携帯機20のIDコードを参照して、受信されたID信号が正規のIDコードであることの認証を行う。
【0020】
イモビライザーECU40は、情報取得装置6から必要な情報を入力する。また、イモビライザーECU40は、登録済み携帯機20を認証すると、自ら40の認証処理を行い、認証処理の結果に応じて車両駆動装置2を制御する。
【0021】
情報取得装置6は、車両情報を取得する装置である。情報取得装置6は、例えば車両製造工場の設備の一部であって、作業者からの入力を受け付けて、車両情報を取得する。車両情報は、車両の状態に関する情報であって、例えば車両が正規の工場(製造工場や修理工場)で検査されている状態(以下、「工場検査モード」と称する)に関する情報を含む。
【0022】
車両駆動装置2は、車両を前後方向に移動させるための装置であり、例えばエンジンと変速機とを備える。尚、車両駆動装置2は、エンジンに代えて(又は、加えて)、電気モータを備えてもよい。
【0023】
図2は、イモビライザーECU40の主要機能を示すブロック図である。イモビライザーECU40は、図2に示すように、情報入力部42と、磁気検出部44と、磁気記憶部46と、制御部48とを備える。
【0024】
情報入力部42は、車両情報を入力する機能を有し、例えば情報取得装置6に必要に応じて接続される。この情報取得装置6から入力する情報は、車両情報である。車両情報は、車両の状態に関する情報を含む。情報入力部42は、車両情報を必要に応じて適宜入力し、車両が所定の状態(例えば、工場検査モード)にあるか否かを示す信号を磁気記憶部46に出力する。
【0025】
磁気検出部44は、後述の磁石60が形成する磁気分布(磁気パターン)を検出する機能を有し、例えば2つのホール素子44a、44b(図3参照)が用いられる。これらのホール素子44a、44bは、イモビライザーECU40の筐体内の所定位置に設けられる。尚、本実施例の磁気検出部44は2つのホール素子44a、44bが用いられるとしたが、磁石60が形成する磁気分布を検出することができる限り、ホール素子の個数に特段の制限はない。
【0026】
図3は、イモビライザーECU40と磁石60との位置関係の一例を示す模式図である。イモビライザーECU40近傍の車体は、磁石60を取り付ける取付部70を備える。磁石60は、車両毎に異なる磁気分布を形成するように取付部70に取り付けられる。
【0027】
例えば、車両毎に異なる磁気分布を形成することを目的として、磁石60として、形状及び重量が同一であって磁力が異なるものを、複数種類用意する。この場合、作業者は、規定個数の磁石60を無作為に選定し、規定の取付位置に取り付けることで、車両毎に異なる磁気分布を容易に形成することができる。また、作業者は、磁石60の個数を無作為に選定してもよいし、磁石60の取り付け位置を無作為に選定してもよい。いずれの場合であっても、車両毎に異なる磁気分布を容易に形成することができる。
【0028】
また、車両毎に異なる磁気分布を形成することを目的として、磁石60Aとして、磁化方向が軸方向に対して傾斜したものを用意してもよい。例えば、図4に示すように、径方向に磁化された円柱状の磁石60Aを用意する。この場合、作業者は、磁石60Aを自らの軸周りに無作為に回転させ、取付部70に固定することで、車両毎に異なる磁気分布を容易に形成することができる。
【0029】
これらの磁石60、60Aは、取付部70に埋設されてよい。これにより、磁石60、60Aを取り外し困難とすることができる。
【0030】
尚、磁石60、60Aは、取付部70に取り付けられる前に着磁されるが、取付部70に取り付けられた後に着磁装置によって着磁されてもよい。この場合、着磁装置の出力を無作為に制御することで、車両毎に異なる磁気分布を容易に形成することができる。
【0031】
磁気検出部44は、磁石60、60Aが形成する磁気分布を検出し、その検出結果を磁気記憶部46に出力する機能を有する。
【0032】
磁気記憶部46は、磁気検出部44の検出結果を車両が所定の状態にあるときに記憶する機能を有する。即ち、磁気記憶部46は、情報入力部42から車両情報を入力して車両が所定の状態にあることの特定を行い、磁気検出部44の検出結果を記憶する機能を有する。また、磁気記憶部46は、記憶した検出結果を制御部48へ出力する機能を備えている。
【0033】
制御部48は、磁気検出部44の検出結果と磁気記憶部46に記憶された検出結果とを比較し、一致する場合に車両駆動装置2の始動を許可し、一致しない場合に車両駆動装置2の始動を禁止又は制限する機能を有する。即ち、制御部48は、磁気検出部44の検出結果と磁気記憶部46に記憶された検出結果とを比較することでイモビライザーECU40の認証処理を行い、その結果に基づいて車両駆動装置2を制御する。
【0034】
車両駆動装置2の始動を禁止又は制限する方法には、例えば、車両駆動装置2への燃料や電力の供給をカットする方法や、点火装置による燃料の点火を禁止する方法がある。これにより、車両の盗難を防止する。
【0035】
イモビライザーECU40には、駆動スイッチ4が接続されている。駆動スイッチ4は、例えば、押しボタン式センサで構成され、運転席前方のインストルメントパネルに設けられる。駆動スイッチ4は、ユーザが駆動スイッチ4を押す度に順次、停止(OFF)信号、アクセサリー(ACC)信号、始動(ON)信号を送信する。イモビライザーECU40は、この始動信号を受信し且つ車両駆動装置2の始動を許可すると、車両駆動装置2を始動する。
【0036】
このように、イモビライザーECU40は、自ら40の認証処理を行い、その結果に基づいて車両駆動装置2を制御するので、ECU40の交換による車両の盗難を効果的に防止することができる。また、イモビライザーECU40が自ら40の認証処理を行うので、相互認証の観点から複数のECUを設置することが不要となる。更に、イモビライザーECU40が自ら40の認証処理を行うので、ECU40を交換困難な場所に設置することが不要となる。
【0037】
また、イモビライザーECU40は、車体に形成された磁気分布の情報を記憶して自ら40の認証処理を行うので、代替ECUを予め用意することが略不可能となる。即ち、磁気分布の組合せは無数にあるので、代替ECUを予め用意することが略不可能となる。従って、車両の盗難を効果的に防止することができる。
【0038】
図5は、イモビライザーECU40が実行する処理の一例を示すフローチャートである。イモビライザーECU40は、図5の処理を、例えば情報取得装置6に接続された時、及び登録済み携帯機20を認証した時に1回実行する。
【0039】
先ず、情報入力部42が情報取得装置6から車両情報を入力する(S100)。次いで、磁気記憶部46が情報入力部42から車両情報を入力して車両の状態を特定する(S102)。具体的には、車両の状態が工場検査モードか否かを特定する。
【0040】
工場検査モードである場合(S102、YES)、磁気検出部44が車体に形成された磁気分布を検出する(S104)。次いで、磁気記憶部46が磁気検出部44の検出結果を記憶する(S106)。
【0041】
検出結果を記憶した場合(S106)、及び工場検査モードでない場合(S102、NO)、磁気検出部44が車体に形成された磁気分布を検出する(S108)。次いで、制御部48が磁気検出部44の検出結果と磁気記憶部46に記憶された検出結果とを照合する(S110)。
【0042】
今回の検出結果と記憶された検出結果とが一致する場合(S110、YES)、イモビライザーECU40が正規のものであるので、制御部48が車両駆動装置2の始動を許可し(S112)、今回の処理を終了する。
【0043】
一方、今回の検出結果と記憶された検出結果とが一致しない場合(S110、NO)、イモビライザーECU40が不正に交換された可能性があるので、制御部48が車両駆動装置2の始動を禁止又は制限し(S114)、今回の処理を終了する。
【0044】
尚、図5の処理を実行した結果、今回の検出結果と記憶された検出結果とが一致しない場合(S110、NO)、確認のため、S100以降の処理を複数回数実行してもよい。
【0045】
以上説明したように、本実施例のイモビライザー装置30によれば、イモビライザーECU40が自ら40の認証処理を行い、その結果に基づいて車両駆動装置2を制御するので、ECU40の交換による車両の盗難を効果的に防止することができる。
【0046】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0047】
例えば、上述した実施例において、制御部48は、登録済み携帯機20を認証した後に、イモビライザーECU40の認証処理を行うとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、イモビライザーECU40を認証した後に、登録済み携帯機20の認証処理を行ってもよく、認証処理の順序に制限はない。
【0048】
また、上述した実施例において、磁気記憶部46は、車両が工場検査モードにあるときに磁気検出部44の検出結果を記憶するとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、車両製造時からの累計走行距離が所定距離(例えば、10km以内)の状態にあるときに磁気検出部44の検出結果を記憶するとしてもよい。累計走行距離の検出には、例えば標準で車両に搭載される車速センサが用いられる。
【0049】
また、上述した実施例において、イモビライザーECU40が携帯機20及び自ら40の認証処理を行う機能と車両駆動装置2を制御する機能とを備えるとしたが、イモビライザーECU40が有する複数の機能を複数のECUに分散してもよい。例えば、第1のECUが携帯機20及び自ら(第1のECU)の認証処理を行う機能を有し、第2のECUが車両駆動装置2を制御する機能を有してもよい。また、第1のECUが携帯機20の認証処理を行う機能を有し、第2のECUが自ら(第2のECU)の認証処理を行う機能と、車両駆動装置2を制御する機能とを有してもよい。このようにイモビライザーECU40が有する複数の機能を複数のECUに分散する場合、複数のECUによって相互認証処理を行わせる。これにより、複数のECUの全交換による車両の盗難を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施例のイモビライザーシステム及びその周辺装置を示す機能ブロック図である。
【図2】イモビライザーECU40の主要機能を示すブロック図である。
【図3】イモビライザーECU40と磁石60との位置関係の一例を示す模式図である。
【図4】磁石60の変形例を示す模式図である。
【図5】イモビライザーECU40が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
10 イモビライザーシステム
20 携帯機
30 イモビライザー装置
40 イモビライザーECU
42 情報入力部
44 磁気検出部
46 磁気記憶部
48 制御部
50 送受信アンテナ
60、60A 磁石
70 取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ECUと、前記車両用ECUの近傍に設置された磁石とを備えるイモビライザー装置であって、
前記車両用ECUは、
前記磁石が形成する磁気分布を検出する磁気検出部と、
前記磁気検出部の検出結果を、車両が所定の状態にあるときに記憶する磁気記憶部と、
前記磁気検出部の検出結果と前記磁気記憶部に記憶された検出結果とを比較し、一致する場合に前記車両駆動装置の始動を許可し、一致しない場合に前記車両駆動装置の始動を禁止又は制限する制御部とを備えるイモビライザー装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate