説明

インキ組成物

【課題】
優れた印刷安定性を確保しつつ、優れた塗膜耐性と乾燥性を実現できる顔料インキ組成物、特にインクジェットインキ組成物を提供すること。
【解決手段】
25℃環境下での音速が1200m/s以上1500m/s以下である有機溶剤と、顔料と、バインダー樹脂とを含むことを特徴とするインキ組成物。
さらに、少なくともイエローインキ、マゼンタインキ、シアンインキ、ブラックインキを含むインキセットにおいて、25℃環境下での音速が最も高いインキと25℃環境下での音速が最も低いインキとの差が100m/s以下であることを特徴とするインキセット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶剤、顔料及びバインダー樹脂とを含むインキ組成物、特にインクジェットインキ組成物を提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
従来インクジェットインキとしては、酸性染料、直接染料、塩基性染料等の水溶性染料をグリコールエーテル系溶剤と水に溶解した水溶性染料インキが良く用いられていが、近年では、耐久性の求められるサイン業界向けに顔料とグリコール系溶剤とを用いた溶剤型インキが多く使用されるようになってきた。しかし、これら溶剤型インキは従来の水溶性染料インキと比較して、顔料や溶解性のバインダー樹脂を用いるためにレオロジー特性が劣り、製品そのものに様々な問題を引き起こすことが知られている。例えば、微細な粒子からなる顔料を含む分散体は往々にして顔料間の凝集力からチキソトロピック性を示し、様々な応力が掛かる環境下では使用困難となることがある。特にインクジェットインキは、ヘッドの1ノズルから10,000〜50,000滴/秒吐出されるため、インキ滴を押し出すアクチュエータに対する応答性が求められる。応答性が劣ると吐出不良を引き起こしたり、場合によってはノズルよりインキ滴が出なくなる。
【0003】
そこで一般的には、応答性を良好に保つために、顔料の分散状態を良好に保つことによりチキソトロピック性を改良したりする。顔料を分散する分散剤としては塩基性の官能基としてアミノ基を有するものが好んで使われている。例えば特許文献1、特許文献2などに記載されている。
【0004】
しかし、特許文献1、特許文献2では、顔料の分散状態を良好に保つものの、応答性については必ずしも良好とはいえず印刷安定性が劣るなどの問題を抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−284642号公報
【特許文献2】特開2006−56990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、25℃環境下での音速が1200m/s以上、1500m/s以下である有機溶剤、顔料及びバインダー樹脂を含むインキを用いた際に、優れた印刷安定性を確保しつつ、優れた塗膜耐性と乾燥性を実現できる顔料インキ組成物、特にインクジェットインキ組成物を提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
本発明は、25℃環境下での音速が1200m/s以上、1500m/s以下である有機溶剤、顔料及びバインダー樹脂を含むことを特徴とするインキ組成物に関する。
本発明は、少なくともイエローインキ、マゼンタインキ、シアンインキ、ブラックインキを含むインキセットにおいて、25℃環境下での音速が最も高いインキと25℃環境下での音速が最も低いインキとの差が100m/s以下であることを特徴するインキ組成物に関する。
本発明は、有機溶剤として一般式(1)ないし一般式(4)で表される溶剤のいずれか1つ以上含むインキであることを特徴とするインキ組成物に関する。
【0008】
CO(ORZOR (1) RCO(ORZOCOR (2)
(ORZOR (3) R10COOR11 (4)
(式中、R、R、Rはエチレン基又はプロピレン基を表し、R、R、R、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基を表し、R、Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R10は2−ヒドロキシエチル基を表し、R11は炭素数1〜8のアルキル基を表し、Zは1〜3の整数を表す。)
【0009】
本発明は、更に有機溶剤として、N-アルキル-ピロリドン、3-アルキル-2-オキサゾリジノンまたはラクトンを含むインキであることを特徴とするインキ組成物に関する。
本発明は、インクジェットインキであることを特徴とするインキ組成物関する。
本発明は、非吸収性基材へ印刷することを特徴とするインキ組成物に関する。
本発明は、少なくともイエローインキ、マゼンタインキ、シアンインキ、ブラックインキを含むことを特徴とするインキセットに関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、25℃環境下での音速が1200m/s以上、1500m/s以下である有機溶剤、顔料及びバインダー樹脂を含有するインキ組成物にすることで、優れた印刷安定性を確保しつつ、優れた塗膜耐性と乾燥性を実現できる顔料インキ組成物、特にインクジェットインキ組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明では、25℃環境下での音速が1200m/s以上、1500m/s以下である有機溶剤、顔料及びバインダー樹脂を含有するインキ組成物を使用する。
音速とは、物質中を伝わる音の速さのことを意味する。音速を測定する機器は様々なメーカーにて製品化されている。具体的にはオリンパス株式会社製の25DL−PLUS、35DL−PLUS、MG2、MG2−XT、MG2−DL、日本シイベルヘグナー株式会社のDSA5000等が挙げられる。音速は温度依存性があるために本発明では測定環境を25℃とする。
本発明では、有機溶剤、顔料及びバインダー樹脂を含有するインキ組成物の25℃環境下での音速が1200m/s以上、1500m/s以下、好ましくは1250m/s以上、1350m/s以下、更に好ましくは1260m/s以上、1310m/s以下であることが好ましい。音速が1200m/sより低い場合や1500m/sより高い場合は、インキ滴を押し出すヘッドのアクチュエータに対する応答性が劣るため安定して印刷ができない。
【0012】
本発明は、少なくともイエローインキ、マゼンタインキ、シアンインキ、ブラックインキを含むインキセットにおいて、25℃環境下での音速が最も高いインキと25℃環境下での音速が最も低いインキとの差が100m/s以下、好ましくは50m/s以下、更に好ましくは20m/s以下であることが好ましい。差が100m/sより大きいとインキ滴を押し出すヘッドのアクチュエータに対する応答性が色毎に異なるために、安定して印刷ができない。
【0013】
本発明に使用される有機溶剤としては、一般式(1)ないし一般式(4)で表される溶剤が挙げられる。
CO(ORZOR (1) RCO(ORZOCOR (2)
(ORZOR (3) R10COOR11 (4)
(式中、R、R、Rはエチレン基又はプロピレン基を表し、R、R、R、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基を表し、R、Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R10は2−ヒドロキシエチル基を表し、R11は炭素数1〜8のアルキル基を表し、Zは1〜3の整数を表す。)
【0014】
一般式(1)に該当する溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノブチルエーテルプロピオネート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテルブチレート、エチレングリコールモノエチルエーテルブチレート、エチレングリコールモノブチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルブチレート、プロピレングリコールモノメチルエーテルブチレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルブチレート等のグリコールモノアセテート類がある。
【0015】
一般式(2)に該当する溶剤としては、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、エチレングリコールアセテートプロピオネート、エチレングリコールアセテートブチレート、エチレングリコールプロピオネートブチレート、エチレングリコールジプロピオネート、エチレングリコールアセテートジブチレート、ジエチレングリコールアセテートプロピオネート、ジエチレングリコールアセテートブチレート、ジエチレングリコールプロピオネートブチレート、ジエチレングリコールジプロピオネート、ジエチレングリコールアセテートジブチレート、プロピレングリコールアセテートプロピオネート、プロピレングリコールアセテートブチレート、プロピレングリコールプロピオネートブチレート、プロピレングリコールジプロピオネート、プロピレングリコールアセテートジブチレート、ジプロピレングリコールアセテートプロピオネート、ジプロピレングリコールアセテートブチレート、ジプロピレングリコールプロピオネートブチレート、ジプロピレングリコールジプロピオネート、ジプロピレングリコールアセテートジブチレート等のグリコールジアセテート類がある。
【0016】
一般式(3)に該当する溶剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類がある。低臭気、樹脂溶解性の観点より、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレンク゛リコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルは特に優れている。
【0017】
一般式(4)に該当する溶剤としては、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル等のエステル類があげられる。
更に有機溶剤として、N-アルキル-ピロリドン、3-アルキル-2-オキサゾリジノンまたはラクトンを添加すると、印刷媒体表面を溶解させることができるため定着性、耐候性等を向上させることができる。例としては、3−メチル−2−オキサゾリジノン、3−エチル−2−オキサゾリジノン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等が挙げられる。添加量としては1〜20%が良いが、好ましくは1〜10%、さらに好ましくは3〜9%が良い。なお、これらの含窒素系またはラクトン系溶剤を過剰に用いると、プリンタ部材への侵食性の観点から不具合が生じるため好ましくない。
【0018】
本発明に使用される顔料は、印刷インキ、塗料等に使用される種々の顔料が使用できる。このような顔料をカラーインデックスで示すと、ピグメントブラック7、ピグメントブルー15,15:1,15:3,15:4,15:6,60、ピグメントグリーン7,36、ピグメントレッド9,48,49,52,53,57,97,122,149,168,177,178,179,206,207,209,242,254,255、ピグメントバイオレット19,23,29,30,37,40,50、ピグメントイエロー12,13,14,17,20,24,74,83,86,93,94,95,109,110,117,120,125,128,137,138,139,147,148,150,151,154,155,166,168,180,185、ピグメントオレンジ36,43,51,55,59,61,71,74等があげられる。また、カーボンブラックについては中性、酸性、塩基性等のあらゆるカーボンブラックを使用することができる。顔料はインキ中に0.1〜10重量%含まれることが望ましい。
【0019】
本発明では、顔料の分散性およびインキの保存安定性を向上させるために分散剤を添加するのが好ましい。分散剤としては、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテート等を用いることができる。
【0020】
分散剤の具体例としては、BYK Chemie社製「Anti−Terra−U(ポリアミノアマイド燐酸塩)」、「Anti−Terra−203/204(高分子量ポリカルボン酸塩)」、「Disperbyk−101(ポリアミノアマイド燐酸塩と酸エステル)、107(水酸基含有カルボン酸エステル)、110、111(酸基を含む共重合物)、130(ポリアマイド)、161、162、163、164、165、166、170(高分子共重合物)」、「400」、「Bykumen」(高分子量不飽和酸エステル)、「BYK−P104、P105(高分子量不飽和酸ポリカルボン酸)」、「P104S、240S(高分子量不飽和酸ポリカルボン酸とシリコン系)」、「Lactimon(長鎖アミンと不飽和酸ポリカルボン酸とシリコン)」が挙げられる。
【0021】
また、Efka CHEMICALS社製「エフカ44、46、47、48、49、54、63、64、65、66、71、701、764、766」、「エフカポリマー100(変性ポリアクリレート)、150(脂肪族系変性ポリマー)、400、401、402、403、450、451、452、453(変性ポリアクリレート)、745(銅フタロシアニン系)」、共栄社化学社製「フローレン TG−710(ウレタンオリゴマー)、「フローノンSH−290、SP−1000」、「ポリフローNo.50E、No.300(アクリル系共重合物)」、楠本化成社製「ディスパロン KS−860、873SN、874(高分子分散剤)、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル型)」が挙げられる。
【0022】
さらに、花王社製「デモールRN、N(ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩)、MS、C、SN−B(芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩)、EP」、「ホモゲノールL−18(ポリカルボン酸型高分子)、「エマルゲン920、930、931、935、950、985(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)、「アセタミン24(ココナッツアミンアセテート)、86(ステアリルアミンアセテート)」、ルーブリゾール社製「ソルスパーズ5000(フタロシアニンアンモニウム塩系)、13940(ポリエステルアミン系)、17000(脂肪酸アミン系)、24000」、日光ケミカル社製「ニッコール T106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、MYS−IEX(ポリオキシエチレンモノステアレート)、Hexagline 4−0(ヘキサグリセリルテトラオレート)」、味の素ファインテクノ社製「アジスパーPB821、PB822(塩基性分散剤)」等が挙げられる。分散剤はインキ中に0.1〜10重量%含まれることが好ましい。
【0023】
分散剤は顔料の分散性およびインク組成物の保存安定性を向上させるために使用する。顔料は分散剤との相互作用で分散安定化しているため、顔料吸着サイトである塩基性基を含むものを使用することが好ましく、1級アミンまたは2級アミンのうち少なくとも1つを含む塩基性分散剤を用いることが更に好ましい。そのうちポリエステル系塩基性分散剤が、溶剤への溶解性、分散液の保存安定性の面から最も好ましい。
塩基性分散剤の具体例としては、ルーブリゾール社製のソルスパーズ11200、ソルスパーズ13240、ソルスパーズ16000、ソルスパーズ18000、ソルスパーズ20000、ソルスパーズ26000、ソルスパーズ28000、ソルスパーズ31845、ソルスパーズ32500、ソルスパーズ32550、ソルスパーズ32600、ソルスパーズ33000、ソルスパーズ34750、ソルスパーズ35100、ソルスパーズ35200、ソルスパーズ37500、ソルスパーズ38500、ソルスパーズ39000、ソルスパーズ53095が挙げられる。ポリエステル系塩基性分散剤の具体例としては、 ルーブリゾール社製のソルスパーズ13940、17000、24000、32000、味の素ファインテクノ社製のアジスパーPB821、PB822、PB823、PB824、PB827等が挙げられる。これらを顔料、溶剤の種類にあわせて使用することができる。分散剤はインキ中に0.1〜10重量%含まれることが好ましい。
【0024】
本発明に使用されるバインダー樹脂は、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸系樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、エチレン−酢ビ系樹脂、石油樹脂、クマロンインデン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、塩酢ビ系樹脂、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂等が挙げられる。樹脂の具体例としては、荒川化学社製のスーパーエステル75、エステルガムHP、マルキッド 33、安原社製のYS ポリスター T80、三井化学社製のHiretts HRT200X、ジョンソンポリマー社製のジョンクリル586、680.690、682、678、ダウケミカルズ社製のユーカーソリューションビニル樹脂VYHD、VYHH、VMCA、VROH、VYLF−X、日信科学工業製のソルバイン樹脂CL、CNL、C5R、TA5R、三菱レイヨン社製のBR−50、BR−52、MB−2539、BR−60、BR−64、BR−73、BR−75、MB−2389、BR−80、BR−82、BR−83、BR−84、BR−85、BR−87、BR−88、BR−90、BR−90、BR−95、BR−96、BR−100、BR−101、BR−102、BR−105、BR−106、BR−107、BR−108、BR−110、BR−1122、BR−113、MB−2660、MB−2952、MB−3012、MB−3015、MB−7033、BR−115、MB−2478、BR−116、BR−117、BR−118、BR−122、ウィルバー・エリス社製のA−11、A−14、A−21、B−60、B−64、B−66、B−72、B−82、B−44、B−48N、B−67、B−99Nが挙げられる。樹脂はインキ中に0.1〜10重量%含まれることが好ましい。これらの樹脂を単独で用いても、2種類以上を組み合わせても良い。印刷物の耐性の点から塩酢ヒ゛系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂が好ましい。を例示することができる。
【0025】
本発明のインキ組成物は可塑剤、表面調整剤、紫外線防止剤、光安定化剤、酸化防止剤、加水分解防止剤等の種々の添加剤を使用することができる。
【0026】
本発明のインキ組成物は、まず始めにペイントシェーカー、サンドミル、ロールミル、メディアレス分散機等によって、単一もしくは混合溶媒中に顔料を樹脂または分散剤によって分散し、得られた顔料分散体を本発明の溶剤で希釈して製造されるものである。
【0027】
本発明のインキ組成物の印刷方式としては、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット印刷等が挙げられ、特に好ましくはインクジェット印刷方式である。
【0028】
本発明の印刷媒体としては、非吸収性基材であるポリ塩化ビニル樹脂シート、ポリオレフィン系シート、ガラス、金属等が挙げられ、特に好ましくはポリ塩化ビニル樹脂シートである。
【0029】
本発明は、少なくともイエローインキ、マゼンタインキ、シアンインキ、ブラックインキを含むインキセット。このインキセットに加えて、ライトマゼンタ、ライトシアンインキ、グレーインキ、オレンジインキ、グリーンインキ、バイオレットインキ、レッドインキの中から1つ以上をインキをインキセットに加えることもできる。
【0030】
[実施例]
以下に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例における「部」は、「重量部」を表す。
【0031】
[製造例1]
まず、下記のような配合で顔料分散体Aを作成した。この分散体は有機溶剤中に顔料および分散剤を投入し、ハイスピードミキサー等で均一になるまで撹拌後、得られたミルベースを横型サンドミルで約1時間分散して作成した。
・ELFTEX 415(キャボット社製 カーボンブラック)30.0部
・アジスパーPB821(味の素ファインテクノ社製 顔料分散剤)12.0部
・ジエチレングリコールジエチルエーテル 58.0部
[製造例2]
更に、下記のような配合で製造例1と同様に、顔料分散体Bを作成した。
・YELLOW PIGMENT E4GN(ランクセス社製 ニッケル錯体アゾ顔料) 30.0部
・ソルスパーズ17000(ルーブリゾール社製 顔料分散剤)12.0部
・ジエチレングリコールジエチルエーテル 58.0部
【0032】
[製造例3]
更に、下記のような配合で製造例1と同様に、顔料分散体Cを作成した。
・Cromophtal Pink PT(チバスペシャルティーケミカルズ社製
キナクリドン顔料)30.0部
・ソルスパーズ24000(ルーブリゾール社製 顔料分散剤) 12.0部
・ジエチレングリコールジエチルエーテル 58.0部
[製造例4]
更に、下記のような配合で製造例1と同様に、顔料分散体Dを作成した。
・LIONOL BLUE FG−7400G(東洋インキ製造社製 フタロシアニン
顔料)30.0部
・アジスパーPB821(味の素ファインテクノ社製 顔料分散剤)12.0部
・ジエチレングリコールジエチルエーテル 58.0部
下記の表1にインキ組成物の配合処方、インキの25℃環境下での音速、評価結果を示す。
【0033】
【表1】

【0034】
表1から明らかのように、25℃環境下での音速を本発明にて特定した1200m/s以上、1500m/s以下である実施例1〜12のインク組成物は、耐アルコール性、乾燥性、印刷安定性とも全て優れる。これに対し、比較例1〜4は25℃環境下での音速が本発明にて特性した範囲外であり、耐アルコール性、乾燥性、印刷安定性とも劣る。
下記の表2にインキセットの組合せと評価結果を示す。
【0035】
【表2】

【0036】
表2から明らかのように、イエローインキ、マゼンタインキ、シアンインキ、ブラックインキを含むインキセットにおいて、本発明にて特定した25℃環境下での音速が最も高いインキと25℃環境下での音速が最も低いインキとの差が50m/s以下である実施例13〜15のインク組成物は、耐アルコール性、乾燥性、印刷安定性とも全て優れる。これに対し、比較例5は発明にて特性した範囲外であり、耐アルコール性、乾燥性、印刷安定性とも劣る。
評価方法について下記に示す。
【0037】
<耐アルコール性>
実施例1〜15、比較例1〜5で得られたインキ組成物について、(株)セイコーアイ・インフォテック製 ソルベントインクインクジェットプリンターColor Painter 64S Plusにて、表面が無処理のポリ塩化ビニル樹脂シートに印刷し、印刷面をラビングテスター(テスター産業製、型式AB301)にて耐アルコール性を評価。評価条件としては試験用布片(金巾3号)にてエタノール/水=70/30で希釈した液を1滴たらし加重200g、50往復で実施し、塗布面が全く剥ぎ取られなかったものを5、試験用布片に着色が見られたが、印刷面には目立った変化の見られないものを4、試験片が着色、印刷面にも若干の色落ちが見られるものを3、剥ぎ取られたが基材が見えたものを2、インキが剥ぎ取られ、基材が半分以上見えるものを1と評価した。
【0038】
<乾燥性>
実施例1〜15、比較例1〜5で得られたインキ組成物について、25℃環境下にて(株)セイコーアイ・インフォテック製 ソルベントインクインクジェットプリンターColor Painter 64S Plusにて、表面が無処理のポリ塩化ビニル樹脂シートにベタ印刷し、40℃で乾燥するまでの時間を計測した。具体的には、10秒毎に触手試験を行い、手にインキが付着しなくなる時間を計測した。なお、秒数が小さいほど乾燥性は速く、秒数が大きいほど乾燥性は遅い。
【0039】
<印刷安定性>
実施例1〜15、比較例1〜5で得られたインキ。;組成物について、25℃環境下にて(株)セイコーアイ・インフォテック製 ソルベントインクインクジェットプリンターColor Painter 64S Plusにて、表面が無処理のポリ塩化ビニル樹脂シートに50時間連続印刷し、ドット抜け、飛行曲がりの発生頻度を評価した。なお、頻度が小さいほど安定性は良好で、頻度が大きいほど安定性は劣る。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃環境下での音速が1200m/s以上1500m/s以下である有機溶剤と、顔料と、バインダー樹脂とを含むことを特徴とするインキ組成物。
【請求項2】
有機溶剤として一般式(1)ないし一般式(4)で表される溶剤のいずれか1つ以上含むことを特徴とする請求項1記載のインキ組成物。
CO(ORZOR (1) RCO(ORZOCOR (2)
(ORZOR (3) R10COOR11 (4)
(式中、R、R、Rはエチレン基又はプロピレン基を表し、R、R、R、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基を表し、R、Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R10は2−ヒドロキシエチル基を表し、R11は炭素数1〜8のアルキル基を表し、Zは1〜3の整数を表す。)
【請求項3】
更に有機溶剤として、N-アルキル-ピロリドン、3-アルキル-2-オキサゾリジノンまたはラクトンを含むインキであることを特徴とする請求項1または2記載のインキ組成物。
【請求項4】
インクジェットインキであることを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載のインキ組成物。
【請求項5】
非吸収基材へ印刷することを特徴とする請求項1ないし4いずれか記載のインキ組成物。
【請求項6】
少なくともイエローインキ、マゼンタインキ、シアンインキ、ブラックインキを含むインキセットにおいて、25℃環境下での音速が最も高いインキと25℃環境下での音速が最も低いインキとの差が100m/s以下であることを特徴とする請求項1ないし5記載のインキセット。
【請求項7】
少なくともイエローインキ、マゼンタインキ、シアンインキ、ブラックインキを含むことを特徴とする請求項6記載のインキセット。


【公開番号】特開2010−241938(P2010−241938A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91483(P2009−91483)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】