説明

インキ組成物

【課題】 ポリオレフィンとくに未処理ポリオレフィンへの接着性が優れ、フィルムのリサイクルの際にフィルム物性を低下させることが少ない、軟包装材料の印刷に有利に適用し得る、インキ組成物を提供する。
【解決手段】スチレン系熱可塑性エラストマー(A)、炭化水素系ハードレジン(B)、顔料、および有機溶剤からなるインキ組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インキ組成物に関するもの、さらに詳しくはポリオレフィンとくに未処理ポリオレフィンに適用でき軟包装材料の印刷に有用なインキ組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、未処理ポリオレフィンに適用できる印刷インキとしては、環化ゴム系インキが知られており、軟包装材料、とくに表面処理が困難な極薄フィルムや、ヒートシールが必要なため表面処理ができないフィルム、低温ボイル性が必要な用途や、産業資材などに、幅広く使用されてきた。しかし、環化ゴムは、環境の変化等により、生産中止が決定され、これに代わる代替品の開発が急務となった。
【0003】
被印刷物の表面を処理することなく、エステル系樹脂、ナイロン系樹脂、オレフィン系樹脂等からなる種々のプラスチックのフィルムや成形物に対して優れた密着性を発現するインキ用組成物として、 熱可塑性エラストマー(A)と共重合性モノマー(B)からなる重合体で構成される樹脂溶液〔(A)と(B)とを重合せしめた後、更にラジカルを発生させ反応させた樹脂溶液、または熱可塑性エラストマー(A)と、(B)で構成された重合体(C)とをラジカルを発生させ反応させた樹脂溶液〕からなるインキ用組成物(特許文献1)が開示されている。
しかしながら、このような熱可塑性エラストマー(A)と共重合性モノマー(B)からなる重合体で構成される樹脂溶液からなるインキ用組成物は、重合工程が増えて高コストになるばかりでなく、重合の制御が難しいため一定品質の製品を再現性よく製造するのが難しく;このようなエラストマー(A)と重合体(C)とをラジカルを発生させ反応させる方法では、エラストマー(A)が多くなると高粘度となるため、モノマー(B)等を多く使用して粘度上昇を抑制する必要があり;また、このような樹脂では、重合させるモノマー(B)の選択により各種樹脂に対して個別に相溶性の良い樹脂を設計して、それぞれ単一の用途には優れた性能を発揮しうる樹脂を製造し得るものの、印刷用途に合わせて樹脂を個別に重合させる必要があり、汎用性のあるエラストマーベース樹脂(単一のエラストマーベース樹脂を製造しておいて、それを基に、用途に応じて配合成分を選択し、その混合だけで、種々の用途に適した性能を持たせることができる樹脂)を製造することができない等の問題があった。
また、従来の顔料の分散剤またはフラッシング剤(ロジン石鹸、ロジン変性樹脂、可塑剤、界面活性剤及び燐脂質であるレシチン等)の欠点(塗膜の耐水性、耐熱性や耐候性、物性が低下する、レシチン等の天然燐脂質を用いた場合には酸化や酸敗により変質や腐敗する等)を改良し、色相、着色力、分散性、耐水性、耐熱性、耐候性等に優れ、各種物性低下のない着色樹脂組成物として、α,β不飽和二重結合を有するモノマーと不飽和基を有する二塩基酸ないしはその無水物との共重合体樹脂およびこれらの誘導体を顔料の分散剤あるいはフラッシング剤として含む、着色樹脂組成物(特許文献2)が開示されている。
しかしながら、このような着色樹脂組成物は、上記共重合体樹脂を顔料の分散剤あるいはフラッシング剤として含むものであって、本発明のようにインキの主体樹脂(バインダー)として用いるものではなく;また、樹脂の酸価が高くて、たとえインキ化したとしても広い顔料適性があるとは言えない。
【特許文献1】特開2005−146203号公報
【特許文献2】特許第3269337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような問題点を解決し、処理ポリオレフィン及びとくに未処理ポリオレフィンへの接着性が優れ、フィルムのリサイクルの際にフィルム物性を低下させることが少ない、軟包装材料の印刷に有利に適用し得る、インキ組成物を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決するインキ組成物を開発すべく、鋭意研究および検討を重ねてきた結果、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)に、テルペン系樹脂(B1)、スチレン系ハードレジン(B2)および脂環式炭化水素系樹脂(B3)からなる群から選択される樹脂(B)をブレンドしてなる、インキ用組成物が、上記課題の解決に極めて有効である事を見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明によって提供されるのは、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)、テルペン系樹脂(B1)、スチレン系ハードレジン(B2)および脂環式炭化水素系樹脂(B3)からなる群から選択される樹脂(B)、顔料、および有機溶剤からなるインキ組成物である。
【0007】
本発明に係る、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)、テルペン系樹脂(B1)、スチレン系ハードレジン(B2)および脂環式炭化水素系樹脂(B3)からなる群から選択される樹脂(B)、顔料、および有機溶剤からなるインキ組成物(1)には、以下の(2)〜(11)の態様のものが含まれ;また、本発明の別の態様には、以下の(12)の軟包装材料が含まれる。
(2) 該樹脂(B)が、テルペン系樹脂(B1)、スチレン系ハードレジン(B2)および脂環式炭化水素系樹脂(B3)からなる群から選択される2種以上の混合物である、上記インキ組成物(1)。
(3) 該スチレン系ハードレジン(B2)が、スチレンおよびα−メチルスチレンからなる群から選択されるスチレン系モノマーを必須モノマーとする1種または2種以上のモノマーから構成される(共)重合体である、上記インキ組成物(2)。
(4) 該エラストマー(A)が、スチレン−オレフィンおよび/または共役ジエン−スチレンブロック共重合体およびその水素添加物からなる群から選択される1種または2種以上の混合物である、上記インキ組成物(1)〜(3)。
(5) 該エラストマー(A)が、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物およびスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物からなる群から選択される1種または2種以上の混合物である、上記インキ組成物(4)。
(6) 該エラストマー(A)が酸価を有するものと酸価を有しないものからなり、(A)全体の酸価が1〜30mgKOH/gの範囲内である、上記インキ組成物(1)〜(5)。
(7) 該エラストマー(A)と該樹脂(B)とを、9/1〜1/9の重量比で含有する、上記インキ組成物(1)〜(6)。
(8) 組成物の重量に基づいて、3〜20%の有機顔料または3〜50%の無機顔料を含有する、上記インキ組成物(1)〜(7)。
(9) 有機溶剤が、芳香族炭化水素系溶剤および脂環式炭化水素系溶剤組成物からなる群から選択される1種または2種以上を含有する、上記インキ組成物(1)〜(8)。
(10) 軟包装材料の印刷用である、上記インキ組成物(1)〜(9)。
(11) 処理ポリオレフィンまたは未処理ポリオレフィンの印刷用である、上記インキ組成物(1)〜(9)。
(12) 上記インキ組成物(1)〜(11)の何れかを用いて印刷されてなる、軟包装材料。
なお、本明細書において、%および比は、特に規定しない限り、それぞれ、重量%および重量比を表す。
【発明の効果】
【0008】
本発明のインキ組成物は、上記手段〔スチレン系熱可塑性エラストマー(A)に、テルペン系樹脂、スチレン系ハードレジンおよび脂環式炭化水素系樹脂からなる群から選択される樹脂(B)ブレンドすること〕により、以下のような効果を奏するものである。
優れた付着性、インキ適性(耐ブロッキング性、耐摩擦性)、および被膜性能を有する。
処理ポリオレフィン及びとくに未処理ポリオレフィンへの接着性、フィルムのリサイクルの際にフィルム物性を低下させることが少ない、軟包装材料の印刷に有利に適用し得る。
同一のスチレン系熱可塑性エラストマー(A)を用いて、用途に応じて配合成分(他のエラストマーや各種ハードレジンや各種添加剤などの第三成分、およびそれらの配合量)を選択し、その混合だけで、種々の用途に適した性能を持たせることができる。
スチレン系熱可塑性エラストマー(A)として、高分子量,低MFR(メルトフローレート)のものを用いることができ、それによって優れたインキ性能(良好な印刷インキとしての粘度と流動性)を保持し、各種フィルムに対する付着性、接着性、印刷後の様々な後加工および使用に対する柔軟な皮膜性、ラミネート用インキにあっては大きなラミネート強度等を発揮するインキ組成物を得ることができる。
また、該エラストマー(A)としては、水素添加品のみならず、SBSやSIS等のゴム系の非水素添加品も使用することができる。
処理面印刷にも非処理面印刷にも、表印刷にも裏印刷にも適用することができ、後工程になるサーマルラミネート適性を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明のインキ組成物において、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)と、テルペン系樹脂、スチレン系ハードレジンおよび脂環式炭化水素系樹脂からなる群から選択される樹脂(B)とは、ブレンドされているものであり、熱可塑性エラストマーと共重合性モノマーからなる重合体で構成される樹脂(溶液)を用いるものではない。
【0010】
本発明において、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)には、各種のエラストマーあるいは合成ゴムとして用いられているスチレン系(共)重合体(単独重合体および/または共重合体)、並びに、これらの2種以上の併用が含まれる。
【0011】
スチレン系エラストマー(ないしはゴム)としては、スチレンとオレフィンおよび/または共役ジエンとのブロックおよびランダム共重合体:たとえばスチレン−オレフィンおよび/または共役ジエンブロック共重合体(スチレン−オレフィンおよび/または共役ジエンのジブロック共重合体、トリブロック共重合体など;スチレン−オレフィンおよび/または共役ジエン−スチレンのトリブロック共重合体、テトラブロック共重合体など)、スチレン−共役ジエンランダム共重合体、及びこれらの水素添加物、ならびにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
上記共重合体を構成する、オレフィンとしては、炭素数2〜12またはそれ以上のもの、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等のC〜C20のα−オレフィンの単独または2種以上の併用系、また、共役ジエンとしては、C〜C20ののもの、例えばブタジエン、イソプレン、及びこれらの併用系が挙げられる。
スチレン系エラストマーの具体例としては、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)などのスチレンとオレフィンとのブロックおよびランダム共重合体;スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−ブタジエンのランダム共重合体などのスチレンと共役ジエンとのブロックおよびランダム共重合体;およびこれらの共重合体の水素添加物〔例えば水添SEBS、水添SIS〕;ならびにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0012】
スチレン系エラストマーとしては、そのスチレンの含有量が10〜50%、とくに15〜45%のものが好ましい。(上記および以下において、とくに規定しない限り、%は重量%を表す。)
また、その重量平均分子量〔GPC(ゲルパミエーションクロマトグラフィー)による、ポリスチレン換算値〕(以下、Mwと略記)が5千〜70万の範囲が好ましく、さらには5千〜30万、とくに1万〜20万が好ましい。
【0013】
更に、これら、スチレン系エラストマーは、種々の官能基(水酸基、エポキシ基、カルボキシル基など)で変性されたもの、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体(官能基含有単量体および/または他の単量体)で変性されたものでもよい。
変性に用いる、単量体としては、1)水酸基含有単量体、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等;2)カルボン酸(無水物)基含有単量体、例えば(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、(無水)シトラコン酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等;3)アミド基含有単量体、例えば(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド等;4)エステル基含有単量体、例えば(メタ)アクリル酸エステル〔アルキル(C〜C20またはそれ以上)(メタ)アクリレート、たとえばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、I−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等;シクロアルキル−,アラルキル−およびアリール(メタ)アクリレート、たとえばシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等;ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、たとえばジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等〕、(メタ)アクリル酸以外の上記カルボン酸基含有単量体の相当するエステル(アルキル−,シクロアルキル−,アラルキル−,アリール−およびジアルキルアミノアルキル−エステル)、ビニルエステル(たとえば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル);5)エポキシ基含有単量体、たとえばグリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等;6)イソシアネ−ト基含有単量体、たとえばビニルイソシアネート、イソプロペニルイソシアネート等;7)ニトリル基含有単量体、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられ;これらの単量体の1種または2種以上を用いることができる。〔上記および以下において、「(メタ)アクリレート」はアクリレートおよび/またはメタクリレート、「(無水)マレイン酸」はマレイン酸および/または無水マレイン酸を表し、その他も同様の表現を用いる。〕変性に用いる単量体の量は、熱可塑性エラストマーの重量に基づいて、0.5〜20%の範囲が好ましく、より好ましくは1〜15%である。
変性されたエラストマーの例には、エポキシ変性SBS、水添SEBSのMA(無水マレイン酸)変性物が含まれる。
かかるエラストマー(A)の具体例としては、以下のものが挙げられる:
1)エポキシ(0.7%)変性SBS(スチレン40%)〔ダイセル化学工業(株)製エポフレンドCT310〕
2)エポキシ(1.5%)変性SBS(スチレン40%)〔ダイセル化学工業(株)製エポフレンドAT501〕
3)水添SEBS(スチレン30%)〔旭化成ケミカルズ(株)製タフテックH1031〕
4)水添SEBS(スチレン30%)〔旭化成ケミカルズ(株)製タフテックH1141〕
5)MA変性水添SEBS(スチレン30%)(酸価10)〔旭化成ケミカルズ(株)製タフテックM1913〕
6)MA変性水添SEBS(スチレン20%)(酸価10)〔旭化成ケミカルズ(株)製タフテックM1943〕
7)SIS(スチレン16%)〔日本ゼオン(株)製クインタック3433N〕
8)SIS(スチレン25%)〔日本ゼオン(株)製クインタック3460〕
9)SIS(スチレン20%)〔(株)クラレ製ハイブラー5127〕
10)水添SIS(スチレン20%)〔(株)クラレ製ハイブラー7125〕
11)SEP(スチレン30%)〔(株)クラレ製セプトン2002〕
12)SEPS(スチレン30%)〔(株)クラレ製セプトン2007〕
13)SEPS(スチレン13%)〔(株)クラレ製セプトン2063〕
14)SEPS(スチレン30%)〔(株)クラレ製セプトン4033〕
15)SEBS(スチレン30%)〔(株)クラレ製セプトン8007〕
16)SEBS(スチレン30%)〔(株)クラレ製セプトン8076〕
【0014】
スチレン系熱可塑性エラストマー(A)のうち、好ましいのは、スチレンとオレフィンとのブロックおよびランダム共重合体(とくにSEBS、SEPS、SEEPS)、スチレンと共役ジエンとのブロックおよびランダム共重合体(とくにSIS、SBS)、およびこれらの水素添加物、ならびにこれらの2種以上の混合物である。これらのうちで、水素添加物、とくにスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物およびスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物からなる群から選択される1種または2種以上の混合物が、耐熱性、耐候性、無黄変ないし難黄変性の点から好ましい。
これらのスチレン系エラストマーは、それぞれ、前述のように変性されていてもよい。
スチレン系熱可塑性エラストマー(A)として、酸価を有するエラストマー(変性されたエラストマー)と酸価を有しないエラストマー(未変性のエラストマー)とを種々の割合(例えば9/1〜1/9の重量比)で併用するのが、顔料分散性や耐熱性などの各種性能を向上させると共にサーマルラミネート適性を発現する上で、好ましい。とくに、酸価を有するものと酸価を有しないものからなる、該エラストマー(A)の全体(平均)の酸価が1〜30mgKOH/gの範囲内であるのが顔料分散性の点から好ましい。
【0015】
スチレン系熱可塑性エラストマー(A)としては、以下のような範囲の特性/物性値を有するものが好ましい。

【0016】
本発明において、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)にブレンドされる、樹脂(B)には、テルペン系樹脂(B1)、スチレン系ハードレジン(B2)、および脂環式飽和炭化水素系樹脂(B3)並びに、これらの2種以上の併用が含まれる。
【0017】
テルペン系樹脂(B1)としては、テルペン樹脂、たとえばα−ピネン樹脂{(株)理化ファインテク製}、「ピコライト」(「ピコライトA-115」等)、{β−ピネン樹脂{ヤスハラケミカル(株)「YSレジンPX」}、ジペンテン樹脂など;及び、これらのテルペン樹脂(α−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂等)の変性樹脂、たとえば、これらとスチレン等の芳香族モノマーを共重合させてなる芳香族変性テルペン樹脂{ヤスハラケミカル(株)製「YSレジンTO」}、これらを水素添加してなる水素添加テルペン樹脂{ヤスハラケミカル(株)製「クリアロンP」、「クリアロンM」、「クリアロンK」}、これらをフェノール変性してなるフェノール変性テルペン樹脂{ヤスハラケミカル(株)製「ポリスター2000」、「ポリスターT]、「ポリスターS」、「マイティエースG」};並びに、これらの2種以上の併用系が含まれる。
テルペン系樹脂(B1)のうちで好ましいのは、テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂および水素添加テルペン樹脂であり、更に好ましいのは未変性のテルペン樹脂、とくにα−ピネン樹脂およびβ−ピネン樹脂である。
このようなテルペン系樹脂(B1)をスチレン系熱可塑性エラストマー(A)と併用することにより、未処理ポリオレフィンフィルム、とくに接着が困難である未処理ポリエチレンに対して、良好な接着性を発揮することができる。
【0018】
スチレン系ハードレジン(B2)は、スチレン系エラストマー以外のスチレン系炭化水素樹脂である。一般に10〜100℃のガラス転移点(Tg)、70〜150℃またはそれ以上の軟化点(JIS K2207)を有し、通常500以上(好ましくは500〜7000とくに好ましくは700〜5000)のMwを有する炭化水素樹脂である。
該レジン(B2)には、スチレン系モノマーの1種以上の(共)重合体、スチレン系モノマーの1種以上(50%以上)と炭化水素モノマー{他の芳香族系モノマーおよび/または脂肪族系モノマー}の1種以上との共重合体、およびこれらの(共)重合体の水素添加物、ならびにこれらの2種以上の混合物が含まれる。
該レジン(B2)を構成するスチレン系モノマーとしては、スチレン、およびアルキル置換スチレン、例えば、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、p−エチルスチレン、p−イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、イソプロぺニルスチレン等;芳香族系モノマーとしては、通常C9留分といわれる芳香族系モノマー含有混合物「ナフサの熱分解により得られるC6〜C11留分のBTX抽出残留分」、更に他の芳香族系(多環芳香族を含む)モノマー(側鎖に不飽和結合を有する芳香族系炭化水素)、例えばクマロン、インデン、メチルインデン、ビニルナフタリン等;脂肪族系モノマーとしては、例えばエチレン、プロピレンなどのオレフィンが挙げられる。
スチレン系ハードレジン(B2)の具体例としては、スチレン系モノマー単独重合体、例えば、スチレン単一重合体{(株)理化ファインテク製「ピコラスチック」、三井化学(株)製「FTR8000」}、α−メチルスチレン単一重合体{三井化学(株)製「FTR Zero」、(株)理化ファインテク製「クリスタレックス」}、ビニルトルエン単一重合体{「ピコテックス」(株)理化ファインテク製}、およびスチレン系モノマー(2種以上)の共重合体、例えばα−メチルスチレン/スチレン共重合体{三井化学(株)製「FTR 2000」}、これらの芳香族変性品、例えばスチレン/芳香族系モノマーの共重合体{三井化学(株)製「FMR」}、および、脂肪族変性品、すなわちスチレン系モノマー/脂肪族系モノマーの共重合体、例えばスチレン/脂肪族系モノマー共重合体{三井化学(株)製「FTR 6000」}、スチレン/α−メチルスチレン/脂肪族モノマー共重合体{三井化学(株)製「FTR 7000」}:並びに、これらの(共)重合体の水素添加物、例えばα―メチルスチレン/ビニルトルエン/βメチルスチレン水添共重合体{(株)理化ファインテク製「リガレッツ」}が挙げられる。
該レジン(B2)のうち、好ましいのは、スチレン系モノマーの(共)重合体およびその芳香族変性品である。更に好ましいのは、α−メチルスチレンを主構成単位とするスチレン系モノマーの(共)重合体{α−メチルスチレン単一重合体、α−メチルスチレン/スチレン共重合体}およびその芳香族変性品、とくに前者{α−メチルスチレン単一重合体、およびα−メチルスチレン/スチレン共重合体(共重合比:好ましくは95/5〜1/99、とくに80/20〜5/95)}である。
これらのスチレン系ハードレジン(B2)は何れも、耐油性や耐熱性および硬度を向上させ、また乾燥性を向上させる効果を有している。また、これらは用途・要求性能により適宜選択される。例えば、より硬度が必要なものには、分子量が大きく、軟化点の高いα−メチルスチレン単一重合体、およびα−メチルスチレン/スチレンの共重合体が用いられる。一方、接着性が必要とされ、耐油性などはさほど要求されないものに対しては、耐ブロッキング性や乾燥性のみを重視した変性樹脂、スチレン単一重合体が用いられる。
スチレン系ハードレジン(B2)としては、以下のような範囲の特性/物性値を有するものが好ましい。

【0019】
脂環式飽和炭化水素系樹脂(B3)には、水素添加石油樹脂〔石油樹脂(ナフテン系石油樹脂、芳香族系石油樹脂など)の水素添加物〕が含まれる。その具体例としては、荒川化学工業(株)製アルコンM(M−135など)、アルコンP(P−140など)が挙げられる。
脂環式飽和炭化水素系樹脂を用いることによって、とくに処理および未処理のポリプロピレンに対して、良好な接着性を示す。
該樹脂(B)として、テルペン系樹脂(B1)、スチレン系ハードレジン(B2)および脂環式炭化水素系樹脂(B3)からなる群から選択される2種以上の混合物{(B1)および/または(B2)および/または(B3)}を用いることによって、これら各樹脂の相乗的に優れた性能を発揮することができる。
【0020】
樹脂(B)としては、以下のような範囲のMw,軟化点、Tgを有するものが好ましい。

【0021】
本発明において、熱可塑性エラストマー(A)とブレンドする樹脂(B)の割合は用途,要求性能等に応じて広範囲にわたり変えられるが、一般に(A)/(B)の重量比は好ましくは9/1〜1/9、更に好ましくは8/2〜2/8、とくに6/4〜3/7である。
(A)および(B)の合計の含有量は、インキ組成物の重量に基づいて10〜40%とくに12〜35%、不揮発分の重量に基づいて15〜95%とくに30〜90%となる範囲が好ましい。
【0022】
本発明のインキ組成物において、顔料としては一般に溶剤系グラビアインキで使用できる無機、有機あるいは体質顔料が使用できる。ここで使用可能な無機顔料としては、酸化チタン、ベンガラ、モリブテン、カーボンブラック、紺青、群青など、有機顔料としては、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環顔料をあげることが出来る。さらに使用可能な体質顔料としては、炭酸カルシウム、カオリンクレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク等を挙げることができ、これら2種類以上の混合系が挙げられる。
顔料の含有量は種々変えることができるが、一般的に組成物の重量に基づいて無機顔料では3〜50%とくに5〜40%が好ましく、有機顔料では3〜20%とくに3〜15%が好ましい。
【0023】
本発明のインキ組成物において用いられる有機溶剤としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類;ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸I−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸I−ブチルなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのグリコール誘導体類、メタノール、エタノール、n−プロパノール、I−プロパノール、n−ブタノール、I−ブタノール、S―ブタノールなどのアルコール類、およびそれらの2種以上の混合物が挙げられる。
これらのうちで、芳香族炭化水素類、脂環式炭化水素類などが、本発明のインキ組成物の材料に対して良溶媒である点で、好ましい。有機溶剤含有量はインキ組成物中の不揮発分の濃度が5〜60%とくに15〜50%となる範囲で用いるのが好ましい。
【0024】
本発明のインキ組成物には、必要に応じて、他の樹脂ないしはオリゴマー、油脂類、各種の安定剤、その他の添加剤の1種または2種以上を含有させることができる。
必要により用いられる、他の樹脂には、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ロジン樹脂、アルキド樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、クマロン樹脂、ケトン樹脂、セルロース系樹脂、および塩素化ポリオレフィン、ならびに、これらの2種以上の混合樹脂が含まれる。
オリゴマーとしては、ブタジエンを重合させてなる液状のアタクティック・ブタジエンオリゴマー(1,2−PB)、その水素添加物、それらの変性物〔酸もしくは酸無水物(無水マレイン酸など)またはグリコール(エチレングリコールなど)で変性してカルボキシル基,水酸基などの反応性基・親水基を導入したもの〕、具体的には例えば以下のものが挙げられる。これらのオリゴマーは、粘着性付与剤として、また耐水性、耐薬品性、電気特性、機械的強度、耐熱性等の特性の向上、エラストマーにこれらの特性を付与する目的で、用いられる。
1)1,2−PB〔日本曹達(株)製NISSO-PB B−1000〕
2)グリコール変性1,2−PB〔日本曹達(株)製NISSO-PB G−1000〕
3)グリコール変性水添1,2−PB〔日本曹達(株)製NISSO-PB GI−1000〕
4)酸変性1,2−PB(酸価55〜70)〔日本曹達(株)製NISSO-PB C−1000〕
5)酸変性水添1,2−PB(酸価44〜59)〔日本曹達(株)製NISSO-PB CI−1000〕
6)MA変性1,2−PB(酸価130〜155)〔日本曹達(株)製NISSO-PB BN−1015〕
【0025】
必要により用いられる、安定剤には、酸化防止剤(ヒンダードフェノール等)、耐候安定剤、耐熱防止剤、ゴム老化防止剤、防腐剤、防カビ剤、抗菌剤等;その他の添加剤には、他の着色剤(アゾ染料、アントラキノン系染料等の染料)、消泡剤、増粘剤、分散剤、界面活性剤、触媒、充填剤、ワックス、ブロッキング防止剤、可塑剤、レベリング剤等が含まれる。
これらの含有量は種々変えることができるが、一般に、インキ組成物(溶剤も含む)の重量に基づいて、安定剤は5%以下とくに0.1〜2%が好ましく、その他の添加剤は15%以下とくに3〜10%が好ましい。
【0026】
本発明のインキ組成物は、有機溶剤中に、上記(A)、(B)、顔料、および必要により他の成分を分散、溶解させることにより、調製される。
分散に際しては、公知の分散・混合装置を用いることもでき、例えば、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、3本ロール、ペイントシェーカー、ニーダー、2本ロール、高速ディゾルバー等が挙げられる。
【0027】
かくして調製されたインキ組成物は、膜厚や濃度を制御できれば印刷方法を特に限定するものではないが、印刷方法としては、凸版、グラビア、スクリーン、グラビアオフセット、ロールコーター、コンマコーター、ディッピング等が挙げられる。
【0028】
インキ組成物は、例えば、凸版インキ、グラビアインキ、スクリーンインキ、溶融転写用のインキ、熱転写用のインキ等の用途に適用できる。
本発明のインキ組成物は、軟包装材料、ポリオレフィンとくに未処理ポリオレフィンへの接着性が優れ、OPPフィルム、CPPフィルム、ポリエチレンフィルム等のオレフィン系樹脂、種々のプラスチックのフィルムやシート、或いはこれら樹脂の成形物に対して優れた密着に優れるため、これらへの印刷、印字、意匠用途に適用できる。また、インモールドのようにオレフィン系基材に対して転写する用途にも使用できる。
本発明のインキ組成物を用いて印刷してなる、印刷物は、優れたヒートシール適性を有し、サーマルラミネート用途に有用である。サーマルラミネートでは、ポリプロピレンやポリスチレンに対して良好な接着性が得られ、リサイクル性の良いラミネート材料が得られる。
【0029】
[実施例]
以下、本発明を具体的に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
以下の実施例において使用した、エラストマー、樹脂、顔料、ワックスおよび可塑剤は、次の通りである:
エラストマー[1]:酸変性水添スチレン系(SEBS型)熱可塑性エラストマー〔旭化成ケミカルズ(株)製、タフテックM1943〕
エラストマー[2]:水添スチレン系(SIS型)熱可塑性エラストマー〔(株)クラレ製、ハイブラー7125〕
エラストマー[3]:エポキシ変性スチレン系(SBS型)熱可塑性エラストマー〔ダイセル化学工業(株)製、エポフレンドCT310〕
エラストマー[4]:水添スチレン系(SEPS型)熱可塑性エラストマー〔(株)クラレ製、セプトン2007〕
エラストマー[5]:ヒドロキシ変性スチレン系(SEEPS型)熱可塑性エラストマー〔(株)クラレ製、セプトンHG252〕
樹脂[1]:脂環式飽和炭化水素系樹脂〔荒川化学工業(株)製、アルコンM−135〕
樹脂[2]:α−メチルスチレン系樹脂〔三井化学(株)製、FTR0120〕
樹脂[3]:テルペン系樹脂〔理化ハーキュレス(株)製、ピコライトA−115〕
樹脂[4]:脂環式飽和炭化水素系樹脂〔荒川化学工業(株)製、アルコンP−140〕
顔料[1]:酸化チタン〔テイカ(株)製、酸化チタンJR−603A〕
顔料[2]:銅フタロシアニンブルー〔大日精化(株)製、シアニンブルー−4976EP〕
ワックス[1]:重合脂肪酸アマイド系ワックス〔テンカポリマー(株)製、アマイドポリマーEX−1〕
ワックス[2]:ポリテトラフルオロエチレン/ポリエチレンワックス〔日本ルーブリゾール(株)製、ランコーワックスTF1778〕
ワックス[3]:ポリエチレンワックス〔南ア・サゾール社製、サゾールワックスSPN−3〕
ワックス[4]:エルカ酸アマイドワックス〔花王(株)製、脂肪酸アマイドE〕
可塑剤[1]:N−ブチルベンゼンスルフォンアミド〔大八化学工業(株)製、BM−4〕
【実施例1】
【0030】
(1)顔料分散用ワニスIの調製
攪拌機を備えた容器に、エラストマー[1]3部、エラストマー[2]1部、エラストマー[3]1.5部、樹脂[1]1.5部、樹脂[2]3部、樹脂[3]10.5部、メチルシクロヘキサン(以下、MCHと略記)26部、エチルシクロヘキサン(以下、ECHと略記)10部および酢酸プロピル(以下、NPAcと略記)7部を仕込み、攪拌下に混合、溶解して、顔料分散用ワニスIを調製した。
【0031】
(2)顔料分散液白Iの調製
顔料分散用ワニスI63.5部に、顔料[1]23部を混合し、サンド・ミルにて分散して、顔料分散液白Iを調製した。
(3)未処理ポリオレフィン用インキ白Iの調製
顔料分散液白I86.5部に、ワックス[1]3部、ワックス[2]1.5部、可塑剤[1]2部およびイソプロピルアルコール(以下、IPAと略記)6部を加え、混合溶解した後、ジイソプロポキシチタニウムビス(アセチルアセトネート)〔日本曹達(株)製、T−50;以下、DTBAと略記〕1部を混合し、未処理ポリオレフィン用インキ白Iを調製した。
(4)顔料分散液藍Iの調製
顔料分散用ワニスI86.5部に、顔料[2]7部、MCH13部およびNPAc3部を混合し、サンド・ミルにて分散して、顔料分散液藍Iを調製した。
(5)未処理ポリオレフィン用インキ藍Iの調製
顔料分散液藍I86.5部に、ワックス[1]3部、ワックス[2]1.5部、可塑剤[1]2部およびIPA6部を加え、混合溶解した後、DTBA1部を混合し、未処理ポリオレフィン用インキ藍Iを調製した。
【実施例2】
【0032】
(1)顔料分散用ワニスIIの調製
攪拌機を備えた容器に、エラストマー[1]3部、エラストマー[4]1.5部、エラストマー[5]1部、樹脂[1]1.5部、樹脂[2]3部、樹脂[3]10.5部、トルエン36部およびNPAc7部を仕込み、攪拌下に混合、溶解して、顔料分散用ワニスIIを調製した。
【0033】
(2)顔料分散液白IIの調製
顔料分散用ワニスII63.5部に、顔料[1]23部を混合し、サンド・ミルにて分散して、顔料分散液白IIを調製した。
(3)未処理ポリオレフィン用インキ白IIの調製
顔料分散液白II86.5部に、ワックス[1]3部、ワックス[2]1.5部、可塑剤[1]2部およびIPA6部を加え、混合溶解した後、DTBA1部を混合して、未処理ポリオレフィン用インキ白IIを調製した。
(4)顔料分散液藍IIの調製
顔料分散用ワニスII86.5部に、顔料[2]7部、トルエン13部およびNPAc3部を混合し、サンド・ミルにて分散して、顔料分散液藍IIを調製した。
(5)未処理ポリオレフィン用インキ藍IIの調製
顔料分散液藍II86.5部に、ワックス[1]3部、ワックス[2]1.5部、可塑剤[1]2部およびIPA6部を加え、混合溶解した後、DTBA1部を混合して、未処理ポリオレフィン用インキ藍IIを調製した。
【実施例3】
【0034】
(1)顔料分散用ワニスIIIの調製
攪拌機を備えた容器に、エラストマー[1]2部、樹脂[2]3部、MCH28部、NPAc8部、およびIPA3部を仕込み、攪拌下に混合、溶解して、顔料分散用ワニスIIIを調製した。
【0035】
(2)処理ポリオレフィン用インキ白IIIの調製
顔料分散液白III38部に、エラストマー[1]2部、樹脂[4]1.5部、ワックス[1]3部、ワックス[3]1部、炭化水素系溶剤〔エクソンモービル化学(有)製、エクソールDSP100/140〕7部およびMCH28部を加え、混合溶解した後、DTBA0.7部を混合して、処理ポリオレフィン用インキ白IIIを調製した。
【実施例4】
【0036】
サーマルラミネート用インキ白IVの調製
顔料分散液白III38部に、エラストマー[1]5部、樹脂[3]11部、樹脂[2]2.4部、ワックス[4]0.5部、ワックス[3]2部、1−プロパノール4部およびMCH33部を加え、混合溶解し、DTBA0.5部を混合して、サーマルラミネート用インキ白IVを調製した。
【実施例5】
【0037】
サーマルラミネート用インキ白Vの調製
DTBAを混合しない以外は、実施例4と同様にして、サーマルラミネート用インキ白Vを調製した。
【実施例6】
【0038】
サーマルラミネート用インキ白VIの調製
顔料分散液白III38部に、エラストマー[1]4.5部、エラストマー[3]1.5部、樹脂[4]7部、ワックス[1]1.5部、ワックス[3]2部、1−プロパノール4部およびMCH42部を加え、混合溶解し、DTBA0.7部を混合して、サーマルラミネート用インキ白VIを調製した。
【実施例7】
【0039】
サーマルラミネート用インキ白VIIの調製
DTBAを混合しない以外は、実施例6と同様にして、サーマルラミネート用インキ白VIIを調製した。
【実施例8】
【0040】
サーマルラミネート用インキ白VIIIの調製
顔料分散液白III38部に、エラストマー[1]4.5部、エラストマー[5]1.5部、樹脂[3]7部、ワックス[1]1.5部、ワックス[3]1部、1−プロパノール4部およびMCH42部を加え、混合溶解し、DTBA0.7部を混合して、サーマルラミネート用インキ白VIIIを調製した。
【実施例9】
【0041】
サーマルラミネート用インキ白IXの調製
DTBAを混合しない以外は、実施例8と同様にして、サーマルラミネート用インキ白IXを調製した。
【実施例10】
【0042】
サーマルラミネート用インキ白Xの調製
顔料分散液白III38部に、エラストマー[4]5部、樹脂[3]11部、樹脂[2]2.5部、ワックス[1]2部、ワックス[4]0.5部、可塑剤[1]2部、ワックス[3]2部、NPAc6部、1−プロパノール4部およびMCH27部を加え、混合溶解し、DTBA0.5部を混合して、サーマルラミネート用インキ白Xを調製した。
【実施例11】
【0043】
サーマルラミネート用インキ白XIの調製
DTBAを混合しない以外は、実施例10と同様にして、サーマルラミネート用インキ白XIを調製した。
【0044】
実施例で得られたインキ組成物、および以下の比較例のインキ組成物について、以下のようにして、各種フィルムを印刷し、評価を行なった。
比較例1: 大阪印刷インキ製造(株)製、未処理ポリオレフィン用環化ゴム系インキ「暁」665白、620原色藍
比較例2: 大阪印刷インキ製造(株)製、処理未処理兼用ポリアマイド型インキ「P-BEST」665白
比較例3: 大阪印刷インキ製造(株)製、サーマルラミネート用塩素化ポリオレフィン型インキ「PEL-SNW」押さえ白
【0045】
[印刷物の作成]
実施例1および3〜11のインキについてはMCH/ECH/NPAc/IPA=55/20/20/5の混合溶剤、実施例2および比較例1のインキについてはトルエン/IPA=90/10の混合溶剤、比較例2のインキについてはトルエン/IPA/酢酸エチル=50/35/15の混合溶剤、比較例3のインキについてはMEK(メチルエチルケトン)/トルエン/IPA=40/55/5の混合溶剤を用いて希釈して、印刷粘度が離合社製ザーンカップ♯3を使用してインキ温度25℃の条件下で17秒に調整した。
このように粘度調整されたインキを、グラビア校正機(175線/インチのダイレクトグラビア版、深さ30ミクロンを使用)を用いて各種フィルムにグラビア印刷して、藍色単色の印刷物および藍/白(白の上に藍)の重ね塗りした印刷物(未処理ポリオレフィン用インキの場合)ならびに白単色刷りした印刷物(処理ポリオレフィン用インキの場合およびサーマルラミネート用インキの場合)を作成して、試験に供した。
【0046】
印刷に供するフィルムのうち、未処理ポリオレフィンフィルムとしては、未処理LDPEフィルム、未処理CPPフィルムは一般的な包装用フィルム、未処理シュリンクPEは「ラプラーV301」〔19ミクロン、大倉工業(株)製〕、未処理シュリンクPPは「ランディファイブNP300」〔25ミクロン、大倉工業(株)製〕を用い;処理ポリオレフィンフィルムとしては、処理OPPフィルム、処理LDPEフィルムは一般的な包装用フィルムを用い;サーマルラミネートに用いるフィルムのうち、処理OPPは「HC−OP♯30」〔東セロ(株)製〕、印刷およびラミネートに使用した未処理CPPフィルムは一般的な包装用フィルム、ラミネートに使用した発泡PPは「ミクロレン」〔積水化成品工業(株)製、厚み0.8mm〕、発泡PSPはトレー用耐熱性PSP〔積水化成品工業(株)製、厚み2mm〕を用いた。
【0047】
[物性試験方法]
次の各物性を試験し、1〜5の5段階相対評価(5が最良)で表示する。
テープ接着:
セロハンテープ〔ニチバン(株)製〕にて同一箇所を5回剥離し、インキ被膜の脱落状態を観察する。脱落が全くなかったものを5、一部脱落したものをその程度に応じて2〜4、全面脱落したものを1とする。(以下も同様。)
耐引っ掻き:
印刷物をガラス板上に置き、印刷被膜を爪で20回引っ掻き、インキ被膜の脱落状態を観察する。
耐揉み性:
印刷物を手揉みで10回揉み、インキ被膜の脱落状態を観察する。
耐水揉み性:
水に24時間浸漬した印刷物を手揉みで10回揉み、インキ被膜の脱落状態を観察する。
耐摩擦性:
学振型耐摩擦試験機を使用して、金巾3号に対し、2Nの荷重で印刷物を100回摩擦し、インキ被膜の脱落状態を観察する。
耐ブロッキング性:
印刷面と背面を重ね、その上からヒートシーラーにて耐熱試験を行い、インキ被膜の脱落状態を観察する。
耐油性:
サラダ油を含浸させた脱脂綿でインキ被膜を5回こすり、インキ被膜の脱落状態を観察する。
耐熱性:
印刷面にテフロン(登録商標)シートを重ね、その上からヒートシーラーにて、次の条件で耐熱試験を行い、インキ被膜のテフロン(登録商標)シートへの付着状態を観察する。試験条件:0.3Mpa、1秒にて、100℃、120℃、140℃、160℃、180℃の各温度で試験する。
それらの試験結果を表1〜表9に示す。
【0048】
[ラミネート条件]
ラミネートは、熱傾斜試験機〔TYPE HG−100、東洋精機(株)製〕を用いて、0.3MPaで1秒の条件下で、140℃〜180℃の温度範囲における熱圧着法(試料幅は15mm、剥離速度は200mm/分)で行なって、次のラミネート構成において、印刷物と貼り合わせた基材との剥離強度を測定する。ラミネート構成としては、処理OPP印刷面/未処理CPP、未処理CPP印刷面/未処理CPP、未処理OPP印刷面/発泡PP、未処理CPP印刷面/発泡PP、および未処理CPP印刷面/発泡PSPを使用した。
それらの試験結果(単位:mN/15mm) を表10〜表14に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【0053】
【表5】

【0054】
【表6】

【0055】
【表7】

【0056】
【表8】

【0057】
【表9】

【0058】
【表10】

【0059】
【表11】

【0060】
【表12】

【0061】
【表13】

【0062】
【表14】

【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のインキ組成物は、処理ポリオレフィン及びとくに未処理ポリオレフィンへの接着性が優れ、フィルムのリサイクルの際にフィルム物性を低下させることが少ない、軟包装材料の印刷に有利に適用し得るものであり、環化ゴム系インキが用いられてきた種々の用途において環化ゴム系インキの代替として有用性を発揮することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系熱可塑性エラストマー(A)、テルペン系樹脂(B1)、スチレン系ハードレジン(B2)および脂環式炭化水素系樹脂(B3)からなる群から選択される樹脂(B)、顔料、および有機溶剤からなるインキ組成物。
【請求項2】
該樹脂(B)が、テルペン系樹脂(B1)、スチレン系ハードレジン(B2)および脂環式炭化水素系樹脂(B3)からなる群から選択される2種以上の混合物である、請求項1記載のインキ組成物。
【請求項3】
該スチレン系ハードレジン(B2)が、スチレンおよびα−メチルスチレンからなる群から選択されるスチレン系モノマーを必須モノマーとする1種または2種以上のモノマーから構成される(共)重合体である、請求項2記載のインキ組成物。
【請求項4】
該エラストマー(A)が、スチレン−オレフィンおよび/または共役ジエン−スチレンブロック共重合体およびそれらの水素添加物からなる群から選択される1種または2種以上の混合物である、請求項1〜3の何れか一項に記載のインキ組成物。
【請求項5】
該エラストマー(A)が、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物およびスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物からなる群から選択される1種または2種以上の混合物である、請求項4記載のインキ組成物。
【請求項6】
該エラストマー(A)が酸価を有するものと酸価を有しないものからなり、(A)全体の酸価が1〜30mgKOH/gの範囲内である、請求項1〜5の何れか一項に記載のインキ組成物。
【請求項7】
該エラストマー(A)と該樹脂(B)とを、9/1〜1/9の重量比で含有する、請求項1〜6の何れか一項に記載のインキ組成物。
【請求項8】
組成物の重量に基づいて、3〜20%の有機顔料または3〜50%の無機顔料を含有する、請求項1〜7の何れか一項に記載のインキ組成物。
【請求項9】
有機溶剤が、芳香族炭化水素系溶剤および脂環式炭化水素系溶剤組成物からなる群から選択される1種または2種以上を含有する、請求項1〜8の何れか一項に記載のインキ組成物。
【請求項10】
軟包装材料の印刷用である、請求項1〜9の何れか一項に記載のインキ組成物。
【請求項11】
処理ポリオレフィンまたは未処理ポリオレフィンの印刷用である、請求項1〜9の何れか一項に記載のインキ組成物。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか一項に記載のインキ組成物を用いて印刷されてなる、軟包装材料。

【公開番号】特開2010−6996(P2010−6996A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−169685(P2008−169685)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000205410)大阪印刷インキ製造株式会社 (12)
【Fターム(参考)】