説明

イリジウム錯体化合物、有機エレクトロルミネッセンス素子およびその用途

【課題】発光効率が高く、かつ素子の寿命が長い有機EL素子を提供する。また、該素子に用いられるイリジウム錯体化合物を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表わされる配位子が、1つのイリジウム原子に1または2個配位した構造を有するイリジウム錯体化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イリジウム錯体化合物、有機エレクトロルミネッセンス素子およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
燐光発光性化合物は、高い発光効率を有することから、近年、有機エレクトロルミネッセンス素子(本明細書において「有機EL素子」ともいう。)における発光材料として、研究開発が活発に行われている。
【0003】
燐光発光性化合物を用いた有機EL素子は、様々な用途へ拡大されることが期待されるが、特にディスプレイ用途へ展開させるためには、高い発光効率とともに素子の安定した駆動を持続する材料の開発が必須である。
【0004】
フルカラーディスプレイに必要な3原色の中で、緑色発光および赤色発光を用いた有機EL素子では、実用的に充分な発光効率、耐久性および溶解性等の特性を有する燐光発光性化合物が見出されているが、青色発光を用いた有機EL素子ではそのような燐光発光性化合物は見出されていない。
【0005】
そこで、高い発光効率を有し、かつ高い耐久性を有する青色燐光発光性化合物の開発が望まれている。
【0006】
特表2003−526876号公報(特許文献1)には、燐光発光性化合物として有機イリジウム錯体を用いることで、有機EL素子の発光効率を大きく向上させ得ることが開示されている。イリジウム錯体としてはトリス(2−(2−ピリジル)フェニル)イリジウムおよびその誘導体が例示されており、芳香族構造の配位子の置換基をアルキル基またはアリール基に変更することによって、イリジウム錯体の発光色が変わることが記載されている。
【0007】
特開2001−247859号公報(特許文献2)には、トリス(2−(2−ピリジル)フェニル)イリジウムの置換基として様々な基が例示されている。
【0008】
特開2002−170684号公報(特許文献3)には、高効率発光素子およびそれを実現する新規金属錯体として、燐系配位子を有するイリジウム錯体が開示されている。
【0009】
特表2004−506305号公報(特許文献4)には、青色発光を示すイリジウム錯体化合物が記載されている。
【0010】
また、高い色純度の青色燐光発光性化合物として、ジフルオロビピリジル配位子が3つ配位したイリジウム錯体化合物が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0011】
いずれの場合も発光素子とした場合の発光輝度や発光効率は、その発光する光が燐光に由来することから従来の素子に比べ大幅に改良されるものであるが、素子の耐久性については従来の素子よりも低いという問題点があった。
【0012】
特に青色燐光発光性化合物は、発光波長の短波化に伴い素子の耐久性が大幅に短くなるため、そのトレードオフの改善が求められていた。
【0013】
波長の短波化に関しては、これまでフェニルピリジル配位子にフッ素原子などのハロゲン原子含んだ電子吸引基を置換基として導入することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特表2003−526876号公報
【特許文献2】特開2001−247859号公報
【特許文献3】特開2002−170684号公報
【特許文献4】特表2004−506305号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Inorg. Chem. 2009, 48, 1030-1037
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献4に記載のイリジウム錯体化合物を用いて作成した有機EL素子は、素子の寿命や発光効率が充分では無かった。なお、有機EL素子の寿命は、素子に一定の電流を通電した場合の輝度低下が起こるまでの時間によって評価することができる。
【0017】
非特許文献1に記載のイリジウム錯体化合物は、深青色発光が見られる。しかし発光波長が438nmと短波長すぎ、また、溶媒に対する溶解性も劣るため成膜性が悪く、該イリジウム錯体化合物を用いて作成した有機EL素子は、発光効率、素子の寿命が充分ではなかった。
【0018】
本発明は上記従来技術の有する課題を鑑みてされたものであり、発光効率が高く、かつ素子の寿命が長い有機EL素子を提供することと、該素子に用いられるイリジウム錯体化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、青色燐光発光性化合物として、特定のイリジウム錯体化合物を用いると、該化合物を用いて作成した有機EL素子は、発光効率が高く、かつ素子の寿命が長いことを見出し、本発明を完成させた。
【0020】
すなわち、本発明は以下のとおりに要約される。
【0021】
[1]
下記式(1)で表わされる配位子が、1つのイリジウム原子に1または2個配位した構造を有するイリジウム錯体化合物。
【0022】
【化1】

【0023】
(式(1)において、Z1およびZ2の一方が窒素原子であり、他方が下記式(2)で表わされる基であり、
1〜R7はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜40のアラルキル基、炭素数1〜30のアルキル基によって置換されていてもよいアミノ基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数1〜30のアルキル基によって置換されていてもよいシリル基、シアノ基、ホルミル基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、チオシアネート基または、これらの基が有する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された基である。)
【0024】
【化2】

【0025】
[2]
下記式(3)で表わされるイリジウム錯体化合物。
【0026】
【化3】

【0027】
(式(3)において、Z1およびZ2の一方が窒素原子であり、他方が下記式(2)で表
わされる基であり、
1〜R7はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜40のアラルキル基、炭素数1〜30のアルキル基によって置換されていてもよいアミノ基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数1〜30のアルキル基によって置換されていてもよいシリル基、シアノ基、ホルミル基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、チオシアネート基または、これらの基が有する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された基であり、
1、X2およびL1は配位子を形成し、
1は窒素原子または炭素原子であり、X2は窒素原子であり、
1は、X1およびX2と共に配位子を形成する原子群であり、
1、X2およびL1が形成する配位子は、下記式(1)で表わされる配位子以外の配位
子であり、
mは1または2の整数であり、nは1または2の整数であり、m+nは3である。)
【0028】
【化4】

【0029】
(式(1)において、Z1およびZ2の一方が窒素原子であり、他方が下記式(2)で表わされる基であり、
1〜R7はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜40のアラルキル基、炭素数1〜30のアルキル基によって置換されていてもよいアミノ基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数1〜30のアルキル基によって置換されていてもよいシリル基、シアノ基、ホルミル基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、チオシアネート基または、これらの基が有する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された基である。)
【0030】
【化5】

【0031】
[3]
下記式(4)で表わされるイリジウム錯体化合物。
【0032】
【化6】

【0033】
(式(4)において、Z1およびZ2の一方が窒素原子であり、他方が下記式(2)で表わされる基であり、
1〜R15はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30のアルキル基
、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜40のアラルキル基、炭素数1〜30のアルキル基によって置換されていてもよいアミノ基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数1〜30のアルキル基によって置換されていてもよいシリル基、シアノ基、ホルミル基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、チオシアネート基または、これらの基が有する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された基であり、
mは1または2の整数であり、nは1または2の整数であり、m+nは3である。)
【0034】
【化7】

【0035】
[4]
一対の電極と、発光層を含む一層または複数層の有機層とを備えた有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記発光層が[1]〜[3]のいずれか一項に記載のイリジウム錯体化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0036】
[5]
発光層が電荷輸送性の非共役高分子化合物を含有することを特徴とする[4]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0037】
[6]
[4]または[5]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いたことを特徴とする画像表示装置。
【0038】
[7]
[4]または[5]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いたことを特徴とする面発光光源。
【発明の効果】
【0039】
本発明のイリジウム錯体化合物を用いて作成した有機EL素子は、発光効率が高く、かつ素子の寿命が長い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、本発明に係る有機EL素子の例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
次に本発明について具体的に説明する。
【0042】
<イリジウム錯体化合物>
本発明のイリジウム錯体化合物は、下記式(1)で表わされる配位子が、1つのイリジウム原子に1または2個配位した構造を有する。
【0043】
【化8】

【0044】
(式(1)において、Z1およびZ2の一方が窒素原子であり、他方が下記式(2)で表わされる基であり、
1〜R7はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜40のアラルキル基、炭素数1〜30のアルキル基によって置換されていてもよいアミノ基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数1〜30のアルキル基によって置換されていてもよいシリル基、シアノ基、ホルミル基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、チオシアネート基または、これらの基が有する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された基である。)
【0045】
【化9】

【0046】
本発明のイリジウム錯体化合物は、燐光発光性を有し、該化合物を発光層に含有する有機EL素子は、発光効率に優れ、従来の有機EL素子よりも長寿命である。
【0047】
本発明のイリジウム錯体化合物は、上記式(1)で表わされる配位子が、イリジウム原子1つあたり、1または2個配位しており、通常は、さらに異なる配位子が配位している。イリジウム錯体は一般に、すべて同じ配位子からなる錯体と比べて、2種以上の配位子を組み合わせた錯体のほうが構造の対称性が下がり、溶媒に対する溶解性が高くなる傾向がある。本発明のイリジウム錯体化合物は溶媒に対する溶解性に優れるため、有機EL素子を製造する際に、該イリジウム錯体化合物を溶解させた溶液は、基板上に均一に塗布することができ、成膜性に優れる。
【0048】
なお、本発明のイリジウム錯体化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
本発明のイリジウム錯体化合物としては、下記式(3)で表わされるイリジウム錯体化合物が好ましく、下記式(4)で表わされるイリジウム錯体化合物であることが特に好ましい。
【0050】
【化10】

【0051】
(式(3)において、Z1およびZ2の一方が窒素原子であり、他方が前記式(2)で表わされる基であり、
1〜R7はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜40のアラルキル基、炭素数1〜30のアルキル基によって置換されていてもよいアミノ基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数1〜30のアルキル基によって置換されていてもよいシリル基、シアノ基、ホルミル基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、チオシアネート基または、これらの基が有する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された基であり、
1、X2およびL1は配位子を形成し、
1は窒素原子または炭素原子であり、X2は窒素原子であり、
1は、X1およびX2と共に配位子を形成する原子群であり、
1、X2およびL1が形成する配位子は、前記式(1)で表わされる配位子以外の配位
子であり、
mは1または2の整数であり、nは1または2の整数であり、m+nは3である。)
【0052】
【化11】

【0053】
(式(4)において、Z1およびZ2の一方が窒素原子であり、他方が前記式(2)で表わされる基であり、
1〜R15はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30のアルキル基
、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜40のアラルキル基、炭素数1〜30のアルキル基によって置換されていてもよいアミノ基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数1〜30のアルキル基によって置換されていてもよいシリル基、シアノ基、ホルミル基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、チオシアネート基または、これらの基が有する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された基であり、
mは1または2の整数であり、nは1または2の整数であり、m+nは3である。)
前記式(1)、(3)および(4)において、Z1が窒素原子である場合には、R5およびR7はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜20
のアリール基、炭素数7〜40のアラルキル基、炭素数1〜30のアルキル基によって置換されていてもよいアミノ基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数1〜30のアルキル基によって置換されていてもよいシリル基、シアノ基、ホルミル基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、チオシアネート基または、これらの基が有する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された基であることが好ましい。また、Z1が窒素原子である場合には、R5およびR7はそれぞれ独立に、ハロゲン原
子またはシアノ基であることがより好ましく、フッ素原子であることが特に好ましい。
【0054】
前記式(1)、(3)および(4)において、Z2が窒素原子である場合には、R6およびR7はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜20
のアリール基、炭素数7〜40のアラルキル基、炭素数1〜30のアルキル基によって置換されていてもよいアミノ基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数1〜30のアルキル基によって置換されていてもよいシリル基、シアノ基、ホルミル基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、チオシアネート基または、これらの基が有する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された基であることが好ましい。また、Z2が窒素原子である場合には、R6およびR7はそれぞれ独立に、ハロゲン原
子またはシアノ基であることがより好ましく、フッ素原子であることが特に好ましい。
【0055】
また、前述のようにZ1およびZ2の一方が窒素原子であるが、Z1が窒素原子であるこ
とが好ましい。これはZ2が窒素原子の場合はR6およびR7でZ2を立体的に保護することになるが、錯体形成上R6に用いることのできる置換基が限られるからである。
【0056】
前記炭素数1〜30のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、1−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、3−メチルブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、4−メチルペンチル基、2−エチルブチル基、n−ヘプチル基、2−ヘプチル基、3−ヘプチル基、4−ヘプチル基、n−オクチル基、2−オクチル基、3−オクチル基、4−オクチル基、n−エチルヘキシル基、n−ノニル基、2−ノニル基、3−ノニル基、4−ノニル基、5−ノニル基またはn−デシル基等が挙げられる。
【0057】
前記炭素数6〜20のアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クオーターフェニル基、o− 、m− 、およびp− トリル基、キシリル基、o− 、m− 、およびp− クメニル基、メシチル基、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、ビナフタレニル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、フルオランテニル基、アセナフチレニル基、アセアントリレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、アントラキノリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、プレイアデニル基、ペリレニル基等が挙げられる。
【0058】
前記炭素数7〜40のアラルキル基としては、ベンジル、フェネチル、ナフチルメチル、ナフチルエチル等が挙げられる。
【0059】
前記炭素数1〜30のアルキル基によって置換されていてもよいアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジ(sec− ブチル)アミノ基、
ジ(ターシャリーブチル)アミノ基、ジペンチルアミノ基、ジイソペンチルアミノ基、ジネオペンチルアミノ基、ジ(ターシャリー ペンチル)アミノ基、ジヘキシルアミノ基、
ジイソヘキシルアミノ基、ジヘプチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、ジノニルアミノ基、ジデシルアミノ基、ジウンデシルアミノ基、ジドデシルアミノ基、ジトリデシル基、ジテトラデシルアミノ基、ジペンタデシルアミノ基、ジヘキサデシルアミノ基、ジヘプタデシルアミノ基、ジオクタデシルアミノ基、ジノナデシルアミノ基等が挙げられる。
【0060】
前記炭素数1〜30のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、ターシャリーブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、オクタデシルオキシ基、ステアリルオキシ基等が挙げられる。
【0061】
前記炭素数1〜30のアルキル基によって置換されていてもよいシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ターシャリーブチルジメチルシリル基等が挙げられる。
【0062】
前記炭素数2〜10のアシル基としては、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、ピバロイル基、シクロヘキシルカルボニル基、トルオイル基、アニソイル基、シンナモイル基等が挙げられる。
【0063】
前記炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0064】
前記式(4)で表わされるイリジウム錯体化合物としては、R3が炭素数2〜30のア
ルキル基であることが好ましい。R3が炭素数2〜30のアルキル基であると、イリジウ
ム錯体化合物の溶解性が優れる傾向があり好ましい。なお、炭素数2〜30のアルキル基としては、分岐構造を有する炭化水素基が好ましく、例えばイソブチル基、2-メチルブ
チル基、2−エチルヘキシル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、1−エチルプロピル基、1−ブチルペンチル基、1−フェニルエチル基、ターシャリーブチル基、1,1−ジメチルエチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1,1−ジエチルブチル基、1,1−ジプロピルブチル基、1,1−ジメチルペンチル基、1,1−ジエチルペンチル基、1,1−ジプロピルペンチル基、1,1−ジブチルペンチル基、1,1−ジメチルヘキシル基、1,1−ジエチルヘキシル基、1,1−ジプロピルヘキシル基、1,1−ジブチルヘキシル基、1,1−ジペンチルヘキシル基等が挙げられ、ターシャリーブチル基、1,1−ジメチルエチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルペンチル基、1,1−ジメチルヘキシル基が好ましく、ターシャリーブチル基が特に好ましい。
【0065】
また、前記式(4)で表わされるイリジウム錯体化合物としては、Z1が窒素原子であ
ることが好ましく、R5およびR7は共にフッ素原子であることが、発光量子収率の観点から特に好ましい。また、R5およびR7は共にフッ素原子であると、青色燐光発光性化合物として好適に用いることができる。
【0066】
すなわち、前記式(4)で表わされるイリジウム錯体化合物としては、下記式(4‐a)で表わされるイリジウム錯体化合物が好ましい。
【0067】
【化12】

【0068】
(式(4‐a)において、R3は炭素数2〜30のアルキル基であり、
8〜R15はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30のアルキル基
、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜40のアラルキル基、炭素数1〜30のアルキル基によって置換されていてもよいアミノ基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数1〜30のアルキル基によって置換されていてもよいシリル基、シアノ基、ホルミル基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、チオシアネート基または、これらの基が有する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された基であり、
mは1または2の整数であり、nは1または2の整数であり、m+nは3である。)
また、前記式(4)で表わされるイリジウム錯体化合物としては、R9が炭素数2〜3
0のアルキル基であることが好ましい。R9が炭素数2〜30のアルキル基であると、イ
リジウム錯体化合物の溶解性が優れる傾向があり好ましい。なお、炭素数2〜30のアルキル基としては、分岐構造を有する炭化水素基が好ましく、例えばイソブチル基、2-メ
チルブチル基、2−エチルヘキシル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、1−エチルプロピル基、1−ブチルペンチル基、1−フェニルエチル基、ターシャリーブチル基、1,1−ジメチルエチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1,1−ジエチルブチル基、1,1−ジプロピルブチル基、1,1−ジメチルペンチル基、1,1−ジエチルペンチル基、1,1−ジプロピルペンチル基、1,1−ジブチルペンチル基、1,1−ジメチルヘキシル基、1,1−ジエチルヘキシル基、1,1−ジプロピルヘキシル基、1,1−ジブチルヘキシル基、1,1−ジペンチルヘキシル基等が挙げられ、ターシャリーブチル基、1,1−ジメチルエチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルペンチル基、1,1−ジメチルヘキシル基が好ましく、ターシャリーブチル基が特に好ましい。
【0069】
また、前記式(4)で表わされるイリジウム錯体化合物としては、R13がフッ素原子であることが、発光量子収率の観点から好ましい。また、R13がフッ素原子であると、青色燐光発光性化合物として好適に用いることができる。
【0070】
すなわち、前記式(4)で表わされるイリジウム錯体化合物としては、下記式(4‐b)で表わされるイリジウム錯体化合物も好ましい。
【0071】
【化13】

【0072】
(式(4‐b)において、Z1およびZ2の一方が窒素原子であり、他方が前記式(2)で表わされる基であり、
1〜R7はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜40のアラルキル基、炭素数1〜30のアルキル基によって置換されていてもよいアミノ基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数1〜30のアルキル基によって置換されていてもよいシリル基、シアノ基、ホルミル基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、チオシアネート基または、これらの基が有する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された基であり、
9は炭素数2〜30のアルキル基であり、
mは1または2の整数であり、nは1または2の整数であり、m+nは3である。)
また、前記式(4)で表わされるイリジウム錯体化合物としては、前記(4‐a)および(4‐b)の特徴を有するイリジウム錯体化合物、すなわち、下記(4‐c)で表わされるイリジウム錯体化合物が、イリジウム錯体化合物の溶解性の観点および本発明のイリジウム錯体化合物が発光層に含有される有機EL素子の発光量子収率の観点からより好ましい。また、下記(4‐c)で表わされるイリジウム錯体化合物は、青色燐光発光性化合物として好適に用いることができる。
【0073】
【化14】

【0074】
(式(4‐c)において、R3およびR9はそれぞれ独立に炭素数2〜30のアルキル基であり、
mは1または2の整数であり、nは1または2の整数であり、m+nは3である。)
なお、前記式(4‐c)において、なお、炭素数2〜30のアルキル基としては、分岐構造を有する炭化水素基が好ましく、例えばイソブチル基、2-メチルブチル基、2−エ
チルヘキシル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、1−エチルプロピル基、1−ブチルペンチル基、1−フェニルエチル基、ターシャリーブチル基、1,1−ジメチルエチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1,1−ジエチルブチル基、1,1−ジプロピルブチル基、1,1−ジメチルペンチル基、1,1−ジエチルペンチル基、1,1−ジプロピルペンチル基、1,1−ジブチルペンチル基、1,1−ジメチルヘキシル基、1,1−ジエチルヘキシル基、1,1−ジプロピルヘキシル基、1,1−ジブチルヘキシル基、1,1−ジペンチルヘキシル基等が挙げられ、ターシャリーブチル基、1,1−ジメチルエチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルペンチル基、1,1−ジメチルヘキシル基が好ましく、ターシャリーブチル基が特に好ましい。すなわち、本発明のイリジウム錯体化合物は下記式(4‐d)で表わされるイリジウム錯体化合物が特に好ましい。
【0075】
【化15】

【0076】
(式(4‐d)において、mは1または2の整数であり、nは1または2の整数であり、m+nは3である。)
前記式(1)、(3)、(4)、(4‐a)、(4‐b)、(4‐c)および、(4‐d)において、mが1であり、nが2であることが好ましい。
【0077】
本発明のイリジウム錯体化合物を、青色燐光発光性化合物として用いるためには、配位子中の芳香環(ベンゼン環、ピリジン環)にフッ素原子が結合していることが好ましい。また、本発明のイリジウム錯体化合物が、配位子中の芳香環(ベンゼン環、ピリジン環)にフッ素原子が結合していると発光量子収率の観点からも好ましい。しかしながら、イリジウム錯体化合物に含まれるフッ素原子の量が多くなると、有機EL素子が劣化しやすくなる場合がある。
【0078】
そこで、本発明のイリジウム錯体化合物としては、イリジウム錯体化合物一分子あたり、3〜5個のフッ素原子が含まれていることが好ましく、4個のフッ素原子が含まれてることがより好ましい。本発明のイリジウム錯体化合物としては、前記式(4‐d)で表わされるイリジウム錯体化合物であることが好ましく、該式においてはmが1、nが2であると、フッ素原子の数が4つになるためより好ましい。
【0079】
また、本発明のイリジウム錯体化合物がフェイシャル(facial)体であると、該化合物の発光性が向上する点で好ましい。
【0080】
本発明のイリジウム錯体化合物は従来の燐光青色発光性化合物、例えば下記式に示す化合物(Ir(F2ppy)3)に比較して、異なる配位子からなるヘテロ型錯体でため溶媒
に対する溶解性に優れる。このため、有機EL素子を製造する際に、本発明のイリジウム錯体化合物を溶解させた溶液は、成膜性に優れ、基板上に均一に塗布することができる。このため本発明のイリジウム錯体化合物を発光層に含有する有機EL素子は、発光効率に優れ、従来の有機EL素子よりも長寿命であると考えられる。
【0081】
【化16】

【0082】
<イリジウム錯体化合物の製造方法>
本発明のイリジウム錯体化合物の製造方法は特に限定されない。イリジウム錯体化合物の製造方法として、前記式(4)で表わされるイリジウム錯体化合物を製造する方法を以下に例示する。
【0083】
なお、前記式(4)で表わされるイリジウム錯体化合物を製造する方法の例示として、前記式(4)において、mが1、nが2の場合(m=1、n=2の錯体の製造方法)と、mが2、nが1の場合(m=2、n=1の錯体の製造方法)とを示す。
【0084】
[m=1、n=2の錯体の製造方法]
以下のスキームに従って、mが1、nが2のイリジウム錯体化合物を得ることができる。
【0085】
【化17】

【0086】
塩化イリジウム(III)三水和物と、フェニルピリジン誘導体(a−2)とを、2−エトキシエタノールと水との混合溶媒(2−エトキシエタノール:水=3:1(体積比))中で加熱還流して反応させることにより、イリジウム錯体の2核錯体(b−2)を得る。
【0087】
次に、この2核錯体(b−2)とビピリジン誘導体(a−1)とをトリフルオロメタンスルホン酸銀(I)等の銀塩の存在下、トルエン等の溶媒中で加熱還流して反応させることにより本発明のイリジウム錯体化合物(c−1)を得ることができる。
【0088】
[m=2、n=1の錯体の製造方法]
以下のスキームに従って、mが2、nが1のイリジウム錯体化合物を得ることができる。
【0089】
【化18】

【0090】
塩化イリジウム(III)三水和物と、ビピリジン誘導体(a−1)とを、2−エトキシエタノールと水との混合溶媒(2−エトキシエタノール:水=3:1(体積比))中で加熱還流して反応させることにより、イリジウム錯体の2核錯体(b−1)を得る。
【0091】
次に、この2核錯体(b−1)とフェニルピリジン誘導体(a−2)とをトリフルオロメタンスルホン酸銀(I)等の銀塩の存在下、トルエン等の溶媒中で加熱還流して反応させることにより本発明のイリジウム錯体化合物(c−2)を得ることができる。
【0092】
また、別のスキームとして、以下のスキームが挙げられる。
【0093】
【化19】

【0094】
塩化イリジウム(III)三水和物(IrCl3・3H2O)に対して1等量のフェニルピリジ
ン誘導体(a−2)を2−エトキシエタノールと水との混合溶媒(2−エトキシエタノール:水=3:1(体積比))中で加熱還流して反応させ、続けて2等量のビピリジン誘導体(a−1)とをトリフルオロメタンスルホン酸銀(I)等の銀塩の存在下、トルエン等の溶媒中で加熱還流して反応させることにより本発明のイリジウム錯体化合物(c−2)
を得ることができる。
【0095】
前記スキームにおいて、いずれの場合にも、トリフルオロメタンスルホン酸銀(I)等の銀塩と同時に炭酸ナトリウムや炭酸カリウム等の無機塩基化合物、あるいはトリブチルアミンやルチジン等の有機塩基を加えると、目的物である本発明のイリジウム錯体化合物(c−1またはc−2)が高収率で得られる傾向がある。なお、トルエンを溶媒として用いた場合には、イリジウム錯体化合物はフェイシャル体とメリヂオナル体とが混合物として得られる傾向がある。また、より高い沸点を有するメシチレン等を溶媒として用い、加熱還流を行った場合には、フェイシャル体のイリジウム錯体化合物が高収率かつ高選択的に得られる傾向がある。
【0096】
なお、上記スキームにおいて、Z1、Z2、R1〜R15はそれぞれ、上記式(4)におけ
るZ1、Z2、R1〜R15と同様である。
【0097】
<有機EL素子>
本発明に係る有機EL素子は、一対の電極と、発光層を含む一層または複数層の有機層とを備えた有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記発光層が本発明のイリジウム錯体化合物を含有することを特徴とする有機EL素子である。
【0098】
さらに、上記発光層が電荷輸送性の非共役高分子化合物を含有することを特徴とする有機EL素子であることが好ましい。
【0099】
本発明に係る有機EL素子の構成の一例を図1に示すが、本発明に係る有機EL素子の構成は、これに限定されない。図1では、透明基板(例えばガラス基板)1上に設けた陽極2および陰極4の間に、発光層3を設けている。上記有機EL素子では、例えば、陽極2と発光層3の間に陽極バッファ層を設けてもよく、また、発光層3と陰極4の間に電子注入層を設けてもよい。
【0100】
上記有機EL素子において、発光層3が本発明のイリジウム化合物および電荷輸送性の非共役高分子化合物を含む有機層であると、該層はホール輸送性および電子輸送性を併せ持つ発光層として利用できる。このため、他の有機材料からなる層を設けなくても、高い発光効率を有する有機EL素子を作成できる利点がある。
【0101】
上記有機層は、特に限定されないが、例えば、以下のように製造することができる。まず、本発明のイリジウム錯体化合物および電荷輸送性の非共役高分子化合物を溶解させてなる溶液を調製する。上記溶液の調製に用いる溶媒としては、特に限定されないが、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン、アニソール等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒などが用いられる。次いで、このように調製した溶液を、インクジェット法、スピンコート法、ディップコート法または印刷法などを用いて基板上に成膜する。
【0102】
本発明のイリジウム錯体化合物は、塗布溶液用溶媒に対する溶解性が高いので、該化合物を溶かした塗布溶液を塗布する際、該化合物を均一に基板上に成膜できる点で非常に優れている。
【0103】
上記溶液の濃度としては、用いる化合物および成膜条件などに依存するが、例えば、スピンコート法やディップコート法の場合には、0.1〜10wt%であることが好ましい。このように、本発明のイリジウム錯体化合物は溶媒に対する溶解性が高いため、簡便に
成膜され、製造工程の簡略化が実現できるとともに、素子の大面積化が図れる。
【0104】
なお、本発明のイリジウム錯体化合物は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて有機EL素子の発光層に用いてもよい。
【0105】
本発明のイリジウム錯体化合物を発光層に用いた有機EL素子は、寿命が長く、高い発光効率が得られる。
【0106】
<その他の材料>
上記の各層は、バインダとして高分子材料を混合して、形成されていてもよい。上記高分子材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイドなどが挙げられる。
【0107】
また、上記の各層に用いられる材料は、機能の異なる材料、例えば、発光材料、ホール輸送材料、電子輸送材料などを混合して、各層を形成していてもよい。本発明のイリジウム錯体化合物を含む有機層においても、電荷輸送性を補う目的で、さらに他のホール輸送材料および/または電子輸送材料が含まれていてもよい。このような輸送材料としては、低分子化合物であっても、高分子化合物であってもよい。
【0108】
上記ホール輸送層を形成するホール輸送材料、または発光層中に混合させるホール輸送材料としては、例えば、TPD(N,N’−ジメチル−N,N’−(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’ジアミン);α−NPD(4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル);m−MTDATA(4、4’,4’’−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)等の低分子トリフェニルアミン誘導体;ポリビニルカルバゾール;上記トリフェニルアミン誘導体に重合性置換基を導入して重合した高分子化合物;ポリパラフェニレンビニレン、ポリジアルキルフルオレン等の蛍光発光性高分子化合物などが挙げられる。上記高分子化合物としては、例えば、特開平8−157575号公報に開示されているトリフェニルアミン骨格の高分子化合物などが挙げられる。上記ホール輸送材料は、1種単独でも、2種以上を混合して用いてもよく、異なるホール輸送材料を積層して用いてもよい。ホール輸送層の厚さは、ホール輸送層の導電率などに依存するため、一概に限定できないが、好ましくは1nm〜5μm、より好ましくは5nm〜1μm、特に好ましくは10nm〜500nmであることが望ましい。
【0109】
上記電子輸送層を形成する電子輸送材料、または発光層中に混合させる電子輸送材料としては、例えば、Alq3(アルミニウムトリスキノリノレート)等のキノリノール誘導体金属錯体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリアジン誘導体、トリアリールボラン誘導体等の低分子化合物;上記の低分子化合物に重合性置換基を導入して重合した高分子化合物などが挙げられる。上記高分子化合物としては、例えば、特開平10−1665号公報に開示されているポリPBDなどが挙げられる。上記電子輸送材料は、1種単独でも、2種以上を混合して用いてもよく、異なる電子輸送材料を積層して用いてもよい。電子輸送層の厚さは、電子輸送層の導電率などに依存するため、一概に限定できないが、好ましくは1nm〜5μm、より好ましくは5nm〜1μm、特に好ましくは10nm〜500nmであることが望ましい。
【0110】
また、発光層の陰極側に隣接して、ホールが発光層を通過することを抑え、発光層内でホールと電子とを効率よく再結合させる目的で、ホール・ブロック層が設けられていてもよい。上記ホール・ブロック層を形成するために、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、ピリジン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体などの公知の材料が用いられる。
【0111】
陽極と発光層との間に、ホール注入において注入障壁を緩和するために、陽極バッファ層が設けられていてもよい。上記陽極バッファ層を形成するためには、銅フタロシアニン、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)の混合体、フルオロカーボンなどの公知の材料が用いられる。
【0112】
陰極と電子輸送層との間、または陰極と陰極に隣接して積層される有機層との間に、電子注入効率を向上するために、厚さ0.1〜10nmの絶縁層が設けられていてもよい。上記絶縁層を形成するために、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム、酸化マグネシウム、アルミナなどの公知の材料が用いられる。
【0113】
上記陽極材料としては、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)、酸化錫、酸化亜鉛、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子など、公知の透明導電材料が用いられる。この透明導電材料によって形成された電極の表面抵抗は、1〜50Ω/□(オーム/スクエアー)であることが好ましい。陽極の厚さは50〜300nmであることが好ましい。
【0114】
上記陰極材料としては、例えば、Li、Na、K、Cs等のアルカリ金属;Mg、Ca、Ba等のアルカリ土類金属;Al;MgAg合金;AlLi、AlCa等のAlとアルカリ金属またはアルカリ土類金属との合金など、公知の陰極材料が用いられる。陰極の厚さは、好ましくは10nm〜1μm、より好ましくは50〜500nmであることが望ましい。アルカリ金属、アルカリ土類金属などの活性の高い金属を陰極として使用する場合には、陰極の厚さは、好ましくは0.1〜100nm、より好ましくは0.5〜50nmであることが望ましい。また、この場合には、上記陰極金属を保護する目的で、この陰極上に、大気に対して安定な金属層が積層される。上記金属層を形成する金属として、例えば、Al、Ag、Au、Pt、Cu、Ni、Crなどが挙げられる。上記金属層の厚さは、好ましくは10nm〜1μm、より好ましくは50〜500nmであることが望ましい。
【0115】
本発明に係る有機EL素子の基板としては、上記発光材料の発光波長に対して透明な絶縁性基板が使用され、ガラスのほか、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネート等の透明プラスチックなどが用いられる。
【0116】
上記のホール輸送層、発光層および電子輸送層の成膜方法としては、例えば、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、インクジェット法、スピンコート法、印刷法、スプレー法、ディスペンサー法などが用いられる。低分子化合物の場合は、抵抗加熱蒸着または電子ビーム蒸着が好適に用いられ、高分子材料の場合は、インクジェット法、スピンコート法、または印刷法が好適に用いられる。
【0117】
また、上記陽極材料の成膜方法としては、例えば、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、化学反応法、コーティング法などが用いられ、上記陰極材料の成膜方法としては、例えば、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などが用いられる。
【0118】
<電荷輸送性の非共役高分子化合物>
上記電荷輸送性の非共役高分子化合物は、ホール輸送性の重合性化合物および電子輸送性の重合性化合物からなる群より選択される少なくとも1種の重合性化合物を含む単量体を共重合して得られる重合体であることが好ましい。なお、本明細書において、ホール輸送性の重合性化合物および電子輸送性の重合性化合物を併せて、電荷輸送性の重合性化合物ともいう。
【0119】
すなわち、上記電荷輸送性の非共役高分子化合物は、1種または2種以上のホール輸送性の重合性化合物から導かれる構造単位、または1種または2種以上の電子輸送性の重合性化合物から導かれる構造単位を含む重合体であることが好ましい。このような重合体を用いると、発光層内における電荷の移動度が高く、また均質な薄膜を塗布によって形成することができるため、高い発光効率が得られる。
【0120】
また、上記電荷輸送性の非共役高分子化合物は、1種または2種以上のホール輸送性の重合性化合物から導かれる構造単位と、1種または2種以上の電子輸送性の重合性化合物から導かれる構造単位とを含む重合体からなることがより好ましい。このような重合体を用いると、該重合体はホール輸送性および電子輸送性の機能を備えているため、上記燐光発光性化合物付近において、ホールと電子とがさらに効率よく再結合するため、より高い発光効率が得られる。
【0121】
上記ホール輸送性の重合性化合物および上記電子輸送性の重合性化合物は、重合性官能基を有する置換基を有することのほか、特に制限されず、公知の電荷輸送性の化合物が用いられる。
【0122】
上記重合性官能基は、ラジカル重合性、カチオン重合性、アニオン重合性、付加重合性、および縮合重合性の官能基のいずれであってもよい。これらのうちで、ラジカル重合性の官能基は、重合体の製造が容易であるため好ましい。
【0123】
上記重合性官能基としては、例えば、アリル基、アルケニル基、アクリレート基、メタクリレート基、メタクリロイルオキシエチルカルバメート基等のウレタン(メタ)アクリレート基、ビニルアミド基およびこれらの誘導体などを挙げることができる。これらのうちで、アルケニル基が好ましい。
【0124】
より具体的には、上記重合性官能基がアルケニル基である場合、上記重合性官能基を有する置換基は下記一般式(A1)〜(A12)で表される置換基であることがより好ましい。これらのうちで、下記式(A1)、(A5)、(A8)、(A12)で表される置換基は、電荷輸送性の化合物に重合性官能基を容易に導入できるためさらに好ましい。
【0125】
【化20】

【0126】
非共役高分子化合物としては、例えば特開2008−091894号公報に記載されているものを用いることができる。これらの非共役高分子化合物を用いると、燐光発光性化合物上で、ホールと電子とがより効率よく再結合し、より高い発光効率が得られる。また、燐光発光性化合物とともに、均一な分布の有機層を形成でき、耐久性に優れた有機EL素子が得られる。
【0127】
本発明に係る有機EL素子に用いる、上記イリジウム錯体化合物と上記非共役高分子化
合物とを含む有機層(発光層)においては、上記イリジウム錯体化合物が、上記非共役高分子化合物で形成されるマトリックス中に分散した状態で含まれている。このため、通常は利用が困難な発光、すなわち燐光発光性化合物の三重項励起状態を経由する発光が得られる。したがって、上記有機層を用いることにより、高い発光効率が得られる。
【0128】
なお、上記電荷輸送性の非共役高分子化合物は、本発明の目的に反しない範囲で、さらに、他の重合性化合物から導かれる構造単位を含んでいてもよい。このような重合性化合物としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、スチレンおよびその誘導体などの電荷輸送性を有しない化合物が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
【0129】
また、上記電荷輸送性の非共役高分子化合物の重量平均分子量は、1,000〜2,000,000であることが好ましく、5,000〜1,000,000であることがより好ましい。本明細書における分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法を用いて測定されるポリスチレン換算分子量をいう。上記分子量がこの範囲にあると、重合体が有機溶媒に可溶であり、均一な薄膜を得られるため好ましい。
【0130】
上記電荷輸送性の非共役高分子化合物は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、および交互共重合体のいずれでもよい。
【0131】
上記電荷輸送性の非共役高分子化合物の重合方法は、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、および付加重合のいずれでもよいが、ラジカル重合が好ましい。
【0132】
<用途>
本発明に係る有機EL素子は、公知の方法で、マトリックス方式またはセグメント方式による画素として画像表示装置に好適に用いられる。また、上記有機EL素子は、画素を形成せずに、面発光光源としても好適に用いられる。
【0133】
本発明に係る有機EL素子は、具体的には、コンピュータ、テレビ、携帯端末、携帯電話、カーナビゲーション、ビデオカメラのビューファインダー等の表示装置、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信などに好適に用いられる。
【実施例】
【0134】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0135】
[実施例1]
以下の合成スキームに従い、イリジウム錯体化合物(d)を合成した。
【0136】
【化21】

【0137】
(化合物(a)の合成)
7.05 g(41.5 mmol)の2-クロロ-4-ターシャリーブチルピリジン、7.50 g(53.5 mmol
)の4-フルオロフェニルボロン酸、12.0 g(85.0 mmol)のK2CO3、および1.50 g(1.30 mmol)のPd(PPh3)4の混合物に、180 mlの1,2−ジメトキシエタン、90mlの水を加え、100℃で4時間還流攪拌した。
【0138】
得られた反応液から有機相を抽出し硫酸マグネシウムを加え乾燥を行い、ろ過した後、溶媒を減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し化合物(a)を得た。
【0139】
(化合物(b)の合成)
4-tert-ブチル-2-(4-フルオロフェニル)ピリジン(化合物(a))3.5 g(15.2 mmol)、塩化イリジウム三水和物2.5 g (7.1 mmol)を2-エトキシエタノール77 ml、水 26 mlに溶解
させ150℃で14時間還流攪拌した。
【0140】
室温に戻したのち水を加えて沈殿させた。これをろ過して、水:メタノール=7:3溶液で洗浄し化合物(b)を得た。
【0141】
(化合物(c)の合成)
1.05 g(6.19 mmol)の2-クロロ-4-ターシャリーブチルピリジン、1.00 g(6.29 mmol
)の2,6-ジフルオロピリジン-3-ボロン酸、1.75 g(12.7 mmol)のK2CO3、および0.36 g
(0.31 mmol)のPd(PPh3)4の混合物に、50mlの1,2−ジメトキシエタン、25mlの水を加え、100℃で4時間還流攪拌した。
【0142】
得られた反応液から有機相を抽出し硫酸マグネシウムを加え乾燥を行い、ろ過した後、溶媒を減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し化合物(c)を得た。
【0143】
(イリジウム錯体化合物(d)の合成)
0.10 g(0.40 mmol)の化合物(c)、0.27 g(0.20 mmol)の化合物(b)、0.11 g (0.80 mmol)の炭酸カリウム、および0.10 g(0.40 mmol)のトリフルオロメタンスルホン酸銀の混合
物に、4mlのメシチレンを加え、180℃で2時間還流攪拌した。
【0144】
溶媒を減圧留去したのち、クロロホルムに溶解させ、次いでセライトでろ過した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製しイリジウム錯体化合物(d)を得た。
【0145】
イリジウム錯体化合物(d)の1H-NMRスペクトルでは、以下のピークが観察された。なお、1H-NMRスペクトルは、日本電子(JEOL)製 JNM EX270(270MHz)を用い、溶媒として重クロロホルムを用いて測定することにより得た。
【0146】
1H-NMR (270 MHz, CDCl3) ppm: 8.28 (m,1H), 7.81 (d,2H), 7.68-7.63 (m,2H), 7.44-7.42 (m,1H), 7.33-7.27 (m,2H), 7.02-6.92 (m,3H), 6.69-6.60 (m,2H), 6.46 (m,1H), 6.42 (m,1H), 6.28 (t, 1H), 1.36-1.34 (m,27H).
[実施例2]
<極大発光波長の評価>
日本分光(JASCO)製 蛍光分光光度計FP―6500を用い、イリジウム錯体化合物(d)をクロロホルムに溶解させることで得られた溶液を測定することにより得た。
【0147】
<有機EL素子の作製>
ITO膜付ガラス基板を、アルカリ洗剤中で30分間超音波をかけて洗浄した。洗浄後の基板上に陽極バッファ層として、リアクティブイオンエッチング装置(Samco RIE-200iP)を用いてCHF3ガスによる高周波プラズマによりフルオロカーボン膜を形成し、陽極バッファ層付き基板を得た。
【0148】
次に、化合物(E2)で表される正孔輸送材料と(E17)で表される電子輸送材料を2:1(重量比)で重合させた共重合体8.1mgと、前記イリジウム錯体化合物(d)0.9mgをジクロロエタン(和光純薬工業、特級)0.5gに溶解させた。この溶液を、陽極バッファ層付き基板上に、回転数3000rpm、塗布時間30秒間の条件でスピンコート法により塗布し、窒素雰囲気下に140℃で1時間放置し、発光層を形成した。得られた発光層の膜厚は86nmであった。次に発光層を形成した基板を蒸着装置内に載置し、フッ化リチウムを蒸着速度0.01nm/sで5nmの厚さに蒸着し、続いて陰極としてアルミニウムを蒸着速度0.1nm/sで150nmの厚さに蒸着し、有機EL素子1を作製した。尚、フッ化リチウムとアルミニウムの層は、陽極の延在方向に対して直交する2本の幅3mmのストライプ状に形成し、1枚のガラス基板当たり、縦4mm×横3mmの有機発光素子を4個作製した。
【0149】
【化22】

【0150】
<EL発光特性評価>
有機EL素子に定電圧電源(Keithley製、SM2400)を用いて段階的に電圧を印加し、有機EL素子の輝度を輝度計(トプコン製、BM-9)で定量した。電流密度に対する輝度の比から決定した発光効率を表1に示す。
【0151】
また、有機EL素子に、同装置を用いて定電流を印加し続け、一定時間おきに輝度を測定したときの、輝度半減時間を表1に示す。
【0152】
[比較例1]
イリジウム錯体(d)を下記イリジウム錯体(e)に変更した以外は実施例2と同様にして有機EL素子を作製し評価した。評価結果を表1に示す。
【0153】
[比較例2]
イリジウム錯体(d)を下記イリジウム錯体(f)に変更した以外は実施例2と同様
にして有機EL素子を作製し評価した。評価結果を表1に示す。
【0154】
【化23】

【0155】
【表1】

【0156】
表1より、ビピリジル配位子を3つ導入したイリジウム錯体化合物を発光層に使用した有機EL素子(比較例2)では発光効率および輝度半減時間の特性も著しく低い。本発明のイリジウム錯体化合物を発光層に使用した有機EL素子(実施例2)では発光効率および輝度半減時間の特性が向上し、従来知られているイリジウム錯体化合物(青色燐光発光性化合物の一種である)を使用した有機EL素子(比較例1)を越えることがわかる。
【符号の説明】
【0157】
1: ガラス基板
2: 陽極
3: 発光層
4: 陰極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表わされる配位子が、1つのイリジウム原子に1または2個配位した構造を有するイリジウム錯体化合物。
【化1】

(式(1)において、Z1およびZ2の一方が窒素原子であり、他方が下記式(2)で表わされる基であり、
1〜R7はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜40のアラルキル基、炭素数1〜30のアルキル基によって置換されていてもよいアミノ基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数1〜30のアルキル基によって置換されていてもよいシリル基、シアノ基、ホルミル基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、チオシアネート基または、これらの基が有する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された基である。)
【化2】

【請求項2】
下記式(3)で表わされるイリジウム錯体化合物。
【化3】

(式(3)において、Z1およびZ2の一方が窒素原子であり、他方が下記式(2)で表わされる基であり、
1〜R7はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜40のアラルキル基、炭素数1〜30のアルキル基によって置換されていてもよいアミノ基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数1〜30のアルキル基によって置換されていてもよいシリル基、シアノ基、ホルミル基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、チオシアネート基または、これらの基が有する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された基であり、
1、X2およびL1は配位子を形成し、
1は窒素原子または炭素原子であり、X2は窒素原子であり、
1は、X1およびX2と共に配位子を形成する原子群であり、
1、X2およびL1が形成する配位子は、下記式(1)で表わされる配位子以外の配位
子であり、
mは1または2の整数であり、nは1または2の整数であり、m+nは3である。)
【化4】

(式(1)において、Z1およびZ2の一方が窒素原子であり、他方が下記式(2)で表わされる基であり、
1〜R7はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜40のアラルキル基、炭素数1〜30のアルキル基によって置換されていてもよいアミノ基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数1〜30のアルキル基によって置換されていてもよいシリル基、シアノ基、ホルミル基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、チオシアネート基または、これらの基が有する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された基である。)
【化5】

【請求項3】
下記式(4)で表わされるイリジウム錯体化合物。
【化6】

(式(4)において、Z1およびZ2の一方が窒素原子であり、他方が下記式(2)で表わされる基であり、
1〜R15はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30のアルキル基
、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜40のアラルキル基、炭素数1〜30のアルキル基によって置換されていてもよいアミノ基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数1〜30のアルキル基によって置換されていてもよいシリル基、シアノ基、ホルミル基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、チオシアネート基または、これらの基が有する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された基であり、
mは1または2の整数であり、nは1または2の整数であり、m+nは3である。)
【化7】

【請求項4】
一対の電極と、発光層を含む一層または複数層の有機層とを備えた有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記発光層が請求項1〜3のいずれか一項に記載のイリジウム錯体化合物を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
発光層が電荷輸送性の非共役高分子化合物を含有することを特徴とする請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
請求項4または5に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項7】
請求項4または5に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いたことを特徴とする面発光光源。

【図1】
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【公開番号】特開2011−136947(P2011−136947A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297885(P2009−297885)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】