インクカートリッジ

【課題】上方インク収容室と下方インク収容室を有するインクカートリッジの上方インク収容室に対して、空気の混入を防止して、インク使用時にヘッドに供給されるインク中への気泡の混入を防止することができるインクカートリッジを提供する。
【解決手段】上方インク収容室と下方インク収容室11が仕切壁10によって上下に分割形成されている。上方インク収容室のインクは、環状の仕切壁24によって仕切られた差圧弁を介してインク供給口4から排出される。上方インク収容室は、下部に連通口15aを有する垂直壁15によって上部第1インク収容室16と上部第2インク収容室17に分割されている。連通流路18は、上下位置に連通口を有して、上位置の連通口18bにより上部第1インク収容室に連通し、下位置の連通口18aにより下方インク収容室に連通している。下位置の連通口18aに近接して上方インク収容室に連通する開口部86が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置用のヘッドにインクを供給するためのインクカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式記録装置は、一般にキャリッジ上に搭載されて記録用紙の幅方向に移動する記録ヘッドと、この記録ヘッドの移動方向と直交する方向に記録用紙を相対的に移動させる紙送り手段とを備えている。
【0003】
このようなインクジェット式記録装置において、記録用紙に対する印刷は、印刷データに基づいて記録ヘッドからインク滴を吐出させることにより行われる。
【0004】
そして、キャリッジ上に例えばブラック,イエロー,シアンおよびマゼンタの各インクを吐出可能な記録ヘッドを搭載し、ブラックインクによるテキスト印刷ばかりでなく、各インクの吐出割合を変えることにより、フルカラー印刷を可能としている。
【0005】
このため、記録ヘッドに各インクを供給するインクカートリッジが装置本体内に配設されている。
【0006】
通常のインクジェット式記録装置にあっては、前記ブラック,イエロー,シアンおよびマゼンタのインクが貯留された各インクカートリッジがキャリッジ上に載置され、キャリッジと共に移動する。
【0007】
最近の記録装置においては、記録速度の向上を図る目的から、キャリッジの移動を高速で行うようになってきている。
【0008】
このような記録装置においては、キャリッジの加減速に伴うインク供給チューブの伸張・屈曲によってその内部インクに圧力変動が生じてしまい、記録ヘッドからのインク滴の吐出を不安定にする。
【0009】
このため、大気側に開放される下方インク収容室(インクタンク室)と、この下方インク収容室にインク流路を介して接続するヘッド接続用の上方インク収容室(インクエンド室)とを備え、この上方インク収容室とヘッド供給口とを結ぶ経路途中に差圧弁を配置してなるインクカートリッジが提案されている。
【0010】
これによれば、負圧発生手段によってヘッド側に負圧が発生し、これに伴い差圧弁が開放して記録ヘッドにインクを供給するため、前記した圧力変動によるインクへの悪影響が少なくなり、記録ヘッドへのインクの供給を最適な水頭差で行うことができる。
【0011】
差圧弁を用いたインクカートリッジが特許文献1に記載されているが、インクカートリッジに記録ヘッドが取り付けられているヘッド一体型であり、インク収容室は、1つであって、下方インク収容室と、この下方インク収容室にインク流路を介して接続するヘッド接続用の上方インク収容室からなるインクカートリッジについては記載がない。
【特許文献1】特開昭62−231759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、前記した下方インク収容室および上方インク収容室を有するインクカートリッジにおいては、下方インク収容室および上方インク収容室の各室に異なるインク注入条件が要求される。
【0013】
即ち、上方インク収容室は大気が存在しないことおよび適正インク量であることが要求される。一方、下方インク収容室には適正インク量であることが要求される。
【0014】
したがって、異なる条件で別々のインク収容室にインクを注入する必要がある。
【0015】
特に、上方インク収容室に対して、下方インク収容室に要求されるインク注入(大気注入)条件でインクをカートリッジ内に注入すると、下方インク収容室のみならず上方インク収容室にも空気が混入してしまう。この結果、インク使用時に記録ヘッドに供給されるインク中に気泡が混入してしまい、印字上の安定性を確保することができないという課題があった。
【0016】
本発明は、このような技術的課題を解決するためになされたもので、上方インク収容室に対して、空気の混入を防止して、インク使用時にヘッドに供給されるインク中への気泡の混入を防止することができ、もって印字上の安定性を確保することができるインクカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係るインクカートリッジは、容器本体内に仕切壁によって上下に分割形成された上方インク収容室と大気に連通可能な下方インク収容室を有し、カートリッジホルダのインク供給針に接続可能なインク供給口と、前記下方インク収容室と前記上方インク収容室を接続する連通流路と、前記上方インク収容室と前記インク供給口との間に配置された差圧弁とを備え、前記上方インク収容室のインクを前記差圧弁を介して前記インク供給口から排出するとともに、前記上方インク収容室のインクの消費の進行により前記下方インク収容室から前記連通流路を介して前記上方インク収容室にインクが流れ込むように構成されたインクカートリッジであって、前記仕切壁は、前記上方インク収容室のインク供給口側が下方となるように斜めに延在し、前記上方インク収容室は、垂直壁によって上部第1インク収容室と上部第2インク収容室に分割されているとともに、前記垂直壁の下部には前記上部第1インク収容室から前記上部第2インク収容室へインクを流れ込ませるための連通口が設けられており、前記連通流路は、上下位置に連通口を有して、上位置の連通口により前記上部第1インク収容室に連通されるとともに、下位置の連通口により前記下方インク収容室に連通されており、前記下位置の連通口に近接して前記上方インク収容室に連通する開口部のインク注入口が設けられていることを特徴とする。
【0018】
上方インク収容室を減圧吸引するための吸引口を設けることが望ましい。減圧吸引を行う吸引口が、記録ヘッドにインクを供給するためのインク供給口であることが望ましい。
【0019】
このように構成すると、インク注入時に上方インク収容室に空気(大気)の混入していないインクを充填することができる。
【0020】
差圧弁収容室には、インク供給口から吸引されながらインクを注入することができる。
【0021】
このように構成すると、差圧弁収容室にも気泡の取り込みを防止してインクを注入することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るインクカートリッジによると、上方インク収容室に空気の混入を防止して、インクを注入することができ、印字上の安定性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明が適用されたインクカートリッジおよびそのインク注入方法につき、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【実施例1】
【0024】
先ず、インクカートリッジにつき、図1〜図11を用いて説明する。図1は、本発明の実施形態に係るインクカートリッジの全体を分解して示す斜視図である。図2(a)および(b)は、本発明の実施形態に係るインクカートリッジの外観を示す斜視図である。図3および図4は、本発明の実施形態に係るインクカートリッジの内部構造を斜め上方と斜め下方から見た斜視図である。図5および図6は、本発明の実施形態に係るインクカートリッジの内部構造を示す正面図と背面図である。図7および図8は、本発明の実施形態に係るインクカートリッジの負圧発生手段収容室とバルブ収容室を拡大して示す断面図である。図9は、本発明の実施形態に係るインクカートリッジのカートリッジホルダに対する接続状態を示す正面図である。図10(a)および(b)は、本実施形態に係るインクカートリッジのインク注入流路を説明するために、その内部構造を模式化して示す断面図とインク注入孔を示す下面図である。
【0025】
図2(a)および(b)に示すインクカートリッジ1は、一方側に開口する平面ほぼ矩形状の容器本体(下ケース)2と、この容器本体2の開口部を封止する蓋体(上ケース)3とを有し、その内部がインク流路系および空気流路系(共に後述)から大略構成されている。
【0026】
容器本体2の下方部には、記録ヘッド112のインク供給針72(共に図9に図示)に接続可能なインク供給口4およびこのインク供給口4の側方に並列する第1開口部(開放孔)85,第2開口部86(共に図4および図5に図示)が設けられている。インク供給口4は後述する上方インク収容室に形成された差圧弁収容室に連通され、第1開口部85は下方インク収容室11に連通されている。
【0027】
インク供給口4内には、図1に示すように、ゴム等からなる略円柱状のシール部材200が装着されている。このシール部材200の中央部には、軸線方向に開口する貫通孔200aが設けられている。また、インク供給口4内には、インク供給針72の挿抜によって貫通孔200aを開閉するスプリング受け(弁体)201が配設され、さらにこのスプリング受け201をシール部材200に付勢する圧縮コイルスプリング202が弾装されている。
【0028】
第2開口部86は、図10(a)および(b)に示すように、大気連通口86aを介して下方インク収容室11に連通され、またインク注入口86bを介して上方インク収容室(上部第1インク収容室16,上部第2インク収容室17等)に連通されている。
【0029】
容器本体2の上方側部にはカートリッジホルダに着脱可能な係止部材5,6が一体に設けられている。そして、図2(a)に示すように一方の係止部材5の下方部には回路基板(IC基板)7が配設され、他方の係止部材6の下方部には同図(a)および(b)に示すようにバルブ収容室8が配設されている。
【0030】
なお、回路基板7は、インクに関する情報データ、例えば色種,顔料/染料系インクの種別,インク残量,シリアル番号,有効期限および対象機種等のデータを書き込み可能に保存した記憶素子を有している。
【0031】
バルブ収容室8は、図8に示すように、カートリッジ挿入側(下側)に開口する内部空間を有し、その内部空間中をインクカートリッジ1に適合する記録装置側の識別片73(図9に図示)およびバルブ作動杆70が進退する。そして内部空間の上部には、バルブ作動杆70の進退によって回動する識別用のブロック87の操作アーム66が収容されている。また内部空間の下部には、記録装置に対する適否を判断するための識別用凸部68が設けられている。そして、この識別用凸部68は、記録装置側のインク供給針72(図9に図示)をインク供給口4に連通させる以前(後述する大気開放弁が開弁する以前)において、カートリッジホルダ71(図9に図示)のバルブ作用杆70による判定を可能にする位置に配置されている。
【0032】
また、バルブ収容室8(大気開放室501)の室壁8aには、図8に示すように、大気開放弁601の開閉動作によって開閉する大気導通孔としての貫通孔60が設けられている。この貫通孔60の一方開口部側には操作アーム66が配置されており、他方開口部側には大気開放弁601が配置されている。操作アーム66は、加圧フィルム(伸縮性フィルム)61を押圧する操作部66bを有し、バルブ作動杆70の進路に斜め上方に突出して配置され、かつ回動支点66aを介して容器本体2に固定されている。
【0033】
加圧フィルム61は、貫通孔60を閉塞するように室壁8aに取り付けられており、全体がゴム等の弾性シール部材によって形成されている。そして、この加圧フィルム61と貫通孔60の開口周縁との間に形成された内部空間は、下方インク収容室11に連通する貫通孔67(共に図5に図示)に開口されている。
【0034】
大気開放弁601は、図8に示すように、貫通孔60を開閉する弁体65およびこの弁体65を貫通孔60の開口周縁に常時付勢する弾性部材(板ばね)62を有している。このうち弾性部材62の上方端部には貫通孔62bが設けられ、この貫通孔62bに突起64が挿入され、突起64によって移動規制(案内)される。一方、その下端部は容器本体2上に突起63を介して固定されている。
【0035】
なお、図1において、符号88は容器本体2の上面部にブロック87に対応して貼付される識別用のラベル、89はインク供給口4(貫通孔200a)を封止するためのフィルム、90は第1開口部85,第2開口部86を封止するためのフィルムである。また、91はインク充填済みのインクカートリッジ1を包むための減圧パックである。
【0036】
次に、前記した容器本体2内の「インク流路系」と「空気流路系」につき、図1〜図10を用いて説明する。
【0037】
「インク流路系」
インクカートリッジ1には、図1に示すように、容器本体2の正面側に内フィルム(遮気性フィルム)56,502を介して蓋体3を接合することにより、また、容器本体2の背面側に外フィルム(遮気性フィルム)57を介して保護ラベル83を接合することにより内部空間が形成されている。この内部空間は、図3〜図5に示すように、記録ヘッド112(図9に図示)に対するインク供給口側が若干下方となるように斜めに延在する仕切壁10によって上下に分割形成されている。この内部空間の下部領域は、記録ヘッド112の接続状態において大気中に開放する下方インク収容室11とされている。
【0038】
下方インク収容室11には、各高さ位置が互いに異なる2つの中間壁300,301が配設されている。一方の中間壁300は、下方インク収容室11の片側側面部と所定の間隔をもって配置されている。他方の中間壁301は、下方インク収容室11の底面部に対向し、中間壁300のインク供給口側に配置されている。この中間壁301は、インク注入方向(上下)に並列する2つの空間部11a,11bに下方インク収容室11を隔成している。また、この中間壁301には、第1開口部85の軸線と同一の軸線をもつ貫通孔301aが設けられている。
【0039】
内部空間の上部領域は、仕切壁10を底面部とする枠部14によって区画されている。枠部14の内部空間は、記録ヘッド112に接続する上方インク収容室(一部)を構成し、この上方インク収容室の正面側が連通口15aを有する垂直壁15によって左右に分割形成されている。この分割形成された内部空間の一方側領域は上部第1インク収容室16とされ、また他方側領域は上部第2インク収容室17とされている。
【0040】
上部第1インク収容室16には、下方インク収容室11に連通する連通流路18が接続されている。この連通流路18は、上下位置に連通口18a,18bを有している。そして、この連通流路18は、容器本体2の背面に開口して上下方向に延在する凹部18c(図6に図示)およびこの凹部18cの開口を閉塞して封止する遮気性フィルム(外フィルム57)によって形成されている。また、この連通流路18の上流側には、下方インク収容室11内に連通する上下2つの連通口19a,19bを有する隔壁19が設けられている。一方の連通口19aは、下方インク収容室11内の下方領域に開口する位置に配置されている。他方の連通口19bは、下方インク収容室11内の上方領域に開口する位置に配置されている。
【0041】
一方、上部第2インク収容室17には、横長の仕切壁22および環状の仕切壁24によって、図7に示す差圧弁52(膜弁)を収容する差圧弁収容室33(図6に図示)と、同じく図7に示すフィルタ55(不織布フィルタ)を収容するフィルタ室34(図5に図示)とが形成されている。仕切壁25には、フィルタ55を通過したインクをフィルタ室34から差圧弁収容室33に導く貫通孔25aが設けられている。
【0042】
仕切壁24の下部には仕切壁10との間に連通口26aを有する仕切壁26が、またその側方には枠部14との間に連通口27aを有する仕切壁27が設けられている。そして、仕切壁27と枠部14との間には、連通口27aに連通し、かつ上下方向に延在する連通路28が設けられている。この連通路28の上方部には、フィルタ室34に連通口24aおよび領域31を介して連通する貫通孔29が連設されている。
【0043】
貫通孔29は、仕切壁27に連続する仕切壁(環状壁)30によって形成されている。
【0044】
領域31は、仕切壁22,24,30および仕切壁30a(図6に図示)によって形成されている。この領域31は、容器本体2の一方端部(貫通孔29に連通する部分)が深く、他方端部(フィルタ室34に連通する部分)が浅く形成されている。
【0045】
差圧弁収容室33には、図7に示すように、エラストマー等の弾性変形可能な差圧弁としての膜弁52が収容されている。この膜弁52は、貫通孔52cを有し、圧縮コイルスプリング50によってフィルタ室側に付勢され、かつその外周縁が環状の厚肉部52aを介して容器本体2に超音波溶着によって固定されている。圧縮コイルスプリング50は、一方端部が膜弁52のスプリング受け52bに、他方端部が差圧弁収容室33内のスプリング受け203に支持されている。この圧縮コイルスプリング50と膜弁52の位置精度は、この差圧弁で差圧を制御する場合に重要な要素であり、図7に示すように、曲がりや位置ずれ等がなく、圧縮コイルスプリング50で膜弁52の凸部を配置する必要がある。
【0046】
なお、図中符号54は、膜弁52の厚肉部52aに一体に成形された枠部を示す。
【0047】
フィルタ室34には、図7に示すように、インクを通過させ、かつ塵埃等を捕捉するフィルタ55が配置されている。このフィルタ室34の開口部は内フィルム56によって、また、差圧弁収容室33の開口部は、外フィルム57によって封止されている。そして、インク供給口4内の圧力が低下すると、膜弁52が圧縮コイルスプリング50の付勢力に抗して弁座部25bから離れる(貫通孔52cが開口する)ため、フィルタ55を通過したインクは貫通孔52cを通過し、凹部35によって形成された流路を経てインク供給口4に流れ込むように構成されている。また、インク供給口4内のインク圧力が所定の値に上昇すると、膜弁52が圧縮コイルスプリング50の付勢力によって弁座部25bに着座し、インクの流通を遮断するように構成されている。このような動作を繰り返すことにより、一定の負圧を維持しながらインクがインク供給口4に供給される。
【0048】
内部空間の下部領域は、仕切壁10を上面部とし、その内部空間により下方インク収容室11が構成されている。この下方インク収容室11の上部に連通する貫通孔67(図5に図示)からの開口は、斜めに延在する仕切壁10の下面の上方側に開口している。したがって、貫通孔67からの開口は、インクカートリッジの装着時において、下方インク収容室に存在する大気で満たされ、空気流路系にインクが流れ込みにくいようにされている。
【0049】
「空気流路系」
容器本体2の背面部には、図6に示すように、流路抵抗を高くする蛇行溝36および大気中に開口する幅広な凹溝37(斜線部)が、さらには下方インク収容室11(図5に図示)に至る平面ほぼ矩形状の凹部38(空間部)が設けられている。凹部38内には枠部39およびリブ40が設けられ、これらに通気性フィルム84を張設して大気通気室が形成されている。また、凹部38の底面部(壁部)には貫通孔41が設けられ、上部第1インク収容室16の仕切壁42(図5に図示)によって区画された細長い領域43に連通されている。この領域43は貫通孔44を有し、仕切壁603によって区画された連通溝45およびこの連通溝45に開口する貫通孔46を介して大気開放室501(図8に図示)に連通されている。この大気開放室501の開口部は、図1に示す内フィルム(遮気性フィルム)502によって封止されている。
【0050】
以上の構成により、図9に示すようにカートリッジホルダ71にインクカートリッジ1が装着されると、カートリッジホルダ71のバルブ作動杆70が図8に示す操作アーム66に当接して凸部66b(加圧フィルム61)を弁体側に移動させる。これにより、弁体65が貫通孔60の開口周縁から離間し、図5に示す下方インク収容室11が貫通孔67,貫通孔60,貫通孔46,溝45,貫通孔44,領域43および貫通孔41等を介して図6に示す凹部38(大気中)に開放する。また、インク供給口4内の弁体201がインク供給針72の挿入によって開弁する。
【0051】
そして、インク供給口4内の弁体201が開弁し、記録ヘッド112によってインクが消費されると、インク供給口4の圧力が規定値以下に低下するため、図7に示す差圧弁収容室33内の膜弁52が開弁し(インク供給口4の圧力が規定値以上に上昇すると、膜弁52が閉弁する)、差圧弁収容室33内のインクがインク供給口4を介して記録ヘッド112に流れ込む。
【0052】
さらに、記録ヘッド112でのインクの消費が進行すると、下方インク収容室11のインクが図4に示す連通流路18を介して上部第1インク収容室16に流れ込む。
【0053】
一方、インク消費に伴い、大気と連通した貫通孔67(図5に図示)から空気が流入し、下方インク収容室11のインク液面が下がる。さらに、インクが消費され、インク液面が連通口19aに達すると、上部第1インク収容室16内に下方インク収容室11(インク供給時に貫通孔67を介して大気中に開放)からのインクが連通流路18を経由して空気と共に流れ込む。そして、気泡が浮力によって上昇するため、インクだけが垂直壁15下部の連通口15aを経て上部第2インク収容室17に流れ込み、この上部第2インク収容室17から仕切壁26の連通口26aを通過して連通路28を上昇し、連通路28から領域31および連通口24aを介してフィルタ室34の上部に流れ込む。
【0054】
この後、フィルタ室34内のインクが図7に示すフィルタ55を通過して貫通孔25aから差圧弁収容室33に流れ込み、さらに弁座部25bから離間する膜弁52の貫通孔52cを通過してから、図6に示す凹部35内を下降してインク供給口4に流れ込む。
【0055】
このようにして、インクカートリッジ1から記録ヘッド112にインクが供給される。
【0056】
なお、異種のインクカートリッジ1がカートリッジホルダ71に装着される場合には、インク供給口4がインク供給針72に到達する以前に、識別用凸部68(図7に示す)がカートリッジホルダ71の識別片73(図9に図示)に当接し、バルブ作用杆70の進入が阻止される。したがって、異種インクカートリッジの装着による不具合の発生を防止することができる。また、この状態では、バルブ作動杆70が操作アーム66にも到達しないため、弁体65が閉弁状態を維持して、放置による下方インク収容室11内のインク溶媒の蒸発が防止される。
【0057】
一方、インクカートリッジ1がカートリッジホルダ71の装着位置から引き抜かれた場合には、操作アーム66が作動杆70による支持を失って弾性復帰し、これに伴い弁体65が弾性復帰して貫通孔60を閉塞するため、凹部38と下方インク収容室11との連通が遮断される。
【0058】
次に、本実施形態に係るインクカートリッジ1のインク注入方法につき、図5,図10および図11に基づいて説明する。なお、図11は、本発明の実施形態に係るインクカートリッジの注入方法を説明するために示す概略図である。
【0059】
本実施形態におけるインクカートリッジのインク注入方法は、下方インク収容室11と上方インク収容室とに異なるインク充填条件でインクを充填できる点に特徴がある。
【0060】
すなわち、下方インク収容室11内には大気が充填された状態でインクを充填でき、かつ上方インク収容室内には大気が存在しないようにインクを充填できる点に特徴がある。
【0061】
そのため、図11に示すようなインク注入機100が用いられる。このインク注入機100には、下方インク収容室11にインクを注入するためのノズル100bおよび上方インク収容室(上部第1インク収容室16,上部第2インク収容室17等)にインクを注入するためのノズル100cと、さらには上方インク収容室内の空気を排出するために減圧吸引(真空吸引)を行うためのノズル100aを備えている。そして、ノズル100aはインク供給口4に、ノズル100bは第1開口部85に、ノズル100cは第2開口部86に接続される。
【0062】
ここで、ノズル100bは図3〜5および図11に示す中間壁301の貫通孔301aよりもカートリッジ内部に挿入配置されることが好ましい。このように、ノズル100bが第1開口部85,貫通孔301aを挿通し、貫通孔301aより奥に(カートリッジ内の奥部)にインク注入位置を配置することにより、インク注入時のインクの泡立ち発生を防止することができる。すなわち、インク注入当初はノズル100bのインク注入口とインク液面との高低差が少ないため、泡立ちが少ない。また、インクの注入が進行するにしたがい、インク液面が上昇すると、ノズル100bのインク注入口は注入されたインク中に没入し、空気の巻き込みが生じないため、泡立ちが発生しない。仮に、インク注入時にインクの泡立ちが生じても、中間壁301によってその上昇が妨げられ、中間壁301と第1開口部85との間にインクの泡立ちが生じることはない。
【0063】
そのため、インク注入後にインクカートリッジ1の上下を反転(図5に示す状態)になすと、インクの泡立ちはインクカートリッジ1の上部に移動する。
【0064】
その結果、泡立ちのないインクを連通口19a,19bを介して連通流路18に供給でき、最終的にインク供給口4に供給することができる。
【0065】
また、図10に矢印(実線)で示すように第1開口部85からインクを下方インク収容室11に供給する際、同図に矢印(一点鎖線)で示すように大気連通口86aから下方インク収容室11内の大気を逃がすことにより、ノズル100bからのインク供給を可能としている。すなわち、下方インク収容室11は貫通孔67を介して大気開放弁601に連通しているが、インクカートリッジ1がカートリッジホルダ71に装着されていない状態にあっては、大気開放弁601は閉じている。このため、インク注入時における下方インク収容室11内の大気(空気)を逃がすために大気連通口86aが設けられている。
【0066】
この大気連通口86aは、インク注入口86bと共に第2開口部86に臨んで開口している。そのため、第2開口部86をインク注入後にフィルム90によって封止されることにより、大気連通口86aおよびインク注入口86bを密閉することができる。
【0067】
次に、ノズル100cによる上方インク収容室へのインク注入について、図11に基づいて説明する。
【0068】
ノズル100cが接続される第2開口部86のインク注入口86bとインク供給口4との間には差圧弁52が配置されている。そのため、インク供給口4側の圧力が低くなければ、インク供給口4までインクを充填することができない。
【0069】
また、上方インク収容室には空気の混入を防止する必要がある。そのため、ノズル100cからインクを供給すると同時にインク供給口4側からノズル100aによって真空吸引がなされるように構成されている。
【0070】
さらに、第2開口部86のインク注入口86bに近接して連通口18aが設けられているため、ノズル100cから供給されたインクは連通口18a,連通流路18,上部第1インク収容室16,上部第2インク収容室17を介してインク供給口4まで空気(大気)の混入していないインクが充填される。
【0071】
次に、本実施形態におけるインク注入動作について、図11に基づいて説明する。なお、インクカートリッジとしては、フィルム89によってインク供給口4を、またフィルム90によって第1開口部85,第2開口部86を封止(密閉)する前のインクカートリッジ1が用意される。
【0072】
同図に示すように、インク注入機100の各ノズル100a〜100cをインク供給口4,第1開口部85,第2開口部86(インク注入口86b)に接続した後、第1開口部85から下方インク収容室11にインクを注入するとともに、インク注入口86bから上方インク収容室(上部第1インク収容室16,上部第2インク収容室17等)にインクを注入することにより行う。この際、下方インク収容室11へのインク注入は、大気連通口86a(図10に図示)から下方インク収容室11内の大気を排出しながら行う。
【0073】
そして、下方インク収容室11の容積の約50%のインクが充填された時点でインクノズル100bによるインクの注入を終了する。また、上方インク収容室へのインク注入は、インク供給口4を介して真空吸引(真空度100%)しながら行う。この場合、気泡残り,空気の混入を防止するために、インクを上方インク収容室の容積のほぼ100%のインクを注入することが望ましい。なお、過剰に注入されたインクはインク供給口4から排出されてもよい。
【0074】
ノズル100a,100b,100cによるインク注入後、第1開口部85および第2開口部86とインク供給口4とを密閉することによりインクの注入動作は終了する。
【0075】
このように、本実施形態においては、下方インク収容室および上方インク収容室の各室に要求されるインク注入条件でインクの注入を行うことができるため、インク使用時にヘッドに供給されるインク中への気泡の混入を防止することができ、印字上の安定性を確保することができる。
【0076】
なお、本実施形態においては、下方インク収容室11の大気充填率を50%とする場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、注入インク量に応じて適宜変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施形態に係るインクカートリッジの全体を分解して示す斜視図である。
【図2】(a)および(b)は、本発明の実施形態に係るインクカートリッジの外観を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るインクカートリッジの内部構造を斜め上方から見た斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係るインクカートリッジの内部構造を斜め下方から見た斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係るインクカートリッジの内部構造を示す正面図である。
【図6】本発明の実施形態に係るインクカートリッジの内部構造を示す背面図である。
【図7】本発明の実施形態に係るインクカートリッジの負圧発生手段収容室を拡大して示す断面図である。
【図8】本発明の実施形態に係るインクカートリッジのバルブ収容室を拡大して示す断面図である。
【図9】本発明の実施形態に係るインクカートリッジのカートリッジホルダに対する接続状態を示す正面図である。
【図10】(a)および(b)は、本実施形態に係るインクカートリッジのインク注入流路を説明するために、その内部構造を模式化して示す断面図とインク注入口を示す下面図である。
【図11】本発明の実施形態に係るインクカートリッジの注入方法を説明するために示す概略図である。
【符号の説明】
【0078】
1 インクカートリッジ
2 容器本体
3 蓋体
4 インク供給口
8 バルブ収容室
11 下方インク収容室
15 垂直壁
15a 連通口
16 バッファ室
17 負圧発生手段収容室
18 連通流路
18a,18b 連通口
18c 凹部
19 隔壁
19a,19b 連通口
25 仕切壁
25a 貫通孔
25b 弁座部
26 仕切壁
26a 連通口
28 連通路
29 貫通孔
31 領域
33 差圧弁収容室
34 フィルタ室
35,38 凹部
52 膜弁
51 貫通孔
55 フィルタ
56 内フィルム
57 外フィルム
85 第1開口部
86 第2開口部
86a 大気連通口
86b インク注入口
100 インク注入機
100a〜100c ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体内に仕切壁によって上下に分割形成された上方インク収容室と大気に連通可能な下方インク収容室を有し、カートリッジホルダのインク供給針に接続可能なインク供給口と、前記下方インク収容室と前記上方インク収容室を接続する連通流路と、前記上方インク収容室と前記インク供給口との間に配置された差圧弁とを備え、前記上方インク収容室のインクを前記差圧弁を介して前記インク供給口から排出するとともに、前記上方インク収容室のインクの消費の進行により前記下方インク収容室から前記連通流路を介して前記上方インク収容室にインクが流れ込むように構成されたインクカートリッジであって、
前記仕切壁は、前記上方インク収容室のインク供給口側が下方となるように斜めに延在し、
前記上方インク収容室は、垂直壁によって上部第1インク収容室と上部第2インク収容室に分割されているとともに、前記垂直壁の下部には前記上部第1インク収容室から前記上部第2インク収容室へインクを流れ込ませるための連通口が設けられており、
前記連通流路は、上下位置に連通口を有して、上位置の連通口により前記上部第1インク収容室に連通されるとともに、下位置の連通口により前記下方インク収容室に連通されており、
前記下位置の連通口に近接して前記上方インク収容室に連通する開口部のインク注入口が設けられていることを特徴とするインクカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−145033(P2007−145033A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−69417(P2007−69417)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【分割の表示】特願2002−145160(P2002−145160)の分割
【原出願日】平成14年5月20日(2002.5.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】