インクカートリッジ及びインクジェットプリンタ
【課題】インク袋のインクを口栓へ向けて効率よく移動することが可能なインクカートリッジを提供する。
【解決手段】インクカートリッジ1は、ケース2内のインク袋71と蓋部4の間に配置した押圧部材8を備える。押圧部材8は、インク袋71を形成する二層のシート711、712よりも可撓性が低いシートを湾曲して形成した湾曲部83を有する。インクの減少に伴い、シート711、712が左壁30と蓋部4の対向方向に互いに近づき、インク袋71は萎んで変形し始める。押圧部材8の第二面部832は、インク袋71の変形に伴い、シートの復元力で左壁30方向に撓む。湾曲端部84が底壁31に当接しているので、第二面部832は、インク収容部717の下部を上に向かって押し上げるように左壁30方向に膨らむ。インク収容部717の下部に溜まったインクは、上方へ向けて移動する。
【解決手段】インクカートリッジ1は、ケース2内のインク袋71と蓋部4の間に配置した押圧部材8を備える。押圧部材8は、インク袋71を形成する二層のシート711、712よりも可撓性が低いシートを湾曲して形成した湾曲部83を有する。インクの減少に伴い、シート711、712が左壁30と蓋部4の対向方向に互いに近づき、インク袋71は萎んで変形し始める。押圧部材8の第二面部832は、インク袋71の変形に伴い、シートの復元力で左壁30方向に撓む。湾曲端部84が底壁31に当接しているので、第二面部832は、インク収容部717の下部を上に向かって押し上げるように左壁30方向に膨らむ。インク収容部717の下部に溜まったインクは、上方へ向けて移動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを収容するインク袋とインク袋を収容するケースを備えたインクカートリッジ、及びインクカートリッジを着脱可能なインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、インクジェットプリンタ(以下、単にプリンタという)は、印字ヘッドにインクを供給する為のインクカートリッジ(以下、単にカートリッジという)を着脱可能な構成を有する。一般的なカートリッジは、可撓性を有するインク袋と、インク袋に連結して設けたインクを取り出す為の口栓と、インク袋を収容する矩形箱状のケースとを備えている。更に、カートリッジは、プリンタがインク残量を検知することを可能とする為に、インク袋内のインクの残量が減少するのに伴ってケース内で移動する部材を備える場合がある。例えば特許文献1は、インクの残量が減少すると位置が下がる検出板をインク袋に接着したカートリッジを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−199496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のカートリッジにおいて、インク残量が減少するとインク袋は萎む。検出板はインク袋が萎むのに伴って下降する。検出板は変形しないので、検出板の自重に起因する押圧力は下方向に均一に作用する。インク袋内のインクは押圧に伴い移動し、検出板の周囲方向へ分散する。故に、該カートリッジは、インク袋に残存するインクを口栓に向けて効率よく移動できない。また、例えば、カートリッジのケース内に検出板がない場合、インク袋内のインク量に応じてインク袋が変形してインクが移動する。該場合でも、インクを口栓に向けてより効率よく移動させたい場合がある。
【0005】
本発明の目的は、インク袋のインクを口栓へ向けて効率よく移動することが可能なインクカートリッジ及びインクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様に係るインクカートリッジは、インク袋と、口栓と、ケースと、押圧部材とを備える。前記インク袋は、対向配置された可撓性を有する二層のシートを少なくとも含んで袋状に形成され、内部にインクを収容する。前記口栓は、前記インク袋に設けられ、前記インク袋と連通する第一開口から外部に開口する第二開口まで通じる中空部を有する。前記ケースは、略箱型であり、前記インク袋を収容する。前記押圧部材は、前記二層のシートよりも低い可撓性を有するシートを、前記シートの一方の面である第一面を内側にして、前記シートの少なくとも一つの端部が前記第一面に対向するように外側に向かって湾曲させた面部である湾曲部を含む。前記ケースは、第一壁部と、第二壁部と、第三壁部と、貫通部とを少なくとも含む。前記第一壁部及び第二壁部は、前記口栓の軸線を長手方向として、前記軸線に対して略平行に配置された一対の壁部である。前記第二壁部は、前記一対の壁部の伸展方向に対して略垂直、且つ前記軸線に対して斜めに配置された壁部である。前記貫通部は、前記口栓の前記第二開口を臨むように前記第三壁部に設けられている。前記インク袋は、前記二層のシートのシート面が夫々前記第一壁部及び前記第二壁部に対向するように前記ケースに収容される。前記押圧部材は、前記ケース内の前記インク袋と前記第一壁部の間に、前記湾曲部の一部分が前記第一壁部に当接し、前記一部分とは異なる他の一部分が前記二層のシートのうち一方である第一層部に当接して復元力を生じるように弾性変形する。
【0007】
第一態様のインクカートリッジは、ケース内に、インク袋を形成する二層のシートよりも可撓性が低いシートから形成した押圧部材を備える。押圧部材は、インク袋と第一壁部との間に配置してある。押圧部材は、シートの一方の面である第一面を内側にして、シートの少なくとも一つの端部が第一面に対向するように外側に向かって湾曲させた面部である湾曲部を含む。故に、シートが撓んで弾性変形することで、湾曲部の形状や、湾曲部を形成するシートの対向部分の離間距離は変化可能である。インク袋内のインクが満量状態から減少すると、インク袋を形成する二層のシートは撓む。インク袋は変形する。湾曲部は、変形したインク袋の形状に沿って、復元力で第一壁部とは反対方向に膨らむように撓み、インク袋を第二壁部の方へ押圧する。湾曲部は、該作用でインクをインク袋内で移動することができる。また、湾曲部がインク袋を押圧する力は、湾曲部を形成するシートの対向部分の離間距離が最大の位置で最大となる。故に、インクカートリッジは、均一な押圧力を付与する部材でインク袋を押圧する場合に比べ、インク袋内で残存するインクが分散して広がるのを防止し且つインクを口栓へ向けて効率的に移動することができる。
【0008】
前記インク袋は、前記口栓の軸線が、前記軸線に直交する方向における前記ケースの一端部である第一端部寄りに位置するように前記ケース内に配置されてもよい。前記押圧部材は、前記シートの一対の端部が前記第一面の側で接合されることで形成された部分である接合部と、前記接合部と対向する湾曲した端部である湾曲端部とを含んでもよい。前記押圧部材は、前記接合部が前記軸線に対して前記第一端部とは反対側に位置し、且つ、前記湾曲端部が前記軸線よりも前記第一端部寄りに位置するように前記ケース内に配置されてもよい。
【0009】
該場合、ユーザが第一端部を下側にしてインクカートリッジを平面等に載置すれば、第一壁部、第二壁部、インク袋の二層のシートのシート面は、略上下方向に沿って伸展する。故に、インクはシート面に沿って下方に流れてインク袋の下端部に溜まる。押圧部材の湾曲端部は口栓の軸線よりも下方に位置するので、湾曲部が第一壁部とは反対方向に膨らむように撓むことで、インク袋の下端部を押圧する。故に、押圧部材は、溜まったインクを口栓の第一開口が位置する上方へ移動することができる。
【0010】
前記押圧部材は、前記軸線の方向において前記口栓から離間した位置に配置されていてもよい。該場合、押圧部材が口栓の近傍でインク袋を押圧することで、二層のシートが接触して口栓の第一開口を塞いでしまうことを確実に防止できる。また、ユーザが第一端部を下側にしてインクカートリッジを平面等に載置すれば、押圧部材は口栓から離れた位置で下方に溜まったインクを上方へ移動できる。故に、押圧部材は口栓に向けて効率的にインクを流すことができる。
【0011】
前記押圧部材は、前記二層のシートが前記第一壁部と前記第二壁部の対向方向に互いに近づくように前記インク袋が変形した場合、前記湾曲部の前記第一壁部に当接する前記一部分と前記第一層に当接する前記他の一部分との間の距離が大きくなるように変形し、前記二層のシートが前記第一壁部と前記第二壁部の対向方向に互いから離れるように前記インク袋が変形した場合、前記湾曲部の前記第一壁部に当接する前記一部分と前記第一層に当接する前記他の一部分との間の距離が小さくなるように変形してもよい。インク袋内のインクが満量であり且つ二層のシートが互いから離れている場合、インク袋が押圧部材を押すので、押圧部材はインク袋と第一壁部との間で収縮変形した状態となる。インクの残量が減るに従い二層のシートが互いに近づくと、押圧部材はインク袋と第一壁部との間で膨張変形してインク袋を押圧する。故に、押圧部材はインクを移動することができる。
【0012】
前記ケースは、前記第一端部に、前記第一壁部と前記第二壁部に接続する第四壁部を含んでもよい。前記湾曲端部は、前記第四壁部に当接してもよい。該場合、ユーザが第四壁部を下側にしてインクカートリッジを平面等に載置すれば、湾曲端部は、必ずインク袋の下端部より下方又は該下端部と同じ高さに位置する。故に、押圧部材は、インクをより確実に口栓の第一開口が位置する上方へ移動できる。
【0013】
本発明の第二態様に係るインクジェットプリンタは、インクカートリッジと、前記インクカートリッジが着脱可能に装着されるカートリッジ装着部とを備える。前記インクカートリッジは、インク袋と、口栓と、ケースと、押圧部材とを備える。前記インク袋は、対向配置された可撓性を有する二層のシートを少なくとも含んで袋状に形成され、内部にインクを収容する。前記口栓は、前記インク袋に設けられ、前記インク袋と連通する第一開口から外部に開口する第二開口まで通じる中空部を有する。前記ケースは、略箱型であって、前記インク袋を収容する。前記押圧部材は、前記二層のシートよりも低い可撓性を有するシートを、前記シートの一方の面である第一面を内側にして、前記シートの少なくとも一つの端部が前記第一面に対向するように外側に向かって湾曲させた面部である湾曲部を含む。前記ケースは、第一壁部と、第二壁部と、第三壁部と、貫通部とを少なくとも含む。第一壁部及び第二壁部は、前記口栓の軸線を長手方向として、前記軸線に対して略平行に配置された一対の壁部である。前記第三壁部は、前記一対の壁部の伸展方向に対して略垂直、且つ前記軸線に対して斜めに配置された壁部である。前記貫通部は、前記口栓の前記第二開口を臨むように前記第三壁部に設けられた貫通部とを少なくとも含む。前記インク袋は、前記口栓の軸線が、前記軸線に直交する方向における前記ケースの一端部である第一端部寄りに位置し、且つ、前記二層のシートのシート面が夫々前記第一壁部及び前記第二壁部に対向するように前記ケースに収容される。前記押圧部材は、前記ケース内の前記インク袋と前記第一壁部の間に、前記湾曲部の一部分が前記第一壁部に当接し、前記一部分とは異なる他の一部分が前記二層のシートのうち一方である第一層部に当接して復元力を生じるように弾性変形し、且つ、湾曲した端部である湾曲端部が前記軸線よりも前記第一端部寄りに位置するように配置される。前記カートリッジ装着部は、前記インクカートリッジが、前記第一壁部及び前記第二壁部が上下方向に伸展し、前記ケースの前記第一端部が下側となる姿勢で装着されるように構成されている。
【0014】
第二態様のインクジェットプリンタは、ケース内に、インク袋を形成する二層のシートよりも可撓性が低いシートから形成した押圧部材を備える。押圧部材は、インク袋と第一壁部との間に配置してある。押圧部材は、シートの一方の面である第一面を内側にして、シートの少なくとも一つの端部が第一面に対向するように外側に向かって湾曲させた面部である湾曲部を含む。故に、シートが撓んで弾性変形することで、湾曲部の形状や、湾曲部を形成するシートの対向部分の離間距離は変化可能である。インク袋内のインクが満量状態から減少すると、インク袋を形成する二層のシートは撓む。インク袋は変形する。湾曲部は、変形したインク袋の形状に沿って、復元力で第一壁部とは反対方向に膨らむように撓み、インク袋を第二壁部の方へ押圧する。湾曲部は、該作用でインクをインク袋内で移動することができる。
【0015】
インクジェットプリンタは、第一端部を下側にしてインクカートリッジを装着するように構成してある。故に、インクジェットプリンタに装着したインクカートリッジのケース内で、第一壁部、第二壁部、インク袋の二層のシートのシート面は、略上下方向に沿って伸展する。該場合、インクはシート面に沿って下方に流れてインク袋の下端部に溜まる。押圧部材の湾曲端部は口栓の軸線よりも下方に位置するので、湾曲部が第一壁部とは反対方向に膨らむように撓むことで、インク袋の下端部を押圧する。故に、押圧部材は、溜まったインクを口栓の第一開口が位置する上方へ移動することができる。インクは口栓から流出しやすくなる。
【0016】
前記押圧部材は、前記シートの一対の端部が前記第一面の側で接合されることで形成された部分であって、前記湾曲端部に対向する接合部を含んでもよい。前記接合部は、前記ケース内で、前記軸線に対して前記第一端部とは反対側に位置してもよい。該場合、押圧部材は湾曲部を含む安定した形状を維持することができる。接合部は口栓の軸線よりも上方に位置するので、押圧部材は、溜まったインクを口栓の第一開口が位置する上方へより確実に移動することができる。
【0017】
前記カートリッジ装着部は、前記インクカートリッジが、前記第三壁部が配置される側に向けて前記軸線が斜め下方向に延びる姿勢で装着されるように構成されていてもよい。該場合、インクは、口栓の第二開口を臨む第三壁部の方に向けて自重で移動するので、更に口栓へ向けて効率よく移動できる。
【0018】
本発明の第三態様のインクカートリッジは、インク袋と、口栓と、ケースと、押圧部材とを備える。前記インク袋は、対向配置された可撓性を有する二層のシートを少なくとも含んで袋状に形成され、内部にインクを収容する。前記口栓は、前記インク袋に設けられ、前記インク袋と連通する第一開口から外部に開口する第二開口まで通じる中空部を有する。前記ケースは、略箱型であり、前記インク袋を収容する。前記押圧部材は、前記二層のシートよりも低い可撓性を有するシートを、前記シートの一方の面である第一面を内側にして、前記シートの少なくとも一つの端部が前記第一面に対向するように外側に向かって湾曲させた面部である湾曲部を含む。前記ケースは、第一壁部と、第二壁部と、第三壁部と、貫通部とを少なくとも含む。前記第一壁部及び第二壁部は、前記口栓の軸線を長手方向として、前記軸線に対して略平行に配置された一対の壁部である。前記第二壁部は、前記一対の壁部の伸展方向に対して略垂直、且つ前記軸線に対して斜めに配置された壁部である。前記貫通部は、前記口栓の前記第二開口を臨むように前記第三壁部に設けられている。前記インク袋は、前記二層のシートのシート面が夫々前記第一壁部及び前記第二壁部に対向するように前記ケースに収容される。前記押圧部材は、前記ケース内の前記インク袋と前記第一壁部の間に、前記湾曲部の一部分が前記第一壁部に当接し、前記一部分とは異なる他の一部分が前記二層のシートのうち一方である第一層部に当接して付勢される。
【0019】
第三態様のインクカートリッジは、ケース内に、インク袋を形成する二層のシートよりも可撓性が低いシートから形成した押圧部材を備える。押圧部材は、インク袋と第一壁部との間に配置してある。押圧部材は、シートの一方の面である第一面を内側にして、シートの少なくとも一つの端部が第一面に対向するように外側に向かって湾曲させた面部である湾曲部を含む。故に、シートが撓んで弾性変形することで、湾曲部の形状や、湾曲部を形成するシートの対向部分の離間距離は変化可能である。インク袋内のインクが満量状態から減少すると、インク袋を形成する二層のシートは撓む。インク袋は変形する。湾曲部は、変形したインク袋の形状に沿って付勢されて弾性変形し、その弾性力で第一壁部とは反対方向に膨らむように撓み、インク袋を第二壁部の方へ押圧する。湾曲部は、該作用でインクをインク袋内で移動することができる。また、湾曲部がインク袋を押圧する力は、湾曲部を形成するシートの対向部分の離間距離が最大の位置で最大となる。故に、インクカートリッジは、均一な押圧力を付与する部材でインク袋を押圧する場合に比べ、インク袋内で残存するインクが分散して広がるのを防止し且つインクを口栓へ向けて効率的に移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】インクジェットプリンタ100の斜視図である。
【図2】インクカートリッジ1を左後方から見た斜視図である。
【図3】インクカートリッジ1を右前方から見た斜視図である。
【図4】ケース2の分解斜視図である。
【図5】インクパック7、可動部材5、押圧部材8の配置関係を示す説明図である。
【図6】インク供給時のインクカートリッジ1の口栓72周辺部の拡大部分断面図である。
【図7】可動部材50の動きの説明図である。
【図8】押圧部材8の斜視図である。
【図9】インクジェットプリンタ100装着時のインクカートリッジ1を下から見た時のインクパック7(インク満量時)と押圧部材8の状態を示す説明図である。
【図10】図9の矢印A方向から見た時のインクパック7と押圧部材8の状態を示す説明図である。
【図11】ホルダユニット150の斜視図である。
【図12】ホルダ159の斜視図である。
【図13】インクジェットプリンタ100装着時のインクカートリッジ1を下から見た時のインクパック7(インク減少時)と押圧部材8の状態を示す説明図である。
【図14】図13の矢印B方向から見た時のインクパック7の状態を示す説明図である。
【図15】図13の矢印C方向から見た時のインクパック7と押圧部材8の状態を示す説明図である。
【図16】図13の矢印D方向から見た時のインクパック7と押圧部材8の状態を示す説明図である。
【図17】変形例のインクカートリッジ10のインクパック70、押圧部材9の配置関係を示す説明図である。
【図18】左壁30を下にして載置したインクカートリッジ10を横から見た時のインクパック70(インク減少時)と押圧部材9の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。実施形態では、Tシャツ等の布帛に印刷を行うインクジェットプリンタ(以下、単にプリンタという)100と、プリンタ100で使用するインクカートリッジ(以下、単にカートリッジという)1について説明する。
【0022】
図1を参照し、プリンタ100の概略構成について説明する。プリンタ100は、カートリッジ1が供給したインクを用いて、印刷媒体である布帛(例えばTシャツ等)に印刷ヘッド(図示略)で印刷を行うことが可能なプリンタである。図1の上下方向、右斜め下方向、左斜め上方向、左斜め下方向、右斜め上方向が、夫々、プリンタ100とカートリッジ1の上下方向、前方向、後ろ(奥)方向、左方向、右方向である。
【0023】
図1に示す如く、プリンタ100は、略直方体形状の本体部108と、本体部108よりも小さい略直方体形状のカートリッジ装着ユニット110を含む。本体部108は、布帛を移送しながら印刷ヘッドで印刷を行う部位であり、公知の布帛印刷用のインクジェットプリンタと同様の構成を有する。カートリッジ装着ユニット110は、インクを供給するカートリッジ1を装着する部位である。カートリッジ装着ユニット110は、本体部108の左側下部に取り外し可能に装着してある。
【0024】
本体部108は筐体101を備える。本体部108は、左右方向中央部にプラテン駆動機構106を備える。プラテン駆動機構106は、プラテン102、トレイ103、駆動ベルト104、一対のガイドレール(図示略)、プラテン駆動モータ(図示略)等を含む。
【0025】
駆動ベルト104は、本体部108の前方と後方に配置したプーリ(図示略)に架け渡してある。駆動ベルト104の上方に固定した支柱(図示略)は、矩形板状のプラテン102とトレイ103を支持する。印刷媒体である布帛は、プラテン102の上面に載置する。トレイ103はプラテン102の下方に略平行に配置してあり、プラテン102より一回り大きい板状体である。トレイ103は、プラテン102に載置した布帛の一部(Tシャツの袖等)が下方に落ちることを防止する。一対のガイドレールは、駆動ベルト104の上方で前後方向に延び、プラテン102とトレイ103を案内する。プラテン駆動モータは、前述のプーリを介して駆動ベルト104を駆動する。プラテン駆動モータが駆動ベルト104を駆動すると、プラテン102とトレイ103は支柱を介してガイドレールに沿って前後方向に移動する。筐体101は前面中央部に開口を有する。プラテン102とトレイ103は該開口を介して筐体101に出入りする。
【0026】
図示は省略するが、本体部108は筐体101内部の前後方向略中央、且つ、プラテン102の上方に、左右方向に延びる一対のガイドレール(図示略)を備える。該ガイドレールは印刷ヘッドのキャリッジを支持する。印刷ヘッドはキャリッジの下部に固定してある。印刷ヘッドの数はインクジェットプリンタの種類によって異なる。プリンタ100の印刷ヘッドの数は八個である。キャリッジ駆動機構はキャリッジをガイドレールに沿って左右方向に移動する。キャリッジ駆動機構はキャリッジ駆動モータやベルト伝達機構を含む。カートリッジ装着ユニット110に装着した八本のカートリッジ1は、夫々チューブ182(図6参照)を介して八個の印刷ヘッドにインクを供給する。各印刷ヘッドは底面に設けた複数個の微細なノズルを有する。ノズルは圧電素子の駆動に伴い下向きにインクの液滴を吐出する。プリンタ100は、布帛を載置したプラテン102とキャリッジを移動しながらノズルからインクを吐出することで、布帛に印刷を行う。
【0027】
本体部108は前面右下部に操作部105を備える。操作部105は、様々な情報を表示するディスプレイ、プリンタ100の様々な動作に対する指示を入力する為のボタン等を有する。
【0028】
カートリッジ装着ユニット110は、合計八本のカートリッジ1が装着可能である。通常、八本のカートリッジ1は、4本の白インクのカートリッジ1、各1本のシアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックの4色のインクのカートリッジ1を含む。カートリッジ装着ユニット110は筐体111を備える。図示は省略するが、筐体111は右側に開口を有する。カートリッジ装着ユニット110は該開口を介して本体部108に取り外し可能に固定する為の固定部を備える。カートリッジ装着ユニット110は、例えば固定部を介して螺子で本体部108の受け部(図示略)に固定してある。カートリッジ装着ユニット110は、八個以外の数の印刷ヘッドを有する他の種類のインクジェットプリンタにも着脱可能な汎用型のユニットである。また、図示は省略するが、カートリッジ装着ユニット110は、カートリッジ1よりも短い他の種類のカートリッジも着脱可能である。
【0029】
筐体111は、前面上部に、左右方向に長い略矩形状の開口112を有する。カートリッジ装着ユニット110は、開口112の奥側、つまり筐体111の内部にホルダユニット150(図11参照)を備える。ユーザは開口112を通して内部のホルダユニット150(より詳細にはホルダ159)にカートリッジ1を着脱する。カートリッジ装着ユニット110は、ホルダユニット150の奥側に接続部180(図6参照)を備える。接続部180はインクを導出する為の導出針183を含む。筐体111は、開口112の下端部に沿って筐体111の前面から前方へ突出する案内部140を備える。案内部140は、開口112を介してカートリッジ1が適切なホルダ159(図12参照)にスムーズに進入するよう案内する。カートリッジ装着ユニット110の内部構造の詳細については後述する。
【0030】
図2〜図10を参照し、カートリッジ1の構成について説明する。カートリッジ1は、ケース2、インクパック7、可動部材5、押圧部材8を備える。ケース2は薄型略箱状であり、前後方向を長手方向とする。ケース2は、例えば樹脂製である。ケース2はインクパック7と押圧部材8を収容する。以下、ケース2、インクパック7、可動部材5、押圧部材8の構成について、順に説明する。前述の5色のカートリッジ1は、インクパック7が収容する液体のインクの色が異なるのみで、他の構成は全て同じである。
【0031】
図2〜図4を参照し、ケース2の構成について説明する。図2、図3に示す如く、ケース2は、全体として、前後方向に長く左右方向に薄い直方体の後端部下側にある角を斜めに切り取ったような形状である。図4に示す如く、ケース2は本体部3と蓋部4を含む。
【0032】
図4に示す如く、本体部3は、薄板状の左壁30、底壁31、上壁32、後壁33、前壁34を含む。底壁31、上壁32、後壁33、前壁34は、略五角形状の左壁30の外周に沿って、左壁30の伸展方向に対して略垂直に、略同一の長さで延びる。左壁30、底壁31、上壁32、後壁33、前壁34は、ケース2の左側面、底面、上面、背面、前面を夫々形成する。後壁33は、背面部331と斜面部332を含む。背面部331は、上壁32と直角を成すように接続する。斜面部332は、底壁31と背面部331を斜めに繋ぐ。底壁31と斜面部332、背面部331と斜面部332は、夫々鈍角を成す角部を形成する。蓋部4は、左壁30に対向し、ケース2の右側面を形成する。蓋部4は、本体部3の左壁30に対応する略五角形状の薄板部材である。ケース2は、左壁30と蓋部4が互いに略平行に対向するように、蓋部4を本体部3(詳細には底壁31、上壁32、後壁33、前壁34)に接合することで形成する。
【0033】
図2、図4に示す如く、ケース2の左壁30は、外面(ケース2の左側面)から突出する5つの脚部301〜305を備える。具体的には、左壁30は、斜面部332と接続する部分に脚部301を備え、背面部331と接続する部分に脚部302を備える。左壁30は、脚部301、302から前方(図2の右上方向)に離間した位置に、脚部303、304を夫々備える。左壁30は、前端部近傍に脚部305を備える。脚部301〜305は全て、カートリッジ1を後述するホルダ159(図11参照)に装着した時、ホルダ159の上レール部161及び下レール部171のいずれとも干渉しない位置にある。脚部301〜305は、左壁30を下にした状態でカートリッジ1を平面上に載置した場合、カートリッジ1を左壁30全体が平面から離間した状態で安定して支持する機能を有する。
【0034】
図2に示す如く、ケース2の後壁33のうち斜面部332は、脚部301に対応する位置に口栓用開口335を有する。口栓用開口335は、ケース2内に収容したインクパック7(図5参照)からインクを導出する為の開口部である。インクパック7は、口栓72の第二開口702(図6参照)が口栓用開口335に臨むようにケース2内に配置する。口栓用開口335に隣接する脚部301は、口栓72の収納空間を形成する壁部としても機能する。脚部301は、突出端である平面部の中央部付近に、矩形状の係合孔307を有する。係合孔307は、インクパック7の口栓72を本体部3に対して位置決めし且つ固定する為の開口部である。
【0035】
図2に示す如く、ケース2の後壁33のうち背面部331は、脚部302に対応する位置に露出部開口336を有する。露出部開口336は、可動部材50(図5参照)の一部である露出部53を露出し、ユーザの露出部53の位置確認を可能とする為の開口部である。露出部開口336に隣接する脚部302は、露出部53を含む可動部材50の一部が移動可能な空間(可動空間)を形成する壁部としても機能する。
【0036】
図2、図3に示す如く、ケース2は、前端部の右上角部(図3では蓋部4の左上の角部)に把手部40を有する。把手部40は、凹部41と突出部42を含む。凹部41はケース2の外面よりも内側方向に凹んだ部位である。突出部42は凹部41から突出する部位である。ユーザは、僅かな隙間を空けてカートリッジ装着ユニット110に装着した複数のカートリッジ1(図1参照)の中から任意の一つのカートリッジ1を取り出す時等に把手部40を使用する。
【0037】
図5、図6、図10を参照し、インクパック7の構成について説明する。図5に示す如く、インクパック7は、インクを収容するインク袋71と、インク袋71に設けた口栓72を備える。インク袋71は、可撓性を有する二枚の長方形状の樹脂性シートをシートの一面同士が対向した状態で重ね合わせ、四辺に沿った周囲部を熱溶着(熱シール)することで形成した袋状の容器である。各シートは、例えばポリエチレン(厚み約40μm)、ナイロン(厚み約15μm)、シリカを蒸着したPET(厚み約12μm)の三層構造を有する。インク袋71は、溶着した周囲部716と、対向する二層のシート711、712(図10参照)が形成するインク収容部717を有する。インク収容部717はインクを収容する。
【0038】
インク袋71は、対向配置した可撓性を有する二層のシート711、712を含み、二層のシート711、712間にインクを収容可能な空間を形成した袋状の容器であればよい。故に、例えば一枚の長方形状のシートを半分に折曲げて二層とし、折曲げ部以外の三辺に沿って二層を接合することでインク袋71を形成してもよい。また、対向する二枚のシートの三辺に沿って二枚を接合し、各シートの残る一辺を別のシートと接合して、底部を有するインク袋71としてもよい。対向する二枚のシートの四辺を、夫々、インク袋71の側面となる別のシートを介して接合したインク袋71であってもよい。更に、シートの材質は上述の例に限らない。シートの接合方法も、例えば接着等の溶着以外の方法であってもよい。
【0039】
口栓72は、略円筒状の本体部721と二つの羽根状の連結部722を備える。連結部722は、本体部721の一端側で本体部721の外周面から互いに反対方向に突出する。口栓72は、連結部722を含む本体部721の一端部を、インク袋71を形成する二枚のシートの間に挿入した後、インク袋71の周囲部716と一体的に溶着することで、インク袋71に固定してある。周囲部716と溶着しない本体部721の他の部分は、インク袋71の長手方向における一端部からインク袋71の外方へ突出する。口栓72は、本体部721(より詳細には、後述する中空部700)の軸線Xがインク袋71の長手方向と略平行になるように配置する。また、軸線Xは、軸線Xに直交する方向(インク袋71の短手方向)におけるインク袋71の一端部寄りに位置する。本実施形態では、口栓72は、インク袋71の4つの角部のうち1つの近傍に設けてある。
【0040】
図6に示す如く、本体部721は内部に円筒状の中空部700を有する。中空部700は、インク収容部717に連通する第一開口701から、インク袋71の外部に開口する第二開口702まで通じる。円柱状のゴム栓723は中空部700の第二開口702側の端部に挿入してある。つまりゴム栓723が口栓72の先端側の開口を塞ぐので、インク袋71は密閉状態でインクを収容する。口栓72は、中空部700を介してインク収容部717と外部とが通じるようにインク袋71に設ければよいので、口栓72の固定方法は溶着に限らない。例えば、口栓72はインク袋71と一体的に形成してもよい。
【0041】
本体部721は略円筒状であるが、本体部721の第二開口702側の先端部は矩形ブロック状に形成してある。該矩形ブロック状の部分は、周方向外側に突出する角柱状の係合突起725(図2参照)を備える。係合突起725は、前述した脚部301の係合孔307(図2、図4参照)に嵌合することで、口栓72をケース2の本体部3に対して位置決めし且つ固定する。
【0042】
図5、図7を参照し、可動部材5の構成について説明する。図5に示す如く、可動部材50は、軸部51、腕部52、露出部53を含む。腕部52はL字状の板部材である。腕部52は、板面が左壁30と蓋部4に対向し、一端部が底壁31に当接し且つ他端部が露出部開口336近傍に位置するように配置する。軸部51は、脚部303(図2参照)の後方且つ蓋部4側の端部近傍に、ケース2の前後方向に沿って固定してある。軸部51は、腕部52の底壁31に当接する一端部に接続し、腕部52をケース2の左右方向(図7の矢印A方向)に回動可能に支持する。軸部51に設けた捻りバネ(図示略)は、腕部52を左壁30の方向(図7の右方向)へ付勢する。矩形板状の露出部53は、腕部52の先端に接続する。露出部53は、腕部52の板面に対して略垂直に、左壁30方向に突出する。図7に示す如く、露出部53は露出部開口336を通して目視可能な位置にある。
【0043】
カートリッジ1の使用開始時には、インクを満量まで充填したインク袋71は膨らんでいる。故に、インク袋71は露出部53の左端部(図7では右側の端部)を押圧する。腕部52は、捻りバネの付勢力に抗して、軸部51を中心として図7に示す左側の位置まで蓋部4の方向に回動する。インクの残量が少なくなると、インク袋71は萎む。故に、露出部53に対する押圧力は弱まる。腕部52は、捻りバネの付勢力で左壁30の方向に回動する。インクがなくなると、露出部53は図7に示す右側の位置に至る。上述の如く、露出部53の位置はインクの残量に応じて変化する。左壁30に露出部開口336に連接して設けた脚部302は、露出部53の可動空間を確保する。ユーザは、露出部開口336から可動部材50の露出部53の位置を確認することで、インク袋71内のインクの残量を確認することができる。つまり可動部材50は、インク残量指標部材として機能する。
【0044】
図8を参照し、押圧部材8の構成について説明する。押圧部材8は、可撓性を有し弾性変形が可能な矩形状の一枚のシート81を、シート81の一方の面である第一面811を内側にして、対向する一対の端部を第一面811の側で接合することで形成した部材である。シート81は、例えば厚みが約125μmのPET製シートであるシート81の外側の面は第二面812という。シート81の可撓性は、インク袋71の二層のシート711、712(図10参照)より低い。言い換えると、インク袋71のシート711、712の方が押圧部材8のシート81よりも柔らかく撓みやすい。なお、シート81の材質や厚みは上記例に限らず、シート81の可撓性がインク袋71のシート711、712の可撓性より低くなるように選択可能である。
【0045】
押圧部材8は、接合部82と湾曲部83を含む。接合部82はシート81の対向する一対の端部を接合した部分である。接合部82は、例えば両面粘着テープで接着して形成してもよいし、溶着して形成してもよい。円筒形状のシートの側面を折り曲げて接合部82を形成してもよい。湾曲部83は、接合部82を形成する一対の端部を繋ぐ湾曲した面部である。シート81は弾性変形するので、湾曲部83は折れ曲がることなく撓んだ状態を維持する。以下、接合部82に対向する押圧部材8の一端部(接合部82から延びる面部が湾曲して接合部82の方へ戻る、接合部82から最も離れた位置にある部分)を湾曲端部84という。湾曲部83は、湾曲端部84を境にして互いに対向する第一面部831、第二面部832を含む。外力がシート81の第二面812側から湾曲部83に加わると、シート81が撓む。その結果、湾曲部83の形状、第一面部831と第二面部832の離間距離は変化する。湾曲部83の撓みの自由度を確保する為に、接合部82の幅は、接合部82から湾曲端部84までの距離に対して十分小さいことが好ましい。
【0046】
図5、図9、図10を参照して、ケース2、インクパック7、可動部材5、押圧部材8の配置関係について説明する。図5に示す如く、ケース2は、口栓72の軸線Xがケース2の長手方向(つまり前後方向)と略一致し且つ底壁31、上壁32、左壁30と略平行となるように、インクパック7を収容する。蓋部4を本体部3に接合すると、蓋部4は左壁30と略平行となるので、軸線Xは蓋部4に対しても略平行となる。また、インクパック7は、軸線Xが、軸線Xに直交する方向におけるケース2の一端部(本実施形態では底壁31側の端部)寄りに位置するようにケース2内に配置する。斜面部332(より詳細には、外面333)は、軸線Xに対して斜めに交差する。底壁31に向かう外面333と軸線Xがケース2内側で成す角は、90度より小さい鋭角である。
【0047】
また、インクパック7は、口栓72の軸線Xを含み且つ斜面部332の外面333と直角を成す仮想的な平面に対して、二層のシート711、712(図10参照)が略平行に延びるようにケース2内に配置する。本実施形態では該平面はケース2の左壁30と蓋部4に略平行となるので、二層のシート711、712のシート面は夫々左壁30と蓋部4に対向して伸展する。
【0048】
インクパック7の口栓72は、上述の如く、係合突起725が係合孔307に嵌合することで、本体部3に固定する(図2参照)。更に、インク袋71は、二層のシート711、712のうち左壁30に対向するシート712(図10参照)の領域75を左壁30の内面に貼着することで、本体部3に部分的に固定する。領域75は、例えば両面粘着テープを用いて左壁30に貼着する。領域75は、インク袋71のシート711、712の撓みの自由度を確保する為に、インク収容部717よりも小さい領域とする。また、領域75は、口栓72方向へのインクの円滑な移動を可能とする為に、口栓72の軸線X方向において、口栓72から離間した位置に設ける。更に、領域75は、インク袋71を本体部3に配置した時に可動部材5の設置範囲外となる位置に設ける。
【0049】
インク収容部717を形成するシート711、712は可撓性を有するので、インク収容部717中に残存するインクの量が多ければ、二層のシート711、712は互いに離れる方向に湾曲する。インクの残量が少なければ、シート711、712間の距離が狭まって互いに接触する方向に撓む。つまり、二層のシート711、712は固定された平面ではないので、上記仮想的な平面と厳密には平行にならない。特に、図10に示す如く、本実施形態のインク袋71はシート712の領域75(図5参照)で左壁30に貼着してあるので、蓋部4側にあるシート711(貼着していないシート)の方が撓む量がより大きい。故に、上記の仮想的な平面との関係でいう「略平行」は、平面同士の厳密な平行関係のみでなく、シート711、712の撓みを許容した平行に近い状態をも含む。
【0050】
図5に示す如く、押圧部材8は、接合部82の少なくとも一部を蓋部4の内面に貼着することで、蓋部4に部分的に固定してある。本実施形態では、接合部82の三箇所を両面粘着テープ85で蓋部4に貼着してある。湾曲部83の第一面部831(図10参照)は蓋部4の内面に対向し、接合部82と湾曲端部84は蓋部4の長手方向(つまり口栓72の軸線X方向)に沿って配置する。接合部82は、上壁32と接合する蓋部4上端部(図5では下側の端部)になるべく近い位置に配置するのが好ましい。ただし本実施形態では、把手部40(図3参照)の凹部41が蓋部4の上端部に存在するので、接合部82は凹部41の近傍位置に配置してある。本実施形態では、湾曲部83は、撓みの自由度を高める為に、蓋部4に貼着しない。押圧部材8は、蓋部4を本体部3に接合した時に湾曲端部84が底壁31に当接するように蓋部4に配置するのが好ましい。
【0051】
また、押圧部材8は、ケース2内で口栓72の軸線X方向において口栓72から離間した位置に配置するのが好ましい。該配置は、押圧部材8が口栓72近傍でインク袋71を押圧し、口栓72へ向かうインクの移動を妨げるのを確実に防止することができる。なお、本実施形態では、口栓72の近傍に配置する可動部材5の動作を妨げないように、押圧部材8は可動部材5の設置範囲に対向しない位置に設ける。本実施形態の押圧部材8は、接合部82が延びる方向の長さが蓋部4の前後方向長さの三分の二程度である。押圧部材8は、蓋部4を本体部3に接合した時にインク袋71の領域75に対向するように配置し、前壁34に接合する前端部まで延びる。
【0052】
図9、図10に示す如く、上述の配置で押圧部材8を固定した蓋部4を本体部3に接合すると、押圧部材8はケース2内でインク袋71と蓋部4の間に位置する。湾曲部83の第一面部831の少なくとも一部分は蓋部4の内面に当接して付勢される。第二面部832の少なくとも一部分はインク袋71のシート711に当接して付勢される。接合部82は、口栓72の軸線Xに対して底壁31とは反対側、つまり軸線Xよりも上方に位置する。湾曲端部84は、軸線Xよりも底壁31寄り、つまり軸線Xよりも下方にある。本実施形態では、湾曲端部84は底壁31に当接する。
【0053】
インクが満量状態のインク袋71は、インク収容部717を形成するシート711、712のうちシート711が蓋部4方向に撓み、インク収容部717は膨らんでいる。押圧部材8は、インクが満量状態の時、インク収容部717内のインクの圧力がシート711を蓋部4の方向へ押圧することで、第二面部832が蓋部4方向に弾性変形して撓むように構成してある。その結果、第一面部831の蓋部4への当接部分と第二面部832のシート711への当接部分の間の距離は、外力が湾曲部83に加わらない時の第一面部831と第二面部832間の距離より小さい状態となる。押圧部材8のシート81の復元力(弾性力)は、第二面部832を左壁30の方向へ付勢する。なお、図9に示す如く、インクが満量状態のインク袋71は、ケース2の前後方向に略均一にインクで膨らみ、押圧部材8を押圧する。故に、押圧部材8の第一面部831の蓋部4への当接部分と第二面部832のシート711への当接部分の間の距離は、ケース2の前後方向で略同一である。インクが減少していく時のインクパック7と押圧部材8の状態の変化については後で詳述する。
【0054】
押圧部材8は、蓋部4を本体部3に接合した時にケース2内で適切な配置を維持できるように、少なくとも部分的に固定するのが好ましいが、全く固定しなくてもよい。該場合、押圧部材8は、蓋部4を本体部3に接合する前に、第二面部832がインク袋71のシート711に対向するように配置する。その後、蓋部4を接合すると、押圧部材8は、ケース2内でインク袋71と蓋部4の間に位置する。押圧部材8は、接合部82以外の部位で蓋部4に固定してもよい。例えば、湾曲端部84からなるべく離れた湾曲部83の一部分を蓋部4に貼着してもよい。
【0055】
図6、図11、図12を参照し、図1に示すカートリッジ装着ユニット110の筐体111内部構造について説明する。筐体111は、内部にカートリッジ1を着脱可能なホルダユニット150(図11参照)、カートリッジ1からインクを導出する為の接続部180(図6参照)等を備える。以下、ホルダユニット150と接続部180について順に説明する。
【0056】
図11を参照し、ホルダユニット150の構成について説明する。なお、図11はホルダユニット150にカートリッジ1を一本装着した例を図示し、図の簡単化の為、筐体111を含むカートリッジ装着ユニット110の他の部分の図示は省略してある。図11の上下方向、右斜め方向、左斜め上方向、左斜め下方向、右斜め上方向は、夫々、ホルダユニット150及びホルダ159の上下方向、前方向、後ろ(奥)方向、左方向、右方向である。図11に示す如く、ホルダユニット150は、ホルダ159、載置板155、固定板152、固定板158を備える。八個のホルダ159は、左右方向に等間隔で載置板155に配置し、固定してある。
【0057】
図12、図6を参照し、ホルダ159の構成の詳細について説明する。ホルダ159は、カートリッジ1を保持し且つ適切な装着位置に案内する部材である。ホルダ159は、金属製の板状部材から、カートリッジ1にほぼ対応する形状に形成してある。図12に示す如く、ホルダ159は、右案内部160、上レール部161、下レール部171を含む。右案内部160は、カートリッジ1をホルダ159に装着する時にケース2の右端部を案内する部位である。右案内部160は、略五角形状の板部であり、概ねカートリッジ1の蓋部4後部の側面視形状に対応する。ただし、右案内部160の後端部の上部は後方へ突出する。突出した先端は、左方へ屈曲する屈曲部154である。右案内部160はカートリッジ装着ユニット110(図1参照)の上下方向に沿って配置する。右案内部160の長手方向の長さは、カートリッジ1の前後方向長さの二分の一よりやや短い程度である。
【0058】
上レール部161は、右案内部160の上端部に沿って左側に突出する部位である。上レール部161は、上案内部162と左上案内部163を含む。上案内部162は、右案内部160の上端部から左方へ略垂直に延びる。左上案内部163は、上案内部162の左端部から下方へ略垂直に延びる。上レール部161は、カートリッジ1をホルダ159に装着する時にケース2の上端部(より詳細には、上壁32と左壁30上端部の外面)を案内する部位である。上案内部162の幅(左右方向の長さ)は、ケース2の幅(左側面から右側面までの距離)と略同一である。第一固定片166は、上案内部162の前端付近から上方に突出する。図6に示す如く、当接部169は、上案内部162の後端から下方へ略垂直に屈曲して延びる。当接部169は、カートリッジ1をホルダ159に装着した時、カートリッジ1後端の背面部331に当接し、カートリッジ1がそれ以上奥側へ移動するのを規制する。
【0059】
図12に示す如く、下レール部171は、右案内部160の下端部に沿って左側に突出する部位である。下レール部171は、下案内部172と左下案内部173を含む。下案内部172は、右案内部160の下端部から左方へ略垂直に延びる。左下案内部173は、下案内部172の左端部から上方へ略垂直に延びる。下レール部171は、カートリッジ1をホルダ159に装着する時にケース2の下端部を案内する部位である。下案内部172は、上案内部162に対向して平行に延びる。上案内部162と下案内部172との離間距離は、ケース2の上下方向の高さ(上面から底面までの距離)と略同一である。下案内部172の幅(左右方向の長さ)は、ケース2の幅(左側面から右側面までの長さ)とほぼ同一である。第二固定片176は、下案内部172の前端部の右端から右方に突出する。第三固定片177は、下案内部172の中央より後方位置で左方に突出する。
【0060】
ユーザがホルダ159をカートリッジ1に装着する場合、ユーザは最初にカートリッジ1の後端部(後壁33側)をホルダ159の前端部から挿入する。右案内部160、上レール部161、下レール部171が夫々ケース2の右側面(蓋部4の外面)、上面(上壁32の外面)、及び下面(底壁31の外面)を案内するのと同時に、カートリッジ1はホルダユニット150の奥側に向けて移動する。ユーザがホルダ159からカートリッジ1を取り外す場合のカートリッジ1の移動方向は、装着時とは逆方向である。つまり、右案内部160の長手方向、上レール部161、下レール部171の伸展方向は、カートリッジ装着ユニット110のカートリッジ1着脱方向である。
【0061】
図11を参照し、ホルダユニット150の組み立てについて説明する。載置板155、固定板152、固定板158は全て金属性の薄板部材であり、ホルダ159を固定する為の螺子穴を有する。作業者は、略水平方向に配置した載置板155の前後端に、八個のホルダ159の下レール部171の前後端を合わせる。作業者は、八個のホルダ159の下レール部171を左右方向に等間隔に載置板155に載置する。作業者は、ホルダ159の第二固定片176、第三固定片177(図12参照)に設けた螺子穴と、載置板155の螺子穴に順次螺子を締結する。作業者は該方法でホルダ159を載置板155に固定する。作業者は、固定板152を各ホルダ159の屈曲部154に後方から当接するように配置して螺子止めすることで、各ホルダ159を固定板152に固定する。作業者は、固定板158を各ホルダ159の第一固定片166に後方から当接するように配置して螺子止めすることで、各ホルダ159を固定板158に固定する。ホルダユニット150は完成する。
【0062】
ホルダユニット150は、載置板155の前端が筐体111の開口112(図1参照)の下端部に沿って配置した状態で、筐体111内の開口112の奥側に設置したフレーム116(図示略)に固定してある。ホルダユニット150は、載置板155の板面がカートリッジ装着ユニット110の奥側に向けて下方向に緩やかに傾斜した姿勢でフレームに固定してある。
【0063】
図6を参照し、接続部180について説明する。接続部180はホルダユニット150奥側に設けてある。図6に示す如く、接続部180は、円筒状の固定部181、固定部181に接続するチューブ182、インクを導出する為の導出針183を含む。なお、実際には、固定部181は筐体111内で固定してある。しかし、固定部分の図示は省略する。カートリッジ装着ユニット110は、八個のホルダ159に対応して八個の接続部180を備える。導出針183は、固定部181の前端中央部から突出する。チューブ182の一端は、固定部181の後端側に接続する。チューブ182は、筐体111右側の開口(図示略)を通って本体部108(図1参照)の内部に延びる。チューブ182の他端は、印刷ヘッド(図示略)に接続する。
【0064】
ホルダ159がカートリッジ1を案内し、カートリッジ1がホルダユニット150に装着する過程で、前方へ突出する導出針183と固定部181の一部は、カートリッジ1の斜面部332に設けた口栓用開口335からケース2内部に進入する。導出針183がゴム栓723の中心部に刺さることで、接続部180はカートリッジ1に接続する。カートリッジ1の背面部331がホルダ159の当接部169に当接すると、カートリッジ1のホルダ159への装着は完了する。この時、導出針183はゴム栓723を貫通した状態である。導出針183の先端部は中空部700内にある。導出針183の先端部はインクが流通する孔を有する。インク袋71内のインクは、中空部700、導出針183、チューブ182を通って、印刷ヘッドに供給可能となる。
【0065】
図9、図10、図13〜図16を参照し、満量状態からインクが減少していく時のインクパック7と押圧部材8の状態の変化について説明する。なお、図9、図10を参照して上述した如く、インクが満量状態の時には、第二面部832は、インク収容部717内に充填したインクの押圧力で蓋部4方向に撓んでいる。その後、印刷ヘッドが印刷の為にインクを消費するのに伴い、インクが接続部180を介してインク袋71から流出する。インクの減少に伴い、インク袋71は、インク収容部717を形成するシート711、712が左壁30と蓋部4の対向方向に互いに近づくように、萎んで変形し始める。第二面部832は、インク袋71の変形に伴い、シート81(図8参照)の復元力で左壁30方向に膨らむように変形し、インク袋71のシート711を左壁30方向へ押圧する。
【0066】
なお、上述の如く、ホルダユニット150(図11参照)は、載置板155の板面がカートリッジ装着ユニット110の奥側に向けて下方向に緩やかに傾斜する。カートリッジ1は、底壁31を下側、後壁33を奥側にしてホルダユニット150に装着するので、後壁33側に向けて底壁31が下方に傾斜した姿勢となる。つまり、インク袋71は、口栓72の軸線Xが下方にあり且つ第一開口701側に向かって斜め下方向に延びる姿勢となる。また、シート711、712は上下方向に沿って伸展する。故に、インクは、自重でシートの内面を伝って下方向に流れ、更にインク収容部717の下端部に沿って口栓72の第一開口701の方へ流れる。つまり、インクが局所的に集まった部位がインク収容部717内に発生する。
【0067】
その結果、インク袋71は、ケース2の上下方向、前後方向で不均一に変形する。例えば、図14に示す如く、ケース2の後部、つまりインク袋71が押圧部材8と対向しない部分では、シート711、712は、インク収容部717の上部では接触し、下部では互いに離間した状態となる。また、図13に示す如く、シート711、712は、前壁34側にある部分では、口栓72が位置する後壁33側にある部分よりも早く互いに近づき、接触した状態となる。押圧部材8は、不均一に変形したインク袋71の形状に沿って、ケース2の上下方向、前後方向で不均一に変形する。例えば、図13に示す如く、前壁34側でシート711、712が互いに接触した部分に対向する押圧部材8の部分は、シート711に接触しない。図16に示す如く、第一面部831と第二面部832間の距離は最大となる。
【0068】
図13に示す如く、ケース2の前後方向中央部付近では、シート711、712は互いに近づく。第二面部832は左壁30方向に膨らむように変形し、シート711により付勢されて弾性変形して弾性力により、シート711を左壁30方向へ押圧する。図15に示す如く、ケース2の前後方向中央部付近でも、インクが減少したことで、シート711、712の上部は接触している。第二面部832がシート711を左壁30方向に押圧すると、シート711は第二面部832に沿って撓む。この時、第二面部832がシート711を左壁30方向へ押圧する力は、第一面部831と第二面部832の離間距離が最大の部分で最大となる。湾曲端部84が底壁31に当接しているので、第二面部832は、インク収容部717の下部を上に向かって押し上げるように左壁30方向に膨らむ。その結果、インク収容部717の下部に溜まったインクは、上方へ向けて移動する。インクは上方へ移動するほど口栓72の第一開口701に向けて流れやすくなる。更に、図13に示す如く、口栓72から離れてインク袋71が萎むほど、押圧部材8は第一面部831と第二面部832の離間距離が広くなり、インク袋71を押圧する。インクは、押圧部材8が押圧していない前方、つまり口栓72の方向に流れやすくなる。
【0069】
以上説明した如く、本実施形態のカートリッジ1は、ケース2内に、インク袋71と押圧部材8を備える。押圧部材8は、インク袋71を形成する二層のシート711、712よりも可撓性が低いシート81を湾曲して形成した湾曲部83を有する。押圧部材8は、ケース2内のインク袋71と蓋部4の間に付勢されて配置してある。押圧部材8は、上述の作用で口栓72に向けてインクを効率よく移動することができる。また、押圧部材8は、インクの内部移動で変形したインク袋71の形状に沿って不均一に弾性変形しながら、弾性力によりインク袋71を押圧する。故に、押圧力を均一に付与する部材がインク袋71を押圧する場合に比べ、インク袋71内で残存するインクが分散して広がるのを防止することができる。実施形態は、プリンタ100に装着したカートリッジ1を例として押圧部材8の作用を説明した。しかし、押圧部材8は、プリンタ100への装着に関係なく、底壁31を下側にしてカートリッジ1を平面等に載置した場合にも、同様の効果を奏することができる。
【0070】
本実施形態では、蓋部4、左壁30、斜面部332、底壁31は、夫々本発明の「第一壁部」、「第二壁部」、「第三壁部」、「第四壁部」に相当する。口栓用開口335は、「貫通部」に相当する。インク袋71のシート711、712は「二層のシート」に相当する。シート711は「第一層部」に相当する。ホルダ159は「カートリッジ装着部」に相当する。
【0071】
本発明は上記実施形態の他に種々の変更が可能である。以下、上記実施形態に加えうる変更の例について説明する。例えば、押圧部材は、インク袋のシートよりも可撓性が低いシートの一方の面(第一面)を内側にして、シートの少なくとも一つの端部が第一面に対向するように、外側に向かって湾曲させた面部を含んでいればよい。故に、押圧部材は、矩形以外の形状(例えば、台形、楕円形、アーチ型等)のシートから形成してもよい。押圧部材が、接合部82のようなシートの一対の端部を接合した部分を有する場合、湾曲部を含む安定した形状を維持することができる。しかし、シートの端部は接合しなくてもよい。
【0072】
例えば図17、図18に示す如く、押圧部材9は、長方形状のシート91を第一面911に端部92が対向するように湾曲させただけで形成してある。押圧部材9は第一面部931、第二面部932を含む湾曲部93と、湾曲端部94を含む。押圧部材9は接合部を備えない。カートリッジ10は、上記実施形態のカートリッジ1よりも前後方向の長さが短い。つまりカートリッジ10のケース20とインクパック70は上記実施形態のケース2とインクパック7よりも短い。押圧部材9は、湾曲端部94が前壁34に略平行となる向きで、蓋部4内面に第一面部931の少なくとも一部が当接し且つインク袋71のシート711に第二面部932の少なくとも一部が当接するようにケース2に収容してある。第一面部931は蓋部4に部分的に固定してもよいし、固定しなくてもよい。
【0073】
ユーザが左壁30を下側にしてカートリッジ10を平面等に載置した場合、インク袋71内のインクが減少するのに伴い、押圧部材9の第二面部932が左壁30方向に膨らむ。第二面部932はシート711を左壁30方向に押圧する。故に、押圧部材9は、インクを口栓72に向けて効率的に移動することができる。
【0074】
ケース2を構成する壁部のうち、底壁31、上壁32、背面部331、前壁34の少なくとも一部は省略してもよい。例えば、前壁34は省略してもよい。底壁31、上壁32は、ケース2の長手方向全体を覆う必要はなく、一部に開口を有してもよい。底壁31、上壁32、後壁33、前壁34は全て本体部3に設ける必要はなく、一部または全てを蓋部4に設けてもよい。
【0075】
ホルダユニット150は、載置板155を奥側に向けて下方向に傾斜することなく、載置板155が略水平となるように配置してもよい。インクジェットプリンタ100にカートリッジ1を着脱する為の構成は、ホルダ159を有するホルダユニット150に限らない。例えば、インクジェットプリンタ100は、各カートリッジ1を着脱方向に案内可能な通路を筐体111内に備えるだけでもよい。
【符号の説明】
【0076】
1、10 インクカートリッジ
100 インクジェットプリンタ
2、20 ケース
30 左壁
31 底壁
332 斜面部
335 口栓用開口
4 蓋部
71 インク袋
711、712 シート
72 口栓
8、9 押圧部材
82 接合部
83、93 湾曲部
84、94 湾曲端部
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを収容するインク袋とインク袋を収容するケースを備えたインクカートリッジ、及びインクカートリッジを着脱可能なインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、インクジェットプリンタ(以下、単にプリンタという)は、印字ヘッドにインクを供給する為のインクカートリッジ(以下、単にカートリッジという)を着脱可能な構成を有する。一般的なカートリッジは、可撓性を有するインク袋と、インク袋に連結して設けたインクを取り出す為の口栓と、インク袋を収容する矩形箱状のケースとを備えている。更に、カートリッジは、プリンタがインク残量を検知することを可能とする為に、インク袋内のインクの残量が減少するのに伴ってケース内で移動する部材を備える場合がある。例えば特許文献1は、インクの残量が減少すると位置が下がる検出板をインク袋に接着したカートリッジを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−199496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のカートリッジにおいて、インク残量が減少するとインク袋は萎む。検出板はインク袋が萎むのに伴って下降する。検出板は変形しないので、検出板の自重に起因する押圧力は下方向に均一に作用する。インク袋内のインクは押圧に伴い移動し、検出板の周囲方向へ分散する。故に、該カートリッジは、インク袋に残存するインクを口栓に向けて効率よく移動できない。また、例えば、カートリッジのケース内に検出板がない場合、インク袋内のインク量に応じてインク袋が変形してインクが移動する。該場合でも、インクを口栓に向けてより効率よく移動させたい場合がある。
【0005】
本発明の目的は、インク袋のインクを口栓へ向けて効率よく移動することが可能なインクカートリッジ及びインクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様に係るインクカートリッジは、インク袋と、口栓と、ケースと、押圧部材とを備える。前記インク袋は、対向配置された可撓性を有する二層のシートを少なくとも含んで袋状に形成され、内部にインクを収容する。前記口栓は、前記インク袋に設けられ、前記インク袋と連通する第一開口から外部に開口する第二開口まで通じる中空部を有する。前記ケースは、略箱型であり、前記インク袋を収容する。前記押圧部材は、前記二層のシートよりも低い可撓性を有するシートを、前記シートの一方の面である第一面を内側にして、前記シートの少なくとも一つの端部が前記第一面に対向するように外側に向かって湾曲させた面部である湾曲部を含む。前記ケースは、第一壁部と、第二壁部と、第三壁部と、貫通部とを少なくとも含む。前記第一壁部及び第二壁部は、前記口栓の軸線を長手方向として、前記軸線に対して略平行に配置された一対の壁部である。前記第二壁部は、前記一対の壁部の伸展方向に対して略垂直、且つ前記軸線に対して斜めに配置された壁部である。前記貫通部は、前記口栓の前記第二開口を臨むように前記第三壁部に設けられている。前記インク袋は、前記二層のシートのシート面が夫々前記第一壁部及び前記第二壁部に対向するように前記ケースに収容される。前記押圧部材は、前記ケース内の前記インク袋と前記第一壁部の間に、前記湾曲部の一部分が前記第一壁部に当接し、前記一部分とは異なる他の一部分が前記二層のシートのうち一方である第一層部に当接して復元力を生じるように弾性変形する。
【0007】
第一態様のインクカートリッジは、ケース内に、インク袋を形成する二層のシートよりも可撓性が低いシートから形成した押圧部材を備える。押圧部材は、インク袋と第一壁部との間に配置してある。押圧部材は、シートの一方の面である第一面を内側にして、シートの少なくとも一つの端部が第一面に対向するように外側に向かって湾曲させた面部である湾曲部を含む。故に、シートが撓んで弾性変形することで、湾曲部の形状や、湾曲部を形成するシートの対向部分の離間距離は変化可能である。インク袋内のインクが満量状態から減少すると、インク袋を形成する二層のシートは撓む。インク袋は変形する。湾曲部は、変形したインク袋の形状に沿って、復元力で第一壁部とは反対方向に膨らむように撓み、インク袋を第二壁部の方へ押圧する。湾曲部は、該作用でインクをインク袋内で移動することができる。また、湾曲部がインク袋を押圧する力は、湾曲部を形成するシートの対向部分の離間距離が最大の位置で最大となる。故に、インクカートリッジは、均一な押圧力を付与する部材でインク袋を押圧する場合に比べ、インク袋内で残存するインクが分散して広がるのを防止し且つインクを口栓へ向けて効率的に移動することができる。
【0008】
前記インク袋は、前記口栓の軸線が、前記軸線に直交する方向における前記ケースの一端部である第一端部寄りに位置するように前記ケース内に配置されてもよい。前記押圧部材は、前記シートの一対の端部が前記第一面の側で接合されることで形成された部分である接合部と、前記接合部と対向する湾曲した端部である湾曲端部とを含んでもよい。前記押圧部材は、前記接合部が前記軸線に対して前記第一端部とは反対側に位置し、且つ、前記湾曲端部が前記軸線よりも前記第一端部寄りに位置するように前記ケース内に配置されてもよい。
【0009】
該場合、ユーザが第一端部を下側にしてインクカートリッジを平面等に載置すれば、第一壁部、第二壁部、インク袋の二層のシートのシート面は、略上下方向に沿って伸展する。故に、インクはシート面に沿って下方に流れてインク袋の下端部に溜まる。押圧部材の湾曲端部は口栓の軸線よりも下方に位置するので、湾曲部が第一壁部とは反対方向に膨らむように撓むことで、インク袋の下端部を押圧する。故に、押圧部材は、溜まったインクを口栓の第一開口が位置する上方へ移動することができる。
【0010】
前記押圧部材は、前記軸線の方向において前記口栓から離間した位置に配置されていてもよい。該場合、押圧部材が口栓の近傍でインク袋を押圧することで、二層のシートが接触して口栓の第一開口を塞いでしまうことを確実に防止できる。また、ユーザが第一端部を下側にしてインクカートリッジを平面等に載置すれば、押圧部材は口栓から離れた位置で下方に溜まったインクを上方へ移動できる。故に、押圧部材は口栓に向けて効率的にインクを流すことができる。
【0011】
前記押圧部材は、前記二層のシートが前記第一壁部と前記第二壁部の対向方向に互いに近づくように前記インク袋が変形した場合、前記湾曲部の前記第一壁部に当接する前記一部分と前記第一層に当接する前記他の一部分との間の距離が大きくなるように変形し、前記二層のシートが前記第一壁部と前記第二壁部の対向方向に互いから離れるように前記インク袋が変形した場合、前記湾曲部の前記第一壁部に当接する前記一部分と前記第一層に当接する前記他の一部分との間の距離が小さくなるように変形してもよい。インク袋内のインクが満量であり且つ二層のシートが互いから離れている場合、インク袋が押圧部材を押すので、押圧部材はインク袋と第一壁部との間で収縮変形した状態となる。インクの残量が減るに従い二層のシートが互いに近づくと、押圧部材はインク袋と第一壁部との間で膨張変形してインク袋を押圧する。故に、押圧部材はインクを移動することができる。
【0012】
前記ケースは、前記第一端部に、前記第一壁部と前記第二壁部に接続する第四壁部を含んでもよい。前記湾曲端部は、前記第四壁部に当接してもよい。該場合、ユーザが第四壁部を下側にしてインクカートリッジを平面等に載置すれば、湾曲端部は、必ずインク袋の下端部より下方又は該下端部と同じ高さに位置する。故に、押圧部材は、インクをより確実に口栓の第一開口が位置する上方へ移動できる。
【0013】
本発明の第二態様に係るインクジェットプリンタは、インクカートリッジと、前記インクカートリッジが着脱可能に装着されるカートリッジ装着部とを備える。前記インクカートリッジは、インク袋と、口栓と、ケースと、押圧部材とを備える。前記インク袋は、対向配置された可撓性を有する二層のシートを少なくとも含んで袋状に形成され、内部にインクを収容する。前記口栓は、前記インク袋に設けられ、前記インク袋と連通する第一開口から外部に開口する第二開口まで通じる中空部を有する。前記ケースは、略箱型であって、前記インク袋を収容する。前記押圧部材は、前記二層のシートよりも低い可撓性を有するシートを、前記シートの一方の面である第一面を内側にして、前記シートの少なくとも一つの端部が前記第一面に対向するように外側に向かって湾曲させた面部である湾曲部を含む。前記ケースは、第一壁部と、第二壁部と、第三壁部と、貫通部とを少なくとも含む。第一壁部及び第二壁部は、前記口栓の軸線を長手方向として、前記軸線に対して略平行に配置された一対の壁部である。前記第三壁部は、前記一対の壁部の伸展方向に対して略垂直、且つ前記軸線に対して斜めに配置された壁部である。前記貫通部は、前記口栓の前記第二開口を臨むように前記第三壁部に設けられた貫通部とを少なくとも含む。前記インク袋は、前記口栓の軸線が、前記軸線に直交する方向における前記ケースの一端部である第一端部寄りに位置し、且つ、前記二層のシートのシート面が夫々前記第一壁部及び前記第二壁部に対向するように前記ケースに収容される。前記押圧部材は、前記ケース内の前記インク袋と前記第一壁部の間に、前記湾曲部の一部分が前記第一壁部に当接し、前記一部分とは異なる他の一部分が前記二層のシートのうち一方である第一層部に当接して復元力を生じるように弾性変形し、且つ、湾曲した端部である湾曲端部が前記軸線よりも前記第一端部寄りに位置するように配置される。前記カートリッジ装着部は、前記インクカートリッジが、前記第一壁部及び前記第二壁部が上下方向に伸展し、前記ケースの前記第一端部が下側となる姿勢で装着されるように構成されている。
【0014】
第二態様のインクジェットプリンタは、ケース内に、インク袋を形成する二層のシートよりも可撓性が低いシートから形成した押圧部材を備える。押圧部材は、インク袋と第一壁部との間に配置してある。押圧部材は、シートの一方の面である第一面を内側にして、シートの少なくとも一つの端部が第一面に対向するように外側に向かって湾曲させた面部である湾曲部を含む。故に、シートが撓んで弾性変形することで、湾曲部の形状や、湾曲部を形成するシートの対向部分の離間距離は変化可能である。インク袋内のインクが満量状態から減少すると、インク袋を形成する二層のシートは撓む。インク袋は変形する。湾曲部は、変形したインク袋の形状に沿って、復元力で第一壁部とは反対方向に膨らむように撓み、インク袋を第二壁部の方へ押圧する。湾曲部は、該作用でインクをインク袋内で移動することができる。
【0015】
インクジェットプリンタは、第一端部を下側にしてインクカートリッジを装着するように構成してある。故に、インクジェットプリンタに装着したインクカートリッジのケース内で、第一壁部、第二壁部、インク袋の二層のシートのシート面は、略上下方向に沿って伸展する。該場合、インクはシート面に沿って下方に流れてインク袋の下端部に溜まる。押圧部材の湾曲端部は口栓の軸線よりも下方に位置するので、湾曲部が第一壁部とは反対方向に膨らむように撓むことで、インク袋の下端部を押圧する。故に、押圧部材は、溜まったインクを口栓の第一開口が位置する上方へ移動することができる。インクは口栓から流出しやすくなる。
【0016】
前記押圧部材は、前記シートの一対の端部が前記第一面の側で接合されることで形成された部分であって、前記湾曲端部に対向する接合部を含んでもよい。前記接合部は、前記ケース内で、前記軸線に対して前記第一端部とは反対側に位置してもよい。該場合、押圧部材は湾曲部を含む安定した形状を維持することができる。接合部は口栓の軸線よりも上方に位置するので、押圧部材は、溜まったインクを口栓の第一開口が位置する上方へより確実に移動することができる。
【0017】
前記カートリッジ装着部は、前記インクカートリッジが、前記第三壁部が配置される側に向けて前記軸線が斜め下方向に延びる姿勢で装着されるように構成されていてもよい。該場合、インクは、口栓の第二開口を臨む第三壁部の方に向けて自重で移動するので、更に口栓へ向けて効率よく移動できる。
【0018】
本発明の第三態様のインクカートリッジは、インク袋と、口栓と、ケースと、押圧部材とを備える。前記インク袋は、対向配置された可撓性を有する二層のシートを少なくとも含んで袋状に形成され、内部にインクを収容する。前記口栓は、前記インク袋に設けられ、前記インク袋と連通する第一開口から外部に開口する第二開口まで通じる中空部を有する。前記ケースは、略箱型であり、前記インク袋を収容する。前記押圧部材は、前記二層のシートよりも低い可撓性を有するシートを、前記シートの一方の面である第一面を内側にして、前記シートの少なくとも一つの端部が前記第一面に対向するように外側に向かって湾曲させた面部である湾曲部を含む。前記ケースは、第一壁部と、第二壁部と、第三壁部と、貫通部とを少なくとも含む。前記第一壁部及び第二壁部は、前記口栓の軸線を長手方向として、前記軸線に対して略平行に配置された一対の壁部である。前記第二壁部は、前記一対の壁部の伸展方向に対して略垂直、且つ前記軸線に対して斜めに配置された壁部である。前記貫通部は、前記口栓の前記第二開口を臨むように前記第三壁部に設けられている。前記インク袋は、前記二層のシートのシート面が夫々前記第一壁部及び前記第二壁部に対向するように前記ケースに収容される。前記押圧部材は、前記ケース内の前記インク袋と前記第一壁部の間に、前記湾曲部の一部分が前記第一壁部に当接し、前記一部分とは異なる他の一部分が前記二層のシートのうち一方である第一層部に当接して付勢される。
【0019】
第三態様のインクカートリッジは、ケース内に、インク袋を形成する二層のシートよりも可撓性が低いシートから形成した押圧部材を備える。押圧部材は、インク袋と第一壁部との間に配置してある。押圧部材は、シートの一方の面である第一面を内側にして、シートの少なくとも一つの端部が第一面に対向するように外側に向かって湾曲させた面部である湾曲部を含む。故に、シートが撓んで弾性変形することで、湾曲部の形状や、湾曲部を形成するシートの対向部分の離間距離は変化可能である。インク袋内のインクが満量状態から減少すると、インク袋を形成する二層のシートは撓む。インク袋は変形する。湾曲部は、変形したインク袋の形状に沿って付勢されて弾性変形し、その弾性力で第一壁部とは反対方向に膨らむように撓み、インク袋を第二壁部の方へ押圧する。湾曲部は、該作用でインクをインク袋内で移動することができる。また、湾曲部がインク袋を押圧する力は、湾曲部を形成するシートの対向部分の離間距離が最大の位置で最大となる。故に、インクカートリッジは、均一な押圧力を付与する部材でインク袋を押圧する場合に比べ、インク袋内で残存するインクが分散して広がるのを防止し且つインクを口栓へ向けて効率的に移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】インクジェットプリンタ100の斜視図である。
【図2】インクカートリッジ1を左後方から見た斜視図である。
【図3】インクカートリッジ1を右前方から見た斜視図である。
【図4】ケース2の分解斜視図である。
【図5】インクパック7、可動部材5、押圧部材8の配置関係を示す説明図である。
【図6】インク供給時のインクカートリッジ1の口栓72周辺部の拡大部分断面図である。
【図7】可動部材50の動きの説明図である。
【図8】押圧部材8の斜視図である。
【図9】インクジェットプリンタ100装着時のインクカートリッジ1を下から見た時のインクパック7(インク満量時)と押圧部材8の状態を示す説明図である。
【図10】図9の矢印A方向から見た時のインクパック7と押圧部材8の状態を示す説明図である。
【図11】ホルダユニット150の斜視図である。
【図12】ホルダ159の斜視図である。
【図13】インクジェットプリンタ100装着時のインクカートリッジ1を下から見た時のインクパック7(インク減少時)と押圧部材8の状態を示す説明図である。
【図14】図13の矢印B方向から見た時のインクパック7の状態を示す説明図である。
【図15】図13の矢印C方向から見た時のインクパック7と押圧部材8の状態を示す説明図である。
【図16】図13の矢印D方向から見た時のインクパック7と押圧部材8の状態を示す説明図である。
【図17】変形例のインクカートリッジ10のインクパック70、押圧部材9の配置関係を示す説明図である。
【図18】左壁30を下にして載置したインクカートリッジ10を横から見た時のインクパック70(インク減少時)と押圧部材9の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。実施形態では、Tシャツ等の布帛に印刷を行うインクジェットプリンタ(以下、単にプリンタという)100と、プリンタ100で使用するインクカートリッジ(以下、単にカートリッジという)1について説明する。
【0022】
図1を参照し、プリンタ100の概略構成について説明する。プリンタ100は、カートリッジ1が供給したインクを用いて、印刷媒体である布帛(例えばTシャツ等)に印刷ヘッド(図示略)で印刷を行うことが可能なプリンタである。図1の上下方向、右斜め下方向、左斜め上方向、左斜め下方向、右斜め上方向が、夫々、プリンタ100とカートリッジ1の上下方向、前方向、後ろ(奥)方向、左方向、右方向である。
【0023】
図1に示す如く、プリンタ100は、略直方体形状の本体部108と、本体部108よりも小さい略直方体形状のカートリッジ装着ユニット110を含む。本体部108は、布帛を移送しながら印刷ヘッドで印刷を行う部位であり、公知の布帛印刷用のインクジェットプリンタと同様の構成を有する。カートリッジ装着ユニット110は、インクを供給するカートリッジ1を装着する部位である。カートリッジ装着ユニット110は、本体部108の左側下部に取り外し可能に装着してある。
【0024】
本体部108は筐体101を備える。本体部108は、左右方向中央部にプラテン駆動機構106を備える。プラテン駆動機構106は、プラテン102、トレイ103、駆動ベルト104、一対のガイドレール(図示略)、プラテン駆動モータ(図示略)等を含む。
【0025】
駆動ベルト104は、本体部108の前方と後方に配置したプーリ(図示略)に架け渡してある。駆動ベルト104の上方に固定した支柱(図示略)は、矩形板状のプラテン102とトレイ103を支持する。印刷媒体である布帛は、プラテン102の上面に載置する。トレイ103はプラテン102の下方に略平行に配置してあり、プラテン102より一回り大きい板状体である。トレイ103は、プラテン102に載置した布帛の一部(Tシャツの袖等)が下方に落ちることを防止する。一対のガイドレールは、駆動ベルト104の上方で前後方向に延び、プラテン102とトレイ103を案内する。プラテン駆動モータは、前述のプーリを介して駆動ベルト104を駆動する。プラテン駆動モータが駆動ベルト104を駆動すると、プラテン102とトレイ103は支柱を介してガイドレールに沿って前後方向に移動する。筐体101は前面中央部に開口を有する。プラテン102とトレイ103は該開口を介して筐体101に出入りする。
【0026】
図示は省略するが、本体部108は筐体101内部の前後方向略中央、且つ、プラテン102の上方に、左右方向に延びる一対のガイドレール(図示略)を備える。該ガイドレールは印刷ヘッドのキャリッジを支持する。印刷ヘッドはキャリッジの下部に固定してある。印刷ヘッドの数はインクジェットプリンタの種類によって異なる。プリンタ100の印刷ヘッドの数は八個である。キャリッジ駆動機構はキャリッジをガイドレールに沿って左右方向に移動する。キャリッジ駆動機構はキャリッジ駆動モータやベルト伝達機構を含む。カートリッジ装着ユニット110に装着した八本のカートリッジ1は、夫々チューブ182(図6参照)を介して八個の印刷ヘッドにインクを供給する。各印刷ヘッドは底面に設けた複数個の微細なノズルを有する。ノズルは圧電素子の駆動に伴い下向きにインクの液滴を吐出する。プリンタ100は、布帛を載置したプラテン102とキャリッジを移動しながらノズルからインクを吐出することで、布帛に印刷を行う。
【0027】
本体部108は前面右下部に操作部105を備える。操作部105は、様々な情報を表示するディスプレイ、プリンタ100の様々な動作に対する指示を入力する為のボタン等を有する。
【0028】
カートリッジ装着ユニット110は、合計八本のカートリッジ1が装着可能である。通常、八本のカートリッジ1は、4本の白インクのカートリッジ1、各1本のシアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックの4色のインクのカートリッジ1を含む。カートリッジ装着ユニット110は筐体111を備える。図示は省略するが、筐体111は右側に開口を有する。カートリッジ装着ユニット110は該開口を介して本体部108に取り外し可能に固定する為の固定部を備える。カートリッジ装着ユニット110は、例えば固定部を介して螺子で本体部108の受け部(図示略)に固定してある。カートリッジ装着ユニット110は、八個以外の数の印刷ヘッドを有する他の種類のインクジェットプリンタにも着脱可能な汎用型のユニットである。また、図示は省略するが、カートリッジ装着ユニット110は、カートリッジ1よりも短い他の種類のカートリッジも着脱可能である。
【0029】
筐体111は、前面上部に、左右方向に長い略矩形状の開口112を有する。カートリッジ装着ユニット110は、開口112の奥側、つまり筐体111の内部にホルダユニット150(図11参照)を備える。ユーザは開口112を通して内部のホルダユニット150(より詳細にはホルダ159)にカートリッジ1を着脱する。カートリッジ装着ユニット110は、ホルダユニット150の奥側に接続部180(図6参照)を備える。接続部180はインクを導出する為の導出針183を含む。筐体111は、開口112の下端部に沿って筐体111の前面から前方へ突出する案内部140を備える。案内部140は、開口112を介してカートリッジ1が適切なホルダ159(図12参照)にスムーズに進入するよう案内する。カートリッジ装着ユニット110の内部構造の詳細については後述する。
【0030】
図2〜図10を参照し、カートリッジ1の構成について説明する。カートリッジ1は、ケース2、インクパック7、可動部材5、押圧部材8を備える。ケース2は薄型略箱状であり、前後方向を長手方向とする。ケース2は、例えば樹脂製である。ケース2はインクパック7と押圧部材8を収容する。以下、ケース2、インクパック7、可動部材5、押圧部材8の構成について、順に説明する。前述の5色のカートリッジ1は、インクパック7が収容する液体のインクの色が異なるのみで、他の構成は全て同じである。
【0031】
図2〜図4を参照し、ケース2の構成について説明する。図2、図3に示す如く、ケース2は、全体として、前後方向に長く左右方向に薄い直方体の後端部下側にある角を斜めに切り取ったような形状である。図4に示す如く、ケース2は本体部3と蓋部4を含む。
【0032】
図4に示す如く、本体部3は、薄板状の左壁30、底壁31、上壁32、後壁33、前壁34を含む。底壁31、上壁32、後壁33、前壁34は、略五角形状の左壁30の外周に沿って、左壁30の伸展方向に対して略垂直に、略同一の長さで延びる。左壁30、底壁31、上壁32、後壁33、前壁34は、ケース2の左側面、底面、上面、背面、前面を夫々形成する。後壁33は、背面部331と斜面部332を含む。背面部331は、上壁32と直角を成すように接続する。斜面部332は、底壁31と背面部331を斜めに繋ぐ。底壁31と斜面部332、背面部331と斜面部332は、夫々鈍角を成す角部を形成する。蓋部4は、左壁30に対向し、ケース2の右側面を形成する。蓋部4は、本体部3の左壁30に対応する略五角形状の薄板部材である。ケース2は、左壁30と蓋部4が互いに略平行に対向するように、蓋部4を本体部3(詳細には底壁31、上壁32、後壁33、前壁34)に接合することで形成する。
【0033】
図2、図4に示す如く、ケース2の左壁30は、外面(ケース2の左側面)から突出する5つの脚部301〜305を備える。具体的には、左壁30は、斜面部332と接続する部分に脚部301を備え、背面部331と接続する部分に脚部302を備える。左壁30は、脚部301、302から前方(図2の右上方向)に離間した位置に、脚部303、304を夫々備える。左壁30は、前端部近傍に脚部305を備える。脚部301〜305は全て、カートリッジ1を後述するホルダ159(図11参照)に装着した時、ホルダ159の上レール部161及び下レール部171のいずれとも干渉しない位置にある。脚部301〜305は、左壁30を下にした状態でカートリッジ1を平面上に載置した場合、カートリッジ1を左壁30全体が平面から離間した状態で安定して支持する機能を有する。
【0034】
図2に示す如く、ケース2の後壁33のうち斜面部332は、脚部301に対応する位置に口栓用開口335を有する。口栓用開口335は、ケース2内に収容したインクパック7(図5参照)からインクを導出する為の開口部である。インクパック7は、口栓72の第二開口702(図6参照)が口栓用開口335に臨むようにケース2内に配置する。口栓用開口335に隣接する脚部301は、口栓72の収納空間を形成する壁部としても機能する。脚部301は、突出端である平面部の中央部付近に、矩形状の係合孔307を有する。係合孔307は、インクパック7の口栓72を本体部3に対して位置決めし且つ固定する為の開口部である。
【0035】
図2に示す如く、ケース2の後壁33のうち背面部331は、脚部302に対応する位置に露出部開口336を有する。露出部開口336は、可動部材50(図5参照)の一部である露出部53を露出し、ユーザの露出部53の位置確認を可能とする為の開口部である。露出部開口336に隣接する脚部302は、露出部53を含む可動部材50の一部が移動可能な空間(可動空間)を形成する壁部としても機能する。
【0036】
図2、図3に示す如く、ケース2は、前端部の右上角部(図3では蓋部4の左上の角部)に把手部40を有する。把手部40は、凹部41と突出部42を含む。凹部41はケース2の外面よりも内側方向に凹んだ部位である。突出部42は凹部41から突出する部位である。ユーザは、僅かな隙間を空けてカートリッジ装着ユニット110に装着した複数のカートリッジ1(図1参照)の中から任意の一つのカートリッジ1を取り出す時等に把手部40を使用する。
【0037】
図5、図6、図10を参照し、インクパック7の構成について説明する。図5に示す如く、インクパック7は、インクを収容するインク袋71と、インク袋71に設けた口栓72を備える。インク袋71は、可撓性を有する二枚の長方形状の樹脂性シートをシートの一面同士が対向した状態で重ね合わせ、四辺に沿った周囲部を熱溶着(熱シール)することで形成した袋状の容器である。各シートは、例えばポリエチレン(厚み約40μm)、ナイロン(厚み約15μm)、シリカを蒸着したPET(厚み約12μm)の三層構造を有する。インク袋71は、溶着した周囲部716と、対向する二層のシート711、712(図10参照)が形成するインク収容部717を有する。インク収容部717はインクを収容する。
【0038】
インク袋71は、対向配置した可撓性を有する二層のシート711、712を含み、二層のシート711、712間にインクを収容可能な空間を形成した袋状の容器であればよい。故に、例えば一枚の長方形状のシートを半分に折曲げて二層とし、折曲げ部以外の三辺に沿って二層を接合することでインク袋71を形成してもよい。また、対向する二枚のシートの三辺に沿って二枚を接合し、各シートの残る一辺を別のシートと接合して、底部を有するインク袋71としてもよい。対向する二枚のシートの四辺を、夫々、インク袋71の側面となる別のシートを介して接合したインク袋71であってもよい。更に、シートの材質は上述の例に限らない。シートの接合方法も、例えば接着等の溶着以外の方法であってもよい。
【0039】
口栓72は、略円筒状の本体部721と二つの羽根状の連結部722を備える。連結部722は、本体部721の一端側で本体部721の外周面から互いに反対方向に突出する。口栓72は、連結部722を含む本体部721の一端部を、インク袋71を形成する二枚のシートの間に挿入した後、インク袋71の周囲部716と一体的に溶着することで、インク袋71に固定してある。周囲部716と溶着しない本体部721の他の部分は、インク袋71の長手方向における一端部からインク袋71の外方へ突出する。口栓72は、本体部721(より詳細には、後述する中空部700)の軸線Xがインク袋71の長手方向と略平行になるように配置する。また、軸線Xは、軸線Xに直交する方向(インク袋71の短手方向)におけるインク袋71の一端部寄りに位置する。本実施形態では、口栓72は、インク袋71の4つの角部のうち1つの近傍に設けてある。
【0040】
図6に示す如く、本体部721は内部に円筒状の中空部700を有する。中空部700は、インク収容部717に連通する第一開口701から、インク袋71の外部に開口する第二開口702まで通じる。円柱状のゴム栓723は中空部700の第二開口702側の端部に挿入してある。つまりゴム栓723が口栓72の先端側の開口を塞ぐので、インク袋71は密閉状態でインクを収容する。口栓72は、中空部700を介してインク収容部717と外部とが通じるようにインク袋71に設ければよいので、口栓72の固定方法は溶着に限らない。例えば、口栓72はインク袋71と一体的に形成してもよい。
【0041】
本体部721は略円筒状であるが、本体部721の第二開口702側の先端部は矩形ブロック状に形成してある。該矩形ブロック状の部分は、周方向外側に突出する角柱状の係合突起725(図2参照)を備える。係合突起725は、前述した脚部301の係合孔307(図2、図4参照)に嵌合することで、口栓72をケース2の本体部3に対して位置決めし且つ固定する。
【0042】
図5、図7を参照し、可動部材5の構成について説明する。図5に示す如く、可動部材50は、軸部51、腕部52、露出部53を含む。腕部52はL字状の板部材である。腕部52は、板面が左壁30と蓋部4に対向し、一端部が底壁31に当接し且つ他端部が露出部開口336近傍に位置するように配置する。軸部51は、脚部303(図2参照)の後方且つ蓋部4側の端部近傍に、ケース2の前後方向に沿って固定してある。軸部51は、腕部52の底壁31に当接する一端部に接続し、腕部52をケース2の左右方向(図7の矢印A方向)に回動可能に支持する。軸部51に設けた捻りバネ(図示略)は、腕部52を左壁30の方向(図7の右方向)へ付勢する。矩形板状の露出部53は、腕部52の先端に接続する。露出部53は、腕部52の板面に対して略垂直に、左壁30方向に突出する。図7に示す如く、露出部53は露出部開口336を通して目視可能な位置にある。
【0043】
カートリッジ1の使用開始時には、インクを満量まで充填したインク袋71は膨らんでいる。故に、インク袋71は露出部53の左端部(図7では右側の端部)を押圧する。腕部52は、捻りバネの付勢力に抗して、軸部51を中心として図7に示す左側の位置まで蓋部4の方向に回動する。インクの残量が少なくなると、インク袋71は萎む。故に、露出部53に対する押圧力は弱まる。腕部52は、捻りバネの付勢力で左壁30の方向に回動する。インクがなくなると、露出部53は図7に示す右側の位置に至る。上述の如く、露出部53の位置はインクの残量に応じて変化する。左壁30に露出部開口336に連接して設けた脚部302は、露出部53の可動空間を確保する。ユーザは、露出部開口336から可動部材50の露出部53の位置を確認することで、インク袋71内のインクの残量を確認することができる。つまり可動部材50は、インク残量指標部材として機能する。
【0044】
図8を参照し、押圧部材8の構成について説明する。押圧部材8は、可撓性を有し弾性変形が可能な矩形状の一枚のシート81を、シート81の一方の面である第一面811を内側にして、対向する一対の端部を第一面811の側で接合することで形成した部材である。シート81は、例えば厚みが約125μmのPET製シートであるシート81の外側の面は第二面812という。シート81の可撓性は、インク袋71の二層のシート711、712(図10参照)より低い。言い換えると、インク袋71のシート711、712の方が押圧部材8のシート81よりも柔らかく撓みやすい。なお、シート81の材質や厚みは上記例に限らず、シート81の可撓性がインク袋71のシート711、712の可撓性より低くなるように選択可能である。
【0045】
押圧部材8は、接合部82と湾曲部83を含む。接合部82はシート81の対向する一対の端部を接合した部分である。接合部82は、例えば両面粘着テープで接着して形成してもよいし、溶着して形成してもよい。円筒形状のシートの側面を折り曲げて接合部82を形成してもよい。湾曲部83は、接合部82を形成する一対の端部を繋ぐ湾曲した面部である。シート81は弾性変形するので、湾曲部83は折れ曲がることなく撓んだ状態を維持する。以下、接合部82に対向する押圧部材8の一端部(接合部82から延びる面部が湾曲して接合部82の方へ戻る、接合部82から最も離れた位置にある部分)を湾曲端部84という。湾曲部83は、湾曲端部84を境にして互いに対向する第一面部831、第二面部832を含む。外力がシート81の第二面812側から湾曲部83に加わると、シート81が撓む。その結果、湾曲部83の形状、第一面部831と第二面部832の離間距離は変化する。湾曲部83の撓みの自由度を確保する為に、接合部82の幅は、接合部82から湾曲端部84までの距離に対して十分小さいことが好ましい。
【0046】
図5、図9、図10を参照して、ケース2、インクパック7、可動部材5、押圧部材8の配置関係について説明する。図5に示す如く、ケース2は、口栓72の軸線Xがケース2の長手方向(つまり前後方向)と略一致し且つ底壁31、上壁32、左壁30と略平行となるように、インクパック7を収容する。蓋部4を本体部3に接合すると、蓋部4は左壁30と略平行となるので、軸線Xは蓋部4に対しても略平行となる。また、インクパック7は、軸線Xが、軸線Xに直交する方向におけるケース2の一端部(本実施形態では底壁31側の端部)寄りに位置するようにケース2内に配置する。斜面部332(より詳細には、外面333)は、軸線Xに対して斜めに交差する。底壁31に向かう外面333と軸線Xがケース2内側で成す角は、90度より小さい鋭角である。
【0047】
また、インクパック7は、口栓72の軸線Xを含み且つ斜面部332の外面333と直角を成す仮想的な平面に対して、二層のシート711、712(図10参照)が略平行に延びるようにケース2内に配置する。本実施形態では該平面はケース2の左壁30と蓋部4に略平行となるので、二層のシート711、712のシート面は夫々左壁30と蓋部4に対向して伸展する。
【0048】
インクパック7の口栓72は、上述の如く、係合突起725が係合孔307に嵌合することで、本体部3に固定する(図2参照)。更に、インク袋71は、二層のシート711、712のうち左壁30に対向するシート712(図10参照)の領域75を左壁30の内面に貼着することで、本体部3に部分的に固定する。領域75は、例えば両面粘着テープを用いて左壁30に貼着する。領域75は、インク袋71のシート711、712の撓みの自由度を確保する為に、インク収容部717よりも小さい領域とする。また、領域75は、口栓72方向へのインクの円滑な移動を可能とする為に、口栓72の軸線X方向において、口栓72から離間した位置に設ける。更に、領域75は、インク袋71を本体部3に配置した時に可動部材5の設置範囲外となる位置に設ける。
【0049】
インク収容部717を形成するシート711、712は可撓性を有するので、インク収容部717中に残存するインクの量が多ければ、二層のシート711、712は互いに離れる方向に湾曲する。インクの残量が少なければ、シート711、712間の距離が狭まって互いに接触する方向に撓む。つまり、二層のシート711、712は固定された平面ではないので、上記仮想的な平面と厳密には平行にならない。特に、図10に示す如く、本実施形態のインク袋71はシート712の領域75(図5参照)で左壁30に貼着してあるので、蓋部4側にあるシート711(貼着していないシート)の方が撓む量がより大きい。故に、上記の仮想的な平面との関係でいう「略平行」は、平面同士の厳密な平行関係のみでなく、シート711、712の撓みを許容した平行に近い状態をも含む。
【0050】
図5に示す如く、押圧部材8は、接合部82の少なくとも一部を蓋部4の内面に貼着することで、蓋部4に部分的に固定してある。本実施形態では、接合部82の三箇所を両面粘着テープ85で蓋部4に貼着してある。湾曲部83の第一面部831(図10参照)は蓋部4の内面に対向し、接合部82と湾曲端部84は蓋部4の長手方向(つまり口栓72の軸線X方向)に沿って配置する。接合部82は、上壁32と接合する蓋部4上端部(図5では下側の端部)になるべく近い位置に配置するのが好ましい。ただし本実施形態では、把手部40(図3参照)の凹部41が蓋部4の上端部に存在するので、接合部82は凹部41の近傍位置に配置してある。本実施形態では、湾曲部83は、撓みの自由度を高める為に、蓋部4に貼着しない。押圧部材8は、蓋部4を本体部3に接合した時に湾曲端部84が底壁31に当接するように蓋部4に配置するのが好ましい。
【0051】
また、押圧部材8は、ケース2内で口栓72の軸線X方向において口栓72から離間した位置に配置するのが好ましい。該配置は、押圧部材8が口栓72近傍でインク袋71を押圧し、口栓72へ向かうインクの移動を妨げるのを確実に防止することができる。なお、本実施形態では、口栓72の近傍に配置する可動部材5の動作を妨げないように、押圧部材8は可動部材5の設置範囲に対向しない位置に設ける。本実施形態の押圧部材8は、接合部82が延びる方向の長さが蓋部4の前後方向長さの三分の二程度である。押圧部材8は、蓋部4を本体部3に接合した時にインク袋71の領域75に対向するように配置し、前壁34に接合する前端部まで延びる。
【0052】
図9、図10に示す如く、上述の配置で押圧部材8を固定した蓋部4を本体部3に接合すると、押圧部材8はケース2内でインク袋71と蓋部4の間に位置する。湾曲部83の第一面部831の少なくとも一部分は蓋部4の内面に当接して付勢される。第二面部832の少なくとも一部分はインク袋71のシート711に当接して付勢される。接合部82は、口栓72の軸線Xに対して底壁31とは反対側、つまり軸線Xよりも上方に位置する。湾曲端部84は、軸線Xよりも底壁31寄り、つまり軸線Xよりも下方にある。本実施形態では、湾曲端部84は底壁31に当接する。
【0053】
インクが満量状態のインク袋71は、インク収容部717を形成するシート711、712のうちシート711が蓋部4方向に撓み、インク収容部717は膨らんでいる。押圧部材8は、インクが満量状態の時、インク収容部717内のインクの圧力がシート711を蓋部4の方向へ押圧することで、第二面部832が蓋部4方向に弾性変形して撓むように構成してある。その結果、第一面部831の蓋部4への当接部分と第二面部832のシート711への当接部分の間の距離は、外力が湾曲部83に加わらない時の第一面部831と第二面部832間の距離より小さい状態となる。押圧部材8のシート81の復元力(弾性力)は、第二面部832を左壁30の方向へ付勢する。なお、図9に示す如く、インクが満量状態のインク袋71は、ケース2の前後方向に略均一にインクで膨らみ、押圧部材8を押圧する。故に、押圧部材8の第一面部831の蓋部4への当接部分と第二面部832のシート711への当接部分の間の距離は、ケース2の前後方向で略同一である。インクが減少していく時のインクパック7と押圧部材8の状態の変化については後で詳述する。
【0054】
押圧部材8は、蓋部4を本体部3に接合した時にケース2内で適切な配置を維持できるように、少なくとも部分的に固定するのが好ましいが、全く固定しなくてもよい。該場合、押圧部材8は、蓋部4を本体部3に接合する前に、第二面部832がインク袋71のシート711に対向するように配置する。その後、蓋部4を接合すると、押圧部材8は、ケース2内でインク袋71と蓋部4の間に位置する。押圧部材8は、接合部82以外の部位で蓋部4に固定してもよい。例えば、湾曲端部84からなるべく離れた湾曲部83の一部分を蓋部4に貼着してもよい。
【0055】
図6、図11、図12を参照し、図1に示すカートリッジ装着ユニット110の筐体111内部構造について説明する。筐体111は、内部にカートリッジ1を着脱可能なホルダユニット150(図11参照)、カートリッジ1からインクを導出する為の接続部180(図6参照)等を備える。以下、ホルダユニット150と接続部180について順に説明する。
【0056】
図11を参照し、ホルダユニット150の構成について説明する。なお、図11はホルダユニット150にカートリッジ1を一本装着した例を図示し、図の簡単化の為、筐体111を含むカートリッジ装着ユニット110の他の部分の図示は省略してある。図11の上下方向、右斜め方向、左斜め上方向、左斜め下方向、右斜め上方向は、夫々、ホルダユニット150及びホルダ159の上下方向、前方向、後ろ(奥)方向、左方向、右方向である。図11に示す如く、ホルダユニット150は、ホルダ159、載置板155、固定板152、固定板158を備える。八個のホルダ159は、左右方向に等間隔で載置板155に配置し、固定してある。
【0057】
図12、図6を参照し、ホルダ159の構成の詳細について説明する。ホルダ159は、カートリッジ1を保持し且つ適切な装着位置に案内する部材である。ホルダ159は、金属製の板状部材から、カートリッジ1にほぼ対応する形状に形成してある。図12に示す如く、ホルダ159は、右案内部160、上レール部161、下レール部171を含む。右案内部160は、カートリッジ1をホルダ159に装着する時にケース2の右端部を案内する部位である。右案内部160は、略五角形状の板部であり、概ねカートリッジ1の蓋部4後部の側面視形状に対応する。ただし、右案内部160の後端部の上部は後方へ突出する。突出した先端は、左方へ屈曲する屈曲部154である。右案内部160はカートリッジ装着ユニット110(図1参照)の上下方向に沿って配置する。右案内部160の長手方向の長さは、カートリッジ1の前後方向長さの二分の一よりやや短い程度である。
【0058】
上レール部161は、右案内部160の上端部に沿って左側に突出する部位である。上レール部161は、上案内部162と左上案内部163を含む。上案内部162は、右案内部160の上端部から左方へ略垂直に延びる。左上案内部163は、上案内部162の左端部から下方へ略垂直に延びる。上レール部161は、カートリッジ1をホルダ159に装着する時にケース2の上端部(より詳細には、上壁32と左壁30上端部の外面)を案内する部位である。上案内部162の幅(左右方向の長さ)は、ケース2の幅(左側面から右側面までの距離)と略同一である。第一固定片166は、上案内部162の前端付近から上方に突出する。図6に示す如く、当接部169は、上案内部162の後端から下方へ略垂直に屈曲して延びる。当接部169は、カートリッジ1をホルダ159に装着した時、カートリッジ1後端の背面部331に当接し、カートリッジ1がそれ以上奥側へ移動するのを規制する。
【0059】
図12に示す如く、下レール部171は、右案内部160の下端部に沿って左側に突出する部位である。下レール部171は、下案内部172と左下案内部173を含む。下案内部172は、右案内部160の下端部から左方へ略垂直に延びる。左下案内部173は、下案内部172の左端部から上方へ略垂直に延びる。下レール部171は、カートリッジ1をホルダ159に装着する時にケース2の下端部を案内する部位である。下案内部172は、上案内部162に対向して平行に延びる。上案内部162と下案内部172との離間距離は、ケース2の上下方向の高さ(上面から底面までの距離)と略同一である。下案内部172の幅(左右方向の長さ)は、ケース2の幅(左側面から右側面までの長さ)とほぼ同一である。第二固定片176は、下案内部172の前端部の右端から右方に突出する。第三固定片177は、下案内部172の中央より後方位置で左方に突出する。
【0060】
ユーザがホルダ159をカートリッジ1に装着する場合、ユーザは最初にカートリッジ1の後端部(後壁33側)をホルダ159の前端部から挿入する。右案内部160、上レール部161、下レール部171が夫々ケース2の右側面(蓋部4の外面)、上面(上壁32の外面)、及び下面(底壁31の外面)を案内するのと同時に、カートリッジ1はホルダユニット150の奥側に向けて移動する。ユーザがホルダ159からカートリッジ1を取り外す場合のカートリッジ1の移動方向は、装着時とは逆方向である。つまり、右案内部160の長手方向、上レール部161、下レール部171の伸展方向は、カートリッジ装着ユニット110のカートリッジ1着脱方向である。
【0061】
図11を参照し、ホルダユニット150の組み立てについて説明する。載置板155、固定板152、固定板158は全て金属性の薄板部材であり、ホルダ159を固定する為の螺子穴を有する。作業者は、略水平方向に配置した載置板155の前後端に、八個のホルダ159の下レール部171の前後端を合わせる。作業者は、八個のホルダ159の下レール部171を左右方向に等間隔に載置板155に載置する。作業者は、ホルダ159の第二固定片176、第三固定片177(図12参照)に設けた螺子穴と、載置板155の螺子穴に順次螺子を締結する。作業者は該方法でホルダ159を載置板155に固定する。作業者は、固定板152を各ホルダ159の屈曲部154に後方から当接するように配置して螺子止めすることで、各ホルダ159を固定板152に固定する。作業者は、固定板158を各ホルダ159の第一固定片166に後方から当接するように配置して螺子止めすることで、各ホルダ159を固定板158に固定する。ホルダユニット150は完成する。
【0062】
ホルダユニット150は、載置板155の前端が筐体111の開口112(図1参照)の下端部に沿って配置した状態で、筐体111内の開口112の奥側に設置したフレーム116(図示略)に固定してある。ホルダユニット150は、載置板155の板面がカートリッジ装着ユニット110の奥側に向けて下方向に緩やかに傾斜した姿勢でフレームに固定してある。
【0063】
図6を参照し、接続部180について説明する。接続部180はホルダユニット150奥側に設けてある。図6に示す如く、接続部180は、円筒状の固定部181、固定部181に接続するチューブ182、インクを導出する為の導出針183を含む。なお、実際には、固定部181は筐体111内で固定してある。しかし、固定部分の図示は省略する。カートリッジ装着ユニット110は、八個のホルダ159に対応して八個の接続部180を備える。導出針183は、固定部181の前端中央部から突出する。チューブ182の一端は、固定部181の後端側に接続する。チューブ182は、筐体111右側の開口(図示略)を通って本体部108(図1参照)の内部に延びる。チューブ182の他端は、印刷ヘッド(図示略)に接続する。
【0064】
ホルダ159がカートリッジ1を案内し、カートリッジ1がホルダユニット150に装着する過程で、前方へ突出する導出針183と固定部181の一部は、カートリッジ1の斜面部332に設けた口栓用開口335からケース2内部に進入する。導出針183がゴム栓723の中心部に刺さることで、接続部180はカートリッジ1に接続する。カートリッジ1の背面部331がホルダ159の当接部169に当接すると、カートリッジ1のホルダ159への装着は完了する。この時、導出針183はゴム栓723を貫通した状態である。導出針183の先端部は中空部700内にある。導出針183の先端部はインクが流通する孔を有する。インク袋71内のインクは、中空部700、導出針183、チューブ182を通って、印刷ヘッドに供給可能となる。
【0065】
図9、図10、図13〜図16を参照し、満量状態からインクが減少していく時のインクパック7と押圧部材8の状態の変化について説明する。なお、図9、図10を参照して上述した如く、インクが満量状態の時には、第二面部832は、インク収容部717内に充填したインクの押圧力で蓋部4方向に撓んでいる。その後、印刷ヘッドが印刷の為にインクを消費するのに伴い、インクが接続部180を介してインク袋71から流出する。インクの減少に伴い、インク袋71は、インク収容部717を形成するシート711、712が左壁30と蓋部4の対向方向に互いに近づくように、萎んで変形し始める。第二面部832は、インク袋71の変形に伴い、シート81(図8参照)の復元力で左壁30方向に膨らむように変形し、インク袋71のシート711を左壁30方向へ押圧する。
【0066】
なお、上述の如く、ホルダユニット150(図11参照)は、載置板155の板面がカートリッジ装着ユニット110の奥側に向けて下方向に緩やかに傾斜する。カートリッジ1は、底壁31を下側、後壁33を奥側にしてホルダユニット150に装着するので、後壁33側に向けて底壁31が下方に傾斜した姿勢となる。つまり、インク袋71は、口栓72の軸線Xが下方にあり且つ第一開口701側に向かって斜め下方向に延びる姿勢となる。また、シート711、712は上下方向に沿って伸展する。故に、インクは、自重でシートの内面を伝って下方向に流れ、更にインク収容部717の下端部に沿って口栓72の第一開口701の方へ流れる。つまり、インクが局所的に集まった部位がインク収容部717内に発生する。
【0067】
その結果、インク袋71は、ケース2の上下方向、前後方向で不均一に変形する。例えば、図14に示す如く、ケース2の後部、つまりインク袋71が押圧部材8と対向しない部分では、シート711、712は、インク収容部717の上部では接触し、下部では互いに離間した状態となる。また、図13に示す如く、シート711、712は、前壁34側にある部分では、口栓72が位置する後壁33側にある部分よりも早く互いに近づき、接触した状態となる。押圧部材8は、不均一に変形したインク袋71の形状に沿って、ケース2の上下方向、前後方向で不均一に変形する。例えば、図13に示す如く、前壁34側でシート711、712が互いに接触した部分に対向する押圧部材8の部分は、シート711に接触しない。図16に示す如く、第一面部831と第二面部832間の距離は最大となる。
【0068】
図13に示す如く、ケース2の前後方向中央部付近では、シート711、712は互いに近づく。第二面部832は左壁30方向に膨らむように変形し、シート711により付勢されて弾性変形して弾性力により、シート711を左壁30方向へ押圧する。図15に示す如く、ケース2の前後方向中央部付近でも、インクが減少したことで、シート711、712の上部は接触している。第二面部832がシート711を左壁30方向に押圧すると、シート711は第二面部832に沿って撓む。この時、第二面部832がシート711を左壁30方向へ押圧する力は、第一面部831と第二面部832の離間距離が最大の部分で最大となる。湾曲端部84が底壁31に当接しているので、第二面部832は、インク収容部717の下部を上に向かって押し上げるように左壁30方向に膨らむ。その結果、インク収容部717の下部に溜まったインクは、上方へ向けて移動する。インクは上方へ移動するほど口栓72の第一開口701に向けて流れやすくなる。更に、図13に示す如く、口栓72から離れてインク袋71が萎むほど、押圧部材8は第一面部831と第二面部832の離間距離が広くなり、インク袋71を押圧する。インクは、押圧部材8が押圧していない前方、つまり口栓72の方向に流れやすくなる。
【0069】
以上説明した如く、本実施形態のカートリッジ1は、ケース2内に、インク袋71と押圧部材8を備える。押圧部材8は、インク袋71を形成する二層のシート711、712よりも可撓性が低いシート81を湾曲して形成した湾曲部83を有する。押圧部材8は、ケース2内のインク袋71と蓋部4の間に付勢されて配置してある。押圧部材8は、上述の作用で口栓72に向けてインクを効率よく移動することができる。また、押圧部材8は、インクの内部移動で変形したインク袋71の形状に沿って不均一に弾性変形しながら、弾性力によりインク袋71を押圧する。故に、押圧力を均一に付与する部材がインク袋71を押圧する場合に比べ、インク袋71内で残存するインクが分散して広がるのを防止することができる。実施形態は、プリンタ100に装着したカートリッジ1を例として押圧部材8の作用を説明した。しかし、押圧部材8は、プリンタ100への装着に関係なく、底壁31を下側にしてカートリッジ1を平面等に載置した場合にも、同様の効果を奏することができる。
【0070】
本実施形態では、蓋部4、左壁30、斜面部332、底壁31は、夫々本発明の「第一壁部」、「第二壁部」、「第三壁部」、「第四壁部」に相当する。口栓用開口335は、「貫通部」に相当する。インク袋71のシート711、712は「二層のシート」に相当する。シート711は「第一層部」に相当する。ホルダ159は「カートリッジ装着部」に相当する。
【0071】
本発明は上記実施形態の他に種々の変更が可能である。以下、上記実施形態に加えうる変更の例について説明する。例えば、押圧部材は、インク袋のシートよりも可撓性が低いシートの一方の面(第一面)を内側にして、シートの少なくとも一つの端部が第一面に対向するように、外側に向かって湾曲させた面部を含んでいればよい。故に、押圧部材は、矩形以外の形状(例えば、台形、楕円形、アーチ型等)のシートから形成してもよい。押圧部材が、接合部82のようなシートの一対の端部を接合した部分を有する場合、湾曲部を含む安定した形状を維持することができる。しかし、シートの端部は接合しなくてもよい。
【0072】
例えば図17、図18に示す如く、押圧部材9は、長方形状のシート91を第一面911に端部92が対向するように湾曲させただけで形成してある。押圧部材9は第一面部931、第二面部932を含む湾曲部93と、湾曲端部94を含む。押圧部材9は接合部を備えない。カートリッジ10は、上記実施形態のカートリッジ1よりも前後方向の長さが短い。つまりカートリッジ10のケース20とインクパック70は上記実施形態のケース2とインクパック7よりも短い。押圧部材9は、湾曲端部94が前壁34に略平行となる向きで、蓋部4内面に第一面部931の少なくとも一部が当接し且つインク袋71のシート711に第二面部932の少なくとも一部が当接するようにケース2に収容してある。第一面部931は蓋部4に部分的に固定してもよいし、固定しなくてもよい。
【0073】
ユーザが左壁30を下側にしてカートリッジ10を平面等に載置した場合、インク袋71内のインクが減少するのに伴い、押圧部材9の第二面部932が左壁30方向に膨らむ。第二面部932はシート711を左壁30方向に押圧する。故に、押圧部材9は、インクを口栓72に向けて効率的に移動することができる。
【0074】
ケース2を構成する壁部のうち、底壁31、上壁32、背面部331、前壁34の少なくとも一部は省略してもよい。例えば、前壁34は省略してもよい。底壁31、上壁32は、ケース2の長手方向全体を覆う必要はなく、一部に開口を有してもよい。底壁31、上壁32、後壁33、前壁34は全て本体部3に設ける必要はなく、一部または全てを蓋部4に設けてもよい。
【0075】
ホルダユニット150は、載置板155を奥側に向けて下方向に傾斜することなく、載置板155が略水平となるように配置してもよい。インクジェットプリンタ100にカートリッジ1を着脱する為の構成は、ホルダ159を有するホルダユニット150に限らない。例えば、インクジェットプリンタ100は、各カートリッジ1を着脱方向に案内可能な通路を筐体111内に備えるだけでもよい。
【符号の説明】
【0076】
1、10 インクカートリッジ
100 インクジェットプリンタ
2、20 ケース
30 左壁
31 底壁
332 斜面部
335 口栓用開口
4 蓋部
71 インク袋
711、712 シート
72 口栓
8、9 押圧部材
82 接合部
83、93 湾曲部
84、94 湾曲端部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された可撓性を有する二層のシートを少なくとも含んで袋状に形成され、内部にインクを収容するインク袋と、
前記インク袋に設けられ、前記インク袋と連通する第一開口から外部に開口する第二開口まで通じる中空部を有する口栓と、
前記インク袋を収容する略箱型のケースと、
前記二層のシートよりも低い可撓性を有するシートを、前記シートの一方の面である第一面を内側にして、前記シートの少なくとも一つの端部が前記第一面に対向するように外側に向かって湾曲させた面部である湾曲部を含む押圧部材とを備え、
前記ケースは、
前記口栓の軸線を長手方向として、前記軸線に対して略平行に配置された一対の壁部である第一壁部及び第二壁部と、
前記一対の壁部の伸展方向に対して略垂直、且つ前記軸線に対して斜めに配置された壁部である第三壁部と、
前記口栓の前記第二開口を臨むように前記第三壁部に設けられた貫通部とを少なくとも含み、
前記インク袋は、前記二層のシートのシート面が夫々前記第一壁部及び前記第二壁部に対向するように前記ケースに収容され、
前記押圧部材は、前記ケース内の前記インク袋と前記第一壁部の間に、前記湾曲部の一部分が前記第一壁部に当接し、前記一部分とは異なる他の一部分が前記二層のシートのうち一方である第一層部に当接して復元力を生じるように弾性変形することを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項2】
前記インク袋は、前記口栓の軸線が、前記軸線に直交する方向における前記ケースの一端部である第一端部寄りに位置するように前記ケース内に配置され、
前記押圧部材は、
前記シートの一対の端部が前記第一面の側で接合されることで形成された部分である接合部と、前記接合部と対向する湾曲した端部である湾曲端部とを含み、
前記接合部が前記軸線に対して前記第一端部とは反対側に位置し、且つ、前記湾曲端部が前記軸線よりも前記第一端部寄りに位置するように前記ケース内に配置されることを特徴とする請求項1に記載のインクカートリッジ。
【請求項3】
前記押圧部材は、前記軸線の方向において前記口栓から離間した位置に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクカートリッジ。
【請求項4】
前記押圧部材は、
前記二層のシートが前記第一壁部と前記第二壁部の対向方向に互いに近づくように前記インク袋が変形した場合、前記湾曲部の前記第一壁部に当接する前記一部分と前記第一層に当接する前記他の一部分との間の距離が大きくなるように変形し、
前記二層のシートが前記第一壁部と前記第二壁部の対向方向に互いから離れるように前記インク袋が変形した場合、前記湾曲部の前記第一壁部に当接する前記一部分と前記第一層に当接する前記他の一部分との間の距離が小さくなるように変形することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のインクカートリッジ。
【請求項5】
前記ケースは、前記第一端部に、前記第一壁部と前記第二壁部に接続する第四壁部を含み、
前記湾曲端部は、前記第四壁部に当接することを特徴とする請求項2に記載のインクカートリッジ。
【請求項6】
インクカートリッジと、
前記インクカートリッジが着脱可能に装着されるカートリッジ装着部とを備えたインクジェットプリンタであって、
前記インクカートリッジは、
対向配置された可撓性を有する二層のシートを少なくとも含んで袋状に形成され、内部にインクを収容するインク袋と、
前記インク袋に設けられ、前記インク袋と連通する第一開口から外部に開口する第二開口まで通じる中空部を有する口栓と、
前記インク袋を収容する略箱型のケースと、
前記二層のシートよりも低い可撓性を有するシートを、前記シートの一方の面である第一面を内側にして、前記シートの少なくとも一つの端部が前記第一面に対向するように外側に向かって湾曲させた面部である湾曲部を含む押圧部材とを備え、
前記ケースは、
前記口栓の軸線を長手方向として、前記軸線に対して略平行に配置された一対の壁部である第一壁部及び第二壁部と、
前記一対の壁部の伸展方向に対して略垂直、且つ前記軸線に対して斜めに配置された壁部である第三壁部と、
前記口栓の前記第二開口を臨むように前記第三壁部に設けられた貫通部とを少なくとも含み、
前記インク袋は、前記口栓の軸線が、前記軸線に直交する方向における前記ケースの一端部である第一端部寄りに位置し、且つ、前記二層のシートのシート面が夫々前記第一壁部及び前記第二壁部に対向するように前記ケースに収容され、
前記押圧部材は、前記ケース内の前記インク袋と前記第一壁部の間に、前記湾曲部の一部分が前記第一壁部に当接し、前記一部分とは異なる他の一部分が前記二層のシートのうち一方である第一層部に当接して復元力を生じるように弾性変形し、且つ、湾曲した端部である湾曲端部が前記軸線よりも前記第一端部寄りに位置するように配置され、
前記カートリッジ装着部は、前記インクカートリッジが、前記第一壁部及び前記第二壁部が上下方向に伸展し、前記ケースの前記第一端部が下側となる姿勢で装着されるように構成されていることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記押圧部材は、前記シートの一対の端部が前記第一面の側で接合されることで形成された部分であって、前記湾曲端部に対向する接合部を含み、
前記接合部は、前記ケース内で、前記軸線に対して前記第一端部とは反対側に位置することを特徴とする請求項6に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記カートリッジ装着部は、前記インクカートリッジが、前記第三壁部が配置される側に向けて前記軸線が斜め下方向に延びる姿勢で装着されるように構成されていることを特徴とする請求項6又は7に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項9】
対向配置された可撓性を有する二層のシートを少なくとも含んで袋状に形成され、内部にインクを収容するインク袋と、
前記インク袋に設けられ、前記インク袋と連通する第一開口から外部に開口する第二開口まで通じる中空部を有する口栓と、
前記インク袋を収容する略箱型のケースと、
前記二層のシートよりも低い可撓性を有するシートを、前記シートの一方の面である第一面を内側にして、前記シートの少なくとも一つの端部が前記第一面に対向するように外側に向かって湾曲させた面部である湾曲部を含む押圧部材とを備え、
前記ケースは、
前記口栓の軸線を長手方向として、前記軸線に対して略平行に配置された一対の壁部である第一壁部及び第二壁部と、
前記一対の壁部の伸展方向に対して略垂直、且つ前記軸線に対して斜めに配置された壁部である第三壁部と、
前記口栓の前記第二開口を臨むように前記第三壁部に設けられた貫通部とを少なくとも含み、
前記インク袋は、前記二層のシートのシート面が夫々前記第一壁部及び前記第二壁部に対向するように前記ケースに収容され、
前記押圧部材は、前記ケース内の前記インク袋と前記第一壁部の間に、前記湾曲部の一部分が前記第一壁部に当接し、前記一部分とは異なる他の一部分が前記二層のシートのうち一方である第一層部に当接して付勢されることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項1】
対向配置された可撓性を有する二層のシートを少なくとも含んで袋状に形成され、内部にインクを収容するインク袋と、
前記インク袋に設けられ、前記インク袋と連通する第一開口から外部に開口する第二開口まで通じる中空部を有する口栓と、
前記インク袋を収容する略箱型のケースと、
前記二層のシートよりも低い可撓性を有するシートを、前記シートの一方の面である第一面を内側にして、前記シートの少なくとも一つの端部が前記第一面に対向するように外側に向かって湾曲させた面部である湾曲部を含む押圧部材とを備え、
前記ケースは、
前記口栓の軸線を長手方向として、前記軸線に対して略平行に配置された一対の壁部である第一壁部及び第二壁部と、
前記一対の壁部の伸展方向に対して略垂直、且つ前記軸線に対して斜めに配置された壁部である第三壁部と、
前記口栓の前記第二開口を臨むように前記第三壁部に設けられた貫通部とを少なくとも含み、
前記インク袋は、前記二層のシートのシート面が夫々前記第一壁部及び前記第二壁部に対向するように前記ケースに収容され、
前記押圧部材は、前記ケース内の前記インク袋と前記第一壁部の間に、前記湾曲部の一部分が前記第一壁部に当接し、前記一部分とは異なる他の一部分が前記二層のシートのうち一方である第一層部に当接して復元力を生じるように弾性変形することを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項2】
前記インク袋は、前記口栓の軸線が、前記軸線に直交する方向における前記ケースの一端部である第一端部寄りに位置するように前記ケース内に配置され、
前記押圧部材は、
前記シートの一対の端部が前記第一面の側で接合されることで形成された部分である接合部と、前記接合部と対向する湾曲した端部である湾曲端部とを含み、
前記接合部が前記軸線に対して前記第一端部とは反対側に位置し、且つ、前記湾曲端部が前記軸線よりも前記第一端部寄りに位置するように前記ケース内に配置されることを特徴とする請求項1に記載のインクカートリッジ。
【請求項3】
前記押圧部材は、前記軸線の方向において前記口栓から離間した位置に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクカートリッジ。
【請求項4】
前記押圧部材は、
前記二層のシートが前記第一壁部と前記第二壁部の対向方向に互いに近づくように前記インク袋が変形した場合、前記湾曲部の前記第一壁部に当接する前記一部分と前記第一層に当接する前記他の一部分との間の距離が大きくなるように変形し、
前記二層のシートが前記第一壁部と前記第二壁部の対向方向に互いから離れるように前記インク袋が変形した場合、前記湾曲部の前記第一壁部に当接する前記一部分と前記第一層に当接する前記他の一部分との間の距離が小さくなるように変形することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のインクカートリッジ。
【請求項5】
前記ケースは、前記第一端部に、前記第一壁部と前記第二壁部に接続する第四壁部を含み、
前記湾曲端部は、前記第四壁部に当接することを特徴とする請求項2に記載のインクカートリッジ。
【請求項6】
インクカートリッジと、
前記インクカートリッジが着脱可能に装着されるカートリッジ装着部とを備えたインクジェットプリンタであって、
前記インクカートリッジは、
対向配置された可撓性を有する二層のシートを少なくとも含んで袋状に形成され、内部にインクを収容するインク袋と、
前記インク袋に設けられ、前記インク袋と連通する第一開口から外部に開口する第二開口まで通じる中空部を有する口栓と、
前記インク袋を収容する略箱型のケースと、
前記二層のシートよりも低い可撓性を有するシートを、前記シートの一方の面である第一面を内側にして、前記シートの少なくとも一つの端部が前記第一面に対向するように外側に向かって湾曲させた面部である湾曲部を含む押圧部材とを備え、
前記ケースは、
前記口栓の軸線を長手方向として、前記軸線に対して略平行に配置された一対の壁部である第一壁部及び第二壁部と、
前記一対の壁部の伸展方向に対して略垂直、且つ前記軸線に対して斜めに配置された壁部である第三壁部と、
前記口栓の前記第二開口を臨むように前記第三壁部に設けられた貫通部とを少なくとも含み、
前記インク袋は、前記口栓の軸線が、前記軸線に直交する方向における前記ケースの一端部である第一端部寄りに位置し、且つ、前記二層のシートのシート面が夫々前記第一壁部及び前記第二壁部に対向するように前記ケースに収容され、
前記押圧部材は、前記ケース内の前記インク袋と前記第一壁部の間に、前記湾曲部の一部分が前記第一壁部に当接し、前記一部分とは異なる他の一部分が前記二層のシートのうち一方である第一層部に当接して復元力を生じるように弾性変形し、且つ、湾曲した端部である湾曲端部が前記軸線よりも前記第一端部寄りに位置するように配置され、
前記カートリッジ装着部は、前記インクカートリッジが、前記第一壁部及び前記第二壁部が上下方向に伸展し、前記ケースの前記第一端部が下側となる姿勢で装着されるように構成されていることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記押圧部材は、前記シートの一対の端部が前記第一面の側で接合されることで形成された部分であって、前記湾曲端部に対向する接合部を含み、
前記接合部は、前記ケース内で、前記軸線に対して前記第一端部とは反対側に位置することを特徴とする請求項6に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記カートリッジ装着部は、前記インクカートリッジが、前記第三壁部が配置される側に向けて前記軸線が斜め下方向に延びる姿勢で装着されるように構成されていることを特徴とする請求項6又は7に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項9】
対向配置された可撓性を有する二層のシートを少なくとも含んで袋状に形成され、内部にインクを収容するインク袋と、
前記インク袋に設けられ、前記インク袋と連通する第一開口から外部に開口する第二開口まで通じる中空部を有する口栓と、
前記インク袋を収容する略箱型のケースと、
前記二層のシートよりも低い可撓性を有するシートを、前記シートの一方の面である第一面を内側にして、前記シートの少なくとも一つの端部が前記第一面に対向するように外側に向かって湾曲させた面部である湾曲部を含む押圧部材とを備え、
前記ケースは、
前記口栓の軸線を長手方向として、前記軸線に対して略平行に配置された一対の壁部である第一壁部及び第二壁部と、
前記一対の壁部の伸展方向に対して略垂直、且つ前記軸線に対して斜めに配置された壁部である第三壁部と、
前記口栓の前記第二開口を臨むように前記第三壁部に設けられた貫通部とを少なくとも含み、
前記インク袋は、前記二層のシートのシート面が夫々前記第一壁部及び前記第二壁部に対向するように前記ケースに収容され、
前記押圧部材は、前記ケース内の前記インク袋と前記第一壁部の間に、前記湾曲部の一部分が前記第一壁部に当接し、前記一部分とは異なる他の一部分が前記二層のシートのうち一方である第一層部に当接して付勢されることを特徴とするインクカートリッジ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
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【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−28126(P2013−28126A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166911(P2011−166911)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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