説明

インク、インクカートリッジ及びインクジェット記録方法

【課題】 優れた光沢性を有し、かつ、長期間の保存の前後における色調の変化が抑制された画像を記録できるインク、該インクを用いたインクカートリッジ、及びインクジェット記録方法を提供すること。
【解決手段】 顔料及び1,2−アルカンジオールを含有するインクであって、前記顔料が、第1の顔料であるC.I.ピグメントレッド254、及び、第2の顔料である下記一般式(I)で表される顔料を含み、インク全質量を基準とした、前記第2の顔料の含有量(質量%)が、顔料の合計の含有量(質量%)に対して占める割合が、15.0%以下であることを特徴とするインク。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の顔料を含有し、インクジェット用としても好適なインクに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法によって得られる画像の耐光性、耐ガス性、さらには耐水性などの堅牢性を優れたものとするために、色材として顔料を含有する顔料インクが用いられるようになってきている。しかし、顔料と同様に色材として用いられる染料を含有する染料インクと比較して、顔料インクを用いた場合には、得られる画像の発色性が劣る場合があることや、光沢を有する記録媒体などに記録した場合、画像の光沢性が十分に得られないという課題がある。
【0003】
発色性に関しては、シアン、マゼンタ、及びイエローの基本3原色のインクに加えて、レッド、グリーン、ブルー、オレンジ、バイオレットなど、基本3原色以外のいわゆる特色インクを追加し、色再現領域の拡大を図ることが行われている。特色インクのなかでも、レッドインクにより記録される色再現領域の彩度を高めるために、C.I.ピグメントレッド254を含有するインクの提案がある。(特許文献1参照)。
【0004】
また、光沢性に関しては、顔料は粒子の形状を有するため、顔料インクを用いて光沢を有する記録媒体などに記録した場合に得られる画像の光沢性は未だに十分なレベルとは言えない。これは、以下のような理由によるものである。インクジェット記録方法に使用する顔料インクには、通常、インク中において分散している状態の平均粒子径が100nm程度である顔料を含有させる。光沢を有する記録媒体にこのようなインクを付与すると、粒子径を有さないため記録媒体に浸透する染料とは異なり、顔料は記録媒体のインク受容層の細孔に浸透しづらいため、記録媒体の表面やその近傍に定着する。このため、光沢を有する記録媒体において、インクが付与された領域では、インクが付与されていない領域と比較して平滑性が相対的に低下し、光沢性が低下するのである。このため、記録媒体の表面に形成されたインクのドットの平滑性を高めることで画像の光沢性を向上させることを目的として、インクに1,2−アルカンジオールを含有させることに関する提案がある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−155830号公報
【特許文献2】特開2005−194500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、優れた光沢性を有する画像を記録できる、インクジェット用のレッドインクを得るために、C.I.ピグメントレッド254及び1,2−アルカンジオールを含有するインクを調製し、様々な検討を行った。その結果、画像の光沢性に関しては、1,2−アルカンジオールを使用しないインクと比べて向上が認められた。しかし、該インクを温度60℃で1ヶ月間という長期間保存した後に記録した画像は、保存前のインクで記録した画像と比べて、画像の色調が大きく異なることがわかった。この長期間保存の試験は、一般のユーザーがインクを使用する期間及び温度に相当すると考えられる、常温でのおよそ1年間の保存を想定した加速試験であり、この試験の前後でのインクの特性や得られる画像が同等であることが求められる。
【0007】
したがって、本発明の目的は、優れた光沢性を有し、かつ、長期間の保存の前後における色調の変化が抑制された画像を記録できるインク、該インクを用いたインクカートリッジ、及びインクジェット記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明にかかるインクは、顔料及び1,2−アルカンジオールを含有するインクであって、前記顔料が、第1の顔料であるC.I.ピグメントレッド254、及び、第2の顔料である下記一般式(I)で表される顔料を含み、インク全質量を基準とした、前記第2の顔料の含有量(質量%)が、顔料の合計の含有量(質量%)に対して占める割合が、15.0%以下であることを特徴とする。
【0009】
【化1】

【0010】
(一般式(I)中、Rはそれぞれ独立に、炭素数1乃至6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数5乃至6のシクロアルキル基、又は、フェニル基、ビフェニル基、及びナフチル基から選ばれ、炭素数1乃至4の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基で置換されていてもよい芳香族基を表す。)
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、優れた光沢性を有し、かつ、長期間の保存の前後における色調の変化が抑制された画像を記録できるインク、該インクを用いたインクカートリッジ、及びインクジェット記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、好適な実施の形態を挙げて本発明を詳細に説明する。本発明は、C.I.ピグメントレッド254及び1,2−アルカンジオールを含有するインクにおいて生じる上記の技術課題を解決するためになされたものである。
【0013】
先ず、本発明者らは上記技術課題が生じる原因を把握するため、以下の検討を行った。1,2−ヘキサンジオールと、顔料としてC.I.ピグメントレッド254のみとを含有するインクを調製し、長期間の保存前後におけるインクの物性を調べた。その結果、保存後のインクでは分散された顔料の粒子が結晶成長を起こし、保存前のインクと比較して粒子径が大きくなっていることがわかった。
【0014】
インクジェット用の水性インクには一般に、顔料を分散するための分散剤としてアニオン性基の作用により水和する樹脂が用いられるため、インクは該樹脂に分散能を持たせられるようにアルカリ性に調整される。ここで、ジケトピロロピロール骨格を有する顔料のなかでも、C.I.ピグメントレッド254はアルカリに弱いことが知られている。また、1,2−アルカンジオールは、分子構造の片方の末端に親水性基である水酸基を、また、他方の末端に疎水性基であるアルキル基を有するため、界面活性剤のような性能を持つ。そして、上記のような性質をそれぞれに有するC.I.ピグメントレッド254及び1,2−アルカンジオールが共存した状態が続くと、疎水性である顔料粒子が多少なりとも溶解し、インク中に顔料分子がわずかに生成すると考えられる。すると、この顔料分子と顔料粒子との間において、水素結合が生じたり、π−π相互作用が働いたりすることで、顔料粒子が結晶成長を起こすと考えられる。
【0015】
なお、ジケトピロロピロール骨格に極性基であるスルホン酸基が導入された顔料誘導体は十分な分散安定性を持つと考えられたが、1,2−アルカンジオールと共存すると、やはり、長期間の保存の前後で色調の変化が見られた。
【0016】
そこで、本発明者らは、C.I.ピグメントレッド254及び1,2−アルカンジオールを含有するインクに、何らかの化合物を添加することにより上記のような現象の発生を抑制することができないかという点についての検討を行った。その結果、C.I.ピグメントレッド254及び1,2−アルカンジオールを含有するインクに、前記顔料と類似する構造を有する別の顔料を少量添加することで、長期間の保存前後における顔料粒子の結晶成長が抑制され、色調の変化も抑制できることがわかった。上記の別の顔料とは、ジケトピロロピロール骨格を有する顔料であるC.I.ピグメントレッド254の構造に類似した、後述する一般式(I)で表される顔料(第2の顔料)のことである。そして、インク全質量を基準とした、前記第2の顔料の含有量(質量%)が、顔料の合計の含有量(質量%)に対して占める割合が、15.0%以下となるように各顔料をインクに含有させる。
【0017】
第2の顔料を所定量インクに含有させることで、インクの長期間の保存前後における色調の変化が抑制されるメカニズムについて、本発明者らは以下のように推測している。第1の顔料と、該顔料と類似した構造を有する第2の顔料とを共に含有するインクにおいても、1,2−アルカンジオールの作用により上記2種顔料粒子のいずれもが溶解して顔料分子が僅かに生じると言える。しかし、第1の顔料の方が第2の顔料よりもアルカリに相対的に弱いため、第1の顔料が溶解して生じた顔料分子はそのまま溶解した状態を保ち、析出しにくい。一方で、アルカリに相対的に強い第2の顔料が溶解して生じた顔料分子が選択的に析出し、これが第1の顔料の結晶成長を抑制し、色調の変化も抑制すると考えられる。ただし、第2の顔料もジケトピロロピロール骨格を有する顔料であるため、その添加量が第1の顔料に比べて極端に多いような場合には、上記第1の顔料の場合と同様に顔料粒子が結晶成長を起こし、色調の変化が生じる。
【0018】
本発明のインクでは、第1の顔料と、該顔料よりもアルカリに溶解しにくい第2の顔料を特定の比率で併用することで、長期間の保存の前後での色調の変化が抑制される。ここで、ジケトピロロピロール骨格にスルホン酸基などの極性基が置換された顔料を第1の顔料と併用しても、上記のメカニズムは生じず、色調の変化を抑制することはできない。すなわち、第1の顔料とジケトピロロピロール骨格に極性基が置換された顔料を含有するインクの場合、前記2種の顔料が溶解した後には、極性基を有する後者の顔料は析出せず、それよりも溶解性が低い第1の顔料が析出しやすい。また、ジケトピロロピロール骨格に置換基を有さないC.I.ピグメントレッド255を第1の顔料と併用しても、やはり、上記のメカニズムは生じず、色調の変化を抑制することはできない。上述の通りC.I.ピグメントレッド255はジケトピロロピロール骨格に置換基を有さないため、第1の顔料よりも分子サイズが小さく、第1の顔料の結晶成長を抑制する能力が低いためであると考えられる。
【0019】
<インク>
以下、インクジェット用にも好適な、レッドの色調を有する本発明のインクを構成する各成分について説明する。
【0020】
(第1の顔料:C.I.ピグメントレッド254)
本発明のインクに含有させる第1の顔料は、C.I.ピグメントレッド254である。C.I.ピグメントレッド254は下記の構造を有し、第2の顔料と構造上で異なる点は、ベンゼン環への置換基の種類である。インク中の第1の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.45質量%以上10.0質量%以下、さらには1.6質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。
【0021】
【化2】

【0022】
(第2の顔料:一般式(I)で表される顔料)
本発明のインクに含有させる第2の顔料は、ジケトピロロピロール系の顔料である、下記一般式(I)で表される顔料である。本発明のインクにおいては、インク全質量を基準とした、前記第2の顔料の含有量(質量%)が、顔料の合計の含有量(質量%)に対して占める割合が、15.0%以下であることが必須である。前記割合が15.0%を越えると、インクを長期間保存した後における画像の色調の変化を抑制することができない。また、インク中の第2の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.0025質量%以上1.5質量%以下であることが好ましい。
【0023】
【化3】

【0024】
(一般式(I)中、Rはそれぞれ独立に、炭素数1乃至6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数5乃至6のシクロアルキル基、又は、フェニル基、ビフェニル基、及びナフチル基から選ばれ、炭素数1乃至4の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基で置換されていてもよい芳香族基を表す。)
【0025】
一般式(I)におけるアルキル基の炭素数は1乃至4であることがより好ましく、中でもtert−ブチル基が特に好ましい。また、一般式(I)における芳香族基は無置換のフェニル基や炭素数1乃至4のアルキル基が少なくとも1つ置換したフェニル基であることが特に好ましい。本発明においては、一般式(I)における、Rが互いに同じであり、かつ、置換位置も同じ、すなわち、対称な構造を有する顔料であることがより好ましく、C.I.ピグメントレッド272を用いることが特に好ましい。
【0026】
下記表1に、本発明において特に好ましく用いることができる第2の顔料について、その構造と、カラーインデックスに記載された顔料については該当するC.I.ナンバーを示す。勿論、本発明で用いる第2の顔料は、上記一般式(I)の定義を満足するものであればいずれのものでもよく、置換基の種類、数、置換位置は上記で挙げたものに限られない。なお、第1の顔料(C.I.ピグメントレッド254)は一般式(I)におけるRが塩素原子である構造を有するため、参考として表1に記載した。
【0027】
【表1】

【0028】
本発明においては、インク全質量を基準とした、前記第2の顔料の含有量(質量%)が、顔料の合計の含有量(質量%)に対して占める割合が、0.5%以上8.0%以下であることがより好ましい。上記割合が8.0%を越えると、第2の顔料が多すぎるため、第1の顔料を用いることで得ようとする画像の色調が得られない場合がある。一方、上記割合が0.5%未満であると、第2の顔料が少なすぎるため、インクを長期間保存した後における画像の色調の変化を抑制する効果が十分に得られない場合がある。
【0029】
(顔料の分散方式)
インクを構成する水性媒体への顔料の分散方式としては、分散剤として樹脂を用いて顔料を分散する樹脂分散タイプの顔料(樹脂分散型顔料)や、顔料粒子の表面に親水性基を導入した自己分散タイプの顔料(自己分散型顔料)を用いることができる。また、顔料粒子の表面に高分子を含む有機基を化学的に結合させた顔料(樹脂結合型の自己分散型顔料)や、顔料粒子の表面の少なくとも一部を樹脂などにより被覆したマイクロカプセル型顔料なども用いることができる。勿論、これらの分散方法の異なる顔料を組み合わせて用いてもよい。なお、本発明のインクを調製する際には、第1の顔料及び第2の顔料は、分散する前にそれぞれを混合して顔料分散体を作製した後にインクを調製してもよく、または、別々に分散した後にインクの調製の際に混合してもよい。各顔料が互いに接触する確率がより高くなり、本発明の効果が特に得られるという点から、前者の方法を採ることが特に好ましい。
【0030】
〔樹脂分散型顔料〕
分散剤として樹脂を用いて顔料を分散する樹脂分散タイプの顔料を使用する場合、樹脂分散剤としては、アニオン性基の作用によって顔料を水性媒体に分散させることができるものが好ましい。分散剤として使用することができる樹脂としては、インクジェット用のインクに使用可能な従来公知の共重合体やその塩をいずれも用いることができる。分散剤として使用する樹脂は、その酸価が、50mgKOH/g以上300mgKOH/g以下のものを用いることが好ましい。また、その重量平均分子量が、1,000以上30,000以下、さらには3,000以上15,000以下の樹脂を用いることが好ましい。また、インク中の樹脂の含有量は、インク中における顔料の含有量に対して、質量比率で、0.1倍以上3.0倍以下であること、すなわち、樹脂の含有量/顔料の含有量=0.1以上3.0以下であることが好ましい。なお、この場合の樹脂及び顔料の含有量の値は、インク全質量を基準とした場合における各成分の含有量のことである。
【0031】
(1,2−アルカンジオール)
本発明のインクは、1,2−アルカンジオールを含有することが必要である。1,2−アルカンジオールとしては、例えば、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−ノナンジオールなどが挙げられる。これらの1,2−アルカンジオールは、1種又は2種以上を用いることができる。本発明においては、1,2−アルカンジオールは、アルキル基の炭素数が5乃至8であることが特に好ましい。具体的には、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、及び1,2−オクタンジオールが挙げられる。炭素数が5未満であると画像の光沢性を向上する効果が小さくなる場合があり、炭素数が8を越えるとほとんど水に溶解せず、水に溶解させるためには何らかの共溶媒が必要となる場合がある。本発明においては、1,2−アルカンジオールが1,2−ヘキサンジオールであることが特に好ましい。
【0032】
本発明においては、インク中の1,2−アルカンジオールの含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、1.0質量%以上20.0質量%以下、さらには1.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。また、インク全質量を基準とした、1,2−アルカンジオールの含有量が、顔料の合計の含有量(第1の顔料及び第2の顔料の合計)に対して、質量比率で、0.5倍以上1.5倍以下であることが好ましい。なお、上記において、インク中の1,2−アルカンジオールの含有量とは、1種のみを用いる場合はその含有量、また、2種以上を用いる場合は合計の含有量のことである。1,2−アルカンジオールの含有量が多いほど画像の光沢性を向上するのには有利ではある。しかし、上記質量比率が1.5倍を越えると、画像の光沢性を向上する効果がそれ以上大きくならないのにも関わらず、第1の顔料(C.I.ピグメントレッドの254)の結晶成長が促進され、画像の色調の変化を抑制できない場合がある。一方、上記質量比率が0.5倍未満であると、画像の光沢性を向上する効果が十分に得られない場合がある。
【0033】
(水性媒体)
本発明のインクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有させることができる。水としては脱イオン水を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。また、インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。なお、この水溶性有機溶剤の含有量は、上述の1,2−アルカンジオールを含む値である。水溶性有機溶剤としては、インクジェット用のインクに使用可能なものをいずれも用いることができ、1種又は2種以上をインクに含有させることができる。
【0034】
(その他の成分)
本発明のインクには、上記成分の他に、尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの常温で固体の水溶性有機化合物を含有させてもよい。また、必要に応じて所望の物性値を有するインクとするために、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤などの種々の添加剤を含有させてもよい。特に、界面活性剤は、記録媒体にインクを構成する水性媒体を記録媒体に速やかに浸透させるためには適量をインクに含有させることが好ましい。インク中の界面活性剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.05質量%以上10.0質量%以下、さらには0.5質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。
【0035】
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、インクジェット方式の記録ヘッドにより上記で説明した本発明のインクを吐出して、記録媒体に画像を記録する方法である。本発明のインクを用いること以外、インクジェット記録方法の工程は公知のものとすればよい。
【0036】
<インクカートリッジ>
本発明のインクカートリッジは、インクを収容するインク収容部を備えてなり、前記インク収容部に、上記で説明した本発明のインクが収容されてなるものである。インクカートリッジの構造としては、インク収容部が、液体のインクを収容するインク収容室、及び負圧によりその内部にインクを保持する負圧発生部材を収容する負圧発生部材収容室で構成されるものが挙げられる。または、液体のインクを収容するインク収容室を持たず、収容量の全量を負圧発生部材により保持する構成のインク収容部であるインクカートリッジであってもよい。さらには、インク収容部と記録ヘッドとを有するように構成された形態のインクカートリッジとしてもよい。
【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記実施例により限定されるものではない。なお、以下の記載で、「部」及び「%」とあるものは特に断らない限り質量基準である。
【0038】
<顔料の準備>
上記表1に構造を示した、本発明における第1の顔料及び第2の顔料を以下のように準備した。一般式(I)における2つのR(置換位置はオルト位)がともに、シクロヘキシル基である顔料1とp−トリル基である顔料2とを、米国特許第4,415,685号明細書の記載に準じて合成した。また、C.I.ピグメントオレンジ73、C.I.ピグメントレッド:254、264、272は市販のものを使用した。一方、第2の顔料の比較化合物として使用する各顔料を以下のように準備した。一般式(I)における2つのR(置換位置はオルト位)がともにスルホン酸基である顔料3を特開2002−285067号公報の記載に準じて合成した。また、ジケトピロロピロール骨格に置換基を有さない、すなわち、一般式(I)におけるRが水素原子であるC.I.ピグメントレッド255は市販のものを使用した。
【0039】
<顔料分散体の調製>
下記表2に示す組み合わせ及び使用量の顔料(第1の顔料及び第2の顔料)計10部、及び、樹脂分散剤(固形分)20部と、合計100部となるようにイオン交換水を混合し、バッチ式縦型サンドミルを用いて3時間分散した。前記樹脂分散剤としては、酸価210mgKOH/g、重量平均分子量8,000のスチレン−アクリル酸共重合体を、10%水酸化ナトリウム水溶液で中和することにより得られた水溶液の形態で用いた。その後、遠心分離処理を行って粗大粒子を除去し、さらに、ポアサイズが3.0μmであるセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過し、顔料の濃度が10.0%、樹脂分散剤の濃度が20.0%である各顔料分散体を調製した。
【0040】
【表2】

【0041】
<インクの調製>
下記表3〜5の上段に示す各成分(単位:%)を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズが0.8μmであるセルロースアセテートフィルター(アドバンテック製)にて加圧ろ過を行い、各インクを調製した。なお、アセチレノールE100はノニオン性の界面活性剤(川研ファインケミカル製)である。なお、表3〜5の下段には、各インクの特性も示した。
【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【0044】
【表5】

【0045】
<評価>
(光沢性)
上記で得られた各インクをそれぞれインクカートリッジに充填し、インクジェット記録装置PIXUS990i(キヤノン製)のレッドインクのポジションに装着した。そして、記録媒体(キヤノン写真用紙・光沢ゴールド;キヤノン製)に、記録デューティを150%としたベタ画像を記録した。得られた画像について、マイクロヘイズメータープラス(BYKガートナー製)を用いて、その20°光沢度を測定し、光沢性の評価を行った。光沢性の評価基準は下記の通りである。結果を表6に示す。本発明においては、下記の評価基準でAが優れているレベル、Bが許容できるレベル、Cが許容できないレベルとした。
A:20°光沢度が80以上であった
B:20°光沢度が60以上80未満であった
C:20°光沢度が60未満であった。
【0046】
(色調の変化)
上記で得られた各インクをそれぞれインクカートリッジに充填し、インクジェット記録装置PIXUS990i(キヤノン製)のレッドインクのポジションに装着した。そして、記録媒体(キヤノン写真用光沢紙・光沢ゴールド;キヤノン製)に、記録デューティを150%としたベタ画像を記録した。また、同じインクを温度60℃で1ヶ月間保存した後、上記と同様の画像を記録した。得られた各画像について、反射濃度計RD−19I(グレタグマクベス製)を用いて、その明度及び色度を測定した。保存前のインクで記録した画像における明度をL、色度をa及びb、また、保存後のインクで記録した画像における明度をL、色度をa及びbとして、下記式に基づいてΔEの値を求め、色調の変化の評価を行った。色調の変化の評価基準は下記の通りである。結果を表6に示す。ΔEの値が小さいほど、色調の変化が抑制され、好ましいことを意味する。本発明においては、下記の評価基準でAが優れているレベル、Bが許容できるレベル、Cが許容できないレベルとした。
【0047】
【数1】

【0048】
A:ΔEが3未満であった
B:ΔEが3以上5未満であった
C:ΔEが5以上であった。
【0049】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料及び1,2−アルカンジオールを含有するインクであって、
前記顔料が、第1の顔料であるC.I.ピグメントレッド254、及び、第2の顔料である下記一般式(I)で表される顔料を含み、インク全質量を基準とした、前記第2の顔料の含有量(質量%)が、顔料の合計の含有量(質量%)に対して占める割合が、15.0%以下であることを特徴とするインク。
【化1】


(一般式(I)中、Rはそれぞれ独立に、炭素数1乃至6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数5乃至6のシクロアルキル基、又は、フェニル基、ビフェニル基、及びナフチル基から選ばれ、炭素数1乃至4の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基で置換されていてもよい芳香族基を表す。)
【請求項2】
インク全質量を基準とした、前記1,2−アルカンジオールの含有量(質量%)が、前記顔料の合計の含有量(質量%)に対して、質量比率で、0.5倍以上1.5倍以下である請求項1に記載のインク。
【請求項3】
インク全質量を基準とした、前記第2の顔料の含有量(質量%)が、顔料の合計の含有量(質量%)に対して占める割合が、0.5%以上8.0%以下である請求項1又は2に記載のインク。
【請求項4】
前記一般式(I)で表される顔料が、C.I.ピグメントレッド272である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインク。
【請求項5】
インクを収容するインク収容部を有するインクカートリッジであって、前記インク収容部に収容されたインクが、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクであることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項6】
インクをインクジェット方式で吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、前記インクが、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクであることを特徴とするインクジェット記録方法。

【公開番号】特開2011−94064(P2011−94064A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250822(P2009−250822)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】