説明

インク、インクセット、インクカートリッジ、記録ユニット、画像記録装置および画像記録方法

【課題】 画像品位に与える記録媒体の影響を緩和し、高品位の画像を安定的に与えることができるインクを提供する。
【解決手段】 カーボンブラック及び塩を含有するインクジェット記録用インクであって、該カーボンブラックが、置換もしくは未置換のフェニレン基を介して親水性基−COO(M2)(但し、M2は水素原子、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表す)を該カーボンブラックの表面に結合している自己分散カーボンブラックであり、該塩が、Ph−COO(M1)(但し、M1はアンモニウムを表し、Phはフェニル基を表す)で示される塩であることを特徴とするインクジェット記録用インク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインク、インクセット、インクカートリッジ、記録ユニット、画像記録装置、画像記録方法、カラー画像の形成方法およびカラー画像のブリード緩和方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より筆記具(万年筆、サインペン、水性ボールペン等)用の黒色インクおよびインクジェット用の黒色インクとして、印字物の濃度が高く、また堅牢性等に優れた黒色着色剤であるカーボンブラックを用いたインクが提案されている。
【0003】
特に近年はオフィスで一般で使用されているコピー用紙、レポート用紙、ノート、便箋、ボンド紙および連続伝票用紙等の普通紙に対しても良好な記録を行うことが出来る様に、インクの組成および物性等の多様な面から詳細な研究開発が為されている。例えば、特許文献1および特許文献2にはカーボンブラックと分散剤とを含む水性顔料インクが開示されている。また特許文献3はカーボンブラックを分散剤とともに含むインクをインクジェットプリンタ用のインクとして用いた場合、吐出が不安定となったり、十分な印字濃度を得られないとの技術課題を挙げ、そのような課題を解決し得るインクとして、分散剤を用いない自己分散型のカーボンブラックを用いた水性顔料インクを開示している。
【特許文献1】特開昭61−283875号公報
【特許文献2】特開昭64−6074号公報
【特許文献3】特開平8−3498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、上記自己分散型のカーボンブラックを黒色顔料として含む黒色インクをインクジェット記録に用いた場合について種々の検討を行った。その結果、このようなインクは記録媒体(例えば紙等)の種類によっては必ずしも十分な文字品位や印字濃度が得られないことがあることを見出した。
【0005】
また上記したような黒色インクを他の色(例えばマゼンタ、シアン、イエロー、レッド、グリーンおよびブルーから選ばれる少なくとも1つ)のインクと共に用いてカラー画像の印字を行った場合、記録媒体上で黒色画像部とカラー画像部との境界において色が滲んだり、インクが不均一に混合され、画像の品位が低下する現象(以降「ブリーディング」と称する)が認められることがあった。
【0006】
このようなブリーディングについては所謂界面活性剤の添加によってインクの記録媒体中への浸透性を向上させるアイデア(例えば特開昭55−65269号等)や、インクの溶剤として揮発性溶剤を主体として用いるアイデア(例えば特開昭55−66976号)が提案されている。しかしこれらの先行技術についても画像濃度の低下、吐出安定性の低下をもたらすことがあった。本発明者らはこのような従来技術に鑑みて、自己分散型のカーボンブラックを黒色顔料として含むインクに関して、単独もしくは他のカラーインクと共に用いたときに、記録媒体の種類が変化しても画像品位の変化の少ない黒色インクを開発することが必要であることを見出した。
【0007】
本発明の目的の一つは、画像品位に与える記録媒体の影響を緩和し、高品位の画像を安定的に与えることができる黒色のインクを提供することにある。
【0008】
本発明の目的の一つは、画像品位に与える記録媒体の影響を緩和し、高品位の画像を安定的に与えることができ、且つインクジェット吐出特性にも優れた黒色のインクを提供することにある。
【0009】
また本発明の他の目的は、ブリーディングを有効に抑えることのできるインクセットを提供することにある。特に黒色インクにおいては文字などの出力に用いられることが多いために高OD、文字のシャープネス差が強く要求される、このため前述した様に浸透性の高いインクを用いてブリードを防止する手法では文字品位とODとの双方を高いレベルで満足させるには未だ至っておらず、文字品位およびODとをより高いレベルで満足させることも本発明の目的の一つである。
【0010】
また本発明の目的は画像品位に与える記録媒体の影響を緩和し、高品位な画像を安定して形成できる画像形成装置、画像形成方法およびそれらに用いられるインクカートリッジ、および記録ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施態様の一つとしてのインクは、(M1)SO、CHCOO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1)SOおよび(M1)COから選ばれる少なくとも一つの塩と自己分散型カーボンブラックを含むことを特徴とするものである。なおここでM1はアルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表し、またはPhはフェニル基を表す。
【0012】
この実施態様によれば、画像品位、例えば文字のシャープネスが損なわれたり、画像濃度の低下が生じることのある浸透性の大きな紙に印字した場合にも高品位な画像を形成することが可能である。なおこの実施態様によってかかる効果を得られる理由は明らかでないが、例えば該インクをインクジェット法によって紙面上に飛翔させ、付着させた場合、インク中では顔料は安定に分散しているが、紙面に付着後の固液分離が速やかに起こるためであると考えられる。すなわち固液分離が遅いと浸透性の大きな紙ではインクが紙中に拡散する。その結果、文字のシャープネス(文字品位)が損なわれると同時に紙の奥までインクが浸透するために当然画像濃度も低下する。しかし本実施態様のインクは固液分離が速やかに起こるために、比較的浸透性が高い紙であっても前述のような現象は起こりづらいと考えられる。つまり浸透性の大小等の紙種による要因を受けづらくなると考えられる。そしてかかる効果は塩をインク全重量に対して0.05〜10wt%とした場合に最も良好に得られるものと考えられる。更に上記塩の内、硫酸塩(例えば硫酸カリウム等)や安息香酸塩(例えば安息香酸アンモニウム等)は、上記インクの特性、例えばこのインクをインクジェット用に用いる場合の特性に与える影響が軽微である。
【0013】
またこの実施態様にかかるインクの他の具体例として、−COO(M2)、−SO(M2)、−POH(M2)および−PO(M2)から選ばれる少なくとも1つをカーボンブラック表面に直接、若しくは他の原子団を介して結合させた自己分散型カーボンブラックと、M1がM2と同一である塩を含有させたインクが挙げられる。このインクはその安定性がより一層向上するために、特に好適な態様の一つである。例えばM2がアンモニウム(NH)であれば、塩としてアンモニウム塩、例えば安息香酸アンモニウム等を添加すると、このインクを用いて得られるインクジェット記録画像の耐水性等をより一層改善することができる。
【0014】
また上記インクの他の実施態様として、インクのpHを9〜12に調製したインクが挙げられる。この様なインクもまた高品位な画像を安定的に得る上で好適に用いられるものである。即ち前記したインクは長期間の保存によってpHが酸性方向にシフトし、それに伴ってインク特性、例えば粘度が上昇する傾向があるとの知見を得ている。そしてこの点に対する更なる検討の結果としてインクのpHを上記の範囲に調製しておいた場合、インク特性の変化は極めて緩やかであり、保存時のpH変化に伴うインク特性の変化が実質的に無視し得る程度のものとなるとの新たな知見を得た。そして上記の発明はかかる知見に基づくものである。
【0015】
また上記インクの更に他の実施態様として、例えばアニオン系界面活性剤やカチオン系界面活性剤等から選ばれる安定化剤を共存させたものが挙げられる。このような構成によればインクのpH変化に伴うインク特性の変化を緩やかにすることが可能である。係る効果が得られる理由は明らかではないが、安定化剤がカーボンブラック粒子同士の接触(衝突)を阻害するために安定して存在し得るpH領域が広がるものと考えられる。そして上記した効果は、安定化剤としてアルキルベンゼンスルホン酸塩を用いた場合には特に顕著なものとなる。また好ましい態様の一つとして、安定化剤を添加すると共にpHを9〜12の範囲内となるように調製したインクが挙げられる。この態様はインク保存中のpH変化の抑制と、pHが変化したときの特性の急激な変化の防止との双方の効果を奏するものである。更に安定化剤の添加量を抑えることができ、インク特性が変化する可能性を殆ど排除できる。
【0016】
また本発明の更に他の実施態様として、上記した種々の実施態様にかかるインクに酸化防止剤を添加した態様が挙げられる。これによってインクを長期間保存したときの化学的な変化やインクジェット吐出特性の変化を抑えることができる。
【0017】
更にまた本発明の他の実施態様として、上記した種々の実施態様にかかるインクに水溶性高分子化合物を添加した態様が挙げられる。これによって紙等の記録媒体表面に該インクを付着させて記録したときの該記録媒体の耐擦過性の向上に効果がある。
【0018】
また本発明の他の実施態様のインクは、所定の光学濃度の印刷を記録媒体上にインクジェット法によって形成するためのインクであって、(M1)SO、CHCOO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1)SOおよび(M1)COから選ばれる少なくとも1つの塩と自己分散型カーボンブラックとを含み、該カーボンブラックの濃度は、該塩が入っていない場合には該所定の光学濃度の画像を得ることのできない濃度であることを特徴とする。なおM1はアルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表し、又Phはフェニル基を表す。
【0019】
次に本発明の一実施態様としてのインクセットは、シアン用、マゼンタ用、イエロー用、レッド用、グリーン用およびブルー用の色材から選ばれる少なくとも1つの色材を含む水性のインクと、(M1)SO、CHCOO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1)SOおよび(M1)COから選ばれる少なくとも一つの塩と自己分散型カーボンブラックを含む水性のインクとを組合せたことを特徴とするものである。ここでM1は、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表し、またPhはフェニル基を表す。
【0020】
このようなインクセットを用いてカラー画像を形成した場合、カーボンブラックを含むインクによって形成された画像と他の色材を含むインクによって形成された画像との境界領域におけるブリーディングを有効に抑えることができる。本実施態様によって上記した様な効果が得られる理由は明らかではないが、記録媒体表面における固液分離の早さが関与しているものと考えられる。
【0021】
本発明の一実施態様としてのインクカートリッジは、(M1)SO、CHCOO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1)SOおよび(M1)COから選ばれる少なくとも一つの塩と自己分散型カーボンブラックを含む水性のインクを収容しているインクタンクを備えていることを特徴とする。
【0022】
本発明の一実施態様としての記録ユニットは、(M1)SO、CHCOO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1)SOおよび(M1)COから選ばれる少なくとも一つの塩と自己分散型カーボンブラックを含む水性のインクジェット記録用インクを収容したインク収容部、および該インクを吐出させるためのヘッド部を備えたことを特徴とする。
【0023】
また本発明の一実施態様としての画像記録装置は、(M1)SO、CHCOO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1)SOおよび(M1)COから選ばれる少なくとも一つの塩と自己分散型カーボンブラックを含む水性のインクジェット記録用インクを収容しているインクタンクを備えているインクカートリッジ、インクを吐出させるための記録ヘッド、および該記録ヘッドに該インクカートリッジからインクを供給する手段を備えていることを特徴とする。
【0024】
また本発明の他の実施態様としての画像記録装置は、(M1)SO、CHCOO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1)SOおよび(M1)COから選ばれる少なくとも一つの塩と自己分散型カーボンブラックを含む水性のインクジェット記録用インクを収容したインク収容部、および該インクを吐出させるためのヘッド部を備えた記録ユニットを備えていることを特徴とするものである。
【0025】
また本発明の他の実施態様にかかる画像記録装置は、シアン用、マゼンタ用、イエロー用、レッド用、グリーン用およびブルー用の色材から選ばれる少なくとも1つの色材を含む水性のインクを収容したインク収容部、(M1)SO、CHCOO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1)SOおよび(M1)COから選ばれる少なくとも一つの塩と自己分散型カーボンブラックを含む水性のインクジェット記録用インクを収容したインク収容部、および各々のインク収容部に収容されているインクを各々吐出させるためのヘッド部を備えていることを特徴とする。
【0026】
また本発明の更に他の実施態様にかかる画像記録装置は、シアン用、マゼンタ用、イエロー用、レッド用、グリーン用およびブルー用の色材から選ばれる少なくとも1つの色材を含む水性のインクを収容したインク収容部を備えたインクカートリッジ、(M1)SO、CHCOO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1)SOおよび(M1)COから選ばれる少なくとも一つの塩と自己分散型カーボンブラックを含む水性のインクジェット記録用インクを収容したインク収容部を備えたインクカートリッジ、各々のインク収容部に収容されているインクを各々吐出させるためのヘッド部、および各々のインクを各々のインクカートリッジから各々のヘッド部に供給するための手段を備えていることを特徴とする。
【0027】
また本発明の一実施態様にかかる画像記録方法は、(M1)SO、CHCOO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1)SOおよび(M1)COから選ばれる少なくとも一つの塩と自己分散型カーボンブラックを含む水性のインクジェット記録用インクを記録媒体表面に向けて飛翔せしめ、該表面に付着させることにより画像を記録することを特徴とする。
【0028】
また本発明の一実施態様にかかるカラー画像の形成方法は、シアン用、マゼンタ用、イエロー用、レッド用、グリーン用およびブルー用の色材から選ばれる少なくとも1つの色材を含む水性の第1のインクを記録媒体の表面に向けて吐出させ、該表面に付着させる工程、および、(M1)SO、CHCOO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1)SOおよび(M1)COから選ばれる少なくとも一つの塩と自己分散型カーボンブラックを含む水性の第2のインクを該記録媒体の表面に向けて吐出させ、該表面に付着させる工程、を含むことを特徴とする。
【0029】
また本発明の一実施態様にかかるカラー画像のブリード緩和方法は、記録媒体上において互いに隣接している、水性のインクジェット用黒色インクで形成された黒色画像と水性のインクジェット用カラーインクで形成されたカラー画像の間のブリードを緩和する方法であって、
該インクジェット用黒色インクとして、(M1)SO、CHCOO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1)SOおよび(M1)COから選ばれる少なくとも一つの塩と自己分散型カーボンブラックを含んでいるインクを用いることを特徴とする。ここで、M1はアルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表し、またPhはフェニル基を表す。
【発明の効果】
【0030】
本発明の各実施態様によれば、例えば下記の効果を得られる。
(1)画像品位に与える記録媒体の影響を緩和し、高品位の画像を安定的に与えることができるインクを得られる。
(2)pHの変化によっても品質の変化が極めて少ない、特性を安定的に維持するインクを得られる。
(3)長期保存したときにも品質の変化が少なく、例えばインクジェット吐出特性が殆ど変化しないインクを得られる。
(4)印字物の耐擦過性に優れ、またそれが記録媒体に種類に依存し難いインクを得られる。
(5)ブリーディングを有効に抑えることのできるインクセットを得ることができる。
(6)画像品位に与える記録媒体の影響を緩和し、高品位な画像を安定して形成できる画像形成装置、画像形成方法及びそれらに用いられるインクカートリッジ、及び記録ユニットを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
(第1の実施態様)
本発明の一実施態様に関わるインクは、自己分散型のカーボンブラックを色材の一つとして更に塩を含んでいる点に特徴の一つを有している。そしてこれらは例えば水性媒体に分散、溶解してインクを構成している。
【0032】
(自己分散型カーボンブラック/塩について)
該インクの色材である自己分散型カーボンブラックとしては例えば、少なくとも1つの親水性基がカーボンブラック表面に直接、若しくは他の原子団を介して結合しているカーボンブラックが挙げられる。これを用いることによって従来のように、カーボンブラックを分散させるために分散剤を添加することが不要となる。
【0033】
塩としては(M1)SO、CHCOO(M1)、Ph−COO(M1)、(M1)NO、(M1)Cl、(M1)Br、(M1)I、(M1)SOおよび(M1)COから選ばれる少なくとも一つを用いることが好ましい。ここでM1はアルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表し、Phはフェニル基を表す。そしてアルカリ金属の具体例としては例えばLi、Na、K、Rb、Cs等が挙げられ、また有機アンモニウムの具体例としては例えばメチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリメタノールアンモニウム、ジメタノールアンモニウム、トリメタノールアンモニウム、エタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウムおよびトリエタノールアンモニウム等が挙げられる。
【0034】
このように自己分散型カーボンブラックを含むインク中に上記したような塩を共存させることによって、記録媒体の種類によって画像品質が大きく変化することのない、安定的に高品位の画像を形成することのできるインクを得ることができる。この実施態様にかかるインクが上記した様な特性を発揮する詳細なメカニズムは現時点においては明らかでない。しかし、インクの記録媒体への浸透性を表わす尺度として知られているブリストウ法によって求められるKa値に関して、本態様のインクは、塩を添加しない以外は同一の組成を有するインクと比較して大きなKa値を示すとの知見を本発明者らは得ている。Ka値の増加は、インクの記録媒体への浸透性の向上したことを示すものであり、これまでの当業者の常識としてインクの浸透性の向上は、画像濃度の低下を意味するものであった。
【0035】
即ちインクの浸透と共に色材も記録媒体内部に浸透してしまう結果として画像濃度が低下してしまうというのがこれまでの当業者の認識である。そしてこのような本態様のインクに関する種々の知見から総合的に判断すると、本態様のインク中の塩は、紙面上に付与した後のインク中の溶剤と固形分との分離(固液分離)を極めて速やかに引き起こすという特異的な作用を生じさせていると考えられる。つまりインクが記録媒体に付与されたときの、固液分離が遅ければ、Kaの値の大きいインク、あるいはインクの浸透性の大きな紙上ではインクは色材とともに等方的に紙中に拡散し、その結果文字のシャープネス(文字品位)が損なわれると同時に紙の奥まで色材が浸透するために画像濃度も低下することが予測される。しかし本態様のインクはその様な現象が観察されないことから、記録媒体に付与されたときの固液分離が速やかに起こり、その結果、インクのKa値の増加にも関わらず、高品位な画像を与えるものと推察される。また浸透性が比較的高い紙であっても本態様のインクの場合には、文字品位の低下や画像濃度の低下といった現象は起こりづらい理由もこれと同じと考えられる。以下、この点を図11および図12に基づき更に説明する。
【0036】
図11(A)〜(C)および図12(A)〜(C)は各々、塩を含むインクおよび塩を含まないインクの各々をインクジェット記録法によってオリフィスから吐出させ、浸透性の高い記録媒体に付与したときに、そこで生じる固液分離の様子を模式的、概念的に示した説明図である。即ちインクが着弾した直後には、双方のインク共に図11(A)および図12(A)に示すように塩の添加の有無に関わらず顔料インク1101または1201が紙表面に乗った状態である。時間T1経過後、塩を添加した顔料インクは、図11(B)に示すように、固液分離が速やかに起こり、インク中の固体成分の殆どが豊富に含まれる領域1105とインク中の溶媒とが分離し、分離した溶剤の浸透先端1107が、紙1103内部へと進んでいく。一方、塩を添加しない顔料インクは、図12(B)に示すように、塩を添加したインク程には固液分離が速やかに起こらないために、固液分離しない状態1205で、紙1203内部へと浸透していく。時間T2経過後:塩を添加した顔料インクは図11(C)に示すように、溶剤の浸透先端1107は更に紙内部へと浸透していくが、領域1105は紙の表面とその近傍に留まったままで維持される。一方、塩を添加していない顔料インクは、図12(C)に示すように、この時点において漸く、固液分離が始まり、インク中の固形分の浸透先端1207と溶媒の浸透先端1209との間に差が生じて来るものの、インク中の固形分含有領域1211は記録媒体の深部にまで到達している。なお上記説明における時間T1およびT2は、塩の有無による固液分離の相違を概念的に捉えるための目安の時間である。以上の説明から明らかなように、塩を添加することで、固液分離が速やかに起こるために着弾後、比較的速い段階で固液分離とともに、紙内部へと浸透するようになるために上記効果を生じるものであると推察している。即ち塩を添加することにより画像品位が、記録媒体の浸透性の大小等によって影響され難くなると考えられる。そして上記した塩の中でも硫酸塩(例えば硫酸カリウム等)、安息香酸塩(例えば安息香酸アンモニウム)は自己分散型カーボンブラックとの相性が良く、具体的には記録媒体に付与したときの固液分離効果が特に優れるためか、種々の記録媒体に特に優れた品質のインクジェット記録画像を形成することができる。
【0037】
インク中の自己分散型カーボンブラックの含有量としては、インク全重量に対して、0.1〜15重量%、特には1〜10重量%の範囲とすることが好ましい。また塩の含有量としてはインク全重量に対して0.05〜10重量%、特には0.1〜5重量%の範囲とすることが好ましい。インク中の自己分散型カーボンブラックおよび塩の含有量を上記の範囲とすることでより一層優れた効果を享受できる。
【0038】
(自己分散型カーボンブラック)
次にインク中の自己分散型カーボンブラックについて詳述する。
【0039】
自己分散型カーボンブラックとしてはイオン性を有するものが好ましく、例えばアニオン性やカチオン性に帯電したカーボンブラックを好適に用いることができる。
【0040】
(アニオン性帯電CB)
アニオン性に帯電したカーボンブラックとしては、カーボンブラックの表面に例えば以下に示した様な親水性基を結合させたものが挙げられる。
−COO(M2)、−SO(M2)、−POH(M2)、−PO(M2)
上記式中、M2は水素原子、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表わす。Rは炭素原子数1〜12のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、または置換もしくは未置換のナフチル基を表わす。これらの中で特に−COO(M2)や−SO(M2)をカーボンブラック表面に結合してアニオン性に帯電せしめたカーボンブラックはインク中の分散性が良好なため本実施態様に特に好適に用い得るものである。ところで上記親水性基中「M2」として表したもののうち、アルカリ金属の具体例としては例えばLi、Na、K、RbおよびCs等が挙げられ、また有機アンモニウムの具体例としては例えばメチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、メタノールアンモニウム、ジメタノールアンモニウム、トリメタノールアンモニウム等が挙げられる。そしてM2をアンモニウム或いは有機アンモニウムとした自己分散型カーボンブラックを含む本実施態様のインクは、記録画像の耐水性をより向上させることができ、この点において特に好適に用いることのできるものである。これは当該インクが記録媒体上に付与されると、アンモニウムが分解し、アンモニアが蒸発する影響によるものと考えられる。ここでM2をアンモニウムとした自己分散型カーボンブラックは、例えばM2がアルカリ金属である自己分散型カーボンブラックをイオン交換法を用いてM2をアンモニウムに置換する方法や酸を加えてH型とした後に水酸化アンモニウムを添加してM2をアンモニウムにする方法等が挙げられる。
【0041】
アニオン性に帯電している自己分散型カーボンブラックの製造方法としては、例えばカーボンブラックを次亜塩素酸ソーダで酸化処理する方法が挙げられ、この方法によってカーボンブラック表面に−COONa基を化学結合させることができる。
【0042】
(カチオン性帯電CB)
カチオン性に帯電したカーボンブラックとしては、カーボンブラックの表面に例えば下記に示す第4級アンモニウム基から選ばれる少なくとも1つを結合させたものが挙げられる。
【0043】
【化1】

【0044】
上記式中、Rは炭素原子数1〜12のアルキル基、置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換のナフチル基を表わす。
【0045】
なお上記のカチオン性基にはカウンターイオンとして例えばNOやCHCOOが存在する。
【0046】
上記したような親水性基が結合されてカチオン性に帯電している自己分散型カーボンブラックを製造する方法としては、例えば、下記に示す構造のN−エチルピリジル基を結合させる方法を例にとって説明すると、
【0047】
【化2】

【0048】
カーボンブラックを3−アミノ−N−エチルピリジニウムブロマイドで処理する方法が挙げられる。この様にカーボンブラック表面への親水性基の導入によってアニオン性若しくはカチオン性に帯電させたカーボンブラックは、イオンの反発によって優れた水分散性を有するため、水性インク中に含有させた場合にも分散剤等を添加しなくても安定した分散状態を維持する。
【0049】
ところで上記した様な種々の親水性基は、カーボンブラックの表面に直接結合させてもよい。或いは他の原子団をカーボンブラック表面と該親水性基との間に介在させ、該親水性基をカーボンブラック表面に間接的に結合させても良い。ここで他の原子団の具体例としては例えば炭素原子数1〜12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、置換もしくは未置換のフェニレン基、置換もしくは未置換のナフチレン基が挙げられる。ここでフェニレン基およびナフチレン基の置換基としては例えば炭素数1〜6の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。また他の原子団と親水性基の組合せの具体例としては、例えば−CCOOM、−Ph−SOM、−Ph−COOM等(但し、Phはフェニル基を表す)が挙げられる。
【0050】
ところで本実施態様において上記した自己分散型カーボンブラックの中から2種若しくはそれ以上を適宜選択したインクの色材に用いてもよい。またインク中の自己分散型カーボンブラックの添加量としてはインク全重量に対して、0.1〜15重量%、特には1〜10重量%の範囲とすることが好ましい。この範囲とすることで自己分散型カーボンブラックはインク中で十分な分散状態を維持することができる。更にインクの色調の調製等を目的として、自己分散型カーボンブラックに加えて染料を色材として添加してもよい。
【0051】
(自己分散型CBと塩との相性)
上記した種々の自己分散型カーボンブラックのうち、カーボンブラックの表面の親水性基として例えば−COO(M2)、−SO(M2)、−POH(M2)、−PO(M2)を用いる場合、M2としてアンモニウムや有機アンモニウムが好適に用い得ることは上記した通りであるが、このときに組合せる塩としては、M1とM2と一致させることが好ましい。即ち本発明者らは自己分散型カーボンブラックを含むインクに対して塩を加えることの効果の検討過程において、自己分散型カーボンブラックの親水性基のM2(カウンターイオン)とM1とを同一としたときに、インクの安定性が特に向上するという知見を得た。M1とM2とを揃えることでこのような効果が得られる理由は明らかではないが、インク中において、自己分散型カーボンブラックの親水性基のカウンターイオンと塩との間で塩交換が生じないため、自己分散型カーボンブラックの分散安定性が安定して維持されるためと推測される。
【0052】
そしてM1とM2との双方をアンモニウム或いは有機アンモニウムとした場合にはインク特性の安定化効果に加えて、記録画像の耐水性のより一層の向上を図ることができる。またこのときインク中の塩としてPh−COO(NH4)(安息香酸アンモニウム)を用いると、インクジェット記録を一時休止させたあとのヘッドノズルからのインクの再吐出性においても極めて優れた結果を得ることができる。
【0053】
(水性媒体)
本実施態様にかかるインクに用いられる水性媒体の例としては例えば水、或いは水と水溶性有機溶剤との混合溶媒が挙げられる。水溶性有機溶媒としては、インクの乾燥防止効果を有するものが特に好ましい。具体的には例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の低級アルキルエーテルアセテート;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、ジエチレングルコールメチル(またはエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の多価アルコール;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。上記のごとき水溶性有機溶剤は、単独でもあるいは混合物としても使用することができる。
【0054】
また、水としては脱イオン水を用いることが望ましい。
【0055】
本実施態様に係わるインク中に含有される水溶性有機溶剤の含有量は特に限定されないが、インク全重量に対して3〜50wt%の範囲が好適である。またインクに含有される水の含有量はインク全重量に対して好ましくは50〜95重量%の範囲である。
【0056】
以上説明してきた第1の態様にかかるインクは、印刷品質の記録媒体特性への依存性を極めて低減させることができるという優れた効果を奏するものである。そして本態様のインクの優れた点はこればかりではない。即ち、本態様にかかるインク(a)と、対照として塩を含まない以外は同一の組成のインク(b)とに関して、顔料濃度と各々のインクによる画像の光学濃度との関係をプロットしたグラフを図13に示す。図13から分かる様に、いずれのインクによる画像の光学濃度も最終的には同程度の値に到達するが、本態様のインクは、対照のインクよりも低い顔料濃度で飽和値に到達するとの知見を得た。即ち塩の添加によって、画像の光学濃度に変化を与えることなく、インク中の顔料濃度を減らすことが可能となるのである。具体的には例えば塩として安息香酸アンモニウムを1wt%程度含ませた場合、自己分散型カーボンブラックの濃度を約4wt%とすることで、普通紙上の印刷の光学濃度は例えば1.4程度にまで達し、カーボンブラック濃度をこれ以上増しても光学濃度はあまり変化しない。これに対して塩を含まないインクは自己分散型カーボンブラック濃度4wt%とした場合には普通紙上の印刷の光学濃度は1.32程度であり、カーボンブラック濃度7wt%とした場合で光学濃度1.35程度となり、そして8wt%とした場合でも1.35程度であって、この値がほぼ飽和値となる。この様な光学濃度の飽和値(1.4と1.35)の差は数値上はわずかに0.05であっても、各々の印刷物を対比するとその差を目視にて明らかに認識することができるものである。この様に塩を加えたインクは、塩を含まないインクと比較して低いカーボンブラック濃度でも高い光学濃度の印刷を行うことができ、且つ光学濃度の飽和値自体も高いという好ましい結果をもたらすものである。
【0057】
またこのことは次のようなメリットももたらす。即ち塩を含むインクは上記した様に印刷物の光学濃度に対するカーボンブラック濃度のマージンが広いという特性を有する。そのため、例えば吸収体を有するインクタンクにこのインクを充填し、そのインクタンクを長期間、同一の姿勢で放置(例えば6ヶ月間ノズルを上にして放置)した後にそのインクタンクを用いて印字を行ったときに、印字初期に得られる印刷物と、インクタンク内のインクを使い切る直前に得られる印刷との間で目視で確認できるような光学濃度の差を生じさせることを極めて有効に防ぐことができる。
【0058】
上記第1の態様のインクは、塩を添加したことの更に他の効果として、間欠吐出性に優れているという点が挙げられる。間欠吐出性とは記録ヘッドの所定のノズルに着目し、そのノズルからインクを吐出し、その後インクの予備吐出やノズル内のインクの吸引を行う事無しに所定の時間放置し、再びそのノズルからインクを吐出したときに、再吐出の最初から正常にインクが吐出するか否かを評価するものである。
【0059】
(第2の実施態様)
本発明に係わるインクの第2の実施態様として、例えば上記に第1の実施態様として説明したインクに、更に安定化剤を添加した態様を挙げる事ができる。ここで安定化剤としては例えば界面活性剤を挙げることができる。また界面活性剤としてはアニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤およびカチオン界面活性剤から選ばれる一つを用いることが可能である。そしてインク中の安定化剤の含有量は、例えばインク全重量を基準として0.005〜0.4wt%、特には0.0〜0.2wt%とした場合、インクの保存安定性をより向上させることができると共に、インクの吐出特性等に影響を与えることが殆どなく、またこの技術を第1の実施態様にかかるインク、特にM1とM2との双方を、例えばアンモニウムに揃えることによって得られる効果に影響を与えることは殆どない。
【0060】
(アニオン界面活性剤)
アニオン界面活性剤としては、例えば高級脂肪酸塩、高級アルキルジカルボン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸の塩(Na、K、Li、Ca等)、ホルマリン重縮合物、高級脂肪酸とアミノ酸の縮合物、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフテン酸塩等、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルメチルタウリン、アルキルエーテル硫酸塩、第二級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニエーテル硫酸塩、モノグリサルフェート、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0061】
(カチオン界面活性剤)
カチオン界面活性剤としては、例えば脂肪族アミン、第4アンモニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩等が挙げられる。
【0062】
(ノニオン界面活性剤)
ノニオン界面活性剤としては、例えばフッ素系、シリコン系、アクリル酸共重合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、アルキルフェノールホルマリン縮合物の酸化エチレン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルポリオキシエチレン化合物の脂肪族エステル型、ポリエチレンオキサイド縮合型ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミンアルキルアミンオキサイド等が挙げられる。そして上記した種々の界面活性剤の中でもイオン性基を有するものが好適に用いられる。またこれらの界面活性剤はカーボンの表面の親水性基がアニオンの物はアニオン或いはノニオン型、該親水性基がカチオンのものはカチオンあるいはノニオン型を用いることが好ましい。
【0063】
(ドデシルベンゼンスルホン酸塩について)
ところで本実施態様において、自己分散型カーボンブラックとして表面に直接或いは間接的に、−COO(M2)、−SO(M2)、−POH(M2)、−PO(M2)、(但し、式中のM2は水素原子、アルカリ金属、アンモニムまたは有機アンモニウムを表わす。)等の親水性基を導入してアニオン性に帯電せしめたものを用い、更に塩を共存させたインクに、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)を添加した場合、驚くべきことにこのインクのpH変化に伴うインク特性の変化を極めて緩やかにすることができる。即ち第1の実施態様に包含されるところのアニオン性に帯電せしめた自己分散型カーボンブラックを塩と共存させたインクの、pH変化に伴うインクの粘度変化の概略の関係を図10の(a)に示す。この様に第1の実施態様にかかるインクはpH変化に対するインク特性の変化がやや大きい傾向にある。しかしかかるインクにドデシルベンゼンスルホン酸塩を添加した場合、図10の(b)に示した様にpH変化に対するインク特性の変化を極めて緩やかなものとすることができる。ここでドデシルベンゼンスルホン酸塩のインク中の含有量としては、インク全重量を基準として0.02〜0.2wt%が好ましい。
【0064】
(第3の実施態様)
次に本発明の第3の実施態様として、上記第1または第2の実施態様にかかるインクのpHを9〜12、特には9〜11に調製したインクを挙げることができる。即ち本発明の第1の実施態様にかかるインクが、pH変化に対するインク特性の変動がやや大きいこと、そしてインクを長期間保存した場合にpHが小さくなる方向に若干変化することがあるとの知見を本発明者らが得ていることは前記した通りである。しかしインクのpHが上記した範囲内にあればインク特性の経時的変動は殆ど無視し得る程度のものである。
【0065】
上記実施態様1や2に記載したインクのpHは特に調整しない場合、通常7〜8程度である。かかるインクのpHは例えば水酸化物、具体的には水酸化カリウム、アンモニア水や水酸化リチウム等を用いて所望のpHに調整することができる。ところでインクを長期保存した場合、インクの組成や保存条件によっても異なるが、pHが1程度変化、具体的には低下する場合があり、この様な長期保存後のインクのpHを上記範囲内に留めておくためには、初期のインクpHを例えばpH9〜12の範囲内で若干高めに調整しておくことが好ましい。
【0066】
ここで上記した第2の実施態様にかかるインク、即ち安定化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸塩を含むインクのpHを上記した範囲内に調製したインクは、特にインクジェット記録用のインクとして好適に用いる事ができる。何故ならドデシルベンゼンスルホン酸塩を含ませたことによって得られるインクのpH変動に対するインク特性の変動の緩和効果により上記したpH範囲内では、インク特性の変化はますます小さなものとなる。またドデシルベンゼンスルホン酸塩も、上記pH範囲内でのインク特性の変動を抑えられるように添加すれば良いため、ドデシルベンゼンスルホン酸塩の添加量を抑えられるという効果も奏するものである。
【0067】
(第4の実施態様)
本発明の第4の実施態様にかかるインクとして前記第1〜第3の実施態様にかかるインクの何れかに対して酸化防止剤を添加したインクを挙げることができる。かかる酸化防止剤の添加によってインクの保存安定性をより一層向上させることができる。
【0068】
酸化防止剤としては例えば亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸、没食子酸、2−ナフトールタンニン酸、カテコール、o−フェニレンジアミン、シュウ酸等が挙げられ、これから1つ以上の化合物をインクに添加すれば良い。
【0069】
これらの化合物をインクに添加した場合の作用は明らかではないが、例えば水溶性有機溶媒(例えばエチレングリコール等)の経時的な酸化は、顔料の分散状態に影響を与えることが考えられ、上記の化合物は上記化合物の酸化を有効に防止し得る為、インクの長期保存性が安定するものと推測される。
【0070】
ここで酸化防止剤の添加量としては、インク全重量に対して0.02〜10wt%、特には0.1〜2wt%とした場合、インク特性を殆ど変化させることなしに保存安定性の向上を図ることが可能である。
【0071】
(第5の実施態様)
本発明の第5の実施態様にかかるインクとして、前記第1〜第4の実施態様にかかるインクの何れかに対して水溶性高分子化合物を添加したインクを挙げることができる。かかる水溶性高分子化合物を添加することによって記録媒体表面にこのインクを付着せしめて画像を記録した後の、該画像の耐擦過性を向上させることができる。
【0072】
(水溶性高分子化合物)
水溶性高分子化合物としては、例えばスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、アルギン酸、ポリアクリル酸或いはこれらの塩、および誘導体等が挙げられる。
【0073】
そしてここで用いる水溶性高分子化合物の重量平均分子量は例えば1000〜5000程度とすることが好ましく、またこれらの水溶性高分子化合物の含有量としては例えばインク全重量に対して0.02〜2wt%、特には0.05〜1wt%とすることが好ましい。即ち水溶性高分子化合物の分子量やインク中の含有量をこのような範囲とした場合、水溶性高分子化合物の効果(記録画像の耐擦過性の向上等)を確保しつつ、水溶性高分子化合物の添加に伴うインク粘度の変化や、インク吐出特性の変化等を実質的に無視し得る程度に抑えることができる。
【0074】
(インク特性;インクジェット吐出特性、記録媒体への浸透性について)
上記各実施態様にかかるインクは、筆記具用インクやインクジェット記録用インクに用いることができる。インクジェット記録方法としては、インクに力学的エネルギーを作用させ、液滴を吐出する記録方法、およびインクに熱エネルギーを加えてインクの発泡により液滴を吐出する記録方法があり、それらの記録方法に本発明のインクは特に好適である。ところで上記各実施態様にかかるインクをインクジェット記録用に用いる場合には、該インクはインクジェットヘッドから吐出可能である特性を有することが好ましい。インクジェットヘッドからの吐出性という観点からは、該液体の特性としては、例えばその粘度を1〜15cps、表面張力が25dyn/cm以上、特には粘度を1〜5cps、表面張力が25〜50dyn/cmとすることが好ましい。
【0075】
またインクの記録媒体への浸透性を表わす尺度として、ブリストウ法によって求められるKa値がある。即ち、インクの浸透性を1m当たりのインク量Vで表わすと、インク滴を吐出してから所定時間tが経過した後におけるインクの記録媒体への浸透量V(ml/m=μm)は、下記に示すブリストウの式によって示される。
V=Vr+Ka(t−tw)1/2
ここでインク滴が記録媒体表面に付着した直後には、インクは記録媒体表面の凹凸部分(記録媒体の表面の荒さの部分)において吸収されるのが殆どで、記録媒体内部へは殆ど浸透していない。その間の時間がコンタクトタイム(tw)、コンタクトタイムに記録媒体の凹凸部に吸収されたインク量がVrである。そしてインクが付着した後、コンタクトタイムを越えると、該コンタクトタイムを越えた時間、即ち(t−tw)の1/2乗べきに比例した分だけ記録媒体への浸透量が増加する。Kaはこの増加分の比例係数であり、浸透速度に応じた値を示す。そしてKa値はブリストウ法よる液体の動的浸透性試験装置(例えば商品名:動的浸透性試験装置S;東洋精機製作所製等)等を用いて測定可能である。そして前記した本発明の各実施態様にかかるインクにおいて、このKa値を1.5未満とすることは記録画像品質をより一層向上させるうえで好ましく、更に好ましくは0.2以上1.5未満である。例えば第1の実施態様にかかる、自己分散型のカーボンブラックと塩とを含むインクが、記録媒体上で固液分離が促進され、画像品質の向上に大きく貢献することは前記したとおりであるが、Ka値が1.5未満である場合には、インクの記録媒体への浸透過程の、より早い段階で固液分離が起こるため、インク中に添加した塩の効果との相乗作用により、フェザリングが極めて少ない高品質な画像を種々の記録媒体に形成することができると思われる。なお本発明におけるブリストウ法によるKa値は、普通紙(例えばキヤノン株式会社製の、電子写真方式を用いた複写機やページプリンタ(レーザビームプリンタ)やインクジェット記録方式を用いたプリンタ用として用いられるPB紙や電子写真方式を用いた複写機用の紙であるPPC用紙等)を記録媒体とし用いて測定した値である。また測定環境としては通常オフィス環境、例えば温度20〜25℃、湿度40〜60%を想定している。
【0076】
そして上記各実施態様に係るインクに上記したような特性を担持させられる好ましい水性媒体の組成としては、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、チオジグリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、イソプロピルアルコールおよびアセチレンアルコールを含むものとすることが好ましい。尚アセチレンアルコールとしては、例えば下記化学式で示されるアセチレンアルコールを挙げることができる。
【0077】
【化3】

【0078】
特に上記した様にKa値を1.5未満とする場合には、アセチレノール等の界面活性剤や浸透性溶剤等の適宜所定量添加することによって達成できる。
【0079】
更に上記の成分のほかに必要に応じて所望の物性値を持つインクとするために、界面活性剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤等を添加することができ、さらに、市販の水溶性染料などを添加しても良い。
【0080】
(インクジェット記録技術)
次に本実施態様の各々のインクを好適に用い得るインクジェット記録技術について説明する。
【0081】
インクジェット記録装置として、インクの吐出に熱エネルギーを利用する装置の主要部であるヘッド構成例を図1および図2に示す。
【0082】
図1は、インク流路に沿ったヘッド13の断面図であり、図2は図1のA−B線での切断面図である。ヘッド13はインクを通す流路(ノズル)14を有するガラス、セラミック、シリコンまたはプラスチック板等と発熱素子基板15とを接着して得られる。発熱素子基板15は酸化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン等で形成される保護層16、アルミニウム、金、アルミニウム−銅合金等で形成される電極17−1、17−2、HfB2、TaN、TaAl等の高融点材料から形成される発熱抵抗体層18、熱酸化シリコン、酸化アルミニウム等で形成される蓄熱層19、シリコン、アルミニウム、窒化アルミニウム等の放熱性の良い材料で形成される基板20より成り立っている。
【0083】
上記ヘッドの電極17−1および17−2にパルス状の電気信号が印加されると、発熱素子基板15のnで示される領域が急速に発熱し、この表面に接しているインクに気泡が発生し、その発生する圧力でメニスカス23が突出し、インクがヘッドのノズル14を通して吐出し、吐出オリフィス22よりインク小滴24となり、被記録剤25に向かって飛翔する。
【0084】
図3には図1に示したヘッドを多数並べたマルチヘッドの外観図を示す。このマルチヘッドはマルチノズル26を有するガラス板27と、図1に説明したものと同じ様な発熱ヘッド28を接着して作られている。
【0085】
(インクジェット記録装置)
図4に、このヘッドを組み込んだインクジェット記録装置の一例を示す。図4において、61はワイピング部材としてのブレードであり、その一端はブレード保持部材によって保持固定されており、カンチレバーの形態をなす。ブレード61は記録ヘッド65による記録領域に隣接した位置に配置され、また、本例の場合、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。
【0086】
62は記録ヘッド65の突出口面のキャップであり、ブレード61に隣接するホームポジションに配置され、記録ヘッド65の移動方向と垂直な方向に移動して、インク突出口面と当接し、キャッピングを行う構成を備える。更に、63はブレード61に隣接して設けられるインク吸収体であり、ブレード61と同様、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。上記ブレード61、キャップ62およびインク吸収体63によって吐出回復部64が構成され、ブレード61およびインク吸収体63によって吐出口面に水分、塵埃等の除去が行われる。
【0087】
65は、吐出エネルギー発生手段を有し、吐出口を配した吐出口面に対向する被記録材にインクを吐出して記録を行う記録ヘッド、66は記録ヘッド65を搭載して記録ヘッド65の移動を行うためのキャリッジである。キャリッジ66はガイド軸67と摺動可能に系合し、キャリッジ66の一部はモーター68によって駆動されるベルト69と接続(不図示)している。これによりキャリッジ66はガイド軸67に沿った移動が可能となり、記録ヘッド65による記録領域およびその隣接した領域の移動が可能となる。51は被記録材を挿入するための紙給部、52は不図示のモーターにより駆動される紙送りローラーである。
【0088】
これらの構成により記録ヘッドの65吐出口面と対向する位置へ被記録材が給紙され、記録が進行につれて排紙ローラー53を配した排紙部へ排紙される。以上の構成において記録ヘッド65が記録終了してホームポジションへ戻る際、吐出回復部64のキャップ62は記録ヘッド65の移動経路から退避しているが、ブレード61は移動経路中に突出している。その結果、記録ヘッド65の吐出口がワイピングされる。尚、キャップ62が記録ヘッド65の吐出面に当接してキャッピングして行う場合、キャップ62は記録ヘッドの移動経路中に突出するように移動する。記録ヘッド65がホームポジションから記録開始位置へ移動する場合、キャップ62およびブレード61は上記したワイピングの時の位置と同一の位置にある。この結果、この移動においても記録ヘッド65の吐出口面はワイピングされる。
【0089】
上述の記録ヘッドのホームポジションへの移動は、記録終了時や吐出回復時ばかりでなく、記録ヘッドが記録のために記録領域を移動する間に所定の間隔で記録領域に隣接したホームポジションへ移動し、この移動に伴って上記ワイピングが行われる。
【0090】
(インクカートリッジ)
図5は、記録ヘッドにインク供給部材、例えば、チューブを介して供給されるインクを収容したインクカートリッジ45の一例を示す図である。ここで40は供給用インクを収納したインク収容部、例えば、インク袋であり、その先端にはゴム製の栓42が設けられている。この栓42に針(不図示)を挿入することにより、インク袋40中のインクをヘッドに供給可能にする。44は廃インクを受容するインク吸収体である。インク収容部としてはインクとの接液面がポリオレフィン、特にポリエチレンで形成されているものが好ましい。
【0091】
(記録ユニット)
本発明で使用されるインクジェット記録装置としては、上述の様にヘッドとインクカートリッジとが別体になったものに限らず、図6に示すようなそれらが一体になったものにも好適に用いられる。図6において、70は記録ユニットであり、この中にはインクを収容したインク収容部、例えば、インク吸収体が収納されており、かかるインク吸収体中のインクが複数オリフィスを有するヘッド部71からインク滴として吐出される構成になっている。インク吸収体の材料としてはポリウレタンを用いることが本発明にとって好ましい。
【0092】
また、インク吸収体を用いず、インク収容部が内部にバネ等を仕込んだインク袋であるような構造でもよい。72はカートリッジ内部を大気に連津させるための大気連通口である。この記録ユニット70は図4に示す記録ヘッド65に換えて用いられるものであって、キャリッジ66に対して着脱自在になっている。
【0093】
次に、第二の力学的エネルギーを利用したインクジェット記録装置の形態として、複数のノズルを有するノズル形成基板と、ノズルに対向して配置される圧電材料と導電材料からなる圧力発生素子と、この圧力発生素子の周囲を満たすインクを備え、印加電圧により圧力発生素子を変位させ、インクの小液滴をノズルから吐出させるオンデマンドインクジェット記録ヘッドを挙げることができる。その記録装置の主要部である記録ヘッドの構成例を図7に示す。
【0094】
ヘッドは、インク室(不図示)に連通したインク流路80と、所望の体積のインク滴を吐出するためのオリフィスプレート81と、インクに直接圧力を作用させる振動板82と、この振動板82に接合され、電気信号により変位する圧電素子83と、オリフィスプレート81、振動板等を支持固定するための基板84とから構成されている。
【0095】
図7において、インク流路80は、感光性樹脂等で形成され、オリフィスプレート81は、ステンレス、ニッケル等の金属を電鋳やプレス加工による穴あけ等により吐出口85が形成され、振動板82はステンレス、ニッケル、チタン等の金属フィルムおよび高弾性樹脂フィルム等で形成され、圧電素子83は、チタン酸バリウム、PZT等の誘電体材料で形成される。以上のような構成の記録ヘッドは、圧電素子83にパルス状の電圧を与え、ひずみ応力を発生させ、そのエネルギーが圧電素子83に接合された振動板を変形させ、インク流路80内のインクを垂直に加圧しインク滴(不図示)をオリフィスプレートの吐出口85より吐出して記録を行うように動作する。この様な記録ヘッドは図4に示したものと同様な記録装置に組み込んで使用される。記録装置の細部の動作は先述と同様に行うもので差しつかえない。
【0096】
(インクセット)
ところで前記した第1〜第5の各実施態様にかかるインクは、黒色インクを構成するが、このインクはイエロー用の色材を含むカラーインク、マゼンタ用の色材を含むカラーインク、シアン用の色材を含むカラーインク、レッド用の色材を含むカラーインク、ブルー用の色材を含むカラーインクおよびグリーン用の色材を含むカラーインクから選ばれる少なくとも1つのカラーインクと組合せることによってカラー画像の形成に好適に用い得るインクセットを提供することができる。そしてこのようなインクセットを用いて黒色画像部およびカラー画像部と隣接するような記録を行った場合、ブリーディングの発生を極めて有効に抑えることができる。なおこのようなインクセットがブリーディングを有効に抑制できる理由は明らかでないが、黒色のインクに自己分散型カーボンブラックおよび塩を共存させたことの効果として、該ブラックインクが記録媒体に付着した後の固液分離とそれに引き続く着色材の固化が速やかに起こる結果、カラー画像の境界部に於て黒色インクがカラーインク側に滲み出にくくなっているためと考えられる。
【0097】
(カラーインクについて)
ここで上記インクセットに用いることのできるカラーインクの色材としては公知の染料や顔料を用いることができる。染料としては例えば酸性染料、直接染料等を用いることができる。例えばアニオン性染料としては既存のものでも、新規に合成したものでも適度な色調と濃度を有するものであれば、大抵のものを用いることができる、またこれらのうちの何れかを混合して用いることも可能である。アニオン性染料の具体例を以下に挙げる。
【0098】
(イエロー用の色材)
CIダイレクトイエロー8、11、12、27、28、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、100、110
CIアシッドイエロー1、3、7、11、17、23、25、29、36、38、40、42、44、76、98、99
CIリィアクティブイエロー2、3、17、25、37、42、
CIフードイエロー3
(レッド用の色材)
CIダイレクトレッド2、4、9、11、20、23、24、31、39、46、62、75、79、80、83、89、95、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229
CIアシッドレッド6、8、9、13、14、18、26、27、32、35、42、51、52、80、83、87、89、92、106、114、115、133、134、145、158、198、249、265、289
CIリィアクティブレッド7、12、13、15、17、20、23、24、31、42、45、46、59
CIフードレッド87、92、94
(ブルー用の色材)
CIダイレクトブルー1、15、22、25、41、76、77、80、86、90、98、106、108、120、158、163、168、199、226
CIアシッドブルー1、7、9、15、22、23、25、29、40、43、59、62、74、78、80、90、100、102、104、117、127、138、158、161
CIリィアクティブブルー4、5、7、13、14、15、18、19、21、26、27、29、32、38、40、44、100
(ブラック用色材)
CIアシッドブラック2、4、8、51、52、110、115、156
CIフードブラック1、2
【0099】
(溶剤)
上記したようなカラーインク用の色材を含むインク溶媒または分散媒としては例えば水、或いは水と水溶性有機溶剤との混合溶媒が挙げられる。そして水溶性有機溶剤としては前記第1の実施態様にて記載したのと同様のものが挙げられる。また該カラーインクをインクジェット法(例えばバブルジェット(登録商標)法等)で記録媒体に付着せしめる場合には、前述したように優れたインクジェット吐出特性を有する様にインクが所望の粘度、表面張力を有する様に調製することが好ましい。
【0100】
(色材の含有量)
ここで各カラーインク中の色材の含有量は、例えばインクジェット記録に用いる場合には該インクが優れたインクジェット吐出特性を備え、また所望の色調や濃度を有するように適宜選択すればよいが、目安としては例えばインク全重量に対して3〜50wt%の範囲が好ましい。またインクに含有される水の量はインク全重量に対して50〜95wt%の範囲が好ましい。
【0101】
(カラーインクの浸透性)
上記したようなカラーインクに関して、Ka値を例えば5以上のインクとすることは記録媒体上に高品質なカラー画像を形成することができ、好ましい。即ちこのようなKa値を有するインクは記録媒体への浸透性が高いため、例えばイエロー、マゼンタおよびシアンから選ばれる少なくとも2つの色の画像を隣接して記録するような場合でも隣接する画像間で色のにじみ(ブリーディング)を抑えることができ、またこれらのインクを重ね打ちして2次色の画像を形成する場合でも各々のインクの浸透性が高いため、隣接する異なる色の画像との間でブリーディングを有効に抑えることができる。カラーインクのKa値をこのような値に調製する方法としては、例えば界面活性剤の添加、グリコールエーテル等の浸透性溶剤の添加等の従来公知の方法が適用できる、もちろん添加量は適宜選択すればよい。
【0102】
(インクセットを用いた記録装置、記録方法)
次に上記したインクセットを用いてカラー画像を記録する場合には、例えば前記図3に示した記録ヘッドを4つキャリッジ上に並べた記録装置を用いることができる。図9はその一実施例であり、91、92、93および94は各々ブラック、シアン、マゼンタ、イエローのインクを吐出するための記録ユニットである。該記録ユニットは前記した記録装置のキャリッジ上に配置され、記録信号に応じて各色のインクを吐出する。また図9では記録ユニットを4つ使用した例を示したが、これに限定されず例えば図8に示した様に1つの記録ヘッドで上記の4色のインクを各々含むインクカートリッジ86〜89から供給される各色のインクを各々個別に吐出させることができる様にインク流路を分けて構成した記録ヘッド95に取り付けて記録を行う態様も挙げられる。
【0103】
以下、実施例および比較例を用いてさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、下記実施例により限定されるものではない。尚以下の記載で、部、%とあるものは特に断わらない限り重量基準である。
【0104】
実験例I−(1)(第1の実施態様にかかるインクの評価)
はじめに顔料分散体1〜4の調製を行った。
【0105】
顔料分散体1
表面積が230m/gでDBP吸油量が70ml/100gのカーボンブラック10グラムとp−アミノ−N−安息香酸3.41gを水72gによく混合した後、これに硝酸1.62gを滴下して、70℃で撹拌した。ここにさらに数分後、5gの水に1.07gの亜硝酸ナトリウムを溶かした溶液を加え、さらに1時間撹拌した。得られたスラリーを濾紙(商品名:東洋濾紙No.2;アドバンティス社製)で濾過し、濾取した顔料粒子を十分に水洗し、90℃のオーブンで乾燥させ、さらに、この顔料に水を足して顔料濃度10重量%の顔料水溶液を作製した。以上の方法によりカーボンブラックの表面に下記化学式に示される基を導入した。
【0106】
【化4】

【0107】
顔料分散体2
5.3gの水に5gの濃塩酸を溶かした溶液5℃においてアントラニル酸1.58gを加えた。これにアイスバスで撹拌することにより常に10℃以下に保たれた状態で、5℃の8.7gの水に1.78gの亜硝酸ナトリウムを加えた溶液を加えた。これに更に15分撹拌後、表面積が320m/gでDBP吸油量が120ml/100gのカーボンブラック20gを混合した状態のまま加え、更に15分撹拌した。得られたスラリーを濾紙(商品名:東洋濾紙No.2;アドバンティス社製)で濾紙し、濾紙した顔料粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させ、更にこの顔料に水を足して顔料濃度10重量%の顔料水溶液を作製した。以上の方法によりカーボンブラックの表面に下記化学式に示す基を導入した。
【0108】
【化5】

【0109】
顔料分散体3
上記で調製した顔料分散体2に、pHが4.5程度となるように硫酸を添加して、カーボンブラックの表面に結合しているカルボキシル基をH型とした。その後遠心分離にかけ(5000rpm、5分間)、沈殿部分を取り出し純水に再度分散させた。この遠心分離処理を3回繰り返すことでカーボンを水洗した。更にこの分散液にNHOHを添加してpH8程度になる様に調整した。以上の処理によってカーボン表面に結合してなるカルボキシル基のカウンターイオンをNaからNHへと置換した。そして係る自己分散型カーボンブラックを含む顔料分散体を顔料分散体3とした。
【0110】
顔料分散体4
以下の方法によって表面に−COONa基を導入したカーボンブラックを調製
した。
【0111】
酸性カーボンブラック(商品名:MA−77(pH3.0);三菱化成(株)社製)300gを水1000mlによく混合した後、これに次亜塩素酸ソーダ(有効塩素濃度12%)450gを滴下して、100〜105℃で10時間撹拌した。得られたスラリーを濾紙(商品名:東洋濾紙No.2:アドバンティス社製)を用いて濾過し、濾取した顔料粒子を十分に水洗した。この顔料ウエットケーキを水3000mlに再分散し、電導度0.2μsまで逆浸透膜で脱塩した。更にこの顔料分散液(pH=8〜10)を顔料濃度10重量%となるまで濃縮し、表面に−COONa基を導入したカーボンブラックを得た。
【0112】
次に上記の各顔料分散体を用いてブラックインク1〜4を下記の方法にて調整した。
【0113】
(ブラックインク1)
以下の成分を混合し、十分撹拌して溶解後、ポアサイズ3μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過してブラックインクを調製した。
・顔料分散体1:30部
・硫酸カリウム:1部
・トリメチロールプロパン:6部
・グリセリン:6部
・ジエチレングリコール:6部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:0.2部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・水:50.8部
(ブラックインク2)
以下の成分を用いて、ブラックインク1と同様にしてブラックインクを調製した。
・顔料分散体2:30部
・塩化カリウム:0.5部
・トリメチロールプロパン:6部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:0.15部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・グリセリン:5部
・エチレングリコール:5部
・水:53.35部
(ブラックインク3)
以下の成分を用いてブラックインク1と同様にしてブラックインクを調製した。
・顔料分散体3:30部
・安息香酸アンモニウム:1部
・トリメチロールプロパン:6部
・アセチレングリコールオキサイド付加物:0.15部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・グリセリン:5部
・ジエチレングリコール:5部
・水:52.85部
(ブラックインク4)
以下の成分を混合し、十分撹拌して溶解後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過してブラックインクを調製した。
・顔料分散体4:30部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:0.15部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・グリセリン:5部
・ジエチレングリコール:5部
・トリメチロールプロパン:6部
・水:53.85部
この様にして得たブラックインク1〜4の主な特徴を下記第1表に示す。
【0114】
【表1】

【0115】
上記のブラックインク1〜4の各々を、記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させるオンデンマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置(商品名:BJC−4000;キヤノン(株)社製)を用いて下記評価を行った。その結果を下記第2表に示す。
【0116】
1)文字品位
上記各インクを上記インクジェット記録装置を用い、インクの浸透性の異なる下記の5種類のコピー用普通紙A,B,C,D,Eに文字印字を行い、その時の文字の滲みを下記の基準で評価した。
A:キヤノン(株)社製PPC用紙NSK
B:キヤノン(株)社製PPC用紙NDK
C:ゼロックス(株)社製PPC用紙4024
D:フォックスリバー社製PPC用紙プローバーボンド
E:ノイジドラ社製キヤノン用PPC用紙
○;5紙とも滲みがほとんどない。
△;多少滲む紙がみられる。
×;5紙とも滲む。
【0117】
2)印字濃度
上記各インクを上記インクジェット記録装置を用い、コピー用普通紙A,B,C,D,Eに印字を行いその時の印字濃度を、マクベス製印字濃度測定器を用い測定し、下記の基準で評価した。
○;コピー用普通紙A,B,C,D,Eの印字濃度の差が最高と最低で0.1未満。
×;コピー用普通紙A,B,C,D,Eの印字濃度の差が最高と最低で0.1以上。
【0118】
3)耐水性
上記各インクを上記インクジェット記録装置を用い、コピー用普通紙A,B,C,D,Eの各々に上記1)と同様にして印字を行い、印字から所定の時間経過した後に、印字した記録媒体を流水につけ地汚れの状態を目視にて観察し、その結果を下記の基準で評価した。
◎:コピー用普通紙A、B、C、D、E共に印字後1時間以内で地汚れが目立たなくなる。
○:コピー用普通紙A、B、C、D、E共に印字後1日以内に地汚れが目立たなくなる。
×:印字から1日以上経過した後にも地汚れの目立つ紙がある。
【0119】
4)間欠吐出性
上記各インクを上記インクジェット記録装置を用い、コピー用普通紙Aに縦線印字し、その後ノズルからのインクの予備吐出、吸引等を行うことなく、30秒後に再度縦線を印字し、得られた2本の縦線の差異を下記の基準で判定した。
◎:両者の差異がルーペで見ても分からない。
○:両者の差異が目視では分からない。
△:両者の差異が目視で分かるものの、実用上は問題とはならない。
【0120】
【表2】

【0121】
上記第2表の結果から分かる様に、本発明の第1の実施態様にかかるインクは、例えばインクジェット記録方法によって記録を行った場合の文字品位および印字濃度が高く、これらの結果の紙種依存性が少ない。
【0122】
また自己分散型カーボンブラックの親水性基のカウンターイオンをアンモニウム塩とするとともにインク中の塩として安息香酸アンモニウムを用いたブラックインク3は耐水性において特に優れた効果を示した。
【0123】
実験例I−(2)
第1の実施態様にかかるインクを用いたインクセットの評価
(ブラックインク1)
上記実験例I−(1)のブラックインク1と同様にして調製したブラックインクを用意した。
【0124】
(ブラックインク2)
上記実験例I−(1)のブラックインク2と同様にして調製したブラックインクを用意した。
【0125】
(ブラックインク3)
上記実験例I−(1)のブラックインク3と同様にして調製したブラックインクを用意した。
【0126】
(ブラックインク5)
以下の成分を用いてブラックインク1と同様にしてブラックインク5を調製した。
・上記実験例I−(1)で調製した顔料分散体3:30部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:0.15部
(商品名:アセチレノールEH:川研ファインケミカル(株)社製)
・トリメチロールプロパン:6部
・グリセリン:5部
・ジエチレングリコール:5部
・水:53.85部
(ブラックインク6)
顔料分散体5の調製
以下の方法で顔料分散体5を作製した。
【0127】
まず以下の成分を混合し、ウォーターバスで70℃に加温し、樹脂分を完全に溶解させた。
・スチレン−アクリル酸−アクリル酸ブチル共重合体:3部
(酸価60、重量平均分子量13000)
・1,3−ビス−(β−ヒドロエキシエチル)尿素:0.5
・イオン交換水:72.5部
・ジエチレングリコール:5部
次いで、上記混合物にカーボンブラック(商品名:カラーブラック(Color Black)S170;テグサ社製)14部、イソプロピルアルコール5部を加え、30分間プレミキシングを行った後、下記の条件で分散処理を行った。
分散機 サンドグラインダー(五十嵐機械社製)
粉砕メディア 1mm径ジルコニウムビーズ
粉砕メディアの充填率 50%(体積)
粉砕時間 3時間
分散処理後、更に遠心分離処理(12000rpm、20分間)を行い、粗大粒子を除去して顔料分散体5を得た。
【0128】
次に下記の成分を用いて上記ブラックインク1と同様にしてブラックインク6を調製した。
・顔料分散体5:30部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:0.15部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・エチルアルコール:6部
・2−メチルピロリドン:6部
・水:57.85部
(イエローインク1)
以下の成分を混合し、十分撹拌して溶解後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過し、イエローインク1を調製した。
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:1部
(商品名:アセチレノールEH川研ファインケミカル(株)社製;)
・ジエチレングリコール:10部
・グリセリン:5部
・CIダイレクトイエロー86:3部
・水:81部
(マゼンタインク1)
以下の成分を用いて上記イエローインク1と同様にしてマゼンタインク1を調製した。
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:1部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・チオジグリコール:20部
・CIアシッドレッド35:3部
・水:76部
(シアンインク1)
以下の成分を用いて上記イエローインク1と同様にしてシアンインク1を調製した。
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:1部
(商品名:アセチレノールEH川研ファインケミカル(株)社製;)
・ジエチレングリコール:35部
・CIアシッドブルー9:3部
・水:61部
【0129】
実施例1
上記で調製したインクを下記の様に組合せてインクセットを作製した。
・ブラックインク1
・イエローインク1
・マゼンタインク1
・シアンインク1
【0130】
実施例2
上記で調製したインクを下記の様に組合せてインクセットを作製した。
・ブラックインク2
・イエローインク1
・マゼンタインク1
・シアンインク1
【0131】
実施例3
上記で調製したインクを下記の様に組合せてインクセットを作製した。
・ブラックインク3
・イエローインク1
・マゼンタインク1
・シアンインク1
【0132】
比較例1
上記で調製したインクを下記の様に組合せてインクセットを作製した。
・ブラックインク5
・イエローインク1
・マゼンタインク1
・シアンインク1
【0133】
比較例2
上記で調製したインクを下記の様に組合せてインクセットを作製した。
・ブラックインク6
・イエローインク1
・マゼンタインク1
・シアンインク1
【0134】
下記第3表に上記実施例1〜3および比較例1、2のインクセットを構成する各々のブラックインクの主たる構成を示す。
【0135】
【表3】

【0136】
上記実施例1〜3および比較例1、2のインクセットを用いて、記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置(商品名:BJC4000;キヤノン(株)社製)を用いて前記と同様の5種類のコピー用普通紙A〜Eに記録を行った。この記録結果を下記の様に評価した。その結果を下記第4表に示す。
【0137】
1)ブリーディング
印字画像は10cm四方の正方形内を、5×5のマス目(1マスのサイズ:2cm×2cm)で仕切り、ブラックインクと各カラーインクで交互にベタ印字したものにより、ブラック印字部とカラー印字部との境界のブリーディングを以下の基準にて評価した。
○:2色間の境界線が鮮明で、境界部に滲みや混色が見られない。
△:2色間の境界線が存在することが明らかであるが、一部の紙で境界部に多少の滲みや混色が見られる。
×:2色間の境界線の識別不能である。
【0138】
【表4】

【0139】
以上の結果から明らかなように実施態様1にかかるインクを用いたインクセットによってブリーディングの無い、或いは少ないカラー画像を記録することができる。
【0140】
顔料分散体6
表面積が230m/gでDBP吸油量が70ml/100gのカーボンブラック10gと3−アミノ−N−エチルピリジニウムブロマイド3.06gを水72gによく混合した後、これに硝酸1.62gを滴下して70℃に撹拌した。ここに更に数分後、5gの水に1.07gの亜硝酸ナトリウムを溶かした溶液を加え、更に1時間攪拌した。得られたスラリーを濾紙(商品名:東洋濾紙No.2;アドバンティス社製)で濾過し、顔料粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させ、更にこの顔料に水を足して顔料濃度10重量%の顔料水溶液を作製した。以上の方法によりカーボンブラックの表面に下記化学式に示す基を導入した。
【0141】
【化6】

【0142】
(ブラックインク7)
次いで、上記顔料分散体6および下記の成分を混合し、十分攪拌して溶解後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過してブラックインク7を調製した。
・顔料分散体6:30部
・硫酸アンモニウム:2部
・トリメチロールプロパン:6部
・テトラデシル硫酸ナトリウム:0.1部
・グリセリン:6部
・チオヂグリコール:6部
・水:49.9部
この様にして得たブラックインク7の主な特徴を下記に示す。
【0143】
【表5】

【0144】
上記ブラックインク7による文字品位、印字濃度、および耐水性について、前記ブラックインク1〜4と同じ方法、および同じ基準にて評価したところ、何れも○であった。
【0145】
実験例II−(1)(第2の実施態様にかかるインクの評価)
(ブラックインク8)
以下の成分を混合し、十分攪拌して溶解後、ポアサイズ3μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過しブラックインクを調製した。
・顔料分散体1:30部
・硫酸カリウム:1部
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:0.1部
・トリメチロールプロパン:6部
・グリセリン:6部
・ジエチレングリコール:6部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:0.2部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・水;50.7部
(ブラックインク9)
以下の成分を用いて上記ブラックインク8と同様にしてブラックインクを調製した。
・顔料分散体2:30部
・塩化カリウム:0.5部
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:0.15部
・トリメチロールプロパン:6部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:0.15部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・グリセリン:5部
・エチレングリコール:5部
・水:53.2部
(ブラックインク10)
以下の成分を用いて上記ブラックインク8と同様にしてブラックインクを調製した。
・顔料分散体2:30部
・硫酸アンモニウム:2部
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:0.1部
・トリメチロールプロパン:6部
・テトラデシル硫酸ナトリウム:0.1部
・グリセリン:6部
・チオジグリコール:6部
・水:49.8部
(ブラックインク11)
以下の成分を用いて上記ブラックインク8と同様にしてブラックインクを調製した。
・顔料分散体3:30部
・安息香酸アンモニウム:1部
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:0.15部
・トリメチロールプロパン:6部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:0.15部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・グリセリン:5部
・エチレングリコール:5部
・水:52.7部
上記したブラックインク8〜11の主な特徴を下記第5表に示す。
【0146】
【表6】

【0147】
上記したブラックインク8〜11の各々の保存安定性について評価した。即ち100ml容のガラス容器(ショット社製)を4つ用意し、その各々に上記ブラックインク8〜11を100mlづつ入れ、60℃で1ケ月間放置し、放置前後でのインク粘度変化の有無を観察した。その結果を下記第6表に示す。なお評価基準は、以下の通りである。
○:放置前後でインク粘度の変化が殆ど無い。
×:放置前後でインク粘度の変化が認められる。
【0148】
【表7】

【0149】
実験例II−(2)(第2の実施態様にかかるインクを用いたインクセットの評価)
(ブラックインク8)
上記実験例II−(1)のブラックインク8と同様に調製したブラックインクを用意した。
【0150】
(ブラックインク9)
上記実験例II−(1)のブラックインク9と同様に調製したブラックインクを用意した。
【0151】
(ブラックインク10)
上記実験例II−(1)のブラックインク10と同様に調製したブラックインクを用意した。
【0152】
(ブラックインク11)
上記実験例II−(1)のブラックインク11と同様に調製したブラックインクを用意した。
【0153】
(イエローインク1)
上記実験例I−(2)のイエローインク1と同様に調製したイエローインク1を用意した。
【0154】
(マゼンタインク1)
上記実験例I−(2)のマゼンタインク1と同様に調製したマゼンタインク1を用意した。
【0155】
(シアンインク1)
上記実験例I−(2)のシアンインク1と同様に調製したシアンインク1を用意した。
【0156】
実施例4
上記で用意した各インクを下記の様に組合せてインクセットを作製した。
・ブラックインク8
・イエローインク1
・マゼンタインク1
・シアンインク1
【0157】
実施例5
・ブラックインク9
・イエローインク1
・マゼンタインク1
・シアンインク1
【0158】
実施例6
・ブラックインク10
・イエローインク1
・マゼンタインク1
・シアンインク1
【0159】
実施例7
・ブラックインク11
・イエローインク1
・マゼンタインク1
・シアンインク1
【0160】
上記実施例4〜7のインクセットについて、前記実験例I−(2)と同様にしてブリーディングの評価を行った。その結果を下記第7表に示す。
【0161】
【表8】

【0162】
実験例III−(1)(第3の実施態様にかかるインクの評価)
(ブラックインク12)
以下の成分を混合し十分攪拌して溶解後、水酸化カリウムでpH10.5に調整した。その後ポアサイズ3μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過しブラックインクを調製した。
・実験例I−(1)で調製した顔料分散体1:30部
・硫酸カリウム:1部
・トリメチロールプロパン:6部
・グリセリン:6部
・ジエチレングリコール:6部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:0.2部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・水:50.8部
(ブラックインク13)
下記の成分を用いてブラックインク12と同様にしてブラックインクを調製した。なおpHはアンモニアを用いて11に調整した。
・実験例I−(1)で調製した顔料分散体2:30部
・塩化カリウム:0.5部
・トリメチロールプロパン:6部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:0.15部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・グリセリン:5部
・エチレングリコール:5部
・水:53.35部
(ブラックインク14)
下記の成分を用いてブラックインク12と同様にしてブラックインクを調製した。なおpHは水酸化リチウムを用いて11に調整した。
・実験例I−(1)で調製した顔料分散体2:30部
・硫酸アンモニウム:2部
・トリメチロールプロパン:6部
・テトラデシル硫酸ナトリウム:0.1部
・グリセリン:6部
・チオジグリコール:6部
・水:49.9部
(ブラックインク15)
下記の成分を用いてブラックインク12と同様にしてブラックインクを調製した。なおpHはアンモニアを用いて11に調整した。
・実験例I−(1)で調製した顔料分散体3:30部
・安息香酸アンモニウム:1部
・トリメチロールプロパン:6部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:0.15部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・グリセリン:5部
・エチレングリコール:5部
・水:52.85部
こうして得たブラックインク12〜15の主な特徴を下記第8表に示す。
【0163】
【表9】

【0164】
上記したブラックインク12〜15の各々の保存安定性について評価した。即ち100ml容のガラス容器(ショット社製)を4つ用意し、その各々に上記ブラックインク11〜13を100mlづつ入れ、放置前後でのインク粘度変化の有無を観察した。その結果を下記第9表に示す。なお評価基準は以下の通りである。
○:放置前後でインク粘度の変化が殆ど無い。
×:放置前後でインク粘度の変化が大きい。
【0165】
【表10】

【0166】
実験例III−(2)
(ブラックインク12)
実験例III−(1)のブラックインク12と同様に調製したブラックインクを用意した。
【0167】
(ブラックインク13)
実験例III−(1)のブラックインク13と同様に調製したブラックインクを用意した。
【0168】
(ブラックインク14)
実験例III−(1)のブラックインク14と同様に調製したブラックインクを用意した。
【0169】
(ブラックインク15)
実験例III−(1)のブラックイク15と同様に調製したブラックインクを用意した。
【0170】
(ブラックインク16)
下記の成分を混合し、水酸化カリウムでpHを11に調製した後、ポアサイズ3μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過し、ブラックインクを調製した。
・実験例I−(2)の顔料分散体5:30部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:0.15部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・エチルアルコール:6部
・2−メチルピロリドン:6部
・水:57.85部
(イエローインク1)
上記実験例I−(2)のイエローインク1と同様に調製したイエローインク1を用意した。
【0171】
(マゼンタインク1)
上記実験例I−(2)のマゼンタインク1と同様に調製したマゼンタインク1を用意した。
【0172】
(シアンインク1)
上記実験例I−(2)のシアンインク1と同様に調製したシアンインク1を用意した。
【0173】
実施例8
上記で用意した各インクを下記の様に組合せてインクセットを作製した。
・ブラックインク12
・イエローインク1
・マゼンタインク1
・シアンインク1
【0174】
実施例9
上記で用意した各インクを下記の様に組合せてインクセットを作製した。
・ブラックインク13
・イエローインク1
・マゼンタインク1
・シアンインク1
【0175】
実施例10
上記で用意した各インクを下記の様に組合せてインクセットを作製した。
・ブラックインク14
・イエローインク1
・マゼンタインク1
・シアンインク1
【0176】
実施例11
上記で用意した各インクを下記の様に組合せてインクセットを作製した。
・ブラックインク15
・イエローインク1
・マゼンタインク1
・シアンインク1
【0177】
比較例3
・ブラックインク16
・イエローインク1
・マゼンタインク1
・シアンインク1
【0178】
上記実施例8〜11、及び比較例3のインクセットを構成するブラックインク
の主な特徴を下記第10表に示す。
【0179】
【表11】

【0180】
上記実施例8〜11、及び比較例3のインクセットについて、前記実験例I−(2)と同様にしてブリーディングの評価を行った。その結果を下記第11表に示す。
【0181】
【表12】

【0182】
実験例IV−(1)(第4の実施態様にかかるインクの評価)
(ブラックインク17)
以下の成分を用いて、先に作製したブラックインクと同様の方法に従ってブラックインクを調製した。
・実験例I−(1)の顔料分散体1:30部
・硫酸カリウム:1部
・亜硫酸ナトリウム:0.3部
・トリメチロールプロパン:6部
・グリセリン:6部
・ジエチレングリコール:6部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:0.2部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・水:50.5部
(ブラックインク18)
以下の成分を用いて、先に作製したブラックインクと同様の方法に従ってブラックインクを調製した。
・実験例I−(1)の顔料分散体2:30部
・塩化カリウム:0.5部
・アスコルビン酸ナトリウム:0.15部
・トリメチロールプロパン:6部
・グリセリン:5部
・エチレングリコール:5部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:0.15部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・水:53.2部
(ブラックインク19)
以下の成分を用いて、先に作製したブラックインクと同様の方法に従ってブラックインクを調製した。
・実験例I−(1)の顔料分散体2:30部
・硫酸アンモニウム:2部
・亜硫酸ナトリウム:0.1部
・トリメチロールプロパン:6部
・テトラデシル硫酸ナトリウム:0.1部
・グリセリン:6部
・チオジグリコール:6部
・水:49.8部
(ブラックインク20)
以下の成分を用いて、先に作製したブラックインクと同様の方法に従ってブラックインクを調製した。
・実験例I−(1)の顔料分散体3:30部
・安息香酸アンモニウム:1部
・アスコルビン酸ナトリウム:0.15部
・トリメチロールプロパン:6部
・グリセリン:5部
・エチレングリコール:5部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:0.15部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・水:52.7部
【0183】
こうして得たブラックインク17〜20の各々の特徴を下記第12表に示す。
【0184】
【表13】

【0185】
上記ブラックインク17〜20について、実験例II−(1)と同様にして保存安定性を評価した。その結果を下記第13表に示す。
【0186】
【表14】

【0187】
実験例IV−(2)(第4の実施態様のインクを用いたインクセットの評価)
(ブラックインク17)
実験例IV−(1)のブラックインク17と同様に調製したブラックインクを用意した。
【0188】
(ブラックインク18)
実験例IV−(1)のブラックインク18と同様に調製したブラックインクを用意した。
【0189】
(ブラックインク19)
実験例IV−(1)のブラックインク19と同様に調製したブラックインクを用意した。
【0190】
(ブラックインク20)
実験例IV−(1)のブラックインク20と同様に調製したブラックインクを用意した。
【0191】
(イエローインク1)
上記実験例I−(2)のイエローインク1と同様に調製したイエローインク1を用意した。
【0192】
(マゼンタインク1)
上記実験例I−(2)のマゼンタインク1と同様に調製したマゼンタインク1を用意した。
【0193】
(シアンインク1)
上記実験例I−(2)のシアンインク1と同様に調製したシアンインク1を用意した。
【0194】
実施例12
上記で用意した各インクを下記の様に組合せてインクセットを作製した。
・ブラックインク17
・イエローインク1
・マゼンタインク1
・シアンインク1
【0195】
実施例13
上記で用意した各インクを下記の様に組合せてインクセットを作製した。
・ブラックインク18
・イエローインク1
・マゼンタインク1
・シアンインク1
【0196】
実施例14
上記で用意した各インクを下記の様に組合せてインクセットを作製した。
・ブラックインク19
・イエローインク1
・マゼンタインク1
・シアンインク1
【0197】
実施例15
上記で用意した各インクを下記の様に組合せてインクセットを作製した。
・ブラックインク20
・イエローインク1
・マゼンタインク1
・シアンインク1
【0198】
上記実施例12〜15のインクセットについて、前記実験例I−(2)と同様にしてブリーディングについて評価した。その結果を下記第14表に示す。
【0199】
【表15】

【0200】
実験例V−(1)(第5の実施態様のインクの評価)
(ブラックインク21)
以下の成分を用いて、先に作製したブラックインクと同様の方法に従ってブラックインクを調製した。
・実験例I−(1)の顔料分散体1:30部
・硫酸カリウム:1部
・トリメチロールプロパン:6部
・グリセリン:6部
・ジエチレングリコール:6部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:0.2部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・アルギン酸ナトリウム:0.1部
・水:50.7部
(ブラックインク22)
以下の成分を用いて、先に作製したブラックインクと同様の方法に従ってブラックインクを調製した。
・実験例I−(1)の顔料分散体2:30部
・塩化カリウム:0.5部
・トリメチロールプロパン:6部
・グリセリン:5部
・エチレングリコール:5部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:0.15部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・ポリアクリル酸ナトリウム:0.1部
・水:53.25部
(ブラックインク23)
以下の成分を用いて、先に作製したブラックインクと同様の方法に従ってブラックインクを調製した。
・実験例I−(1)の顔料分散体3:30部
・安息香酸アンモニウム:1部
・トリメチロールプロパン:6部
・グリセリン:5部
・エチレングリコール:5部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:0.15部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・ポリアクリル酸ナトリウム:0.1部
・水:52.75部
(ブラックインク24)
以下の成分を用いて、先に作製したブラックインクと同様の方法に従ってブラックインクを調製した。
・実験例I−(2)の顔料分散体6:30部
・硫酸アンモニウム:2部
・トリメチロールプロパン:6部
・アルギン酸ナトリウム:0.1部
・グリセリン:6部
・チオジグリコール:6部
・水:49.9部
こうして得たブラックインク21〜24の主な特徴を下記第15表に示す。
【0201】
【表16】

【0202】
上記ブラックインク21〜24各々を、記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置(商品名:BJC−4000;キヤノン(株)社製)を用いて下記評価を行った。その結果を下記第16表に示す。
【0203】
1)文字品位
上記各インクを上記インクジェット記録装置を用い、前記5種類のコピー用普通紙A,B,C,D,Eに文字印字を行い、その時の文字の滲みを下記の基準で評価した。
○;5紙とも滲みがほとんどない。
△;多少滲む紙がみられる。
×;5紙とも滲む。
【0204】
2)印字濃度
上記各インクを上記インクジェット記録装置を用い、前記5種類のコピー用普通紙A,B,C,D,Eに印字を行いその時の印字濃度を、マクベス製印字濃度測定器を用い測定し、下記の基準で評価した。
○;コピー用普通紙A,B,C,D,Eの印字濃度の差が最高と最低で0.1未満。
×;コピー用普通紙A,B,C,D,Eの印字濃度の差が最高と最低で0.1以上。
【0205】
3)耐擦過性
上記各インクを上記インクジェット記録装置を用い、前記5種類のコピー用普通紙A,B,C,D,Eに印字を行い1日放置したのち、荷重40g/cm2の分銅を用いて擦過性試験を行い、下記の基準で評価した。
○:全ての紙で汚れが目立たない。
△:一部の紙で汚れが目立つ。
×:全ての紙で汚れが目立つ。
【0206】
4)耐水性
上記各インクを上記インクジェット記録装置を用い、前記5種類のコピー用普通紙A,B,C,D,Eに上記1)と同様にして印字を行い、印字から所定の時間経過した後に、印字した記録媒体を流水につけて地汚れの状態を目視にて観察し、その結果を下記の基準で評価した。
◎:コピー用普通紙A、B、C、D、E共に印字後1時間以内に地汚れが目立たなくなる。
○:コピー用普通紙A、B、C、D、E共に印字後1日以内に地汚れが目立たなくなる。
×:印字から1日以上経過した後にも地汚れの目立つ紙がある。
【0207】
【表17】

【0208】
実験例V−(2)(第5の実施態様のインクを用いたインクセットの評価)
(ブラックインク21)
実験例V−(1)のブラックインク21と同様に調製したブラックインクを用意した。
【0209】
(ブラックインク22)
実験例V−(1)のブラックインク22と同様に調製したブラックインクを用意した。
【0210】
(ブラックインク23)
実験例V−(1)のブラックインク18と同様に調製したブラックインクを用意した。
【0211】
実験例V−(1)のブラックインク23と同様に調製したブラックインクを用意した。
【0212】
(ブラックインク25)
以下の成分を用いて、先に作製したブラックインクと同様の方法に従ってブラックインクを調製した。
・実験例I−(1)の顔料分散体2:30部
・硫酸アンモニウム:2部
・トリメチロールプロパン:6部
・アルギン酸ナトリウム:0.1部
・グリセリン:6部
・チオジグリコール:6部
・水:49.9部
(イエローインク1)
上記実験例I−(2)のイエローインク1と同様に調製したイエローインクを
(マゼンタインク1)
上記実験例I−(2)のマゼンタインク1と同様に調製したマゼンタインクを用意した。
【0213】
(シアンインク1)
上記実験例I−(2)のシアンインク1と同様に調製したシアンインクを用意した。
【0214】
上記で用意した各インクを下記の様に組合せてインクセットを作製した。
・ブラックインク21
・イエローインク1
・マゼンタインク1
・シアンインク1
【0215】
実施例17
上記で用意した各インクを下記の様に組合せてインクセットを作製した。
・ブラックインク22
・イエローインク1
・マゼンタインク1
・シアンインク1
【0216】
実施例18
上記で用意した各インクを下記の様に組合せてインクセットを作製した。
・ブラックインク23
・イエローインク1
・マゼンタインク1
・シアンインク1
【0217】
実施例19
上記で用意した各インクを下記の様に組合せてインクセットを作製した。
・ブラックインク25
・イエローインク1
・マゼンタインク1
・シアンインク1
【0218】
比較例4
実験例I−(2)の比較例2に用いたものと同様のインクセットを用意した。
【0219】
上記実施例16〜19、及び比較例4のインクセットに用いるブラックインク
の主な特徴を下記第17表に示す。
【0220】
【表18】

【0221】
上記実施例16〜19、及び比較例4のインクセットについて、前記実験例I−(2)に記載したのと同様にしてブリーディングの評価を行った。また擦過性についても前記実験例V−(1)と同様にして評価した。その結果を下記第18表に示す。
【0222】
【表19】

【図面の簡単な説明】
【0223】
【図1】インクジェット記録装置のヘッドの一実施態様を示す縦断面図である。
【図2】図1のAB線断面図である。
【図3】マルチヘッドの概略説明図である。
【図4】インクジェット記録装置の一実施態様を示す概略斜視図である。
【図5】インクカートリッジの一実施態様を示す縦断面図である。
【図6】記録ユニットの一例を示す斜視図である。
【図7】インクジェット記録ヘッドの別の構成例を示す概略斜視図である。
【図8】4つのインクカートリッジが取り付けられた記録ヘッドの概略説明図である。
【図9】4つの記録ヘッドがキャリッジ上に並べられている構成を示す概略説明図である。
【図10】本発明の一実施態様にかかるインクのpHと粘度の相関を示す概略図である。
【図11】塩を含む顔料インクを記録媒体に付与したときの固液分離の過程を示す模式図である。
【図12】塩を含まない顔料インクを記録媒体に付与したときの固液分離の過程を示す模式図である。
【図13】塩を含むインク及び塩を含まないインクにおける、インク中の顔料濃度と各々のインクによる印刷の光学濃度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0224】
13 ヘッド
14 インク溝
15 発熱ヘッド
16 保護膜
17−1、17−2 電極
18 発熱抵抗体槽
19 蓄熱層
20 基板
21 インク
22 吐出オリフィス
23 メニスカス
24 インク滴
25 被記録材
26 マルチ溝
27 ガラス板
40 インク袋
42 栓
44 インク吸収体
45 インクカートリッジ
51 給紙部
52 紙送りローラー
53 排紙ローラー
61 ブレード
62 キャップ
63 インク吸収体
64 吐出回復部
65 記録ヘッド
66 キャリッジ
67 ガイド軸
68 モーター
69 ベルト
70 記録ユニット
71 ヘッド部
72 大気連通口
80 インク流路
81 オリフィスプレート
82 振動板
83 圧電素子
84 基板
85 吐出口
86、87、88、89 インクカートリッジ
90、91、92、93 記録ユニット
1101 塩を含む顔料インク
1103、1203 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラック及び塩を含有するインクジェット記録用インクであって、
該カーボンブラックが、置換もしくは未置換のフェニレン基を介して親水性基−COO(M2)(但し、M2は水素原子、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表す)を該カーボンブラックの表面に結合している自己分散カーボンブラックであり、
該塩が、Ph−COO(M1)(但し、M1はアンモニウムを表し、Phはフェニル基を表す)で示される塩である
ことを特徴とするインクジェット記録用インク。
【請求項2】
前記カーボンブラックの含有量が、インク全重量に対して0.1重量%以上15重量%以下である請求項1に記載のインクジェット記録用インク。
【請求項3】
前記塩の含有量が、インク全重量に対して0.05重量%以上10重量%以下である請求項1または2に記載のインクジェット記録用インク。
【請求項4】
前記塩の含有量が、インク全重量に対して0.5重量%以上2重量%以下である請求項3に記載のインクジェット記録用インク。
【請求項5】
シアン用、マゼンタ用、イエロー用、レッド用、グリーン用およびブルー用の色材から選ばれる少なくとも1つの色材を含む水性のインクと請求項1〜4の何れかに記載のインクジェット記録用インクとを組合せたことを特徴とするインクセット。
【請求項6】
請求項1〜4の何れかに記載のインクジェット記録用インクを収容しているインクタンクを備えていることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項7】
請求項1〜4の何れかに記載のインクを収容したインク収容部、および該インクを吐出させるためのヘッド部を備えたことを特徴とする記録ユニット。
【請求項8】
請求項1〜4の何れかに記載のインクジェット記録用インクを収容しているインクタンクを備えているインクカートリッジ、インクを吐出させるための記録ヘッド、および該記録ヘッドに該インクカートリッジからインクを供給する手段を備えていることを特徴とする画像記録装置。
【請求項9】
請求項1〜4の何れかに記載のインクジェット記録用インクを記録媒体表面に向けて飛翔させて該表面に付着させることにより画像を記録することを特徴とする画像記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−348304(P2006−348304A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−213471(P2006−213471)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【分割の表示】特願2004−204787(P2004−204787)の分割
【原出願日】平成11年3月15日(1999.3.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】