説明

イリジウム錯体及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】有機エレクトロルミネッセンス素子のドーパントとして有用なイリジウム錯体を提供する。
【解決手段】下式


(式中、Arはアリール基又はヘテロアリール基、Qはメチレン基、オキシ基、チオ基又はスルホニル基、AはRで置換された炭素原子又は窒素原子を示す。)で示されるイリジウム錯体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下有機EL素子と称することもある。)のドーパントとして有用なイリジウム錯体及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、有機EL素子のドーパントとして、高効率化・色純度の向上・長寿命化を目的に種々のイリジウム錯体が提案されているが、その中でも3−(ピリジン−2−イル)−2,6−ジフルオロピリジン誘導体を配位子とするイリジウム錯体が数多く記載されている(例えば、特許文献1〜4及び非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−117978号公報
【特許文献2】特開2006−182921号公報
【特許文献3】特開2005−220136号公報
【特許文献4】特開2007−161673号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Inorganic Chemistry,48,1030(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの先行技術文献には数多くのイリジウム錯体が記載されているものの、それらの多くは実際には製造されておらず、それ自体の性能が確認されておらず、未だに高効率青色発光材料であるFIrpic((2−ピリジンカルボキシラト−κN,κO)ビス[2−(2−ピリジニル−κN)−3,5−ジフルオロフェニル−κC)]イリジウム)と同程度又はそれ以上の性能を有するイリジウム錯体の開発には到っていなかった。
【0006】
本発明の課題は、即ち、有機エレクトロルミネッセンス素子のドーパントとして有用なイリジウム錯体をより具体的に提供することにあり、又、その有機EL素子の青色ドーパントとして好適に使用することができる、高性能のイリジウム錯体を見出すことにもある。
【0007】
本発明の課題は、一般式(1)
【0008】
【化1】

(式中、Arはアリール基又はヘテロアリール基、Qはメチレン基、オキシ基、チオ基又はスルホニル基、AはRで置換された炭素原子又は窒素原子を示す。又、R、R及びRは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基又はトリフルオロメチル基を示す。Lは1価のアニオン性二座配位子を表し示し、mは2又は3である。なお、Ar上の任意の水素原子はハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基又はアリールオキシ基で置換されていても良い。)
で示されるイリジウム錯体によって解決される。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、有機EL素子の青色ドーパントとして好適に使用することができるイリジウム錯体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例8〜11で製造した有機EL素子の層構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のイリジウム錯体は一般式(1)で示される。その一般式(1)において、Arは、例えば、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等のアリール基;ピリジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、ピラゾリル基、チエニル基、ピロール基、オキサゾリル基等のヘテロアリール基を示す。なお、Ar上の任意の水素原子は、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基等アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;エテニル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基;フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基等のアルコキシ基;フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントリルオキシ基等のアリールオキシ基で置換されていても良い。
【0012】
Qは好ましくはメチレン基、ジフルオロメチレン基、ジメチルメチレン基、オキシ基、チオ基又はスルホニル基、更に好ましくはメチレン基、オキシ基、チオ基又はスルホニル基である。
【0013】
又、AはRで置換された炭素原子又は窒素原子を示す。
【0014】
前記R、R及びRは水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基又はトリフルオロメチル基を示す。
【0015】
Lは1価のアニオン性二座配位子であるが、例えば、例えば、アセチルアセトナト、ヘキサフルオロアセチルアセトナト、8−ヒドロキシキノリナート、イミンアセチルアセトナト、テトラメチルヘプタンジオネート、1−(2−ヒドロキシフェニル)ピラゾレート、フェニルピラゾレート、3−(2−ピリジル)−5−t−ブチルピラゾレート、3−(2−ピリジル)−5−トリフルオロメチルピラゾレート、2−(2−ピリジル)−4−トリフルオロメチル−1、3,5−トリアゾレート等が挙げられるが、好ましくはアセチルアセトナトである。
【0016】
なお、mは2又は3である。
【0017】
本発明のイリジウム錯体の配位子としての3−(ピリジン−2−イル)−2,6−ジフルオロピリジン誘導体は、以下のいずれかの方法によって製造できる。
【0018】
【化2】

【0019】
(式中、X、X及びXは互いに異なっていても同一でも良く、ハロゲン原子であり、Ar、Q、R及びRは前記と同義であり、Pは脱離基を示す。)
【0020】
前記脱離基Pとしては、好ましくはジヒドロキシボリル基又はジアルコキシボリル基(2つのアルキル基は互いに結合して環を形成していても良い)である。なお、Qがスルホニル基の場合には、チオ基を原料として、途中又は最後に酸化してスルホニル基へ誘導しても良い(実施例13に記載の方法)。その酸化方法としては、特に限定されないが、例えば、酸素、過酸化水素(水溶液でもよい)、ケトンパーオキサイド等の有機過酸化物、m−クロロ過安息香酸、オキソン(登録商標;カリウムイオン、過硫酸水素イオン、硫酸イオン及び硫酸水素イオンからなる複塩)を使用した方法が好適に採用される。
【0021】
又、本発明のイリジウム錯体の合成は、式(3)で示すように塩化イリジウムを出発原料として合成することができる。
【0022】
【化3】

【0023】
(式中、Ar、Q、R、R及びLは前記と同義である。)
【0024】
(有機エレクトロルミネッセンス素子)
次に本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子について説明する。本発明の有機EL素子は、本発明のイリジウム錯体が発光層に含まれるが、それ以外の公知の材料をも併せて使用することができる。
【0025】
有機EL素子は、好ましくは一対の電極間に単層または多層の有機化合物層を有する有機EL素子であり、本発明化合物を、有機化合物薄層のうちの少なくとも1層に含むものである。なお、有機化合物層とは、バッファ層、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などである。
【0026】
単層型の有機EL素子は、陽極と陰極との間に発光層を有する。発光層は、発光材料を含有し、更に、陽極から注入したホール、又は、陰極から注入した電子を発光材料まで輸送させるための有機化合物層に用いられる材料、例えば、ホール輸送材料や電子輸送材料を含有してもよい。
【0027】
多層型の有機EL素子としては、例えば、(陽極/バッファ層/ホール輸送層/発光層/ホール阻止層/電子輸送層/陰極)や(陽極/バッファ層/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/陰極)などの多層構成が挙げられるが、他に(陽極/ホール注入層/ホール輸送層/発光層/ホール阻止層/電子輸送層/金属酸化物層/陰極)、(陽極/ホール注入層/発光層/陰極)、(陽極/発光層/電子輸送層/陰極)、(陽極/ホール注入層/発光層/電子輸送層/陰極)等の多層構成も挙げられ、その構成はこれらに限定されるものではない。
【0028】
又、バッファ層、ホール輸送層、電子輸送層、および発光層のそれぞれの層は、一層構造であっても、多層構造であってもよい。更に、ホール輸送層、電子輸送層はそれぞれの層で注入機能を有する層(ホール注入層及び電子注入層)と輸送機能を有する層(ホール輸送層及び電子輸送層)を別々に設けることもできる。
【0029】
以下、本発明の有機EL素子に構成要素に関して、(陽極/バッファ層/ホール輸送層/発光層/ホール阻止層/電子輸送層/陰極)の素子構成を例に詳細に説明する。
【0030】
本発明の有機EL素子において有機層の発光層にホストとして使用される材料は、公知のホスト材料の中から任意のものを選択して用いることができる。例えば、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)−1,1’−ビフェニル(CBP)、1,3−ジ(N−カルバゾリル)ベンゼン(mCP)、2,2’―ジ〔4’’−(N−カルバゾリル)フェニル〕−1,1’−ビフェニル(4CzPBP)、ジフェニルジ(o−トリル)シラン、p−ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン、4、4’、4’’−トリス(N−カルバゾリル)−トリフェニルアミン(TCTA)、49,10−ビス−[1,1,3’,1’’]ターフェニル−5’−イル−アントラセンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
発光材料をホスト材料と組み合わせて使用する場合、発光材料はホスト材料に対して、好ましくは0.005〜80質量%である。
【0032】
ホール阻止層として使用される材料(以下、ホール阻止材料という)は、公知の材料としては、例えば、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(トリフェニルシラノラート)アルミニウム、ビス(m−ターフェニル−5’−イル)スルホン(BTPS)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
電子輸送層として使用される材料(以下、電子輸送材料という)は、公知の材料として、例えば、フルオレン、フェナントロリン、バソフェナントロリン、バソクプロイン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、アントラキノジメタン、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)等やそれらの化合物、金属錯体化合物もしくは含窒素五員環誘導体を挙げることができる。金属錯体化合物としては、具体的には、8−ヒドロキシキノリナートリチウム、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリ(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)ガリウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリナート)(o−クレゾラート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−キノリナート)(1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリナート)−4−フェニルフェノラート等があるが、これらに限定されるものではない。又、上記の含窒素五員環誘導体としては、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾールもしくはトリアゾール誘導体が好ましい。具体的には、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−チアゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−(4’−tert−ブチルフェニル)−5−(4’’−ビフェニル)1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルチアジアゾリル)]ベンゼン、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4ートリアゾール、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール等があるが、これらに限定されるものではない。更に、ポリマ−有機発光素子に使用されるポリマ−材料も使用することができる。例えば、ポリパラフェニレンおよびその誘導体、フルオレン及びその誘導体等であるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
一方、ホール輸送層として使用される材料(以下ホール輸送材料)は公知の材料から選択して用いることができる。例えばN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’ジアミン(TPD)や4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)等の芳香族ジアミン化合物、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、ポリアリールアルカン、4,4’,4’’−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、2,2’,7,7’−テトラキス−(N,N−ジフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン、及びポリビニルカルバゾール等の高分子材料が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0035】
又、有機EL素子には、ホールの注入性向上のためにバッファ層を設けることができるが、バッファ層に用いる材料としては公知の材料から選択して用いることができる。より好適には、上記ホール輸送材料に酸化モリブデンを1〜30質量%ドープしたものが使用されるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
陽極に使用される導電性材料としては、仕事関数が4eV前後より大きいもの、例えば、炭素原子、アルミニウム、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、タングステン、銀、金、白金、パラジウム及びそれらの合金、ITO(酸化インジウムに酸化スズを5〜10質量%添加した物質)基板、NESA基板に使用される酸化スズ、酸化インジウム等の酸化金属、更にポリチオフェンやポリピロール等の有機導電性樹脂を用いることが出来る。但し、陽極に使用される導電性材料の仕事関数が当該素子の陰極に使用される導電性材料の仕事関数より0.1eV以上大きなものを用いることが望ましい。
【0037】
陰極に使用される導電性物質としては、仕事関数が4eV前後より小さいもの例えば、マグネシウム、カルシウム、錫、鉛、チタニウム、イットリウム、リチウム、ルテニウム、マンガン、アルミニウム等又はそれらの合金が用いられる。ここで合金としては、マグネシウム/銀、マグネシウム/インジウム、リチウム/アルミニウム等が挙げられる。合金の比率は、蒸着源の温度、雰囲気、真空度等により制御され、特に限定されない。但し、陰極に使用されるこれらの導電性材料の仕事関数は当該素子の陽極に使用される導電性材料の仕事関数より0.1eV以上小さいものを用いることが望ましい。
【0038】
本発明の有機EL素子は、電子注入性向上のために発光層と電極との間に金属酸化物層を設けることも出来る。又、電子輸送材料に金属酸化物をドープして使用してもよい。
【0039】
使用される金属酸化物としては、LiF等のアルカリ金属フッ化物;BaF、SrF等のアルカリ土類金属フッ化物;LiO等のアルカリ金属酸化物;RaO、SrO等のアルカリ土類金属酸化物が使用される。
【0040】
陽極及び陰極は、必要があれば二層以上の層構成により形成されていてもよい。
【0041】
本発明の有機EL素子は、少なくとも一方の面は素子の発光波長領域において透明であることが望ましい。又、基板も透明であることが望ましい。
【0042】
透明電極は、前記の導電性材料を使用して、蒸着又はスパッタリング等の方法で所定の透光性が確保するように設定して得られる。
【0043】
発光面の電極は、光透過率を10%以上にすることが望ましい。
【0044】
基板は、機械的、熱的強度を有し、透明性を有するものであれば特に限定されるものではないが、ガラス基板又は透明性樹脂フィルムが使用される。
【0045】
透明性樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0046】
本発明の有機EL素子は、温度、湿度、雰囲気等に対する安定性の向上のために、素子の表面に保護層を設けるか、又はシリコンオイル、樹脂等により素子全体を保護してもよい。
【0047】
又、有機EL素子の各層の形成は、真空蒸着、スパッタリング、プラズマ、イオンプレーティング等の乾式成膜法、又はスピンコーティング、ディッピング、フローコーティング等の湿式成膜法のいずれかを適用することができる。膜厚は特に制限されないが、好ましくは0.1nm〜10μm、更に好ましくは0.5nm〜0.2μmである。
【0048】
湿式成膜法の場合、各層上に当該材料を、エタノール、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の溶媒に溶解または分散させて薄膜を調製することが出来る。又、この際前記の材料を共存させることも可能である。
【実施例】
【0049】
以下に実施例を挙げて、さらに本発明を具体的に説明する。
【0050】
参考例1(R=R=フッ素原子;2、4−ジフルオロ−3−ピリジルボロン酸の合成)
【0051】
【化4】

【0052】
攪拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた1000mlのガラス製四つ口フラスコに、ジイソプロピルアミン27.3g(270mmol)及び脱水ジエチルエーテル200mlを加えた後、−65℃以下を保ちながら1.6mol/lのn−ブチルリチウムヘキサン溶液250ml(400mmol)を滴下した。滴下終了後、−70〜−78℃で1時間攪拌した後、−60℃以下を保ちながら2,4−ジフルオロピリジン25.3g(220mmol)を滴下して1時間攪拌した。次いで、トリメトキシボラン29.5g(280mmol)を−65℃以下で加え、滴下終了後、冷却バスを外し、液温を20℃にした後、攪拌しながら1時間反応させた。反応終了後、5質量%水酸化ナトリウム水溶液200mlを加えて30分間攪拌した後、3mol/l塩酸を加えて反応液を酸性とした後に有機層を分液した。分液後の水層に酢酸エチルを加えて抽出し、抽出液を先の有機層と併せて飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、濾液を減圧下で濃縮し、濃縮物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/メタノール(容量比;400/10)で精製し、白色固体として2、4−ジフルオロ−3−ピリジルボロン酸2.9gを得た(単離収率:17%)。
なお、2、4−ジフルオロ−3−ピリジルボロン酸の物性値は以下の通りであった。
【0053】
EI−MS(m/e);424(ボロキシン体)
H−NMR(CDCl、δ(ppm));8.38(1H,m)、6.90(1H,m)、5.23(2H,s)
【0054】
参考例2(Ar=フェニル基、Q=酸素原子;2−クロロ−4−フェノキシピリジンの合成)
【0055】
【化5】

【0056】
攪拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた100mlのガラス製3つ口フラスコに、2−クロロ−4−ヨードピリジン2.4g(10mmol)、炭酸カリウム2.1g(15mmol)、ヨウ化第一銅0.2g(1.0mmol)、フェノール1.0g(11mmol)及びN、N−ジメチルホルムアミド20mlを加えて、攪拌しながら110〜120℃で24時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、反応液に水を加えた後にトルエンで抽出した。抽出液を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、濾液を減圧下で濃縮した後、濃縮物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル(容量比;400/20))で精製し、黄色液体をとして、2−クロロ−4−フェノキシピリジン1.0gを得た(単離収率;49%)。
なお、2−クロロ−4−フェノキシピリジンの物性値は以下の通りであった。
【0057】
EI−MS(m/e);205(M)、170(M−35)
H−NMR(CDCl、δ(ppm));8.20(1H,m)、7.40(2H,m)、7.25(1H,m)、7.20(2H,m)、6.85(2H,m)
【0058】
参考例3(Ar=フェニル基、Q=酸素原子;2−クロロ−4−フェノキシピリジンの合成)
【0059】
【化6】

【0060】
攪拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた100mlのガラス製3つ口フラスコに、2、4−ジクロロピリジン1.5g(10mmol)、炭酸カリウム2.1g(15mmol)、ヨウ化銅(I)0.2g(1.0mmol)、フェノール1.0g(11mmol)及びN、N−ジメチルホルムアミド20mlを加えて、攪拌しながら110〜120℃で24時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、反応液に水を加えた後にトルエンで抽出した。抽出液を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、濾液を減圧下で濃縮した後、濃縮物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル(容量比;400/20))で精製し、黄色液体をとして、2−クロロ−4−フェノキシピリジン0.9gを得た(単離収率;44%)。
【0061】
参考例4(Ar=フェニル基、Q=酸素原子;2−ブロモ−4−フェノキシピリジンの合成)
【0062】
【化7】

【0063】
攪拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた100mlのガラス製3つ口フラスコに、参考例2記載と同様な方法で合成した2−ブロモ−4−フェノキシピリジン2.1g(10mmol)及び三臭化リン30ml(0.3mol)を加えて、攪拌しながら150〜160℃で6時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、砕氷中に分割注入した後、20℃以下を保ちながらアンモニア水で中和した。中和終了後、トルエン及びヘキサンを加えて有機層を抽出した。次いで、抽出液を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、濾液を減圧下で濃縮し、黄色液体をとして、2−ブロモ−4−フェノキシピリジン2.0gを得た(単離収率:80%)。
なお、2−ブロモ−4−フェノキシピリジンの物性値は以下の通りであった。
【0064】
EI−MS(m/e);249(M)、251(M+2)
H−NMR(CDCl、δ(ppm));8.20(1H,m)、7.45(2H,m)、7.15(1H,m)、7.08(2H,m)、6.98(2H,m)
【0065】
参考例5(Ar=フェニル基、Q=酸素原子、R=R=フッ素原子;2−(2’、6’−ジフルオロピリジン−3−イル)−4−フェノキシピリジンの合成)
【0066】
【化8】

【0067】
攪拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた50mlのガラス製四つ口フラスコに、参考例4と同様な方法で合成した2−ブロモ−4−フェノキシピリジン1.0g(4.0mmol)、2、6−ジフルオロ−3−ピリジルボロン酸0.8g(5.0mmol)、テトラヒドロフラン25ml及び5質量%炭酸カリウム水溶液10ml(3.6mmol)を加え、窒素を1時間通気した。次いで、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)0.2g(0.2mmol)を加え、攪拌しながら60〜65℃で6時間反応させた。反応終了後、反応溶液に酢酸エチル及び飽和食塩水を加えて有機層を分液した。得られた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、濾液を減圧下で濃縮し、濃縮物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル(容量比;400/20→380/20→350/50)で精製し、淡褐色液体として、2−(2’,6’−ジフルオロピリジン−3−イル)−4−フェノキシピリジン0.9gを得た(単離収率:80%)。
なお、2−(2’,6’−ジフルオロピリジン−3−イル)−4−フェノキシピリジンの物性値は以下の通りであった。
【0068】
H−NMR(CDCl、δ(ppm));8.63(1H,m)、8.51(1H,d,J=5.96Hz)、7.41(3H,m)、7.25(1H,m)、7.13(2H,m)、6.45(1H、m)、6.77(1H,dd,J=2.32Hz,5.96Hz)
【0069】
参考例6(Ar=フェニル基、Q=酸素原子、R=R=フッ素原子;2−(2’、6’−ジフルオロピリジン−3−イル)−4−フェノキシピリジンの合成)
【0070】
【化9】

【0071】
攪拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた100mlのガラス製四つ口フラスコに、参考例3と同様な方法で合成した2−クロロ−4−フェノキシピリジン0.8g(3.9mmol)、2、6−ジフルオロ−3−ピリジルボロン酸0.8g(5.0mmol)、ジオキサン60ml及び1.35mol/lのリン酸カリウム水溶液12ml(17mmol)を加え、窒素を1時間通気した。次いで、トリスジベンジリデンアセトンジパラジウム(0)0.1g(0.1mmol)及びトリシクロヘキシルホスフィン84mg(0.3mmol)を加え、攪拌しながら80〜90℃で19時間反応させた。反応終了後、反応溶液を一部を取り出して薄層クロマトグラフィーで確認したところ、参考例5と同じ目的物(2−(2’、6’−ジフルオロピリジン−3−イル)−4−フェノキシピリジン)が生成していることが分かった。
【0072】
実施例1(Ar=フェニル基、Q=オキシ基、R=R=フッ素原子;ジ−μ−クロロテトラキス−[2’,6’−ジフルオロ−4−フェノキシ[2、3’−ビピリジン]−4’−イル−κC’、κN]ジイリジウムの合成)
【0073】
【化10】

【0074】
攪拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた50mlのガラス製四つ口フラスコに、参考例5と同様な方法で合成した2−(2’,4’−ジフルオロ−3−ピリジル)−4−フェノキシピリジン1.6g(5.6mmol)及び2−エトキシエタノール30mlを加え、窒素を1時間通気した。次いで、三塩化イリジウム三水和物0.7g(2.3mmol)を加え、攪拌しながら130〜140℃で28時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を添加して反応液を弱塩基性とした。次いで、水30mlを添加し、析出した固体を濾過した。得られた濾物を2−エトキシエタノール/精製水(容量比;1/1()30mlで洗浄した後に乾燥させ、黄色固体として、ジ−μ−クロロテトラキス−[2’,6’−ジフルオロ−4−フェノキシ[2、3’−ビピリジン]−4’−イル−κC’、κN]ジイリジウム1.4gを得た(単離収率;66%)。
なお、ジ−μ−クロロテトラキス−[2’,6’−ジフルオロ−4−フェノキシ[2、3’−ビピリジン]−4’−イル−κC’、κN]ジイリジウムは、以下の物性値で示される新規な化合物であった。
【0075】
H−NMR(CDCl、δ(ppm));8.88(4H,m)、7.74(4H,m)、7.52(8H,m)、7.36(4H,m)、7.22(8H,m)、6.63(4H,m)、5.35(4H,m)
【0076】
実施例2(Ar=フェニル基、Q=オキシ基、R=R=フッ素原子、L=アセチルアセトナト;(2,4−ペンタンジオナート−κO,κO)ビス(2’,6’−ジフルオロ−4−フェノキシ[2、3’−ビピリジン]−4’−イル−κC’、κN)イリジウム(III)の合成(以下[Ir(ofbpy)(acac)]と称することもある))
【0077】
【化11】

【0078】
攪拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた50mlのガラス製四つ口フラスコに、実施例1と同様な方法で合成したジ−μ−クロロテトラキス−[2’,6’−ジフルオロ−4−フェノキシ[2、3’−ビピリジン]−4’−イル−κC’、κN]ジイリジウム1.6g(1.0mmol)、アセチルアセトン0.2g(2.2mmol)、炭酸ナトリウム0.9g(8.5mmol)及び1、2−ジクロロエタン40mlを加え、窒素を1時間通気した。次いで、攪拌しながら80〜85℃で24時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、減圧下で濃縮した後、濃縮物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:塩化メチレン/酢酸エチル(容量比;380/20)))で精製し、黄色固体として、((2,4−ペンタンジオナート−κO,κO)ビス(2’,6’−ジフルオロ−4−フェノキシ[2、3’−ビピリジン]−4’−イル−κC’、κN)イリジウム1.5gを得た(単離収率:86%)。
なお、(2,4−ペンタンジオナート−κO,κO)ビス(2’,6’−ジフルオロ−4−フェノキシ[2、3’−ビピリジン]−4’−イル−κC’、κN)イリジウム(III)は、以下の物性値で示される新規な化合物であった。
【0079】
EI−MS(m/z);857(M)
H−NMR(CDCl、δ(ppm));8.16(2H,m)、7.79(2H,m)、7.51(4H,m)、7.34〜7.22(6H,m)、6.81(2H,m)、5.71(2H,m)、5.25(1H,s)、1.81(6H,s)
【0080】
実施例3(Ar=フェニル基、Q=オキシ基、R=R=フッ素原子、L=3−(ピリジン−2−イル)−5−(t−ブチル)ピラゾレート;ビス(2,6−ジフルオロ−3−(4’−フェノキシピリジル−2−イル)−ピリジン−N、C’)(3−(ピリジン−2−イル)−5−(t−ブチル)ピラゾリル−N、N’)イリジウム(III)の合成(以下[Ir(ofbpy)(pypz)]と称することもある))
【0081】
【化12】

【0082】
攪拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた100mlのガラス製三つ口フラスコに、実施例1と同様な方法で合成したジ−μ−クロロテトラキス−[2’,6’−ジフルオロ−4−フェノキシ[2、3’−ビピリジン]−4’−イル−κC’、κN]ジイリジウム0.4g(0.3mmol)、3−(ピリジン−2−イル)−5−(t−ブチル)ピラゾール0.1g(0.5mmol)、炭酸ナトリウム0.2g(2.0mmol)及び1、2−ジクロロエタン30mlを加え、窒素を1時間通気した。次いで、攪拌しながら80〜85℃で24時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、減圧下で濃縮した後、濃縮物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:塩化メチレン⇒塩化メチレン/酢酸エチル(容量比;3/1))で精製し、黄色固体として、ビス(2,6−ジフルオロ−3−(4’−フェノキシピリジル−2−イル)−ピリジン−N、C2’)(3−(ピリジン−2−イル)−5−(t−ブチル)ピラゾリル−N1、N’)イリジウム(III)0.4gを得た(単離収率:83%)。
なお、ビス(2,6−ジフルオロ−3−(4’−フェノキシピリジル−2−イル)−ピリジン−N、C’)(3−(ピリジン−2−イル)−5−(t−ブチル)ピラゾリル−N、N’)イリジウム(III)は、以下の物性値で示される新規な化合物であった。
【0083】
H−NMR(CDCl、δ(ppm));7.79〜7.54(5H,m)、7.48〜7.35(5H,m)、7.30(2H,m)、7.15〜7.08(5H,m)、6.90(1H,m)、6.49(2H,m)、6.42(1H,s)、5.88(1H,m)、5.77(1H,m)、1.24(9H、m)
【0084】
参考例7(Ar=フェニル基、Q=メチレン基;4−ベンジルピリジン−N−オキシドの合成)
【0085】
【化13】

【0086】
攪拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた500mlのガラス製四つ口フラスコに、クロロホルム300mlを加え、冷却した。次いで、65質量%m−クロロ過安息香酸26.5g(100mmol)を加えた後、4−ベンジルピリジン16.9g(100mmol)をクロロホルム100mlに溶解した溶液を、液温を0〜10℃に維持しながら滴下した。滴下終了後、攪拌しながら0〜10℃で1時間反応させた後、15〜20℃で24時間反応させた。反応終了後、反応溶液を、1mol/l水酸化ナトリウム水溶液100mlで3回、飽和食塩水1回で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾過後、得られた濾液を減圧下で濃縮し、粘性のある淡黄色液体として、4−ベンジルピリジン−N−オキシド16gを得た(単離収率;86%)。
【0087】
参考例8(Ar=フェニル基、Q=メチレン基;2−クロロ−4−ベンジルピリジンの合成)
【0088】
【化14】

【0089】
攪拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた1000mlのガラス製三つ口フラスコに、オキシ塩化リン0.19L(2.0mol)を加え、参考例7と同様な方法で合成した4−ベンジルピリジン−N−オキシド16g(86mmol)を滴下した。滴下終了後、攪拌しながら100〜110℃で24時間反応させた。反応終了後、反応液を水中に添加した後(過剰のオキシ塩化リンを分解処理)、炭酸水素ナトリウムを加えてクロロホルムで抽出した。抽出液を水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾過後、濾液を減圧下で濃縮した後、濃縮物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル(容量比;400/20))で精製し、褐色液体として、2−クロロ−4−ベンジルピリジン1.2gを得た(単離収率:5%)。
【0090】
参考例9(Ar=フェニル基、Q=メチレン基、R=R=フッ素原子;2−(2’,6’−ジフルオロピリジン−3−イル)−4−ベンジルピリジンの合成)
【0091】
【化15】

【0092】
攪拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた100mlのガラス製四つ口フラスコに、実施例8と同様な方法で合成した2−クロロ−4−ベンジルピリジン1.2g(5.9mmol)、2、6−ジフルオロ−3−ピリジルボロン酸0.9g(5.8mmol)、1.35mol/lリン酸カリウム水溶液18ml(25mmol)及びジオキサン60mlを加え、窒素を1時間通気した。次いで、トリスジベンジリデンアセトンジパラジウム(0)0.4g(0.4mmol)及びトリシクロヘキシルホスフィン0.3g(1.1mmol)を加え、攪拌しながら80〜90℃で8時間反応させた。次いで、2、4−ジフルオロ−3−ピリジルフェニルボロン酸0.5g(5.9mmol)を追加し、攪拌しながら80〜90℃で24時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却した後、減圧下で濃縮した。濃縮物に水と酢酸エチルを加えて抽出し、得られた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、濾液を減圧下で濃縮し、濃縮物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル(容量比;400/20→380/20→350/50)で精製し、淡褐色液体として、2−(2’,6’−ジフルオロピリジン−3−イル)−4−ベンジルピリジン0.5gを得た(単離収率:63%)。
なお、2−(2’,6’−ジフルオロピリジン−3−イル)−4−ベンジルピリジンの物性値は以下の通りであった。
【0093】
H−NMR(CDCl、δ(ppm));8.70〜8.56(2H,m)、7.68(1H,m)、7.40〜7.18(5H,m)、7.10(1H,m)、6.94(1H,m)、4.10(2H,s)
【0094】
実施例4(Ar=フェニル基、Q=メチレン基、R=R=フッ素原子;ジ−μ−クロロテトラキス−[2’,6’−ジフルオロ−4−ベンジル[2、3’−ビピリジン]−4’−イル−κC’、κN]ジイリジウムの合成)
【0095】
【化16】

【0096】
攪拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた50mlのガラス製四つ口フラスコに、参考例9と同様な方法で合成した2−(2’,6’−ジフルオロピリジン−3−イル)−4−ベンジルピリジン0.5g(1.8mmol)及び2−エトキシエタノール15mlを加え、窒素を1時間通気した。次いで、三塩化イリジウム三水和物0.2g(0.7mmol)を加え、攪拌しながら120〜130℃で22時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、水15mlを添加した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を添加した。濾過後、得られた濾物を乾燥させ、ジ−μ−クロロテトラキス−[2’,6’−ジフルオロ−4−ベンジル[2、3’−ビピリジン]−4’−イル−κC’、κN]ジイリジウム0.4gを得た(単離収率:57%)。
【0097】
実施例5(Ar=フェニル基、Q=メチレン基、R=R=フッ素原子、L=アセチルアセトナト;(2,4−ペンタンジオナート−κO,κO)ビス(2’,6’−ジフルオロ−4−ベンジル[2、3’−ビピリジン]−4’−イル−κC’、κN)イリジウム(III)の合成(以下[Ir(cfbpy)(acac)]と称することもある))
【0098】
【化17】

【0099】
攪拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた50mlのガラス製四つ口フラスコに、実施例4のように合成したジ−μ−クロロテトラキス−[2’,6’−ジフルオロ−4−ベンジル[2、3’−ビピリジン]−4’−イル−κC’、κN]ジイリジウム0.4g(0.3mmol)、アセチルアセトン50mg(0.5mmol)、炭酸ナトリウム0.2g(2.0mmol)及び1、2−ジクロロエタン25mlを加え、攪拌しながら80〜85℃で24時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却して濾過した。得られた濾液を減圧下で濃縮した後、濃縮物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:塩化メチレン/酢酸エチル(容量比;100/0→300/10))で精製し、黄色固体として、(2,4−ペンタンジオナート−κO,κO)ビス(2’,6’−ジフルオロ−4−ベンジル[2、3’−ビピリジン]−4’−イル−κC’、κN)イリジウム(III)0.2gを得た(単離収率:58%)。
なお、(2,4−ペンタンジオナート−κO,κO)ビス(2’,6’−ジフルオロ−4−ベンジル[2、3’−ビピリジン]−4’−イル−κC’、κN)イリジウム(III)は、以下の物性値で示される新規な化合物である。
【0100】
H−NMR(CDCl、δ(ppm));8.25(2H,m)、8.10(2H,m)、7.39〜7.25(10H,m)、7.05(2H,m)、5.62(2H,m)、5.27(1H,s)、4.22(4H,s)、1.78(6H,s)
【0101】
参考例10(Ar=フェニル基、Q=チオ基;2−クロロ−4−チオフェニルピリジンの合成)
【0102】
【化18】

【0103】
攪拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた100mlのガラス製四つ口フラスコに、2−クロロ−4−ヨードピリジン2.4g(10mmol)、炭酸カリウム1.8g(13mmol)、ヨウ化第一銅0.2g(1.0mmol)、チオフェノール1.1g(10mmol)及びN、N−ジメチルホルムアミド20mlを加え、攪拌しながら110〜120℃で21時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、水を加えた後にトルエンで抽出した。抽出液を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、濾液を減圧下で濃縮した後、濃縮物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル(容量比;400/20))で精製し、黄色液体をとして、2−クロロ−4−チオフェニルシピリジン1.3gを得た(単離収率;59%)。
なお、2−クロロ−4−チオフェニルシピリジンの物性値は以下の通りであった。
【0104】
EI−MS(m/e);221(M)、223(M+2)
H−NMR(CDCl、δ(ppm));8.20(1H,m)、7.40(2H,m)、7.25(1H,m)、7.20(2H,m)、6.85(2H,m)
【0105】
参考例11(Ar=フェニル基、Q=チオ基;2−クロロ−4−チオフェニルピリジンの合成)
【0106】
【化19】

【0107】
攪拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた100mlのガラス製3つ口フラスコに、2、4−ジクロロピリジン3.0g(20mmol)、炭酸カリウム3.6g(26mmol)、ヨウ化第一銅0.4g(2.0mmol)、チオフェノール2.2g(20mmol)及びN、N−ジメチルホルムアミド40mlを加え、攪拌しながら110〜120℃で21時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、水を加えた後にトルエンで抽出した。抽出液を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、濾液を減圧下で濃縮した後、濃縮物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル(容量比;400/20))で精製し、黄色液体として、2−クロロ−4−チオフェニルピリジン2.0gを得た(単離収率;45%)。
【0108】
参考例12(Ar=フェニル基、Q=スルホニル基;4−スルホニルフェニルピリジンの合成)
【0109】
【化20】

【0110】
攪拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた100mlのガラス製三つ口フラスコに参考例10と同様な方法で合成した2−クロロ−4−チオフェニルピリジン1.0g(4.5mmol)及びクロロホルム20mlを加え、0〜5℃まで冷却した。次いで、65質量%m−クロロ過安息香酸2.4g(9.0mmol)を、液温を0〜10℃に維持しながらゆるやかに加えた後、攪拌しながら15〜20℃で3時間反応させた。反応終了後、反応溶液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾過後、得られた濾液を減圧下で濃縮し、4−スルホニルフェニルピリジン1.0gを得た(単離収率;87%)。
【0111】
参考例13(Ar=フェニル基、Q=スルホニル基、R=R=フッ素原子;2−(2’,6’−ジフルオロピリジン−3−イル)−4−スルホニルフェニルピリジンの合成)
標題化合物を次のスキームに従って合成した。
【0112】
【化21】

【0113】
攪拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた100mlのガラス製四つ口フラスコに、参考例12と同様な方法で合成した2−クロロ−4−スルホニルフェニルピリジン1.3g(5.1mmol)、2、6−ジフルオロ−3−ピリジルボロン酸1.2g(7.7mmol)、1.35mol/lリン酸カリウム水溶液16ml(21mmol)及びジオキサン50mlを加え、窒素を1時間通気した。次いで、トリスジベンジリデンアセトンジパラジウム(0)0.2g(0.2mmol)及びトリシクロヘキシルホスフィン0.2g(0.6mmol)を加え、攪拌しながら80〜90℃で22時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却した後に濾過した。得られた濾液を減圧下で濃縮した後、濃縮物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル(容量比;350/20→300/100→250/150)で精製し、黄色液体をとして、2−(2’,6’−ジフルオロピリジン−3−イル)−4−スルホニルフェニルピリジン0.4gを得た(単離収率:24%)。
なお、2−(2’,6’−ジフルオロピリジン−3−イル)−4−スルホニルフェニルピリジンの物性値は以下の通りであった。
【0114】
EI−MS(m/z);332(M)
H−NMR(CDCl、δ(ppm));8.90(1H,m)、8.69(1H,m)、8.30(1H,m)、8.05(2H,m)、7.78(1H,m)、7.66(1H,m)、7.58(2H,m)、7.00(1H,m)
【0115】
実施例6(Ar=フェニル基、Q=スルホニル基、R=R=フッ素原子;ジ−μ−クロロテトラキス−[2’,6’−ジフルオロ−4−スルホニルフェニル[2、3’−ビピリジン]−4’−イル−κC’、κN]ジイリジウムの合成)
【0116】
【化22】

【0117】
攪拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた50mlのガラス製四つ口フラスコに、参考例13と同様な方法で合成した2−(2’,6’−ジフルオロピリジン−3−イル)−4−スルホニルフェニルピリジン0.4g(1.24mmol)及び2−エトキシエタノール15mlを加え、窒素を1時間通気した。次いで、三塩化イリジウム三水和物0.1g(0.7mmol)を加え、攪拌しながら120〜130℃で24時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、水15mlを添加した後に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた。濾過後、得られた濾物を乾燥させ、ジ−μ−クロロテトラキス−[2’,6’−ジフルオロ−4−スルホニルフェニル[2、3’−ビピリジン]−4’−イル−κC’、κN]ジイリジウム0.5gを得た(単離収率:90%)。
【0118】
実施例7(Ar=フェニル基、Q=スルホニル基、R=R=フッ素原子、L=アセチルアセトナト;(2,4−ペンタンジオナート−κO,κO)ビス(2’,6’−ジフルオロ−4−スルホニルフェニル[2、3’−ビピリジン]−4’−イル−κC’、κN)イリジウム(III)の合成(以下[Ir(sfbpy)(acac)]と称することもある))
【0119】
【化23】

【0120】
攪拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた50mlのガラス製四つ口フラスコに、参考例6と同様な方法で合成したジ−μ−クロロテトラキス−[2’,6’−ジフルオロ−4−スルホニルフェニル[2、3’−ビピリジン]−4’−イル−κC’、κN]ジイリジウム0.5g(0.29mmol)、アセチルアセトン58mg(0.6mmol)、炭酸ナトリウム0.2g(2.0mmol)及び1、2−ジクロロエタン25mlを加え、窒素を1時間通気した。次いで、攪拌しながら70〜75℃で24時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却して濾過した。得られた濾液を減圧下で濃縮した後、濃縮物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル(容量比;3/1→1/1)で精製し、黄色固体として、(2,4−ペンタンジオナート−κO,κO)ビス(2’,6’−ジフルオロ−4−スルホニルフェニル[2、3’−ビピリジン]−4’−イル−κC’、κN)イリジウム(III)0.2gを得た(単離収率:38%)。
なお、(2,4−ペンタンジオナート−κO,κO)ビス(2’,6’−ジフルオロ−4−スルホニルフェニル[2、3’−ビピリジン]−4’−イル−κC’、κN)イリジウム(III)は、以下の物性値で示される新規な化合物であった。
【0121】
EI−MS(m/z);908(M)
H−NMR(CDCl、δ(ppm));8.59(2H,m)、8.50(2H,m)、8.10(4H,m)、7.80〜7.65(8H,m)、5.52(2H,m)、5.29(1H,s)、1.81(6H,s)
【0122】
次に、本発明の化合物を使用した有機EL素子の製造例を説明する。
【0123】
実施例8(本発明のイリジウム錯体を含む有機EL素子の製造)
図1に示すように、基板側から、透明基板1、陽極2、バッファ層3、ホール輸送層4、発光層5、ホール阻止層6、電子輸送層7及び陰極8の各層を備える有機EL素子を以下の方法により作製した。
【0124】
製造例中、次の略語を使用する。
Ir(ofbpy)(acac):(2,4−ペンタンジオナート−κO,κO)ビス(2’,6’−ジフルオロ−4−フェノキシ[2、3’−ビピリジン]−4’−イル−κC’、κN)イリジウム;実施例7で合成したものを使用した。
Ir(cfbpy)(acac):(2,4−ペンタンジオナート−κO,κO)ビス(2’,6’−ジフルオロ−4−ベンジル[2、3’−ビピリジン]−4’−イル−κC’、κN1)イリジウム;実施例13で合成したものを使用した。
【0125】
パターニング済みの透明導電膜(ITO)(陽極2)が膜厚110nmで成膜されたガラス基板(透明基板1)を、純水と界面活性剤による超音波洗浄、純水による流水洗浄、純水とイソプロピルアルコールの容量比1:1混合溶液による超音波洗浄、イソプロピルアルコールによる煮沸洗浄の順で洗浄処理した。この基板を沸騰中のイソプロピルアルコールからゆっくり引き上げ、イソプロピルアルコール蒸気中で乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。この基板を陽極とし、真空チャンバ内に配置し、7.5×10−3Paまで真空排気し、該チャンバ内には、蒸着材料をそれぞれ充填した各モリブデン製ボードと、所定のパターンで成膜するための蒸着用マスクを設置しておき、ボードを通電加熱し、蒸着材料を蒸発させることにより、順次、次のようにバッファ層3、ホール輸送層4、発光層5、ホール阻止層6、電子輸送層7を成膜した。
【0126】
前記基板上に、ホール輸送材料であるNS21(新日鐵化学株式会社製)と、三酸化モリブデン(MoO)を共蒸着し、NS21:MoO=80:20を膜厚9nmで成膜した後、NS21:MoO=90:10を膜厚7nmで成膜し、バッファ層3を形成した。続いて、3DTAPBP(ケミプロ化成株式会社製)を膜厚22nmで成膜し、ホール輸送層4を形成した。そして、mCP:Ir(cfbpy)(acac)=95:5を膜厚10nmで成膜して形成した。発光層5の上に、KLET03(ケミプロ化成株式会社製)を膜厚70.5nmで成膜し、電子輸送層6を形成した。
【0127】
更に、電子輸送層6の上に、8−ヒドロキシキノリナートリチウムを膜厚0.5nmで成膜し、電子注入層7を形成した。その上にアルミニウム(Al)を膜厚100nmで成膜し、陰極8を形成した
【0128】
このように形成した積層構造を、もう一枚のガラス基板と合わせ、UV硬化樹脂により封止して素子を完成した。
【0129】
本素子の層構成を簡略化して示すと、
陽極2: ITO(110nm)、
バッファ層3: NS21:MoO(9nm、80:20)/NS21:MoO=(7nm、90:10)、
ホール輸送層4: 3DTAPBP(22nm)、
発光層5: mCP:Ir(cfbpy)(acac)(10nm、95:5)
電子輸送層6: KLET03(70.5nm)、
電子輸送層7: Liq(0.5nm)、
陰極8: Al(100nm)
である。
【0130】
実施例9〜11及び比較例1(本発明のイリジウム錯体及びFIrpicを含む有機EL素子の製造)
発光層のイリジウム錯体を変えたこと以外は、実施例8と同様な方法で有機EL素子を作成した。
実施例9;mCP:Ir(cfbpy)(acac)=80:20
実施例10;mCP:Ir(cfbpy)(acac)=60:40
実施例11;mCP:Ir(ofbpy)(acac)=80:20
比較例1;TCTA:FIrpic=80:20
【0131】
ここで、FIrpicは下記構造式で示されるドーパントである。
【0132】
【化24】

【0133】
上記のように、実施例8〜11及び比較例1で作製した有機EL素子を電源(KTHELEY社製「2400」)に接続し、マルチチャンネルアナライザーにて(コニカミノルタ株式会社製「CS−2000」)を用いて、外部量子効率、視感効率、エネルギー変換効率の測定を行った。その結果を表1に示す。
【0134】
【表1】

【0135】
表1の結果から、本発明のイリジウム錯体を発光層に用いた有機EL素子の諸効率を総合的に勘案すると、公知の高効率青色発光材料であるFIrpicを用いた素子と同程度又はそれ以上であった。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明により、有機エレクトロルミネッセンス素子のドーパントとして有用なイリジウム錯体及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。
【符号の説明】
【0137】
1 透明基板
2 陽極
3 バッファ層
4 ホール輸送層
5 発光層
6 電子輸送層1
7 電子輸送層2
8 陰極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、Arはアリール基又はヘテロアリール基、Qはメチレン基、オキシ基、チオ基又はスルホニル基、AはRで置換された炭素原子又は窒素原子を示す。又、R、R及びRは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基又はトリフルオロメチル基を示す。Lは1価のアニオン性二座配位子を表し示し、mは2又は3である。なお、Ar上の任意の水素原子はハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基又はアリールオキシ基で置換されていても良い。)
で示されるイリジウム錯体。
【請求項2】
請求項1記載のイリジウム錯体を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−256116(P2011−256116A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129631(P2010−129631)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「エネルギー使用合理化技術戦略的開発/エネルギー使用合理化技術実用化開発/高効率有機EL照明の実用化研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願」
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】